図1は、本発明が適用される車両10を構成するエンジン12から駆動輪14までの動力伝達経路の概略構成を説明する図であると共に、変速機構部16の出力歯車18などの回転方向及び回転速度を検出し又は算出するために車両10に設けられた制御系統の要部を説明するブロック線図である。図1において、変速機構部16は、例えば車両において横置きされるFF(フロントエンジン・フロントドライブ)型車両に好適に用いられる有段の自動変速機、無段の自動変速機(例えばベルト式CVT)、または手動変速機等である。走行用駆動力源としての内燃機関であるエンジン12から変速機構部16へ入力された動力は、カウンタギヤ対20の一方を構成する出力回転部材としての出力歯車18から、動力伝達装置としてのカウンタギヤ対20、ファイナルギヤ対22、差動歯車装置(ディファレンシャルギヤ)24、及び一対の車軸(ドライブシャフト(D/S))26等を順次介して一対の駆動輪14へ伝達される。これら変速機構部16、カウンタギヤ対20、ファイナルギヤ対22、差動歯車装置(ディファレンシャルギヤ)24等によりトランスアクスル(T/A)が構成される。
また、車両10には、例えば動力伝達経路中の各回転部材の回転速度を検出(算出)する為の車両用回転検出装置40(図2参照)の一部を含む電子制御装置80が備えられている。電子制御装置80は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、エンジン12の出力制御、変速機構部16の変速制御などを実行する。
電子制御装置80には、例えばエンジン回転速度センサ28からのエンジン12のクランクシャフトのクランク角度(位置)ACR及びエンジン回転速度NEに応じたエンジン回転速度信号、入力回転速度センサ30からの変速機構部16の入力軸の回転速度NINに応じた入力回転速度信号、出力回転速度センサ32からの変速機構部16の出力歯車18の回転速度NOUTに応じた出力回転速度信号、各車速センサ34からの各車輪(すなわち駆動輪14に従動輪を加えた各車輪)の回転速度NWに応じた車輪速信号などが、それぞれ供給される。
また、電子制御装置80からは、例えばエンジン12の出力制御の為のエンジン出力制御指令信号、変速機構部16の変速制御の為の変速制御指令信号等が、それぞれ出力される。例えば、電子制御装置80は、前記エンジン回転速度信号や変速制御指令信号等に基づいてエンジン出力制御指令信号を不図示のスロットルアクチュエータや燃料噴射装置やイグナイタなどへ出力してエンジン12の出力制御を実行する。また、電子制御装置80は、前記入力回転速度信号や出力回転速度信号等に基づいて変速制御指令信号を不図示の油圧制御回路などへ出力して変速機構部16のギヤ比の切換制御を実行する。
図2は、前記エンジン12のクランクシャフト、変速機構部16の入力軸、変速機構部16の出力歯車18、各車輪などの各回転部材50の回転方向及び回転速度Nを検出する為のエンジン回転速度センサ28、入力回転速度センサ30、出力回転速度センサ32、車速センサ34などの各回転検出センサ60の一例を説明する概略図である。図2に示すように、本実施例の車両用回転検出装置40は、回転検出センサ60と被回転検出体70とを備えている。被回転検出体70は、例えば回転部材50と同一軸心(回転中心)C0を有して一体的に固定されて回転部材50と共に回転する回転検出用ロータや回転検出用ドラムなどである。そして、被回転検出体70は、例えば円盤状であり、被回転検出体70の外周部において上記軸心C0まわりにそれぞれ配設された複数個のパルス発生部としての歯72a,72b,72c(特に区別しない場合には、歯72という)を備えている。また、回転検出センサ60は、例えば歯72と相対する位置に備えられており、被回転検出体70の回転に伴い歯72が通過する毎にパルス信号Pを発生する。この回転検出センサ60としては、例えば電磁ピックアップ式、ホール素子式、MRE(Magnetic Resistance Element:磁気抵抗素子)式などのセンサが採用される。
例えば電磁ピックアップ式センサの場合では、被回転検出体70が回転することにより、回転検出センサ60が歯72と凹部74a,74b,74c(特に区別しない場合には、凹部74という)とに交互に相対して被回転検出体70との間のエアギャップが変化するため、回転検出センサ60は、上記パルス信号Pの連なりとして、被回転検出体70の回転速度に対応して周波数が変化する交流電圧を発生させる。この交流電圧は、回転速度信号として電子制御装置80へ供給され、電子制御装置80にてこの供給された交流電圧が図2(b),(c)に示すような矩形波状のパルス信号Pの連なりへと変換され乃至は成形される。また、例えばホール素子式やMRE式センサの場合では、ホール素子やMREを内蔵したセンサ回路(IC)から構成されており、被回転検出体70が回転することにより、センサ回路(IC)にかかる磁界が変化するため、被回転検出体70の回転速度に対応して周波数が変化する交流電圧が発生させられ、その交流電圧が図2(b),(c)に示すような矩形波状のパルス信号Pの連なりへと変換され乃至は成形される。このパルス信号Pは、回転速度信号として電子制御装置80へ供給される。なお、図2(b),(c)は、被回転検出体70が図2(a)の矢印AR03方向に略一定速で回転する場合に発生するパルス信号Pの例である。また、本実施例の説明を簡潔にするため、特に注記しない限り、回転検出センサ60は図2(b),(c)に示すような矩形波状のパルス信号Pを発生させるものとして説明する。
