JP2007270350A - 高強度ステンレス鋼並びに高強度ステンレス鋼の製造方法 - Google Patents

高強度ステンレス鋼並びに高強度ステンレス鋼の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】耐水素脆化性に優れている高強度ステンレス鋼並びにその製造方法を提供する。
【解決手段】マルテンサイト相と、マルテンサイト相の周囲に位置するオーステナイト相とを有する高強度ステンレス鋼であって、表層領域の窒素濃度が中心領域の窒素濃度よりも高い高強度ステンレス鋼、並びにオーステナイト系ステンレス鋼を窒素ガス雰囲気中で焼鈍する焼鈍工程と、焼鈍工程後にオーステナイト系ステンレス鋼を加工する工程とを有する高強度ステンレス鋼の製造方法であって、焼鈍工程は表層領域の窒素濃度を中心領域の窒素濃度よりも高くする高強度ステンレス鋼の製造方法。
【選択図】図4

Description

本発明は高強度ステンレス鋼並びに高強度ステンレス鋼の製造方法に関する。詳しくは、耐水素脆化性に優れた高強度ステンレス鋼並びに耐水素脆化性に優れた高強度ステンレス鋼の製造方法に係るものである。
水素利用社会の到来に向けて、燃料電池システムに対応するための高い安全性を有した材料供給が不可欠となっている。構造材料の分野では、燃料電池自動車に搭載する高圧水素燃料タンク用の材料を供給することが重点課題の一つに挙げられ、充分な強度、低温靭性及び耐食性を兼ね備えたオーステナイト系ステンレス鋼が有望視されている。
しかし、高強度のオーステナイト系ステンレス鋼を得るために、オーステナイト系ステンレス鋼に冷間加工を施すと、鋼材内へ水素が侵入し易くなって水素の侵入度を示す水素脆化感受性が高まり、高圧水素環境下での延性低下や遅れ破壊等の原因になることが知られている。これは、オーステナイト系ステンレス鋼1は水素の拡散性が低い面心立方(fcc)(加工硬化オーステナイト相2)構造を有するため、本来は水素が侵入し難く、水素脆化感受性の低い材料であるが、強冷間加工を施すと体心立方(bcc)構造の加工誘起マルテンサイト相3が形成され、そこを起点に水素が材料中に侵入するようになり水素脆化感受性が高まるからだと考えられている(図1参照。)。
そこで、水素脆化感受性が低いと共に高強度を有するステンレス鋼を提供するための様々な技術が提案されている。例えば非特許文献1には、オーステナイト系ステンレス鋼に、質量%で窒素0.2%とマンガン2.5%を添加することによって、加工誘起マルテンサイト量を低減した高強度かつ水素脆化感受性の低いオーステナイト系ステンレス鋼を提供する技術が開示されている。
藤野善郎、外2名、「耐水素脆性に優れたばね用ステンレス鋼線の開発」、SEIテクニカルレビュー、住友電気工業株式会社、2005年9月、第167号、p.87−91(http:// www.sei.co.jp/tr/staticFile/45/rakcat&DESTINATION=TLVL03&TECHNICAL_CD=172.htm)
しかしながら、従来のオーステナイト系ステンレス鋼は、オーステナイト安定化元素である窒素等を添加して加工誘起マルテンサイト量を低減させているので、水素脆化感受性を低下させていると共に、強度も低下させていた。即ち、加工誘起マルテンサイト組織はオーステナイト系ステンレス鋼の強化因子であるので、加工誘起マルテンサイト量を低減させてしまうと強度も低下させてしまうという問題があった。
本発明は、以上の点に鑑みて創案されたものであり、耐水素脆化性に優れている高強度ステンレス鋼、並びに耐水素脆化性に優れている高強度ステンレス鋼の製造方法を提供することを目的とするものである。
上記の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、本発明者らは、耐水素脆化性が必要な表層部と力学的特性が必要な内部を別々に組織制御することで、上記の目的を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち本発明の高強度ステンレス鋼は、マルテンサイト相と、マルテンサイト相の周囲に位置するオーステナイト相とを有する高強度ステンレス鋼であって、表層領域の窒素濃度が中心領域の窒素濃度よりも高いものである。
