図1は、本発明が適用される車両10を構成するエンジン12から駆動輪14までの動力伝達経路の概略構成を説明する図であると共に、変速機構部16の出力歯車18などの回転速度を検出(算出)するために車両10に設けられた制御系統の要部を説明するブロック線図である。図1において、変速機構部16は、例えば車両において横置きされるFF(フロントエンジン・フロントドライブ)型車両に好適に用いられるものであり、走行用駆動力源としての内燃機関であるエンジン12の動力をカウンタギヤ対20の一方を構成する出力回転部材としての出力歯車18から、動力伝達装置としてのカウンタギヤ対20、ファイナルギヤ対22、差動歯車装置(ディファレンシャルギヤ)24、及び一対の車軸(ドライブシャフト(D/S))26等を順次介して一対の駆動輪14へ伝達する。これら変速機構部16、カウンタギヤ対20、ファイナルギヤ対22、差動歯車装置(ディファレンシャルギヤ)24等によりトランスアクスル(T/A)が構成される。
また、車両10には、例えば動力伝達経路中の各回転部材の回転速度を検出(算出)する為の車両用回転速度検出装置の一部を含む電子制御装置80が備えられている。電子制御装置80は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、エンジン12の出力制御、変速機構部16の変速制御などを実行する。
電子制御装置80には、例えばエンジン回転速度センサ28からのエンジン12のクランクシャフトのクランク角度(位置)ACR及びエンジン回転速度NEに応じたエンジン回転速度信号、入力回転速度センサ30からの変速機構部16の入力回転速度NINとしての入力軸の回転速度に応じた入力回転速度信号、出力回転速度センサ32からの変速機構部16の出力回転速度NOUTとしての出力歯車18の回転速度に応じた出力回転速度信号、各車輪速センサ34からの各車輪(すなわち駆動輪14に従動輪を加えた各車輪)の回転速度NWに応じた車輪速信号などが、それぞれ供給される。尚、エンジン12からの動力が公知のトルクコンバータ等を介して変速機構部16側へ伝達されるような車両10においては、上述した変速機構部16の入力回転速度NINは例えばトルクコンバータのタービン回転速度NTに対応するものである。また、上述した変速機構部16の出力回転速度NOUTや各車輪の回転速度NWは例えば車速Vに対応するものである。
また、電子制御装置80からは、例えばエンジン12の出力制御の為のエンジン出力制御指令信号、変速機構部16の変速制御の為の変速制御指令信号等が、それぞれ出力される。例えば、電子制御装置80は、上記エンジン回転速度信号や変速制御指令信号等に基づいてエンジン出力制御指令信号を不図示のスロットルアクチュエータや燃料噴射装置やイグナイタなどへ出力してエンジン12の出力制御を実行する。また、電子制御装置80は、前記入力回転速度信号や出力回転速度信号等に基づいて変速制御指令信号を不図示の油圧制御回路などへ出力して変速機構部16のギヤ比の切換制御を実行する。
図2は、エンジン12のクランクシャフト、変速機構部16の入力軸、変速機構部16の出力歯車18、各車輪などの各回転部材50の回転速度Nを検出する為のエンジン回転速度センサ28、入力回転速度センサ30、出力回転速度センサ32、車輪速センサ34などの各回転センサとしてのセンサ60の一例を説明する概略図である。図2において、回転体70は、例えば回転部材50と同軸心Cにて一体的に固定されて回転部材50と共に回転する回転検出用ロータや回転検出用ドラムなどである。また、センサ60は、例えば回転体70の径方向外周部に円周方向に沿って並べられた複数の被検出体としての歯72と相対する位置に備えられており、回転部材50の回転速度Nを検出する為の車両用回転速度検出装置の一部を構成するものである。このセンサ60としては、例えば電磁ピックアップ式、ホール素子式、MRE(Magnetic Resistance Element:磁気抵抗素子)式などのセンサが採用される。
例えば電磁ピックアップ式センサの場合では、回転体70が回転することにより、センサ60が歯72と凹部74とに交互に相対して回転体70との間のエアギャップが変化するため、回転体70の回転速度に対応して周波数が変化する交流電圧がセンサ60から発生させられる。この交流電圧は、回転速度信号として電子制御装置80へ供給され、電子制御装置80にてこの供給された交流電圧が図2(b),(c)に示すような矩形波状のパルス信号Pへ変換される。また、例えばホール素子式やMRE式センサの場合では、ホール素子やMREを内蔵したセンサ回路(IC)から構成されており、回転体70が回転することにより、センサ回路(IC)にかかる磁界が変化するため、回転体70の回転速度に対応して周波数が変化する交流電圧が発生させられ、その交流電圧が図2(b),(c)に示すような矩形波状のパルス信号Pへ変換される。このパルス信号Pは、回転速度信号として電子制御装置80へ供給される。