図2(a)に示す被回転検出体70では、軸心C0まわりに3種類の回転角間隔L1,L2,L3(特に区別しない場合には、回転角間隔Lnという)を有する回転角間隔群LGを8つ形成するようにそれぞれ配設された複数個の歯(パルス発生部)72が打抜加工により成形されており、各歯72を区切るため結果的に各歯72間に凹部74が成形されている。その凹部74の軸心C0まわりの回転角幅すなわち溝幅GP(単位は例えば「rad」)は全ての凹部74a,74b,74cにおいて同一である。上記回転角間隔Lnとは、1つの歯72のエッジ等の一部位からそれと隣り合う歯72のその一部位と同じ部位までの軸心C0まわりの回転角(単位は例えば「rad」)であり、言い換えれば、パルス発生部としての歯72の軸心C0まわりのピッチである。
また、被回転検出体70のそれぞれの回転角間隔Lnの大小関係に特に制限はないが、好適には、被回転検出体70では、回転角間隔群LGをそれぞれ構成する回転角間隔Lnのうち連続する2以上の回転角間隔を合計した合算回転角は、その合算回転角を除いた回転角間隔群LGの残りの回転角に等しくなっている。例えば図3に示すように、本実施例の被回転検出体70では、回転角間隔L1は7.5degであり、回転角間隔L2は15degであり、回転角間隔L3は22.5degである。すなわち、被回転検出体70において連続する2つの回転角間隔L1,L2を合計した前記合算回転角は22.5deg(=7.5deg+15deg)であり、その合算回転角を除いた回転角間隔群LGの残りの回転角(=L3=22.5deg)に等しくなっている。このように、1つの回転角間隔群LGを構成する回転角間隔Lnの大小関係を設定すると、2つの回転角間隔L1,L2を併せて1つの回転角間隔Lnであるとみなせば、歯72は、軸心C0まわりに、上記合算回転角(=22.5deg)の回転角間隔Lnだけを形成して配設されているものと取り扱うことが可能となる。
図2に戻り、電子制御装置80は、図2(b),(c)に示すようなパルス信号Pにおいて、上記各歯72a,72b,72c及び凹部74a,74b,74cに対応した各パルス信号Pa〜Pfのインターバル(以下、パルスインターバル、パルス間隔、又はパルス周期という)Ta〜Tfを検出する。本実施例では、各パルスインターバルTa〜Tf(特に区別しない場合には、パルスインターバルTnという)は、本発明のパルス間隔に対応しており、パルス信号Pの立ち上がりから次のパルス信号Pの立ち上がりまでの期間(単位は例えば「sec」)である。また、図2(b)では、例えば各歯72が回転検出センサ60に略相対する位置にて各パルス信号Pa〜Pfがハイ(Hi)となり、各凹部74が回転検出センサ60に略相対する位置にて各パルス信号Pa〜Pfがロー(Lo)となる。また、図2(c)では、例えば各歯72が回転検出センサ60に略相対したときに各パルス信号Pa〜Pfが一定期間だけオン(ON)となり、次に各歯72が回転検出センサ60に略相対するまで各パルス信号Pa〜Pfがオフ(OFF)となる。そして、電子制御装置80は、各パルスインターバルTa〜Tf及び回転角間隔L1,L2,L3に基づいて被回転検出体70の回転方向を検出しその被回転検出体70の回転速度N(単位は例えば「rad/sec」)を算出する。この被回転検出体70の回転方向を検出しその被回転検出体70の回転速度Nを算出する制御に関しては後述する。
図4は、電子制御装置80に備えられた制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。図4に示すように、電子制御装置80は、回転方向検出制御部すなわち回転方向検出制御手段90と、回転速度算出部すなわち回転速度算出手段92とを備えている。回転方向検出制御手段90は、回転検出センサ60からのパルス信号Pに基づいて被回転検出体70の回転方向を検出する回転方向検出制御を実行する。この回転方向検出制御の内容について、図5を用いて以下に説明する。
図5は、被回転検出体70が停止状態から反時計回り(矢印AR04方向)に回転し始めた場合を例として、前記回転方向検出制御の内容を説明するための図である。図5では、回転角間隔L1,L2,L3は図2のものと同一であり、被回転検出体70のパルス発生部としての歯72はそれぞれ模式的に太い実線で表されている。また、図5のグラフでは、実際の被回転検出体70の回転速度N(以下、「ロータ回転速度N」という)は太い実線L04で示されている。回転方向検出制御手段90は、回転検出センサ60からのパルス信号Pを受信して、所定の必要個数のパルスインターバルTnを連続して取得し記憶する。その必要個数は、被回転検出体70に形成された回転角間隔Lnの種類数に1を加えた数として予め設定されている。本実施例では回転角間隔L1,L2,L3の種類数は3であるので、上記必要個数は4(=3+1)である。回転方向検出制御手段90は、例えば、被回転検出体70が回転し始めた場合に上記パルスインターバルTnを最初の前記必要個数だけ連続して取得する。
ここで、図5では、回転角間隔L1に対応するパルスインターバルT1、回転角間隔L2に対応するパルスインターバルT2、回転角間隔L3に対応するパルスインターバルT3、再び回転角間隔L1に対応するパルスインターバルT4が順次取得されているが、ロータ回転速度Nが一定ではないので、その取得されたパルスインターバルT1〜T4の長短を相互に直接比較しても、そのパルスインターバルT1〜T4がそれぞれ回転角間隔L1〜L3の何れに対応するかは判別できない。そこで、そのパルスインターバルT1〜T4にそれぞれ対応する回転角間隔L1〜L3を求めるために、被回転検出体70の回転においてあり得る回転角間隔Lnの並びの全パターン(全種類)、すなわち、被回転検出体70において連続する複数の回転角間隔Ln(具体的には4つ連続する回転角間隔Ln)に対応する複数種類の回転角間隔データ列LDTAが予め設定されている。その回転角間隔データ列LDTAをそれぞれ構成する回転角間隔Lnの数は、回転方向検出制御手段90が取得すべきパルスインターバルTnの前記必要個数と同数、すなわち、被回転検出体70に形成された回転角間隔Lnの種類数に1を加えた数である。