ここで、表層領域の窒素濃度が中心領域の窒素濃度よりも高いので、マルテンサイト相内への水素の侵入を抑制することができる。なお、本発明において「表層領域」とは、ステンレス鋼が脆化しない程度にマルテンサイト相内への水素の侵入を抑えることができる範囲をいい、具体的には例えば表面から10〜200μm程度の深さまでの範囲をいう。
また、本発明の高強度ステンレス鋼において、質量%で、C:0.15%以下、Cr:16〜20%、Ni:6〜10%、Si:2%以下、Mn:3%以下、P:0.05%以下、S:0.03%以下、Mo:1%以下、Cu:0.5%以下、Nb:0.1%以下、Ti:0.05%以下、V:0.2%以下、N:0.15%以下、Al:0.05%以下、希土類元素:0.1%以下、残部がFe及び不可避的不純物からなり、表層領域の窒素濃度が0.2質量%超1.5質量%以下である場合、耐食性が向上すると共に、表層領域の窒素濃度が高濃度なので、より効果的にマルテンサイト相内への水素の侵入を抑制することができる。
本発明の高強度ステンレス鋼の基となるステンレス鋼として、最も一般的なオーステナイト系ステンレス鋼であり、具体的には例えばSUS304が用いられる。SUS304は、質量%で、C(炭素):0.15%以下、Cr(クロム):16〜20%、Ni(ニッケル):6〜10%を基本組成とするものである。また、その他の元素としては、以下のような元素がSUS304に含まれている。
Si(ケイ素)
ケイ素は、脱酸剤として利用され、耐酸化性の向上に有効な元素であり、0.2〜1.0%含有される。また、ケイ素はCr(クロム)と同様に代表的なフェライト形成元素であり、過剰に含有させるとNi(ニッケル)などオーステナイト形成元素の含有量を増加させることになるので、含有量の上限は2%であることが好ましい。
Mn(マンガン)
マンガンは、脱酸剤として有効であり、オーステナイト形成元素でもあるため、0.5〜2.0%含有される。しかし、マンガンは過剰に含有させると耐食性を低下させる作用もあるので、含有量の上限は3%であることが好ましい。
P(リン)
リンには強度を向上させる作用があり、このような作用を発揮させるには0.03%以上含有させることが好ましい。しかし、リンを過剰に含有させると溶接性が損なわれるため、含有量の上限は0.05%であることが好ましい。
S(硫黄)
硫黄は不純物であり熱間加工性と靭性を低下させる作用があるので、その含有量は0.03%以下とすることが好ましい。
Mo(モリブデン)
モリブデンはフェライト形成元素であると共に、耐食性を著しく向上させる作用があるので、必須元素ではないが、含有量は0.2%以上とすることが好ましい。しかし、過剰に含有させると強度低下を招く可能性があるので、含有量の上限は1%であることが好ましい。
Cu(銅)
銅はオーステナイト形成元素であり、オーステナイト相の強度調整に有効な元素であるが、熱間脆性を引き起こすという問題があるので、含有量は不可避的に混入する0.5%以下とすることが好ましい。
Nb(ニオブ)及びTi(チタン)
ニオブ及びチタンはフェライト形成元素であると共に、炭素及び窒素を固定して焼鈍時や溶接時の鋭敏化現象を抑制する作用を奏するので、必須元素ではないが、含有量はそれぞれニオブ0.01%以上、チタン0.003%以上とすることが好ましい。他方、ニオブやチタンを過剰に含有させると鋼中の炭素や窒素を固定して強度低下を招く可能性があるので、含有量はそれぞれニオブ0.1%以下、チタン0.05%以下とすることが好ましい。
V(バナジウム)
バナジウムは強度を得るために効果的な元素であるので、必須元素ではないが含有量は0.05%以上とすることが好ましく、また、0.2%を超えると効果が飽和するので含有量は0.2%以下とすることが好ましい。
N(窒素)
窒素は代表的なオーステナイト形成元素であるため、0.02〜0.06%含有される。
Al(アルミニウム)
アルミニウムは脱酸剤として有効な元素であるが、熱間圧延及び冷間圧延時に表面疵を誘発する可能性があるので、含有量は0.05%以下とすることが好ましい。
希土類元素
鋼の耐酸化性や熱間加工性を向上させる元素であるが、含有量は0.1%以下が好ましい。
そして残部がFe及び不可避的不純物である。
