JP4080899B2 - アクリル系重合体粉末、アクリルゾル及び成形物 - Google Patents

アクリル系重合体粉末、アクリルゾル及び成形物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アクリルゾルに好適なアクリル系重合体粉末、該アクリル系重合体粉末及び可塑剤を含有するアクリルゾル、及び該アクリルゾルから得られる成形物に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、工業的に広く用いられているプラスチゾル組成物は、ポリ塩化ビニル(塩ビ)パウダー及び充填剤を可塑剤に分散させて得られる塩ビゾル組成物であり、用途により、さらに顔料、熱安定剤、発泡剤、希釈剤などを配合して使用されている。該塩ビゾル組成物は、自動車用、カーペット用、壁紙用、床用等のコーティング剤、含浸剤、コーキング剤などとして、多くの分野において種々の目的で使用されている。
一方、塩ビゾル組成物の焼却時に発生する塩化水素ガスは、焼却炉を著しく損傷させるという難点を有しており、さらには最近の環境問題上、酸性雨の原因となるばかりでなく地球のオゾン層の破壊原因物質ともなっており、各商品分野でこのような難点のない塩ビゾル組成物に代るプラスチゾル組成物の出現が待たれている。
【0003】
このような要求に対し、燃焼時に塩化水素ガスを発生しないプラスチゾルとして、アクリルゾルが提案されている。例えば、均一組成系のアクリルポリマー粒子を用いたものが知られている(特許文献1参照)が、ジオクチルフタレートのような汎用可塑剤を用いた場合には、該可塑剤の前記粒子への溶解性が高く、混合後数分間でアクリルゾルの粘度上昇が起きて成膜不能となるため、実用上使用することができないという問題があった。またアクリルゾル組成物の貯蔵安定性を向上させるために、アクリルポリマーに可塑剤との相溶性の低い単量体成分を共重合させると、このアクリルゾル組成物を用いる場合には、得られる皮膜表面に可塑剤がブリードアウトしやすいという問題点を有していた。このように、アクリルポリマー粒子を用いた粒子の場合、貯蔵安定性と成膜後の可塑剤保持性(耐ブリードアウト性)との関係は相反するものであり、均一構造の重合体粒子ではこれを満足することは不可能であった。
【0004】
そこでコアシェル構造粒子を用いたアクリルゾル組成物が特許文献2で提案されており、そこでは重合体骨格に酸を含有させたアクリル系重合体が用いられている。しかしながら特許文献2で提案されている重合体は、可塑剤に対する相溶性が低く、フタル酸エステル系可塑剤のように極性の低い可塑剤を用いた場合には可塑化状態が不良となり、良好な塗膜を得ることができない。他に特許文献3においては、同じくコアシェル構造粒子を用いたプラスチゾル組成物が提案されている。ここでは、コアシェル構造粒子といっても、均一構造粒子を製造し、これを後にアルカリ加水分解処理を行うことによって、粒子のごく表面部のエステル基をカルボキシル基に変換するというものである。したがって、シェル部の厚みは極めて薄く、実質的に粒子の体積の1%前後かそれ以下に過ぎない。したがってシェル部の役割として期待される貯蔵安定性の改良効果は極めて低い。また、アルカリ加水分解により導入されたシェル部は酸価が非常に高くなっており、可塑剤に対する相溶性が極めて低く、成膜性を著しく低下させる。またこのような高酸価のシェル部を有する構造粒子はプラスチゾル組成物中で粒子同士が凝集構造を取り易く、その結果、プラスチゾル組成物は低せん断速度では粘性が高くなり、作業性が低下する傾向になる。
【0005】
またコアシェル構造粒子を用いたプラスチゾル組成物の他の例が特許文献4及び特許文献5に提案されている。ここでは基本的に可塑剤に対する相溶性を示すコア部と、可塑剤に対して非相溶性を示すシェル部とからなるコアシェル重合体を用いることにより、ごく基本的な性能(低レベルの貯蔵安定性、低レベルの可塑剤保持性など)を実現している。しかしながら工業的に実用化するためには極めて高い性能(高レベルの貯蔵安定性、高レベルの可塑剤保持性、高レベルの機械的性能(引張強度、引張伸度など)など)が要求されることになり、その点において、上記公報により提案された重合体は、可塑剤との相溶性のバランスが最適化されておらず、貯蔵安定性、塗膜の可塑剤保持性及び塗膜の柔軟性のいずれも低いレベルであり、工業的な実用化には不適当である。
このようにプラスチゾルの最も基本的な性質である貯蔵安定性、可塑剤保持性及び塗膜柔軟性を並立させるために種々の検討がなされているものの、塩ビゾル代替材料としてはいずれも低レベルで工業的な実用レベルに達していないのが現状であった。
【0006】
【特許文献1】
特公昭55−16177号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】
特開平5−279539号公報(特許請求の範囲及び実施例(段落番号0060))
【特許文献3】
特開平6−322225号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】
特開平7−233299号公報(特許請求の範囲)
【特許文献5】
特開平8−295850号公報(特許請求の範囲)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、貯蔵安定性に優れ、かつそれから得られる成形物が柔軟性及び可塑剤保持性に優れ、さらに、塩ビゾルから得られる成形物と違って、焼却時に塩化水素ガスを発生しないアクリルゾルを与えることができるアクリル系重合体粉末、該アクリルゾル及び成形物提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、反応性界面活性剤を用いて重合した層を有する重合体粒子からなるアクリル系重合体粉末を、アクリルゾルの成分として、使用することによって上記の問題点が解決されると共に、アクリルゾルの発泡性も改善されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、
アクリル系重合体粒子を含有するラテックスを凝固乾燥して得られる平均粒子径10〜50μmのアクリル系重合体粉末であって、
アクリル系重合体粒子が、
・メタクリル酸アルキルエステル、必要に応じてメタクリル酸アルキルエステルと共重合可能な他の単量体、及び該メタクリル酸アルキルエステル及びメタクリル酸アルキルエステルと共重合可能な該他の単量体の少なくとも一方と共重合可能な反応性界面活性剤を、メタクリル酸アルキルエステル/該他の単量体の質量比=50/50〜100/0で共重合して得られる共重合体からなる層;並びにメタクリル酸アルキルエステルと必要に応じてメタクリル酸アルキルエステルと共重合可能な他の単量体とを、メタクリル酸アルキルエステル/該他の単量体の質量比=50/50〜100/0で重合して得られる重合体からなる層;から選ばれる複数の層からなり、各層がメタクリル酸アルキルエステル単位及び該他の単量体単位に関して異なる重合体組成を有し、複数の層中少なくとも最外層は上記した、反応性界面活性剤を構成成分とする共重合体からなる層である多層構造重合体粒子であり、
