JP5636140B1 - ピストンリング及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

環状のピストンリング基材と、ピストンリング基材の外周面上に形成されためっき皮膜と、を有するピストンリングが開示される。めっき皮膜は、三価クロム化合物と、pH緩衝剤と、スルファミン酸塩化合物と、アミノカルボニル化合物と、ジカルボン酸及びその塩から選ばれる少なくとも一種を含む錯化剤と、を含有する水溶液である三価クロムめっき液を用いて形成されたクロムめっきである。

Description

本発明は、クロムめっき皮膜を有するピストンリング及びその製造方法に関する。
クロムめっきは、高い硬度と低い摩擦係数を有するので、ピストンリングをはじめとする、耐摩耗性を要する摺動部材に広く用いられている。しかしこのめっきに用いられるめっき液には多量の六価クロムが用いられている。六価クロムは人体への影響が懸念されるので、その懸念の少ない三価クロムを用いためっき液の開発が望まれている。
三価のクロムを用いためっき液として、例えば特許文献1には、塩化クロム六水和物、ホウ酸、グリシン、塩化アンモニウム及び塩化アルミニウム六水和物の組成のめっき液を用いることが記載されている。このめっき液は、良好なめっき表面を得ることができるという利点を有する。しかし、めっき液中の塩化アンモニウムが分解して塩素ガスが発生する可能性があるので、作業環境に悪影響を及ぼすことが懸念される。
また、三価のクロムを用いて形成されためっき皮膜は、膜厚を大きくすることが容易でなく、厚いめっき皮膜が要求されるピストンリング用途では実用的なめっき液を供給できているとは言い難い。これを解決する目的で、特許文献2では、鏡面光沢を有する厚いクロムめっきを電析させるために、アンモニウム源としてスルファミン酸アンモニウムを使用することが記載されている。
特許文献3では三価クロムによる皮膜の耐水性を維持させる目的で、三価のクロムの含有液に尿素を加えることが提案されている。
本出願人も、先に工業的に満足し得る膜厚をもち、耐食性及び耐摩耗性等の皮膜特性に優れたクロムめっきを形成することができる三価クロムめっき液として、三価クロム化合物、pH緩衝剤、アミノカルボン酸化合物、スルファミン酸塩化合物及びアミノカルボニル化合物を含有する水溶液からなる三価クロムめっき液を提案した(特許文献4参照)。
国際公開第2008/136223号 特開平9−95793号公報 特開平6−173027号公報 国際公開第2012/133613号
このように、皮膜特性の向上及び作業環境の改善を求めて、三価クロムめっき液について多くの提案がなされているが、さらなる改良が求められている。
めっき皮膜の耐食性を向上させる方法として、クロムめっき皮膜に積極的に網目状の緻密なマクロクラックを形成し、亀裂が母材に到達すること又は亀裂の溝幅が広がることによるめっき皮膜の物性の劣化を抑制する方法が知られている。
その一方で、マクロクラックはめっき部材の使用中に皮膜の剥離及び崩壊の一つの要因にもなることから、マクロクラックの発生を抑制して耐食性を向上させる検討も行われている。マクロクラックは、めっき操作中は勿論のこと、めっき後に200℃以上の加熱処理条件下でも発生しやすい。
そこで、本発明の目的は、3価クロムめっき液を用いて形成されためっき皮膜を有するピストンリングに関して、200〜300℃程度の高温の加熱処理条件下でもめっき皮膜中のマクロクラックの発生を効果的に抑制し、耐食性及び耐摩耗性等の点でも優れた皮膜特性を達成することにある。
本発明者らは、三価クロムめっき液を用いて形成されるめっき皮膜の特性を更に向上させるべく鋭意研究を重ねた結果、三価クロム化合物、pH緩衝剤、スルファミン酸塩化合物、アミノカルボニル化合物を含む三価クロムめっき液に、更にジカルボン酸及びその塩から選ばれる錯化剤を含有させた三価クロムめっき液を用いてクロムめっきを形成すると、従来の方法に比べて、200〜300℃程度の加熱処理条件下でもめっき皮膜中のマクロクラックの発生をより効果的に抑制でき、耐食性及び耐摩耗性等の皮膜特性にも優れためっき皮膜が形成できることを見出し本発明を完成するに到った。
本発明が提供しようとするピストンリングは、環状のピストンリング基材及び該ピストンリング基材の外周面上に設けられためっき皮膜を有する。当該めっき皮膜は、三価クロム化合物と、pH緩衝剤と、スルファミン酸塩化合物と、アミノカルボニル化合物と、ジカルボン酸及びその塩から選ばれる少なくとも一種を含む錯化剤と、を含有する水溶液である三価クロムめっき液から形成されるクロムめっきである。
