JP5626792B2 - 高強度鋼板の圧延方法 - Google Patents

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Description

本発明は、高強度鋼板を熱間圧延に引き続いて冷間圧延するに際して冷間圧延機への負荷を低減しつつ圧延することができる高強度鋼板の圧延方法に関するものである。
近年、自動車や鉄道車両のフレームなどの主要構成部にいわゆるハイテン材を用いた高強度冷延鋼板が多用されるようになっている。この高強度冷延鋼板(以下、単に鋼板という)は、熱間圧延、冷間圧延、連続焼鈍に順番で圧延されており、これらの工程の中でも特に熱間圧延機に対する負荷を下げるために熱間圧延時の加工温度を高くした条件で一般に熱間圧延が行われている。
ところが、自動車軽量化の流れの中で鋼板の製品板厚は薄くなる傾向にあり、その分だけ熱間圧延機に加えて冷間圧延機に対する負荷も上がる傾向にある。特に、冷間圧延工程での圧延荷重が高いSi−Mn系の鋼板の場合には、1回の冷間タンデム圧延では目標板厚まで圧延できず冷間タンデム圧延工程を複数回通板しなければならない場合もあり、生産性を阻害する要因になっている。また、強度の高いこれらの鋼板では、冷間圧延で平坦度不良が発生しやすく、形状の乱れに起因する圧延トラブルや品質異常も発生している。
このような鋼板の製造時の問題は、自動車軽量化のニーズに対応して冷間圧延しようとする鋼板の強度が高くなればなるほど、あるいは鋼板の薄肉化が進めば進むほどますます顕在化すると考えられる。つまり、より高強度の鋼種を鋼板に用いる場合や鋼板をさらに薄肉に圧延する場合には、冷間圧延する前に鋼板の強度を下げる、言い替えれば熱間圧延上がりでの鋼板の強度を予め下げなければ冷間圧延機に対する負荷が非常に大きくなってしまう。
このように熱間圧延上がりでの鋼板の強度を調整する技術はいくつか開発されている。例えば、特許文献1には、熱間仕上げ圧延を完了した後のホットランテーブル上で熱延板(鋼板)のヒートパターンを制御して、熱延板をパーライト量の変動幅が一定範囲に抑えられたベイナイト主体の組織とし、冷間圧延のときに生じる板厚変動を抑制する技術が開示されている。
また、特許文献2や特許文献3には、熱間圧延後の熱延板に対して連続焼鈍炉あるいはバッチ式の焼鈍炉の中で焼きなましを行い、熱延板の強度を下げてから冷間圧延機に供給することで冷間圧延機に対する負荷を低減できる技術が開示されている。
特開2007−111708号公報 特開2007−239097号公報 特開平11−29823号公報
しかしながら、特許文献1に開示された熱延板のヒートパターン制御を行うと、硬質のベイナイト相が組織中に増えて鋼板の強度が上がるため、Si−Mn系のように強度が高い鋼板を冷間圧延する場合にはむしろ冷間圧延機への負荷を大幅に増加させる虞がある。
また、特許文献2あるいは特許文献3の技術では、焼鈍により歪みが開放されるため熱延板の強度を下げることができるかもしれないが、焼鈍用の設備を新たに設ける必要があり、また焼鈍工程を加えることで高強度鋼板の製造工程が複雑なものとなるため、製造コストの高騰が避けられないという問題がある。
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は熱間圧延後の冷却工程で鋼板のヒートパターンを制御することで鋼板の組織中に軟質なフェライト相を増加させ、設備の増設や製造工程の複雑化を招来することなく冷間圧延機への負荷を大幅に軽減しつつ冷間圧延を行うことができる高強度鋼板の圧延方法を提供することにある。
前記目的を達成するため、本発明は次の技術的手段を講じている。