・反応性界面活性剤が、ノニルプロペニルフェノールエチレンオキシド10モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩、ノニルプロペニルフェノールエチレンオキシド20モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩、オクチルジプロペニルフェノールエチレンオキシド10モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩、オクチルジプロペニルフェノールエチレンオキシド100モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩、ドデシルプロペニルフェノールエチレンオキシド20モル・プロピレンオキシド10モルランダム付加体硫酸エステルナトリウム塩、ドデシルプロペニルフェノールブチレンオキシド4モル・エチレンオキシド30モルブロック付加体硫酸エステルナトリウム塩、ノニルプロペニルフェノールエチレンオキシド10モル付加体、ノニルプロペニルフェノールエチレンオキシド20モル付加体、オクチルジプロペニルフェノールエチレンオキシド10モル付加体、オクチルジプロペニルフェノールエチレンオキシド100モル付加体、プロピレンオキシド10モルランダム付加体、プロピレンオキシド10モルランダム付加体、エチレンオキシド30モルブロック付加体、及びポリオキシエチレン−1−(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩から選ばれ、その使用量が、メタクリル酸アルキルエステルと該他の単量体との合計100質量部に対し0.001〜20質量部である
アクリル系重合体粉末、及び可塑剤を含有するアクリルゾル、並びに該アクリルゾルを成形して得られる成形物に関する。
【0010】
ここで、「各層はメタクリル酸アルキルエステル単位及び該他の単量体単位に関して異なる重合体組成を有する」とは、各層のメタクリル酸アルキルエステル単位同士が異なっているか(例えば、メタクリル酸メチル単位とメタクリル酸n−ブチル単位)、比較する層同士が共に、例えば2つの単量体単位を含んでいる場合に、メタクリル酸アルキルエステル単位同士間の組合せが異なっていたり、メタクリル酸アルキルエステル単位と該他の単量体単位との組合せが異なっていたり、2つの単量体単位間の使用比率が異なっているような場合を包含するが、反応性界面活性剤のみが異なる場合(例えば、比較する層同士で反応性界面活性剤単位の種類又は量のみが異なる場合)を含めないことを意図するものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を更に詳細に説明する。
本発明で使用されるアクリル系重合体粒子の構成単量体単位を与える単量体は、メタクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステルと共重合可能な他の単量体、及び該メタクリル酸アルキルエステル及び使用する場合の該他の単量体の少なくとも一方と共重合可能な反応性界面活性剤であり、該他の単量体は、上述した単層構造重合体粒子の場合も多層構造重合体粒子の場合も、任意成分である。
【0012】
上記メタクリル酸アルキルエステルの例としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチルなどが挙げられる。中でも、上記アクリル系重合体粒子を含有するラテックスを凝固乾燥して得られるアクリル系重合体粉末と可塑剤とを含有するアクリルゾル(以下、単に「アクリルゾル」という場合がある)の貯蔵安定性を高め、該アクリルゾルを成膜して得られる皮膜の強度や柔軟性を高める観点から、炭素数1〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステルが好ましく、メタクリル酸メチル、メタクリル酸n−ブチル及びメタクリル酸イソブチルがより好ましい。これらは単独で又は併用して用いることができる。さらに詳しくは、メタクリル酸メチルを単独で用いる場合はアクリルゾルの貯蔵安定性や得られる皮膜の強度は良好であるが、アクリル系重合体粉末と可塑剤との相溶性が若干劣るので、メタクリル酸n−ブチル及び/又はメタクリル酸イソブチルと組み合わせて用いるのが好ましい。この組合せ使用の場合には、アクリル系重合体粉末の可塑剤との相溶性が良く、得られる皮膜は柔軟性、可塑剤保持性に優れる。
【0013】
また、メタクリル酸アルキルエステルと共重合可能な他の単量体の例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル等のアクリル酸エステル;メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル等のメタクリル酸ヒドロキシアルキルエステル;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸等のα、β−不飽和カルボン酸;スチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物;N−プロピルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−o−クロロフェニルマレイミド等のマレイミド系化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物;エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、アリルメタクリレート、トリアリルイソシアヌレート等の多官能性単量体、グリシジルメタクリレートなどが挙げられる。中でも、ガラス転移温度(Tg)の調整や金属との密着性の向上に適することから、アクリル酸n−ブチル等のアクリル酸エステル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル等のメタクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、グリシジルメタクリレート、メタクリル酸などが好ましい。これらは単独または併用して用いることができ、目的や用途に応じて適宜選択することができる。
【0014】
本発明で使用されるアクリル系重合体粒子を得るために使用するメタクリル酸アルキルエステルと該他の単量体との使用比率は、メタクリル酸アルキルエステル/該他の単量体の質量比として、50/50〜100/0であることが必要であり、75/25〜100/0であることが好ましく、85/25〜100/0であることがより好ましい。メタクリル酸アルキルエステルの割合が50/50より小さいと、アクリルゾルを発泡成形する場合に均一な発泡が困難になったり、アクリルゾルを成膜して得られる皮膜の耐ブリードアウト性や強度が低下する傾向になる。
複数のメタクリル酸アルキルエステルを用いる場合のそれらの間での使用比率、及び複数の該他の単量体を用いる場合のそれらの間での使用比率は任意に変化させることができる。
【0015】
本発明で使用されるアクリル系重合体粒子の構成単量体単位を与える単量体の1必須成分としての反応性界面活性剤としては、上記メタクリル酸アルキルエステル及び使用する場合の上記他の単量体の少なくとも一種と重合することができ、かつそれ自身が界面活性能を有するか又は重合により得られる樹脂に界面活性能を付与する性質を有するものならば、いずれも使用することができる。
【0016】
