JP5637386B2 - マグネシウム合金板 - Google Patents

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Description

本発明は、電気・電子機器類の筐体などの各種の部材の素材に適したマグネシウム合金板、及びこの板から構成されるマグネシウム合金部材に関するものである。特に、耐食性に優れるマグネシウム合金板に関するものである。
マグネシウムに種々の添加元素を含有したマグネシウム合金が、携帯電話やノート型パーソナルコンピュータといった携帯用電気・電子機器類の筐体や自動車部品などの各種の部材の構成材料に利用されてきている。
マグネシウム合金からなる部材は、ダイカスト法やチクソモールド法による鋳造材(ASTM規格のAZ91合金)が主流である。近年、ASTM規格のAZ31合金に代表される展伸用マグネシウム合金からなる板にプレス加工を施した部材が使用されつつある。特許文献1は、ASTM規格におけるAZ91合金相当の合金からなり、プレス加工性に優れるマグネシウム合金板を提案している。
マグネシウムは、活性な金属であるため、上記部材やその素材となるマグネシウム合金板の表面には、通常、陽極酸化処理や化成処理といった防食処理が施される。
特開2007-098470号公報
上述したAZ31合金やAZ91合金などのAlを含有するマグネシウム合金では、Alの含有量が多くなるほど耐食性に優れる傾向にある。例えば、AZ91合金は、マグネシウム合金の中でも耐食性に優れるとされている。しかし、AZ91合金により構成された部材(主として鋳造材)であっても、上記防食処理が必要とされている。防食処理を施さない場合、AZ91合金から構成された鋳造材であっても、後述するように塩水噴霧試験や塩水浸漬試験などの腐食試験を行うと腐食が進行する。また、耐食性の向上などを目的として、上記防食処理に加えて塗装を行った場合でも、落下などにより疵が生じたり、使用過多などにより塗装が剥がれたりして、マグネシウム合金が露出されると、その露出部分から腐食が進行する。従って、マグネシウム合金部材を構成するマグネシウム合金板自体が耐食性に優れることが望まれる。
そこで、本発明の目的の一つは、耐食性に優れるマグネシウム合金板を提供することにある。また、本発明の他の目的は、上記マグネシウム合金板から構成され、耐食性に優れるマグネシウム合金部材を提供することにある。
本発明者らは、Alを含有するマグネシウム合金板を対象に塩水腐食試験を行って耐食性を調べたところ、耐食性に優れる板は、当該試験後において、当該板表面に酸化膜が均一的な厚さで形成されている、との知見を得た。また、上記塩水腐食試験後において均一的な厚さの酸化膜が存在する板は、塩水腐食試験前においても均一的な厚さの酸化膜が存在していた。このような板の組織を調べたところ、微細な金属間化合物が分散している、との知見を得た。そして、上述のように板表面に均一的な厚さの酸化膜が形成され、かつ、微細な金属間化合物が特定の範囲で存在する組織から構成されるマグネシウム合金板は、従来、必須とされていた防食処理を施さなくても、使用に耐え得るとの知見を得た。本発明は、上記知見に基づくものである。
本発明のマグネシウム合金板は、Alを含有するマグネシウム合金から構成され、上記板中にAl及びMgの少なくとも一方を含む金属間化合物の粒子が分散して存在しており、かつ、上記板の表面の実質的に全面に亘って均一的な厚さの酸化膜を具える。上記金属間化合物の粒子の平均粒径は0.5μm以下であり、上記板の断面において、上記金属間化合物の粒子の合計面積の割合が0%超11%以下である。
本発明マグネシウム合金板は、当該板表面の実質的に全面に亘って均一的な厚さの酸化膜を具えることで、大気や水などの腐食要因がマグネシウム合金自体に接触することを効果的に抑制できるため、耐食性に優れる。また、マグネシウム合金の母材(マトリクス相)よりも耐食性に優れる金属間化合物からなる微細な粒子がマグネシウム合金板の少なくとも表面領域に存在することでも、本発明マグネシウム合金板は、耐食性に優れる。特に、上記金属間化合物が特定の範囲(面積割合)で存在することで、マトリクス相中にもAlが十分に固溶した状態とできるため、Alが金属間化合物になったことによる当該マトリクス相自体の耐食性の劣化を抑制できる。この点からも本発明マグネシウム合金板は、耐食性に優れる。従って、本発明マグネシウム合金板は、化成処理などの防食処理を施していなくても使用できると期待される。
また、本発明マグネシウム合金板は、微細な金属間化合物の粒子が分散して存在することで、上記粒子の分散強化により板自体の剛性を向上したり、上述のようにAlの固溶強化による強度を維持したりすることができると期待される。従って、本発明マグネシウム合金板は、衝撃を受けても凹み難く、剛性や耐衝撃特性にも優れると期待される。
更に、本発明マグネシウム合金板は、塑性加工時に割れの起点となるような粗大な金属間化合物や粗大な巣などの欠陥が実質的に存在せず、塑性加工性にも優れる。従って、本発明マグネシウム合金板は、塑性加工材の素材に好適に利用することができる。そして、本発明マグネシウム合金板にプレスなどの塑性加工が施されてなる本発明マグネシウム合金部材も、防食処理などが施されていなくても耐食性に優れる。なお、本発明マグネシウム合金部材において塑性変形に伴う変形が少ない箇所(代表的には平坦な部分)では、上記本発明マグネシウム合金板の組織を概ね維持する。
以下、本発明をより詳細に説明する。
[マグネシウム合金板]
(組成)
本発明マグネシウム合金板や本発明マグネシウム合金部材を構成するマグネシウム合金は、Mgに添加元素を含有した種々の組成のもの(残部:Mg及び不純物)が挙げられる。特に、本発明では、添加元素に少なくともAlを含有するMg-Al系合金とする。Alの含有量が多いほど、耐食性に優れる上に、強度、耐塑性変形性といった機械的特性にも優れる傾向にある。従って、Alの含有量は、4.5質量%以上、更に7質量%以上、とりわけ7.5質量%超が好ましい。但し、Alの含有量が12質量%を超えると塑性加工性の低下を招くことから、上限は12質量%、更に11質量%が好ましい。
Al以外の添加元素は、Zn,Mn,Si,Ca,Sr,Y,Cu,Ag,Zr,Ce及び希土類元素(Y,Ceを除く)から選択された1種以上の元素が挙げられる。これらの元素を含む場合、その含有量は、合計で0.01質量%以上10質量%以下、好ましくは0.1質量%以上5質量%以下が挙げられる。より具体的なMg-Al系合金は、例えば、ASTM規格におけるAZ系合金(Mg-Al-Zn系合金、Zn:0.2〜1.5質量%)、AM系合金(Mg-Al-Mn系合金、Mn:0.15〜0.5質量%)、Mg-Al-RE(希土類元素)系合金、AX系合金(Mg-Al-Ca系合金、Ca:0.2〜6.0質量%)、AJ系合金(Mg-Al-Sr系合金、Sr:0.2〜7.0質量%)などが挙げられる。特に、Alを8.3質量%〜9.5質量%、Znを0.5質量%〜1.5質量%含有するMg-Al系合金、代表的にはAZ91合金は、耐食性に優れて好ましい。不純物は、例えば、Fe,Ni,Cuなどが挙げられる。