図2(a)に示す回転体70では、例えば16個の略同じ形状且つ略等間隔の歯a〜歯pの歯72が打ち抜き加工等により形成され、結果的に各歯間に16個の被検出体としての凹部a〜凹部pの凹部74が形成されている。また、電子制御装置80は、図2(b),(c)に示すようなパルス信号Pにおいて、上記各歯a〜歯p及び凹部a〜凹部pに対応した各パルス信号Pa〜Ppのインターバル(パルスインターバル)としての各信号間隔tN[i]を検出(算出)する。本実施例では、各信号間隔tN[i]は、パルス信号Pの立ち上がりから次のパルス信号Pの立ち上がりまでの期間である。つまり、本実施例では、信号間隔tN[i]は、各パルス信号Pの立ち上がりに対応する各割り込み信号(以下、割込信号SPUという)間の間隔である。また、図2(b)では、例えば各歯a〜歯pがセンサ60に略相対する位置にて各パルス信号Pa〜Ppがハイ(Hi)となり、各凹部a〜凹部pがセンサ60に略相対する位置にて各パルス信号Pa〜Ppがロー(Lo)となる。また、図2(c)では、例えば各歯a〜歯pがセンサ60に略相対したときに各パルス信号Pa〜Ppが一定期間だけオン(ON)となり、次に各歯a〜歯pがセンサ60に略相対するまで各パルス信号Pa〜Ppがオフ(OFF)となる。そして、電子制御装置80は、各信号間隔tN[i]を用いて回転体70の回転速度Nを算出する。このように、センサ60及び電子制御装置80においては、回転体70の回転に伴ってセンサ60が歯72と順次相対することに基づいたパルス信号Pa〜Pp(割込信号SPU)を発生しすなわち略等間隔に形成された各歯72の各間隔毎に対応する回転体70の所定の回転角度毎に割込信号SPUを発生し、各割込信号SPUの各信号間隔tN[i]に基づいて回転体70の回転速度Nを検出する。尚、信号間隔tN[i]は、現時点からi回前の信号間隔を表すものであり、例えばi=0であれば現時点(今回)の信号間隔を、i=1であれば1回前(前回)の信号間隔を表している。すなわち、例えば信号間隔tN[0]は現時点(今回)の最新の信号間隔を、信号間隔tN[1]は1回前の信号間隔を表している。
ここで、回転体70の回転に伴う信号間隔tN[i]を回転速度Nに変換するに際して、歯a〜歯pの一歯毎の信号間隔tN[i](すなわち最新の1つの信号間隔tN[i])を直に回転速度Nに変換する場合には、検出応答性には優れるものの、その反面、例えば一歯分の短い信号間隔tN[i]に対してノイズが乗ったり或いは各歯72及び各凹部74における加工ばらつき分が乗ったりして検出精度が悪くなる可能性がある。これに対して、連続した複数分の信号間隔tN[i]を用いた移動平均により回転速度Nを算出する場合には、検出精度には優れるものの、その反面、連続した複数分の信号間隔tN[i]の時間的中間時点での平均回転速度を求めているに過ぎず、現在(現時点)の実際の回転速度N(実回転速度N)に比べて必ず検出応答遅れが生ずる。
そこで、本実施例の電子制御装置80は、回転体70の回転速度Nの検出に際して、検出精度の向上と検出応答性の向上とを両立させる為に、例えば最新一歯毎の信号間隔tN[i]を直に回転速度Nに変換する場合の検出応答性と、連続した複数分の信号間隔tN[i]を用いて平均回転速度を算出する場合の検出精度とを両立させる為に、信号間隔tN[i]の履歴数の異なる2種類の平均回転速度を算出し、その2種類の平均回転速度を実回転速度Nと同じ時間軸上に置くことにより実回転速度Nの推定値(以下、推定回転速度N0という)を算出する。
図3は、図2の回転体70において実回転速度Nに対応する最新の回転速度としての推定回転速度N0を算出する一例を説明する図である。図3において、例えば各歯a〜歯pに対応して発生させられる各パルス信号Pa〜Peに対応した信号間隔tN[i]が順次算出され、例えば信号間隔tN[0]、信号間隔tN[1]、信号間隔tN[2]・・・として、電子制御装置80のRAMに記憶される。この実施例では、時間の経過と共に回転速度Nが下降しているので、すなわち回転速度Nの変化速度ΔNに対応する傾きは右肩下がりであるので、信号間隔tN[i]は時間の経過と共に長くされている。尚、本実施例では、回転速度Nとして例えばタービン回転速度NT(入力回転速度NIN)を例示している。また、回転速度Nの変化速度ΔNは、回転速度Nの変化量に対応するものであり、繰り返し実行される制御上においては変化量と同意である。
そして、電子制御装置80は、信号間隔tN[i]の履歴数の異なる2種類の平均回転速度の一方として、例えば信号間隔tN[i]の履歴数が4個の平均回転速度すなわち最新の信号間隔tN[0]を含む過去4個分の信号間隔(tN[0]+tN[1]+tN[2]+tN[3])に基づいて算出される1/4回転平均回転速度N4を下記式(1)に従って算出する。また、電子制御装置80は、信号間隔tN[i]の履歴数の異なる2種類の平均回転速度の他方として、例えば信号間隔tN[i]の履歴数が16個の平均回転速度すなわち最新の信号間隔tN[0]を含む過去16個分の信号間隔(tN[0]+tN[1]+…+tN[15])に基づいて算出される1回転平均回転速度N16を下記式(2)に従って算出する。尚、下記式(1)、(2)における定数Kは、例えば[rpm]や[rad/sec]等の回転速度Nの単位に合わせて決まる単位信号間隔tN[i]から回転速度Nを求める為の予め定められた定数である。
N4=K/((tN[0]+tN[1]+tN[2]+tN[3])/4) ・・・(1)
N16=K/((tN[0]+tN[1]+…+tN[15])/16) ・・・(2)
図3からも明らかなように、1/4回転平均回転速度N4は、直近の過去1/4回転中の時間的中間点での平均回転速度、すなわち現時点から((tN[0]+tN[1]+tN[2]+tN[3])/2)前の時点b’での平均回転速度である。また、1回転平均回転速度N16は、直近の過去1回転中の時間的中間点での平均回転速度、すなわち現時点から((tN[0]+tN[1]+…+tN[15])/2)前の時点a’での平均回転速度である。このように、1/4回転平均回転速度N4や1回転平均回転速度N16は、共に実回転速度Nを算出する現時点からは遅れた値である。そこで、図3の○印に示すように、これら2種類の平均回転速度を実回転速度Nを算出する現時点と同じ時間軸すなわち同じ現時点に置くことにより推定回転速度N0を算出するのである。