また、上記の目的を達成するために、本発明の高強度ステンレス鋼の製造方法は、オーステナイト系ステンレス鋼を窒素ガス雰囲気中で焼鈍する焼鈍工程と、焼鈍工程後にオーステナイト系ステンレス鋼を加工する工程とを有する高強度ステンレス鋼の製造方法であって、焼鈍工程は表層領域の窒素濃度を中心領域の窒素濃度よりも高くする。
ここで、表層領域の窒素濃度を中心領域の窒素濃度よりも高くすることによって、マルテンサイト相内への水素の侵入を抑制することができる。また、焼鈍工程後にオーステナイト系ステンレス鋼を加工することによって、表層領域は窒素濃度が高く安定しておりマルテンサイト相が形成されにくく、中心領域にマルテンサイト相を形成できる。なお、本発明において「表層領域」とは、ステンレス鋼が脆化しない程度にマルテンサイト相内への水素の侵入を抑えることができる範囲をいい、具体的には例えば表面から10〜200μm程度の深さまでの範囲をいう。
また、本発明の高強度ステンレス鋼の製造方法において、組成を、質量%で、C:0.15%以下、Cr:16〜20%、Ni:6〜10%、Si:2%以下、Mn:3%以下、P:0.05%以下、S:0.03%以下、Mo:1%以下、Cu:0.5%以下、Nb:0.1%以下、Ti:0.05%以下、V:0.2%以下、N:0.15%以下、Al:0.05%以下、希土類元素:0.1%以下、残部がFe及び不可避的不純物と成し、表層領域の窒素濃度を0.2質量%超1.5質量%以下にする場合、表層領域の窒素濃度が高濃度なので、より効果的にマルテンサイト相内への水素の侵入を抑制することができる高強度ステンレス鋼を製造できる。
また、本発明の高強度ステンレス鋼の製造方法において、オーステナイト系ステンレス鋼の加工が、板材加工若しくは線材加工である場合、様々な形状の高強度ステンレス鋼を製造できる。
本発明に係る高強度ステンレス鋼は、耐水素脆化性に優れていると共に強度が高い。
本発明に係る高強度ステンレス鋼の製造方法は、耐水素脆化性に優れていると共に強度が高い高強度ステンレス鋼を製造できる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明し、本発明の理解に供する。
先ず、表1に化学組成(単位は質量%)を示す2mm厚のオーステナイト系ステンレス鋼(SUS304)の冷間圧延鋼板を脱脂及び洗浄する。なお、残部はFeである。
Figure 2007270350
次に、得られたオーステナイト系ステンレス鋼板を、小型の窒素ガス雰囲気炉4内に載置し、約1200℃の窒素ガス雰囲気下でオーステナイト系ステンレス鋼板を保持し、窒素ガスを吸収させて、オーステナイト系ステンレス鋼板の表層領域に窒素濃化層を形成する(図2参照。)。ここで、表層領域の窒素濃度は、窒素濃化層を形成した後に加工してマルテンサイト相を形成する場合に表層領域に加工誘起マルテンサイト相が形成されないよう充分に高いことが要求されるが、一例としては以下の方法で窒素濃度を決定することができる。即ち、材料へ30%のひずみを与えた場合にオーステナイトの50%がマルテンサイトへ加工誘起変態する温度Md30は、式(1)で算出することが知られているために、式(1)から表層領域に加工誘起マルテンサイト相が形成されないような窒素濃度分布とする。なお、N濃度分布とMd点とは、図2に示すような関係を有する。また、表層領域の深さ方向の窒素濃度分布測定は、グロー放電発光分光分析装置を用いて行なうことができる。
Md30(℃)=413−462[%C+%N]−9.2[%Si]−8.1[%Mn]−13.7[%Cr]−9.5[%Ni]−18.5[%Mo] (1)
そして、表層領域に窒素濃化層が形成されたオーステナイト系ステンレス鋼板を冷間圧延して、安定オーステナイト相5に囲まれた領域に加工誘起マルテンサイト相3を形成する。冷間圧延は、例えばオーステナイト系ステンレス鋼板を2つのロール6で上下から挟んで行なう(図3参照。)。このようにして得られた、耐水素脆化性に優れた高強度ステンレス鋼の組織の模式図を図4に示す。
また、表2に示す化学組成(単位は質量%)を有する2mm厚のオーステナイト系ステンレス鋼(SUS304)の冷間圧延鋼板を脱脂及び洗浄し、これを1100℃で1800秒間(30分間)、溶体化処理した後、空冷して5つのオーステナイト相単相のオーステナイト系ステンレス鋼板(2mm厚)を得た。なお、残部はFeである。