かかる反応性界面活性剤としては、例えば、アルキルフェノキシポリエチレングリコールアクリレート、酸性リン酸メタクリル酸エステル、アルキルアリールフェノキシポリエチレングリコール、ナトリウム−ω−アクリロイルオキシアルキル(トリアルキル)アンモニウム−パラトルエンスルホネート、ナトリウム−ポリスチレンフェニルエーテルスルフェート、ジメチルアミノエチルメタクリレート4級化物、ナトリウム−スルホコハク酸アルキルアルケニルエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルスルホネート、アルキルフェノキシエトキシエチルスルホネート、ナトリウム−ジアルキルスルホサクシネート、アルキルジフェニルエーテルジスルホネート、ノニルプロペニルフェノールエチレンオキシド10モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩、ノニルプロペニルフェノールエチレンオキシド20モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩、オクチルジプロペニルフェノールエチレンオキシド10モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩、オクチルジプロペニルフェノールエチレンオキシド100モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩、ドデシルプロペニルフェノールエチレンオキシド20モル・プロピレンオキシド10モルランダム付加体硫酸エステルナトリウム塩、ドデシルプロペニルフェノールブチレンオキシド4モル・エチレンオキシド30モルブロック付加体硫酸エステルナトリウム塩、ノニルプロペニルフェノールエチレンオキシド10モル付加体、ノニルプロペニルフェノールエチレンオキシド20モル付加体、オクチルジプロペニルフェノールエチレンオキシド10モル付加体、オクチルジプロペニルフェノールエチレンオキシド100モル付加体、プロピレンオキシド10モルランダム付加体、プロピレンオキシド10モルランダム付加体、エチレンオキシド30モルブロック付加体、ポリオキシエチレン−1−(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩などが挙げられる。
【0017】
これらの反応性界面活性剤の中でも、ノニルプロペニルフェノールエチレンオキシド10モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩、ノニルプロペニルフェノールエチレンオキシド20モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩、オクチルジプロペニルフェノールエチレンオキシド10モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩、オクチルジプロペニルフェノールエチレンオキシド100モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩、ドデシルプロペニルフェノールエチレンオキシド20モル・プロピレンオキシド10モルランダム付加体硫酸エステルナトリウム塩、ドデシルプロペニルフェノールブチレンオキシド4モル・エチレンオキシド30モルブロック付加体硫酸エステルナトリウム塩、ノニルプロペニルフェノールエチレンオキシド10モル付加体、ノニルプロペニルフェノールエチレンオキシド20モル付加体、オクチルジプロペニルフェノールエチレンオキシド10モル付加体、オクチルジプロペニルフェノールエチレンオキシド100モル付加体、プロピレンオキシド10モルランダム付加体、プロピレンオキシド10モルランダム付加体、エチレンオキシド30モルブロック付加体、ポリオキシエチレン−1−(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩などが、アクリルゾルの貯蔵安定性やそれから得られる皮膜の柔軟性をより高める観点から、好ましく用いられる。
上記反応性界面活性剤は単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0018】
本発明において、反応性界面活性剤の使用量は、貯蔵安定性、柔軟性及び発泡性を良好にする観点から、アクリル系重合体粒子を構成する全ての層の形成に用いられるメタクリル酸アルキルエステルと該他の単量体との合計100質量部に対し0.001〜20質量部であることが必要であり、0.005〜15質量部であることが好ましく、0.01〜10質量部であるのがより好ましい。
【0019】
本発明において用いられる界面活性剤は、反応性界面活性剤のみを用いることができるが、得られるアクリル系重合体粒子の平均粒子径の調整や重合時における凝集物低減の観点から他の一般の界面活性剤と併用してもよい。かかる一般的な界面活性剤の具体的例としては、アニオン系乳化剤であるジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ジラウリルスルホコハク酸ナトリウム等のジアルキルスルホコハク酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;ドデシル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩;ノニオン系乳化剤であるポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等;ノニオン・アニオン系乳化剤であるポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸塩;ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩;ポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸ナトリウムなどのアルキルエーテルカルボン酸塩等が挙げられ、これらは各単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。上記に例示したノニオン系乳化剤およびノニオン・アニオン系乳化剤の例示化合物における、オキシエチレン単位の平均繰返し数は、乳化剤の発泡性が極端に大きくならないようにするために、30以下であるのが好ましく、20以下であるのがより好ましく、10以下であるのがさらに好ましい。
かかる他の界面活性剤を用いる場合、その使用量は上記目的を達成し得る限り特に制限はないが、通常、メタクリル酸アルキルエステルと該他の単量体との合計100質量部に対し0.001〜20質量部程度であるのが適当である。
【0020】
本発明で使用するアクリル系重合体粒子は、上述のごとく、単層構造重合体粒子であっても多層構造重合体粒子であってもよいが、アクリルゾルの貯蔵安定性やそれから得られる皮膜の柔軟性を高める観点から、多層構造重合体粒子であるのが好ましい。
単層構造重合体粒子の場合、該アクリル系重合体は、メタクリル酸アルキルエステル単位、該他の単量体単位及び反応性界面活性剤単位からなっていてもよいし、メタクリル酸アルキルエステル単位及び反応性界面活性剤単位からなっていてもよい。また、メタクリル酸アルキルエステル単位及び該他の単量体単位の種類は、複数のメタクリル酸アルキルエステル単位及び/又は複数の該他の単量体単位から構成されていてもよいが、重合体組成は単一組成である。
【0021】
多層構造重合体粒子の場合、該アクリル系重合体は、メタクリル酸アルキルエステル単位、該他の単量体単位(任意成分単位)及び反応性界面活性剤単位からなる層、及びメタクリル酸アルキルエステル単位及び該他の単量体単位(任意成分単位)からなる層から選ばれる複数の層からなり、複数の層中少なくとも1層は反応性界面活性剤単位を構成成分とし、かつ各層はメタクリル酸アルキルエステル単位及び該他の単量体単位に関して異なる重合体組成を有する。したがって、該アクリル系重合体は、例えば、2層から構成される場合でも、一方の層がメタクリル酸アルキルエステル単位を含み他方の層が異なるメタクリル酸アルキルエステル単位を含む場合、一方の層がメタクリル酸アルキルエステル単位を含むが該他の単量体単位を含まず他方の層がメタクリル酸アルキルエステル単位及び該他の単量体単位を含む場合、両方の層共2つのメタクリル酸アルキルエステル単位を含むが構成する2つの単位の少なくとも一方が異なる場合(例えば、一方の層がメタクリル酸メチル単位とメタクリル酸n−ブチル単位とを含み、他方の層がメタクリル酸メチル単位とメタクリル酸プロピル単位とを含む場合)、両方の層共メタクリル酸アルキルエステル単位及び該他の単量体単位を含むが構成する2つの単位の少なくとも一方が異なる場合、両方の層が同じ2種のメタクリル酸アルキルエステル単位を含むが両単位の構成比率が異なる場合(例えば、両方の層共メタクリル酸メチル単位とメタクリル酸n−ブチル単位とを含むが両単位の構成比率が異なる場合)、両方の層が同じ2種のメタクリル酸アルキルエステル単位及び該他の単量体単位を含むが両単位の構成比率が異なる場合など種々の形態を取ることができ、該アクリル系重合体が3層や4層から構成される場合には、さらに多くの形態を取ることが可能である。
