JP5627233B2 - 無菌包装食品の製造方法 - Google Patents
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本発明の無菌包装食品の製造方法は、(1)粒状または麺状食品原料が充填された開口部を有する容体を準備する工程、(2)前記容体を無菌包装食品製造上有効な温度および時間で加熱殺菌する殺菌工程、(3)前記容体および食品原料を加熱して食品原料を調理する調理工程、ならびに(4)前記殺菌済み容体の開口部をシール材で密封包装する密封工程を含み、前記(2)殺菌工程は、殺菌チャンバ内で、気流を連続的または間欠的に生じさせながら行う、方法である。無菌包装食品とは、食品原料が充填された容器を殺菌した後に、調理し、次いで容器を密封して製造される、容器内部および当該容器に内包される調理済み食品が無菌状態にある食品である。
(1)食品原料が充填された容体を準備する工程
本工程では、粒状または麺状食品原料が充填された開口部を有する容体を準備する。本工程は、前記食品原料を容器に充填して行ってもよいし、予め容器に充填された前記食品原料を購入するなどして準備してもよい。
食品原料とは、調理されることによって喫食可能になる食品の原料である。本発明で用いる食品原料は粒状または麺状である。このような食品原料は、容体に充填された際に隣接する個々の粒間または麺間に隙間を形成する。この隙間により食品原料への熱の伝導性が高まるため、殺菌工程において殺菌効果が高くなる。
本発明で用いる食品原料の容器への充填量は、前記食品原料の種類や、製造される無菌包装食品の用途によって異なる。例えば、前記食品原料として吸水させたうるち米を用いる場合、その充填量を80〜150gとすると、1人前に適した量の無菌包装米飯を製造できるので好ましい。
容体とは、本発明で用いる食品原料を充填するための開口部を有する容器である。本発明においては、容体をシール材で密封する工程を経て無菌包装食品が製造されるが、最終製品である無菌包装食品における、開口部を有しない容器と区別するために、最終製品とされる前の段階において用いる容器を容体と称する。容体の形状は、本発明で用いる食品原料を保持できる形状であれば限定されないが、前記食品原料を充填しやすい等の理由から略直方体が好ましい。本発明で用いる容体は、前記食品原料を充填するための開口部を有する。開口部は容体の天面部が開放されて形成されることが好ましい。
(2)殺菌工程
本工程では、殺菌チャンバ内で、気流を連続的または間欠的に生じさせながら、前記容体を無菌包装食品製造上有効な温度および時間で加熱殺菌する。殺菌チャンバ(以下単に「チャンバ」ともいう)とは、殺菌工程を行うための装置に供えられた、容体を格納するための室である。気流とはチャンバ内の気体の流れである。殺菌とは、容体および粒状または麺状食品原料中の菌を除去することである。
本発明で用いるチャンバ1は、前記食品原料9が充填された容体8を格納できればよいが、容体8を複数個格納、好ましくは3〜20個格納できることが好ましい。また、チャンバ1は、容体8に占有されない空間(「非占領空間」ともいう)を、容体8の容量の1〜3倍程度含むことが好ましい。非占領空間が容体8の容量の1倍未満であると、チャンバ1内の保温性が低下する場合がある。また、非占有空間が容体8の容量の3倍を超えると、装置が嵩高くなりコストが増加する場合がある。以上から、本発明で用いるチャンバ1の容量は、容体容積の3〜60倍であることが好ましい。例えば、前述の無菌包装米飯を製造する場合、チャンバ1の容量は4〜200リットル程度が好ましい。
本工程では、容体8および当該容体に充填された粒状または麺状食品原料9を無菌包装食品製造上有効な温度および時間で加熱して殺菌する。無菌包装食品製造上有効な温度および時間とは、無菌包装食品の製造における殺菌強度の指標とされるF0値が4以上、好ましく4.5以上に達するような温度および時間である。F0値は、殺菌強度F値を定義する下記式において、基準温度Tr=121.1℃、Z値=10とした場合のF値である(清水潮、横山理雄著、「レトルト食品の理論と実践」p60〜68、幸書房、1986年)。
上記において、粒状または麺状食品原料9を充填した容体8を横一列に配置して処理する態様を説明したが、より多くの前記容体8を処理することもできる。例えば本発明は、図5〜7に示すような装置を準備して実施できる。図5は、前記食品原料9を充填した容体8を二次元に搭載できる容体搭載器2の概要を示す。図6はこのような容体搭載器2を用いて本発明を実施するための装置の斜視図であり、図7は当該装置の側面図である。図5〜7において符号は、図1〜4と同様に定義される。
