JP5633852B2 - Pc緊張材挿通用シース内のグラウト未充填空洞へのグラウト再注入方法 - Google Patents

Pc緊張材挿通用シース内のグラウト未充填空洞へのグラウト再注入方法 Download PDF

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本発明は、既設のプレストレストコンクリート(以下PCと記す)構造物におけるシースの定着側端部やその他の傾斜又は鉛直部分に存在している空洞内に再注入用グラウトを注入するPC緊張材挿通用シース内のグラウト未充填空洞へのグラウト再注入方法に関する。
近年、ポストテンション方式のPC桁に使用されているPC緊張材挿通用シースの緊張材定着部側端部やその他の部分に空洞が存在しており、その内部の腐食が問題視されるに至っている。
特に高架道路のPC桁においては、PC緊張材定着部が舗装の下にあって斜め上向きに備えられている箇所があり、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム等凍結防止剤の散布が盛んに行われている個所では、これらの凍結防止剤が水とともに舗装内に浸透し、PC緊張材定着部を通してシース内に入り、PC緊張材を腐食させる事態が発生している。
この他シース内のグラウト未充填空洞は、何らかの要因によってシースが潰れ、グラウトの流動が阻害されたり、シースが上下に波打つ形状に配置されている場合に、高流動性のグラウトの先流れ現象が生じたりした場合にも発生する。
このため近年において、このPC緊張材挿通用シース内にできている空洞内に、グラウトを再注入する方法として、空洞の上端側に排気ホースを挿入し、下端側から再注入用グラウトを圧入する方法(例えば特許文献1,非特許文献1)が提案されている。
特開2005−23693号公報
平成14年8月30日、財団法人鉄道総合研究所発行「PCグラウトの再注入等補修マニュアル(案)」
しかし、上述した排気ホースを使用して再注入用グラウト注入時における空洞内の空気を排気させる方法では、新設時と比較して、グラウト未充填空洞の端部に排気孔を設けることが困難である。
また、既往の技術としての非特許文献1である「PCグラウトの再注入等補修マニュアル(案)」に示されている技術では、内径4mm 外径6mm のナイロンチューブをシース内のグラウト未充填空洞に挿入して排気孔とし、このチューブ先端までグラウトが充填されるようにしている。
また、このチューブをグラウト排出孔として用いることで実際にチューブ先端までグラウトが充填されたことを目視で確認するものとしている。
しかし、実際のPC 鋼材は腐食膨張や新設時のグラウトの付着などで、シース内部の空隙率が小さくなっていることや、例えばPC 鋼棒を使用したPC構造物では、建設当時の旧基準に従い、シース内径は、PC鋼棒の直径+6mmとなっており、定着部付近では、PC鋼棒がシースの中心部分にあるため、PC鋼棒とシース内面との隙間は3mmしかなく、前述した排気孔としてのチューブは挿入できない。
しかも、グラウト未充填空洞下部からの片押し方式によるグラウト再注入では、注入されたグラウトがチューブ内より流れ出るためには、内径4mmが限界であり、それより細径のチューブではグラウトがチューブ内を流れないため、充填確認ができないという問題があった。
また、PC鋼線束やPCストランドを使用したPC構造物では、緊張材定着部に近接した部分におけるPC鋼線間の隙間が小さいことが多い。
しかも、錆が発生しているような場合には、従来の外径が6mmのチューブではその先端が空洞の上端にまで達しないことが多く、それより高い位置にグラウト未充填空洞(分空気溜り)が残るという問題がある。
一般に、PC構造物の構築に際してのグラウト充填確認技術としては、グラウトの充填が困難と予想される位置に予めシース外側や内側に、熱電対や微振動センサ、光ファイバー等のセンサを設置しておき、その位置グラウト充填確認を行う方法などがあるが、いずれもグラウト未充填部端部にセンサを設置することは困難であり、解決方法とならない。
更に、新設時においては、シース内空隙率と注入延長より注入予定数量を予め算出しておき、流量計を用いて、設計数量と注入数量を比較することにより充填確認するという方法があるが、設計数量の把握が困難な再注入では採用出来ない。