本発明によれば、200〜300℃程度の加熱処理条件下でも、ピストンリング表面に設けられためっき皮膜中のマクロクラックの発生をより効果的に抑制でき、また、耐食性及び耐摩耗性等の皮膜特性に優れたクロムめっきを有するピストンリングが提供される。また、本発明のピストンリングのめっき皮膜は、ピストンリング用途に充分な膜厚を有することができる。本発明に係るピストンリングを得るために用いられる三価クロムめっき液は、液中成分の分解によるハロゲンガス等の有害ガスの発生が抑えられるため、長期保存性に優れるとともに、作業環境の改善に寄与することができる。
ピストンリングの一実施形態を示す斜視図及び端面図である。 (a)は実施例1で得られたクロムめっき物における加熱処理後のめっき皮膜の縦断面の走査型電子顕微鏡写真を示す。(b)は比較例1で得られたクロムめっき物における加熱処理後のめっき皮膜の縦断面の走査型電子顕微鏡写真を示す。 実施例2におけるめっき皮膜の縦断面の走査型電子顕微鏡写真である。 実施例4におけるめっき皮膜の縦断面の走査型電子顕微鏡写真である。
以下、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
図1の(a)はピストンリングの一実施形態を示す斜視図であり、図1の(b)は、(a)のピストンリングのI−I方向の端面図である。本実施形態のピストンリング1は、周方向において対向する2つの端部並びに半径方向において対向する内周面及び外周面Sを有する環状のピストンリング基材2と、ピストンリング基材2の外周面Sを覆うめっき皮膜3とを備える。ピストンリング1は、周方向において対向する2つの端部と、半径方向において対向する内周面及び外周面とを有している。ピストンリング1の外周面は、ピストンリングがエンジン等に用いられた際にライナー等の相手材に対して摺動する摺動面である。めっき皮膜3は、以下に説明する三価クロムめっき液を用いて形成されるクロムめっきである。ピストンリング1は、例えば、ピストンリング基材2の外周面S上に、クロムめっき液を用いてめっき皮膜3を形成する工程を備える方法により、製造することができる。めっき皮膜は、ピストンリング基材2の外周面S以外の面上にも設けられていてもよい。
めっき皮膜
ピストンリング基材上にクロムめっきを形成するための三価クロムめっき液は水を媒体として含有する水溶液である。このめっき液は、三価クロム化合物と、pH緩衝剤と、アミノカルボン酸化合物と、スルファミン酸塩化合物と、アミノカルボニル化合物と、カルボン酸及びその塩から選ばれる少なくとも一種の錯化剤とを含有する。
めっき液に含まれる三価クロム化合物としては、クロムの価数が三価である水溶性化合物を特に制限なく用いることができる。そのような化合物としては、例えば塩化クロム、硝酸クロム、硫酸クロム及びリン酸クロムなどの無機酸クロム、乳酸クロム、グルコン酸クロム、グリコール酸クロム、シュウ酸クロム、リンゴ酸クロム、マレイン酸クロム、マロン酸クロム、クエン酸クロム、酢酸クロム及び酒石酸クロムなどの有機酸クロムが挙げられる。これらの三価クロム化合物は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。めっき液中における三価のクロムの濃度は、クロムめっきを首尾よく行い得る点から、めっき液の体積を基準として、0.2〜1.8mol/リットル、又は0.4〜1.4mol/リットルであってもよい。
めっき液に含まれるpH緩衝剤は、クロムめっきを行うときのpHを適切なものにして、クロムめっきを首尾よく行う目的で配合される。この目的に適したpH緩衝剤としては例えばホウ酸、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、硫酸アンモニウム、リン酸、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム、炭酸ナトリウム、及び炭酸水素ナトリウムなどが挙げられる。特にホウ酸、ホウ酸ナトリウム又はホウ酸カリウムを用いることができる。これらの化合物は単独で用いることもでき、あるいは2種以上を組み合わせた緩衝系として用いることもできる。pH緩衝剤の配合量は、めっき液のpHを0.3〜2.0、又は0.4〜1.5に維持し得る量とすることができる。特にpH緩衝剤としてホウ酸を用いると、pH緩衝作用のほかに、還元によって生成する金属クロムの結晶が微細化するという利点がある。
