以下に、本発明の実施形態に係る電子部品について説明する。
(第1の実施形態)
(電子部品の構成)
第1の実施形態に係る電子部品について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施形態に係る電子部品10a〜10eの外観斜視図である。図2は、第1の実施形態に係る電子部品10aの積層体12aの分解斜視図である。図3(a)は、図1の電子部品10aをy軸方向から透視した図である。図3(b)は、図1の電子部品10aをx軸方向から透視した図である。図3において、点線は、外部電極14a,14bを示している。以下、電子部品10aの積層方向をz軸方向と定義し、電子部品10aに長辺に沿った方向をx軸方向と定義し、電子部品10aの短辺に沿った方向をy軸方向と定義する。
電子部品10aは、図1及び図2に示すように、積層体12a、外部電極14(14a,14b)、コイル(回路素子)L(図1には図示せず)及びビアホール導体(識別用ビアホール導体)B(図1には図示せず)を備えている。積層体12aは、直方体状をなしており、コイルLを内蔵している。外部電極14aは、x軸方向の負方向側に位置する積層体12aの側面に設けられている。外部電極14bは、x軸方向の正方向側に位置する積層体12aの側面に設けられている。すなわち、外部電極14a,14bは、積層体12aの互いに対向する側面に設けられている。
積層体12aは、図2に示すように、絶縁体層16(16a〜16m)がz軸方向の正方向側からこの順に積層されてなる。絶縁体層16は、磁性体材料(例えば、Ni−Cu−Zn系フェライト)からなり、長方形状をなしている。なお、絶縁体層16は磁性体材料に限らず、非磁性体材料であってもよいし、非磁性体材料と磁性体材料の混合物であってもよい。
コイルLは、図2に示すように、コイル導体(導体層)18(18a〜18g)及びビアホール導体(接続用ビアホール導体)b1〜b6により構成されている。より詳細には、コイルLは、コイル導体18a〜18g及びビアホール導体b1〜b6が接続されることにより構成されており、z軸方向と平行なコイル軸を有する螺旋状のコイルである。
コイル導体18a〜18gはそれぞれ、絶縁体層16d〜16jのz軸方向の正方向側の主面上に設けられている。以下では、コイル導体18a〜18gにおいて、z軸方向の正方向側から平面視したときに、反時計回り方向の上流側の端部を上流端と呼び、反時計回り方向の下流側の端部を下流端と呼ぶ。コイル導体18はそれぞれ、互いに重なり合うことにより長方形状の環状の軌道を形成しており、3/4ターンのターン数を有している線状導体である。すなわち、コイル導体18は、前記軌道の1/4ターン分が切り欠かれた形状をなしている。ただし、z軸方向の最も正方向側に設けられているコイル導体18aの上流端は、絶縁体層16dのx軸方向の負方向側の短辺に引き出されて、外部電極14aと接続されている。同様に、z軸方向の最も負方向側に設けられているコイル導体18gの下流端は、絶縁体層16jのx軸方向の正方向側の短辺に引き出されて、外部電極14bと接続されている。更に、コイル導体18gは、コイル導体18aと同じ形状を有している。そして、コイル導体18gは、絶縁体層16jの対角線C1,C2の交点Pを中心としてz軸周りに180度回転させることによりコイル導体18aと重なるように(積層方向から平面視したときに重なるように)設けられている。なお、コイル導体18のターン数は、3/4ターンに限らない。
ビアホール導体b1〜b6は、絶縁体層16d〜16iをz軸方向に貫通するように設けられており、z軸方向に隣り合っているコイル導体18同士を接続している。具体的には、ビアホール導体b1は、絶縁体層16dをz軸方向に貫通し、コイル導体18aの下流端及びコイル導体18bの上流端に接続されている。ビアホール導体b2は、絶縁体層16eをz軸方向に貫通し、コイル導体18bの下流端及びコイル導体18cの上流端に接続されている。ビアホール導体b3は、絶縁体層16fをz軸方向に貫通し、コイル導体18cの下流端及びコイル導体18dの上流端に接続されている。ビアホール導体b4は、絶縁体層16gをz軸方向に貫通し、コイル導体18dの下流端及びコイル導体18eの上流端に接続されている。ビアホール導体b5は、絶縁体層16hをz軸方向に貫通し、コイル導体18eの下流端及びコイル導体18fの上流端に接続されている。ビアホール導体b6は、絶縁体層16iをz軸方向に貫通し、コイル導体18fの下流端及びコイル導体18gに接続されている。