即ち、本発明の高強度鋼板の圧延方法は、圧延材を熱間圧延する熱間圧延機と、当該熱間圧延機の下流側に配備されて熱間圧延された前記圧延材を冷却する冷却帯と、当該冷却帯の下流側に配備されて冷却された前記圧延材を巻き取る巻取機とを備える熱間圧延設備で、前記圧延材としてCを0.1〜0.3mass%、Mnを1.0〜3.0mass%、Siを0.8〜2.0mass%含む高強度鋼板を圧延するに際して、前記熱間圧延機の最終圧延スタンドの出側温度が870℃〜900℃になるように前記高強度鋼板を熱間圧延した後、前記冷却帯中で熱間圧延された高強度鋼板を600〜700℃の温度で10秒以上空冷し、前記空冷された高強度鋼板を前記熱間圧延設備の下工程で冷間圧延することを特徴とする。
本発明者は、ベイナイト相やパーライト相に比べて軟質なフェライト相を熱間圧延後の鋼板組織中に増加させることができれば、鋼板の強度が下がって冷間圧延機への負荷を軽減することができるのではないかと考えた。そして、熱間圧延機の最終圧延スタンドの出側温度が870℃〜900℃になるように鋼板を熱間圧延した後、熱間圧延された鋼板を600〜700℃の温度で10秒以上空冷すれば、熱間圧延後の鋼板組織中のベイナイトを中心とする第2相をフェライト相に効率良く変態させることができ、ひいては冷間圧延機への負荷を大きく軽減しつつ冷間圧延できることを知見して本発明を完成させたのである。
なお、前記巻取機において、前記冷却帯で空冷された高強度鋼板を450〜550℃の温度で巻き取るのが好ましい。
また、本発明に係る高強度鋼板の圧延方法の最も好ましい形態は、圧延材を熱間圧延する熱間圧延機と、当該熱間圧延機の下流側に配備されて熱間圧延された前記圧延材を冷却する冷却帯と、当該冷却帯の下流側に配備されて冷却された前記圧延材を巻き取る巻取機とを備える熱間圧延設備で、前記圧延材としてCを0.1〜0.3mass%、Mnを1.0〜3.0mass%、Siを0.8〜2.0mass%含む高強度鋼板を圧延するに際して、前記冷却帯中で熱間圧延された高強度鋼板を600〜700℃の温度で10〜20秒に亘って空冷してフェライト変態を行わせることとし、前記フェライト変態を行わせる時間を圧延材が空冷されている時間内に確保するために、前記熱間圧延機の最終圧延スタンドの出側温度を870〜900℃にするものであって、さらに、前記熱間圧延の完了後に水冷を行い、前記冷却帯中で冷却された高強度鋼板を450〜550℃の温度で巻取りを行った後、前記熱間圧延設備の下工程で冷間圧延するものである。
本発明の高強度鋼板の圧延方法により、熱間圧延後の冷却工程で鋼板のヒートパターンを制御することで鋼板の組織中に軟質なフェライト相を増加させ、設備の増設や製造工程の複雑化を招来することなく冷間圧延機への負荷を大幅に軽減しつつ冷間圧延を行うことができる。
本発明の圧延方法に用いられる圧延設備を示す図である。 本発明の圧延方法の工程ダイヤグラムである。 熱間圧延機の最終圧延スタンドの出側温度及び鋼板の加工率を変化させた場合の加工TTT線図である。
以下、本発明の高強度鋼板の圧延方法を以下に説明する。
本発明の圧延方法は、圧延材を熱間圧延し、熱間圧延後に空冷(冷却)してから巻き取る熱間圧延工程と、熱間圧延工程で熱間圧延された圧延材を冷間圧延する冷間圧延工程とを備えており、冷間圧延工程後に連続焼鈍などを行って高強度冷延鋼板を製造するものである。この圧延方法の圧延材Pには、Cを0.1〜0.3mass%、Mnを1.0〜3.0mass%、Siを0.8〜2.0mass%含むSi−Mn系高張力鋼(Si−Mn系ハイテン材)の鋼板が用いられる。
この鋼板P(圧延材)を熱間圧延する圧延設備1、言い替えれば本発明の圧延方法に用いられる圧延設備1は、熱間圧延ライン2と冷間圧延ライン3とを備えている。
図1に示されるように、熱間圧延ライン2は、熱間圧延機4の上流側に鋼板Pを加熱する加熱炉5を有しており、所定の温度に加熱した鋼板Pを下流側に送ることができるようになっている。熱間圧延ライン2は、加熱炉5の下流側に配備されて鋼板Pを熱間圧延する熱間圧延機4と、熱間圧延機4の下流側に配備されて熱間圧延された鋼板Pを冷却する冷却帯6とを備えている。熱間圧延ライン2は、冷却帯6の下流側に冷却帯6で冷却された鋼板Pを巻き取る巻取機7を備えており、冷却帯6で冷却された鋼板Pを一旦巻き取ってから冷間圧延ライン3に送る構成となっている。
