JP5522000B2 - マグネシウム合金部材 - Google Patents

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本発明は、携帯用電気機器の筐体などの部品に適したマグネシウム合金部材に関するものである。特に、耐食性に優れるマグネシウム合金部材に関するものである。
携帯電話やノート型パーソナルコンピュータといった携帯用電気機器類の筐体などの部品の構成材料として、軽量で、比強度、比剛性に優れるマグネシウム合金が検討されている。マグネシウム合金からなる部品は、ダイカスト法やチクソモールド法による鋳造材(ASTM規格のAZ91合金)が主流であり、近年、ASTM規格のAZ31合金に代表される展伸用マグネシウム合金からなる板にプレス加工を施した部品が使用されつつある。特許文献1,2では、AZ91合金やAZ91合金と同程度のAlを含有する合金からなる圧延板を特定の条件で作製し、この板にプレス加工を施すことを開示している。
マグネシウム合金は、一般に耐食性が低いため、特許文献1に開示されるように耐食性を向上するために化成処理や陽極酸化処理といった表面処理が施される。また、合金組成を調整することでも、耐食性を向上することができる。例えば、AZ91合金は、AZ31合金よりもAlを多く含有することで、耐食性に優れる。
国際公開2008/029497号 国際公開2009/001516号
しかし、マグネシウム合金部材の耐食性を更に向上することが望まれている。
上述のように、表面処理を行ったり、Alなどの添加元素の含有量を増やしたりすることでマグネシウム合金自体の耐食性を向上することができる。しかし、これらの対策だけでは、マグネシウム合金部材の耐食性の更なる向上が難しい。
本発明者らが調べたところ、化成処理といった表面処理をマグネシウム合金からなる素材に施した場合、素材の組成や素材の製造方法によって、上記表面処理により形成された防食層の状態が異なり、その結果、耐食性の優劣が生じる、との知見を得た。
具体的には、AZ31合金の展伸材、AZ91合金の鋳造材に化成処理を施したところ、AZ31合金の展伸材には、AZ91合金の鋳造材に比較して防食層が非常に厚く形成されていた。しかし、この防食層は、ポーラス(多孔質状)であった。そのため、腐食液がマグネシウム合金からなる素材まで浸透して耐食性に劣ると考えられる。また、防食層が厚過ぎることで、防食層内の応力によりクラック(亀裂)が生じ易くなって割れが生じ、腐食液が上記素材に浸透することで、AZ31合金の展伸材は、AZ91合金の鋳造材に比較して耐食性に劣ると考えられる。
一方、AZ91合金の鋳造材に形成された防食層は、AZ31合金の展伸材に形成された防食層よりも薄いものの厚いため、上述のようにクラックの発生により耐食性に劣ると考えられる。
他方、特許文献1,2に開示されるAZ91合金などからなるマグネシウム合金板に化成処理を施した場合、上記鋳造材と比較して防食層が薄く形成され、クラックが生じ難いものの、更なる耐食性の向上が望まれる。
そこで、本発明の目的は、耐食性に優れるマグネシウム合金部材を提供することにある。
本発明者らは、マグネシウム合金自体の耐食性を高めるために、マグネシウム合金として、Alを7.5質量%超含有するものを対象とし、このマグネシウム合金を用いて種々の製造方法により板を作製した。そして、得られた板に化成処理を施して、防食層の状態、及び耐食性を調べたところ、所定の製造条件で作製したマグネシウム合金板は、耐食性に優れる、との知見を得た。
具体的には、防食層の形成後において耐食性が高いマグネシウム合金部材を調べたところ、マグネシウム合金からなる基材は、例えば、Mg17Al12、Al6(MnFe)といったMg及びAlの少なくとも一方を含む金属間化合物からなる析出物がある程度存在しており、かつこの析出物の粒子が比較的小さく、均一的に分散しており、5μm以上といった粗大な粒子が実質的に存在していなかった。そこで、上記析出物の粒径及びその存在量を制御する、即ち、上述のような粗大な析出物が生成されないようにすると共に、ある程度の量の微細な析出物を生成する製法を検討した。その結果、鋳造以降、特に溶体化処理以降、最終製品となるまでの製造工程において、マグネシウム合金からなる素材を特定の温度域に保持する総合計時間が特定の範囲となるように製造条件を制御することが好ましい、との知見を得た。
また、上記微細な金属間化合物が均一的に分散した素材を基材として化成処理を施し、防食層を形成したところ、基材側の層が比較的疎であり、表面側の層が緻密である二層構造の防食層が形成される、との知見を得た。