例えば、図3に示すように、実回転速度Nの算出時点すなわち推定回転速度N0の算出時点(現時点)と1回転平均回転速度N16に対応する時点a’との間に生じる時間方向の遅れa’(=(tN[0]+tN[1]+…+tN[15])/2)及び推定回転速度N0の算出時点と1/4回転平均回転速度N4に対応する時点b’との間に生じる時間方向の遅れb’(=(tN[0]+tN[1]+tN[2]+tN[3])/2)に基づいて、現時点の時間軸上にて1回転平均回転速度N16(N16に対応する点N16)と1/4回転平均回転速度N4(N4に対応する点N4)との回転速度差(各点間の長さ)をa:bに外分する外分点(点N0)として推定回転速度N0を算出する。
具体的には、上記外分に基づいて下記式(3)に示す関係が成立し、α=a/b(>1)と置くと、推定回転速度N0は下記式(4)で表される。また、α’=α/(α−1)と置くと、推定回転速度N0は下記式(5)で表される。ここで、回転速度Nの変化速度ΔNが一定であるとすると、a:b=a’:b’となり、上記αは下記式(6)で表される。尚、本実施例では、上記αやα’を外分の比(a:b)から外分点を求める為の数式における外分の係数とする。
(N16−N0):(N4−N0)=a:b ・・・(3)
N0=α/(α−1)×N4−1/(α−1)×N16 ・・・(4)
N0=α’×N4+(1−α’)×N16 ・・・(5)
α=(tN[0]+tN[1]+…+tN[15])
/(tN[0]+tN[1]+tN[2]+tN[3]) ・・・(6)
このように、1/4回転平均回転速度N4と1回転平均回転速度N16とを用いて、検出精度の向上と検出応答性の向上とが両立するような推定回転速度N0を算出することができる。但し、この推定回転速度N0の演算では、回転速度Nの変化速度ΔNが一定であることを前提とするものである。つまり、1/4回転平均回転速度N4における変化速度ΔN4と1回転平均回転速度N16における変化速度ΔN16とが共に実回転速度Nにおける変化速度ΔNと同じであることを前提とするものである。その為、回転速度Nの変化速度ΔNが一定でない場合にはその変化速度ΔNが変化した分だけ実回転速度Nと推定回転速度N0とに誤差Eが生じる。以下に、回転速度Nの変化速度ΔNの違いと誤差Eとの関連について説明する。
図4及び図5は、それぞれ1/4回転平均回転速度N4と1回転平均回転速度N16とを用いて推定回転速度N0を演算する場合の外分の係数α’を示す図である。図4は前回算出した推定回転速度N0と外分の係数α’との関係を例示するものであり、図5は1/4回転平均回転速度N4と外分の係数α’との関係を例示するものである。また、図4,5における回転速度N(ここでは前回算出した推定回転速度N0や1/4回転平均回転速度N4)の変化速度(傾き)ΔN(ここではΔN0やΔN4)は、右肩下がりの傾きである。図4,5において、回転速度Nに応じて外分の係数α’が変化しており、回転速度Nが低い程、回転速度Nの変化速度(傾き)ΔNに対する外分の係数α’のばらつきが大きくなる。しかしながら、回転速度Nが元々低いと、その係数α’を掛けて算出する推定回転速度N0(前記式(5)参照)の絶対値としては小さくなるので、結果的に、回転速度Nが低ければ係数α’のばらつきが大きくても、推定回転速度N0の誤差Eは小さくなる。
図6及び図7は、それぞれ図4及び図5において変化速度(傾き)ΔNが600[rpm/sec]の場合の係数α’の値を、変化速度(傾き)ΔNが0,300,600,900,1200[rpm/sec]である場合に当てはめて推定回転速度N0を演算する場合の各変化速度(傾き)ΔNでの誤差Eを示す図である。図6は図4に対応する前回算出した推定回転速度N0と誤差Eとの関係を例示するものであり、図7図5に対応する1/4回転平均回転速度N4と誤差Eとの関係を例示するものである。図6,7において、変化速度(傾き)ΔNが600[rpm/sec]の場合には誤差Eは零となり、他の変化速度(傾き)ΔNでは回転速度Nが低い程、600[rpm/sec]の場合を中心に誤差Eが大きくされるが、絶対値としては何れの場合も誤差Eは略5[rpm]以下に抑えられている。
このように、1/4回転平均回転速度N4と1回転平均回転速度N16とを用いて推定回転速度N0を算出する際には、本来、回転速度Nの変化速度ΔNが一定であることを前提とするものであり、変化速度ΔNが一定でない場合にはその変化速度ΔNに依存して外分の係数α,α’がばらつく分だけ誤差Eが生じる。しかし、上述したように、例えば回転速度Nの変化速度ΔNを一定値に固定したとしても、それによって生じる誤差Eは実回転速度Nに対して非常に小さく、問題のないレベルである。従って、本実施例では、実際の変化速度(傾き)ΔNがどのような数値であっても、変化速度(傾き)ΔNを一定に固定して推定回転速度N0を算出する。すなわち、外分の係数α,α’は、所定の回転速度Nの変化速度ΔNを一定値に固定した上で、その所定の回転速度Nに応じて変化する値を用いる。例えば、図4或いは図5において変化速度ΔNを一定値の600[rpm/sec]に固定した上で、回転速度Nに応じて変化する外分の係数α’を用いる。