JP5633716B2 - アクリル系樹脂組成物及び成形品 - Google Patents
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また、軟質材料は自動車部品及び電気・電子部品等の材料として広く使用されているが、軟質ポリ塩化ビニル樹脂等の材料は帯電しやすく、これら材料を成形して得られる成形品の表面にほこり等が付着するため、成形品の外観を損なう、また、成形品に帯電した電気が障害を与えるという問題があった。
一方、帯電の問題を解決する方法として、ポリアルキレンオキサイドのカルボン酸エステル化物とアルカリ金属塩を併用した帯電防止剤を使用することが提案されている。(特許文献2)しかしながら、この技術で開示されている樹脂は硬質アクリル系樹脂であり、軟質材料への適用については開示されてない。
即ち、本発明の要旨とするところは、アクリル系重合体(A)(以下、「(A)成分」という)100質量部、ポリアルキレングリコール及びポリアルキレングリコールの誘導体から選ばれる少なくとも1種の化合物(B)(以下、「(B)成分」という)をアクリル系重合体(A)100質量部に対して20〜90質量部、並びにアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩から選ばれる少なくとも1種の化合物(C)(以下、「(C)成分」という)をアクリル系重合体(A)100質量部に対して0.01〜5質量部を含有するアクリル系樹脂組成物を第1の発明とし、このアクリル系樹脂組成物を成形して得られる成形品を第2の発明とする。
(A)成分の質量平均分子量は10万〜200万が好ましい。質量平均分子量が10万以上で、(B)成分の保持性を良好とすることができ、得られる成形品に充分な機械的強度を付与できる傾向にある。また、質量平均分子量が200万以下で、アクリル系樹脂組成物の加熱溶融時の流動性が低下せず、良好な成形加工性が得られる傾向にある。
(A)成分の質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定する。ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを測定して得られたクロマトグラムが明確に2つのピークに分かれていない場合には、波形分離処理を行なって2つのピークに分離し、各ピークの分子量を求めることができる。
本発明においては、必要に応じて、単量体中に架橋剤を含有させることができる。架橋剤としては、例えば、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート及びアリルメタクリレートが挙げられる。
上記単量体は1種で又は2種以上を併用して使用できる。尚、本発明において(メタ)アクリレートの表示はメタクリレート又はアクリレートを表す。
(A)成分中の軟質単量体単位の含有率は、得られる成形品の機械的強度(特に引裂強度)の点で、60質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましい。(A)成分中の軟質単量体単位の含有率は、得られる成形品の低温特性の点で、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。
例えば、(B)成分としてポリエチレングリコールを用いる場合は、(A)成分のSP値は20.5(J/cm3)1/2以下が好ましい。また、(B)成分としてポリプロピレングリコールを用いる場合は、(A)成分のSP値は19.8〜20.5(J/cm3)1/2が好ましい。更に、(B)成分としてポリブチレングリコールを用いる場合は、(A)成分のSP値は19.6(J/cm3)1/2以上が好ましい。
尚、本発明におけるSP値は公知のFedorsの式(Polymer Eng.& Sci.,第14巻、第2号(1974)、第147頁〜第154頁参照)によって計算により得られる値である。
(A)成分の粒子としてコアシェル構造の粒子又は多段重合粒子とする場合、(A)成分の重合方法としては、例えば、各層又は各段における重合体成分を構成するために使用される単量体又は単量体混合物を順次滴下しながら重合する公知の方法が挙げられる。
また、乳化重合法等で得られる(A)成分のラテックスを粉体化する方法としては、凝固法及びスプレードライ法が挙げられるが、生産性よく安価に製造できることからスプレードライ法が好ましい。
尚、本発明においてポリアルキレングリコールの誘導体とはポリアルキレングリコールの末端に存在する水酸基の一部又は全部を他の官能基に変えた構造の化合物を意味する。
ポリアルキレングリコールとしては、例えば、ポリメチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール、エチレングリコールとプロピレングリコールの共重合体等の2種以上のグリコール単位を持つポリアルキレングリコール、及びグリセリン等の多官能アルコールを用いた分岐状ポリアルキレングリコールが挙げられる。
上記の中で、(B)成分としては、(A)成分との相溶性に優れ、(A)成分の分散性に優れる点で、下記一般式(1)で表される化合物が好ましい。
R1−O−(−R3−O−)n−R2 (1)
式(1)中、R1及びR2はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基を表し、R3は炭素数2〜12の直鎖又は分岐状のアルキレン基を表す。nは5〜200の整数である。nは10以上の整数が好ましい。また、nは100以下の整数が好ましく、50以下の整数がより好ましい。nが5以上の場合、本発明のアクリル系樹脂組成物を成形加工する時に(B)成分が揮発しにくい傾向にある。また、nが200以下の場合、(A)成分を効率的に可塑化できる傾向にある。