本発明は、上記知見に基づくものである。本発明のマグネシウム合金部材は、Alを7.5質量%超12質量%以下含有するマグネシウム合金からなる基材と、この基材の表面に化成処理により形成された防食層とを具える。上記基材中には、Al及びMgの少なくとも一方を含む金属間化合物の粒子が分散して存在しており、これら金属間化合物の粒子の平均粒径が0.05μm以上1μm以下である。また、上記マグネシウム合金部材の断面において、上記金属間化合物の粒子の合計面積の割合が1%以上20%以下である。上記防食層は、上記基材側に形成された下層と、上記下層の上に形成された表面層とを具える二層構造であり、上記表面層は、上記下層よりも緻密である。
上記本発明マグネシウム合金部材を製造する場合、基材として、以下のマグネシウム合金板を好適に利用することができる。このマグネシウム合金板は、Alを7.5質量%超12質量%以下含有するマグネシウム合金からなり、当該マグネシウム合金板中にAl及びMgの少なくとも一方を含む金属間化合物の粒子が分散して存在している。これら金属間化合物の粒子の平均粒径は0.05μm以上1μm以下である。また、上記マグネシウム合金板の断面において、上記金属間化合物の粒子の合計面積の割合が1%以上20%以下である。
本発明マグネシウム合金部材に具える基材や上記マグネシウム合金板は、粗大な析出物が実質的に存在せず、非常に微細な析出物が分散した組織を有する。このような組織により、粗大な析出物の存在や過剰に析出物を析出したことによるマグネシウム合金中のAlの固溶量の低下が少なく、Alの固溶量の低下に伴うマグネシウム合金自体の耐食性の低下が少ない、と考えられる。
そして、上述のように微細な析出物が分散した組織を有する上記基材や上記マグネシウム合金板に化成処理により防食層を形成した場合、緻密な表面層により、腐食液が素材まで浸透することを抑制してマグネシウム合金部材の耐食性を高められる。かつ、基材側の比較的疎な下層により、ヒートショックなどの衝撃を受けた場合でも、防食層が剥離し難い。また、この防食層は比較的薄く、クラックが生じ難い。そのため、本発明マグネシウム合金部材は、耐食性に優れる上記緻密な表面層を長期に亘り維持することができ、高い耐食性を有することができる。
このように本発明マグネシウム合金部材は、Alの固溶量が多いことにより母材自体の耐食性を高めると共に、耐食性及び耐剥離性、耐クラック性に優れる防食層を具えることで、従来のマグネシウム合金部材と比較して、耐食性を向上することができる。
また、微細な析出物が分散して存在することで、析出物の分散強化による板自体の剛性の向上、及びAlの固溶量の低下を抑制したことによる強度の維持により、上記基材や上記マグネシウム合金板は、衝撃を受けても凹み難く、耐衝撃特性にも優れる。更に、粗大な析出物が少ない上記基材や上記マグネシウム合金板は、塑性加工性にも優れ、プレス加工を容易に施すことができる。なお、上記マグネシウム合金板にプレス加工といった塑性変形を施した場合、塑性変形に伴う変形が少ない箇所(代表的には平坦な部分)では、上記マグネシウム合金板の組織を概ね維持する。
上記特定の組織を有する上記基材やマグネシウム合金板は、例えば、以下の各工程を具える製造方法により、製造することができる。
準備工程:Alを7.5質量%超12質量%以下含有するマグネシウム合金からなり、連続鋳造法で製造した鋳造板を準備する工程。
溶体化工程:上記鋳造板に350℃以上の温度で溶体化処理を施して、固溶板を製造する工程。
圧延工程:上記固溶板に温間圧延を施し、圧延板を製造する工程。
特に、溶体化工程以降の製造工程において、加工対象である素材板(代表的には圧延板)を150℃以上300℃以下の温度域に保持する総合計時間を0.5時間以上12時間以内とすると共に、300℃超の温度に加熱しないように、上記素材板の熱履歴を制御する。
更に、上記製造方法は、上記圧延板に温間矯正を施す矯正工程を具えることができる。この矯正工程では、上記圧延板を100℃以上300℃以下に加熱した状態で矯正を行う。特に、この矯正工程における圧延板を150℃以上300℃以下の温度域に保持する時間が、上記総合計時間に含まれるようにする。
上記本発明マグネシウム合金部材は、例えば、素材として、上記マグネシウム合金板の製造方法により得られた圧延板や、上記矯正工程により得られた矯正板を用意し、この素材に塑性加工を施す塑性加工工程と、この素材に化成処理を施す表面処理工程とを具える製造方法により、製造することができる。表面処理工程後に塑性加工を行うと、素材表面を損傷して表面処理の効果を損なう恐れがあることから、上記表面処理工程より先に上記塑性加工工程を行う方が好ましい。
上述のように、溶体化処理を行うことでマグネシウム合金中にAlを十分に固溶させられる。そして、溶体化処理以降の製造工程において、マグネシウム合金からなる素材を、析出物が析出され易い温度域(150℃〜300℃)に保持する時間を特定の範囲内とすることで、析出物を析出させつつ、その量を特定の範囲内とすることができる。また、上記特定の温度域に保持する時間を制御することで、上記析出物の過度な成長を抑制して、微細な析出物が分散した組織とすることができる。