本発明は、上述の如き従来の状況に鑑み、PC緊張材の定着端部付近に発生しているグラウト未充填空洞のように、隙間が小さい箇所であっても、十分なグラウト再注入が可能であり、また、再注入用グラウトの充填状況が外部から容易に確認できるPC緊張材挿通用シース内のグラウト未充填空洞へのグラウト再注入方法の提供を目的としてなされたものである。
請求項1に記載の発明の特徴は、既設PC構造物におけるPC緊張材挿通シースの傾斜部分又は鉛直部分に位置するグラウト未充填空洞内に再注入用グラウトを再注入するに際し、排気用チューブを前記グラウト未充填空洞内に挿入し、その先端を該グラウト未充填空洞上端部まで到達させ、該排気用チューブを排気孔として前記グラウト未充填空洞の下端側から片押し注入により再注入用グラウトを注入するPC緊張材挿通用シース内のグラウト未充填空洞へのグラウト再注入方法において、前記排気用チューブ内に、2種金属線を絶縁被覆したリード部を有し、該リード部の先端に前記2種金属線を接続した感知部を備えた熱電対を、前記排気用チューブ内面との間に通気用空隙を残して挿入して該熱電対の先端の感知部を前記排気用チューブの先端に位置させ、前記熱電対が再注入用グラウトを感知することによってグラウト未充填空洞上端のグラウト充填を確認することにある。
請求項2に記載の発明の特徴は、請求項1の構成に加え、前記排気用チューブは内面を円形断面とするとともに前記熱電対の絶縁被覆は外面を円形に比べて扁平な形状とし、該熱電対の絶縁被覆外周面と前記排気用チューブの円形断面の内周面との間に隙間を持たせることによって通気用空隙を形成することにある。
本発明は、請求項1に記載のように、既設PC構造物におけるPC緊張材挿通シースの傾斜部分又は鉛直部分に位置するグラウト未充填空洞内に再注入用グラウトを再注入するに際し、排気用チューブを前記グラウト未充填空洞内に挿入し、その先端を該グラウト未充填空洞上端部まで到達させ、該排気用チューブを排気孔として前記グラウト未充填空洞の下端側から片押し注入により再注入用グラウトを注入さすPC緊張材挿通用シース内のグラウト未充填空洞へのグラウト再注入方法において、前記排気用チューブ内に、2種金属線を絶縁被覆したリード部を有し、該リード部の先端に前記2種金属線を接続した感知部を備えた熱電対を、前記排気用チューブ内面との間に通気用空隙を残して挿入し、該熱電対の先端の感知部を前記排気用チューブの先端に位置させ、前記熱電対が再注入用グラウトを感知することにより、グラウト未充填空洞の下端側からの片押し注入の際の内部の排気が、グラウト未充填空洞上端部に到るまでなされ、空洞内の再注入用グラウト充填率をより完全なものとすることができ、且つ、再注入用グラウト検出用の熱電対によって再注入用グラウトを感知させるものであるため、空洞上端部への再注入用グラウト充填が簡単かつ確実に検知できる。
更に、排気用チューブは、従来の方法のように、充填された再注入用グラウトの流出を目視するのではなく、空洞内の排気が確保できれば良いものであるため、内径が1mm以下といった細径のもものを使用することができ、このため、PC鋼棒を使用したPC構造物のようにシースとPC緊張材との隙間が小さい場合や、PC鋼線又はPC鋼撚線の束を使用したPC構造物の定着部付近のように、PC緊張材が密集していて、隙間が小さい場合であっても、グラウト未充填空洞の上端まで到達させることが可能な細さのものを使用でき、より完全な再注入用グラウトの充填が可能となる。
本発明は、再注入用グラウト検出用センサとして熱電対を使用することにより、熱電対自体に細径のものを使用でき、排気用チューブの外径をより小さくでき、空洞上端部への挿入が容易となる。
本発明を実施するグラウト未充填空洞の一例の縦断側面図である。 図1におけるA−A線部分のシース内を示す断面図である。 本発明方法におけるグラウト再注入用ホース及び細径チューブを取り付けた状態の部分拡大断面図である。 本発明に使用する熱電対を挿入した排気用チューブの先端部分を示すもので、(a)は縦断側面図、(b)は縦断正面図である。 本発明におけるグラウト再注入状態を示す縦断正面図である。 図5に示すグラウト再注入においてグラウト未充填空洞最上部まで充填された状態を示す縦断面図である。 本発明を実施する他のシース内空洞例を示す部分断面図である。 本発明を実施する更に他のシース内空洞の例を示す部分断面図である。
次に、本発明の実施の態様を、PC鋼線束を使用したPC構造物において、PC緊張材定着部の下側に形成されたグラウト未充填空洞へのグラウト再注入方法について説明する。