なお、以下の説明において、図1の紙面の左側を圧延設備1又は圧延方法を説明する際の圧延方向の上流側と、また紙面の右側を圧延設備1又は圧延方法を説明する際の圧延方向の下流側と呼ぶ。
熱間圧延機4は熱間粗圧延機8と熱間仕上圧延機9とを有しており、これらの圧延機8、9はそれぞれ上流側から下流側にかけて複数並んだ圧延スタンド10を備えている。それぞれの圧延スタンド10は、鋼板Pを上下から挟み込んで圧延する一対のワークロール11と、これらのワークロール11を支持する一対のバックアップロール12とを有する4段圧延機であり、鋼板Pを徐々に圧下しながら所定の板厚まで圧延できるようになっている。熱間圧延機4で圧延された鋼板Pは、熱間圧延機4の下流側に配備された冷却帯6に送られる。
冷却帯6は、内部が空洞とされた箱状に形成されており、空洞とされた内部を貫通するように鋼板Pが水平に通過する構造となっている。
冷却帯6の内部には、鋼板Pに対して冷却水又は冷却水のミストを噴き付けるノズル(図示略)が複数設けられている。冷却帯6の内部においては、鋼板Pは冷却水又はミストを浴びながら、あるいは冷却水やミストを含まない空気だけを噴きつけながら搬送され冷却される。そして、冷却帯6は、これらのノズルから噴き付けられる冷却水又はミストの供給量を調整することで、鋼板Pを所定の冷却温度や後述する巻取機7での巻取温度に合わせることができるようになっている。
このようにして冷却帯6で冷却された鋼板Pは、巻取機7に送られ、ここでコイル状態に巻き取られた後、冷間圧延機13に送られる。
次に、上述の熱間圧延ライン2を用いた鋼板Pの圧延方法、すなわち本実施形態の鋼板Pの圧延方法について説明する。
図2に示すように、本実施形態の圧延方法は、加熱炉5で鋼板Pを1100℃の雰囲気中に30分保持して加熱し、次に加熱された鋼板Pを熱間粗圧延機8及び熱間仕上圧延機9で熱間圧延する構成となっている。
そして、本実施形態の圧延方法では、冷却帯6の上流部6aに配備された複数のノズルから多量の冷却水又はミストを供給して鋼板Pの温度を700℃まで短時間で冷却した後、冷却帯6の中央部6bでは冷却水などの供給を停止又は放冷することで鋼板Pを600℃〜700℃で後述するように10秒以上の時間をかけて徐々に冷却する。その後、冷却帯6の下流部6cに配備された複数のノズルから再び多量の冷却水又はミストを供給して鋼板Pの温度を後述する巻取機7での巻取温度(500±50℃)まで冷却する。
このようにして熱間圧延ライン2で熱間圧延された鋼板Pは、熱間圧延ライン2の下流側に配備された冷間圧延ライン3に送られ冷間圧延される。
上述の圧延方法においては、鋼板Pは加熱炉5で1100℃で30分間に亘り加熱され、次に熱間圧延機4で熱間圧延される。このとき、圧延しようとする鋼板PがSi−Mn系のように高強度な鋼材である場合、熱間圧延時の温度が低すぎると熱間圧延機4に大きな負荷が加わるため、一般には熱間圧延機4(熱間仕上圧延機9)で鋼板Pの温度を高くして熱間圧延が行われる。具体的には、最終圧延スタンド10の出側温度が900℃以上、例えば920℃〜940℃と高い温度になるように熱間圧延が行われることが多い。
そこで、最初に920℃〜940℃のときの鋼板Pの金属組織を600℃〜700℃で冷却した場合の金属組織の変化(変態)を、図3(a)に示されるSi−Mn系高強度鋼材のTTT線図を用いて考察する。
図3(a)の加工温度920℃のときのTTT曲線から判断すると、熱間圧延後の鋼板Pの組織を形成するオーステナイト相(図中のA)がフェライト相(図中のF)に変態(以下、フェライト変態という)するには、600℃〜700℃程度の温度で一定時間に亘り冷却する必要がある。このフェライト変態を開始させるのに必要な保持時間は例えば冷却温度が700℃を例に挙げれば18秒程度は必要である。
