JP2007070443A - 塩化ビニル系樹脂用粘着改良剤および塩化ビニル系樹脂組成物 - Google Patents

塩化ビニル系樹脂用粘着改良剤および塩化ビニル系樹脂組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】塩化ビニル系樹脂の高温金属面との粘着防止効果を飛躍的に増大させ、長時間の安定した成形加工を可能にし、かつ表面性が優れた成形体を得るための塩化ビニル系樹脂用粘着改良剤、およびこれを含む塩化ビニル系樹脂組成物の提供。
【解決手段】ガラス転移温度が50℃以下かつ体積平均粒子径が50〜500μmの範囲である重合体粒子(A−1)100重量部を、体積平均粒子径が0.01〜0.5μmの重合体粒子(A−2)0.5〜30重量部で被覆した塩化ビニル系樹脂用粘着改良剤であって、前記重合体粒子(A−1)は、(a)エステル結合の他に酸素原子を有するアルキル(メタ)アクリレート0.1〜10重量%と、(b)他のアルキルアクリレート10〜99.9重量%と、(c)これらと共重合可能な他のビニルモノマー0〜89.9重量%を重合して得られ、重量平均分子量が5,000〜30万である。
【選択図】なし

Description

本発明は、塩化ビニル系樹脂のカレンダー成形、押出成形、射出成形などの成形加工において高温金属面との粘着防止性に優れた塩化ビニル系樹脂組成物に関するものである。
ポリ塩化ビニル樹脂、後塩素化ポリ塩化ビニル樹脂に代表される塩化ビニル系樹脂は、耐衝撃性や耐熱性、透明性などの物理的性質および耐溶剤性、耐酸性、耐アルカリ性などの化学的性質に優れた成形体を与えるため、包材、建材、ボード、パイプ、そのほか種々の分野で広く使用されている。
しかしながら、塩化ビニル系樹脂は、一般に溶融粘度が高く、流動性が悪く、かつ熱分解しやすいため成形加工領域が狭いばかりでなく、高温加工において装置の金属表面に粘着する傾向を生じる。
かかる課題を解決する方法として、この成形機金属面への粘着性を改善させることを目的として、塩化ビニル系樹脂にスチレンとアルキル(メタ)アクリレート及びエステル結合の他に酸素原子を有する(メタ)アクリレートの共重合体を加える方法(特許文献1または2参照)が検討され改良効果が認められているが、必ずしも市場の要求を充分に満足するものではない。
塩化ビニル系樹脂用粘着改良剤としては一般に低分子量になるほど、溶融した塩化ビニル系樹脂の高温金属面からの剥離性を向上させることができるが、より低分子量の粘着改良剤を製造する場合、乾燥工程において重合体が熱融着したり、パウダーブロッキング性が悪化するという問題があり、従来の方法では低分子量化の範囲が制限されていた。
特開昭58−56536号公報 特開2001-2876号公報
本発明は、塩化ビニル系樹脂の高温金属面との粘着防止効果を飛躍的に増大させ、カレンダー成形、押出成形、および射出成形において長時間の安定した成形加工を可能にし、かつ表面性が優れた成形体を得るための塩化ビニル系樹脂用粘着改良剤、およびこれを含む塩化ビニル系樹脂組成物を得ることを課題とする。
また、低分子量の重合体を製造する場合における乾燥工程での熱融着の問題、パウダーブロッキング性が悪化する問題を解決することを課題とする。
本発明者らは、前記のような実状に基づき鋭意検討を行なった結果、特定の種類および量の単量体混合物を、例えば懸濁重合法により重合し、その重合体粒子の表面を特定の重合体粒子で被覆して得られる重合体を塩化ビニル系樹脂用の粘着改良剤として用いることにより、従来の技術には見られない飛躍的な粘着防止効果が得られ、前記課題が一挙に解決されることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち本発明の第1は、ガラス転移温度が50℃以下かつ体積平均粒子径が50〜500μmの範囲である重合体粒子(A−1)100重量部を、体積平均粒子径が0.01〜0.5μmの重合体粒子(A−2)0.5〜30重量部で被覆した塩化ビニル系樹脂用粘着改良剤(A)であって、前記重合体粒子(A−1)が、(a)エステル結合の他に酸素原子を有するアルキル(メタ)アクリレート0.1〜10重量%と、(b)他のアルキルアクリレート10〜99.9重量%と、(c)これらと共重合可能な他のビニルモノマー0〜89.9重量%[(a)、(b)、(c)を合わせて100重量%]を重合して得られ、重量平均分子量が5,000〜30万であることを特徴とする、塩化ビニル系樹脂用粘着改良剤に関する。
好ましい実施態様は、重合体粒子(A−1)におけるエステル結合の他に酸素原子を有するアルキル(メタ)アクリレートが、エポキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基から選ばれる1種または2種以上の極性基を含有することを特徴とする、前記の塩化ビニル系樹脂用粘着改良剤に関する。
好ましい実施態様は、重合体粒子(A−1)における他のアルキルアクリレートが、炭素数1〜8のアルキル基を含有することを特徴とする、前記いずれかに記載の塩化ビニル系樹脂用粘着改良剤に関する。
好ましい実施態様は、重合体粒子(A−1)の重量平均分子量が、5,000〜5万であることを特徴とする、前記いずれかに記載の塩化ビニル系樹脂用粘着改良剤に関する。
好ましい実施態様は、体積平均粒子径が0.01〜0.5μmの重合体粒子(A−2)のビカット軟化温度が80℃以上であることを特徴とする、前記いずれかに記載の塩化ビニル系樹脂用粘着改良剤に関する。
好ましい実施態様は、体積平均粒子径が0.01〜0.5μmの重合体粒子(A−2)が、メチルメタクリレート50〜95重量%、炭素数2〜8のアルキル基を有するアルキルメタクリレート5〜50重量%、およびこれらと共重合可能なビニル単量体0〜20重量%との混合物60〜95重量部を重合し、その生成重合体ラテックスの存在下にアルキルアクリレートおよびメチルメタクリレートを除くアルキルメタクリレートより選ばれた1種以上の単量体20〜80重量%、メチルメタクリレート20〜80重量%、およびこれらと共重合可能なビニル単量体0〜20重量%との混合物5〜40重量部を合計量が100重量部になるように添加、重合することにより得られることを特徴とする、前記いずれかに記載の塩化ビニル系樹脂用粘着改良剤に関する。
好ましい実施態様は、体積平均粒子径が0.01〜0.5μmの重合体粒子(A−2)が、メチルメタクリレート、これと共重合可能な単量体および架橋性単量体からなる混合物を重合してなる重合体の存在下に、アルキルアクリレート、これと共重合可能な単量体および架橋性単量体からなる混合物を重合して得られる2層重合体の存在下に、さらにアルキル(メタ)アクリレートおよびこれと共重合可能な単量体を含有する単量体混合物を重合してなる少なくとも3層構造を有することを特徴とする、前記いずれかに記載の塩化ビニル系樹脂用粘着改良剤に関する。