図において符号1はPC桁、2はその上の造成した舗装である。PC桁1には、その上面にPC緊張材定着部3が備えられ、PC緊張材定着部3には、PC桁1に埋め込んだ雌コーン4と、その内部にテーパー穴に嵌り合う雄コーン5を有し、両コーン4,5によってPC緊張材6の端部が、緊張状態を維持させて定着されている。
この例では、PC緊張材6として複数本の単線7を束状にしたものを使用しており、各単線7を両コーン4,5間に挟み込むことにより定着している。
PC緊張材定着部3は、PC桁1の表面に形成した凹部8内に備えられ、PC緊張材6を緊張定着した後に、グラウト作業と後処理を行い、定着部保護コンクリート9を打設して凹部8を埋めることによりPC緊張材定着部3を保護している。
PC緊張材定着部3の雌コーン4にはシース10が連結され、このシース10内にPC緊張材6が挿通されている。シース10は、PC緊張材定着部3に近い位置では斜め下向きとなっており、このPC緊張材定着部3下のグラウト未充填空洞12が、この例においてグラウト再注入の対象としている空洞である。
この空洞12へのグラウト再注入作業の前工程として、PC桁1のフランジ部に近い位置の側面及びグラウト未充填空洞12の下端に近い部分のコンクリートをはつり、それらの部分のシース10を露出させる。
次いで、グラウト未充填空洞12の下端側のシース10にホース挿入孔15を開けるとともに、上側のはつり部分のシース10に排気用チューブ挿入孔16を開ける。
尚、図には示してないが、グラウト未充填空洞12の長さが短い場合には、グラウト未充填空洞12の下端に近い部分のみをはつり、この部分に前記ホース挿入孔15と排気用チューブ挿入孔20を上下に間隔を隔てて開ける。
このように開けられたホース挿入孔15には、グラウト再注入用ホース16を挿入し、その挿入部分を密閉する。
また、排気用チューブ挿入孔20には、排気用チューブ21を挿入する。この排気用チューブ21には、その中空内部に線状の熱電対23からなる再注入用グラウト検出用センサを挿入しておく。熱電対23は、先端の感知側端部23aを、中空筒状の排気用チューブ21の先端に位置させ、2種の金属線a,bを絶縁被覆したリード部23bを、排気用チューブ21内を通して外部に導出し、温度表示器25に接続して排気用チューブ21先端の温度を表示させるようにしている。
また、図4に示すように排気用チューブ22は内面を円形断面とするとともに、熱電対23の絶縁被覆は外面を円形に比べて扁平な形状である楕円形とし、該楕円形の短径側外周面と前記排気用チューブの円形断面の内周面との間に隙間24を持たせることによって通気用空隙を形成している。
排気用チューブ21としては、外径が3mm未満のものであって、先端をグラウト未充填空洞12の上端まで挿入する際に座屈しないだけの弾性を有するものを使用する。その一例として、仁礼工業株式会社製の曲げ弾性率4.2GPaのプラスチックチューブであるポリエーテルケトン(商標)を使用することができる。
この排気用チューブ21の外径が3mm未満であるのは、既設のPC構造物のシース内径とPC鋼棒外径との差が、最も小さい6mmである場合において、PC鋼棒がシース中央に位置していた場合であって、シース内面やPC鋼棒外面に錆が発生していた場合であっても、スムーズに挿入出来るものとする必要からである。
このように構成される排気用チューブ21の先端を、PC緊張材定着部3、即ちグラウト未充填空洞12の上端まで挿入し、その状態で排気用チューブ挿入孔20と排気用チューブ21との間を密閉する。
このようにしてグラウト未充填空洞12の上端からの排気が排気用チューブ21を通して可能な状態とする。尚、排気用チューブ21の挿入時に先端開口につまりが生じる可能性があるため、グラウト再注入に先立って排気用チューブ21の外側端部より圧力空気を吹き込み、先端開口の通気性を確保させる。
このようにして排気用チューブ21をセットした状態で、再注入用グラウトを自然流下により注入させる。この自然流下によるグラウト再注入には、鉛直管からなるグラウト注入用容器17を使用する。
このグラウト注入用容器17の下端にグラウト再注入用ホース16の該方側端部を連結し、該グラウト注入用容器17内に収容した再注入用グラウト18を自然流下させることにより空洞12内に注入する。