(組織)
<金属間化合物>
≪組成≫
上記マグネシウム合金は、マトリクス相中に微細な金属間化合物の粒子が特定の範囲で分散した組織を有する。金属間化合物は、例えば、Mg17Al12といったMg及びAlを含有する化合物、Al(MnFe)といったAlを含有する化合物が挙げられる。
≪平均粒径、面積割合≫
上記「微細」とは、平均粒径が0.5μm以下を満たすことを言い、「分散した組織」とは、マグネシウム合金板の断面を100面積%とするとき、上記金属間化合物の粒子が合計で11面積%以下存在することを言う。上記面積割合が0面積%超であることで、マグネシウム合金板中に上記金属間化合物が十分に存在し、かつ、平均粒径が0.5μm以下であることで、微細な金属間化合物が分散していることによる耐食性の向上効果を十分に得られる。上記平均粒径が大き過ぎたり、上記面積割合が大き過ぎると、マグネシウム合金板中に金属間化合物が過剰に存在したり、5μm以上といった粗大な粒子が存在することで、マトリクス相中のAlの固溶量(Al濃度)が低減されて耐食性の低下を招く。更に、金属間化合物の粒子が粗大で、マトリクス相中に疎らに存在していると、当該粗大な粒子とマトリクス相との間で局部電池を形成し、孔食などの腐食が生じ易くなる。更に、上述のような粗大な粒子は、塑性加工時などで割れなどの起点となり得る。従って、金属間化合物はできるだけ小さい粒子が均一的に分散していることが好ましく、上記平均粒径は、0.3μm以下がより好ましい。上記面積割合は、8面積%以下がより好ましいと考えられる。
≪個数≫
また、マグネシウム合金板の断面において、上記金属間化合物の粒子の個数が0.1個/μm2以上であると、上述の微細な金属間化合物の粒子がマトリクス相中に均一的に分散しており、更に優れた耐食性を有することができる。上記個数は、0.3個/μm2以上がより好ましい。但し、大きな金属間化合物の粒子が多過ぎると、上述のようにマトリクス相のAl濃度が低下して耐食性の低下を招くことから、上述のように金属間化合物の粒子は小さいことが望ましい。
<巣>
本発明マグネシウム合金板の一形態として、上記板に存在する巣の最大径が5μm以下である形態が挙げられる。鋳造材では、巣(ポア)と呼ばれる鋳造欠陥が存在し易い。上記巣を有する鋳造材に圧延などの加工を行うことで、上記巣を消滅したり小さくしたりすることができるが、鋳造材のままでは、巣が消滅などすることなく存在する。最大径が5μm超といった粗大な巣が存在し、特に、マグネシウム合金板の表面に露出している場合、腐食の起点となり易く、耐食性の低下を招く。これに対し、本発明マグネシウム合金板は、後述するように鋳造板に圧延を施した圧延板とすることで、上記粗大な巣が少なく、或いは実質的に存在せず、上記粗大な巣の存在による耐食性の低下が生じ難く、耐食性に優れる。巣は、存在しないことが好ましいため、巣の数及び最大径の下限は設けない。
(酸化膜)
本発明マグネシウム合金板は、その表面の実質的に全面に亘って均一的な厚さの酸化膜を具えることを特徴の一つとする。ここで、マグネシウム合金は活性であるため、防食処理や塗装を施さないと、その表面に酸化膜が形成される。本発明者らが調べたところ、鋳造材では、上記酸化膜が不均一な厚さで生成されており、このような鋳造材は、耐食性に劣っていた。そこで、耐食性に優れる本発明マグネシウム合金板の構成要件の一つとして、酸化膜が均一的な厚さで形成されていることを規定する。表面の実質的に全面とは、検査装置の測定限界などにより酸化膜を精度よく確認できない箇所を除いた領域であり、マグネシウム合金板の表面積の90%以上、特に95%以上を言う。また、酸化膜は、実質的にマグネシウム酸化物(水酸化物を含む)で形成されるが(90質量%以上)、Alなどの不純物を含むことを許容する。
本発明では、均一的な厚さの指標として、当該板の表面に具える酸化膜の最大厚さをtmax、最小厚さをtmin、最大厚さtmaxと最小厚さtminとの比tmax/tminを均一度とするとき、この均一度を利用する。ここで、塩水腐食試験により生成された酸化膜は、自然酸化による酸化膜を加速して生成したものに相当する。従って、酸化膜が均一的な厚さに形成されている本発明マグネシウム合金板は、塩水腐食試験後においても、当該板の表面に酸化膜が均一的な厚さで厚く生成されることから、塩水腐食試験後は、酸化膜の厚さが測定し易く、均一度を容易に求められる。そのため、塩水腐食試験後の均一度を利用することを提案する。この均一度は、30以下が好ましく、1が最も好ましい。
(腐食反応抵抗)
本発明マグネシウム合金板の一形態として、当該板に塩水腐食試験を行った後における交流インピーダンスによる腐食反応抵抗が当該塩水腐食試験前における交流インピーダンスによる腐食反応抵抗よりも大きい形態が挙げられる。本発明者らが調べたところ、耐食性に優れるマグネシウム合金板の中には、塩水腐食試験後において、塩水腐食試験の前よりも腐食反応抵抗が大きくなっている、即ち、塩水腐食試験後にも係わらず耐食性が向上しているマグネシウム合金板が存在する、という驚くべき知見を得た。
上記理由は定かでは無いが以下のように考えられる。マグネシウム合金は、上述のように活性であることから、塩水腐食試験中に腐食液(試験液)に接触することで試料表面に酸化膜が形成される。このとき、本発明マグネシウム合金板は、上述のように酸化膜が均一的な厚さで形成される。そして、耐食性に優れる酸化膜が上述のように均一的な厚さで生成されて耐食層として機能することから、塩水腐食試験後において腐食反応抵抗が上昇し、耐食性が向上すると考えられる。
更に、本発明者らが、上述した塩水腐食試験後において腐食反応抵抗が大きくなっている(即ち、塩水腐食試験後にも係わらず耐食性が向上している)マグネシウム合金板について研究を進めた結果、次のことが分かった。酸化膜は、上述したように、実質的にマグネシウム酸化物で形成されるが、塩水腐食試験後のマグネシウム合金板の表面を詳しく分析すると、表面に形成された腐食層において、マグネシウム酸化物を多く含む上記酸化膜の領域と、Al濃度が高いAlリッチなAl高濃度領域とを有することが分かった。例えば、上記酸化膜領域と腐食の影響が及んでいない板の内部領域との間に、Al高濃度領域が上記酸化膜領域と同様に層状に生成されることが考えられる。そして、このAl高濃度領域が、腐食の進行を抑制し、腐食反応抵抗の上昇、即ち耐食性の更なる向上に寄与するものと考えられる。