(B)成分は1種で又は2種以上を併用して使用できる。
(C)成分は1種で又は2種以上を併用して使用できる。
(A)成分、(B)成分及び(C)成分の配合方法としては特に限定されず、加工時に同時に配合する、又は加工に先立って事前に配合しておくことができるが、(B)成分の配合量が多い場合には事前に配合しておく方法が作業性の点で好ましい。事前に配合する方法としては、例えば、ヘンシェルミキサー及びバンバリーミキサーによる配合が挙げられる。
本発明のアクリル系樹脂組成物の成形方法としては、例えば、カレンダー成形法、射出成形法、Tダイ押出成形法、異型押出成形法、ブロー成形法、真空成形法及びインフレーション成形法が挙げられる。これらの中でカレンダー成形法が好ましい。
また、アクリル系重合体の質量平均分子量及びクロマトグラム並びにアクリル系樹脂組成物の成形時及び得られた成形品の各種評価を以下に示す方法により実施した。
アクリル系重合体の質量平均分子量はアクリル系重合体のテトラヒドロフラン可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。
GPCを測定して得られたクロマトグラムに2つのピークが検出された際には、それぞれのピークについて分子量を算出した。
ロール成形時におけるロール間にある樹脂のバンク回り性を外観により以下の基準で評価した。
◎:ロールの回転に合わせて樹脂のバンクが綺麗に回る。
○:ロールの回転に合わせて樹脂のバンクが回るが、若干スリップする。
×:ロールの回転に合わせて樹脂のバンクが綺麗に回らず、スリップする。
ロール成形において、成形されたシートをロールより剥離させた後、得られたシートの収縮の程度を以下の基準で評価した。
◎:収縮が小さい。
○:収縮が若干ある。
×:収縮が大きい。
ロール成形で得られたシートから、幅50mm×長さ50mm×厚さ1mmの試験片を切出した。試験片を温度23℃及び湿度50%の雰囲気に24時間放置した後、同雰囲気中で超絶縁計(東亜電波工業(株)製、商品名:SM−10E型)を使用して表面抵抗値を測定し、制電性を以下の基準で評価した。
◎:表面抵抗値が1.0×1014Ω以下である。
×:表面抵抗値が1.0×1014Ωを超える。
ロール成形で得られたシート(幅200mm×長さ200mm×厚さ1mm)を7枚重ね、後述するロール成形温度と同じ温度でプレス成形を行ない、厚さ6mmの試験片を得た。
得られた試験片を、JIS K7215に準拠してタイプAデュロメータにより硬度を測定した。得られた硬度から、以下の基準で柔軟性を評価した。
◎:硬度が80未満である。
○:硬度が80以上90以下である。
×:硬度が90を超えている。
温度計、窒素導入管、攪拌機、滴下漏斗及び冷却管を装備した300mlの4つ口フラスコに、下記の原料を仕込んだ。
200rpmで攪拌しながら、窒素を30分間通気し、フラスコ内を窒素で置換した。
脱イオン水 80部
ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム 0.1部
(商品名:ペレックスOT−P、花王(株)製)
シード用単量体混合物:
メチルメタクリレート 5.14部
n−ブチルメタクリレート 4.86部
フラスコの内温が80℃で安定した後、下記の開始剤水溶液を投入した。発熱ピークを確認して、シード粒子を形成した。
開始剤水溶液:
過硫酸カリウム 0.1部
脱イオン水 5部
メチルメタクリレート 46.26部
n−ブチルメタクリレート 43.74部
ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム 0.5部
脱イオン水 50部
得られた単量体乳化液を、4.7時間かけてフラスコ内に滴下した。滴下中は、フラスコの内温が80℃となるように温度を制御した。滴下終了後、加熱攪拌を80℃で1時間継続し、アクリル系重合体(A1)ラテックスを得た。
アクリル系重合体(A1)の質量平均分子量は76.0万であり、分子量93.0万にピークを1つ有するものであった。
尚、スプレードライヤーのアトマイザーは回転ディスク式とし、回転数は22,000rpmとした。また、乾燥用ガスの入口温度は190℃、乾燥用ガスの出口温度は90℃とした。
用いる原料を表1に記載した種類及び量とし、それ以外は製造例1と同様にしてアクリル系重合体(A2)を得た。
アクリル系重合体(A2)の質量平均分子量及び分子量ピークを表1に示す。
温度計、窒素導入管、攪拌機、滴下漏斗及び冷却管を装備した300mlの4つ口フラスコに、下記の脱イオン水を仕込んだ。
200rpmで攪拌しながら、窒素を30分間通気し、フラスコ内を窒素で置換した。
脱イオン水 80部
シード用単量体混合物:
メチルメタクリレート 3.1部
n−ブチルメタクリレート 2.4部
フラスコの内温が80℃で安定した後、下記の開始剤の水溶液を投入した。発熱ピークを確認して、シード粒子を形成した。
開始剤水溶液:
過硫酸カリウム 0.05部
脱イオン水 5部
メチルメタクリレート 3.7部
n−ブチルアクリレート 11.8部
スチレン 2.83部
エチレングリコールジメタクリレート 0.63部
2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル) 0.2部
(商品名:V−65、和光純薬工業(株)製)
ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム 0.2部
脱イオン水 10部
得られた第1単量体乳化液を、1時間かけてフラスコ内に滴下した。滴下中は、フラスコの内温が80℃となるように温度を制御した。滴下終了後、加熱攪拌を80℃で30分間継続した。