【0022】
反応性界面活性剤単位は、本発明で使用するアクリル系重合体粒子が単層構造重合体粒子であっても多層構造重合体粒子であっても、アクリル系重合体を構成する単位として必須であるが、多層構造重合体粒子である場合には、各層に存在する必要はなく、全層中の少なくとも1層中に存在すればよい。該多層構造重合体粒子は反応性界面活性剤単位が存在する層を、少なくとも最外層として有することが、アクリルゾルの貯蔵安定性を高める観点から望ましい。
【0023】
本発明において使用されるアクリル系重合体の重量平均分子量(Mw)は、用途に応じて適宜選択されるが、50,000〜3,000,000の範囲内であるのが好ましく、100,000〜2,000,000であるのがより好ましい。重量平均分子量(Mw)が50,000未満であると、アクリルゾルから形成される皮膜の強度が低下する傾向があり、また重量平均分子量(Mw)が3,000,000を超えるとアクリルゾルのゲル化速度が遅くなり生産性が低下する傾向がある。重量平均分子量(Mw)の調整はメルカプタン等の連鎖移動剤を用いて行うことかでき、該メルカプタンとしては、例えば、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、n−ラウリルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン等を用いることができる。また、用途や目的とする性状に応じ、前記他の単量体として多官能性単量体を共重合させて架橋構造やグラフト構造を導入してもよい。
【0024】
本発明のアクリル系重合体粒子の平均粒子径は、特に制限はないが0.01〜30μmであることが好ましく、0.1〜2μmであることがより好ましい。平均粒子径が0.01μm未満であると、アクリルゾルの貯蔵安定性が悪くなり、30μmを超えるとアクリルゾルのゲル化速度が遅くなり生産性が低下する傾向になる。
なお、アクリル系重合体粒子の場合のみでなく、アクリル系重合体粉末の場合も含め、本明細書における平均粒子径は算術平均粒子径を示す。
【0025】
本発明で使用するアクリル系重合体粒子は、例えば乳化重合法やシード重合法のような公知の重合方法により、ラテックス状態で製造することができるが、乳化重合法で製造するのが好ましく、以下、乳化重合法による場合について製法を説明する。
本発明で使用するアクリル系重合体粒子は、1段階の重合反応で形成させるか(単層構造重合体粒子製造の場合)、又は最初の重合反応で形成させた重合体粒子を含有するラテックス中で、単量体組成の異なる1段階以上の重合反応を行うことにより形成させる(多層構造重合体粒子製造の場合)ことができる。
【0026】
本発明で用いられる反応性界面活性剤の重合系への添加方法としては、重合開始前に仕込む方法、メタクリル酸アルキルエステル又はそれと該他の単量体との混合物に滴下する方法等いずれでの方法でもよいが、上記滴下する方法が重合安定性及びアクリルゾルの貯蔵安定性の点から好ましい。
【0027】
乳化重合に際しては、前記した界面活性剤の他に、重合開始剤を使用するが、重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩系開始剤、パースルホキシレート/有機過酸化物、過硫酸塩/亜硫酸塩等のレドックス系開始剤などのいずれの重合開始剤を用いてもよい。
乳化重合において、メタクリル酸アルキルエステル、該他の単量体、界面活性剤、重合開始剤、連鎖移動剤等は、目的とする段階の重合反応に応じて、一括添加、分割添加、連続添加等公知の任意の方法で添加することができる。
【0028】
上記の重合法、特に、乳化重合法によって得られる、アクリル系重合体粒子含有ラテックスを凝固乾燥してアクリル系重合体粉末を得る方法としては、噴霧乾燥法や凍結乾燥法が挙げられ、さらに塩析凝固法によってアクリル系重合体粒子を凝固させた後、脱水及び乾燥によってアクリル系重合体粉末を得る方法も用い得る。この凝固乾燥の間にアクリル系重合体粒子は部分的に凝集し、したがって、アクリル系重合体粉末の平均粒子径は、通常、アクリル系重合体粒子の平均粒子径より大きくなる。これらの凝固乾燥法中、アクリル系重合体粉末の平均粒子径、粒子径分布及び形状(球形が好ましい)を整えやすい利点を有する噴霧乾燥法が好ましい。
【0029】
また、本発明のアクリル系重合体粉末の平均粒子径は5〜100μmであることが好ましく、10〜50μmの範囲内であることがより好ましい。該平均粒子径が5μm未満である場合には、アクリル系重合体粒子がアクリルゾル調製時に微粉として舞うなど取扱いにくくなり、100μmを超えると、ブツ欠点の原因となり、外観を損ね、また皮膜の強度低下を起こしやすくなる(ブツが起点となって亀裂が生じやすい)傾向がある。
【0030】
本発明のアクリル系重合体粉末の用途は特に制限されず、アクリルゾル、樹脂改質剤、粉体塗料等の原料などとして有効に使用することができる。中でも、本発明のアクリル系重合体粉末はアクリルゾルの原料として特に有用である。
したがって、本発明は、また、上記アクリル系重合体粉末及び可塑剤を含有するアクリルゾルを包含する。
本発明のアクリルゾルに使用できる可塑剤は特に制限されず、例えばジメトキシエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジイソノニルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジウンデシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジフェニルオクチルホスフェート、ジメトキシエチルフタレート、ジエトキシエチルフタレート、ジブトキシエチルフタレート、ジエチレングリコールジベンゾエート、ジプロピレングレコールジベンゾエート、アセチルトリブチルシトレート、ジアミルフタレート、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジイソノニル等を挙げることができる。
【0031】
アクリル系重合体粉末と可塑剤との混合比率は、特に制限されないが、アクリル系重合体粉末100質量部当たり、可塑剤50〜500質量部の割合で用いるのが好ましく、50〜200質量部の割合で用いるのがより好ましい。
【0032】
本発明のアクリルゾルを用いて発泡製品を作る場合には、一般に、発泡状態の均一性に優れた発泡製品を得ることができる。アクリルゾルを用いて発泡製品を作る方法としては、機械的に気泡をアクリルゾル中に混合して気泡ゾルを形成させ、これをゲル化させる方法(機械的発泡法)、低沸点の炭化水素をマイクロカプセル中に封入したマイクロカプセル型発泡剤をアクリルゾルに配合しゲル化させる方法、高温でガスを発生する熱分解型発泡剤をアクリルゾルに配合しゲル化させる方法等があり、いずれを用いても上記効果を達成し得るが、熱分解型発泡剤を用いる方法が上記効果の達成においてもっとも好ましい。
【0033】