この時、グラウト注入用容器17を、その内部の液面18aを目視できる透明なものとし、その液面18aの高さを空洞12内に注入された再注入用グラウト18の液面18bより、所定の高さだけ高くなるように調整する。これは、図5に示すように、両液面18aと18bとの水頭差hによって自然流下させるものであり、再注入当初は、グラウト注入用容器内液面18aの高さがホース挿入孔15の高さよりやや高い位置として注入を開始する。
グラウト注入用容器内液面18aの降下が停止するか又は降下速度が一定以下になったとき、グラウト注入用容器17を上方に移動させるか、該容器17内に所定量の再注入用グラウト18を追加し、空洞内液面18bとの水頭差hを大きくする。このようにしてグラウト注入用容器17からの単位時間当たりの注入量を調整することによって再注入用グラウト18の注入速度を調整する。
この他、グラウト注入用容器17内への単位時間当たりの再注入用グラウト追加量を調整することによって注入速度を調整してもよく、例えば、1分間毎に再注入用グラウトを追加することとし、その追加量を100ccずつ、あるいは200ccずつといったように変化させるようにしてもよい。
このようにゆっくりとグラウト再注入作業を継続させることにより、グラウト未充填空洞12内の再注入用グラウト内に空気を巻き込ませることなく、またPC緊張材の鋼線束内の空洞の空気を残存させることなく上昇させることができる。
そして、図6に示すように、グラウト未充填空洞12の上端部まで充填されると、排気用チューブ21の上端の熱電対23が、充填された再注入用グラウトに接触することによってその温度変化を感知し、温度表示器25に表示され、これによってグラウト未充填空洞12の上端までの再注入用グラウト充填完了が確認できる。
尚、この例では、自然流下による片押し注入を行う場合を示しているが、この他、手押しポンプやその他の圧入手段を使用して片押し注入によるグラウト再注入作業を行ってもよい。
また、上述の実施例は、傾斜したPC緊張材挿通シース内の空洞の上端が、PC緊張材着部である場合について説明したが、この他、PC緊張材挿通シースが鉛直方向に向けられている縦向きのPC緊張材定着部下の空洞や、図7に示すようにPC緊張材挿通用シース10が上下に波打つ形状に配置されている場合においてグラウトの先流れによって生じる傾斜部の空洞12a、図8に示すように、PC緊張材挿通用シース10に潰れが生じることによって形成される傾斜した部分の空洞12bに対しても実施することができる。
1 PC桁
2 舗装
3 PC緊張材定着部
4 雌コーン
5 雄コーン
6 PC緊張材
7 単線
8 凹部
9 定着部保護コンクリート
10 PC緊張材挿通用シース
11 グラウト
12,12a,12b 空洞
15 ホース挿入孔
16 グラウト再注入用ホース
17 グラウト注入用容器
18 再注入用グラウト
18a グラウト注入用容器内液面
18b 空洞内液面
20 排気用チューブ挿入孔
21 排気用チューブ
22 チューブ本体
23 熱電対
a,b 金属線
23a 感知側端部
23b リード部
24 空隙
25 温度表示器
h 水頭差

Claims (2)

  1. 既設PC構造物におけるPC緊張材挿通シースの傾斜部分又は鉛直部分に位置するグラウト未充填空洞内に再注入用グラウトを再注入するに際し、
    排気用チューブを前記グラウト未充填空洞内に挿入し、その先端を該グラウト未充填空洞上端部まで到達させ、
    該排気用チューブを排気孔として前記グラウト未充填空洞の下端側から片押し注入により再注入用グラウトを注入するPC緊張材挿通用シース内のグラウト未充填空洞へのグラウト再注入方法において、
    前記排気用チューブ内に、2種金属線を絶縁被覆したリード部を有し、該リード部の先端に前記2種金属線を接続した感知部を備えた熱電対を、前記排気用チューブ内面との間に通気用空隙を残して挿入して該熱電対の先端の感知部を前記排気用チューブの先端に位置させ、
    前記熱電対が再注入用グラウトを感知することによってグラウト未充填空洞上端のグラウト充填を確認するPC緊張材挿通用シース内のグラウト未充填空洞へのグラウト再注入方法。
  2. 前記排気用チューブは内面を円形断面とするとともに前記熱電対の絶縁被覆は外面を円形に比べて扁平な形状とし、該熱電対の絶縁被覆外周面と前記排気用チューブの円形断面の内周面との間に隙間を持たせることによって通気用空隙を形成する請求項1に記載のPC緊張材挿通用シース内のグラウト未充填空洞へのグラウト再注入方法。
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