回転角間隔データ列LDTAを構成する回転角間隔Lnが被回転検出体70において連続するとは、例えば回転角間隔Lnが「L1→L2→L3→・・」の順であれば図5のように被回転検出体70の周方向の一方向に連続して並んでいるが、「L1→L2→L1→・・」の順には連続していないということである。上記複数種類の回転角間隔データ列LDTAの数は、被回転検出体70の矢印AR04方向及びそれの逆方向の両方を加味すれば、回転角間隔群LGを構成する回転角間隔Lnの種類数(=3種類)の2倍、すなわち、本実施例では6つ(=3種類×2)である。具体的に、その6種類の回転角間隔データ列LDTAとしては、(i)被回転検出体70が回転角間隔L1から矢印AR04方向(反時計回り)に回るとして「L1→L2→L3→L1」、(ii)被回転検出体70が回転角間隔L2から矢印AR04方向に回るとして「L2→L3→L1→L2」、(iii)被回転検出体70が回転角間隔L3から矢印AR04方向に回るとして「L3→L1→L2→L3」、(iv)被回転検出体70が回転角間隔L1から矢印AR04方向とは逆方向に回るとして「L1→L3→L2→L1」、(v)被回転検出体70が回転角間隔L2から矢印AR04方向とは逆方向に回るとして「L2→L1→L3→L2」、および、(vi)被回転検出体70が回転角間隔L3から矢印AR04方向とは逆方向に回るとして「L3→L2→L1→L3」がそれぞれ設定されている。
回転方向検出制御手段90は、前記必要個数のパルスインターバルTnを取得すると、複数種類(=6種類)の回転角間隔データ列LDTAをそれぞれ構成する複数の回転角間隔Lnに基づいて複数のパルスインターバル(パルス間隔)T1〜T4の各々に対応する回転速度換算値NXをそれぞれ算出する。具体的に、回転方向検出制御手段90は、回転角間隔データ列LDTAのそれぞれにおいてその回転角間隔データ列LDTAを構成する回転角間隔Lnの並び順に従って、前記取得したパルスインターバルT1〜T4の各々に対応する回転角間隔Lnを仮定して、その仮定した対応関係に従って回転速度換算値NXを算出する。その回転速度換算値NX(単位は例えば「rad/sec」)は、上記仮定した回転角間隔Lnに基づいてパルスインターバルTnをロータ回転速度Nに換算した算出値であって、回転角間隔LnをパルスインターバルTnで除して算出される(NX=Ln/Tn)。例えば、回転角間隔Lnの連なりが前記(vi)の「L3→L2→L1→L3」である回転角間隔データ列LDTAに基づいた回転速度換算値NXの連なりすなわち回転速度換算値データ列NXDTAは、「(L3/T1)→(L2/T2)→(L1/T3)→(L3/T4)」として算出される。このように、回転方向検出制御手段90は、6種類の回転角間隔データ列LDTAにそれぞれ対応した6種類の回転速度換算値NXの連なり(回転速度換算値データ列NXDTA)を算出する。図5のグラフには、6種類の回転速度換算値データ列NXDTAが折れ線(実線または破線)で示されており、回転速度換算値データ列NXDTAの各々において、パルスインターバルT1に対応する回転速度換算値NXはN1の列に示され、パルスインターバルT2に対応する回転速度換算値NXはN2の列に示され、パルスインターバルT3に対応する回転速度換算値NXはN3の列に示され、パルスインターバルT4に対応する回転速度換算値NXはN4の列に示されている。回転速度換算値NXは、回転角間隔Lnを仮定した上での各パルスインターバルTnにおけるロータ回転速度Nの平均値であるので、グラフ横軸の各パルスインターバルTnの中間位置(=Tn/2)にプロットされているが、実際には各パルスインターバルTnの経過後に算出される。
次に、回転方向検出制御手段90は、全種類の回転速度換算値データ列NXDTAを算出すると、複数種類(=6種類)の回転角間隔データ列LDTAのうち回転速度換算値NXの時間変化が線形に最も近い回転角間隔データ列LDTAを1つ選択し、その選択した回転角間隔データ列LDTAを基準回転角間隔データ列LDTASTとして決定する。言い換えれば、6種類の回転速度換算値データ列NXDTAのうち、それを構成する回転速度換算値NXの時間変化が線形に最も近い回転速度換算値データ列NXDTAを1つ選択し、その選択した回転速度換算値データ列NXDTAに対応する回転角間隔データ列LDTAを基準回転角間隔データ列LDTASTとして決定する。図5ではそのグラフから明らかなように、回転角間隔Lnの連なりが前記(i)の「L1→L2→L3→L1」である回転角間隔データ列LDTAに基づいた回転速度換算値NXの時間変化が線形に最も近いので、すなわち、その「L1→L2→L3→L1」である回転角間隔データ列LDTAに基づいた回転速度換算値NXだけが時間経過に対して一次関数的に並ぶので、回転方向検出制御手段90は、この「L1→L2→L3→L1」の回転角間隔データ列LDTAを基準回転角間隔データ列LDTASTとして決定する。なお、図5のグラフに示すように、基準回転角間隔データ列LDTASTに対応する回転速度換算値データ列NXDTAは、実線L04で示す実際のロータ回転速度Nと略一致し、基準回転角間隔データ列LDTASTを構成する回転角間隔Lnは、取得されたパルスインターバルT1〜T4に対応する実際の回転角間隔Lnに一致する。また、破線L05で示す回転速度換算値NXの時間変化はパルスインターバルT1〜T3では略線形であるが、パルスインターバルT1〜T4まで評価することにより線形性が喪失し、基準回転角間隔データ列LDTASTとする対象ではなくなっている。前記回転速度換算値NXの時間変化の線形性を評価することにより基準回転角間隔データ列LDTASTを決定する理由は、車両10の駆動系のように大きな慣性を伴う回転運動では、微少時間に限れば被回転検出体70の回転速度Nは経過時間の一次関数で近似することができ、すなわち、その回転速度Nの時間変化は線形または略線形となるからである。