好ましい実施態様は、体積平均粒子径が0.01〜0.5μmの重合体粒子(A−2)が、(a)ブタジエン30〜100重量%、芳香族ビニル単量体0〜70重量%、これらと共重合可能なビニル単量体0〜10重量%、及び架橋性単量体0〜5重量%を含む単量体混合物を重合して得られるブタジエン系共重合体のコア40〜90重量部、(b)芳香族ビニル単量体60〜98重量%、ヒドロキシ基またはアルコキシ基を含有するアルキル(メタ)アクリレート2〜40重量%、及びこれらと共重合可能なビニル単量体0〜20重量%を含む単量体混合物を重合してなる内層シェル5〜40重量部、(c)芳香族ビニル単量体10〜100重量%、アルキル基の炭素数1〜8のアルキル(メタ)アクリレート0〜90重量%、及びこれらと共重合可能なビニル単量体0〜50重量%を含む単量体混合物を重合してなる外層シェル5〜20重量部[(a)、(b)、(c)を合わせて100重量部]からなるコア−シェル型グラフト共重合体であることを特徴とする、前記いずれかに記載の塩化ビニル系樹脂用粘着改良剤に関する。
本発明の第2は、塩化ビニル系樹脂(B)100重量部に対して、前記いずれかに記載の塩化ビニル系樹脂用粘着改良剤(A)0.05〜10重量部を含有する塩化ビニル系樹脂組成物に関する。
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物は、高温金属面との粘着防止効果が改良されており、カレンダー成形、押出成形、射出成形において安定した加工が可能となる。
また本発明で用いられる塩化ビニル系樹脂用の粘着改良剤は、例えば懸濁重合法により製造した場合は、低分子量であるためにガラス転移温度が低く、そのままでは製造時の乾燥工程における熱融着の問題や、パウダーブロッキング性の悪化等の問題が生じやすいが、その表面を例えば乳化重合法により得られた平均粒子径が0.01〜0.5μmの重合体粒子で被覆することにより、熱融着性を大幅に改善することができる。
本発明においては、ガラス転移温度が50℃以下かつ体積平均粒子径が50〜500μmの範囲である重合体粒子(A−1)100重量部を、体積平均粒子径が0.01〜0.5μmの重合体粒子(A−2)0.5〜30重量部で被覆した塩化ビニル系樹脂用粘着改良剤であって、前記重合体粒子(A−1)が、(a)エステル結合の他に酸素原子を有するアルキル(メタ)アクリレート0.1〜10重量%と、(b)他のアルキルアクリレート10〜99.9重量%と、(c)これらと共重合可能な他のビニルモノマー0〜89.9重量%[(a)、(b)、(c)を合わせて100重量%]を重合して得られ、重量平均分子量が5,000〜30万である、塩化ビニル系樹脂用粘着改良剤を用いることに特徴を有する。
本発明で用いられる粘着改良剤(A)は、例えば、塩化ビニル系樹脂(B)100重量部に対し、0.05〜10重量部を配合することにより、塩化ビニル系樹脂が本来有する、優れた物理的、化学的特性を損なうことなく、カレンダー成形、押出成形、射出成形などにおける溶融加工時の高温金属面との粘着を飛躍的に改善させることができ、期待される効果を顕著に発現させることができる。
本発明における粘着改良剤(A)の調製に用いられる(A−1)は、塩化ビニル系樹脂の高温金属面との粘着防止効果を向上させる観点から、エステル結合の他に酸素原子を有するアルキル(メタ)アクリレートが共重合された重合体粒子であることが好ましく、さらにはエポキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基から選ばれる1種または2種以上の極性基を含有することが好ましい。中でもエポキシ基、ヒドロキシ基がより好ましく、エポキシ基がとくに好ましい。
前記重合体粒子(A−1)の調製についてはとくに限定されるものではないが、重合体粒子(A−1)を構成する単量体成分として、エポキシ基含有(メタ)アクリレート、ヒドロキシ基含有アルキル(メタ)アクリレート、アルコキシ基含有アルキル(メタ)アクリレートなどの官能基を有する(メタ)アクリレートなどの単量体を含有することが好ましい。中でも粘着防止効果が良好である点から、エポキシ基含有(メタ)アクリレートを含有することが好ましい。なお、本発明において、とくに断らない限り、例えば(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよび/またはメタクリレートを意味する。
前記エポキシ基含有(メタ)アクリレートの具体例としては、たとえばグリシジルアクリレートなどのエポキシ基含有アクリレート、グリシジルメタクリレートなどのエポキシ基含有メタクリレートなどが例示されうる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらは重合体粒子(A−1)中に、0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜5重量%、さらに好ましくは1〜3重量%含まれることが、安定したカレンダー成形、押出成形、射出成形等が可能なレベルまで塩化ビニル系樹脂組成物の粘着防止効果を向上させる点から好ましい。
前記ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレートなどが例示されうる。前記アルコキシ基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、エトキシメタクリレート、エトキシアクリレート、メトキシメタクリレート、メトキシアクリレートなどが例示されうる。
本発明においては、前記重合体粒子(A−1)が、(a)エステル結合の他に酸素原子を有するアルキル(メタ)アクリレート0.1〜10重量%と、(b)他のアルキルアクリレート10〜99.9重量%と、(c)これらと共重合可能な他のビニルモノマー0〜89.9重量%[(a)、(b)、(c)を合わせて100重量%]を重合することにより得られることがより好ましい。
例えば、上記(b)成分となる(a)以外のアクリレートとしてはとくに制限はないが、例えば2−エチルヘキシルアクリレート、ブチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルアクリレートなどのアルキル基の炭素数1〜8のアルキルアクリレートが好ましく例示されうる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらは前記重合体粒子(A−1)中に、10〜99.9重量%、好ましくは20〜99.5重量%、さらに好ましくは30〜99重量%含まれることが、塩化ビニル系樹脂の粘着防止効果を、安定したカレンダー成形、押出成形、射出成形が可能なレベルまで向上させる点から好ましい。