熱分解型発泡剤を用いる場合には、上記アクリル系重合体粉末、可塑剤及び熱分解型発泡剤を含有するアクゾルを調製し、これを加熱発泡させることにより発泡成形物(発泡体)を形成する。熱分解型発泡剤としては従来から知られている熱分解型発泡剤を、特に制限なく用いることができ、具体的には、例えば、アゾジカルボンアミド、4,4´−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、p−トルエンスルホニルヒドラジド、アゾビスイソブチロジニトリル、アゾジアミノベンゼン、アゾヘキサヒドロベンゾジニトリル、バリウムアゾジカルボキシレート、N,N´−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、N,N´−ジニトロソ−N,N´−ジメチルテレフタルアミド、t−ブチルアミノニトリル、p−トルエンスルホニルアセトンヒドラゾン等の有機系熱分解型発泡剤、重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム等の無機系熱分解型発泡剤を挙げることができる。これらは各単独で又は2種以上任意に組み合わせて用いることができる。これらの熱分解型発泡剤中、取扱いやすく、ガス発生量が多いなどの点から、アゾジカルボンアミド系の熱分解型発泡剤が好ましい。
【0034】
熱分解型発泡剤の添加量は、目的とする発泡体や発泡体層の発泡倍率(比重)、発泡体や積層体の用途、発泡剤のガス発生量などに応じて変化するが、通常、アクリルゾル100質量部に対して、0.05〜30質量部であるのが好ましく、0.1〜20質量部であるのがより好ましい。
【0035】
また、本発明では、上記した熱分解型発泡剤を用いて発泡体を製造するに当たって、発泡を円滑に行わせて、より均一で微細な気泡を有する発泡体を得るために、発泡助剤を併用してもよい。その場合の発泡助剤としては、それぞれの熱分解型発泡剤に対して従来から用いられている発泡助剤を用いることができる。例えば、アゾ系発泡剤、重炭酸ナトリウム、ヒドラジン系発泡剤に対してはカルボン酸金属塩、炭酸カルシウム等の炭酸金属塩、シリカ、アルミナ等の金属酸化物、タルク等の鉱物などの発泡助剤を用いることができ、また、例えば、N,N´−ジニトロソペンタメチレンテトラミンに対しては尿素系化合物、有機酸などの発泡助剤を用いることができる。
【0036】
本発明のアクリルゾルは、さらに充填剤を含有することができる。使用することのできる充填剤としては、例えば、炭化カルシウム、バライタ、クレー、コロイダルシリカ、マイカ粉、珪藻土、カオリン、タルク、ベントナイト、ガラス粉末、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、三酸化アンチモン、二酸化チタン、カーボンブラック、金属石鹸、染料、顔料などを挙げることができる。充填剤の含有量は、特に制限されないが、アクリル系重合体粉末100質量部当たり50〜500質量部の割合であるのが適当である。
【0037】
本発明のアクリルゾルには、上記のほかに、希釈剤として例えばミネラルタービン等の溶剤を加えてオルガノゾル組成物とすることも可能である。さらに目的に応じて各種の添加剤を含有させることができる。該添加剤としては、例えば、接着促進剤、レベリング剤、タック防止剤、離型剤、消泡剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、滑剤、難燃剤、光安定剤、老化防止剤、酸化防止剤、香料等が挙げられ、これらは各単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。これらの成分の含有量は、特に制限されないが、一般に、アクリル系重合体粉末100質量部に対して各々の添加剤について0.01〜20質量部であるのが適当である。
【0038】
本発明のアクリルゾルには、上記のほかに、さらに単官能性単量体、多官能性単量体及び開始剤等を添加しゲル形成時に後架橋をさせてもよい。これらの成分の含有量は、特に制限されないが、一般に、アクリル系重合体粉末100質量部に対して各々の成分について0.001〜30質量部であるのが適当である。
【0039】
本発明のアクリルゾル中の固形分含量については特に制限はないが、特にアクリルゾルの粘度を取り扱いやすい範囲に保ち、また、加工に適したものにする等の観点から、該固形分含量をアクリルゾル全体に対し、20〜80質量%程度にするのが好ましい。
【0040】
本発明のアクリルゾルはアクリル系重合体粉末、液状の可塑剤、粉末の充填剤などをミキサーやニーダーやロールを用いて混合、混練することにより得ることができる。通常は、この後、製造した均一組成のアクリルゾルを常法により脱泡し、金網等で濾過するか、濾過後脱泡する。
【0041】
本発明のアクリルゾルを用いて成形物を得る方法としては、ディップコーティング、ナイフコーティング、ロールコーティング、カーテンフローコーティング等のコーティングや、ディップモールディング、キャストモールディング、スラッシュモールディング、ローテーショナルモールディング等の成形法のほか、浸漬、刷毛塗り、スプレー、静電塗装等の各種の加工方法を採用することができる。
【0042】
本発明のアクリルゾルを用いて成形物であるゲルを形成させるには、アクリルゾルを適当なゲル形成温度及び処理時間条件下に保つことが必要である。ゲル形成温度は70〜260℃の範囲内であり、処理時間は10秒〜90分の範囲内であるのが好ましい。本発明のアクリルゾルは、このゲル化条件で均一な膜を形成することができる。また用途によっては、硬化皮膜に、さらに印刷、エンボス加工、発泡処理などを行うこともできる。また、本発明のアクリルゾルを用いて、公知の発泡性ゾルの成形方法に従ってアクリル系発泡体を得ることができる。例えば、シート状の発泡体を得るためには、公知の適当な発泡剤を含有させたアクリルゾルを適当な厚みのポリエステルフィルム上に、例えば厚さ0.5mmで塗布した後、約140℃の温度で約5分程度加熱溶融し、発泡剤の発泡温度以上の温度で約10分間程度加熱すればよい。
【0043】
本発明のアクリルゾルは、塗料、インキ、接着剤、シーリング剤等として用いることができ、これらを雑貨、玩具、工業部品、電気部品、自動車部品等の成形品に適用することができる。また、例えば紙や布などのシート状物に適用すれば、壁紙、人工皮革、敷物、医療用シート、防水シート等を得ることができ、金属板に適用すれば防食性金属板とすることができる。
【0044】
【実施例】
以下に本発明を参考例、実施例及び比較例により具体的に説明するが、本発明はそれらにより何ら制限されるものではない。なお、以下の参考例、実施例及び比較例における物性値の測定又は評価は、以下の方法により行った。
【0045】
(1)平均粒子径測定
堀場製作所製レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置LA―300を用いて測定した。
(2)貯蔵安定性
アクリルゾル調製1時間後の25℃での粘度(V1)と40℃、10日間放置後の25℃での粘度(V2)とを、BM型粘度計(トキメック社製)でローターNo.4を用い、30rpmで測定し、次式から粘度保持性を求め、下記の評価基準にしたがって貯蔵安定性を評価した。
粘度保持性=V2/V1
[貯蔵安定性の評価基準]
○:粘度保持性が2未満であり、貯蔵安定性が極めて良好である。
△:粘度保持性が2以上3未満であり、貯蔵安定性がほぼ良好である。
×:粘度保持性が3以上であり、貯蔵安定性が極めて不良である。
【0046】
(3)耐ブリードアウト性
圧縮成形機を用いて、150℃にて厚さ1mmのシートを形成した後、25℃で1週間保持後の該皮膜表面における可塑剤のブリードアウト状態を目視観察し、下記の評価基準にしたがって評価した。
[耐ブリードアウト性の評価基準]