これに対して、例えば、圧延工程において、所望の板厚になるまで適宜な加工度(圧下率)で複数回(多パス)の圧延を行うときに、加工対象(溶体化処理後の素材。例えば、最終圧延が施されるまでの間の圧延板)を300℃超に加熱すると、塑性加工性を高められ、圧延を行い易い。しかし、300℃超の加熱を行うと、Alの含有量が7.5質量%超と多いことから上記金属間化合物といった析出物が析出され易くなったり、析出した析出物が成長して粗大な粒子になり易くなったりする。析出物が過剰に生成されたり、粗大に成長すると、マグネシウム合金中のAlの固溶量が減少する。そして、Alの固溶量の低下により、マグネシウム合金自体の耐食性の低下を招く。また、Alの固溶量の低下により、防食層を形成しても、耐食性の更なる向上が難しい。
更に、圧延途中や圧延後、プレス加工といった塑性加工後に、再結晶化によるプレス加工性の向上や、塑性加工に伴う歪の除去などを目的として、熱処理を施すことが行われている。これらの熱処理の加熱温度は、Alの含有量が多いほど高くする傾向にある。例えば、特許文献1では、AZ91合金に対して、圧延後の熱処理(最終焼鈍)を300〜340℃で行うことを提案している。300℃超の加熱温度で熱処理を行うことでも、析出物が成長して粗大な粒子になり易くなる。これらのことから、上述のように素材板の熱履歴を制御する。
以下、本発明をより詳細に説明する。
[マグネシウム合金部材]
<基材>
(組成)
上記基材を構成するマグネシウム合金は、Mgに添加元素を含有した種々の組成のもの(残部:Mg及び不純物)が挙げられる。特に、本発明では、添加元素に少なくともAlを7.5質量%超12質量%以下含有するMg-Al系合金とする。Alを7.5質量%超含有することで、マグネシウム合金自体の耐食性を高められる上に、強度、耐塑性変形性といった機械的特性にも優れる。Al量が多いほど、耐食性に優れる傾向にあるが、12質量%を超えると塑性加工性の低下を招き、圧延時などに素材を高温に加熱する必要があるため、上限を12質量%とする。
Al以外の添加元素は、Zn,Mn,Si,Ca,Sr,Y,Cu,Ag,及び希土類元素(Yを除く)から選択された1種以上の元素が挙げられる。これらの元素を含む場合、その含有量は、0.01質量%以上10質量%以下、好ましくは0.1質量%以上5質量%以下が挙げられる。より具体的なMg-Al系合金は、例えば、ASTM規格におけるAZ系合金(Mg-Al-Zn系合金、Zn:0.2〜1.5質量%)、AM系合金(Mg-Al-Mn系合金、Mn:0.15〜0.5質量%)、Mg-Al-RE(希土類元素)系合金などが挙げられる。より具体的には、Alを8.3〜9.5質量%、Znを0.5〜1.5質量%含有するMg-Al系合金、代表的にはAZ91合金が挙げられる。
(形態)
上記基材は、代表的には板状材であり、塑性加工が施されていない形態(マグネシウム合金板)とすることができる。その他、この板状材に、曲げ加工や絞り加工といったプレス加工などの塑性加工を施した成形体を基材としてもよい。所望の用途に応じて、基材の大きさ(面積)や厚さを選択するとよい。特に、厚さが2.0mm以下、更に1.5mm以下、とりわけ1mm以下であると、薄型、軽量の部品(代表的には筐体)に好適に利用することができる。
上記成形体は、代表的には、天板部(底面部)と、天板部の周縁から立設される側壁部とを有する断面]状の箱体や]状の枠体、天板部が円板状で、側壁部が円筒状の有蓋筒状体などが挙げられ、形状・大きさは特に問わない。上記天板部などは、ボスなどを一体に成形又は接合していたり、表裏に貫通する孔や厚さ方向に凹んだ溝を有していたり、段差形状になっていたり、塑性加工や切削加工などにより局所的に厚さが異なる部分を有していてもよい。
(金属間化合物)
上記基材は、平均粒径が0.05μm〜1μmといった微細で、MgやAlを含む金属間化合物、代表的には、Mg17Al12からなる粒子(Mg17Al12に限定されない)が分散した組織を有し、基材を100面積%とするとき、上記金属間化合物が1面積%〜20面積%存在する。平均粒径が0.05μm未満、又は金属間化合物の含有量が1面積%未満では、上記基材に析出物が十分に存在しておらず、AZ91合金の鋳造材のように単一の厚い防食層が形成され、耐食性に劣る。平均粒径が1μm超、又は金属間化合物の含有量が20面積%超では、上記基材中に析出物が過剰に存在したり、粗大な析出物が存在することで、Alの固溶量が低減されて耐食性の低下を招く上に、ポーラスな防食層のみが形成されることでも耐食性の低下を招く。より好ましい平均粒径は、0.1μm以上0.5μm以下、より好ましい金属間化合物の含有量は、3面積%以上15面積%以下、更に5面積%以上10面積%以下である。