メチルメタクリレート 21.4部
n−ブチルメタクリレート 16.4部
ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム 0.1部
脱イオン水 20部
得られた第2単量体乳化液を、2時間かけてフラスコ内に滴下した。滴下中は、フラスコの内温が80℃となるように温度を制御した。滴下終了後、加熱攪拌を80℃で30分間継続した。
メチルメタクリレート 36.7部
n−ブチルアクリレート 1.04部
n−オクチルメルカプタン 0.08部
ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム 0.2部
脱イオン水 20部
得られた第3単量体乳化液を、2時間かけてフラスコ内に滴下した。滴下中は、フラスコの内温が80℃となるように温度を制御した。滴下終了後、加熱攪拌を80℃で1時間継続し、アクリル系重合体(A3)ラテックスを得た。
MMA :メチルメタクリレート
nBMA:n−ブチルメタクリレート
nBA :n−ブチルアクリレート
St :スチレン
EDMA:エチレングリコールジメタクリレート
nOM :n−オクチルメルカプタン
OT−P:ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム(商品名:ペレックスOT−P、花王(株)製)
KPS :過硫酸カリウム
V−65:2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(商品名、和光純薬工業(株)製)
(A)成分としてアクリル系重合体(A1)〜(A3)、(B)成分としてプロピレングリコール(商品名:アデカポリエーテルP−700、質量平均分子量:700、平均重合度12、(株)ADEKA製)又はフタル酸ジイソノニル(商品名:DINP、(株)ジェイ・プラス製)及び(C)成分として過塩素酸リチウム、又はトリフルオロメタンスルホン酸リチウム50%水溶液(商品名:サンコノールAQ−50T、三光化学工業(株)製)を、表2に示す割合で配合し、ヘンシェルミキサーにて攪拌混合して配合物を得た。
得られた配合物を、6インチテストロール成形機(商品名:ラボラトリーミル、関西ロール(株)製)を使用し、表2に示すロール温度で混練し、シートを作製した。ロール成形時の評価結果及び得られたシートの評価結果を表3に示す。
実施例5ではアクリル系重合体(A1)とアクリル系重合体(A2)を50/50で配合したものを(A)成分として用いた。このときの質量平均分子量及び分子量ピークを表1に示した。
PPG :プロピレングリコール(商品名:アデカポリエーテルP−700、質量平均分子量:700、平均重合度12、(株)ADEKA製)
DINP:フタル酸ジイソノニル(商品名:DINP、(株)ジェイ・プラス製)
AQ−50T:トリフルオロメタンスルホン酸リチウム50%水溶液(商品名:サンコノールAQ−50T、三光化学工業(株)製)
実施例2〜4ではバンク回り性、シート収縮性、制電性及び柔軟性がいずれも良好であった。
実施例5では(A)成分に軟質単量体単位が含まれていないため、柔軟性が若干低いものの、バンク回り性、シート収縮性、及び制電性がいずれも良好であった。
実施例6では(A)成分に低分子量領域の重合体及び軟質単量体単位が含まれていないため、バンク回り性、シート収縮性及び柔軟性が若干低いものの、制電性は良好であった。
比較例2では実施例2と比較して、(B)成分としてDINPを使用し、(C)成分を含まないため、バンク回り性、シート収縮性及び柔軟性は良好なものの、制電性が不十分であった。
比較例3では実施例1と比較して(A)成分100部に対する(B)成分の配合量が20部を下回るため、バンク回り性、シート収縮性、制電性及び柔軟性のいずれも不十分であった。
Claims (4)
- アクリル系重合体(A)100質量部、ポリアルキレングリコール及びポリアルキレングリコールの誘導体から選ばれる少なくとも1種の化合物(B)をアクリル系重合体(A)100質量部に対して20〜90質量部、並びにアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩から選ばれる少なくとも1種の化合物(C)をアクリル系重合体(A)100質量部に対して0.01〜5質量部を含有するアクリル系樹脂組成物であって、
アクリル系重合体(A)のテトラヒドロフラン可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィーを測定して得られるクロマトグラムが、分子量5万〜35万と分子量40万〜200万の両方にピークを持ち、
アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩が、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム又はカルシウムのドデシルスルホン酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、カルボン酸塩、過塩素酸塩、塩化塩、臭化塩又はヨウ化塩である、アクリル系樹脂組成物。 - アクリル系重合体(A)のテトラヒドロフラン可溶分の質量平均分子量が10万〜200万である請求項1に記載のアクリル系樹脂組成物。
- アクリル系重合体(A)が、単独重合体にしたときのガラス転移温度が0℃以下を与える単量体単位5〜60質量%を含有する請求項1又は2に記載のアクリル系樹脂組成物。
- 請求項1〜3のいずれかに記載のアクリル系樹脂組成物を成形して得られる成形品。
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