JP5626270B2 - Egrバルブ - Google Patents
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Description
EGRバルブの弁体がデポジットによって固着する不具合を回避する技術として、特許文献1に開示される技術が知られている。
特許文献1の技術は、電動アクチュエータの出力を用いて、エンジンの運転停止後に、弁体を「全閉位置(EGR流路の内壁に対して弁体が垂直の位置:以下、全閉=0°と称す)より所定開度だけ開いた開度位置(0°より+側の開度)」または「全閉位置よりさらに所定開度だけ閉じた開度位置(0°より−側の開度)」に保持させるものである。
EGRバルブの弁体は、内蔵するリターンスプリングによって常に0°の開度に向けて付勢されており、電動アクチュエータの通電が停止されると、全閉位置(0°)に戻される。
このため、エンジンの運転停止後に、弁体を「全閉位置より開いた開度位置」または「全閉位置よりさらに閉じた開度位置」に保持するには、
・ECU(エンジン・コントロール・ユニットの略)による電動アクチュエータの作動制御と、
・電動アクチュエータの作動に伴う電力消費と、
が必要になる。
また、バッテリ消費を抑える目的で電動アクチュエータの通電を停止すると、弁体はリターンスプリングの付勢力によって全閉位置(0°)へ戻されるため、冷間時に弁体が固着する可能性が高まる。
これにより、エンジン停止に伴って電動アクチュエータの通電を停止すると、弁体がリターンスプリングによって「0°とは異なる開度、特に、−10°以下のマイナス側」に保持される。
また、上述したように、電動アクチュエータの通電を停止しても、弁体がリターンスプリングによって「0°とは異なる開度、特に、−10°以下のマイナス側」に保持されるため、冷間時における弁体の固着を防止することができる。
排気ガス再循環装置に用いられるEGRバルブは、
・エンジンの排気通路から吸気通路へ排気ガスの一部であるEGRガスを戻すEGR流路1が形成されるハウジング2と、
・EGR流路1に固定されたノズル3内を開閉可能な弁体4と、
・この弁体4の外周縁に形成された環状溝の内部に嵌め入れられ、全閉時にノズル3と弁体4との隙間を塞ぐシールリング5と、
・弁体4の回動位置を初期位置へ向けて付勢するリターンスプリング6と、
・このリターンスプリング6の付勢力に抗して弁体4を駆動する電動アクチュエータ7と、
を備えて構成される。
実施形態2のEGRバルブは、リターンスプリング6がシングルスプリングを採用するものであり、且つ初期位置が−10°以下のマイナス側に設定されるものである。
なお、以下の実施例において、上記[発明を実施するための形態]と同一符号は、同一機能物を示すものである。
図1〜図3を参照して実施例1を説明する。
排気ガス再循環装置は、エンジンの排出した排気ガスの一部をEGRガスとしてエンジンの吸気側に戻すことで、吸気の一部に不燃ガスであるEGRガスを混入させる周知の技術である。
排気ガス再循環装置は、排気通路を流れる排気ガスの一部を吸気通路へ戻すEGR流路1の開閉および開度調整を行うEGRバルブを備えるものであり、このEGRバルブの開度が車両の走行状態に応じてECUによって制御される。
なお、以下では、図1(a)の図示上側を上、図示下側を下と称して説明するが、この上下は実施例の説明のための方向であり、限定されるものではない。
EGRバルブは、
・内部にEGR流路1の一部を形成するハウジング2と、
・EGR流路1中に配置される弁体4と、
・この弁体4と一体に回転するシャフト8と、
・このシャフト8を介して弁体4の回動位置を初期位置へ向けて付勢するリターンスプリング6と、
・シャフト8に回転力を付与して弁体4を駆動する電動アクチュエータ7と、
を備えて構成される。
このノズル3の内壁は、ハウジング2内のEGR流路1の内壁の一部を成す。
そして、シャフト8の下端部に弁体4が傾斜した状態で固定されるものであり、シャフト8がEGR流路1の内部で弁体4を片持ち支持するものである。
また、ハウジング2とシャフト8の間には、EGRガスの洩れ出しを防ぐシール部材12が配置される。なお、図1では、独立したシール部材12を設けているが、図1とは異なり、シール機能が組み合わされた軸受11を用いても良い。
・通電により回転動力を発生する電動モータ(例えば、通電量に応じた回転トルクを発生する周知の直流モータ)と、