前記の(c)これらと共重合可能な他のビニルモノマーとしては、(a)エステル結合の他に酸素原子を有するアルキル(メタ)アクリレート、(b)(a)以外のアクリレート等と共重合可能であればとくに制限はされないが、例えば、2−エチルヘキシルメタクリレート、ブチルメタクリレート、エチルメタクリレート、メチルメタクリレートなどのアルキル基の炭素数1〜8のアルキルメタクリレートが好ましく例示されうる。また、芳香族ビニル単量体あるいはシアン化ビニル単量体などが例示されうる。前記芳香族ビニル単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレンなどが例示されうる。また前記シアン化ビニル単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが例示されうる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらは前記重合体粒子(A−1)中に、好ましくは0〜89.9重量%、より好ましくは0〜79.5重量%、さらに好ましくは0〜69重量%含まれることが、塩化ビニル系樹脂の粘着防止効果を、安定したカレンダー成形、押出成形、射出成形等が可能なレベルまで効率よく向上できる点から好ましい。
本発明で用いられる重合体粒子(A−1)の重量平均分子量はとくに限定はないが、塩化ビニル系樹脂の高温金属面との粘着防止効果を、安定したカレンダー成形、押出成形、射出成形が可能なレベルまで向上できる点から、5,000〜30万であることが好ましい。より好ましくは5,000〜10万であり、さらに好ましくは5,000〜5万であり、とくに好ましくは5,000〜3万である。なお、前記重量平均分子量は、例えば、試料をテトラヒドロフラン(THF)に溶解させ、その可溶分を、ポリスチレンを基準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(WATERS社製、510型ポンプ410RI486UV)を使用して求めることができる(試料溶液:試料20mg/THF10mL、測定温度:25℃、検出器:示差屈折系、注入量:1mL)。
本発明で用いられる重合体粒子(A−1)は、例えば懸濁重合法で製造することができる。また、得られた重合体粒子(A−1)を、例えば乳化重合等により別途製造した重合体粒子(A−2)で被覆することが、本発明における粘着改良剤(A)のパウダーブロッキング性を改善するための必須条件である。前記重合体粒子(A−2)のビカット軟化温度は、パウダーブロッキング性の改善の観点から、80℃以上、更には85℃以上、とくには90℃以上であることが好ましい。なお、ビカット軟化温度とはプラスチック試験片に荷重をかけて一定の速度で昇温させ、試験片が変形し始めるときの温度を意味し、例えば、JIS K−7206、A50法(試験荷重10N、初期温度50℃、昇温速度50℃/hr)により求めることができる。
例えば、前記重合体粒子(A−1)を懸濁重合法で製造する場合、公知の方法に従って、単量体混合物を適当な媒体、分散安定剤、重合開始剤および必要に応じて連鎖移動剤等の存在下で行うことができる。懸濁重合法において使用される前記媒体は、通常、水である。
前記分散安定剤としては、公知の無機系分散剤や有機系分散剤が使用できる。無機系分散剤としては、炭酸マグネシウム、第三リン酸カルシウム等が例示され、また、有機系分散剤としては、デンプン、ゼラチン、アクリルアミド、部分ケン化ポリビニルアルコール、部分ケン化ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸およびその塩、セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリアルキレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルイミダゾール、スルホン化ポリスチレン等の天然物および合成高分子分散剤、さらには、アルキルベンゼンスルホン酸塩、脂肪酸塩等の低分子分散剤あるいは乳化剤などが例示される。
前記重合開始剤としてはとくに限定はないが、公知の油溶性の重合開始剤などが使用されうる。例えば、通常の有機過酸化物、アゾ化合物などを単独若しくは組み合わせて用いてもよい。好ましい有機過酸化物としては、例えば、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシドなどがあげられる。また、好ましいアゾ化合物としては、例えばアゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリルなどがあげられる。
前記連鎖移動剤としてはとくに限定はないが、例えばt−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−デシルメルカプタン、n−デシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタンなどのアルキルメルカプタン、2−エチルヘキシルチオグリコレートなどのアルキルエステルメルカプタンなどが使用され得る。中でも、成形加工時に臭気が発生しない点からn−ドデシルメルカプタンなどのアルキルメルカプタン、2−エチルヘキシルチオグリコレートなどのアルキルエステルメルカプタンが好ましい。
前記重合反応時の温度や時間などもとくに限定はなく、目的に応じて所望の値になるように適宜調整すればよい。
懸濁重合法による製造方法としては、単量体または単量体混合物を水に懸濁させた後、重合反応を開始する方法、あるいは単量体または単量体混合物の一部を水に懸濁させ重合反応を開始し、重合反応の進行に伴い、残りの単量体あるいは単量体混合物の水懸濁液を1段あるいは数段に分けて、若しくは連続的に重合反応槽へ追加して重合反応を実施する方法等、公知の手法を用いることができる。
本発明において、重合体粒子(A−1)は、体積平均粒子径が50〜500μmの範囲であることが好ましい。体積平均粒子径が50μmより小さい場合には、重合体粒子(A−1)を重合体粒子(A−2)で被覆するために要する(A−1)の単位体積当たりの(A−2)量が増加し過ぎる傾向があり粘着防止効果が低下する点から不利になる、重合後の脱水時にろ過性が悪化する、脱水後の樹脂中の含水率が高くなり乾燥効率が低下する等の傾向がある。逆に体積平均粒子径が500μmより大きい場合には、重合体粒子の重量平均分子量の制御が困難になる傾向がある。例えば懸濁重合により得られた重合体粒子の体積平均粒子径は、例えば、日機装株式会社製粒度分析計マイクロトラックFRA等を用いて測定することができる。