めっき液に含まれるスルファミン酸塩化合物は、めっき液において主として支持電解質としての役割を有し、めっき液の電気伝導度を所定のレベルに高める目的で配合される。スルファミン酸塩化合物は、めっき液のpH緩衝作用も有しているので、先に述べたpH緩衝剤との併用でめっき液のpHが一層安定化する。スルファミン酸塩化合物は、三価のクロムが還元される反応の触媒作用も有し、それによって金属クロムの結晶の微細化作用、及びクロム皮膜の光沢作用が発現する。スルファミン酸塩としては、例えばスルファミン酸アンモニウム、スルファミン酸ナトリウム又はスルファミン酸カリウムを用いることができる。これらの化合物は1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。スルファミン酸塩は、めっき液中の三価のクロム1molに対して、0.3〜2.5mol、特に0.5〜2mol配合されることができる。このような配合量にすることで、電解めっき時の電圧が下がり、めっき液の液温の上昇が抑制されて、めっき皮膜の特性に影響を及ぼす水酸化クロムの生成が抑制されるからである。またクロムめっきの表面調整作用の安定化及びめっき皮膜の析出の安定化を図ることができるからである。同様の理由により、めっき液中のスルファミン酸塩の濃度は、めっき液の体積を基準として、0.4〜2.1mol/リットル、特に0.6〜1.9mol/リットルとすることができる。
めっき液に含まれるアミノカルボニル化合物は、分子中に少なくとも1個のカルボニル基と、少なくとも1個のアミノ基とを有する化合物である。アミノカルボニル化合物は、三価のクロムの還元速度を高める作用を有する。この理由は次のとおりであると考えられる。すなわち、三価のクロムが金属クロムに還元される過程では二価のクロムが生成する。二価のクロムは陰極上や電気二重層の中に吸着された状態で存在していると考えられる。三価のクロムから金属クロムへの還元は、二価のクロムの還元が律速段階になっている。本発明者の検討の結果、アミノカルボニル化合物は、二価のクロムが金属クロムに還元する速度を高める働きを有することが判明した。その結果、三価のクロムが金属クロムに還元する速度が高まったものと本発明者は考えている。
アミノカルボニル化合物は、三価のクロムのオール化(olation)を抑制する作用も有する。三価のクロムが金属クロムに還元される過程では、加水分解とオール化の反応が陰極付近で生じ、金属クロムの電析が阻害されることがある。めっき液中にアミノカルボニル化合物が存在すると、該化合物が三価のクロムと錯体を形成する。この錯形成反応は、三価のクロムのオール化との競争反応になるので、三価のクロムのオール化を最小限に抑えることができる。このことによっても三価のクロムの還元速度が高まる。
これらの有利な作用に加えて、アミノカルボニル化合物は、該化合物に含まれる窒素原子をめっき皮膜に供給して該めっき皮膜を硬質化する作用、及び、めっき液のpHを維持するpH緩衝剤としての作用も有する。
特にアミノカルボニル化合物は、先に説明したスルファミン酸塩化合物と組み合わせて使用することによって顕著な効果を奏する。詳細には次のとおりである。本実施形態のめっき液においてスルファミン酸塩化合物を配合することの利点は上述したとおりであるところ、スルファミン酸塩化合物を用いることに起因してめっき皮膜の電着応力が増大する傾向にある。電着応力の増大はめっき皮膜にクラックを生じさせる原因となる。これに対して、スルファミン酸塩化合物とアミノカルボニル化合物とを共存させると、アミノカルボニル化合物によってクロムの結晶成長速度が速まるので、磁場の発達が阻害され、その結果、電着応力が低下する。これによってめっき皮膜にクラックが発生することが効果的に抑制される。かかる観点から、本実施形態で用いられるアミノカルボニル化合物に対するスルファミン酸塩の配合量はモル比で0.4〜1.5の範囲であってもよい。
本実施形態において用いることのできるアミノカルボニル化合物としては、例えば尿素及びカルバミン酸などの、当該カルボニル基及びアミノ基が結合して形成された少なくとも1個のアミド基を有する化合物が挙げられる。これらの化合物は1種又は2種を組み合わせて用いることができる。特に尿素は、カルボニル基に対するα位の水素の酸性度が高いので、容易に水素を引き抜くことができる。アミノカルボニル化合物は、めっき液中の三価のクロム1molに対して、0.2〜3.0mol、特に0.3〜2.2mol配合されてもよい。これらの配合量は、めっき時におけるめっき液中のクロム錯体の安定化、めっき皮膜の特性に影響を及ぼす水酸化クロムの生成の抑制、皮膜の緻密結晶化作用の促進などの点で特に有利である。同様の理由により、めっき液中のアミノカルボニル化合物の濃度は、0.1〜4.4mol/リットル、特に0.2〜2.5mol/リットルであってもよい。