上述した基材に関する事項は、形態の一部を除いて、上記マグネシウム合金板にも共通する。
<防食層>
(防食層の形成メカニズム)
上記基材の表面に、化成処理により形成された二層構造の防食層を具える。例えば、マンガン(Mn)及びカルシウム(Ca)を含有するリン酸溶液を化成処理液に用いて、マグネシウム合金からなる素材に防食層を形成する場合、化成処理液に上記素材を浸漬すると、素材中のMgが溶出して、素材近傍の化成処理液の酸濃度(ペーハー)が変化し、化成処理液中のMn(H2PO4)2やCa(H2PO4)2が加水分解する。この加水分解により、MnとCaとのリン酸被膜(防食層)が形成される。この防食層は、Mgの溶出量に依存し、Mgの溶出量が多いほど(或いはMgの溶出速度が速いほど)、急速に厚く形成される傾向にある。
素材がAZ31合金から構成される場合、素材のAlの含有量(固溶量)が少なく、素材表面はMgに富んだ状態であるため、Mgの溶出量が多く、急速に防食層が形成されることで、ポーラスで厚い層になると考えられる。
一方、素材がAZ91合金から構成される場合、素材のAlの含有量(固溶量)が多いことから、AZ31合金の場合と比較してMgの溶出量が少なく、AZ31合金と比較して薄い防食層が形成されると考えられる。しかし、詳しいメカニズムは定かでないがAZ91合金からなる鋳造材では、防食層がポーラスで比較的厚くなる。他方、AZ91合金からなる圧延材であっても、圧延時の素材の温度が高かったり、最終焼鈍時の温度が高いことで150℃〜300℃の保持時間が長かったり、300℃超の熱履歴を受けた場合(以下、この素材を比較圧延材と呼ぶ)、析出物が成長したり、過剰に析出物が析出して、素材のAlの固溶量が少なくなる、即ち、素材表面のMgが相対的に多くなることで、Mgの溶出量が比較的多くなり、ポーラスで比較的薄い防食層が形成されると考えられる。
これに対し、上記基材や上記マグネシウム合金板では、素材中に微細な析出物が特定の範囲で存在することで、素材中のAlの固溶量が比較的多く、Mgの溶出を上記比較圧延材よりも少なくすることができる。従って、防食層における基材側にポーラスな被膜が形成され、その表面に緻密な被膜が形成される、と考えられる。
(構造)
本発明マグネシウム合金部材に具える防食層の表面層は、基材側の下層よりも緻密である、即ち、下層は、表面層よりもポーラスである。上記防食層の疎密とは、例えば、本発明マグネシウム合金部材の断面の顕微鏡観察像において、上記防食層を256階調のグレースケールで表したとき、上記表面層は、階調のばらつき(標準偏差)が6以上10以下を満たし、上記下層は、階調のばらつき(標準偏差)が13以上17以下を満たすことが挙げられる。上記階調のばらつきの値が小さいほど、気孔が少なく緻密であり、ばらつきの値が大きいほど、ポーラス(疎)であることを示す。256階調のグレースケールによる表示は、市販の画像解析装置を利用することで簡単に求められる。本発明マグネシウム合金部材に具える防食層がこのような緻密層と疎層との二層構造であることで、上述のように耐食性に優れると共に、耐クラック性や耐剥離性にも優れる。
(厚さ)
本発明マグネシウム合金部材に具える防食層は、AZ31合金といったAlの含有量が少ないマグネシウム合金からなる素材に形成された防食層と比較して非常に薄い。具体的には、上記二層構造の防食層の合計厚さが50nm以上300nm以下であり、ポーラスな下層が合計厚さの60〜75%程度を占め、表面層が残りを占める。防食層がこのように薄くても本発明マグネシウム合金部材は、上述のように耐食性に優れる上に、防食層が薄いことで、防食層にクラックが生じ難くい。また、防食層が薄いことで、最終製品の寸法や外観に影響を与え難い。防食層が薄過ぎると、耐食性の低下を招き易く、厚過ぎても上述のようにクラックが生じて防食性の低下を招く。防食層の合計厚さは、50nm以上200nm以下がより好ましい。防食層の厚さは、化成処理の処理時間やAlの含有量などを調整することで変化させられる。
(組成)
上記防食層の構成材質は、化成処理液によって変化させられる。化成処理液は、従来、クロム(Cr)を含むもの(クロメート処理液)が使用されているが、環境保全などの観点から、ノンクロム系処理液を用いることが望ましい。ノンクロム系処理液は、例えば、リン酸溶液が挙げられる。より具体的には、リン酸マンガン・カルシウム系溶液、リン酸カルシウム系溶液などが挙げられる。リン酸マンガン・カルシウム系溶液を用いた場合、マンガン及びカルシウムのリン酸化合物を主成分とする防食層が形成される。