そして、その外分の係数α’を用いて、前記式(5)に従って推定回転速度N0を算出する。尚、図4,図5は、回転速度Nと係数α’との予め実験的に(或いは演算により)求められて設定された関係(係数マップ)でもある。また、変化速度ΔNの0,300,600,900,1200[rpm/sec]は、実機で想定される変化速度ΔNの取り得る範囲の中から例示したものであり、一定値として固定した600[rpm/sec]という値はその中央値に相当する。また、所定の回転速度Nとしては、前回算出した推定回転速度N0や2種類の回転速度(1/4回転平均回転速度N4、1回転平均回転速度N16)を用いればよい。但し、推定回転速度N0は算出すべき値であり、その推定回転速度N0を用いると再帰的な演算となって計算負荷が大きくなる可能性があることから、2種類の回転速度の何れかを用いることが適切である。更に、その2種類の平均回転速度のうちで実回転速度Nに対して1回転平均回転速度N16よりも応答遅れが小さい1/4回転平均回転速度N4、すなわち推定回転速度N0に時間的に近い方の1/4回転平均回転速度N4を用いることがより適切である。
より具体的には、図8は、電子制御装置80による制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。図8において、信号間隔算出部すなわち信号間隔算出手段82は、例えば回転体70の回転に伴って発生させられる最新の割込信号SPUnewに対応した最新の信号間隔tN[0]を、最新の割込信号SPUnew毎(最新歯毎)に順次算出し、算出結果をRAMに記憶する。この際、前回算出したtN[0]、信号間隔tN[1]、信号間隔tN[2]・・・は、tN[1]、信号間隔tN[2]、信号間隔tN[3]・・・に書き換えられる。尚、例えば2種類の平均回転速度として1回転平均回転速度N16と1/4回転平均回転速度N4とを用いる場合には、その1回転平均回転速度N16を算出する為の信号間隔tN[i]の履歴が少なくとも記憶されておれば良い。
平均回転速度算出部すなわち平均回転速度算出手段84は、例えば前記式(1)から最新の信号間隔tN[0]を含む過去4個分の信号間隔(tN[0]+tN[1]+tN[2]+tN[3])に基づいて1/4回転平均回転速度N4を最新の割込信号SPUnew毎に順次算出する。また、平均回転速度算出手段84は、例えば前記式(2)から最新の信号間隔tN[0]を含む過去16個分の信号間隔(tN[0]+tN[1]+…+tN[15])に基づいて1回転平均回転速度N16を最新の割込信号SPUnew毎に順次算出する。
推定回転速度算出部すなわち推定回転速度算出手段86は、例えば図5に示すような係数マップにおける変化速度ΔNが一定値(例えば600[rpm/sec])に固定された係数マップから平均回転速度算出手段84により算出された1/4回転平均回転速度N4に基づいて外分の係数α’を算出する。次いで、推定回転速度算出手段86は、例えば前記式(5)からその係数α’と平均回転速度算出手段84により算出された1/4回転平均回転速度N4及び1回転平均回転速度N16とに基づいて、推定回転速度N0を最新の割込信号SPUnew毎に順次算出する。
推定値ガード部すなわち推定値ガード手段88は、例えば推定回転速度算出手段86により算出された推定回転速度N0を、実回転速度Nとして取り得る範囲の数値とされるように制限(ガード)する。例えば、推定値ガード手段88は、推定回転速度算出手段86により算出された推定回転速度N0が予め実験的に求められて設定された実回転速度Nの実質的変動範囲にあるか否かを判断し、推定回転速度N0が実回転速度Nの実質的変動範囲にない場合には、その実質的変動範囲のうちで推定回転速度N0に最も近い値を推定回転速度N0とする指令を推定回転速度算出手段86へ出力する。具体的には、実回転速度Nの実質的変動範囲として零以上の数値が予め設定されている場合に、推定回転速度算出手段86により推定回転速度N0として負の値が算出された場合には、推定回転速度算出手段86はその推定回転速度N0を零とする指令を推定回転速度算出手段86へ出力する。
図9は、電子制御装置80の制御作動の要部すなわち回転体70の回転速度Nの検出に際して検出精度の向上と検出応答性の向上とを両立させる為の制御作動を説明するフローチャートであり、例えば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行される。また、図10は、タービン回転速度NTを検出(算出)する際に、図9のフローチャートに示す制御作動を実行した場合のタイムチャートである。