本発明において、重合体粒子(A−1)は、軟質であるほど、粘着防止効果が大きくなる点から、ガラス転移温度が50℃以下であることが好ましく、さらには40℃以下であることがより好ましい。なお、ガラス転移温度は、例えば、示差走査熱量測定法などにより求めることができる。
次に、本発明で用いられる粘着改良剤(A)における、重合体粒子(A−1)を被覆するための重合体粒子(A−2)について説明する。重合体粒子(A−2)については体積平均粒子径が0.01〜0.5μmの範囲であればとくに制限はないが、中でも塩化ビニル系樹脂の品質改良剤として広範に用いられているものが、本発明の粘着改良剤(A)として回収した場合においても、それらの有する様々な品質向上効果を発現させることが可能となり、生産性を向上できるという点から、好ましい。具体的には、ビニル系単量体を乳化重合することにより得られる乳化重合体であることが好ましい。
重合体粒子(A−2)としては、例えば、(1)メチルメタクリレート50〜95重量%、炭素数2〜8のアルキル基を有するアルキルメタクリレート5〜50重量%、およびこれらと共重合可能なビニル単量体0〜20重量%との混合物60〜95重量部を重合し、その生成重合体ラテックスの存在下にアルキルアクリレートおよびメチルメタクリレートを除くアルキルメタクリレートより選ばれた1種以上の単量体20〜80重量%、メチルメタクリレート20〜80重量%、およびこれらと共重合可能なビニル単量体0〜20重量%との混合物5〜40重量部を合計量が100重量部になるように添加、重合することにより得られる乳化重合体、(2)メチルメタクリレート、共重合可能な単量体および架橋性単量体からなる混合物を重合してなる重合体の存在下に、アルキルアクリレート、共重合可能な単量体および架橋性単量体からなる混合物を重合して得られる2層重合体の存在下に、さらにアルキル(メタ)アクリレートおよび共重合可能な単量体からなる単量体混合物を重合してなる少なくとも3層構造を有する乳化重合体、(3)(a)ブタジエン30〜100重量%、芳香族ビニル単量体0〜70重量%、共重合可能なビニル単量体0〜10重量%、及び架橋性単量体0〜5重量%を含む単量体混合物を重合して得られるブタジエン系共重合体のコア40〜90重量部、(b)芳香族ビニル単量体60〜98重量%、ヒドロキシ基またはアルコキシ基を含有するアルキル(メタ)アクリレート2〜40重量%、及びこれらと共重合可能なビニル単量体0〜20重量%を含む単量体混合物を重合してなる内層シェル5〜40重量部、(c)芳香族ビニル単量体10〜100重量%、アルキル基の炭素数1〜8のアルキル(メタ)アクリレート0〜90重量%、及びこれらと共重合可能なビニル単量体0〜50重量%を含む単量体混合物を重合してなる外層シェル5〜20重量部[(a)、(b)、(c)を合わせて100重量部]からなるコア−シェル型グラフト共重合体である乳化重合体、等が好ましく使用されうる。上記(1)〜(3)に記載した乳化重合体の一般的な製造方法は、例えば、特開平2−269755号公報等に詳細に記載されているが、これに限定されるものではない。
前記重合体粒子(A−2)の体積平均粒子径は、被覆効率の点から、体積平均粒子径0.01〜0.5μmの範囲が好ましく、0.05〜0.5μmの範囲がより好ましい。なお、重合体粒子(A−2)の体積平均粒子径は、例えば、日立製作所製のU−2000スペクトロフォトメーターを使用して546nmの波長の光散乱を用いて測定することができる。
本発明で用いられる粘着改良剤(A)の製造方法についてはとくに制限はないが、例えば、懸濁重合により製造した体積平均粒子径が50〜500μmの重合体粒子(A−1)の懸濁液と、乳化重合により製造した体積平均粒子径が0.01〜0.5μmの重合体粒子(A−2)のラテックスを混合し、その混合物に電解質水溶液を接触させることにより、重合体粒子(A−1)を重合体粒子(A−2)で効率良く被覆することができる。ここで被覆とは、重合体粒子の表面を別の重合体粒子で覆うことであり、例えばより軟質の重合体粒子をより硬質の重合体粒子で被覆することによって、乾燥機内での付着やパウダー同士の融着を防止することができる。
体積平均粒子径が50〜500μmの重合体粒子(A−1)の懸濁液と体積平均粒子径が0.01〜0.5μmの重合体粒子(A−2)のラテックスの混合方法についてはとくに制限はないが、重合体粒子(A−1)の懸濁液の攪拌下に重合体粒子(A−2)のラテックスを添加、あるいは重合体粒子(A−2)のラテックスの攪拌下に重合体粒子(A−1)の懸濁液を添加することにより実施するのが好ましい。上記混合時における重合体粒子(A−2)のラテックスおよび重合体粒子(A−1)の懸濁液の固形分濃度についてはとくに制限はないが、通常の重合操作で得られる重合体ラテックスまたは重合体懸濁液をそのまま用いるのが製造上最も簡便である。通常は、乳化重合法による重合体ラテックスでは25〜45重量%、懸濁重合法による重合体懸濁液では33〜45重量%であるのが好ましい。混合時の温度は、その後の熱処理操作のユーティリティー使用量を考慮すると、5℃以上であることが好ましい。
次に、本発明で用いられる粘着改良剤(A)を製造するにあたり、上記の如く、重合体粒子(A−1)の懸濁液と重合体粒子(A−2)のラテックスの混合物に電解質水溶液を接触させることについて説明する。前記電解質水溶液との接触は、攪拌下に、重合体懸濁液と重合体ラテックスの混合物へ電解質水溶液を添加することにより実施するのが好ましい。この操作により、例えば重合体粒子(A−1)を懸濁重合法により製造する時に副生した重合体微粒子が、体積平均粒子径が0.01〜0.5μmの重合体粒子(A−2)とともに体積平均粒子径が50〜500μmの重合体粒子(A−1)表面に凝析し、重合体粒子(A−1)の表面を被覆することができる。これにより、例えば乾燥機内での付着やパウダー同士の融着を防止することができる。その他、懸濁重合法等において発生した重合体微粒子(微粉)を除去できるため、脱水時における固液分離性の悪化や、脱水排水中への重合体微粒子(微粉)の流出に関する問題を改善することができる。