なお、先に述べた特許文献3にも、三価のクロムのめっき液に、アミノカルボニル化合物の一種である尿素を配合させることが記載されている。しかし、同文献において尿素を用いる理由は、尿素を分解させてアンモニアを生成させ、アンモニアによってめっき皮膜の耐水性を向上させることにある(特許文献3の段落[0033])。したがって同文献に記載のめっき液には尿素自体は存在していないか、又は存在していたとしてもその量は微量であると考えられる。また、同文献はクロメート化成処理液に関するものであり、本実施形態のめっき液とは、尿素の役割が全く相違している。
めっき液に含まれるジカルボン酸又はその塩から選ばれる錯化剤は、めっき液中において三価のクロムと錯体を形成し、めっき液の安定化を図る目的、及びクロムめっきを首尾よく行う目的で配合される。
本出願人らは、先にこの種の機能を持つ薬剤としてアミノカルボン酸化合物を用いていたが、本実施形態では、ジカルボン酸又はその塩から選ばれる錯化剤を用いることで、アミノカルボン酸化合物を用いたものに比べて、200〜300℃程度の加熱処理条件下でもマクロクラックの発生をより効果的に抑制でき、また、より優れた耐食性及び耐摩耗性等の皮膜特性を有するめっき皮膜を形成することができる。ジカルボン酸は分子中に2個のカルボキシル基を有する化合物である。ジカルボン酸の例としては、マロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、酒石酸、及び蓚酸、コハク酸等が挙がられる。また、本実施形態において、ジカルボン酸は、マロン酸二ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム及び酒石酸ナトリウム等のアルカリ金属塩等の塩の形態であってもよい。これらの錯化剤は1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本実施形態で使用する錯化剤は、これらの中、炭素数2〜3のジカルボン酸又はその塩を含むことができる。特にマロン酸によれば、めっき皮膜中のマクロクラックの発生の抑制効果が特に高く、また耐食性及び耐摩耗性等の皮膜特性の点でもより一層優れためっき皮膜を形成することができる。
ジカルボン酸又はその塩から選ばれる錯化剤は、めっき液中の三価のクロム1molに対して、0.01〜0.8mol、特に0.05〜0.6mol配合されていてもよい。これらの配合量は、安定したクロム錯体のめっき液が得られ、適正な電解めっきを行うことができる点から有利である。同様の理由により、めっき液中のジカルボン酸又はその塩の濃度は、0.01〜0.8mol/リットル、特に0.05〜0.5mol/リットルであってもよい。
上述の各成分を有する本実施形態のめっき液によれば、三価のクロムが金属クロムに還元される速度が高く、めっき皮膜中に見られるマクロクラックの発生をより効果的に抑制しながら、工業的に満足し得る膜厚を有するめっき皮膜を容易に形成することができる。前記のアミノカルボニル化合物に由来する窒素原子がめっき皮膜中に取り込まれる結果、めっき皮膜の硬度が高まったり、耐食性や耐摩耗性等が高まったりするという有利な効果も奏される。本実施形態に係るめっき液を用いて形成されたクロムめっき皮膜の場合、錯化剤としてジカルボン酸又はその塩を用いることで、めっき皮膜中に有機物が含有されにくくなり、200〜300℃程度の加熱処理条件下でもマクロクラックの発生がより効果的に抑制される。更に、本実施形態のピストンリングを得るために使用されるめっき液には、従来のめっき液に配合されていた成分である塩化アンモニウムを配合する必要がないので、塩化アンモニウムの分解に起因して生成する塩素ガスの発生を防止することができ、めっき作業の環境が改善される。この観点から、本実施形態のめっき液は、塩化アンモニウムを始めとするハロゲン化アンモニウムを含有していなくてもよい。例えば、めっき液におけるハロゲン化アンモニウムの濃度が、めっき液の体積を基準として、0.1mol/リットル以下であってもよい。
更に本実施形態のピストンリングを得るために用いられるめっき液にセラミック粒子を配合することもできる。セラミック粒子は、金属クロムの電析過程においてめっき皮膜中に取り込まれる。セラミック粒子は、主としてめっき皮膜中の粒界又は欠陥に存在し、それによってクラックの伝播が抑えられ、疲労、破壊、及び剥離が効果的に緩和される。また、表面に露出したセラミックス粒子は、相手摺動面との摩擦及び摩耗作用において粒子自身が摺動面として相手摺動面と接触作用し、耐摩耗性及び耐焼付き性の向上や油膜形成の助けとなる。セラミック粒子はその平均粒径が0.2〜12μm、特に0.4〜6.0μm、とりわけ0.5〜3.0μmであってもよい。セラミック粒子の平均粒径は、例えばレーザー法によって測定することができる。