以上のような構成を有するコイルLは、図3(a)に示すように、y軸方向から平面視したときに、積層体12aの側面の対角線の交点を中心として点対称な構造をなしている。また、コイルLは、図3(b)に示すように、x軸方向から平面視したときに、積層体12aの側面の対角線の交点を通過するy軸方向に平行な直線に関して線対称な構造を有している。よって、X線によりx軸方向又はy軸方向からコイルLの構造を透視しても、電子部品10aの方向を識別することが困難である。
そこで、電子部品10aでは、電子部品10aの方向を識別するためのビアホール導体Bが設けられている。ビアホール導体Bは、コイルLよりもz軸方向の正方向側又は負方向側に設けられている絶縁体層16を、z軸方向に貫通している。本実施形態では、ビアホール導体Bは、コイルLよりもz軸方向の負方向側に設けられている絶縁体層16jをz軸方向に貫通するように設けられている。これにより、図3(a)及び図3(b)に示すように、ビアホール導体Bは、コイル導体18gからz軸方向の負方向側に向かって突出した構造をとっている。
更に、ビアホール導体Bは、コイル導体18gの下流端とは反対側の端部に接続されている。すなわち、ビアホール導体Bは、ビアホール導体b1がコイル導体18aに接続されている位置と同じ位置においてコイル導体18gに接続されている。よって、図2に示すように、絶縁体層16d、コイル導体18a及びビアホール導体b1と、絶縁体層16j、コイル導体18g及びビアホール導体Bは、同じ構造をとっている。
また、ビアホール導体Bは、図2に示すように、z軸方向から平面視したときに、絶縁体層16jの対角線C1,C2の交点Pとは重ならないように設けられている。更に、ビアホール導体Bは、図2に示すように、z軸方向から平面視したときに、絶縁体層16jの長辺に平行であって交点Pを通過する直線C3、及び、絶縁体層16jの短辺に平行であって交点Pを通過する直線C4にも重ならないように設けられている。
(電子部品の製造方法)
以下に、電子部品10aの製造方法について図2を参照しながら説明する。
まず、絶縁体層16となるべきセラミックグリーンシートを準備する。具体的には、酸化第二鉄(Fe2O3)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ニッケル(NiO)及び酸化銅(CuO)を所定の比率で秤量したそれぞれの材料を原材料としてボールミルに投入し、湿式調合を行う。得られた混合物を乾燥してから粉砕し、得られた粉末を800℃で1時間仮焼する。得られた仮焼粉末をボールミルにて湿式粉砕した後、乾燥してから解砕して、フェライトセラミック粉末を得る。
このフェライトセラミック粉末に対して結合剤と可塑剤、湿潤材及び分散剤を加えてボールミルで混合を行い、その後、減圧により脱泡を行う。得られたセラミックスラリーをドクターブレード法により、キャリアシート上にシート状に形成して乾燥させ、絶縁体層16となるべきセラミックグリーンシートを作製する。
次に、絶縁体層16d〜16jとなるべきセラミックグリーンシートのそれぞれに、ビアホール導体b1〜b6,Bを形成する。具体的には、絶縁体層16d〜16jとなるべきセラミックグリーンシートにレーザビームを照射してビアホールを形成する。更に、ビアホールに対して、Ag,Pd,Cu,Auやこれらの合金などの導電性材料からなるペーストを印刷塗布などの方法により充填して、ビアホール導体b1〜b6,Bを形成する。
次に、絶縁体層16d〜16jとなるべきセラミックグリーンシート上に、導電性材料からなるペーストをスクリーン印刷法やフォトリソグラフィ法などの方法で塗布することにより、コイル導体18a〜18gを形成する。該導電性材料からなるペーストは、例えば、Agに、ワニス及び溶剤が加えられたものである。なお、コイル導体18a〜18gを形成する工程とビアホールに対して導電性材料からなるペーストを充填する工程とは、同じ工程において行われてもよい。
次に、絶縁体層16となるべきセラミックグリーンシートを積層して未焼成のマザー積層体を得る。具体的には、絶縁体層16a〜16mとなるべきセラミックグリーンシートを1枚ずつ積層及び仮圧着する。圧着条件は、100トン〜120トンの圧力及び3秒間から30秒間程度の時間である。この後、未焼成のマザー積層体に対して、静水圧プレスにて本圧着を施す。