○:可塑剤のブリードアウトなし
×:可塑剤のブリードアウトあり
(4)硬度
圧縮成形機を用いて、150℃にて厚さ3mmのシートを形成した後、JISK 6253に準じて、A型硬度計(オスカー製)を用いて測定した。
【0047】
(5)引張り強度及び引張り伸度
圧縮成形機を用いて、150℃にて厚さ1mmのシートを形成した後、オートグラフAG−2000B(島津製作所製)を用いて、JIS K 6723に準じて測定した。
(6)発泡性
アクリルゾルを厚み50μmのポリエステルフィルム上に、厚み1mmで塗布した後、140℃で5分加熱してシートを作成し、このシートを150℃で10分加熱してシート状発泡体を作成した。このシートの発泡状態を目視で観察し、下記の評価基準に従って評価した。
[発泡性の評価基準]
○:均一に発泡している。
×:シートが破れたり、発泡していないところがあるなど、均一に発泡していない部分がある。
【0048】
以下、アクリル系重合体粒子の製造を参考例に、アクリル系重合体粉末及びアクリルゾルの調製及び該アクリルゾルの評価を実施例及び比較例に示す。また、参考例でのアクリル系重合体粒子の製造において各重合段階で用いた単量体組成を表1にまとめて示し、実施例及び比較例で得られたアクリルゾルの評価結果を表2に示す。
【0049】
また参考例、実施例及び比較例中に用いた化合物名及びその略称[( )内]を、下記に示す。
メタクリル酸メチル(MMA)、メタクリル酸n−ブチル(nBMA)、メタクリル酸イソブチル(iBMA)、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(2HEMA)、アクリル酸n−ブチル(BA)、メタクリル酸(MAA)、グリシジルメタクリレート(GMA)、ジアセトンアクリルアミド(DAAM)、アリルメタクリレート(ALMA)、n−オクチルメルカプタン(nOM)、過硫酸カリウム(KPS)、ノニルプロペニルフェノールエチレンオキシド10モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩(HS10)、ポリオキシエチレン−1−(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(KH05)、4-シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジイソノニル(DISDC)、ジイソノニルフタレート(DINP)。
【0050】
<参考例1>
(1)攪拌機、温度計、窒素ガス導入部、単量体導入管及び還流冷却器を備えた反応器内に、脱イオン水2700質量部、ラウリル硫酸ナトリウム0.09質量部及び炭酸ナトリウム1.8質量部を仕込み、容器内を窒素ガスで十分に置換して実質的に酸素がない状態にした後、内温を80℃に設定した。そこに、KPS0.18質量部を投入し、5分間攪拌した後、MMA30質量%及びiBMA70質量%からなる混合物90質量部を15分かけて連続的に滴下供給し、添加終了後、重合率が98%以上になるようにさらに30分間重合反応を行った。
(2)ついで、同反応器内に、KPS0.63質量部を投入して5分間攪拌した後、MMA29.8質量%、iBMA69.7質量%及びHS10(反応性界面活性剤)0.5質量%からなる混合物630質量部を50分間かけて連続的に滴下供給し、添加終了後、重合率が98%以上になるようにさらに30分間重合反応を行った。
【0051】
(3)ついで、同反応器内に、KPS0.36質量部を投入して5分間攪拌した後、MMA49.5質量%、iBMA49.5質量%及びHS10(反応性界面活性剤)1.0質量%からなる混合物360質量部を30分間かけて連続的に滴下供給し、添加終了後、重合率が98%以上になるようにさらに30分間重合反応を行った。
(4)ついで、同反応器内に、KPS0.72質量部を投入して5分間攪拌した後、MMA59.4質量%、iBMA34.6質量%、2HEMA2.5質量%、MAA2.5質量%及びHS10(反応性界面活性剤)1.0質量%からなる混合物720質量部を60分間かけて連続的に滴下供給し、添加終了後、重合率が98%以上になるようにさらに60分間重合反応を行って、アクリル系重合体粒子(I−1)を含むラテックスを得た。該アクリル系重合体粒子の平均粒子径は0.7μmであった。
【0052】
<参考例2>
(1)攪拌機、温度計、窒素ガス導入部、単量体導入管及び還流冷却器を備えた反応器内に、脱イオン水2700質量部及び炭酸ナトリウム1.8質量部を仕込み、容器内を窒素ガスで十分に置換して実質的に酸素がない状態にした後、内温を80℃に設定した。そこに、KPS0.36質量部を投入し、5分間攪拌した後、MMA29.8質量%、BA69.5質量%、ALMA0.2質量%及び芳香族リン酸エステル(商品名:アデカコールCS−141E、旭電化)0.5質量%からなる混合物360質量部を30かけて連続的に滴下供給し、添加終了後、重合率が98%以上になるようにさらに30分間重合反応を行った。
(2)ついで、同反応器内に、KPS0.36質量部を投入して5分間攪拌した後、MMA50質量%、nBMA24.5質量%、iBMA24.5質量%、及び芳香族リン酸エステル(商品名:アデカコールCS-141E、旭電化)1.0質量%からなる混合物720質量部を60分間かけて連続的に滴下供給し、添加終了後、重合率が98%以上になるようにさらに30分間重合反応を行った。
【0053】
(3)ついで、同反応器内に、KPS0.36質量部を投入して5分間攪拌した後、MMA78.4質量%、iBMA20.0質量%、n−OM(連鎖移動剤)0.7質量%及びKH05(反応性界面活性剤)0.9質量%からなる混合物720質量部を60分間かけて連続的に滴下供給し、添加終了後、重合率が98%以上になるようにさらに60分間重合反応を行って、アクリル系重合体粒子(I−2)を含むラテックスを得た。該アクリル系重合体粒子の平均粒子径は0.5μmであった。
【0054】
<参考例3>
(1)攪拌機、温度計、窒素ガス導入部、単量体導入管及び還流冷却器を備えた反応器内に、脱イオン水2700質量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.09質量部及び炭酸ナトリウム1.8質量部を仕込み、容器内を窒素ガスで十分に置換して実質的に酸素がない状態にした後、内温を80℃に設定した。そこに、KPS0.18質量部を投入し、5分間攪拌した後、MMA20質量%及びiBMA80質量%からなる混合物360質量部を60分かけて連続的に滴下供給し、添加終了後、重合率が98%以上になるようにさらに30分間重合反応を行った。
(2)ついで、同反応器内に、KPS0.18質量部を投入して5分間攪拌した後、MMA29質量%、iBMA69質量%及びHS10(反応性界面活性剤)2.0質量%からなる混合物360質量部を60分間かけて連続的に滴下供給し、添加終了後、重合率が98%以上になるようにさらに30分間重合反応を行った。
【0055】
(3)ついで、同反応器内に、KPS0.38質量部を投入して5分間攪拌した後、MMA60質量%、iBMA37質量%、GMA2質量%及びHS10(反応性界面活性剤)1質量%からなる混合物720質量部を120分間かけて連続的に滴下供給し、添加終了後、重合率が98%以上になるようにさらに30分間重合反応を行った。
(4)ついで、同反応器内に、KPS0.18質量部を投入して5分間攪拌した後、MMA65質量%、iBMA23質量%、2HEMA5質量%、DAAM5質量%及びMAA2質量%からなる混合物360質量部を60分間かけて連続的に滴下供給し、添加終了後、重合率が98%以上になるようにさらに60分間重合反応を行って、アクリル系重合体粒子(I−3)を含むラテックスを得た。該アクリル系重合体粒子の平均粒子径は0.45μmであった。