ここで、上記したAl高濃度領域は、マグネシウム合金板の腐食の影響が及んでいない内部領域(即ち、マグネシウム合金の母材(マトリクス相)。以下、単に「内部領域」と呼ぶ場合がある)におけるAl濃度と比較してAl濃度が高い領域のことである。つまり、腐食層におけるAl高濃度領域では、内部領域に比較して相対的にMg濃度が低く、AlとMgとの濃度比[Al濃度(原子%)/Mg濃度(原子%)]が高い。Al高濃度領域におけるAlの存在形態は、詳しくは不明であるが、水酸化物や酸化物と考えられ、内部領域におけるAlの存在状態(マトリクス相中の固溶、或いはMg17Al12やAl(MnFe)といった金属間化合物)と異なる。内部領域のAl濃度やMg濃度を測定するときは、板厚方向の中心近傍や、例えば板表面から板厚(深さ)方向に100μm以上深い範囲を測定するとよい。Al高濃度領域が生成される詳細なメカニズムについては、後述する。
(形態)
本発明マグネシウム合金板は、代表的には、全体に亘って厚さが均一である形態が挙げられる。その他、ロール外周に凹溝を有する圧延ロールを利用して圧延を施して、部分的に厚さが異なる箇所を有する形態や、切削加工により設けた貫通孔を具える形態など、製造工程に施す種々の加工、処理により種々の形態が挙げられる。板の形態や厚さ、大きさ(面積)は、所望の用途に応じて適宜選択することができる。特に、最大厚さが2.0mm以下、更に1.5mm以下、とりわけ1mm以下であると、薄型、軽量の部材(代表的には筐体)の素材に好適に利用することができる。
また、本発明マグネシウム合金板の形態として、当該板の両面に防食処理が施されていない形態とすることができる。この構成によれば、従来必須とされていた防食処理を削減でき、マグネシウム合金板やこの板を用いたマグネシウム合金部材の生産性を向上することができる。また、本発明マグネシウム合金板の一形態として、当該板の両面に防食処理が施されておらず、かつ、当該板のいずれか一方の面にのみ塗装層を具える形態とすることができる。この形態によれば、一方の面に塗装層を具えることで、マグネシウム合金板の耐食性を補強できる上に、着色や模様の付与などが可能となるため、商品価値をも高められる。
勿論、本発明マグネシウム合金板の一形態として、当該板の両面に化成処理などの防食処理を施した形態、更に、防食処理に加えて塗装層を具える形態とすることができる。この場合、マグネシウム合金板自体の耐食性に加えて、防食処理により耐食性を高められて、耐食性に極めて優れたマグネシウム合金板となる。
[マグネシウム合金部材]
本発明マグネシウム合金部材は、上記本発明マグネシウム合金板に、プレス、鍛造、曲げなどの種々の塑性加工を施すことにより得られる。形状・大きさは特に問わない。例えば、天板部(底面部)と、天板部の周縁から立設される側壁部とを有する断面]状の箱体や]状の枠体、L字状の枠体、天板部が円板状で、側壁部が円筒状の有蓋筒状体などが挙げられる。上記天板部などは、ボスなどを一体に成形又は接合していたり、表裏に貫通する孔や厚さ方向に凹んだ溝を有していたり、段差形状になっていたり、切削加工などにより局所的に厚さが異なる部分を有していてもよい。
[製造方法]
上記本発明マグネシウム合金板は、例えば、以下の各工程を具える製造方法により、製造することができる。
準備工程:Alを含有するマグネシウム合金からなり、連続鋳造法で製造した鋳造板を準備する工程。
溶体化工程:上記鋳造板に350℃以上の温度で溶体化処理を施して、固溶板を製造する工程。
圧延工程:上記固溶板に温間圧延を施し、圧延板を製造する工程。
特に、溶体化工程以降の製造工程において、加工対象である素材板(代表的には圧延板)を150℃以上300℃以下の温度域に保持する総合計時間を1時間以上12時間以内とすると共に、300℃超の温度に加熱しないように、上記素材板の熱履歴を制御する。
上記製造方法は、更に、上記圧延板に温間矯正を施す矯正工程を具えることができる。この矯正工程では、上記圧延板を100℃以上300℃以下に加熱した状態で矯正を行う。特に、この矯正工程における圧延板を150℃以上300℃以下の温度域に保持する時間が、上記総合計時間に含まれるようにする。
本発明者らは、上記金属間化合物の粒径及びその存在量を制御して、粗大な粒子が生成されないようにすると共に、ある程度の量の微細な粒子を生成する製法を検討した。その結果、鋳造以降、特に溶体化処理以降、最終製品となるまでの製造工程において、マグネシウム合金からなる素材を特定の温度域に保持する総合計時間が特定の範囲となるように製造条件を制御すると、上記特定の組織を有するマグネシウム合金板が得られる、との知見を得た。そこで、耐食性に優れる本発明マグネシウム合金板の製造方法の一例として、上記方法を提案する。上述のように溶体化処理以降の製造工程において、マグネシウム合金からなる素材を、金属間化合物が析出され易い温度域(150℃〜300℃)に保持する時間を特定の範囲内とすると共に、当該素材を溶体化処理以降に300℃超の温度に加熱しないことで、金属間化合物を析出させつつ、その量を特定の範囲内とすることができる。また、上記特定の温度域に保持する時間を制御することで、金属間化合物の過度な成長を抑制して、微細な析出物が分散した組織とすることができる。
以下、工程ごとにより詳細に説明する。
(準備工程)
上記鋳造板は、双ロール法といった連続鋳造法、特に、国際公開第2006/003899号パンフレットに記載の鋳造方法で製造した鋳造板を利用することが好ましい。連続鋳造法は、急冷凝固が可能であるため、酸化物や偏析などを低減できる上に、10μm超といった粗大な晶析出物が生成されることを抑制することができる。従って、圧延加工性に優れる鋳造板が得られる。鋳造板の厚さは特に問わないが、厚過ぎると偏析が生じ易いため、10mm以下、特に5mm以下が好ましい。
(溶体化工程)
上記鋳造板に溶体化処理を施して、組成を均質化すると共に、Alといった元素を固溶させた固溶板を製造する。溶体化処理は、保持温度を350℃以上、特に、保持温度:380℃〜420℃、保持時間:60分〜2400分(1時間〜40時間)とすることが好ましい。また、保持時間は、Alの含有量が多いほど長くすることが好ましい。更に、上記保持時間からの冷却工程において、水冷や衝風といった強制冷却などを利用して冷却速度を速めると、粗大な析出物の析出を抑制できて好ましい。上述のように溶体化処理を行うことでマグネシウム合金中にAlを十分に固溶させられる。
(圧延工程)