上記防食層において基材側に形成される下層は、表面層と比較して、Alの含有割合が高く、Alを含有する基材との密着性に優れる。また、ポーラスであることで、上述のようにヒートショックなどの衝撃を緩和して、この衝撃による防食層の剥離を抑制することができる。一方、緻密な表面層は、下層と比較してマンガン、カルシウムの含有割合が高い上に緻密であることで、酸などの腐食液と接触しても酸化され難く、またこの腐食液が基材まで浸透することを抑制して、高い耐食性を実現することができる。
[製造方法]
(準備工程)
鋳造板は、双ロール法といった連続鋳造法、特に、WO/2006/003899に記載の鋳造方法で製造した鋳造板を利用することが好ましい。連続鋳造法は、急冷凝固が可能であるため、酸化物や偏析などを低減でき、圧延性に優れる鋳造板が得られる。鋳造板の大きさは特に問わないが、厚過ぎると偏析が生じ易いため、10mm以下、特に5mm以下が好ましい。
(溶体化工程)
上記鋳造板に溶体化処理を施して、組成を均質化すると共に、Alといった元素を固溶させた固溶板を製造する。溶体化処理は、保持温度を350℃以上、特に、保持温度:380℃〜420℃、保持時間:60分〜2400分(1時間〜40時間)とすることが好ましい。また、保持時間は、Alの含有量が高いほど長くすることが好ましい。更に、上記保持時間からの冷却工程において、水冷や衝風といった強制冷却などを利用して、冷却速度を速めると、粗大な析出物の析出を抑制することができて好ましい。
(圧延工程)
上記固溶板に圧延を施すにあたり、素材(固溶板や圧延途中の板)を加熱することで塑性加工性を高める。但し、素材の加熱温度が高過ぎると、150℃〜300℃の温度域の保持時間が過度に長くなり、上述のように析出物の過度な成長や過度の析出を招いたり、素材の焼き付きが発生したり、素材の結晶粒が粗大化して圧延後の板の機械特性が低下したりする。そのため、圧延工程において素材の加熱温度も300℃以下とする。特に、150℃以上280℃以下が好ましい。複数回(多パス)の圧延を施すことで、所望の板厚にできると共に、素材の平均結晶粒径を小さくしたり、圧延やプレス加工といった塑性加工性を高められる。圧延は、公知の条件、例えば、素材だけでなく圧延ロールも加熱したり、特許文献1に開示されるノンプレヒート圧延や制御圧延などを組み合わせて利用してもよい。
多パスの圧延を行う場合、上述した150℃〜300℃の温度域の保持時間が上記総合計時間に含まれる範囲で、パス間に中間熱処理を行ってもよい。中間熱処理までの塑性加工(主として圧延)により加工対象である素材に導入された歪みや残留応力、集合組織などを除去、軽減すると、その後の圧延で不用意な割れや歪み、変形を防止して、より円滑に圧延を行える。中間熱処理を行う場合も保持温度を300℃以下とする。好ましい保持温度は、250℃以上280℃以下である。
(矯正工程)
上記圧延工程により得られた圧延板に、特許文献1に記載されるように最終熱処理(最終焼鈍)を施すことができるが、この最終熱処理を施さず、上述のように温間矯正を施す方がプレス加工といった塑性加工性に優れて好ましい。矯正は、特許文献2に記載されるようなロールレベラなどを用い、圧延板を100℃〜300℃、好ましくは150℃以上280℃以下に加熱して行うことが挙げられる。このような温間矯正を行った矯正板にプレス加工といった塑性加工を施すと、塑性加工時に動的再結晶化が生じることで、塑性加工性に優れる。
(塑性加工工程)
上記圧延板や、上記圧延板に上記最終熱処理を施した熱処理板、上記圧延板に上記矯正を施した矯正板にプレス加工といった塑性加工を施す場合、200℃〜300℃の温度域で行うと、素材の塑性加工性を高められて好ましい。塑性加工時において素材を上記200℃〜300℃に保持する時間は、非常に短く、例えば、プレス加工では60秒以内であり、上述したような析出物の粗大化などの不具合は実質的に生じないと考えられる。なお、上記マグネシウム合金板は、上記圧延板、熱処理板、矯正板のいずれかの形態が挙げられる。
上記塑性加工後に熱処理を施して、塑性加工により導入された歪みや残留応力の除去、機械的特性の向上を図ることができる。この熱処理条件は、加熱温度:100〜300℃、加熱時間:5分〜60分程度が挙げられる。但し、この熱処理においても150℃〜300℃の温度域の保持時間が上記総合計時間に含まれるようにする。
(素材を特定の温度域に保持する総合計時間)
上記基材や上記マグネシウム合金板を製造するにあたり、上記溶体化工程以降、最終製品を得るまでの工程において、素材を150℃以上300℃以下の温度域に保持する総合計時間が0.5時間〜12時間となるように制御すると共に、素材を300℃超の温度に加熱しないことを最大の特徴とする。従来、溶体化処理以降、最終製品までの工程において、素材を150℃〜300℃の温度域に保持する総合計時間をどの程度にするか十分に検討されていなかった。これに対して、上述のように析出物が生成され易かったり、生成物が成長し易い上記温度域の保持時間を特定の範囲に制御することで、特定量の微細な析出物が分散して存在する組織を有する上記基材や上記マグネシウム合金板を得ることができる。