【0056】
<参考例4>
(1)攪拌機、温度計、窒素ガス導入部、単量体導入管及び還流冷却器を備えた反応器内に、脱イオン水2700質量部及び炭酸ナトリウム1.8質量部を仕込み、容器内を窒素ガスで十分に置換して実質的に酸素がない状態にした後、内温を80℃に設定した。そこに、KPS0.18質量部を投入し、5分間攪拌した後、MMA40質量%、iBMA59.49質量%、nOM(連鎖移動剤)0.01質量%及びHS10(反応性界面活性剤)0.5質量%からなる混合物90質量部を15分かけて連続的に滴下供給し、添加終了後、重合率が98%以上になるようにさらに30分間重合反応を行った。
(2)ついで、同反応器内に、KPS0.63質量部を投入して5分間攪拌した後、MMA29.5質量%、iBMA64.5質量%、BA5質量%及びポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸ナトリウム(商品名:ECT−3NEX、日本サーファクタント工業)1質量%からなる混合物360質量部を50分間かけて連続的に滴下供給し、添加終了後、重合率が98%以上になるようにさらに30分間重合反応を行った。
【0057】
(3)ついで、同反応器内に、KPS0.36質量部を投入して5分間攪拌した後、MMA49質量%、iBMA44質量%、BA5質量%及びポリオキシエチレンラウリルエーテル(商品名:エマルゲン130K、花王)2質量%からなる混合物360質量部を30分間かけて連続的に滴下供給し、添加終了後、重合率が98%以上になるようにさらに30分間重合反応を行った。
(4)ついで、同反応器内に、KPS0.72質量部を投入して5分間攪拌した後、MMA62質量%、iBMA30質量%、2HEMA5質量%及びHS−10(反応性界面活性剤)3質量%からなる混合物990質量部を60分間かけて連続的に滴下供給し、添加終了後、重合率が98%以上になるようにさらに60分間重合反応を行ってアクリル系重合体粒子(I−4)を含むラテックスを得た。該アクリル系重合体粒子の平均粒子径は0.6μmであった。
【0058】
<参考例5>
(1)攪拌機、温度計、窒素ガス導入部、単量体導入管及び還流冷却器を備えた反応器内に、脱イオン水2700質量部及び炭酸ナトリウム1.8質量部を仕込み、容器内を窒素ガスで十分に置換して実質的に酸素がない状態にした後、内温を80℃に設定した。そこに、KPS0.18質量部を投入し、5分間攪拌した後、MMA70質量%、BA29質量%及びKH05(反応性界面活性剤)1質量%からなる混合物90質量部を15分かけて連続的に滴下供給し、添加終了後、重合率が98%以上になるようにさらに30分間重合反応を行った。
(2)ついで、同反応器内に、KPS0.63質量部を投入して5分間攪拌した後、MMA70質量%、BA29.5質量%及びHS10(反応性界面活性剤)0.5質量%からなる混合物630質量部を50分間かけて連続的に滴下供給し、添加終了後、重合率が98%以上になるようにさらに30分間重合反応を行った。
【0059】
(3)ついで、同反応器内に、KPS0.36質量部を投入して5分間攪拌した後、MMA80質量%、BA19質量%及びKH05(反応性界面活性剤)1質量%からなる混合物360質量部を30分間かけて連続的に滴下供給し、添加終了後、重合率が98%以上になるようにさらに30分間重合反応を行った。
(4)ついで、同反応器内に、KPS0.72質量部を投入して5分間攪拌した後、MMA85質量%、BA12質量%及びポリオキシエチレンラウリルエーテル(商品名:エマルゲン130K、花王)3質量%からなる混合物720質量部を60分間かけて連続的に滴下供給し、添加終了後、重合率が98%以上になるようにさらに60分間重合反応を行ってアクリル系重合体粒子(I−5)を含むラテックスを得た。該アクリル系重合体粒子の平均粒子径は0.6μmであった。
【0060】
<参考例6>
(1)攪拌機、温度計、窒素ガス導入部、単量体導入管及び還流冷却器を備えた反応器内に、脱イオン水2700質量部及び炭酸ナトリウム1.8質量部を仕込み、容器内を窒素ガスで十分に置換して実質的に酸素がない状態にした後、内温を80℃に設定した。そこに、KPS0.36質量部を投入し、5分間攪拌した後、MMA29質量%、BA69質量%、ALMA1.0質量%及び芳香族リン酸エステル(商品名:アデカコールCS-141E、旭電化)1.0質量%からなる混合物360質量部を30かけて連続的に滴下供給し、添加終了後、重合率が98%以上になるようにさらに30分間重合反応を行った。
(2)ついで、同反応器内に、KPS0.36質量部を投入して5分間攪拌した後、MMA40質量%、MAA30質量%、2HEMA28質量%及び芳香族リン酸エステル(商品名:アデカコールCS-141E、旭電化)2質量%からなる混合物720質量部を60分間かけて連続的に滴下供給し、添加終了後、重合率が98%以上になるようにさらに30分間重合反応を行った。
【0061】
(3)ついで、同反応器内に、KPS0.36質量部を投入して5分間攪拌した後、MMA40質量%、MAA30質量%、2HEMA28質量%及びHS10(反応性界面活性剤)2質量%からなる混合物720質量部を60分間かけて連続的に滴下供給し、添加終了後、重合率が98%以上になるようにさらに60分間重合反応を行ってアクリル系重合体粒子(I−6)を含むラテックスを得た。該アクリル系重合体粒子の平均粒子径は0.5μmであった。
【0062】
<参考例7>
実施例1に使用したHS10に代えて、ポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸ナトリウム(商品名:ECT−3NEX、日本サーファクタント工業)を用い、他の条件は参考例1と同様にして、アクリル系重合体粒子(I−7)を含むラテックスを得た。該アクリル系重合体粒子の平均粒子径は0.7μmであった。
【0063】
<参考例8>
実施例1に使用したHS10に代えて、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(商品名:エマルゲン130K、花王)を用い、他の条件は参考例1と同様にして、アクリル系重合体粒子(I−8)を含むラテックスを得た。該アクリル系重合体粒子の平均粒子径は0.7μmであった。
【0064】
<実施例1>
アクリル系重合体粒子(I―1)を含むラテックスをスプレードライヤー[L−8型、大川原化工機(株)製]を用いて粉体化し、平均粒子径18μmのアクリル系重合体粉末(A−1)を得た。該粉末(A−1)100質量部にDINP100質量部を加え、二軸脱泡ミキサー(小平製作所社製)で混合後、脱気してアクリルゾルを調製した後に、貯蔵安定性、耐ブリードアウト性、硬度、引張り強度及び引張り伸度を評価した。また、該粉末(A−1)100質量部にDINP100質量部及びアゾジカルボンアミド(商品名:ユニフォームAZ M−1、大塚化学)5質量部を加え、二軸脱泡ミキサー(小平製作所社製)で混合後、脱気してアクリルゾルを調製し、その発泡性を評価した。
【0065】
<実施例2>
アクリル系重合体粒子(I−2)を含むラテックスを実施例1と同様にして粉体化し、平均粒子径22μmのアクリル系重合体粉末(A−2)を得た。該粉末(A−2)100質量部にDISDC100質量部を加え、実施例1と同様にしてアクリルゾルを調製し、貯蔵安定性、耐ブリードアウト性、硬度、引張り強度及び引張り伸度を評価した。また、該粉末(A−2)100質量部にDISDC100質量部及びアゾジカルボンアミド(商品名:ユニフォームAZ M−1、大塚化学)5質量部を加え、二軸脱泡ミキサー(小平製作所社製)で混合後、脱気してアクリルゾルを調製し、その発泡性を評価した。
【0066】
参考例3>(評価例)