前記電解質水溶液としてはとくに制限はなく、例えば、高分子ラテックスを凝析若しくは凝固しうる性質を有する有機酸(若しくはその塩)または無機酸(若しくはその塩)の水溶液であれば良いが、具体的には、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化リチウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、塩化カルシウム、硫酸第一鉄、硫酸マグネシウム、硫酸亜鉛、硫酸銅、塩化バリウム、塩化第一鉄、塩化第二鉄、塩化マグネシウム、硫酸第二鉄、硫酸アルミニウム、カリウムミョウバン、鉄ミョウバン等の無機塩類の水溶液、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸類の水溶液、酢酸、ギ酸等の有機酸類およびそれらの水溶液、酢酸ナトリウム、酢酸カルシウム、ギ酸ナトリウム、ギ酸カルシウム等の有機酸塩類の水溶液を単独または2種以上を混合して用いることができる。とくに、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、塩化アンモニウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化バリウム、塩化第一鉄、硫酸アルミニウム、カリウムミョウバン、鉄ミョウバン、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸の水溶液を好適に用いることができる。
前記電解質水溶液の濃度は、0.001重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、さらに好ましくは1重量%以上である。電解質水溶液の濃度が0.001重量%以下の場合は、重合体粒子を凝析させるために多量の電解質水溶液を添加する必要があり、その後の熱処理操作時のユーティリティー使用量が多くなるため好ましくない。
前記重合体粒子(A−1)の懸濁液と重合体粒子(A−2)のラテックスの混合物に対する電解質水溶液の添加は、重合体粒子(A−2)のビカット軟化温度以下の温度で実施するのが好ましい。電解質水溶液を添加する際の混合物の温度が重合体粒子(A−2)のビカット軟化温度を超える場合には、例えば、生成する粘着改良剤(A)の形状が歪になり脱水後含水率が高くなる、未凝固の重合体粒子(A−2)が残存し固液分離性の悪化を招く、若しくは粘着改良剤(A)間の凝集が頻発するなどの問題が発生することがあるため、好ましくない。
前記重合体粒子(A−1)の懸濁液と重合体粒子(A−2)のラテックスの混合物へ電解質水溶液を添加する際は、混合物の固形分濃度を20〜50重量%に調整した後、実施するのが好ましい。前記固形分濃度が20重量%未満の場合は、電解質水溶液添加後も系中に重合体微粒子が残存する場合があり、一方、前記固形分濃度が50重量%より高い場合は、重合体粒子(A−2)を介した二次凝集粒子が生成する場合があり、脱水後の含水率が高くなる傾向があるため好ましくない。
本発明で用いられる粘着改良剤(A)における重合体粒子(A−1)と重合体粒子(A−2)の固形分重量比は、好ましくは重合体粒子(A−1)100重量部に対して、重合体粒子(A−2)が0.5〜30重量部であり、より好ましくは1〜20重量部、さらに好ましくは2〜15重量部、とくに好ましくは3〜10重量部である。重合体粒子(A−1)100重量部に対して、重合体粒子(A−2)が0.5重量部未満の場合は、電解質水溶液添加後も系中に重合体微粒子が残存し、そのため固液分離性が悪化する傾向があり、得られた粘着改良剤(A)を乾燥する際に、乾燥機内壁面への付着が多くなる傾向があるため好ましくない。また、重合体粒子(A−1)100重量部に対して、重合体粒子(A−2)が30重量部を超える場合は、重合体粒子(A−2)を介した二次凝集粒子が生成しやすくなる傾向がある。
本発明で用いられる粘着改良剤(A)を製造するにあたり、重合体粒子(A−1)の懸濁液と重合体粒子(A−2)のラテックスの混合物における重合体粒子(A−2)のラテックスの比率が高い場合、電解質水溶液の添加速度が極端に速い場合、または電解質水溶液の濃度が極端に高い場合には、電解質水溶液を添加する際に著しい粘度上昇が見られる場合がある。このような場合は、系中に適宜水を加えるなど、通常の攪拌状態が維持できる程度に系の粘度を低下させる操作を実施すればよい。電解質水溶液の量は、重合体粒子(A−1)の懸濁液と重合体粒子(A−2)のラテックスとの混合物中における重合体粒子(A−2)の比率により異なるが、熱処理後に未凝固の重合体粒子(A−2)が存在しなくなる量以上を添加すればよい。
例えば、前記電解質水溶液が酸性水溶液であって造粒後の懸濁液が酸性を示す場合は、水酸化ナトリウムなどのアルカリで中和した後、また前記電解質水溶液が中性水溶液の場合はそのまま、50〜120℃で熱処理を行うのが好ましい。これにより、重合体粒子(A−1)の表面を被覆した重合体粒子(A−2)の凝集体が緻密化し、得られる粘着改良剤(A)の含水率を低下することができる。
その後、通常の方法で脱水および乾燥を行うことにより、本発明における粘着改良剤(A)を得ることができる。
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物における塩化ビニル系樹脂(B)と粘着改良剤(A)との配合割合は必要に応じて幅広く採用できるが、好ましくは塩化ビニル系樹脂(B)100重量部に対して粘着改良剤(A)0.05〜10重量部であり、好ましくは粘着改良剤(A)が0.1〜5重量部、より好ましくは0.1〜3重量部、さらに好ましくは0.2〜2重量部である。前記粘着改良剤(A)の配合量が0.05重量部未満では粘着防止効果を充分に付与できず安定した加工性を実現できない場合があり、一方、10重量部を超える範囲では、成形体の光沢や透明性が低下する場合がある。
本発明で使用される塩化ビニル系樹脂(B)としては、成形用に用いられるものである限りとくに限定はないが、塩化ビニル単位80〜100重量%、塩化ビニルと共重合可能なその他の単量体からの単位0〜20重量%からなる重合体であることが好ましい。
塩化ビニルと共重合可能なその他の単量体としては、たとえば酢酸ビニル、プロピレン、スチレン、アクリル酸エステルなどがあげられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせたものでもよい。
前記塩化ビニル系樹脂の平均重合度などには特別な限定はなく、従来から使用されている塩化ビニル系樹脂であれば問題なく使用できる。
このような塩化ビニル系樹脂の具体例としては、たとえばポリ塩化ビニル、80重量%以上の塩化ビニル単量体とその他の共重合可能な単量体(たとえば酢酸ビニル、プロピレン、スチレン、アクリル酸エステルなど)との共重合体、後塩素化ポリ塩化ビニルなどがあげられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の樹脂組成物を製造する方法としてはとくに限定はなく、公知の方法を採用することができる。例えば、塩化ビニル系樹脂用粘着改良剤(A)、塩化ビニル系樹脂(B)を予めヘンシェルミキサー、タンブラーなどを用いて混合した後、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、加熱ロールなどを用いて溶融混練することにより樹脂組成物を得る方法などを採用することができる。