上記150℃〜300℃の温度域に保持する総合計時間が0.5時間時間未満では、析出物が十分に析出されず、12時間を超えたり、素材を300℃超に加熱して圧延などすると、粒径が1μm以上の粗大な析出物が存在した組織や20面積%超といった過剰に析出物が存在した組織が得られる。好ましくは、温度域:150℃以上280℃以下、総合計時間:0.5時間以上(より好ましくは1時間以上)6時間以下となるように、圧延工程における各パスの加工度や圧延工程の総加工度、中間熱処理時の条件、矯正時の条件などを制御する。また、Al量が多いほど、析出物が析出し易いため、上記総合計時間は、Alの含有量に応じても調整することが好ましい。
(表面処理工程)
本発明マグネシウム合金部材に具える基材は、代表的には、上述した圧延板、上記圧延板に上記最終熱処理を施した熱処理板、上記圧延板に上記矯正を施した矯正板、これらの板に塑性加工を加えた成形体のいずれかの形態が挙げられる。この基材を素材として、化成処理を施す。化成処理は、公知の化成処理液を適宜用いて、公知の条件により行うとよい。上述のようにノンクロム処理液であるリン酸マンガン・カルシウム系溶液などを用いることが好ましい。
上記化成処理は、上記塑性加工前の素材に施してもよいが、塑性加工後の成形体に施すと、化成処理により形成された防食層が塑性加工中に損傷することを防止することができる。
上記化成処理後、保護や装飾などを目的として塗装を行うと、耐食性を更に向上したり、商品価値を高めたりすることができる。
本発明マグネシウム合金部材は、耐食性に優れる。
図1は、マグネシウム合金板の顕微鏡写真(5000倍)であり、図1(I)は、試料No.1、図1(II)は、試料No.110を示す。 図2は、防食層を具えるマグネシウム合金部材の断面の顕微鏡写真であり、図1(I)は、試料No.1(250,000倍)、図1(II)は、試料No.110(100,000倍)を示す。
以下、本発明の実施の形態を説明する。
[試験例]
マグネシウム合金板を作製して基材とし、この基材の表面に化成処理を施して防食層を具えるマグネシウム合金部材を作製し、基材の金属組織、防食層の形態、耐食性を調べた。
[試料No.1]
試料No.1のマグネシウム合金部材は、鋳造→溶体化処理→圧延(温間)→矯正(温間)→研磨→防食層の形成、という工程により作製する。
この試験では、AZ91合金相当の組成(Mg-9.0%Al-1.0%Zn(全て質量%))を有するマグネシウム合金からなり、双ロール連続鋳造法により得られた鋳造板(厚さ4mm)を複数用意した。得られた各鋳造板に、400℃×24時間の溶体化処理を施した。溶体化処理を施した固溶板に以下の圧延条件で、厚さが0.6mmになるまで複数回圧延を施した。
(圧延条件)
加工度(圧下率):5〜40%/パス
板の加熱温度:250〜280℃
ロール温度:100〜250℃
試料No.1では、圧延工程の各パスにおいて、圧延対象となる素材の加熱時間及び圧延速度(ロール周速)を調整することで、素材が150℃〜300℃の温度域に保持される総合計時間が3時間となるようにした。
得られた圧延板を220℃に加熱した状態で温間矯正を施して、矯正板を作製した。温間矯正は、特許文献2に記載される歪付与手段を利用して行った。
得られた矯正板に、更に、#600の研磨ベルトを用いて湿式ベルト式研磨を施して、矯正板の表面を研磨により平滑化して、研磨板を作製した。
得られた研磨板に、脱脂→酸エッチング→脱スマット→表面調整→化成処理→乾燥という手順で防食層を形成した。具体的な条件を以下に示す。得られたマグネシウム合金部材を試料No.1とする。
脱脂:10%KOHとノニオン系界面活性剤0.2%溶液の攪拌下、60℃,10分
酸エッチング:5%リン酸溶液の攪拌下、40℃,1分
脱スマット:10%KOH溶液の攪拌下、60℃,10分
表面調整:pH8に調整した炭酸水溶液の攪拌下、60℃,5分
化成処理:ミリオン化学株式会社製商品名 グラインダー MC-1000(リン酸カルシウム・マンガン皮膜化成剤)、処理液温度35℃,浸漬時間60秒
乾燥:120℃,20分
[試料No.100]
上述した試料No.1と同様の鋳造材(但し、厚さ4.2mm)を用意し、以下の条件で圧延を行った後、矯正(温間)を行わず、矯正(温間)に代えて320℃×30分の熱処理を行ったものを作製した。この熱処理板に、試料No.1と同様にして研磨した後、防食層の形成を行った。得られたマグネシウム合金部材を試料No.100とする。