回転方向検出制御手段90は、基準回転角間隔データ列LDTASTを決定するに際し、回転速度換算値NXの時間変化の線形性について評価する必要があるが、前記回転速度換算値NXの時間変化の線形性評価の手法としては種々考え得る。例えば、それぞれの回転速度換算値データ列NXDTAにおいて、パルスインターバルT1に基づく回転速度換算値NX(=N1)とパルスインターバルT2に基づく回転速度換算値NX(=N2)との間の回転加速度AC1(単位は例えば「rad/sec2」)と、パルスインターバルT2に基づく回転速度換算値NX(=N2)とパルスインターバルT3に基づく回転速度換算値NX(=N3)との間の回転加速度AC2と、パルスインターバルT3に基づく回転速度換算値NX(=N3)とパルスインターバルT4に基づく回転速度換算値NX(=N4)との間の回転加速度AC3とを算出して、その回転加速度AC1〜AC3のうちの最小値と最大値との差が最も小さいものを、線形に最も近い回転速度換算値NXの時間変化であると判定してもよい。或いは、それぞれの回転速度換算値データ列NXDTAにおいて上記回転速度換算値NX(=N1)と回転速度換算値NX(=N4)との間を直線補完して、その直線補完による回転速度換算値NX(=N2,N3)の相当値(N2,N3相当の内分値)と回転方向検出制御手段90が算出した回転速度換算値NX(=N2,N3)とのそれぞれの差の絶対値の合計が最も小さいものを、線形に最も近い回転速度換算値NXの時間変化であると判定してもよい。
次に、回転方向検出制御手段90は、基準回転角間隔データ列LDTASTを決定すると、その基準回転角間隔データ列LDTASTに基づいて被回転検出体70の回転方向を検出する。図5では、基準回転角間隔データ列LDTASTにおける回転角間隔Lnの連なりは「L1→L2→L3→L1」であり、これは被回転検出体70が回転角間隔L1から矢印AR04方向(反時計回り)に回ったことを意味するので、回転方向検出制御手段90は、被回転検出体70の回転方向が図5での反時計回りであると判定する。このようにして、回転方向検出制御手段90は、被回転検出体70の回転方向を検出する。すなわち、前記回転方向検出制御では、予め設定された複数種類の回転角間隔データ列LDTAのうち回転速度換算値NXの時間変化が線形に最も近い回転角間隔データ列LDTAに基づいて、被回転検出体70の回転方向を検出する。
また、回転方向検出制御手段90は、基準回転角間隔データ列LDTASTを決定したことにより、結果として、前記回転方向検出制御において取得した図5のパルスインターバルT1,T2,T3,T4の各々に対応する回転角間隔Lnの種類がそれぞれ回転角間隔L1,L2,L3,L1であると特定しているので、被回転検出体70の回転方向の検出後にも、パルスインターバルTnの各々に対応する回転角間隔Lnの種類を特定することが可能である。そこで、回転方向検出制御手段90は、被回転検出体70の回転方向の検出後にも、被回転検出体70の回転方向を検出する基になった回転角間隔データ列LDTAすなわち基準回転角間隔データ列LDTASTに基づいて、被回転検出体70の回転に従って順次発生するパルスインターバルTnの各々に対応する回転角間隔Lnの種類を特定する。そして、回転方向検出制御手段90は、パルスインターバルTnとそれに対応する回転角間隔Lnとを一組として回転速度算出手段92に逐次出力する。
回転速度算出手段92は、回転方向検出制御手段90による基準回転角間隔データ列LDTASTの決定後に、被回転検出体70の回転速度N(ロータ回転速度N)を逐次算出する。すなわち、回転速度算出手段92は、回転方向検出制御手段90がパルスインターバルTnの各々に対応する回転角間隔Lnの種類を特定することにより、相互に対応するパルスインターバルTnと回転角間隔Lnとに基づきロータ回転速度Nを逐次算出する。例えば、そのロータ回転速度Nはその回転角間隔LnをそのパルスインターバルTnで除して算出される(N=Ln/Tn)。なお、図3に示すように、被回転検出体70が、前記合算回転角(=L1+L2)とその合算回転角を除いた回転角間隔群LGの残りの回転角(=L3)とが互いに等しいものである場合には、回転速度算出手段92は、回転方向検出制御手段90によってパルスインターバルTnの各々に対応する回転角間隔Lnの種類が特定された後には、前記合算回転角を構成する回転角間隔L1,L2の各々に対応するパルスインターバルTnを互いに結合して1つのパルスインターバルTnとみなしてもよい。そして、そのようにした上で例えば、ロータ回転速度Nを算出する。
以上、図5を用いて前記回転方向検出制御の内容等を詳述した。その回転方向検出制御はどのようなタイミングで実行されても差し支えないが、例えば、回転方向検出制御手段90は、回転速度算出手段92が算出するロータ回転速度Nの絶対値が予め定められた回転速度下限値NL1を下回る毎に、前記回転方向検出制御を実行するのが好ましい。そのようにする場合には、例えば、回転速度算出手段92が、ロータ回転速度Nの絶対値が上記回転速度下限値NL1を下回るか否かを判断する回転速度低下判断部すなわち回転速度低下判断手段として機能し、回転方向検出制御手段90は、その回転速度算出手段92の判断に基づいて前記回転方向検出制御を実行する。上記回転速度下限値NL1は、例えば、被回転検出体70が略回転停止したとみなせる程度の実験的に設定された回転速度Nである。また、回転速度下限値NL1に換えてその回転速度下限値NL1に対応したパルス信号検出制限時間TL1が予め定められており、回転方向検出制御手段90は、1つのパルス信号Pを受信しその次のパルス信号Pを受信するまでの経過時間が上記パルス信号検出制限時間TL1を超えた場合には、ロータ回転速度Nの絶対値が回転速度下限値NL1を下回ったとみなしても差し支えない。