更に、例えば、塩化ビニル系樹脂(B)100重量部に対して、粘着改良剤(A)が10重量部を超えた範囲で混合した高濃度のマスターバッチを予め製造しておき、実際の成形加工時に、0.05〜10重量部の範囲で所望の添加量になるように前記マスターバッチを塩化ビニル系樹脂と混合、希釈して使用してもよい。
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物には、必要に応じて、安定剤、耐衝撃強化剤、加工性改良剤、滑剤、可塑剤、着色剤、充填剤、発泡剤、抗菌・抗カビ剤などの他の添加剤を単独または2種以上を組合せて添加してもよい。
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物からの成形体を得る方法はとくに限定されるものではなく、一般に用いられている成形法を適用できるが、例えばカレンダー成形法、押出成形法、射出成形法などを好ましく適用できる。
以下、実施例および比較例に基づき、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下において「部」は「重量部」を示す。また、グリシジルメタクリレートはGMA、メチルメタクリレートはMMA、ブチルアクリレートはBA、スチレンはST、アリルメタクリレートはALMA、ラウロイルパーオキシドはLPO、n−ドデシルメルカプタンはnDMと略して記載する。実施例および比較例で用いた評価方法を以下にまとめて示す。
(重合転化率の測定)
次式により重合転化率を算出した。
重合転化率(%)=(重合体生成量/単量体仕込量)×100
(重量平均分子量の測定)
重合体粒子の重量平均分子量は、試料をテトラヒドロフラン(THF)に溶解させ、その可溶分を、ポリスチレンを基準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(WATERS社製、510型ポンプ410RI486UV)を使用して求めた(試料溶液:試料20mg/THF10mL、測定温度:25℃、検出器:示差屈折系、注入量:1mL)。
(重合体粒子の体積平均粒子径の測定)
50〜500μmの重合体粒子の体積平均粒子径は、日機装株式会社製粒度分析計(マイクロトラックFRA)を用いて測定した。
(重合体粒子の体積平均粒子径の測定)
0.01〜0.5μmの重合体粒子の体積平均粒子径は、日立製作所製のU−2000スペクトロフォトメーターを使用して546nmの波長の光散乱を用いて測定した。
(ガラス転移温度の測定)
重合体粒子のガラス転移温度は、試料を100℃まで昇温してメルトクエンチした後、示差走査熱量測定法(昇温速度10℃/分)により求めた。
(ビカット軟化温度の測定)
重合体粒子のビカット軟化温度は、JIS K−7206、A50法(試験荷重10N、昇温速度50℃/hr)により求めた。
(粘着防止効果の評価)
評価としては、ポリ塩化ビニル(株式会社カネカ製、カネビニールS1007)100部、試料1部と、オクチルスズメルカプト系安定剤(日東化成株式会社製、TVS#8831)2.0部及び滑剤(花王株式会社製、カルコール8668)1.0部、ジオクチルフタレート(DOP)3.0部の混合物を190℃の8インチテストロール(関西ロール株式会社製)を用いて混練し、ロール表面からのハクリ性を比較した。評価はロール表面からシートがハクリ可能である状態が持続する時間を比較した。時間が長いほど粘着防止効果が良好である。
(パウダーの熱融着性の評価)
直径3cmのアルミニウム製容器の底に0.5gの粘着改良剤試料パウダーを薄く敷き、オーブン中で1時間加熱したときにパウダーがメルトして金属壁面に粘着する温度を測定、比較した。
(合成例)
本発明における塩化ビニル系樹脂用粘着改良剤(A)の製造のための重合体粒子(A−1)の懸濁液の合成例1、前記重合体粒子(A−1)を被覆するために用いる重合体粒子(A−2)のラテックスの合成例2,3および4、重合体粒子(A−1)の表面に重合体粒子(A−2)を被覆した粘着改良剤(A)の合成例5、塩化ビニル系樹脂用粘着改良剤の乳化重合法による合成例6を以下に示す。
(合成例1)重合体粒子(A−1)の懸濁液の調製
攪拌機および冷却器付きの反応器に、蒸留水200部、第三リン酸カルシウム0.6部、αオレフィンスルホン酸ナトリウム0.005部を投入した。次いで容器内を窒素で置換した後、攪拌しながら反応器を40℃に昇温した。次いでLPO1.0部を添加し15分間攪拌した後、GMA0.5部、MMA59.5部、BA40部、nDM2.0部の単量体混合物を添加し、単量体の分散粒子径が200μm程度となるように攪拌機の回転数を調整した。その後、反応容器を60℃に昇温して4時間重合を行い、さらに80℃に昇温して2時間攪拌して重合を完結させ、重合体固形分濃度35重量%の重合体懸濁液を得た。重合転化率は99.3%であり、体積平均粒子径は185μmであった。また懸濁重合体粒子のガラス転移温度は30℃であり、重量平均分子量は19,200であった。
(合成例2)重合体粒子(A−2)のラテックスの調製
攪拌機および冷却器付きの反応器に蒸留水220部、ホウ酸0.3部、炭酸ナトリウム0.03部、N−ラウロイルサルコシン酸ナトリウム0.09部、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム0.09部、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム0.006部、および硫酸第一鉄7水塩0.002部を仕込み、窒素置換後、80℃に昇温した。これにMMA25部、ALMA0.1部、t−ブチルハイドロパーオキサイド0.1部よりなる単量体混合物のうち25重量%を一括して仕込み、45分間重合を行った。続いてこの混合液の残り75重量%を1時間にわたって連続追加した。追加終了後、同温度で2時間保持し重合を完結させた。また、この間に0.2部のN−ラウロイルサルコシン酸ナトリウムを追加した。得られた最内層架橋メタクリル系重合体ラテックス中の重合体粒子の体積平均粒子径は、0.16μmであり、重合転化率は98.0%であった。続いて、得られた架橋メタクリル系重合体ラテックスを窒素気流中で80℃に保ち、過硫酸カリウム0.1部を添加した後、BA41部、ST9部、ALMA1部の単量体混合液を5時間にわたって連続追加した。この間にオレイン酸カリウム0.1部を3回に分けて添加した。単量体混合液の追加終了後、重合を完結させるためにさらに過硫酸カリウムを0.05部添加し、2時間保持した。得られたゴム状重合体の体積平均粒子径は0.23μmであり、重合転化率は99.0%であった。続いて、得られた上記ゴム状重合体ラテックスを80℃に保ち、過硫酸カリウム0.02部を添加した後、MMA24部、BA1部、t−ドデシルメルカプタン0.1部の混合液を1時間にわたって連続追加した。単量体混合液の追加終了後1時間保持し、体積平均粒子径が0.25μmの多層構造を持つ乳化重合グラフト共重合体ラテックス(X)を得た。なお、乳化重合グラフト共重合体ラテックス(X)のビカット軟化温度は88℃であった。