上記固溶板に圧延を施すにあたり、素材(固溶板や最終圧延が施されるまでの圧延途中の板)を加熱することで塑性加工性(圧延加工性)を高めることができる。特に、上記素材を300℃超に加熱すると塑性加工性を十分に高められて圧延を行い易い。しかし、上述のように金属間化合物(析出物)の過剰な生成や粗大化による耐食性の低下を招いたり、素材の焼き付きが発生したり、素材の結晶粒が粗大化して圧延後に得られた板の機械特性が低下したりする。そのため、圧延工程において素材の加熱温度も300℃以下とする。特に、素材の加熱温度は150℃以上280℃以下が好ましい。複数回(多パス)の圧延を施すことで、所望の板厚にできると共に、素材の平均結晶粒径を小さくしたり(例えば、10μm以下、好ましくは5μm以下)、圧延やプレス加工といった塑性加工性を高められる。圧延は、公知の条件、例えば、素材だけでなく圧延ロールも加熱したり、特許文献1に開示される制御圧延などを組み合わせて利用してもよい。
多パスの圧延を行う場合、上述した150℃〜300℃の温度域の保持時間が上記総合計時間に含まれる範囲で、パス間に中間熱処理を行ってもよい。この中間熱処理により、当該中間熱処理までの塑性加工(主として圧延)により加工対象である素材に導入された歪みや残留応力、集合組織などを除去、軽減することができ、当該中間熱処理後の圧延で不用意な割れや歪み、変形を防止して、より円滑に圧延を行える。中間熱処理を行う場合も、素材の加熱温度を300℃以下とする。好ましい加熱温度は、250℃以上280℃以下である。
(矯正工程)
上記圧延工程により得られた圧延板に、特許文献1に記載されるように最終熱処理(最終焼鈍)を施してもよいが、この最終熱処理を施さず、或いは最終熱処理後に上述のように温間矯正を施すと、プレス加工といった塑性加工性に優れて好ましい。矯正は、国際公開第2009/001516号パンフレットに記載されるようなロールレベラなどを用い、圧延板を100℃〜300℃、好ましくは150℃以上280℃以下に加熱して行うことが挙げられる。このような温間矯正を行った矯正板にプレス加工といった塑性加工を施すと、塑性加工時に動的再結晶化が生じることで、塑性加工性に優れる。
上記最終熱処理を行った場合、圧延に伴う歪みを除去することができる。最終熱処理の条件は、例えば、素材の加熱温度:100℃以上300℃以下、加熱時間:5分以上60分以下が挙げられる。特許文献1で記載されるように加熱温度を300℃〜340℃とすることもできるが、上述のように金属間化合物の成長をできるだけ抑制するために、加熱時間を短くすること、例えば30分未満が望ましい。
(素材を特定の温度域に保持する総合計時間)
従来、溶体化処理以降、最終製品までの工程において、素材を150℃〜300℃の温度域に保持する総合計時間をどの程度にするか十分に検討されていなかった。これに対して、上述のように金属間化合物が生成され易かったり成長し易かったりする上記温度域の保持時間を特定の範囲に制御することで、特定量の微細な金属間化合物が分散して存在する組織を有する本発明マグネシウム合金板が得られる。
上記150℃〜300℃の温度域に保持する総合計時間が1時間未満では、金属間化合物が十分に析出されず、12時間を超えたり、素材を300℃超に加熱して圧延などすると、平均粒径が1μm以上の粗大な金属間化合物が存在した組織や11面積%超といった過剰に金属間化合物が存在した組織が得られる。好ましくは、温度域:150℃以上280℃以下、総合計時間:1時間以上6時間以下となるように、圧延工程における各パスの加工度や圧延工程の総加工度、中間・最終熱処理時の条件、矯正時の条件などを制御する。また、Alの含有量が多いほど、金属間化合物が析出し易いため、上記総合計時間は、Alの含有量に応じても調整することが好ましい。
上記製造方法により得られたマグネシウム合金板は、上記圧延板、矯正板が代表的な形態である。
(その他の工程)
上記圧延板や、上記圧延板に上記最終熱処理や上記矯正を施した処理板にプレス加工といった塑性加工を施すことで、本発明マグネシウム合金部材が得られる。上記塑性加工は、200℃〜300℃の温度域で行うと、素材の塑性加工性を高められて、塑性加工を行い易い。塑性加工時において素材を上記200℃〜300℃に保持する時間は、非常に短く、例えば、プレス加工では60秒以内であり、上述したような金属間化合物の粗大化などの不具合は実質的に生じないと考えられる。
上記塑性加工後に熱処理を施して、塑性加工により導入された歪みや残留応力の除去、機械的特性の向上を図ることができる。この熱処理条件は、加熱温度:100℃〜300℃、加熱時間:5分〜60分程度が挙げられる。但し、この熱処理においても150℃〜300℃の温度域の保持時間が上記総合計時間に含まれるようにすることが望ましい。
更に、上記塑性加工後、耐食性の向上や機械的保護、装飾(商品価値の向上)などを目的として、上述のように塗装層を設けることができる。
本発明マグネシウム合金板及び本発明マグネシウム合金部材は、耐食性に優れる。
塩水腐食試験前後におけるマグネシウム合金板の表面近傍の顕微鏡写真(20,000倍)であり、図1(I)は試料No.1、図1(II)は試料No.100を示す。 塩水腐食試験後におけるマグネシウム合金板の表面近傍の顕微鏡写真(5,000倍)であり、図2(I)は試料No.1、図2(II)は試料No.100を示す。 マグネシウム合金板の顕微鏡写真(5,000倍)であり、図3(I)〜図3(VI)が試料No.1〜6、図3(VII)は、試料No.100を示す。 マグネシウム合金板の顕微鏡写真(1,000倍)であり、図4(I)は試料No.1、図4(II)は試料No.100を示す。 塩水浸漬試験後の試料No.3の試験片の断面をAESによりライン分析した結果であり、図5(I)は塩水浸漬試験0.5時間後のAES分析結果、図5(II)は塩水浸漬試験24時間後のAES分析結果である。 塩水浸漬試験後の試料No.3の試験片の断面をAESによりライン分析した結果であり、塩水浸漬試験96時間後のAES分析結果である。 塩水浸漬試験中におけるAlを含有するマグネシウム合金板の腐食進行過程を説明する模式図である。
以下、本発明の実施の形態を説明する。
[試験例1]
種々の条件でマグネシウム合金板を作製して、各板の金属組織、表面状態、及び耐食性を調べた。
この試験では、以下のように作製した試料No.1〜6のマグネシウム合金板と、比較として市販の鋳造材(AZ91合金、厚さ3mmの板)を用意した。この鋳造材に、後述する試料No.1〜6に施した研磨処理と同様の条件で湿式研磨を施して研磨板を作製し、この研磨板を試料No.100とした。