次に、マザー積層体をカット刃により所定寸法(2.5mm×2.0mm×1.2mm)の積層体12aにカットする。これにより未焼成の積層体12aが得られる。この未焼成の積層体12aには、脱バインダー処理及び焼成がなされる。脱バインダー処理は、例えば、低酸素雰囲気中において500℃で2時間の条件で行う。焼成は、例えば、870℃〜900℃で2.5時間の条件で行う。
以上の工程により、焼成された積層体12aが得られる。積層体12aには、バレル加工が施されて、面取りが行われる。その後、Agを主成分とする導電性材料からなる電極ペーストを、積層体12aの表面に塗布する。そして、塗布した電極ペーストを約800℃の温度で1時間の条件で焼き付ける。これにより、外部電極14となるべき銀電極を形成する。
最後に、銀電極の表面に、Niめっき/Snめっきを施すことにより、外部電極14を形成する。以上の工程を経て、図1に示すような電子部品10aが完成する。なお、電子部品10aを印刷法によって作製してもよい。
(効果)
電子部品10aによれば、以下に説明するように、X線を用いた透視により電子部品10aのz軸方向の方向を識別できる。より詳細には、コイルLは、図3(a)に示すように、y軸方向から平面視したときに、積層体12aの側面の対角線の交点を中心として点対称な構造をなしている。また、コイルLは、図3(b)に示すように、x軸方向から平面視したときに、積層体12aの側面の対角線の交点を通過するy軸方向に平行な直線に関して線対称な構造を有している。よって、ビアホール導体Bが設けられていなければ、x軸方向又はy軸方向からコイルLの構造をX線により透視しても、電子部品10aのz軸方向の方向を識別することが困難である。
そこで、電子部品10aでは、コイルLよりもz軸方向の負方向側に設けられている絶縁体層16jをz軸方向に貫通するビアホール導体Bが設けられている。これにより、図3(a)及び図3(b)に示すように、x軸方向又はy軸方向から積層体12aをX線により透視して、ビアホール導体Bの位置を確認することによって、電子部品10aのz軸方向を識別できるようになる。すなわち、図3(a)及び図3(b)に示す状態を、電子部品10aの正立状態とした場合には、ビアホール導体BがコイルLよりもz軸方向の負方向側に位置しているときには、電子部品10aが正立状態にあることが分かり、ビアホール導体BがコイルLよりもz軸方向の正方向側に位置しているときには、電子部品10aが倒立状態にあることが分かる。その結果、電子部品10aをプリント基板に正確に実装できるようになる。そして、電子部品10aを正確に実装できるので、電子部品10aのコイルLと他のコイルとが正確にカップリング又はデカップリングするようになり、これらのコイルの合成インダクタンスの設定や評価なども正確にできるようになる。
また、電子部品10aでは、以下に説明するように、X線を用いた透視により電子部品10aのz軸方向に加えてx軸方向又はy軸方向の少なくとも一方の方向を識別できる。仮に、ビアホール導体Bが、z軸方向から平面視したときに交点Pと重なっていると、図3(a)及び図3(b)では、積層体12aのx軸方向及びy軸方向の中点においてコイル導体18gからz軸方向の負方向側に突出するようになる。そのため、ビアホール導体Bの位置を確認しても、電子部品10aのx軸方向及びy軸方向の方向を識別できない。
そこで、ビアホール導体Bは、図2に示すように、z軸方向から平面視したときに、絶縁体層16jの対角線C1,C2の交点Pとは重ならないように設けられている。これにより、x軸方向又はy軸方向から積層体12aをX線により透視した場合に、ビアホール導体Bは、図3(a)又は図3(b)の少なくともいずれか一方において、積層体12aのx軸方向又はy軸方向の中点からずれた位置においてコイル導体18gからz軸方向の負方向側に突出するようになる。よって、電子部品10aでは、X線を用いた透視により電子部品10aのx軸方向又はy軸方向の少なくとも一方の方向を識別できる。