・この電動モータの回転トルクを増幅してシャフト8に伝達する減速装置13(例えば、複数の歯車を組み合わせた歯車式減速機)と、
・弁体4(シャフト8)の開度を検出する回転角センサ14(例えば、シャフト8の角度を非接触で検出する磁気回転角センサ)と、
を備えて構成される。
具体的に、ECUは、マイクロコンピュータを搭載した周知の電子制御装置であり、回転角センサ14によって検出される実際の弁体4(シャフト8)の開度が、車両走行状態に応じて算出された目標開度となるように、電動モータを通電制御するように設けられている。
具体的に、リターンスプリング6の下端がハウジング2に固定され、リターンスプリング6の上端が減速装置13における最終ギヤ15(シャフト8と一体に回動する部材)に固定される。
リターンスプリング6は、弁体4を初期位置(自戻り位置)に向けて付勢する。この実施例の初期位置は、「0°とは異なる開度」に設定される。即ち、電動アクチュエータ7の通電停止中は、リターンスプリング6の復元力により、弁体4が「0°とは異なる初期位置」に保持される。
なお、初期位置は、リターンスプリング6の中立点(バネの自由長状態)を用いて設定しても良いし、回動部材と固定部材の当接によるメカニカルストッパ(例えば、最終ギヤ15とハウジング2と当接箇所)を用いて設定しても良い。
ここで、図2(a)に示すように、ノズル3の内壁に対して弁体4が垂直な回動角を0°とした場合、この実施例のEGRバルブは、図2(b)に示すように、リターンスプリング6が弁体4を押し戻す初期位置が、「0°とは異なる開度」で、且つ「閉弁不感帯の範囲内」に設定される。
弁体4は、上述したように、開度に応じてEGR量の調整を行うものであり、弁体4の外周縁には、弁体4とノズル3との隙間を無くすシールリング5が組み付けられている。
このシールリング5は、略円板形状を呈する弁体4の外周縁に、全周に亘って形成された環状溝に嵌め入れられるものである。
このため、図2(b)に示すように、弁体4が0°に対して+側および−側に所定角度範囲内で回動しても、シールリング5の外周縁がノズル3の内壁に接して、実質的に閉弁状態が保たれる。このように、弁体4が回動しても実質的に閉弁状態が保たれる範囲が「閉弁不感帯の範囲」である。
そこで、この実施例では、初期位置の狙い開度を、−5°または+5°の一方に設定している。
ここで、狙い開度に対するバラツキ範囲は、±2.4°の範囲内に抑えられる。このため、この実施例における初期位置の狙い開度は、「−5°±2.4°」または「+5°±2.4°」の一方に設定される。
この実施例のEGRバルブは、上述したように、リターンスプリング6による弁体4の停止位置(初期位置)が「0°とは異なる開度」に設定される。
これにより、エンジン停止に伴って電動アクチュエータ7の通電を停止しても、弁体4がリターンスプリング6の復元力によって「0°とは異なる開度」に保持される。
また、上述したように、電動アクチュエータ7の通電を停止しても、弁体4がリターンスプリング6の復元力によって「0°とは異なる開度」に保持されるため、冷間時に弁体4がデポジットαにより固着する不具合を防止できる。
この実施例のEGRバルブは、上述したように、リターンスプリング6による弁体4の停止位置(初期位置)が、「閉弁不感帯の範囲内(具体的には、−5°〜+5°の範囲:但し0°を除く)」に設定される。
即ち、弁体4の停止位置(初期位置)が「0°とは異なる開度」であっても、実質的な閉弁状態が確保される。
このため、仮に冷間時に弁体4が固着した場合であっても、実質的な閉弁状態が保たれるため、エンジンの始動性を確保することができる。
この実施例のEGRバルブは、リターンスプリング6による弁体4の停止位置(初期位置)が、EGRバルブに要求される「洩れ量許容値の半分以下の範囲内」に設定される。具体的には、上述したように、狙い開度に対するバラツキ範囲を±2.4°の範囲内に抑えることで、電動アクチュエータ7の通電停止時における洩れ量が、洩れ量許容値の半分以下に抑えられる。
この実施例のEGRバルブは、エンジンの運転中に、何らかの理由で弁体4の開度制御ができなくなった場合でも、弁体4がリターンスプリング6の付勢力によって「閉弁不感帯の範囲内(具体的には洩れ量許容値の半分以下の範囲内)」に戻される。このため、予期せぬ不具合が生じた場合でも、エンジンの燃焼状態を良好に保つことができる。