AZ91合金相当の組成(Mg-9.0%Al-1.0%Zn-0.15%〜0.5%Mn(全て質量%))を有するマグネシウム合金からなり、双ロール連続鋳造法により得られた鋳造板(厚さ4mm)を複数用意した。得られた各鋳造板に、400℃×24時間の溶体化処理を施した。溶体化処理を施した各固溶板に表1に示す圧延条件で複数回圧延を施し、厚さ0.6mmの圧延板を作製した。
試料No.1,2,4〜6は、得られた各圧延板を表1に示す温度に加熱した状態で温間矯正を施して、矯正板を作製した。試料No.3は、得られた圧延板に320℃×15分の条件で熱処理を施した後、この熱処理板を表1に示す温度に加熱した状態で温間矯正を施して、矯正板を作製した。
上記温間矯正は、素材板(ここでは圧延板又は熱処理板)を加熱可能な加熱炉と、加熱された素材板に連続的に曲げ(歪)を付与する複数のロールを有するロール部とを具えるロールレベラ装置を用いて行う。上記ロール部は、上下に対向して千鳥状に配置された複数のロールを具える。上記ロールレベラ装置により、素材板は、上記加熱炉内で加熱されながら上記ロール部に送られ、ロール部の上下のロール間を通過するごとに、これらのロールにより順次曲げが付与される。
試料No.1〜5は、所定の長さの鋳造板を作製し、この鋳造板に溶体化→圧延(→熱処理)→矯正を施したシート材とした。No.6は、長尺な鋳造板を作製してコイル状に巻き取って溶体化処理を施した後、巻き取り/巻き戻しを繰り返して圧延を施し、更に矯正を施したコイル材とした。
得られた矯正板(シート材又はコイル材)に、更に、#600の研磨ベルトを用いて湿式ベルト式研磨を施して、矯正板の表面を研磨により平滑化して、研磨板を作製した。この研磨板を試料No.1〜6とした。なお、試料No.1〜6はいずれも、溶体化処理以降の製造工程において、150℃〜300℃の温度域に保持する総合計時間を1時間〜12時間とすると共に、試料No.3の圧延板に施した熱処理を除き、300℃超の加熱を行わないようにした。
得られた試料No.1〜6、及び比較の試料No.100をそれぞれ板厚方向に任意に切断して断面をとり、その断面を走査電子顕微鏡:SEMで観察した。図1(I)は試料No.1の観察像(20,000倍)、図1(II)は試料No.100の観察像(20,000倍)であり、図1(I),(II)において左の写真が後述する塩水腐食試験前、右の写真が塩水腐食試験後である。図2は、後述する塩水腐食試験後の観察像であり、図2(I)は試料No.1の観察像(5,000倍)、図2(II)は試料No.100の観察像(5,000倍)である。図3(I)〜図3(VI)は試料No.1〜6の観察像(5,000倍)、図3(VII)は試料No.100の観察像(5,000倍)である。また、図4(I)は、試料No.1の観察像(1,000倍)、試料No.100の観察像(1,000倍)である。図1〜図3において薄い灰色や白色の粒子、図1(II),図2(II),図3(VII)において薄い灰色や白色の粒子(異形のものを含む)が金属間化合物であり、図4(II)において黒色の異形の粒子が巣である。
また、各試料No.1〜6,100の金属間化合物の粒子の平均粒径(μm)、金属間化合物の粒子の合計面積の割合(%)、金属間化合物の粒子の個数(個/μm2)、巣の最大径(μm)を測定した。その結果を表2に示す。更に、隣り合う金属間化合物の粒子間の平均間隔(μm)、金属間化合物の粒子の円形度係数を測定した。その結果も表2に示す。
加えて、得られた試料No.1〜6、及び比較の試料No.100に対して、塩水腐食試験を行い、当該試験前後の腐食反応抵抗(Ω)、当該試験による腐食減量(μg/cm2)、当該試験によるMg溶出量(μg/cm2)、当該試験後における酸化膜の均一度を測定した。その結果を表3に示す。
金属間化合物の粒子の平均粒径は、以下のようにして測定した。各試料に対してそれぞれ、板厚方向に5つの断面をとり、各断面の観察像から任意に3つの視野(ここでは22.7μm×17μmの領域)をそれぞれとる。観察視野ごとに、一つの観察視野内に存在する各粒子の円相当径(各粒子の面積の等価面積円の直径)をそれぞれ求め、上記円相当径の総和を一つの観察視野内に存在する粒子数で除した値:(円相当径の合計)/(粒子の合計数)を当該観察視野の平均粒径とする。そして、各試料のそれぞれについて、15個の観察視野の平均粒径の平均を表2に示す。
金属間化合物の粒子の合計面積の割合は、以下のようにして測定した。上述のように観察視野をとり、観察視野ごとに、一つの観察視野内に存在する全ての粒子の面積をそれぞれ調べて合計面積を算出し、この合計面積を一つの観察視野の面積(ここでは385.9μm2)で除した値:(粒子の合計面積)/(観察視野の面積)を当該観察視野の面積割合とする。そして、各試料のそれぞれについて、15個の観察視野の面積割合の平均を表2に示す。
金属間化合物の粒子の個数は、以下のようにして測定した。上述のように観察視野をとり、観察視野ごとに、一つの観察視野内に存在する全ての粒子の数をそれぞれ調べて合計数を算出し、この合計数を一つの観察視野の面積(ここでは385.9μm2)で除した値:(粒子の合計数)/(観察視野の面積)を当該観察視野の個数とする。そして、各試料のそれぞれについて、15個の観察視野の個数の平均を表2に示す。
金属間化合物の粒子の平均間隔は、以下のように測定した。上述のように観察視野をとり、観察視野ごとに、一つの観察視野内に存在する全ての粒子の合計面積及び粒子の合計数から、一つの粒子の平均面積:(粒子の合計面積)/(粒子の合計数)を求め、全ての粒子の合計面積を上記平均面積で除した値を当該観察視野の粒子数とする。この観察視野の粒子数を当該観察視野の面積(ここでは385.9μm2)で除して、単位面積あたりの粒子数を求め、この単位面積あたりの粒子数の平方根を単位距離あたりの粒子数とし、単位距離あたりの粒子数の逆数を当該観察視野の平均間隔とする。そして、各試料のそれぞれについて、15個の観察視野の平均間隔の平均を表2に示す。
金属間化合物の粒子の円形度係数は、以下のように測定した。上述のように観察視野をとり、観察視野ごとに、一つの観察視野内に存在する各粒子の面積及び周囲長を測定し、各粒子について円形度係数=4π×面積/(周囲長)2を算出して、当該粒子の円形度係数とし、全ての粒子の円形度係数の平均を当該観察視野の円形度係数とする。そして、各試料のそれぞれについて、15個の観察視野の円形度係数の平均を表2に示す。
巣の最大径は、以下のように測定した。上述のように観察視野をとり、観察視野ごとに、一つの観察視野内に存在する巣を目視により確認し、巣が存在した場合、各巣の最大径長さ(巣の任意の二点を結ぶ線分の最大長さ)をそれぞれ求め、これらの最大値を当該観察視野の巣の最大径とする。そして、各試料のそれぞれについて、15個の観察視野の巣の最大径の平均を表2に示す。