(3)調理工程
本工程では、容体8および粒状または麺状食品原料9を加熱して前記食品原料を調理する。時間および温度等の調理条件は、通常採用されている条件とすればよい。
(4)密封工程
本工程では、殺菌済み容体8の開口部をシール材で密封包装する。シール材とは、前記開口部を密封するための部材であり、通常はシート状またはフィルム状の部材である。本発明では、シール材としてプラスチックフィルムを用いることが好ましい。密封は公知の方法で行ってよいが、殺菌処理がなされたプラスチックフィルムを容体の開口部に貼付または熱融着して密封することが好ましい。密封工程により無菌包装食品が得られる。密封工程は無菌状態で行われることが好ましい。
本発明により、無菌包装米飯、赤飯、粥等の無菌包装米加工食品や、無菌包装煮豆等の無菌包装豆加工食品、無菌包装そば、うどん、ラーメン、スパゲッティ等の無菌包装麺食品が提供できる。これらの食品は、そのまま喫食でき、または電子レンジで容器ごと加熱して喫食できる。
本発明の製造方法は、任意の装置で実施できるが、以下好ましい装置を説明する。本発明で用いる装置は、1)容体8に充填された粒状または麺状食品原料9を格納しうる殺菌チャンバ1、2)前記チャンバ1に設けられ、水蒸気を前記チャンバ1内に導入する水蒸気管12、3)前記チャンバ1に設けられ、前記チャンバ1内の水蒸気を排出する排気管14を具備することが好ましい。前述のとおり、水蒸気管12と排気管14は、チャンバ1の天面に設けられることが好ましい。また、水蒸気管12と排気管14には開閉弁が設けられることが好ましい。
さらに、本発明の装置は、容体8を搭載する容体搭載器2、および容体搭載器2を駆動する公知の駆動手段を備えることが好ましい。
1)食品原料の準備
新潟産コシヒカリ精米(搗精度88.5%)1000gをざるに計量し、ざるの中で水を流しながら軽く混ぜて1分間洗米した。次に精米をボールに移し替えて5回すすいだ。この精米を別なボールに移し、精米の4倍量の水(4000g)を加えて、精米を20℃で1時間この水に浸漬した。このようにして、粒状食品原料である吸水させたうるち米(浸漬米)を得た。
略直方体のプラスチック製容体(商品名:ラミコンカップ、東洋製罐株式会社製、寸法:底面の縦118mm×底面の横179mm、天面の縦120mm×天面の横180mm、高さ29mm)を準備した。この容体は、縦120mm×横180mmの天面が開口されていた。
チャンバ1内温度測定のための熱電対5とチャンバ1内圧力を測定するための圧力計(図示なし)を備えた図1に示す装置(以下「圧力可変式装置」ともいう)準備した。このチャンバ1の寸法は、幅18.5cm×奥行き800cm×高さ12cmであった。このチャンバ1内に浸漬米を充填した容体8を格納した。チャンバ1内に水蒸気管12を用いて水蒸気を導入した。このとき最初の1秒間は、排出弁140を開きながら水蒸気を導入した。水蒸気を合計5秒間導入した後、水蒸気管12に備えられた水蒸気弁120を閉じ、速やかに排気弁140を1秒間開いて排気管14からチャンバ1内の水蒸気を含む気体を排出した。この後に、i)水蒸気を5秒間導入した後に水蒸気弁120を閉じ、ii)速やかに排気弁140を1秒間開いて排気管14からチャンバ1内の水蒸気を含む気体を排出する、操作を1サイクル(前述のパターンA)として、7回繰り返した。最初に水蒸気を導入してから、最後の排気を終了するまでの時間は47秒であった。
[比較例1]
図8に示す装置(「従来装置」ともいう)を準備した。図8中、90は上チャンバ、92は下チャンバであり、図8右のように接合されて密閉したチャンバを形成する。93は上チャンバ90に接続された水蒸気管である。94は下チャンバ92の支持体である。96は水蒸気拡散板、8および9は実施例1で用いた容体および浸漬米である。
実施例1と同じ浸漬米、容体8および装置を準備した。水蒸気管12を用いて水蒸気をチャンバ1内に導入した。水蒸気を導入している間、排気弁140を開いて0.8秒間水蒸気を排出する操作を0.5秒毎に間欠的に行った。水蒸気導入から6.5秒間経過した後、排出弁140を閉じた。すなわち、Tiを1.3秒、Toを0.8秒とするサイクル(前述のパターンB)を5回繰り返した。その後速やかに13.5秒間水蒸気を導入し続けた。容体8内温度、チャンバ1内温度とF0値の経時変化を図11に示す。
実施例1の殺菌効果を確認するために植菌試験を行った。
被検菌株として原料米から分離した耐熱性菌であるB.subtilisを使用した。実施例1と同様の方法で準備した浸漬米112gを容体8に充填し、1mlの被検菌液を浸漬米に散布し、滅菌コンラージ棒で攪拌した。