アクリル系重合体粒子(I−3)を含むラテックスを実施例1と同様にして粉体化し、平均粒子径25μmのアクリル系重合体粉末(A−3)を得た。該粉末(A−3)100質量部にDINP100質量部を加え、実施例1と同様にしてアクリルゾルを調製し、貯蔵安定性、耐ブリードアウト性、硬度、引張り強度及び引張り伸度を評価した。また、アクリル系重合体粉末(A−1)の代りにアクリル系重合体粉末(A−3)を用いる以外実施例1と同様にしてアクリルゾルの発泡性を評価した。
【0067】
<実施例4>
アクリル系重合体粒子(I−4)を含むラテックスを実施例1と同様にして粉体化し、平均粒子径20μmのアクリル系重合体粉末(A−4)を得た。該粉末(A−4)100質量部にDINP100質量部を加え、実施例1と同様にしてアクリルゾルを調製し、貯蔵安定性、耐ブリードアウト性、硬度、引張り強度及び引張り伸度を評価した。また、アクリル系重合体粉末(A−1)の代りにアクリル系重合体粉末(A−4)を用いる以外実施例1と同様にしてアクリルゾルの発泡性を評価した。
【0068】
参考例5>(評価例)
アクリル系重合体粒子(I−5)を含むラテックスを実施例1と同様にして粉体化し、平均粒子径23μmのアクリル系重合体粉末(A−5)を得た。該粉末(A−5)100質量部にDISDC100質量部を加え、実施例1と同様にしてアクリルゾルを調製し、貯蔵安定性、耐ブリードアウト性、硬度、引張り強度及び引張り伸度を評価した。また、アクリル系重合体粉末(A−2)の代りにアクリル系重合体粉末(A−5)を用いる以外実施例2と同様にしてアクリルゾルの発泡性を評価した。
【0069】
<比較例1>
アクリル系重合体(I−6)を含むラテックスを実施例1と同様にして粉体化し、平均粒子径17μmのアクリル系重合体粉末(A−6)を得た。該粉末(A−6)100質量部にDISDC100質量部を加え、実施例1と同様にしてアクリルゾルを調製し、貯蔵安定性、耐ブリードアウト性、硬度、引張り強度及び引張り伸度を評価した。また、アクリル系重合体粉末(A−2)の代りにアクリル系重合体粉末(A−6)を用いる以外実施例2と同様にしてアクリルゾルの発泡性を評価した。
【0070】
<比較例2>
アクリル系重合体(I−7)を含むラテックスを実施例1と同様にして粉体化し、平均粒子径20μmのアクリル系重合体粉末(A−7)を得た。該粉末(A−7)100質量部にDINP100質量部を加え、実施例1と同様にしてアクリルゾルを調製し、貯蔵安定性、耐ブリードアウト性、硬度、引張り強度及び引張り伸度を評価した。また、アクリル系重合体粉末(A−1)の代りにアクリル系重合体粉末(A−7)を用いる以外実施例1と同様にしてアクリルゾルの発泡性を評価した。
【0071】
<比較例3>
アクリル系重合体(I−8)を含むラテックスを実施例1と同様にして粉体化し、平均粒子径19μmのアクリル系重合体粉末(A−8)を得た。該粉末(A−8)100質量部にDINP100質量部を加え、実施例1と同様にしてアクリルゾルを調製し、貯蔵安定性、耐ブリードアウト性、硬度、引張り強度及び引張り伸度を評価した。また、アクリル系重合体粉末(A−1)の代りにアクリル系重合体粉末(A−8)を用いる以外実施例1と同様にしてアクリルゾルの発泡性を評価した。
【0072】
【表1】
【0073】
【表2】
【0074】
実施例1、2および4は貯蔵安定性、耐ブリードアウト性及び柔軟性に優れ、他の物性も良好である。ただ、反応性界面活性剤を最外層に配さず内部層に配した参考例3及び5は貯蔵安定性は良好ではあるが、他の実施例に比し少し劣っている。比較例1は反応性界面活性剤を使用しているものの、単量体組成でメタクリル酸アルキルエステルの量が少なく、その代わりにMAAや2−HEMAなどアクリル系重合体粉末と可塑剤との相溶性を低下させる親水性単量体を多量に共重合しているため、貯蔵安定性は良好であるが、粘度が高く、均一に発泡せず、ブリードアウトも顕著で、硬く、引張り伸度も非常に低い。比較例2、3は単量体組成は実施例1と同じであるが、反応性界面活性剤に代えて一般の界面活性剤を使用しているため、他の物性はそれほど変わらないが、貯蔵安定性が極端に劣っており、また発泡性も劣っている。
【0075】
【発明の効果】
本発明のアクリル系重合体粉末を可塑剤と混合することにより得られるアクリルゾルは、貯蔵安定性及び発泡性に優れ、かつそれから得られる成形物が柔軟性及び可塑剤保持性に優れ、さらに、塩ビゾルから得られる成形物と違って、焼却時に塩化水素ガスを発生させることがないアクリルゾルである。

Claims (3)

  1. アクリル系重合体粒子を含有するラテックスを凝固乾燥して得られる平均粒子径10〜50μmのアクリル系重合体粉末であって、
    アクリル系重合体粒子が、
    ・メタクリル酸アルキルエステル、必要に応じてメタクリル酸アルキルエステルと共重合可能な他の単量体、及び該メタクリル酸アルキルエステル及びメタクリル酸アルキルエステルと共重合可能な該他の単量体の少なくとも一方と共重合可能な反応性界面活性剤を、メタクリル酸アルキルエステル/該他の単量体の質量比=50/50〜100/0で共重合して得られる共重合体からなる層;並びにメタクリル酸アルキルエステルと必要に応じてメタクリル酸アルキルエステルと共重合可能な他の単量体とを、メタクリル酸アルキルエステル/該他の単量体の質量比=50/50〜100/0で重合して得られる重合体からなる層;から選ばれる複数の層からなり、各層がメタクリル酸アルキルエステル単位及び該他の単量体単位に関して異なる重合体組成を有し、複数の層中少なくとも最外層は上記した、反応性界面活性剤を構成成分とする共重合体からなる層である多層構造重合体粒子であり、
    ・反応性界面活性剤が、ノニルプロペニルフェノールエチレンオキシド10モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩、ノニルプロペニルフェノールエチレンオキシド20モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩、オクチルジプロペニルフェノールエチレンオキシド10モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩、オクチルジプロペニルフェノールエチレンオキシド100モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩、ドデシルプロペニルフェノールエチレンオキシド20モル・プロピレンオキシド10モルランダム付加体硫酸エステルナトリウム塩、ドデシルプロペニルフェノールブチレンオキシド4モル・エチレンオキシド30モルブロック付加体硫酸エステルナトリウム塩、ノニルプロペニルフェノールエチレンオキシド10モル付加体、ノニルプロペニルフェノールエチレンオキシド20モル付加体、オクチルジプロペニルフェノールエチレンオキシド10モル付加体、オクチルジプロペニルフェノールエチレンオキシド100モル付加体、プロピレンオキシド10モルランダム付加体、プロピレンオキシド10モルランダム付加体、エチレンオキシド30モルブロック付加体、及びポリオキシエチレン−1−(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩から選ばれ、その使用量が、メタクリル酸アルキルエステルと該他の単量体との合計100質量部に対し0.001〜20質量部である
    アクリル系重合体粉末、及び可塑剤を含有するアクリルゾル
  2. 熱分解型発泡剤を含有する請求項記載のアクリルゾル。
  3. 請求項又は記載のアクリルゾルから得られる成形物。
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