図9において、先ず、信号間隔算出手段82に対応するステップ(以下、ステップを省略する)S10において、例えば回転体70の回転に伴って発生させられる最新の割込信号SPUnewに対応した最新の信号間隔tN[0]が、最新の割込信号SPUnew毎(最新歯毎)に順次算出され、算出結果がRAMに記憶される。この際、前回算出したtN[0]、信号間隔tN[1]、信号間隔tN[2]・・・が、tN[1]、信号間隔tN[2]、信号間隔tN[3]・・・に書き換えられる。次いで、平均回転速度算出手段84に対応するS20において、例えば前記式(1)から最新の信号間隔tN[0]を含む過去4個分の信号間隔に基づいて1/4回転平均回転速度N4が最新の割込信号SPUnew毎に順次算出される。また、例えば前記式(2)から最新の信号間隔tN[0]を含む過去16個分の信号間隔に基づいて1回転平均回転速度N16が最新の割込信号SPUnew毎に順次算出される。次いで、推定回転速度算出手段86に対応するS30において、例えば変化速度ΔNが一定値(例えば600[rpm/sec])に固定された係数マップから上記S20にて算出された1/4回転平均回転速度N4に基づいて外分の係数α’が算出される。次いで、推定回転速度算出手段86及び推定値ガード手段88に対応するS40において、例えば前記式(5)から上記S30にて算出された係数α’と上記S20にて算出された1/4回転平均回転速度N4及び1回転平均回転速度N16とに基づいて、推定回転速度N0が最新の割込信号SPUnew毎に順次算出される。尚、ここで算出された推定回転速度N0は、実回転速度Nとして物理的に取り得る範囲の数値とされるように制限(ガード)される。
これにより、図10に示すように、タービン回転速度NT(入力回転速度NIN)が変化させられたときには、単なる移動平均にて算出される1/4回転平均回転速度N4(破線)及び1回転平均回転速度N16(二点鎖線)に比較して、応答性良く且つ精度の良い推定回転速度N0(実線)が算出される。特に、低回転速度域での検出精度が向上されており、この低回転速度域を用いる制御が向上される。
上述のように、本実施例によれば、信号間隔tN[i]の履歴数の異なる2種類の平均回転速度(例えば1/4回転平均回転速度N4及び1回転平均回転速度N16)が算出され、その2種類の平均回転速度が実回転速度Nと同じ時間軸上に置かれることにより推定回転速度N0が算出されるので、例えば最新一歯の信号間隔tN[i]から算出する推定回転速度N0と比べて検出精度が良好な平均回転速度が用いられる為、最終的に算出される推定回転速度N0も比較的検出精度が良好なものとなる。加えて、時間方向に遅れた時点での平均回転速度が実回転速度Nと同じ時間軸上で演算される為、最終的に算出される推定回転速度N0は現時点での実回転速度Nと比較して応答遅れのないものとなる。よって、回転体70の回転速度Nの検出に際して、検出精度の向上と検出応答性の向上とを両立させることができる。
これにより、物理現象を正確に捉え易くなる。例えば、回転体70の検出した回転速度Nの変化を実際の変化により近づけることが可能になる。また、例えば変速機構部16の変速状態を検出するなどの車載装置の稼働状態を検出する等の為に2つ以上の異なる回転体の回転速度を比較するような場合に、それぞれの回転速度の検出遅れを考える必要がなくなる。更に、回転体70の回転速度Nの検出を前出しすることが可能であり、検出した各部の回転速度に基づく各装置の制御作動における制御起点を早くすることが可能になる。例えば、変速機構部16の変速過程におけるイナーシャ相判定、エンジン12の状態に応じてカムシャフトの位相を可変させる制御、車両停止時にエンジン12と動力伝達装置(例えばトランスアクスル、トランスミッション)との結合を切り離すニュートラル制御や発進時からロックアップクラッチをスリップ状態とする発進時ロックアップスリップ制御等の比較的低回転速度で実行される制御などを実回転速度Nの変化に合わせて精度良く実行することが可能になる。
また、本実施例によれば、前記2種類の平均回転速度は、最新の信号間隔tN[0]を含む異なる数の過去複数個分の信号間隔tN[i]に基づいて算出される平均回転速度であり、推定回転速度N0の算出時点とそれら2種類の平均回転速度に対応する時点との間に生じる各々の時間方向の遅れに基づいてその2種類の平均回転速度を外分する外分点として推定回転速度N0を算出するので、例えば2種類の平均回転速度が実回転速度Nと同じ時間軸上に置かれることにより推定回転速度N0が適切に算出される。つまり、2種類の平均回転速度は、共に実回転速度Nからは遅れた値である為、その遅れ時間を考慮した値を推定回転速度N0として算出するので、検出精度の向上と検出応答性の向上とを両立させることができるような推定回転速度N0が算出される。
また、本実施例によれば、推定回転速度N0を算出する為の前記各々の時間方向の遅れに基づく外分の係数α,α’は、所定の回転速度Nの変化速度ΔNを一定値に固定した上で、その所定の回転速度Nに応じて変化する値を用いるので、推定回転速度N0を算出するときに所定の回転速度Nの変化速度ΔNを算出する必要はなく、また一定値に固定した所定の回転速度Nの変化速度ΔNを用いても推定回転速度N0としての誤差Eは小さくされる。特に、回転速度Nの変化速度ΔNの算出は誤差が生じやすいが、本実施例はその回転速度Nの変化速度ΔNを用いる必要が無く、元々変化速度ΔNによる誤差が小さいところに利点がある。
また、本実施例によれば、前記所定の回転速度Nは、前回算出した推定回転速度N0及び2種類の回転速度(例えば1/4回転平均回転速度N4及び1回転平均回転速度N16)のうちの何れかを用いるので、例えば外分の係数α,α’が適切に設定される。
また、本実施例によれば、前記所定の回転速度Nは、2種類の平均回転速度(例えば1/4回転平均回転速度N4及び1回転平均回転速度N16)のうちで推定回転速度N0に時間的に近い方の平均回転速度(例えば1/4回転平均回転速度N4)を用いるので、例えば応答遅れが比較的小さい方の平均回転速度が用いられることになり、推定回転速度N0としての誤差Eが比較的小さくされる。また、算出する推定回転速度N0を用いると再帰的な演算となって計算負荷が大きくなることに対して、上記平均回転速度を用いればそのような再帰的な演算も回避できる。