Figure 2007270350
次に、得られた5つのオーステナイト系ステンレス鋼板のうち4つを、図2に示すような小型の窒素ガス雰囲気炉4内に載置し、約1200℃の窒素ガス雰囲気下でそれぞれ3600秒間(1時間)、10800秒間(3時間)、36000秒間(10時間)及び72000秒間(20時間)、オーステナイト系ステンレス鋼板を保持して窒素ガスを吸収させて、オーステナイト系ステンレス鋼板の表層領域に窒素濃化層を形成した。そして、オーステナイト系ステンレス鋼板の一方の表面から他方の表面までの各位置におけるビッカース硬度(GPa)を測定した。結果を図5に示す。図5は、窒素吸収に伴うオーステナイト系ステンレス鋼板の硬さの変化を示す図である。なお、図5中、実線及び破線は、理論上の窒素濃度を示す。
図5に示すように、窒素ガスを全く吸収させていないオーステナイト系ステンレス鋼板中の窒素濃度は、一方の表面から他方の表面までの各位置において0.1質量%以下であり、ビッカース硬度は一方の表面から他方の表面までの各位置において1.75GPa以下であった。また、図5に示すように、窒素ガスを3600秒間、10800秒間及び36000秒間吸収させたオーステナイト系ステンレス鋼板中の窒素濃度は、オーステナイト系ステンレス鋼板の中心領域よりも表層領域において高くなっており、表層領域の窒素濃度は0.2質量%よりも高くなっていた。
次に、窒素ガスを吸収させたオーステナイト系ステンレス鋼板と窒素ガスを吸収させていないオーステナイト系ステンレス鋼板を、図3に示すように、2つのロール6で上下から挟み、2mm厚のオーステナイト系ステンレス鋼板を60%冷間圧延して0.8mm厚(=800μm厚)の冷間圧延材を得た。そして、得られた冷間圧延材の一方の表面から他方の表面までの各位置におけるビッカース硬度を測定した。結果を図6に示す。図6は、冷間圧延後の厚さ方向の硬さ変化を示す図である。
図6に示すように、冷間圧延されたオーステナイト系ステンレス鋼板は、窒素吸収の有無によらず、表層領域及び中心領域どちらにおいても同等のビッカース硬度を示しており、中心領域において強度の高いマルテンサイト相が形成されていることが判る。
図7は、マルテンサイト量を測るためのエックス線測定法の一態様を示す図であり、図7に示すように、冷間圧延材7に対してエックス線照射方向8でエックス線を照射し、第1の範囲7Aと第2の範囲7Bにおけるエックス線回折パターンの回折線ピークを測定し、積分エックス線強度からマルテンサイト量を測定した。このようなエックス線による測定を、冷間圧延材7の表層領域から中心領域まで電解研磨を繰り返しながら行なった。結果を図8に示す。図8は、表面からの距離とマルテンサイト量の関係を示す図である。なお、図8中、「●」は窒素ガス未添加の冷間圧延材についてのマルテンサイト量を示し、「◆」は窒素ガスを3600秒間吸収させた冷間圧延材についてのマルテンサイト量を示し、そして、「▲」は窒素ガスを10800秒間吸収させた冷間圧延材についてのマルテンサイト量を示す。
図8に示すように、窒素ガスを吸収させていない冷間圧延材のマルテンサイト量は、表層領域から中心領域まで近似した量であるが、窒素ガスを3600秒間吸収させた冷間圧延材のマルテンサイト量は、表面からの距離が200μmを過ぎたあたりから急激増加し、中心領域においてピークに達していることが判る。なお、窒素ガスを10800秒間吸収させた冷間圧延材のマルテンサイト量は、表面からの距離が200μmを過ぎたあたりから確認されているが、中心領域までほとんど増えていなかった。
また、図5、図6及び図8の結果から、窒素ガスを例えば3600秒間吸収させた後に60%冷間圧延を行なって得られた冷間圧延材は、表層領域と中心領域とで略同等の強度を有している一方でその組織構造は、表面から200μmまでの領域にはほとんど加工誘起マルテンサイト相が存在せずに安定オーステナイト相が存在しており、表層領域の窒素濃度は0.2質量%よりも高いと共に中心領域の窒素濃度よりも高くなっており、耐水素脆化性が必要な表層領域には高窒素濃度の安定オーステナイト相が、力学的特性が必要な中心領域には加工誘起マルテンサイト相がそれぞれ別々に形成されていることが判る。