(合成例3)重合体粒子(A−2)のラテックスの調製
攪拌機および冷却器付きの反応器に蒸留水200部、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム1部、および過硫酸カリウム0.03部を仕込み、窒素置換後、65℃に昇温した。これにMMA84部、およびBA16部よりなる単量体混合物を4時間かけて加えた後、1時間加熱攪拌を続け、重合反応を完結させた。その後、BA11部およびMMA9部よりなる単量体混合物を1時間かけて加えた後、さらに1.5時間、65℃で重合を実施し、体積平均粒子径が0.08μm、ビカット軟化温度が93℃の乳化重合体ラテックス(Y)を得た。
(合成例4)重合体粒子(A−2)のラテックスの調製
攪拌機および冷却器付きの反応器に蒸留水200部、オレイン酸ソーダ1.5部、硫酸第一鉄0.002部、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム0.005部、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム0.2部、リン酸3カルシウム0.2部、ブタジエン76部、ST24部、ジビニルベンゼン1.0部およびジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド0.1部を仕込み50℃で15時間重合させ、重合転化率99%、体積平均粒子径0.07μmのゴムラテックス(a)を調製した。上記ゴムラテックス(a)180部(固形分60部)、蒸留水200部、硫酸第一鉄0.002部、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム0.004部、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム0.1部を混合し、60℃でST30部、ヒドロキシエチルメタクリレート3部、クメンハイドロパーオキサイド0.2部の混合液を連続添加し、内層シェルを調製した。内層シェル重合終了後、60℃でST5部、MMA2部、クメンハイドロパーオキサイド0.2部の混合液を連続添加し、外層シェルを調製し、体積平均粒子径が0.16μm、ビカット軟化温度が81℃の乳化重合グラフト共重合体ラテックス(Z)を調製した。
(合成例5)粘着改良剤(A):被覆重合体試料の調製
合成例1で得られた重合体懸濁液300部(固形分100部)を80℃に調整した後、攪拌下で、合成例2で得られた乳化重合グラフト共重合体ラテックス(X)64部(固形分20部)、15重量%硫酸ナトリウム水溶液3部の順で滴下した。その後、攪拌下で95℃まで昇温し、熱処理操作を実施した。
遠心脱水機を用いて濾過し、得られた重合体粒子を水洗し、流動乾燥機により40℃で5時間乾燥させて白色粉末状の粘着改良剤試料(1)を得た。
(合成例6)乳化重合法による粘着改良剤の調製
攪拌機および冷却器付きの反応器に蒸留水200部、ジオクチルスルホコハク酸エステルソーダ0.5部を入れた。次いで容器内を窒素で置換した後、攪拌しながら反応器を70℃に昇温した。次いで過硫酸カリウム0.2部を添加し15分間攪拌した後、GMA1.0部、MMA59部、BA40部、およびnDM1.5部の混合物を4時間にわたって連続添加した。添加終了後更に1時間攪拌し、そののち冷却して、乳化重合体ラテックスを得た。重合転化率は99.5%であった。得られた乳化重合体ラテックスを塩化カルシウム水溶液で塩析凝固させ、90℃まで昇温熱処理したのちに、遠心脱水機を用いて濾過し、得られた乳化重合体の脱水ケーキを水洗し、平行流乾燥機により50℃で15時間乾燥させて重量平均分子量が19,500、体積平均粒子径が0.08μmの乳化重合体試料(14)を得た。
(実施例1)
合成例5で得られた粘着改良剤試料(1)1.0部を塩化ビニル系樹脂100部に配合し、前記方法に従って、粘着防止効果の評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例2〜5および比較例1〜3)
粘着改良剤(A)として、重合開始剤であるLPOの添加量を1.0部とし、連鎖移動剤であるnDMの添加量を2.0部として、得られる重量平均分子量を2万程度に調整し、表1に示したようにGMA、MMA、BAおよびSTの組成比を変更して懸濁重合体粒子を製造した以外は、合成例5と同様の方法により粘着改良剤試料(2)〜(8)を得た。得られた粘着改良剤試料1.0部を塩化ビニル系樹脂100部に配合し、実施例1と同様の方法により、粘着防止効果の評価を行った。結果を表1に示す。
Figure 2007070443
表1の結果より、実施例1〜5は、良好な粘着防止効果を有する組成物が得られることがわかる。一方、比較例1または3のように単量体の組成比が本発明の範囲外である場合、或いは比較例2のように重合体粒子(A−1)のガラス転移温度が本発明の範囲外である場合には、粘着防止効果があまり改善されないことがわかる。
(実施例6〜8および比較例4,5)
GMA、MMA、BAの組成比を固定し、表2に示すように重合体粒子(A−1)の重量平均分子量を変更した以外は、合成例5と同様の方法により、粘着改良剤試料(9)〜(13)を得た。得られた粘着改良剤試料を用いて、実施例1と同様の方法により粘着防止効果、更に前記評価方法に従って熱融着性の評価を行った。結果を表2に示す。
Figure 2007070443
表2の結果より、実施例6〜8のように、重合体粒子(A−1)の重量平均分子量が本発明の範囲内である場合は、良好な粘着防止効果およびパウダーの熱融着性を示すことがわかる。一方、比較例4のように重合体粒子(A−1)のガラス転移温度が本発明の範囲をこえて低い粘着改良剤試料(12)を使用した場合では、粘着防止効果は良好であるものの、パウダーの熱融着性が低下することがわかる。また、比較例5のように重合体粒子(A−1)の重量平均分子量が本発明の範囲をこえて高い粘着改良剤試料(13)を使用した場合では、粘着防止効果があまり改善されないことがわかる。
(実施例9〜11および比較例6)
重合体粒子(A−1)として実施例2で使用したものと同じものを使用し表3に示すように重合体粒子(A−1)の表面を被覆する重合体粒子(A−2)の種類を変更して粘着改良剤試料を調製した場合、および粘着改良剤成分を合成例6に示すように乳化重合法で作製した粘着改良剤試料(14)を使用した場合の、粘着防止効果および熱融着性の評価を、実施例1と同様の方法により行った。結果を表3に示す。
Figure 2007070443