本実施形態のめっき液に配合されるセラミック粒子の平均粒径が前記の範囲内であると、めっき皮膜中に取り込まれたセラミック粒子の平均粒径は、通常、0.2〜8.0μm、0.3〜5.0μm、又は0.5〜3.0μmとなる。これにより、先に述べた疲労や破壊、剥離が効果的に緩和される等の効果が一層顕著となり得る。
粒径に関連して、セラミック粒子はその形状が、相手摺動面との摩擦や摩耗作用の向上の点から、球状等の形状であってもよい。
セラミック粒子としては、三価のクロムの還元に悪影響を及ぼさないものであればその種類に特に制限はない。めっき皮膜への取り込まれやすさの点からは、めっき液中でのゼータ電位が20〜100mV、特に40〜70mVであるものを用いることができる。そのようなセラミック粒子としては例えば、Al23、Si34、AlN、Cr32、B4C、TiC、WC、TiO2、Cr23、c−BN、Fe34などの粒子が挙げられる。これらのセラミック粒子は1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
セラミック粒子は、本実施形態のめっき液中に、5〜100g/リットル、特に10〜60g/リットルとなるように配合されることにより、めっき液の流動性が好適になるので、めっき皮膜へのセラミック粒子の取り込み量を容易に適正量とすることができる。
セラミック粒子は一般的に比重が大きいことから、めっき液中において沈降しやすい。また、粒径によってはセラミック粒子どうしがめっき液中において凝集することもある。これらのことを防止する観点から、めっき液中にセラミック粒子を配合する場合には、セラミック粒子とともに、凝集防止剤として塩化アルミニウムを配合することができる。各種の界面活性剤を凝集防止剤としてめっき液に配合することもできる。界面活性剤としては、モノアルキル硫酸塩及びアルキルポリオキシエチレン硫酸塩等のアニオン性界面活性剤、アルキルトリメチルアンモニウム塩及びジアルキルジメチルアンモニウム塩等のカチオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル及び脂肪酸ソルビタンエステル等のノニオン性界面活性剤等が挙げられる。
これらの凝集防止剤のうち塩化アルミニウムは、セラミック粒子のゼータ電位をコントロールして粒子の分散性を向上させたり、粒子どうしの凝集を防止したりする有利な効果を発現する。また、セラミック粒子がめっき皮膜中へ均一に取り込まれやすくもなる。これらの効果を一層顕著なものとする観点から、塩化アルミニウムは、めっき液中の三価のクロム1molに対して、0.005〜0.5mol、特に0.01〜0.3mol配合されてもよい。同様の理由により、めっき液中の塩化アルミニウムの濃度は、めっき液の体積を基準として、0.02〜0.5mol/リットル、特に0.05〜0.3mol/リットルであってもよい。
本実施形態のピストンリングを得るために使用されるめっき液には水溶性有機溶剤を配合することもできる。水溶性有機溶剤の配合によって、バリや欠けの発生を効果的に防止できる。また、めっき液中に、先に述べたセラミック粒子が配合されている場合には、該粒子の分散性が向上する。これらの観点から、水溶性有機溶剤は、めっき液中の三価のクロム1molに対して、0.4〜2.1mol、特に0.6〜1.3mol配合されてもよい。水溶性有機溶剤としては、例えばグリセリン、ポリエチレングリコール、エタノール、メタノール、及びn−プロパノールが挙げられる。
本実施形態のめっき液には、上述のとおりpH緩衝剤が含まれており、液のpHが0.3〜2.0、又は0.5〜1.5の範囲に保たれてもよい。
本実施形態のピストンリングを得るために使用されるめっき液の媒体としての水は、純水、イオン交換水、工業用水、水道水、又は蒸留水等であってもよい。これらのうち、めっき液の保存安定性、皮膜特性に影響を及ぼさないことを前提として、経済性の面から、工業用水、水道水を使用することができる。
本実施形態のピストンリングのめっき皮膜には、自己潤滑性を有する粒子を必要により含有させることができる。自己潤滑性を有する粒子を含有するメッキ液を用いることにより、自己潤滑性を有する粒子を含有するめっき皮膜を形成することができる。