また、一般的に腐食しやすいとされるステンレス鋼の表層領域に、窒素を0.2質量%以上含有させているので、ステンレス鋼の耐食性を向上できる。
ここで、オーステナイト系ステンレス鋼板を使用した例を挙げて本発明を説明したが、オーステナイト系ステンレス鋼であれば必ずしも鋼板でなくてもよく、例えば棒材、線材であってもよい。また、オーステナイト系ステンレス鋼であれば必ずしもSUS304を用いなくてもよく、SUS301やSUS316を用いてもよい。
このように、本発明は耐水素脆化性が必要な表層領域と力学的特性が必要な内部を別々に組織制御する即ちオーステナイト系ステンレス鋼の表層領域の窒素濃度を高めると共にオーステナイト相で囲まれた領域にマルテンサイト相を積極的に形成させることにより、マルテンサイト相によって高強度化が達成できると共に表層領域の高濃度の窒素層によって外部からマルテンサイト相内に水素が侵入することを抑制でき、耐水素脆化性に優れた高強度ステンレス鋼を提供できる。
また、オーステナイト系ステンレス鋼を加工することでマルテンサイト相を形成して高強度化を図っているので、効率よく強度を上げることができる。
オーステナイト系ステンレス鋼における水素脆化の発現機構の示す概略図である。 窒素吸収処理によって形成される安定オーステナイト相の説明図である。 窒素吸収処理後の冷間圧延によって形成される組織の概略図である。 耐水素脆化性に優れた高強度ステンレス鋼の組織の模式図である。 窒素吸収に伴うオーステナイト系ステンレス鋼板の硬さの変化を示す図である。 冷間圧延後の厚さ方向の硬さ変化を示す図である。 マルテンサイト量を測るためのエックス線測定法の一態様を示す図である。 表面からの距離とマルテンサイト量の関係を示す図である。
符号の説明
1 オーステナイト系ステンレス鋼
2 加工硬化オーステナイト相
3 加工誘起マルテンサイト相
4 窒素ガス雰囲気炉
5 安定オーステナイト相
6 ロール
7 冷間圧延材
7A 第1の範囲
7B 第2の範囲
8 エックス線照射方向

Claims (6)

  1. マルテンサイト相と、該マルテンサイト相の周囲に位置するオーステナイト相とを有する高強度ステンレス鋼であって、
    表層領域の窒素濃度が中心領域の窒素濃度よりも高い
    高強度ステンレス鋼。
  2. 質量%で、C:0.15%以下、Cr:16〜20%、Ni:6〜10%、Si:2%以下、Mn:3%以下、P:0.05%以下、S:0.03%以下、Mo:1%以下、Cu:0.5%以下、Nb:0.1%以下、Ti:0.05%以下、V:0.2%以下、N:0.15%以下、Al:0.05%以下、希土類元素:0.1%以下、残部がFe及び不可避的不純物からなり、
    前記表層領域の窒素濃度が0.2質量%超1.5質量%以下である
    請求項1に記載の高強度ステンレス鋼。
  3. オーステナイト系ステンレス鋼を窒素ガス雰囲気中で焼鈍する焼鈍工程と、
    該焼鈍工程後に前記オーステナイト系ステンレス鋼を加工する工程とを有する高強度ステンレス鋼の製造方法であって、
    前記焼鈍工程は表層領域の窒素濃度を中心領域の窒素濃度よりも高くする
    高強度ステンレス鋼の製造方法。
  4. 組成を、質量%で、C:0.15%以下、Cr:16〜20%、Ni:6〜10%、Si:2%以下、Mn:3%以下、P:0.05%以下、S:0.03%以下、Mo:1%以下、Cu:0.5%以下、Nb:0.1%以下、Ti:0.05%以下、V:0.2%以下、N:0.15%以下、Al:0.05%以下、希土類元素:0.1%以下、残部がFe及び不可避的不純物と成し、前記表層領域の窒素濃度を0.2質量%超1.5質量%以下にする
    請求項3に記載の高強度ステンレス鋼の製造方法。
  5. 前記オーステナイト系ステンレス鋼の加工が、板材加工である
    請求項3または請求項4に記載の高強度ステンレス鋼の製造方法。
  6. 前記オーステナイト系ステンレス鋼の加工が、線材加工である
    請求項3または請求項4に記載の高強度ステンレス鋼の製造方法。
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