また、回転方向検出制御手段90は、被回転検出体70の回転方向の検出後には、予め定められた検出頻度FL1で、前記回転方向検出制御を実行すると共に、最新の基準回転角間隔データ列LDTASTに基づいてパルスインターバルTnの各々に対応する回転角間隔Lnの種類を特定するのが好ましい。上記検出頻度FL1は、受信されるパルス信号Pのパルス抜けが生じる可能性を加味して、そのパルス抜けが車両10全体の制御に支障を来たさないように実験的に設定されている。また、上記検出頻度FL1としては、先回の前記回転方向検出制御の実行時からの経過時間として設定されていてもよいし、先回の前記回転方向検出制御の実行時からのパルス信号Pの延べ受信数として設定されていてもよいし、或いは、先回の前記回転方向検出制御の実行時からの被回転検出体70の延べ回転量(単位は例えば「rad」)として設定されていてもよい。
図5に示したように、本実施例の回転角間隔Lnの種類数は3つであるので、回転方向検出制御手段90は、前記回転方向検出制御の実行により被回転検出体70の回転方向を検出するためには、少なくとも4つのパルスインターバルTnを取得する必要があり、その回転方向検出制御で用いられる回転角間隔データ列LDTAは、その取得すべきパルスインターバルTnと同数の回転角間隔Lnから構成されている。すなわち、前記回転方向検出制御において被回転検出体70の回転方向を検出するために必要な被回転検出体70の回転量すなわち所要回転量(単位は例えば「rad」)と、1つの回転角間隔データ列LDTAを構成する回転角間隔Lnを合計した回転角度ANG1(データ列合計角度ANG1)との間には相関関係がある。従って、上記所要回転量を小さくしたければ、それに応じて上記データ列合計角度ANG1が小さくなるように、歯72および凹部74が被回転検出体70に配設されているべきである。そこで、図2に示す歯72および凹部74は、全ての回転角間隔データ列LDTAにおいてデータ列合計角度ANG1が予め定められた回転角度上限値LANG1以下となるように、被回転検出体70に配設されているのが好ましい。例えば、本実施例で言えば、「L3→L1→L2→L3」の回転角間隔データ列LDTAと「L3→L2→L1→L3」の回転角間隔データ列LDTAとのそれぞれのデータ列合計角度ANG1(=L1+L2+2×L3)が全種類の回転角間隔データ列LDTAの中で最も大きいので、歯72および凹部74は、そのデータ列合計角度ANG1(=L1+L2+2×L3)が上記回転角度上限値LANG1以下となるように被回転検出体70に配設されているのが好ましいということである。なお、上記回転角度上限値LANG1は、前記回転方向検出制御により検出される被回転検出体70の回転方向を必要とする制御系で前記所要回転量を制限すべき条件に応じて実験的に定められる。
図6は、電子制御装置80による本実施例の制御作動の要部、すなわち、前記回転方向検出制御が実行される制御作動を説明するフローチャートであり、例えば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行される。
図6で、先ず、ステップ(以下、「ステップ」を省略する)SA1においては、回転検出センサ60からのパルス信号Pが受信され、パルスインターバルTnが取得される。SA1の次はSA2に移る。
SA2においては、上記SA1にて取得されたパルスインターバルTnがRAMなどのバッファに格納される。SA2の次はSA3に移る。
SA3においては、上記SA1にて取得されたパルスインターバルTnの数が前記必要個数に達したか否か、すなわち、パルスインターバルTnを上記必要個数取得済みか否かが判断される。このSA3の判断が肯定された場合、すなわち、取得されたパルスインターバルTnの数が上記必要個数に達した場合には、SA4に移る。一方、このSA3の判断が否定された場合には、本フローチャートは終了し、再び上記SA1から実行されてパルスインターバルTnが取得される。
SA4においては、取得されたパルスインターバルTnの連なり(並び)であるパルスインターバルデータ列が、予め設定された複数種類の回転角間隔データ列LDTAの各々に基づいて回転速度換算値データ列NXDTAにそれぞれ変換される。換言すれば、上記パルスインターバルデータ列から、複数種類の回転角間隔データ列LDTAの各々に対応した回転速度換算値データ列NXDTAがそれぞれ算出される。SA4の次はSA5に移る。
SA5においては、回転速度換算値データ列NXDTAの各々において、回転速度換算値NXの時間変化の線形性が評価される。例えば、回転速度換算値データ列NXDTAの各々で、回転速度換算値NXの相互間におけるその回転速度換算値NXの時間変化率である回転加速度AC1,AC2,AC3がそれぞれ算出され、その回転加速度AC1,AC2,AC3のうちの最小値と最大値との差が線形性評価値として算出される。SA5の次はSA6に移る。
SA6においては、回転速度換算値データ列NXDTAの各々について算出された前記線形性評価値が互いに比較されるにより、回転角間隔Lnの連なり(並び)に対応する複数種類の前記回転角間隔データ列LDTAの中から1つの回転角間隔データ列LDTAが選択される。具体的には、複数種類の回転角間隔データ列LDTAの中で、前記線形性評価値が最も小さい回転角間隔データ列LDTAが選択される。要するに、回転速度換算値NXの時間変化が線形に最も近い回転角間隔データ列LDTAが選択される。そして、その選択された回転角間隔データ列LDTAが基準回転角間隔データ列LDTASTとして決定される。SA6の次はSA7に移る。