また、本実施例によれば、推定回転速度N0は、実回転速度Nとして取り得る範囲の数値とされるように制限されるので、例えば推定回転速度N0が物理的にあり得ない数値とされることが回避される。
また、本実施例によれば、センサ60は、回転体70の径方向外周部に円周方向に沿って並べられた複数の被検出体(歯72、凹部74)と相対する位置に備えられ、回転体70の回転に伴って歯72(歯a〜歯p)及び凹部74(凹部a〜凹部p)と順次相対することに基づいて割込信号SPUを発生するので、例えば割込信号SPUが適切に発生させられる。
次に、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の説明において実施例相互に共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
前述の実施例では、検出精度の向上と検出応答性の向上とを両立させる為に、2種類の平均回転速度(例えば1/4回転平均回転速度N4及び1回転平均回転速度N16)を実回転速度Nと同じ時間軸上に置くことにより推定回転速度N0を算出した。本実施例でも、時間遅れとなるが比較的検出精度に優れる回転速度を用いて、検出応答性を向上する実施例を提案する。
具体的には、本実施例の電子制御装置80は、回転体70の回転速度Nの検出に際して、検出精度の向上と検出応答性の向上とを両立させる為に、例えば最新一歯毎の信号間隔tN[i]を直に回転速度Nに変換する場合の検出応答性と、連続した複数分の信号間隔tN[i]を用いて平均回転速度を算出する場合の検出精度とを両立させる為に、過去に算出した1つの回転速度Nとその1つの回転速度Nの変化速度ΔNとに基づいて推定回転速度N0を算出する。つまり、過去に算出した比較的検出精度に優れる1つの回転速度からその回転速度の傾きを使って現時点の実回転速度Nを推定するものである。例えば、過去に算出した1つの回転速度Nの変化速度ΔNをパラメータとして過去に算出した1つの回転速度Nと推定回転速度N0との予め設定された関係から、過去に算出した1つの回転速度Nとその変化速度ΔNとに基づいて推定回転速度N0を算出する。
上記比較的検出精度に優れる過去に算出した1つの回転速度Nは、例えば前回算出した推定回転速度N0、過去複数個分の信号間隔tN[i]に基づいて算出される1/4回転平均回転速度N4や1回転平均回転速度N16等の平均回転速度などである。但し、前述の実施例と同様に、推定回転速度N0を用いると再帰的な演算となって計算負荷が大きくなる可能性があることから、平均回転速度を用いることが適切である。更に、平均回転速度のうちでも実回転速度Nに対して比較的応答遅れが小さい平均回転速度を用いることがより適切である。以下の説明において、本実施例では、過去に算出した1つの回転速度Nとして1/4回転平均回転速度N4を例示する。
より具体的には、前記過去に算出した1つの回転速度Nと推定回転速度N0との予め設定された関係は、例えば1/4回転平均回転速度N4の変化速度ΔN4をパラメータとして1/4回転平均回転速度N4と推定回転速度N0そのものとの予め実験的に(或いは演算により)求められて設定された図11に示すような関係(推定回転速度マップ)である。或いは、前記予め設定された関係は、例えば1/4回転平均回転速度N4の変化速度ΔN4をパラメータとして1/4回転平均回転速度N4と、1/4回転平均回転速度N4と推定回転速度N0との差分D(=N4−N0)との予め実験的に(或いは演算により)求められて設定された図12に示すような関係(推定回転速度差分マップ)である。或いは、前記予め設定された関係は、例えば1/4回転平均回転速度N4の変化速度ΔN4をパラメータとして1/4回転平均回転速度N4と、1/4回転平均回転速度N4と推定回転速度N0との回転比R(=N0/N4)との予め実験的に(或いは演算により)求められて設定された図13に示すような関係(推定回転速度回転比マップ)である。
図8に戻り、平均回転速度算出手段84は、前述の実施例に替えて、例えば前記式(1)から最新の信号間隔tN[0]を含む過去4個分の信号間隔(tN[0]+tN[1]+tN[2]+tN[3])に基づいて1/4回転平均回転速度N4を最新の割込信号SPUnew毎に順次算出する。また、平均回転速度算出手段84は、例えば前回算出した1/4回転平均回転速度N4と今回算出した1/4回転平均回転速度N4とに基づいて1/4回転平均回転速度N4の変化速度ΔN4を算出する。
推定回転速度算出手段86は、前述の実施例に替えて、例えば図11に示すような推定回転速度マップから、平均回転速度算出手段84により算出された1/4回転平均回転速度N4とその変化速度ΔN4とに基づいて推定回転速度N0を算出する。
或いは、推定回転速度算出手段86は、例えば図12に示すような推定回転速度差分マップから、平均回転速度算出手段84により算出された1/4回転平均回転速度N4とその変化速度ΔN4とに基づいて差分D(=N4−N0)を算出する。そして、推定回転速度算出手段86は、その差分Dから1/4回転平均回転速度N4に基づいて推定回転速度N0(=N4−D)を算出する。
或いは、推定回転速度算出手段86は、例えば図13に示すような推定回転速度回転比マップから、平均回転速度算出手段84により算出された1/4回転平均回転速度N4とその変化速度ΔN4とに基づいて回転比R(=N0/N4)を算出する。そして、推定回転速度算出手段86は、その回転比Rから1/4回転平均回転速度N4に基づいて推定回転速度N0(=R×N4)を算出する。