上記平均粒径などの金属間化合物の粒子に関する各パラメータや巣の最大径、後述する酸化膜の均一度は、市販の画像処理装置を利用することで、容易に算出することができる。また、上記粒子は、EDS(エネルギー分散型X線分析装置:Energy Dispersive X-ray Spectrometer)により組成を調べられ、Mg17Al12やAl(MnFe)といったAlやMgを含む金属間化合物であった。当該金属間化合物の存在は、X線回折などを利用して組成及び構造を調べることでも判別することができる。また、試料の断面に対してEDS分析などを利用することで、マグネシウム合金板の表面に存在する物質の組成が調べられ、試料No.1〜6,100は、マグネシウム合金板の表面に酸化膜が存在し、この酸化膜は、主としてマグネシウム酸化物(水酸化物を含む)で形成されていることが確認できた。
腐食減量は、塩水腐食試験として、JIS H 8502(1999)に準拠して塩水噴霧試験を行い、以下のように測定した。試料No.1〜6,100の研磨板により試験片を作製し、試験片の質量(初期値)を測定した後、試験片において予め設定した大きさの試験面が露出するように、試験片の不要な箇所にマスキングを施す。マスキングした試験片を腐食試験装置内に装入し、当該装置底面に対して所定の角度に傾斜するように立て掛けて配置する(ここでは装置底面と試験片とがつくる角:70°〜80°)。試験液(5質量%のNaCl水溶液、温度:35±2℃)を霧状にして試験片に吹き掛けた状態で所定時間保持する(ここでは96時間)。所定時間経過後、試験片を腐食試験装置から取り出して、マスキングを除去した後、JIS Z 2371(2000)の参考表1に記載の方法に準拠して、試験片に生成された腐食生成物をクロム酸溶解により除去する。腐食生成物を除去した後の試験片の質量を測定し、この質量と上記初期値との差分を試験片の試験面の面積で除した値を腐食減量(μg/cm2)とする。
Mg溶出量は、塩水腐食試験として、以下の条件で塩水浸漬試験を行い、以下のように測定した。試料No.1〜6,100の研磨板により試験片を作製し、試験片において予め設定した大きさの試験面が露出するように、試験片の不要な箇所にマスキングを施す。マスキングした試験片を試験液(5質量%のNaCl水溶液、液量:試験片の試験面の面積(露出面積)を(A)cm2としたとき、(A)×20mlとする)に完全に浸漬した状態で所定時間保持する(ここでは96時間、空調下の室温(25±2℃)に保持)。所定時間経過後、試験液を回収し、ICP-AES(誘導結合プラズマ発光分光)分析法にて、試験液中のMgイオン量を定量し、Mgイオン量を試験片の試験面の面積で除した値をMg溶出量(μg/cm2)とする。
腐食反応抵抗は、以下のように測定した。試料No.1〜6,100の研磨板により試験片を作製し、試験片において予め設定した大きさの試験面、及び端子接続部分が露出するように試験片の不要な箇所にマスキングを施す。上記端子接続部分に端子を取り付け、この試験片を下記の参照電極及び対極と共に、試験液((0.1質量%のNaCl)+Mg(OH)2飽和水溶液)に完全に浸漬する(空調下の室温(25±2℃))。そして、浸漬直後において、下記の条件にて試験片の交流インピーダンスを測定する。
測定装置:ポテンショスタット/ガルバノスタット+周波数応答解析装置
上記測定装置は、市販の装置(例えば、北斗電工株式会社製 HZ-3000、株式会社エヌエフ回路設計ブロック製 FRA5080など)を利用することができる。
電極:3電極式、参照電極:Ag/AgCl、対極:Pt
測定条件:電流変調:10μA/cm2、測定周波数範囲:10kHz〜100mHz
交流インピーダンスの測定結果を解析して、腐食反応抵抗を算出する。具体的には、各周波数で計測したインピーダンス(Ω)を複素平面上にプロットし(ナイキスト線図を作図し)、高周波領域に観察される半円の直径(=電荷移動抵抗)を読み取る。この電荷移動抵抗を腐食反応抵抗とする。上記塩水腐食試験を行う前に測定した腐食反応抵抗を初期値(腐食試験:O時間)の腐食反応抵抗とする。
塩水腐食試験として上述した塩水浸漬試験を行った試験片に同様に端子を取り付けて、同様にして交流インピーダンスを測定し、腐食反応抵抗を読み取る。このときの腐食反応抵抗を腐食試験後(ここでは96時間の塩水浸漬試験後)の腐食反応抵抗とする。
酸化膜の均一度は、以下のようにして測定した。上述した塩水浸漬試験を行った試料について、上述のように断面及び観察視野をとり、観察視野ごとに、一つの観察視野内の酸化膜の厚さを測定して当該厚さの最大値tmax及び最小値tminを抽出し、均一度:tmax/tminを算出し、この均一度を当該観察視野の均一度とする。そして、各試料のそれぞれについて、15個の観察視野の均一度の平均を表3に示す。
表2,3に示すように、試料No.1〜6は、塩水腐食試験後において酸化膜の均一度が30以下であり、全体に亘って均一的な厚さの酸化膜を具えているのに対し、ダイカスト材からなる試料No.100は、酸化膜の厚さにばらつきが大きい。そして、これら試料No.1〜6は、ダイカスト材からなる試料No.100と比較して、腐食減量が非常に少なく、Mgの溶出量も少なく、耐食性に優れることが分かる。
図1の各写真において、主として灰色で示される下方側の領域がマグネシウム合金、その上の黒っぽい色(濃い色)の領域が酸化膜、酸化膜の上の白い帯状のものは、断面の切り出しのために設けた保護層、主として黒色で表される上方側の領域は背景である。また、図2の各写真(塩水腐食試験後)において、下方側の領域がマグネシウム合金、上方側の多孔質状の領域が断面切り出しのために設けた保護層、マグネシウム合金と保護層との間に存在する濃い色の領域が酸化膜である。
図1の塩水腐食試験前の写真に示すように、耐食性に優れる試料No.1は、塩水腐食試験前においてマグネシウム合金板の表面の実質的に全面に亘って均一的な厚さの酸化膜が形成されていることが分かる。これに対して、ダイカスト材の試料No.100は、塩水腐食試験前においてマグネシウム合金板の表面全体に亘って酸化膜が存在せず、酸化膜が局所的に存在していることが分かる。また、試料No.100に存在する酸化膜は、マグネシウム合金板の内部に向かって浸食するように形成されていることが分かる。