SA7においては、基準回転角間隔データ列LDTASTに基づいて、前記パルスインターバルデータ列の最初のパルスインターバルTnに対応する歯72a,72b,72cである回転開始歯の種類、すなわち、その最初のパルスインターバルTnに対応する回転角間隔Lnの種類が判定される。また、被回転検出体70の回転方向が、基準回転角間隔データ列LDTASTに基づいて判定される。例えば、先回のSA7の実行により、上記最初のパルスインターバルTnに対応する回転角間隔Lnの種類と被回転検出体70の回転方向とが既に判定されていた場合には、その判定結果が更新される。なお、前記SA1〜SA7は回転方向検出制御手段90に対応する。
図7は、ロータ回転速度Nが前記回転速度下限値NL1を下回る毎に前記回転方向検出制御が実行される制御作動の一例を説明するフローチャートであり、例えば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行される。この図7に示す制御作動は、単独で或いは他の制御作動と並列的に実行されるものである。
図7で、先ず、回転速度算出手段92に対応するSB1においては、ロータ回転速度Nの絶対値が前記回転速度下限値NL1を下回るか否かが判断される。このSB1の判断が肯定された場合、すなわち、ロータ回転速度Nの絶対値が前記回転速度下限値NL1を下回る場合には、SB2に移る。一方、このSB1の判断が否定された場合には、SB3に移る。
回転方向検出制御手段90に対応するSB2においては、前記回転方向検出制御が実行され、既に実行中であればその実行が継続される。具体的には、図6のフローチャートが実行される。SB2に次はSB3に移る。
SB3においては、前記回転方向検出制御の実行により被回転検出体70の回転方向が既に判定されているか否か、すなわち、図6のSA7にて被回転検出体70の回転方向の判定が完了しているか否かが判断される。このSB3の判断が肯定された場合、すなわち、被回転検出体70の回転方向が既に判定されている場合には、SB4に移る。一方、このSB3の判断が否定された場合には、本フローチャートは終了する。
回転方向検出制御手段90に対応するSB4においては、被回転検出体70の回転に従って順次発生するパルスインターバルTnが取得され、その取得されたパルスインターバルTnの各々に対応する回転角間隔Lnの種類が、図6のSA6にて決定された基準回転角間隔データ列LDTASTに基づいて特定される。
回転速度算出手段92に対応するSB5においては、相互に対応するパルスインターバルTnと回転角間隔Lnとに基づきロータ回転速度Nが算出される。このSB5では、例えば、図3に示すように被回転検出体70の各回転角間隔Lnが「L3=L1+L2」の関係にあれば、回転角間隔L1,L2の各々に対応するパルスインターバルTnが互いに結合されて1つのパルスインターバルTnとみなされた上で、ロータ回転速度Nが算出されてもよい。
図8は、前記回転方向検出制御が、予め定められた前記検出頻度FL1で、被回転検出体70の回転方向の検出後に実行される制御作動の一例を説明するフローチャートであり、例えば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行される。この図8に示す制御作動は、単独で或いは他の制御作動と並列的に実行されるものであり、例えば、図7に示す制御作動と並列的に実行されても差し支えない。なお、上記検出頻度FL1は種々のパラメータによって設定可能であるが、図8のフローチャートでは、パルス信号Pの受信数によって設定されるものとする。
図8で、先ず、回転方向検出制御手段90に対応するSC1においては、先回の前記回転方向検出制御の実行時から計測されているパルス信号Pの延べ受信数RVPが、前記検出頻度FL1に基づいて予め設定された制限値LRVPに達したか否かが判断される。この場合、上記検出頻度FL1は、パルス信号Pの延べ受信数RVPが上記制限値LRVPに達する毎に前記回転方向検出制御が実行されるという頻度であると言える。例えば、上記パルス信号Pの延べ受信数RVPは、初期値が零であって図6のSA7が実行される毎に零に戻り、パルス信号Pが受信される毎に1ずつ加算される。このSC1の判断が肯定された場合、すなわち、パルス信号Pの延べ受信数RVPが上記制限値LRVPに達した場合には、SC2に移る。一方、このSC1の判断が否定された場合には、本フローチャートは終了する。
回転方向検出制御手段90に対応するSC2においては、前記回転方向検出制御が実行され、既に実行中であればその実行が継続される。具体的には、図6のフローチャートが実行される。
上述のように、本実施例の回転方向検出制御手段90は、被回転検出体70において連続する複数の回転角間隔Lnに対応する予め設定された複数種類の回転角間隔データ列LDTAのうち、複数のパルス信号Pのパルスインターバル(パルス間隔)Tnの各々を回転角間隔Lnに基づいてロータ回転速度Nに換算した回転速度換算値NXの時間変化が線形に最も近い回転角間隔データ列LDTA(基準回転角間隔データ列LDTAST)に基づいて、被回転検出体70の回転方向を検出する前記回転方向検出制御を実行する。ここで、車両10の駆動系のように大きな慣性を伴う回転運動では、微少時間に限ればロータ回転速度Nは経過時間の一次関数で近似することができる。すなわち、そのロータ回転速度Nの時間変化は線形または略線形となる。そして、被回転検出体70に形成された回転角間隔Lnは3種類以上あるところ、上記回転速度換算値NXは、それの算出の基となる回転角間隔Lnが実際の回転角間隔LnとパルスインターバルTnとの対応通り正しければ、実際のロータ回転速度Nに一致乃至は略一致し、実際のロータ回転速度Nの時間変化と同様に、時間経過に従って線形または略線形で変化する。その一方で、上記回転速度換算値NXは、上記算出の基となる回転角間隔Lnが実際の回転角間隔LnとパルスインターバルTnとの対応とは異なり誤っていれば、実際のロータ回転速度Nとは全く異なる値として算出される。従って、複数の回転速度換算値NXをそれぞれ算出する基となる複数の回転角間隔Lnが実際に対して全て正しい場合に限り、その回転速度換算値NXの時間変化は線形または略線形となる。このようなことから、本実施例によれば、パルスインターバルTnの長さの変化から被回転検出体70の回転方向を検出するのではなく、回転速度換算値NXの時間変化の線形性から、実際のロータ回転速度Nに最も近い或いは一致する回転速度換算値NXを与える回転角間隔データ列LDTAに基づいて被回転検出体70の回転方向が検出されるので、被回転検出体70の回転速度Nの変動が少ない時だけでなく被回転検出体70の回転開始時すなわち回転開始初期においても、迅速に且つ正確にその被回転検出体70の回転方向を検出することができる。