更に、電子部品10aでは、以下に説明するように、X線を用いた透視により、電子部品10aのz軸方向に加えてx軸方向及びy軸方向の両方の方向を識別できる。つまり、電子部品10aについて、全方向を識別できる。仮に、ビアホール導体Bが、z軸方向から平面視したときに直線C3又は直線C4と重なっていると、図3(a)又は図3(b)のいずれか一方において、積層体12aのx軸方向又はy軸方向の中点においてコイル導体18gからz軸方向の負方向側に突出するようになる。そのため、ビアホール導体Bの位置を確認しても、電子部品10aのx軸方向又はy軸方向のいずれか一方の方向しか識別できない。
そこで、ビアホール導体Bは、図2に示すように、z軸方向から平面視したときに、直線C3及び直線C4に重ならないように設けられている。これにより、x軸方向又はy軸方向から積層体12aをX線により透視した場合に、ビアホール導体Bは、図3(a)及び図3(b)の両方において、積層体12aのx軸方向及びy軸方向の中点からずれた位置においてコイル導体18gからz軸方向の負方向側に突出するようになる。よって、電子部品10aでは、X線を用いた透視により電子部品10aのz軸方向に加えてx軸方向及びy軸方向の両方の方向を識別できる。
また、電子部品10aでは、絶縁体層16d、コイル導体18a及びビアホール導体b1と、絶縁体層16j、コイル導体18g及びビアホール導体Bは、同じ構造をとっている。よって、絶縁体層16d、コイル導体18a及びビアホール導体b1と、絶縁体層16j、コイル導体18g及びビアホール導体Bとを、同じ工程において作製することが可能となる。その結果、電子部品10aの製造工程が簡素化され、電子部品10aの製造コストが低減されるようになる。
なお、電子部品10aでは、電子部品10aの方向を容易に識別できる。仮に、電子部品10aの方向の識別用に別の導体層を用いることが考えられる。しかしながら、導体層は、x軸方向又はy軸方向に広がっており、導体層を非常に薄く形成した場合は、x軸方向又はy軸方向からX線により透視した際に視認できないおそれがある。一方、電子部品10aでは方向の識別にビアホール導体Bを用いている。ビアホール導体Bは、z軸方向に延在しているので、x軸方向又はy軸方向からX線により透視した際に、導体層に比べて容易に視認できる。よって、電子部品10aでは、電子部品10aの方向を容易に識別することが可能となる。
また、電子部品10aでは、ビアホール導体Bは、z軸方向から平面視したときに、コイル導体18が互いに重なって形成している環状の軌道と重なる位置に設けられている。よって、ビアホール導体Bは、コイルLが発生した磁束を殆ど妨げない。その結果、電子部品10aでは、高いインダクタンス値を得ることが可能である。
(変形例)
以下に、第1の変形例に係る電子部品について図面を参照しながら説明する。図4は、第1の変形例に係る電子部品10bの積層体12bの分解斜視図である。
電子部品10bは、コイル導体18a',18g'の形状において、電子部品10aと相違点を有している。より具体的には、電子部品10aでは、コイル導体18a,18gはそれぞれ、3/4ターンのターン数を有していると共に、絶縁体層16dのx軸方向の負方向側の短辺又は絶縁体層16jの正方向側の短辺に引き出されている。
一方、電子部品10bでは、コイル導体18a',18g'はそれぞれ、ビアホール導体b1,b6との接続点から直線的に、絶縁体層16dのx軸方向の負方向側の短辺又は絶縁体層16jの正方向側の短辺に引き出されている。このような構造を有する電子部品10bも、電子部品10aと同じ作用効果を奏することができる。
次に、第2の変形例に係る電子部品について図面を参照しながら説明する。図5は、第2の変形例に係る電子部品10cの積層体12cの分解斜視図である。
電子部品10cは、絶縁体層16n,16o、コイル導体20a,20g及びビアホール導体b7,b8が追加されている点において、電子部品10aと相違点を有している。より詳細には、絶縁体層16n、コイル導体20a及びビアホール導体b7は、絶縁体層16d、コイル導体18a及びビアホール導体b1と同じ構造を有している。そして、コイル導体20a及びビアホール導体b7が設けられた絶縁体層16nは、絶縁体層16cと絶縁体層16dとの間に設けられている。これにより、コイル導体18aとコイル導体20aとが並列接続されている。絶縁体層16o及びコイル導体20gはそれぞれ、絶縁体層16j及びコイル導体18gと同じ構造を有している。そして、コイル導体20g及びビアホール導体b8が設けられた絶縁体層16oは、絶縁体層16iと絶縁体層16jとの間に設けられている。これにより、コイル導体18gとコイル導体20gとが並列接続されている。