更に、図1,2に示すように、耐食性に優れる試料No.1は、塩水腐食試験後においても酸化膜が均一的な厚さで生成されていることが分かる。このことから、試料No.1〜6は、酸化膜が均一な厚さで経時的に形成され、この酸化膜の存在により、優れた耐食性を有すると考えられる。これに対して、ダイカスト材の試料No.100は、塩水腐食試験の前後において酸化膜の厚さが不均一であり、耐食性に劣る箇所で腐食が進行し、図1(II)に示すような孔食が生じている。そして、図1の写真から、塩水腐食試験後においてマグネシウム合金表面の実質的に全体に亘って酸化膜が均一的な厚さで生成されれば、塩水腐食試験前においてもマグネシウム合金表面の実質的に全体に亘って酸化膜が均一的に存在すると推測できる。従って、試料No.1〜6は、塩水腐食試験前においてもマグネシウム合金表面の実質的に全体に亘って酸化膜が均一的に存在していたことで、耐食性に優れていると考えられる。
更に、上記耐食性に優れる試料No.1〜6は、図3(I)〜図3(VI)に示すように金属間化合物からなり、丸みを帯びた小さな粒子が分散して存在しており、ダイカスト材の試料No.100は、図3(VII)に示すように異形で大きな粒子がまばらに存在していることが分かる。表2に示すように試料No.1〜6に存在する金属間化合物は、平均粒径が0.5μm以下といった微細であり、円形度係数が1に近く、隣り合う粒子間の間隔もダイカスト材の試料No.100よりも小さく、面積割合が11面積%以下であることからも、試料No.1〜6は、金属間化合物が均一的に分散していることが裏付けられる。
試料No.1〜6は、上述した均一的な厚さの酸化膜の存在に加えて、上述した微細な金属間化合物の粒子が分散した組織が腐食要因に対するバリアとなることで、耐食性に優れると考えられる。これに対して、ダイカスト材の試料No.100は、大きな金属間化合物がまばらに存在する組織から構成されることで、試料No.1〜6のようなバリアが存在せず、耐食性に劣ると考えられる。
また、上記耐食性に優れる試料No.1〜6の中には、塩水腐食試験後の交流インピーダンスによる腐食反応抵抗が当該試験前よりも高く、耐食性が向上している試料が存在する。このように塩水腐食試験後の方が耐食性に優れる結果となったのは、上述のように腐食試験中に酸化膜が均一的な厚さに成長したことが原因の一つであると考えられる。従って、耐食性に優れることの一つの指標として、塩水腐食試験後の腐食反応抵抗が上昇することを利用できると考えられる。
更に、上記耐食性に優れる試料No.1〜6は、例えば、図4(I)の試料No.1の写真に示すように、巣が実質的に観察されないのに対し、ダイカスト材の試料No.100は、大きな巣が多数存在することが分かる。試料No.1〜6は、大きな巣が存在しないことでも耐食性に優れると考えられる。
[試験例2]
本発明者らは、上記耐食性に優れる試験例1の試料No.1〜6のうち、塩水腐食試験後の腐食反応抵抗が当該試験前よりも高く、耐食性が向上している試料について更に詳しく分析した。
試験例1の試料No.3から試験片を作製し、その試験片に塩水腐食試験として塩水浸漬試験を行った。塩水浸漬試験は、試験片を試験液(5質量%のNaCl水溶液)に完全に浸漬した状態で保持する(空調下の室温(25±2℃)に保持)ことにより行った。そして、所定時間の塩水浸漬試験を行った後、試験片を試験液から取り出し、試験片の断面をAES(Auger Electron Spectroscopy:オージェ電子分光法)により元素組成分析した。AESによる分析は、Arイオンビームを用いたクロスセクションポリッシャー加工により試験片の断面出しを行い、その断面をAESにより板の表面から内部領域に向かって板厚(深さ)方向に線分析(ラインスキャン)することにより行った。これにより、試験開始から所定時間経過後の試料No.3のマグネシウム合金板表面の元素組成分析ができる。0.5時間(30分間)、24時間、96時間の塩水浸漬試験を行ったそれぞれの試験片をAESにより分析した結果を、図5,6に示す。なお、上記したAES分析は、試験片を30°傾斜させた状態で行った。
図5(I)は、0.5時間の塩水浸漬試験後のAES分析結果であり、図5(II)は、24時間の塩水浸漬試験後のAES分析結果であり、図6は、96時間の塩水浸漬試験後のAES分析結果である。図5,6において、横軸は表面からの距離(深さ)[μm]であり、縦軸は原子数濃度[%]であり、実線が第一状態のMg、細破線が第二状態のMg、一点鎖線が第一状態のAl、細二点鎖線が第二状態のAl、細実線が酸素(O)をそれぞれ示す。なお、上記したAES分析は、試験片を30°傾斜させた状態で行っているので、実際の表面からの距離(深さ)は、図5,6の横軸の値を1.15倍(2/√3倍)した値である。ここで、第一状態のMgとは、水酸化物(例、Mg(OH)2)や酸化物(例、MgO)の状態で存在するMgのことであり、第二状態のMgとは、マグネシウム合金(マトリクス相)の状態で存在するMgのことである。一方、第一状態のAlとは、水酸化物(例、Al(OH)2)や酸化物(例、AlOX)の状態で存在するAlのことであり、第二状態のAlとは、マトリクス相中に固溶状態、或いはMg17Al12といった金属間化合物の状態で存在するAlのことである。このような元素、組成又は化学結合状態などは、AES分析においてオージェ電子のエネルギーを測定することにより、区別することが可能である。
図5(I)から、0.5時間の塩水浸漬試験後の試験片(マグネシウム合金板)では、表面領域(腐食層;表面(0)から0.17μm(横軸の0.15μm)付近の範囲)において、上記第一状態のMg濃度が高いMgリッチな酸化膜領域が存在していると考えられる。また、表面から0.17μm(横軸の0.15μm)付近より深くなると、上記第一状態のMg濃度が減少し、上記第二状態のMg濃度が増加しており、この範囲は腐食の影響が及んでいない内部領域と考えられる。一方で、表面領域(腐食層)において、上記第一状態のAl濃度が高いAlリッチなAl高濃度領域が存在しているのか明確には認められない。また、内部領域(表面から0.17μm(横軸の0.15μm)付近より深い範囲)では、上記第二状態のAl濃度がAZ91合金相当のAl濃度と略一致していることが分かる。
図5(II)から、24時間の塩水浸漬試験後の試験片(マグネシウム合金板)では、表面領域(腐食層;表面(0)から0.12μm(横軸の0.1μm)付近の範囲)において、上記第一状態のAl濃度が上記第一状態のMg濃度よりも高く、Mgリッチな酸化膜領域は認められない。また、表面から0.23μm(横軸の0.2μm)付近より深くなると、上記第一状態のMg濃度が減少し、上記第二状態のMg濃度が増加しており、この範囲が内部領域と考えられる。表面領域(腐食層)における第一状態のAl濃度は、内部領域(表面から0.23μm(横軸の0.2μm)付近より深い範囲)における第二状態のAl濃度に比較して高く、表面領域にAlリッチなAl高濃度領域が存在していると考えられる。