図4を参照して実施例2を説明する。なお、以下の実施例2において上記実施例1と同一符号は同一機能物を示すものである。
この実施例2の特徴技術を説明する前に、この実施例2の背景技術を説明する。
従来技術の一例として、「デポジット掻き落とし」を実施する排気ガス再循環装置が知られている。
従来技術における「デポジット掻き落とし」は、エンジン停止時にECUが電動アクチュエータ7をコントロールして、
・弁体4を0°よりプラス側に回動させるプラス回動と、
・弁体4を0°よりマイナス側に回動させるマイナス回動と、
を交互に行うものである。
この「交互回動作動」により、デポジットαを掻き落として、エンジン停止中に冷えたデポジットαによって弁体4が閉弁固着する不具合や、開弁時のトルク上昇を回避することができる。
具体的なマイナス回動の一例として、従来技術では−12°〜−30°が実施されている。
このため、リターンスプリング6には、
・プラス側に回動している弁体4を0°へ戻す第1スプリングと、
・マイナス側に回動している弁体4を0°へ戻す第2スプリング(第1スプリングとは逆巻きのデフォルトスプリング)」と、
を組み合わせたダブルスプリングが採用される。
そこで、「デポジット掻き落とし」を実施可能にするためには、
・ECUによる制御内容の変更、
・リターンスプリング6のダブルスプリング化、
などが必要になる。
即ち、「デポジット掻き落とし」を実施するには、変更に伴い多大な費用と工数が必要になってしまう。
この実施例2は、上記の問題点を回避するものであり、
・リターンスプリング6がシングルスプリングを採用し、
・ECUが「プラス回動とマイナス回動の交互作動制御」を行うことなく、
「デポジット掻き落とし」を実施するものである。
なお、初期位置は、実施例1と同様、リターンスプリング6の中立点(バネの自由長状態)によって設定するものであっても良いし、メカニカルストッパ(例えば、最終ギヤ15とハウジング2と当接箇所)を用いて設定するものであっても良い。
なお、ECUは、弁体4を「0°から全開位置の範囲」で開度制御するものであり、イグニッションスイッチがOFFされると、リターンスプリング6のバネ力により、弁体4が0°よりマイナス側へ回動して初期位置(−10°以下のマイナス側)へ戻される。
この実施例2は、イグニッションスイッチがOFFされると、リターンスプリング6のバネ力により、弁体4が「−10°以下のマイナス側」へ回動して、弁体4がマイナス側の回動範囲のデポジットαを掻き落とす。
このように、初期位置を「−10°以下のマイナス側」に設定するのみで、ECUに特別な制御を施すことなく、且つリターンスプリング6がシングルスプリングのままで「デポジット掻き落とし」を行うことができる。即ち、「デポジット掻き落とし」を低コストで実施できる。
この実施例2は、初期位置が「−10°以下のマイナス側」に設定されるため、次にイグニッションスイッチがONされるまでの冷間時に、シールリング5がノズル3から離れた状態で維持される。
このため、冷間時に弁体4がデポジットαにより固着する不具合を、より確実に防ぐことができる。
3 ノズル(EGR流路の一部)
4 弁体
6 リターンスプリング
7 電動アクチュエータ
Claims (2)
- エンジンの排気通路から吸気通路へ排気の一部であるEGRガスを戻すEGR流路(1)の開閉および開度調整を行う弁体(4)と、
この弁体(4)の回動位置を初期位置へ向けて付勢するリターンスプリング(6)と、
このリターンスプリング(6)の付勢力に抗して前記弁体(4)を駆動する電動アクチュエータ(7)と、
を具備するEGRバルブにおいて、
前記リターンスプリング(6)が前記弁体(4)を停止させる初期位置は、
閉弁不感帯の範囲から外れた位置であって、
前記EGR流路(1)の内壁に対して前記弁体(4)が垂直な回動角を0°とし、この0°を基準にして、0°より開弁方向をプラス側、0°より開弁方向とは異なる方向をマイナス側とした場合、−10°以下のマイナス側に設定されることを特徴とするEGRバルブ。 - 請求項1に記載のEGRバルブにおいて、
前記リターンスプリング(6)は、一方向のみに巻かれたシングルスプリングであることを特徴とするEGRバルブ。
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