自己潤滑性を有する粒子を使用することにより、この粒子が表面に露出すると表面の摩擦力を小さくするので、めっき皮膜の耐摩耗性を一層向上させることができる。自己潤滑性を有する粒子としては、例えばグラファイト、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、フッ素樹脂、又は窒化ホウ素(h−BN)の粒子が挙げられる。自己潤滑性を有する粒子の配合量は、めっき液の体積を基準として、5〜70g/リットル、特に10〜50g/リットルであってもよい。自己潤滑性粒子は、鱗片状であってもよい。鱗片状の場合、厚さが0.5〜2μmで、直径が1〜10μmであってもよい。
本実施形態のめっき液には、上記以外の成分として、必要により当該技術分野で通常用いられる光沢剤、表面調整剤、コロイダルシリカ等公知の添加剤を本発明の趣旨を逸脱しない範囲の量で含有させることができる。
以上の各成分を含むめっき液を用いてクロムめっきを形成する条件として、めっき浴の温度を20〜60℃、又は30〜60℃に設定することができる。電流密度は15〜60A/dm2、又は20〜40A/dm2に設定することができる。陽極としては、黒鉛や各種の寸法安定化陽極(DSA)、例えばTi−Pt電極などを用い、陰極としては、めっきの対象物であるピストンリング基材を用いることができる。
上述の条件下において電解めっきによって形成されためっき皮膜においては、クロムは一般的に非晶質となっている。非晶質のクロムのめっき皮膜はその硬度が結晶質のものと比較して低い傾向にある。そこで、電解めっきによって形成されためっき皮膜を加熱処理する工程を経ることによって、めっき皮膜を結晶質のクロムの皮膜とすることができる。加熱処理の条件としては、大気下に150〜600℃、200〜600℃、又は200〜450℃とすることができる。加熱時間は、温度がこの範囲であることを条件として、30〜90分とすることができる。
前記の条件下での電解めっきによって得られるめっき皮膜は、ピストンリングに適用するのに充分で工業的に満足し得る膜厚をもつ。その膜厚は3〜300μm、又は5〜100μmであってもよい。また、前記の条件下での電解めっきによって得られるめっき皮膜は、耐摩耗性及び耐食性等の皮膜特性が特に優れる。したがって、本実施形態の三価クロムめっき液を用いてピストンリング基材の摺動面(外周面)に対してめっきを施すことによって、ピストンリングに必要な摺動特性を付与することができる。
ピストンリング基材
ピストンリング基材は、特に制限なく、当該技術分野において通常用いられるものから適宜選択することができる。ピストンリング基材の材料は、例えば、鉄などの金属や、導電性の皮膜を表面に付したアルミナなどのセラミックスやプラスチックであってもよい。ピストンリング基材は、例えば、20mm〜100mmの外径、15mm〜950mmの内径、及び0.5mm〜50mmの厚さを有する。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。
1.めっき皮膜の形成とその評価
実施例1ないし3並びに比較例1及び2
以下の表1に示す成分を水に添加して、同表に示す組成を有する三価のクロムのめっき液を調製した。得られためっき液を用い、同表に示す条件で電解めっきを行い、母材の表面上にめっき皮膜を形成させた。陽極としては高密度黒鉛板を用いた。陰極としてはピストンリング基材のひとつである低クロム鋼を用いた。
また、めっきを行う母材として、めっき皮膜の耐摩耗性評価用などに低クロム鋼(寸法5×5×20の先端10R)を、耐食性評価用にSUS304(寸法50×100×5 mm)を用いた。めっき処理の後、得られためっき物を200℃で30分間、大気中で加熱処理してから、各評価を行った。
比較例3
以下の表1に示す成分を水に添加して、同表に示す組成を有する六価のクロムのめっき液を調製した。得られためっき液を用い、同表に示す条件で電解めっきを行った。陰極は実施例1と同様のものを用いた。陽極としては鉛錫板を用いた。
めっきを行う母材として、めっき皮膜の耐摩耗性評価用などに低クロム鋼(寸法5×5×20の先端10R)を、耐食性評価用にSUS304(寸法50×100×5 mm)を用いた。めっき処理の後、得られためっき物を200℃で30分間、大気中で加熱処理してから、各評価を行った。
めっき皮膜の評価
得られためっき物におけるクロムめっき皮膜の厚みを以下の方法で測定した。また、めっき皮膜の表面の外観を目視観察して光沢の程度及びクラックの発生の有無を調査した。更に以下の方法で、めっき皮膜のビッカース硬度を測定し、耐摩耗性及び耐食性を以下の方法で評価した。更に実施例2及び3並びに比較例2については、めっき皮膜中のセラミック粒子の含有率(分散度)を以下の方法で測定した。それらの結果を以下の表2に示す。