図6から、96時間の塩水浸漬試験後の試験片(マグネシウム合金板)では、表面領域(腐食層;表面(0)から0.69μm(横軸の0.6μm)付近の範囲)において、最表面側からMgリッチな酸化膜領域とAlリッチなAl高濃度領域とが認められる。具体的には、最表面領域(表面(0)から0.35μm(横軸の0.3μm)付近の範囲)では、上記第一状態のMg濃度が高く、Mgリッチな酸化膜領域が存在し、最表面領域の内側領域(表面から0.35〜0.69μm(横軸の0.3〜0.6μm)付近の範囲)では、上記第一状態のAl濃度が高く、AlリッチなAl高濃度領域が存在していると考えられる。また、表面から0.69μm(横軸の0.6μm)付近より深くなると、上記第二状態のMg濃度が増加しており、この範囲が内部領域と考えられる。つまり、この試験片のAESによる分析の結果から、この試験片では、表面に形成された腐食層において、酸化膜領域とAl高濃度領域とが形成されていることが分かる。
次に、本発明者らは、以上の分析結果を基に、Al高濃度領域が生成されるメカニズムについて、以下のように考察した。
図7は、塩水浸漬試験中におけるAlを含有するマグネシウム合金板の腐食進行過程を説明する模式図である。試験開始から初期の段階では、マグネシウム合金板10の表面から、Mg-Al系合金マトリクス中のMgが試験液(NaCl水溶液)中にイオン21(Mg2+)状態で溶出する(図7(I)参照)。ここで、MgはAlに比べてイオン化傾向が高いことから、Mgが優先的に溶出するものと考えられる。そして、マグネシウム合金板10の表面において、Mgが溶出したことにより相対的にAl濃度が上昇し、腐食の進行と共にAlの高濃度化が進む。
試験開始から時間の経過と共に、Mgの溶出量が増え、板10の表面近傍において、Mgイオン21の濃度が上昇し、加えてpHが上昇する(図7(II)参照)。また、板10表面のAlが高濃度化した領域では、Alの一部が試験液中の水酸化イオン(OH-)と結合して水酸化物となり、この水酸化物の一部は試験液中の酸素と反応して酸化物となる。これにより、板10表面にAlリッチなAl高濃度領域11が生成される。
更に時間の経過により、板10の表面近傍におけるpHの上昇、及びMgイオン21の過飽和に伴い、板10の最表面(Al高濃度領域11表面)にMgイオン21がMg酸化物22として析出する(図7(III)参照)。このMg酸化物22は、試験液中では主として水酸化物の状態で析出し、試験後、大気中に曝されることで時間と共に水酸化物が部分的或いは完全に酸化物に変化するものと考えられる。
最終的に、板10の最表面(Al高濃度領域11表面)にMg酸化物が析出することにより、Mgリッチな酸化膜領域12が生成される(図7(VI)参照)。よって、表面に形成された腐食層において、Mg酸化物の酸化膜領域12とAl高濃度領域11とが生成されることになる。例えば、Al高濃度領域11は、Mg酸化物の酸化膜領域12と初期のマグネシウム合金板10の部分(即ち、腐食の影響が及んでいない板の内部領域)との間に層状に出現する場合が考えられる。
Al高濃度領域11は、腐食の進行を抑制する一定の効果があると推測されるが、緻密な不動態膜ではないので、時間の経過と共に腐食が進行し、Mg酸化物の酸化膜領域12が形成されたものと推測される。また、この現象は、AZ91合金でなくてもAlを含有するマグネシウム合金板であれば、合金のAl含有量の違いによってAl高濃度領域におけるAl濃度の程度に差が生じるなど考えられるが、起こり得る。さらに、Al高濃度領域は、表面の実質的に全面に亘って酸化膜が均一的な厚さで生成されるマグネシウム合金板であれば、酸化膜と同じように均一的な厚さで生成されると推測される。つまり、Al高濃度領域は、酸化膜の均一度と同じ均一度の範囲(1以上30以下)を満たすと考えられる。
上述した実施形態は、本発明の要旨を逸脱することなく、適宜変更することが可能であり、上述した構成に限定されるものではない。例えば、マグネシウム合金の組成(特にAlの含有量)、マグネシウム合金板の厚さ、製造条件などを適宜変更することができる。
本発明マグネシウム合金部材は、各種の電気・電子機器類の構成部材、特に、携帯用や小型な電気・電子機器類の筐体、高強度であることが望まれる種々の分野の部材に好適に利用することができる。本発明マグネシウム合金板は、上記本発明マグネシウム合金部材の素材に好適に利用することができる。
10 マグネシウム合金板(内部領域)
11 Al高濃度領域 12 酸化膜領域
21 Mgイオン 22 Mg酸化物

Claims (8)

  1. AZ91合金からなるマグネシウム合金板であって、
    前記板中にAl及びMgの少なくとも一方を含む金属間化合物の粒子が分散して存在しており、
    前記金属間化合物の粒子の平均粒径が0.5μm以下であり、
    前記板の断面において、前記金属間化合物の粒子の合計面積の割合が3.46%以上11%以下であり、
    前記板の表面の実質的に全面に亘って、均一的な厚さの酸化膜を具えるマグネシウム合金板。
  2. 前記板に塩水腐食試験を行った後の当該板の断面において、当該板の表面に具える酸化膜の最大厚さをtmax、最小厚さをtmin、最大厚さtmaxと最小厚さtminとの比tmax/tminを均一度とするとき、均一度が1以上30以下である請求項1に記載のマグネシウム合金板。
  3. 前記板に塩水腐食試験を行った後における交流インピーダンスによる腐食反応抵抗が当該塩水腐食試験前における交流インピーダンスによる腐食反応抵抗よりも大きい請求項1又は2に記載のマグネシウム合金板。
  4. 前記板の断面において、前記金属間化合物の粒子の個数が0.1個/μm2以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載のマグネシウム合金板。
  5. 前記板に存在する巣の最大径が5μm以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載のマグネシウム合金板。
  6. 前記板は、Alを7.5質量%超12質量%以下含有する請求項1〜5のいずれか1項に記載のマグネシウム合金板。
  7. 前記板に塩水腐食試験を行った後の当該板の表面に形成された腐食層において、酸化膜領域とAl高濃度領域とを有する請求項1〜6のいずれか1項に記載のマグネシウム合金板。
  8. 請求項1に記載のマグネシウム合金板に塑性加工が施されてなるマグネシウム合金部材。
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