ところが、冷却帯6の長さは一般的な熱間圧延機4では100m〜150m程度、長いものでも200mであり、この中を鋼板Pは10m/sの通板速度で通過するため、鋼板Pが冷却帯6の中に存在する時間は最大でも20秒程度である。また、冷却帯6の上流部6aや下流部6cは600℃〜700℃の温度範囲から外れておりフェライト変態の温度帯としては有効ではない。これらの点を総合的に勘案すると、冷却帯6中で鋼材を600℃〜700℃の温度で冷却する時間は設備上の制約から実際には20秒を下回る時間しか許容されていないと判断される。
従って、熱延上がりの鋼板温度を920℃とすると、鋼板Pが冷却帯6を通過する際に600℃〜700℃の温度で冷却される時間がフェライト変態に必要な時間を下回る可能性が高く、鋼板Pの金属組織が十分にフェライト変態しないまま冷間圧延工程に送られるので、フェライト相より硬質なベイナイト相で主に構成される鋼板Pを冷間圧延することになり、冷間圧延機13に大きな負担を強いることになる。
そこで、本発明の圧延方法では、まず熱間圧延機4の最終圧延スタンド10の出側温度が900℃以下、好ましくは870℃〜900℃になるように鋼板Pを熱間圧延した後、熱間圧延された鋼板Pを600〜700℃で10秒以上、好ましくは12秒以上冷却する。
つまり、図3(b)の熱延上がりの鋼板温度が850℃のTTT線図から明らかなように、鋼板温度を900℃以下に下げるとTTT図におけるノーズが短時間側に遷移し、フェライト変態に必要な時間も短くなる。このフェライト変態に必要な時間は、鋼板温度が850℃の場合は(変態の温度が700℃のときで)5秒程度であるが、870℃の場合で10秒程度、900℃の場合でも12秒程度であり、設備上の制約から許容される時間内に収まるものとなる。
つまり、熱延上がりの鋼板温度を900℃以下にすれば、フェライト変態に必要な時間が短くなるので、冷却帯6を通過する際に600℃〜700℃の温度で鋼板Pを冷却する時間内で鋼板Pの組織が十分にフェライト変態し、ベイナイト相より軟質なフェライト相の割合(フェライト分率)が大きくなって冷間圧延の際に冷間圧延機13に対する負荷を大きく低減することが可能となる。
なお、鋼板温度を従来の920℃以上から870℃〜900℃にすると、冷間圧延機13への負担は小さくなるが、熱間圧延機4への負担は逆に大きくなる。しかし、熱間圧延条件や熱間圧延の制御技術を最適化することによりこのような熱間圧延機4への負担の増加分は相殺することができる。しかし、鋼板温度を870℃よりさらに低い850℃とすれば、熱間圧延機4への負担が大きくなり過ぎてしまい、熱間圧延条件や圧延制御技術の最適化でも負担の増加分を相殺できなくなるので、鋼板温度は870℃以上とされるのが好ましい。
また、本実施形態のように冷却帯6の長さが熱間圧延機4の中でも最も長い200mである場合は、冷却帯6を通過する際に600℃〜700℃の温度で鋼板Pを冷却するために12秒程度の時間を設備上許容することができる。それゆえ、上述の場合は熱間圧延された鋼板Pを600〜700℃で12秒以上かけて冷却することもできる。
上述のようにして冷却帯6で冷却された鋼板Pは、巻取機7を用いて巻き取られる。この巻取機7は、450〜550℃の温度で鋼材を巻き取る構成とされている。このように冷却後の鋼板Pを巻き取る温度を450℃〜550℃とすることで、Si−Mn系のようにシリコンが多い鋼種であってもコイル冷却中にSiO2が表層から結晶粒界に沿って内部に濃化する、いわゆる粒界酸化を防止することが可能となる。そこで、本発明の圧延方法では、巻き取り温度の制御精度も含めて鋼板Pを450〜550℃の温度で巻き取る構成とされている。