また、本実施例によれば、回転方向検出制御手段90は、前記回転方向検出制御では、(a)複数種類の回転角間隔データ列LDTAをそれぞれ構成する複数の回転角間隔Lnに基づいて複数のパルスインターバルTnの各々に対応する回転速度換算値NXをそれぞれ算出し、(b)複数種類の回転角間隔データ列LDTAのうち回転速度換算値NXの時間変化が線形に最も近い回転角間隔データ列LDTAを1つ選択し、(c)その選択した回転角間隔データ列LDTA(基準回転角間隔データ列LDTAST)に基づいて被回転検出体70の回転方向を検出する。従って、順序立てて、その被回転検出体70の回転方向を検出する基にする回転角間隔データ列LDTA(基準回転角間隔データ列LDTAST)が選択されるので、実際の制御に適用することが容易となる。
また、本実施例によれば、予め設定された複数種類の回転角間隔データ列LDTAの数は、回転角間隔群LGを構成する回転角間隔Lnの種類数(=3種類)の2倍、すなわち、本実施例では6つ(=3種類×2)である。ここで、被回転検出体70の一回転方向に限って見れば、被回転検出体70の回転であり得る回転角間隔Lnの連なりの種類数(パターン数)すなわち上記回転角間隔データ列の種類数は回転角間隔Lnの種類数と同数である。すなわち、被回転検出体70の正逆両方の回転方向を加味すれば、その被回転検出体70の回転であり得る回転角間隔データ列LDTAの種類数は回転角間隔Lnの種類数の2倍である。従って、過不足ない種類の回転角間隔データ列LDTAの中から、被回転検出体70の回転方向を検出する基にする回転角間隔データ列LDTAすなわち基準回転角間隔データ列LDTASTを選び出すことが可能である。
また、本実施例によれば、回転角間隔データ列LDTAをそれぞれ構成する回転角間隔Lnの数は、回転角間隔群LGを構成するその回転角間隔Lnの種類数に1を加えた数であるので、回転速度換算値NXの時間変化の線形性から、被回転検出体70の回転方向を検出する基にする回転角間隔データ列LDTA(基準回転角間隔データ列LDTAST)を適切に1つ選び出すことが可能である。
また、本実施例によれば、被回転検出体70の回転方向の検出後には、被回転検出体70の回転方向を検出する基になった回転角間隔データ列LDTA(基準回転角間隔データ列LDTAST)に基づいて、パルスインターバルTnの各々に対応する回転角間隔Lnの種類が特定される。従って、被回転検出体70の回転方向の他に、例えば、相互に対応するパルスインターバルTnと回転角間隔Lnとに基づきロータ回転速度Nを算出することが可能である。
また、本実施例によれば、回転速度算出手段92は、回転方向検出制御手段90による基準回転角間隔データ列LDTASTの決定後に、被回転検出体70の回転速度N(ロータ回転速度N)を逐次算出するので、ロータ回転速度Nを検出するためのセンサ等を回転検出センサ60とは別個に設ける必要がない。
また、本実施例によれば、回転方向検出制御手段90は、ロータ回転速度Nの絶対値が予め定められた回転速度下限値NL1を下回る毎に、前記回転方向検出制御を実行するのが好ましく、そのようにしたとすれば、車両発進時など、被回転検出体70が停止または略停止した状態から回転速度上昇し始める際に、その被回転検出体70の回転方向が検出されるので、車両発進時など車両10の駆動系の制御において被回転検出体70の回転方向を把握することが重要となる場合において、その被回転検出体70の回転方向を正確且つ迅速に検出することができる。
また、本実施例で好適には、被回転検出体70では、回転角間隔群LGをそれぞれ構成する回転角間隔Lnのうち連続する2以上の回転角間隔を合計した前記合算回転角は、その合算回転角を除いた回転角間隔群LGの残りの回転角に等しくなっている。そして、被回転検出体70をそのようにした場合において、回転速度算出手段92は、回転方向検出制御手段90によってパルスインターバルTnの各々に対応する回転角間隔Lnの種類が特定された後には、前記合算回転角を構成する回転角間隔Lnの各々に対応するパルスインターバルTnを互いに結合して1つのパルスインターバルTnとみなしてもよい。このようにしたとすれば、回転検出センサ60が発生する一連のパルス信号Pを、回転角間隔Lnが全て等間隔である被回転検出体の回転により発生させられているものとして取り扱うことができるので、等間隔の回転角間隔Lnを有して配設された複数個の歯(パルス発生部)72を有する一般的な回転検出用ロータの回転速度を検出する場合と同様にして、本実施例の被回転検出体70の回転速度Nを検出することが可能である。
また、本実施例によれば、回転方向検出制御手段90は、被回転検出体70の回転方向の検出後には、予め定められた検出頻度FL1で、前記回転方向検出制御を実行すると共に、最新の基準回転角間隔データ列LDTASTに基づいてパルスインターバルTnの各々に対応する回転角間隔Lnの種類を特定するのが好ましい。このようにしたとすれば、例えば、回転検出センサ60から電子制御装置80に入力されるパルス信号Pの一部が欠けた場合などにおいて、パルスインターバルTnと回転角間隔Lnとの対応関係を誤って認識することを抑制することが可能である。