図14は、電子制御装置80の制御作動の要部すなわち回転体70の回転速度Nの検出に際して検出精度の向上と検出応答性の向上とを両立させる為の制御作動を説明するフローチャートであり、例えば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行される。また、この図14のフローチャートは、図9のフローチャートに相当する別の実施例である。
図14において、先ず、信号間隔算出手段82に対応するステップSB10において、例えば回転体70の回転に伴って発生させられる最新の割込信号SPUnewに対応した最新の信号間隔tN[0]が、最新の割込信号SPUnew毎(最新歯毎)に順次算出され、算出結果がRAMに記憶される。この際、前回算出したtN[0]、信号間隔tN[1]、信号間隔tN[2]・・・が、tN[1]、信号間隔tN[2]、信号間隔tN[3]・・・に書き換えられる。次いで、平均回転速度算出手段84に対応するSB20において、例えば前記式(1)から最新の信号間隔tN[0]を含む過去4個分の信号間隔に基づいて1/4回転平均回転速度N4が最新の割込信号SPUnew毎に順次算出される。また、例えば前回算出した1/4回転平均回転速度N4と今回算出した1/4回転平均回転速度N4とに基づいて1/4回転平均回転速度N4の変化速度ΔN4が最新の割込信号SPUnew毎に順次算出される。次いで、推定回転速度算出手段86及び推定値ガード手段88に対応するSB30において、例えば図11に示すような推定回転速度マップから、上記SB20にて算出された1/4回転平均回転速度N4とその変化速度ΔN4とに基づいて推定回転速度N0が最新の割込信号SPUnew毎に順次算出される。或いは、例えば図12に示すような推定回転速度差分マップから、上記SB20にて算出された1/4回転平均回転速度N4とその変化速度ΔN4とに基づいて差分D(=N4−N0)が算出され、その差分Dから1/4回転平均回転速度N4に基づいて推定回転速度N0(=N4−D)が最新の割込信号SPUnew毎に順次算出される。或いは、例えば図13に示すような推定回転速度回転比マップから、上記SB20にて算出された1/4回転平均回転速度N4とその変化速度ΔN4とに基づいて回転比R(=N0/N4)が算出され、その回転比Rから1/4回転平均回転速度N4に基づいて推定回転速度N0(=R×N4)が最新の割込信号SPUnew毎に順次算出される。尚、ここで算出された推定回転速度N0は、実回転速度Nとして物理的に取り得る範囲の数値とされるように制限(ガード)される。これにより、前述の実施例と同様に、例えばタービン回転速度NT(入力回転速度NIN)が変化させられたときには、単なる移動平均にて算出される1/4回転平均回転速度N4(破線)及び1回転平均回転速度N16(二点鎖線)に比較して、応答性良く且つ精度の良い推定回転速度N0(実線)が算出される。特に、低回転速度域での検出精度が向上されており、この低回転速度域を用いる制御が向上される(図10参照)。
上述のように、本実施例によれば、過去に算出した1つの回転速度とその1つの回転速度の変化速度とに基づいて推定回転速度N0が算出されるので、例えば最新一歯の信号間隔tN[i]から算出する推定回転速度N0と比べて検出精度が良好な平均回転速度やその平均回転速度を用いて算出する検出精度が良好な前回算出した推定回転速度N0が用いられる為、最終的に算出される推定回転速度N0も比較的検出精度が良好なものとなる。加えて、時間方向に遅れた時点での回転速度が実回転速度Nと同じ時点の回転速度として演算される為、最終的に算出される推定回転速度N0は現時点での実回転速度Nと比較して応答遅れのないものとなる。よって、回転体70の回転速度Nの検出に際して、検出精度の向上と検出応答性の向上とを両立させることができる。また、本実施例は、基にする過去に算出した回転速度が1つでよいことが利点である。
これにより、物理現象を正確に捉え易くなる。例えば、回転体70の検出した回転速度Nの変化を実際の変化により近づけることが可能になる。また、例えば変速機構部16の変速状態を検出するなどの車載装置の稼働状態を検出する等の為に2つ以上の異なる回転体の回転速度を比較するような場合に、それぞれの回転速度の検出遅れを考える必要がなくなる。更に、回転体70の回転速度Nの検出を前出しすることが可能であり、検出した各部の回転速度に基づく各装置の制御作動における制御起点を早くすることが可能になる。例えば、変速機構部16の変速過程におけるイナーシャ相判定、エンジン12の状態に応じてカムシャフトの位相を可変させる制御、車両停止時にエンジン12と動力伝達装置(例えばトランスアクスル、トランスミッション)との結合を切り離すニュートラル制御や発進時からロックアップクラッチをスリップ状態とする発進時ロックアップスリップ制御等の比較的低回転速度で実行される制御などを実回転速度Nの変化に合わせて精度良く実行することが可能になる。
また、本実施例によれば、過去に算出した1つの回転速度Nの変化速度ΔNをパラメータとして過去に算出した1つの回転速度Nと推定回転速度N0との予め設定された関係から、過去に算出した1つの回転速度Nとその変化速度ΔNとに基づいて推定回転速度N0を算出するので、例えば過去に算出した1つの回転速度Nとその1つの回転速度Nの変化速度ΔNとに基づいて推定回転速度N0が適切に算出される。つまり、過去に算出した1つの回転速度は、実回転速度Nからは遅れた値である為、その遅れ時間を考慮した値を推定回転速度N0として算出するので、検出精度の向上と検出応答性の向上とを両立させることができるような推定回転速度N0が算出される。