なお、巻取り温度を高温化(例えば600℃)にすれば、自己焼鈍効果により鋼板Pを軟質化できる。ただし、Siを多く含む鋼種(例えばSiを0.8%以上含むもの)では、巻取り温度を550℃以上にすると、上述した粒界酸化が顕著に進行することが知られている。ホットコイルは巻取り後に酸洗により表面のスケールを除去した後にタンデム圧延工程に進むが、粒界酸化が表層から内部まで進行すると、通常の酸洗では除去できず、粒界酸化されたSiO2が表層に粉状に残留する。この状態で後段のタンデム圧延工程に進むと、表面キズが発生する。従って、550℃より高い温度で巻取ることによる軟質化は、本発明のような高強度鋼板(高Si鋼)については適用できず、より軟質のフェライト層を多く形成させる、という本願の組織制御の方法でしか鋼板P(冷間圧延用の板)を軟質化することはできない。
なお、SiやMnの量が鋼板Pの範囲よりもっと低い鋼材については、もともと強度レベルが高くなく、軟質化は不要となる。そこで、本発明の圧延方法は、550℃巻取りで粒界酸化が発生し、かつ冷間圧延時の強度が高いことで、圧延能率を著しく下げる鋼種(具体的には、上述したようにC: 0.1〜0.3mass%、Mn:1〜3mass%、Si: 0.8〜2.0mass%)を対象としている。
次に、実施例を用いて本発明の圧延方法をさらに詳しく説明する。
表1に示されるように、実施例及び比較例(従来例)は、加熱炉5を用いて加熱した鋼板Pを実験用の熱間圧延機4を用いて最終圧延スタンド10の出側温度が872℃〜934℃で変化するように熱間圧延し、次に冷却帯6の中で600℃〜700℃の温度で15秒間冷却し、次に実験用の冷間圧延機13を用いて冷間圧延したものである。
Figure 0005626792
実施例及び比較例の圧延に用いたテストピースは、Cが0.2mass%、Siが1.5mass%、Mnが2.0mass%となるように鋳造されたSi−Mn系のビレットを裁断したものであり、13mmt×40mmw×150mmlのサイズに形成されている。このテストピースは、加熱炉5で1100℃で30分間に亘って加熱され、次に実験用の熱間圧延機4で熱間圧延される。
熱間圧延機4は、熱間粗圧延機8と熱間仕上圧延機9とを有するものを用いた。この熱間圧延機4においては、熱間粗圧延機8でテストピースを圧下率43〜45%で圧延した後、連続して熱間仕上圧延機9で圧下率37%に仕上げ圧延した。熱間圧延機4には圧延方向の3箇所に亘ってそれぞれ非接触温度計が設けられており、これらの非接触温度計を用いて熱間粗圧延機8入側、熱間仕上圧延機9の入側及び出側(最終圧延スタンド10の出側)でのテストピースの表面温度を計測した。
次に、熱間圧延後のテストピースを冷却帯6で冷却した。この冷却帯6では、鋼板Pは、圧延方向の上流部6a、中央部6b、下流部6cに分けてそれぞれ異なる冷却条件で冷却される。冷却帯6の上流部6aではノズルから冷却水を鋼板Pに噴き付けて、熱間圧延後のテストピースを70℃/sの冷却速度で700℃まで短時間に冷却した。そして、テストピースの温度が700℃になってから冷却帯6の中央部6bに移送し、この中央部6bでテストピースを水平に案内しながら冷却水の噴射を停止して600℃〜700℃で15秒間に亘り空冷する。最後に、冷却帯6の下流部6cで、テストピースを、100℃/sの冷却速度で500℃まで冷却し、テストピースの温度が500℃になってから巻取機7による巻き取りを開始し、450℃〜550℃の温度で30分間に亘ってテストピースを巻き取った。
最後に、巻き取られたテストピースを冷間圧延ライン3に送り、この冷間圧延ライン3で冷間圧延を行った。この冷間圧延機13は、図示はしないが第1圧延機〜第3圧延機を備えており、テストピースを第1圧延機で圧下率14%、第2圧延機で圧下率22%、第3圧延機で圧下率20%に冷間圧延できるようになっている。
この冷間圧延機13でテストピースを冷間圧延する際に、第1圧延機〜第3圧延機のそれぞれに加わる圧延荷重を実施例と比較例とで比較して表2に示す。