また、本実施例によれば、図2に示す歯72および凹部74は、全ての回転角間隔データ列LDTAにおいて前記データ列合計角度ANG1が予め定められた回転角度上限値LANG1以下となるように、被回転検出体70に配設されているのが好ましい。このようにしたとすれば、前記回転方向検出制御において被回転検出体70の回転方向を検出するために必要とされるその被回転検出体70の延べ回転量である前記所要回転量を、上記回転角度上限値LANG1に基づいて制限できる。そのため、その所要回転量を、例えば被回転検出体70の回転方向を検出すべき駆動系の制約等に応じて設定できる。
以上、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、更に別の態様においても実施される。
例えば、前述の実施例において、図2(a)に示す被回転検出体70では、1つの回転角間隔群LG当たりの回転角間隔Lnの種類は3種類であるが、4種類以上であっても差し支えない。
また、前述の実施例の図2(a)において、それぞれの回転角間隔群LG内で回転角間隔Lnは軸心C0まわりの一方向に向かうほど(図2(a)では時計回りに)L1、L2、L3と順次大きくなるが、逆に、図2(a)での時計回りに順次小さくなってもよく、更に言えば回転角間隔Lnは相互に異なった大きさであればよく、上記一方向に向かって大小何れか一方のみへ変化する必要もない。
また、前述の実施例の図2(a)において、回転角間隔群LGは被回転検出体70の軸心C0まわりに8つ形成されているが、その回転角間隔群LGの数は1つであっても差し支えないし、9つ以上であっても差し支えない。要するに、回転角間隔群LGは被回転検出体70に少なくとも1つ形成されていればよい。
また、前述の実施例の図2(a)において、凹部74a,74b,74cの溝幅GPは全て同一であるが、歯72の歯幅WTが全て同一であって回転角間隔Lnから歯幅WTを差し引いた残り回転角(=Ln−WT)が溝幅GPとされていても差し支えない。更に、回転角間隔Lnのそれぞれの種類間で歯幅WTおよび溝幅GPが異なっている被回転検出体70も考え得る。
また、前述の実施例の図5の説明において、パルスインターバルTnを取得すべき前記必要個数は、回転角間隔Lnの種類数に1を加えた数であるが、少なくともその数であるのが望ましく、回転角間隔Lnの種類数に1を加えた数以上であっても差し支えない。また、複数種類の回転角間隔データ列LDTAをそれぞれ構成する回転角間隔Lnの数も同様である。
また、前述の実施例において、上記回転角間隔データ列LDTAをそれぞれ構成する回転角間隔Lnの数と上記必要個数とは何れも、回転角間隔Lnの種類数に1を加えた数であるが、車両10の駆動系において被回転検出体70の回転方向または回転速度Nが検出される箇所の条件などによっては、上記回転角間隔Lnの種類数に1を加えた数よりも少ないこともあり得る。
また、前述の実施例の図3において、前記合算回転角は、2つの回転角間隔L1,L2を合計した角度であるが、回転角間隔群LGをそれぞれ構成する回転角間隔Lnの種類数が図3の被回転検出体70よりも多ければ、上記合算回転角は、被回転検出体70において軸心C0まわりに連続する3つ以上の回転角間隔Lnを合計した角度であることも考え得る。
また、前述の実施例において、被回転検出体70の回転方向が検出されると共に、その被回転検出体70の回転速度Nが算出されるが、その回転速度Nは必要に応じて算出されればよい。すなわち、その回転速度Nは算出されなくても差し支えない。
また、前述の実施例において、回転方向検出制御手段90は、被回転検出体70の回転方向の検出後にも、決定した基準回転角間隔データ列LDTASTに基づいて、被回転検出体70の回転に従って順次発生するパルスインターバルTnの各々に対応する回転角間隔Lnの種類を特定するが、そのようなことが為されない制御も考え得る。
また、前述の実施例において、回転検出センサ60は、被回転検出体70の回転方向を検出することで回転部材50の回転方向を検出するものであったが、例えばパルス発生部(例えば歯72)が設けられた回転部材50と相対する位置に備えられてその回転部材50の回転方向を直接的に検出するものであってもよい。この場合、その回転部材50そのものが被回転検出体に相当する。
また、前述の実施例において、図2(b),(c)に示すように、各パルスインターバルTnは、パルス信号Pの立ち上がりから次のパルス信号Pの立ち上がりまでの期間であったが、被回転検出体70に形成された各回転角間隔Lnとの対応関係が維持されていれば、これに限らず他の期間をパルスインターバルTnとしてもよい。例えば、各パルスインターバルTnは、パルス信号Pの立ち下がりから次のパルス信号Pの立ち下がりまでの期間であってもよい。
また、前述の実施例の図2(b),(c)において、パルス信号Pは矩形形状であるが、パルスインターバルTnを取得可能であれば、パルス信号Pは矩形形状である必要はない。
また、前述の実施例において、被回転検出体70の軸心C0まわりの外周部に周方向に沿って並べられた複数のパルス発生部として歯72を例示したが、被回転検出体70は、必ずしもこのような複数の歯72を有する形態に限られる必要はない。例えば、被回転検出体70に打ち抜き加工により形成された歯72でなく、被回転検出体70の軸心C0まわりの外周部に周方向に沿ってN極、S極が交互に配置されたものであってもよい。このような場合には、そのN極またはS極が複数のパルス発生部として機能する。また、被回転検出体70が有底円筒状の回転検出用ドラムであり、その筒状部分周面に複数のパルス発生部として孔が穿たれていてもよい。
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。