表3の結果より、実施例9〜11のように、重合体粒子(A−1)を被覆する重合体粒子(A−2)の種類が本発明の好ましい範囲内である場合は、良好な粘着防止効果およびパウダーの熱融着性を示すことがわかる。一方、比較例6のように粘着改良剤を乳化重合法で作製した粘着改良剤試料(14)を使用した場合では、熱融着性が低下することがわかる。このことから、表面を被覆されていない場合は、パウダーの熱融着性が低下することがわかる。
(実施例12〜14および比較例7,8)
重合体粒子(A−1)として実施例2で使用したものと同じものを使用し表4に示すように重合体粒子(A−1)の表面を被覆する重合体粒子(A−2)の量を変更して粘着改良剤試料を調製した場合の、粘着防止効果および熱融着性の評価を実施例1と同様の方法により行った。結果を表4に示す。
Figure 2007070443
表4の結果より、実施例12〜14のように、重合体粒子(A−1)を被覆する重合体粒子(A−2)の被覆量が本発明の好ましい範囲内である場合は、良好な粘着防止効果およびパウダーの熱融着性を示すことがわかる。一方、比較例7のように重合体粒子(A−2)を全く被覆していない粘着改良剤試料を使用した場合では、熱融着性が著しく低下することがわかる。また、比較例8のように本発明の範囲をこえて重合体粒子(A−2)の量を多く被覆した場合は、粘着防止効果が低下することがわかる。
(実施例15〜17および比較例9)
前記粘着改良剤試料(2)を、表5に示した配合比率で塩化ビニル系樹脂100部とブレンドし、実施例1と同様の方法により粘着防止効果の評価を行った。結果を表5に示す。
Figure 2007070443
表5の結果より、粘着改良剤試料の配合比率がそれぞれ異なる実施例15〜17では、良好な粘着防止効果を有する組成物が得られることがわかる。一方、粘着改良剤試料を配合していない比較例9では、粘着性が悪いことがわかる。

Claims (9)

  1. ガラス転移温度が50℃以下かつ体積平均粒子径が50〜500μmの範囲である重合体粒子(A−1)100重量部を、体積平均粒子径が0.01〜0.5μmの重合体粒子(A−2)0.5〜30重量部で被覆した塩化ビニル系樹脂用粘着改良剤(A)であって、前記重合体粒子(A−1)が、(a)エステル結合の他に酸素原子を有するアルキル(メタ)アクリレート0.1〜10重量%と、(b)他のアルキルアクリレート10〜99.9重量%と、(c)これらと共重合可能な他のビニルモノマー0〜89.9重量%[(a)、(b)、(c)を合わせて100重量%]を重合して得られ、重量平均分子量が5,000〜30万であることを特徴とする、塩化ビニル系樹脂用粘着改良剤。
  2. 重合体粒子(A−1)におけるエステル結合の他に酸素原子を有するアルキル(メタ)アクリレートが、エポキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基から選ばれる1種または2種以上の極性基を含有することを特徴とする、請求項1記載の塩化ビニル系樹脂用粘着改良剤。
  3. 重合体粒子(A−1)における他のアルキルアクリレートが、炭素数1〜8のアルキル基を含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の塩化ビニル系樹脂用粘着改良剤。
  4. 重合体粒子(A−1)の重量平均分子量が、5,000〜5万であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載の塩化ビニル系樹脂用粘着改良剤。
  5. 体積平均粒子径が0.01〜0.5μmの重合体粒子(A−2)のビカット軟化温度が80℃以上であることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれかに記載の塩化ビニル系樹脂用粘着改良剤。
  6. 体積平均粒子径が0.01〜0.5μmの重合体粒子(A−2)が、メチルメタクリレート50〜95重量%、炭素数2〜8のアルキル基を有するアルキルメタクリレート5〜50重量%、およびこれらと共重合可能なビニル単量体0〜20重量%との混合物60〜95重量部を重合し、その生成重合体ラテックスの存在下にアルキルアクリレートおよびメチルメタクリレートを除くアルキルメタクリレートより選ばれた1種以上の単量体20〜80重量%、メチルメタクリレート20〜80重量%、およびこれらと共重合可能なビニル単量体0〜20重量%との混合物5〜40重量部を合計量が100重量部になるように添加、重合することにより得られることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれかに記載の塩化ビニル系樹脂用粘着改良剤。
  7. 体積平均粒子径が0.01〜0.5μmの重合体粒子(A−2)が、メチルメタクリレート、これと共重合可能な単量体および架橋性単量体からなる混合物を重合してなる重合体の存在下に、アルキルアクリレート、これと共重合可能な単量体および架橋性単量体からなる混合物を重合して得られる2層重合体の存在下に、さらにアルキル(メタ)アクリレートおよびこれと共重合可能な単量体を含有する単量体混合物を重合してなる少なくとも3層構造を有することを特徴とする、請求項1乃至5のいずれかに記載の塩化ビニル系樹脂用粘着改良剤。
  8. 体積平均粒子径が0.01〜0.5μmの重合体粒子(A−2)が、(a)ブタジエン30〜100重量%、芳香族ビニル単量体0〜70重量%、これらと共重合可能なビニル単量体0〜10重量%、及び架橋性単量体0〜5重量%を含む単量体混合物を重合して得られるブタジエン系共重合体のコア40〜90重量部、(b)芳香族ビニル単量体60〜98重量%、ヒドロキシ基またはアルコキシ基を含有するアルキル(メタ)アクリレート2〜40重量%、及びこれらと共重合可能なビニル単量体0〜20重量%を含む単量体混合物を重合してなる内層シェル5〜40重量部、(c)芳香族ビニル単量体10〜100重量%、アルキル基の炭素数1〜8のアルキル(メタ)アクリレート0〜90重量%、及びこれらと共重合可能なビニル単量体0〜50重量%を含む単量体混合物を重合してなる外層シェル5〜20重量部[(a)、(b)、(c)を合わせて100重量部]からなるコア−シェル型グラフト共重合体であることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれかに記載の塩化ビニル系樹脂用粘着改良剤。
  9. 塩化ビニル系樹脂(B)100重量部、請求項1乃至8のいずれかに記載の塩化ビニル系樹脂用粘着改良剤(A)0.05〜10重量部を含有することを特徴とする、塩化ビニル系樹脂組成物。
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