Figure 0005626792
表1の「仕上出側の温度」の項目を比較すると分かるように、実施例1は最終圧延スタンド10の出側での温度を比較例の934℃より低い902℃にして熱間圧延したものである。表1の「熱間圧延工程」における「圧延荷重」の結果から、このように最終圧延スタンド10の出側での温度を低くした実施例1では圧延荷重が比較例の36tより大きい40tとなっており、熱間圧延機4に対する負担が若干上がっている。
しかし、表2の「冷間圧延」における「圧延荷重」の項目を見ると、実施例1の「圧延荷重」の方が比較例の42.9t(第1圧延機)、61.6t(第2圧延機)、68.7t(第3圧延機)より小さい42.0t(第1圧延機)、59.0t(第2圧延機)、65.5t(第3圧延機)となっており、冷間圧延機13に対する負荷が小さくなったことが分かる。
また、実施例1と同様に表1の「仕上出側の温度」の項目を比較すると分かるように、実施例2は最終圧延スタンド10の出側での温度を比較例の934℃より低い872℃にして熱間圧延したものである。表1の「熱間圧延工程」における「圧延荷重」の結果から、このように最終圧延スタンド10の出側での温度を比較例及び実施例1よりさらに低くした実施例2では、圧延荷重が比較例の36tより大きい45tとなっており、熱間圧延機4に対する負担が実施例1より若干上がっている。
しかし、表2の「冷間圧延」における「圧延荷重」の項目を見ると、実施例2の方が比較例及び実施例1より小さい41.0t(第1圧延機)、58.0t(第2圧延機)、65.0t(第3圧延機)となっており、冷間圧延機13に対する負荷がさらに小さくなったことが分かる。
以上の結果を総合的に勘案すると、熱間圧延機4の最終圧延スタンド10の出側温度を870℃〜900℃にすれば、TTT線図に示されるノーズの位置が短時間側に遷移してフェライト変態に必要な時間が短くなり、設備上の制約から許容される時間内で鋼板Pの組織が十分にフェライト変態し、鋼板Pの組織中に軟質なフェライト相がさらに増加して冷間圧延機13への負荷を大幅に軽減しつつ冷間圧延を行うことができると判断される。
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、発明の本質を変更しない範囲で各部材の形状、構造、材質、組み合わせなどを適宜変更可能である。
1 圧延設備
2 熱間圧延ライン
3 冷間圧延ライン
4 熱間圧延機
5 加熱炉
6 冷却帯
6a冷却帯の上流部
6b冷却帯の中央部
6c冷却帯の下流部
7 巻取機
8 熱間粗圧延機
9 熱間仕上圧延機
10 圧延スタンド
11 ワークロール
12 バックアップロール
13 冷間圧延機

Claims (1)

  1. 圧延材を熱間圧延する熱間圧延機と、当該熱間圧延機の下流側に配備されて熱間圧延された前記圧延材を冷却する冷却帯と、当該冷却帯の下流側に配備されて冷却された前記圧延材を巻き取る巻取機とを備える熱間圧延設備で、前記圧延材としてCを0.1〜0.3mass%、Mnを1.0〜3.0mass%、Siを0.8〜2.0mass%含む高強度鋼板を圧延するに際して、
    前記冷却帯中で熱間圧延された高強度鋼板を600〜700℃の温度で10〜20秒に亘って空冷してフェライト変態を行わせることとし、前記フェライト変態を行わせる時間を圧延材が空冷されている時間内に確保するために、前記熱間圧延機の最終圧延スタンドの出側温度を870〜900℃にするものであって、さらに、前記熱間圧延の完了後に水冷を行い、前記冷却帯中で冷却された高強度鋼板を450〜550℃の温度で巻取りを行った後、前記熱間圧延設備の下工程で冷間圧延することを特徴とする高強度鋼板の圧延方法。
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