以上のように、コイル導体18aとコイル導体20aとが並列接続されると共に、コイル導体18gとコイル導体20gとが並列接続されることにより、コイルLの直流抵抗が低減される。なお、絶縁体層16j、コイル導体18g及びビアホール導体Bは、絶縁体層16n,16d、コイル導体20a,18a及びビアホール導体b7,b1と比べると、180°反転させた同じ構造を有している。
なお、以上の構成を有する電子部品10cにおいても、電子部品10aと略同じ作用効果を奏することができる。
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る電子部品について図面を参照しながら説明する。図6は、第2の実施形態に係る電子部品10dの積層体12dの分解斜視図である。電子部品10dの外観斜視図については、図1を援用する。
電子部品10dは、図1及び図6に示すように、積層体12d、外部電極14(14a,14b)、コイル(回路素子)L1,L2(図1には図示せず)及びビアホール導体(識別用ビアホール導体)B(図1には図示せず)を備えている。積層体12dは、直方体状をなしており、コイルL1,L2を内蔵している。外部電極14aは、x軸方向の負方向側に位置する積層体12dの側面に設けられている。外部電極14bは、x軸方向の正方向側に位置する積層体12dの側面に設けられている。すなわち、外部電極14a,14bは、積層体12dの互いに対向する側面に設けられている。
積層体12dは、図6に示すように、絶縁体層26(26a〜26l)がz軸方向の正方向側からこの順に積層されてなる。絶縁体層26は、磁性体材料(例えば、Ni−Cu−Zn系フェライト)からなり、長方形状をなしている。
コイルL1は、図6に示すように、コイル導体(導体層)28(28a〜28c)及びビアホール導体(接続用ビアホール導体)b11,b12により構成されている。より詳細には、コイルL1は、コイル導体28a〜28c及びビアホール導体b11,b12が接続されることにより構成されており、z軸方向と平行なコイル軸を有する螺旋状のコイルである。
コイル導体28a〜28cはそれぞれ、絶縁体層26d〜26fのz軸方向の正方向側の主面上に設けられている。コイル導体28はそれぞれ、互いに重なり合うことにより長方形状の環状の軌道を形成している線状導体である。以下では、コイル導体28a〜28cにおいて、z軸方向の正方向側から平面視したときに、反時計回り方向の上流側の端部を上流端と呼び、反時計回り方向の下流側の端部を下流端と呼ぶ。コイル導体28aの上流端は、絶縁体層26dのx軸方向の負方向側の短辺に引き出されて、外部電極14aと接続されている。同様に、コイル導体28cの下流端は、絶縁体層26fのx軸方向の正方向側の短辺に引き出されて、外部電極14bと接続されている。
ビアホール導体b11,b12は、絶縁体層26d,26eをz軸方向に貫通するように設けられており、z軸方向に隣り合っているコイル導体28同士を接続している。具体的には、ビアホール導体b11は、絶縁体層26dをz軸方向に貫通し、コイル導体28aの下流端及びコイル導体28bの上流端に接続されている。ビアホール導体b12は、絶縁体層26eをz軸方向に貫通し、コイル導体28bの下流端及びコイル導体28cの上流端に接続されている。
コイルL2は、図6に示すように、コイル導体(導体層)28(28d〜28f)及びビアホール導体(接続用ビアホール導体)b13,b14により構成されている。より詳細には、コイルL2は、コイル導体28d〜28f及びビアホール導体b13,b14が接続されることにより構成されており、z軸方向と平行なコイル軸を有する螺旋状のコイルである。
コイル導体28d〜28fはそれぞれ、絶縁体層26g〜26iのz軸方向の正方向側の主面上に設けられている。コイル導体28はそれぞれ、互いに重なり合うことにより長方形状の環状の軌道を形成している線状導体である。以下では、コイル導体28d〜28fにおいて、z軸方向の正方向側から平面視したときに、反時計回り方向の上流側の端部を上流端と呼び、反時計回り方向の下流側の端部を下流端と呼ぶ。コイル導体28dの上流端は、絶縁体層26gのx軸方向の負方向側の短辺に引き出されて、外部電極14aと接続されている。同様に、コイル導体28fの下流端は、絶縁体層26iのx軸方向の正方向側の短辺に引き出されて、外部電極14bと接続されている。