図12から、F0値が大きくなるほど菌数が減少していることがわかる。よって、本発明により十分なレベルの殺菌処理がなされていることが確認できた。
以下のとおり、本発明の殺菌処理を含む方法で製造された米飯の食味および物性を評価した。
1)米飯の製造
実施例1で処理された米充填容体内に、軟水装置(商品名:Zソフナー、三浦工業株式会社製)を通した水80gを装入した。次いで米と水を容体ごと98〜100℃の蒸気庫内に入れ、32分間加熱して炊飯した。炊飯後に容体開口部にシールをして密封した。密封後、容体を75℃の蒸気庫内で15分間加熱し、10℃以下の冷水で20分間冷却した。
得られた無菌包装米飯のシール材を一部剥がし、容器ごと家庭用電子レンジにて600W×2分間加熱した後、米飯を主食とし、専ら米飯の製造に従事している7名のパネラーに試食させ、官能評価を行った。評価項目は、米粒感、ふっくら感、粘り、硬さ、好ましさの5項目とした。
i)水分の測定方法
円筒状の金型(直径36mm)を用いて米飯の中央部分を容体厚み方向にくり抜いた。厚み方向で偏りが生じないように、金型内の米飯から、金型の長手方向において均等に米(試料)を採取した。採取量は合計10gとした。水分計(商品名:FD−600、ケツト科学研究所製)を用いて計り取った米飯を110℃で60分間加熱し、米飯中の水分を測定した。
米飯の弾性および粘性は、動的粘弾性測定装置MGレオアナライザー(商品名:MX−1000、有限会社サンズコーポレーション製)を使用して測定した。測定は、直径1.8mmの円形プランジャーを使用し、振幅30μm、周波数3Hzで行った。試料は、電子レンジで2分間加熱して得た米飯から採取した米粒とした。計10粒について測定し、その平均値を物性値とした。
比較例1で処理された米充填容体を用い、実施例4と同様にして官能評価、物性評価を行った。
参考のため、三菱電機株式会社製の炊飯器MITSUBISHI NJ−G10を用い、殺菌工程を経ずに、炊飯器にあらかじめ設定されている通常の炊飯条件(約20分の密封加熱と約20分前後の非密封加熱とからなる)で、新潟産コシヒカリを炊飯して得た米飯を、実施例と同様に評価した。
実施例1と同様の装置を用いて、以下の操作により殺菌処理を行った。
チャンバ1内に水蒸気を25秒間導入し続けた。この間、水蒸気の排出は行わなかった。25秒間後、排出弁140を開いてチャンバ1内の水蒸気を含む気体を排気した。
12 水蒸気管
120 水蒸気弁
14 排気管
140 排気弁
16 熱電対挿入口
18 扉
19 ガイドレール
2 容体搭載器
20 容体搭載部
21 開口部
3 ボイラー
5 熱電対
7 多孔板
8 容体
9 粒状または麺状食品原料
Claims (8)
- 粒状または麺状食品原料が充填された、天面が開放された容体を準備する工程、
前記容体を無菌包装食品製造上有効な温度および時間で加熱殺菌する殺菌工程、
前記容体および食品原料を加熱して食品原料を調理する調理工程、ならびに
前記殺菌済み容体の開口部をシール材で密封包装する密封工程、を含む、無菌包装食品の製造方法であって、
前記殺菌工程が、密閉された殺菌チャンバ内に水蒸気管から水蒸気を導入し、かつ前記チャンバ内から排気管を用いて水蒸気を排出することにより、殺菌チャンバ内で、チャンバ内の圧力を大気圧よりも高く保ちながら気流を連続的または間欠的に生じさせながら行う工程であり、かつ
すべての前記容体と、前記水蒸気管および排気管とが、対向して配置されている、
製造方法。 - 前記殺菌工程が、隣接する粒同士または麺同士の隙間に気流を連続的または間欠的に生じさせながら行う工程である、請求項1記載の製造方法。
- 前記殺菌工程が、前記容体内温度が10秒以上継続して110℃以上となるように前記容体を加熱する工程である、請求項1記載の製造方法。
- 前記殺菌工程が、密閉された前記チャンバ内に水蒸気を導入し、その後前記チャンバ内から水蒸気を排出することを1サイクルとして、このサイクルを繰り返すことにより、殺菌チャンバ内で、気流を間欠的に生じさせながら行う工程である、請求項1記載の製造方法。
- 前記サイクルを繰り返した後、さらに前記密閉されたチャンバ内に水蒸気を導入する、請求項4記載の製造方法。
- 前記殺菌工程における、前記水蒸気の導入時間Tiと前記水蒸気の排出時間Toとの比Ti/Toが、1.5〜10である、請求項1記載の製造方法。
- 前記食品原料が米類、豆類、または麺類である、請求項1記載の製造方法。
- 前記殺菌工程と調理工程の間に、前記殺菌済み容体に調理水を加える加水工程をさらに含む、請求項1記載の製造方法。
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