(圧延条件)
[粗圧延] 厚さ4.2mm→1mm
加工度(圧下率):20〜35%/パス
板の加熱温度:300〜380℃
ロール温度:180℃
[仕上げ圧延] 厚さ1mm→0.6mm
加工度(圧下率):平均7%/パス
板の加熱温度:220℃
ロール温度:170℃
なお、試料No.100において溶体化処理以降の150℃〜300℃の温度域に保持した総合計時間は、15時間である。
[試料No.110]
市販のAZ31合金からなる展伸材(厚さ:0.6mmの板)を準備し、試料No.1と同様にして研磨を施した後、防食層の形成を行った。得られたマグネシウム合金部材を試料No.110とする。
[試料No.120]
市販のAZ91合金からなる鋳造材(厚さ:0.6mmの板)を準備し、試料No.1と同様にして研磨を施した後、防食層の形成を行った。得られたマグネシウム合金部材を試料No.120とする。
上述のようにして作製した試料No.1の基材(ここでは、矯正板)、試料No.100の基材(ここでは、熱処理板)、準備した試料No.110のAZ31合金の展伸材に対して、以下のようにして金属組織を観察し、析出物を調べた。
上記基材及び展伸材をそれぞれ板厚方向に任意に切断して断面をとり、その断面を走査型電子顕微鏡:SEM(5000倍)で観察した。図1(I)に試料No.1の観察像、図1(II)に試料No.110の観察像を示す。図1において薄い灰色(白色)の小さい粒状体が析出物である。
上記断面に対する析出物の粒子の合計面積の割合を以下のようにして求めた。上記基材及び展伸材に対してそれぞれ、上述のようにして5つの断面をとり、各断面の観察像から任意に3つの視野(ここでは22.7μm×17μmの領域)をそれぞれとる。観察視野ごとに、一つの観察視野内に存在する全ての析出物の粒子の面積をそれぞれ調べて合計面積を算出し、一つの観察視野の面積(ここでは385.9μm2)に対する当該観察視野中の全ての粒子の合計面積の割合:(粒子の合計面積)/(観察視野の面積)を求め、この割合を当該観察視野の面積割合とする。そして、上記基材及び展伸材のそれぞれについて、15個の観察視野の面積割合の平均を表1に示す。
上記断面に対する析出物の粒子の平均粒径を以下のようにして求めた。上記観察視野ごとに、一つの観察視野内に存在する各粒子の面積の等価面積円の直径をそれぞれ求めて粒径のヒストグラムを作成し、粒径の小さい粒子から、当該観察視野内の全ての粒子の合計面積の50%に達する粒子の粒径、つまり50%粒径(面積)を当該観察視野の平均粒径とする。そして、上記基材及び展伸材のそれぞれについて、15個の観察視野の平均粒径の平均を表1に示す。
上記粒子の面積や直径は、市販の画像処理装置を利用することで、容易に算出することができる。また、析出物をEDS(エネルギー分散型X線分析装置:Energy Dispersive X-ray Spectrometer)により調べたところ、Mg17Al12といったAlやMgを含む金属間化合物であった。上記金属間化合物の粒子の存在は、X線回折などを利用して組成及び構造を調べることでも判別することができる。
また、得られた各試料(マグネシウム合金部材)をそれぞれ板厚方向に任意に切断して断面をとり、その断面において、化成処理により形成された防食層を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した。図2(I)に試料No.1の観察像(250,000倍)、図2(II)に試料No.110の観察像(100,000倍)を示す。図2(I)において上方の黒い領域及び図2(II)において上方の白い領域は、断面をとる際に形成した保護層である。
上記防食層の観察像を256階調のグレースケール(ここでは中間値法)で表したときの中央値とばらつきとを調べた(n=1)。その結果を表1に示す。グレースケールの中央値及びばらつきは、市販の画像処理装置を用いることで簡単に求められる。ばらつきの値が小さい場合、気孔が少なく緻密であり、ばらつきの値が大きい場合、気孔が多くポーラスであることを示す。
また、上記各試料の観察像を用いて、防食層の厚さ(ここでは当該観察像の任意の5点を選択し、この5点厚さの平均厚さ)を調べた。その結果を表1に示す。
更に、得られた各試料について耐食性試験を行って耐食性を調べた。耐食性試験は、JIS Z 2371に準じて行い(塩水噴霧時間:96時間、35℃)、塩水噴霧の前後における重量の変化量(腐食減量)を測定した。そして、変化量が0.6mg/cm2超を×、0.6mg/cm2以下を○、0.4mg/cm2未満を◎と評価した。その結果を表1に示す。