また、本実施例によれば、前記1つの回転速度Nは、例えば前回算出した推定回転速度N0、過去複数個分の信号間隔tN[i]に基づいて算出される平均回転速度(1/4回転平均回転速度N4や1回転平均回転速度N16等)などであるので、推定回転速度N0が適切に算出される。特に、前記1つの回転速度として推定回転速度N0に時間的に比較的近い方の平均回転速度(例えば1/4回転平均回転速度N4)を用いることで、例えば応答遅れが比較的小さい方の平均回転速度が用いられることになり、推定回転速度N0としての誤差Eが比較的小さくされる。また、算出する推定回転速度N0を用いると再帰的な演算となって計算負荷が大きくなることに対して、上記平均回転速度を用いればそのような再帰的な演算も回避できる。
また、本実施例によれば、前記予め設定された関係は、例えば1/4回転平均回転速度N4と推定回転速度N0との予め設定された図11に示すような直接的な関係(推定回転速度マップ)である。或いは、前記予め設定された関係は、例えば1/4回転平均回転速度N4と、1/4回転平均回転速度N4と推定回転速度N0との差分D(=N4−N0)との予め設定された図12に示すような関係(推定回転速度差分マップ)である。或いは、前記予め設定された関係は、例えば1/4回転平均回転速度N4と、1/4回転平均回転速度N4と推定回転速度N0との回転比R(=N0/N4)との予め設定された図13に示すような関係(推定回転速度回転比マップ)である。このようにすれば、例えば過去に算出した1つの回転速度Nとその1つの回転速度Nの変化速度ΔNとに基づいて推定回転速度N0が一層確実に算出される。
また、本実施例によれば、推定回転速度N0は、実回転速度Nとして取り得る範囲の数値とされるように制限されるので、例えば推定回転速度N0が物理的にあり得ない数値とされることが回避される。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
例えば、前述の実施例では、各信号間隔tN[i]は、パルス信号Pの立ち上がりに対応する各割込信号SPU間の間隔であったが、これに限らず他の期間(間隔)を信号間隔tN[i]としても良い。例えば、各信号間隔tN[i]は、パルス信号Pの立ち下がりに対応する各割込信号間の間隔であっても良いし、図2(b)に示す各パルス信号Pa〜Ppがハイ(Hi)となっている期間やロー(Lo)となっている期間であっても良いし、図2(c)に示す各パルス信号Pa〜Ppがオフ(OFF)となっている期間であっても良い。要は、回転体70の回転速度Nに1対1で対応する信号間隔tN[i]が用いられれば良い。そのため、特に図2(c)に示すようなON期間が一定の各パルス信号Pa〜Ppでは、矩形状のパルスである必要はない。また、歯72などの被検出体がセンサ60を通過することによって発生する信号(電圧)を基にしてパルス信号Pが発生させられ、回転体70の回転速度Nに1対1で対応する信号間隔tN[i]が算出可能な形態であれば本発明は適用され得る。
また、前述の実施例1では、2種類の平均回転速度として1回転平均回転速度N16及び1/4回転平均回転速度N4を例示したが、必ずしもこの様な形態に限らなくとも本発明は適用され得る。要は、信号間隔tN[i]の履歴数の異なる2種類の平均回転速度が用いられれば良い。
また、前述の実施例2では、平均回転速度として1回転平均回転速度N16と1/4回転平均回転速度N4とを例示したが、必ずしもこの様な形態に限らなくとも本発明は適用され得る。要は、過去複数分の信号間隔tN[i]に基づいて算出される平均回転速度が用いられれば良い。
また、前述の実施例では、歯72の各歯に1対1に対応してパルス信号Pが発生させられたが、この様な形態に限らず、例えば歯数が多い場合や高回転速度域である場合には各歯毎でなく数歯おき毎にパルス信号Pを発生させるような態様も考えられる。要は、回転体70の所定の回転角度毎に割込信号SPUを発生するような形態であれば良い。
また、前述の実施例では、回転体70の径方向外周部に円周方向に沿って並べられた複数の被検出体として歯72を例示したが、必ずしもこの様な歯72を有する形態に限らなくとも本発明は適用され得る。例えば、回転体70に打ち抜き加工により形成された歯72でなく、加工により回転体70の径方向外周部に円周方向に沿って並べられた複数の溝部が形成されることによる突起部であっても良い。また、回転体70の径方向外周部に円周方向に沿ってN極、S極が交互に配置されたものであっても良い。このような場合には、その突起部やN、S極が複数の被検出体として機能する。また、歯72は16歯であったが、この歯数はあくまで本発明の回転速度演算処理を説明する為の例示であり、種々の態様が可能である。
また、前述の実施例では、センサ60は、回転体70の回転速度Nを検出することで回転部材50の回転速度Nを検出するものであったが、例えば被検出体(例えば歯)が設けられた回転部材50と相対する位置に備えられてその回転部材50の回転速度Nを直接的に検出するものであっても良い。この場合、その回転部材50そのものが回転体に相当する。
尚、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。