ビアホール導体b13,b14は、絶縁体層26g,26hをz軸方向に貫通するように設けられており、z軸方向に隣り合っているコイル導体28同士を接続している。具体的には、ビアホール導体b13は、絶縁体層26gをz軸方向に貫通し、コイル導体28dの下流端及びコイル導体28eの上流端に接続されている。ビアホール導体b14は、絶縁体層26hをz軸方向に貫通し、コイル導体28eの下流端及びコイル導体28fの上流端に接続されている。
以上のようなコイルL1,L2は、外部電極14a,14b間に並列に接続されている。
ところで、電子部品10dのコイルL1,L2は、y軸方向から平面視したときに、積層体12dの側面の対角線の交点を中心として点対称な構造をなしている。よって、X線によりy軸方向からコイルL1,L2の構造を透視しても、電子部品10dの方向を識別することが困難である。
そこで、電子部品10dでは、電子部品10dの方向を識別するためのビアホール導体Bが設けられている。ビアホール導体Bは、コイルL1,L2よりもz軸方向の正方向側又は負方向側に設けられている絶縁体層26を、z軸方向に貫通している。より具体的には、ビアホール導体Bは、コイルL1,L2よりもz軸方向の負方向側に設けられている絶縁体層26iをz軸方向に貫通するように設けられている。これにより、ビアホール導体Bは、コイル導体28fからz軸方向の負方向側に向かって突出した構造をとっている。
以上のような構成を有する電子部品10dにおいても、電子部品10aと略同じ作用効果を奏することができる。また、コイル導体28cの上流端に接続されているビアホール導体B'を設けることにより、絶縁体層26f、コイル導体28c及びビアホール導体B'と、絶縁体層26i、コイル導体28f及びビアホール導体Bとが同じ構造をとっており、製造工程を簡素化することができる。なお、第2の実施形態に係る電子部品10dの製造方法は、電子部品10aの製造方法と同様であるので、説明を省略する。
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態に係る電子部品について図面を参照しながら説明する。図7は、第3の実施形態に係る電子部品10eの積層体12eの分解斜視図である。電子部品10eの外観斜視図については、図1を援用する。
電子部品10eは、図1及び図7に示すように、積層体12e、外部電極14(14a,14b)、コイル(回路素子)L3,L4(図1には図示せず)及びビアホール導体(識別用ビアホール導体)B(図1には図示せず)を備えている。積層体12eは、直方体状をなしており、コイルL3,L4を内蔵している。外部電極14aは、x軸方向の負方向側に位置する積層体12eの側面に設けられている。外部電極14bは、x軸方向の正方向側に位置する積層体12eの側面に設けられている。すなわち、外部電極14a,14bは、積層体12eの互いに対向する側面に設けられている。
積層体12eは、図7に示すように、絶縁体層36(36a〜36m)がz軸方向の正方向側からこの順に積層されてなる。絶縁体層36は、磁性体材料(例えば、Ni−Cu−Zn系フェライト)からなり、長方形状をなしている。
コイルL3は、図7に示すように、コイル導体(導体層)38(38a〜38d)及びビアホール導体(接続用ビアホール導体)b21〜b23により構成されている。より詳細には、コイルL3は、コイル導体38a〜38d及びビアホール導体b21〜b23が接続されることにより構成されており、z軸方向と平行なコイル軸を有する螺旋状のコイルである。
コイル導体38a〜38dはそれぞれ、絶縁体層36d〜36gのz軸方向の正方向側の主面上に設けられている。コイル導体38はそれぞれ、互いに重なり合うことにより長方形状の環状の軌道を形成している線状導体である。以下では、コイル導体38a〜38dにおいて、z軸方向の正方向側から平面視したときに、時計回り方向の上流側の端部を上流端と呼び、時計回り方向の下流側の端部を下流端と呼ぶ。コイル導体38aの上流端は、絶縁体層36dのx軸方向の負方向側の短辺に引き出されて、外部電極14aと接続されている。同様に、コイル導体38dの下流端は、絶縁体層36gのx軸方向の正方向側の短辺に引き出されて、外部電極14bと接続されている。