表1に示すように、溶体化処理以降において、素材が150℃〜300℃の温度域に保持される総合計時間を特定の範囲とすると共に、300℃超の加熱を行わないことで、図1(I)に示すように、微細な金属間化合物の粒子が分散した組織を有するマグネシウム合金板(試料No.1の基材)が得られることが分かる。より具体的には、この基材は、金属間化合物の粒子の平均粒径が0.05μm以上1μm以下、金属間化合物の粒子の合計面積の割合が1%以上20%以下を満たす。
そして、この試料No.1の基材上に設けられた防食層は、図2(I)に示すように膜厚方向の基材側に形成された比較的厚い下層と、表面側に形成された比較的薄い表面層との二層構造であることが分かる。特に、下層は、表面層よりも階調(中央値)が低く、ばらつきの値が大きく、ポーラスであり、表面層は、下層よりも階調が高く、ばらつきの値が小さく、緻密であることが分かる。また、防食層の組成をEDX(エネルギー分散型X線分光装置)により調べたところ、マンガン及びカルシウムのリン酸化合物が主成分であり、基材側の下層は、表面層よりもAlの含有割合が高く、表面層は、下層よりもマンガン及びカルシウムの含有割合が高くなっていた。
上記構成を具える試料No.1は、表1に示すように耐食性に優れていることが分かる。
一方、AZ31合金の展伸材を用いた試料No.110は、図1(II)に示すように、析出物が非常に少なく、防食層は、図2(II)に示すように、ポーラスな上に、非常に厚いことが分かる。また、表1に示すように試料No.110は、耐食性に劣ることが分かる。この理由は、試料No.1のような緻密な表面層が防食層に存在せず、ポーラスな上に、厚膜であることでクラックが生じるなどして腐食液が浸透し易くなったことに加えて、基材のAlの含有量(固溶量)が少ないためであると考えられる。
他方、AZ91合金の鋳造材を用いた試料No.120は、防食層が試料No.1の表面層よりもポーラスである上に、試料No.1よりも厚くなっていた。また、試料No.120は、試料No.1よりも耐食性に劣ることが分かる。この理由は、厚膜であることでクラックが生じるなどして、腐食液が浸透し易くなったためと考えられる。
また、表1に示すように300℃超の熱処理を施した試料No.100では、上記試料No.1の表面層よりもポーラスな防食層となっており、試料No.1よりも耐食性に劣ることが分かる。この理由は、緻密な表面層が実質的に存在しないことで、試料No.1よりも腐食液が浸透し易くなったためと考えられる。
以上の結果から、Alの含有量が7.5質量%超のマグネシウム合金からなり、溶体化処理以降の製造工程において、150℃〜300℃の温度域に保持する総合計時間を0.5時間〜12時間とすると共に、300℃超の加熱を行わないようにして基材を作製し、この基材に化成処理を施すことで、耐食性に優れるマグネシウム合金部材が得られることが分かる。
なお、上述した実施形態は、本発明の要旨を逸脱することなく、適宜変更することが可能であり、上述した構成に限定されるものではない。例えば、マグネシウム合金の組成(特にAlの含有量)、マグネシウム合金板の厚さ、防食層の構成材料などを適宜変更することができる。
本発明マグネシウム合金部材は、各種の電気機器類の部品、特に、携帯用や小型な電気機器類の筐体、高強度であることが望まれる種々の分野の部品に好適に利用することができる。

Claims (4)

  1. ASTM規格におけるAZ91合金のマグネシウム合金からなる基材と、
    の基材の表面に化成処理により形成された防食層と、を具え、
    前記基材中に、Al及びMgの少なくとも一方を含む金属間化合物の粒子が分散して存在しており、
    前記金属間化合物の粒子の平均粒径が0.05μm以上1μm以下であり、
    前記マグネシウム合金部材の断面において、前記金属間化合物の粒子の合計面積の割合が1%以上20%以下であり、
    前記防食層は、前記基材側に形成された下層と、前記下層の上に形成されて、前記下層よりも緻密な表面層とを具えるマグネシウム合金部材。
  2. 前記マグネシウム合金部材の断面の顕微鏡観察像において、前記防食層を256階調のグレースケールで表したとき、
    前記表面層は、階調のばらつきが6以上10以下であり、
    前記下層は、階調のばらつきが13以上17以下である請求項1に記載のマグネシウム合金部材。
  3. 前記防食層の合計厚さが50nm以上300nm以下である請求項1又は請求項2に記載のマグネシウム合金部材。
  4. 前記防食層は、リン酸マンガン・カルシウム系溶液で得られると共に、マンガン及びカルシウムのリン酸化合物を含む請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のマグネシウム合金部材。
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