めっき皮膜の厚み
めっき皮膜の断面の厚みを、レーザー顕微鏡(OLYMPUS社製 LEXTO OLS1100)を用いて400倍の倍率で測定した。
めっき皮膜のビッカース硬度
めっき皮膜の断面のビッカース硬度を、微小硬さ試験機(ミツトヨ製 HM−103)を用いて、荷重200gf×15secで測定した。
めっき皮膜の耐摩耗性
実施例及び比較例で得られためっき処理を施したリング材について、科研式腐食摩耗試験機を用いてめっき皮膜の耐摩耗性を評価した。摩擦の相手となるライナー材として鋳鉄(JIS G 5501−1995に準拠したFC250)を用いた。
摩擦試験器における接触荷重は39Nとした。摩擦速度は0.25m/sec、摩擦距離は5400m(=6時間)とした。腐食液として硫酸水溶液(pH=2.0)を用い、1.5ml/minで滴下した。腐食液温度は常温とした。めっき皮膜の摩耗量を測定し、その値を耐摩耗性の指標とした。
めっき皮膜の耐食性
めっき皮膜の面積が1cm2である、実施例又は比較例で得られたSUS304のめっき物を準備した。該めっき物を所定のpHに調整された硫酸及び塩酸水溶液(容積1リットル)中に、ビニール製の釣糸で吊り下げた。水溶液の温度を70℃に保ち、水溶液を1時間にわたって攪拌した。その後、水溶液中に溶解したクロムの量をICP発光分析装置(島津製作所社製 ICPS−7510)によって測定し、耐食性の尺度とした。
めっき皮膜中のセラミック粒子の含有率
ここでいう含有率とは、めっき皮膜の断面を観察したときに、単位面積あたりの観察視野に占めるセラミック粒子の面積率のことである。この面積率は次の方法で測定される。すなわち、めっき皮膜の縦断面を、レーザー顕微鏡(OLYMPUS社製 LEXTO OLS1100)を用いて、1000倍の倍率で観察した。そして、30μm四方の枠内に存在するセラミック粒子が占有する面積の比率を、同レーザー顕微鏡を用いて計測した。
マクロクラックの有無の評価
表2に示す条件でめっき皮膜を加熱処理し、加熱処理後のめっき皮膜の皮膜断面を、村上試薬で腐食してから、レーザー顕微鏡(OLYMPUS社製 LEXTO OLS1100)を用い1000倍の倍率で測定し、下記評価基準に基づいて、マクロクラックの存在の程度を評価した。実施例1及び比較例1から得られたクロムめっき物におけるめっき皮膜の縦断面の走査型電子顕微鏡写真を図2に示す。
A;マクロクラックが10個未満
B;マクロクラックが10個以上20個未満
C;マクロクラックが20個以上
表2に示す結果から明らかなように、各実施例のめっき液を用いてクロムの電解めっきを行うと、比較例のめっき液を用いた場合に比べて同じめっき時間で厚いめっき皮膜を形成できることが分かる。また、各実施例のめっき液を用いて得られためっき皮膜の表面外観は良好であり、光沢を有するものであることが分かる。特に、実施例1ないし3と比較例3との対比から明らかなように、三価のクロムのめっき液を用いても、従来用いられていた六価のクロムのめっき液を用いた場合と同様又はそれ以上の性能を有するめっき皮膜が得られることが分かる。
また、錯化剤としてマロン酸を含む各実施例のめっき液を用いると、200〜300℃で加熱処理を行っても得られためっき皮膜にマクロクラックがほとんど生じていないことが分かる。
更に、実施例1と、実施例2及び3との対比から明らかなように、めっき液中にセラミック粒子を配合することで、めっき皮膜の耐摩耗性が一層向上することが分かる。
2.ピストンリングの作製とその評価
ピストンリング用低クロム鋼で作製された、ボア径73mm、幅(半径方向)2.3mm、厚さ(ピストンの進行方向)1.0mmのトップリングをピストンリング基材として準備した。複数のピストンリング基材をその軸方向にスタックした状態で、ピストンリング基材の外周面上に、表1の実施例、比較例の各めっき液を用いてクロムめっき(めっき皮膜)を形成させた、その後、200℃で30分間、大気中でめっき皮膜を加熱処理した。
ピストンリングを排気量1500cmの4気筒ガソリンエンジン(ボア径73mm)に取り付け、回転数5,700rpm、負荷4/4の運転条件で、断続的に100時間エンジンを運転させた。
その後、ピストンリングを取り出して、めっき皮膜の摩耗量とシリンダー摩耗深さを測定した。めっき皮膜の摩耗量として、テスト前後におけるピストンリングの厚さの差を、ピストンリングの周方向に等間隔で5箇所測定した。シリンダー摩耗深さとして、テスト前後におけるシリンダー径の差の1/2を、トップリング摺動部の軸方向中央付近、周方向に等間隔で5箇所測定した。また、エンジン性能として、運転開始直後と100時間の運転終了直前で、エンジンオイル消費量とを測定した。評価結果を表3に示す。