ビアホール導体b21〜b23は、絶縁体層36d〜36fをz軸方向に貫通するように設けられており、z軸方向に隣り合っているコイル導体38同士を接続している。具体的には、ビアホール導体b21は、絶縁体層36dをz軸方向に貫通し、コイル導体38aの下流端及びコイル導体38bの上流端に接続されている。ビアホール導体b22は、絶縁体層36eをz軸方向に貫通し、コイル導体38bの下流端及びコイル導体38cの上流端に接続されている。ビアホール導体b23は、絶縁体層36fをz軸方向に貫通し、コイル導体38cの下流端及びコイル導体38dの上流端に接続されている。
コイルL4は、図7に示すように、コイル導体(導体層)38(38d〜28g)及びビアホール導体(接続用ビアホール導体)b24〜b26により構成されている。より詳細には、コイルL4は、コイル導体38d〜38g及びビアホール導体b24〜b26が接続されることにより構成されており、z軸方向と平行なコイル軸を有する螺旋状のコイルである。
コイル導体38d〜38gはそれぞれ、絶縁体層36g〜36jのz軸方向の正方向側の主面上に設けられている。コイル導体38はそれぞれ、互いに重なり合うことにより長方形状の環状の軌道を形成している線状導体である。以下では、コイル導体38d〜38gにおいて、z軸方向の正方向側から平面視したときに、時計回り方向の上流側の端部を上流端と呼び、時計回り方向の下流側の端部を下流端と呼ぶ。コイル導体38dの下流端は、絶縁体層36gのx軸方向の正方向側の短辺に引き出されて、外部電極14bと接続されている。同様に、コイル導体38gの上流端は、絶縁体層36jのx軸方向の負方向側の短辺に引き出されて、外部電極14aと接続されている。
ビアホール導体b24〜b26は、絶縁体層36g〜36iをz軸方向に貫通するように設けられており、z軸方向に隣り合っているコイル導体38同士を接続している。具体的には、ビアホール導体b24は、絶縁体層36gをz軸方向に貫通し、コイル導体38dの上流端及びコイル導体38eの下流端に接続されている。ビアホール導体b25は、絶縁体層36hをz軸方向に貫通し、コイル導体38eの上流端及びコイル導体38fの下流端に接続されている。ビアホール導体b26は、絶縁体層36iをz軸方向に貫通し、コイル導体38fの上流端及びコイル導体38gの下流端に接続されている。
以上のようなコイルL3,L4は、外部電極14a,14b間に並列に接続されている。
ところで、電子部品10eのコイルL3,L4は、y軸方向から平面視したときに、積層体12eの側面の対角線の交点を通過するx軸方向に平行な直線に関して線対称な構造をなしている。更に、電子部品10eのコイルL3,L4は、x軸方向から平面視したときに、積層体12eの側面の対角線の交点を通過するy軸方向に平行な直線に関して線対称な構造を有している。よって、X線によりx軸方向又はy軸方向からコイルL3,L4の構造を透視しても、電子部品10eの方向を識別することが困難である。
そこで、電子部品10eでは、電子部品10eの方向を識別するためのビアホール導体Bが設けられている。ビアホール導体Bは、コイルL3,L4よりもz軸方向の正方向側又は負方向側に設けられている絶縁体層36を、z軸方向に貫通している。より具体的には、ビアホール導体Bは、コイルL3,L4よりもz軸方向の負方向側に設けられている絶縁体層36jをz軸方向に貫通するように設けられている。これにより、ビアホール導体Bは、コイル導体38gからz軸方向の負方向側に向かって突出した構造をとっている。
以上のような構成を有する電子部品10eにおいても、電子部品10aと同じ作用効果を奏することができる。なお、第3の実施形態に係る電子部品10eの製造方法は、電子部品10aの製造方法と同様であるので、説明を省略する。
(その他の実施形態)
本発明に係る電子部品は、前記実施形態に係る電子部品10a〜10eに示したものに限らず、その要旨の範囲内において変更可能である。例えば、電子部品10a〜10eでは、ビアホール導体Bは、コイルL,L1〜L4よりもz軸方向の負方向側に設けられているが、コイルL,L1〜L4よりもz軸方向の正方向側に設けられていてもよい。また、ビアホール導体Bは、コイル導体18,28,38に接続されているが、コイル導体18,28,38に接続されていなくてよい。