表3に示すように、各実施例のピストンリングは、エンジンに用いられたときに、六価クロムめっき液を用いた比較例3と同等又はそれ以上の優れた耐摩耗性を示すことが確認された。
実施例2で得られためっき皮膜の縦断面の走査型電子顕微鏡写真を図3に示す。図3のように、めっき皮膜中に球状のセラミック粒子が取り込まれていることが確認された。
実施例4
自己潤滑性を有する粒子として平均厚さ1μm、平均直径6μmの鱗片状の二硫化モリブデン粒子を30g/リットル加えたこと以外は実施例1と同様の組成を有する三価のクロムのめっき液を調製し、実施例1と同様の方法によりめっき皮膜を有するピストンリングを作成した。作成したピストンリングの縦断面の走査型電子顕微鏡写真を図4に示す。図4の暗い箇所が二硫化モリブデン粒子であり、鱗片状の二硫化モリブデン粒子が電流をさえぎるように横方向に並んでいる良好なめっき皮膜が形成されたことが確認された。このめっき皮膜の表面摩擦力を測定したところ、その値は実施例1のめっき皮膜の表面摩擦力に対し23%であった。さらに、平均粒径2μmの球形の二硫化モリブデン粒子を30g/リットル含有すること以外は実施例1と同様のめっき液を用いてピストンリングを作成した。得られたピストンリングのめっき皮膜の表面摩擦力は、実施例1のめっき皮膜の表面摩擦力に対して67%であった。
本発明によれば、200〜300℃程度の加熱処理条件下でもめっき皮膜中のマクロクラックの発生がより効果的に抑制され、また、工業的に満足し得る膜厚をもち、耐食性及び耐摩耗性等の皮膜特性に優れたクロムめっきを有するピストンリングが提供される。また、本発明によれば、液中成分の分解によるハロゲンガス等の有害ガスの発生が抑えられるため、長期保存性に優れ、作業環境の改善につながる三価クロムめっき液を用いて得ることのできるピストンリングが提供される。
1…ピストンリング、2…ピストンリング基材、3…めっき皮膜、S…ピストンリング基材の外周面。

Claims (11)

  1. 環状のピストンリング基材と、
    前記ピストンリング基材の外周面上に形成されためっき皮膜と、
    を有し、
    前記めっき皮膜が、三価クロム化合物と、pH緩衝剤と、スルファミン酸塩化合物と、アミノカルボニル化合物と、マロン酸を含む錯化剤と、を含有する水溶液である三価クロムめっき液を用いて形成されたクロムめっきである、
    ピストンリング。
  2. 前記クロムめっき液がセラミック粒子を更に含有する、請求項1記載のピストンリング。
  3. 前記セラミック粒子が、前記クロムめっき液中で20〜100mVのゼータ電位を有する、請求項2記載のピストンリング。
  4. 前記クロムめっき液がセラミック粒子の凝集防止剤を更に含有する、請求項2又は3記載のピストンリング。
  5. 前記凝集防止剤が塩化アルミニウムを含む、請求項4に記載のピストンリング。
  6. 前記三価クロム化合物が、塩化クロム、硝酸クロム、硫酸クロム及びリン酸クロムからなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載のピストンリング。
  7. 前記pH緩衝剤が、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム及びホウ酸カリウムからなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載のピストンリング。
  8. 前記スルファミン酸塩化合物が、スルファミン酸アンモニウム、スルファミン酸ナトリウム及びスルファミン酸カリウムからなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載のピストンリング。
  9. 前記クロムめっき液が自己潤滑性を有する粒子を更に含有する、請求項1〜のいずれか一項に記載のピストンリング。
  10. 環状のピストンリング基材の外周面上に、クロムめっき液を用いてめっき皮膜を形成する工程を備え、
    前記クロムめっき液が、三価クロム化合物と、pH緩衝剤と、スルファミン酸塩化合物と、アミノカルボニル化合物と、マロン酸を含む錯化剤と、を含有する水溶液である、
    請求項1記載のピストンリングを製造する方法。
  11. 前記めっき皮膜を加熱処理する工程を更に備える、請求項10記載の方法。
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