JP5299390B2 - ターボチャージャ - Google Patents
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Description
特許文献1、2に開示されるターボチャージャは、容量可変バルブ(タービン羽根車に流入する排気の流路面積を可変するバルブ)とウエストゲートバルブとを搭載する。
一方、ウエストゲートバルブは、過過給(吸気圧の過剰上昇)を防ぐものであり、過給圧やタービン羽根車の入口の排気圧などに応じて開度制御される。
このため、特許文献1、2の技術では、容量可変バルブを駆動するための「専用のアクチュエータ」と、ウエストゲートバルブを駆動するための「専用のアクチュエータ」とを用いて、容量可変バルブおよびウエストゲートバルブを独立制御するように設けられており、コストアップ、体格アップ、重量アップの要因になっていた。
・1つの電動アクチュエータ4で容量可変バルブ2を駆動するとともに、
・電動アクチュエータ4の出力を、カムプレート5に設けたカム溝33で変換させ、カム溝33に係合するリンク32(トルク伝達ロッド)を用いてウエストゲートバルブ3に伝えることで、
1つの電動アクチュエータ4で容量可変バルブ2とウエストゲートバルブ3の両方を操作する技術が提案されている(この技術は提案技術であり、周知技術ではない)。
タービンハウジング6は、エンジンから排出された高温の排気ガスを内部に流すため高温になる。このため、カムプレート5は、タービンハウジング6から高熱を受けて歪みが発生し、カムプレート5とリンク32との係合部にガタ(規定以上の隙間)が発生する懸念がある。
請求項1のターボチャージャは、1つのアクチュエータとカムプレートを用いて独立した2つのバルブを駆動するものであり、アクチュエータとカムプレートを、タービンハウジングとは異なる部材(コンプレッサハウジング、センターハウジング等)に取り付けることで、アクチュエータとカムプレートをタービンハウジングから離して低温環境に配置するものである。
このように、アクチュエータを低温環境に配置できるため、アクチュエータの耐熱性を確保する必要が無くなり、アクチュエータのコストを抑えることができる。
このように、ガタの発生が防がれるため、独立した2つのバルブの作動不良や開度精度の劣化を防ぐことができる。このため、1つのアクチュエータによって2つのバルブを駆動するターボチャージャの信頼性を高めることができる
又、請求項1のターボチャージャは、1つのカム溝によって2つのバルブを駆動するものである。そのため、カムプレートを小型化でき、搭載性を向上できるとともに、コストを抑えることができる。
請求項2のターボチャージャにおいて独立した2つのバルブのそれぞれは、常にバルブ開度を初期位置へ戻すためのリターンスプリングを備える。
これにより、独立した2つのバルブに、それぞれのリターンスプリングの付勢力が常時加わる。このため、排気脈動やエンジン振動によって、それぞれのバルブがばたつく不具合を抑えることができる。
請求項3のターボチャージャのカム溝は、
・カムプレートの回転中心と同一中心の同心円弧溝を備え、
・この同心円弧溝の一端に、2つのバルブのうちの一方のバルブを駆動するカム溝が接続され、
・同心円弧溝の他端に、2つのバルブのうちの他方のバルブを駆動するカム溝が接続される。
このように、カム溝の中央部分に同心円弧溝を配置することで、電動アクチュエータが、2つのバルブを同時に駆動する区間を無くすことができる。
これにより、アクチュエータに要求される駆動力を抑えることができ、アクチュエータを小型化できる。
請求項4のターボチャージャのカム溝において、
・一方のバルブを駆動するカム溝は、同心円弧溝より曲率半径の大きい大円弧溝であり、
・他方のバルブを駆動するカム溝は、同心円弧溝より曲率半径の小さい小円弧溝である。
このように、カム溝の全てを円弧の溝で構成することにより、滑らかなカム溝を形成することができる。
請求項5のターボチャージャにおける2つのバルブは、容量可変バルブとウエストゲートバルブである。
このため、カムプレートとリンクとの係合部のガタが防がれることで、容量可変バルブとウエストゲートバルブの作動不良を防ぐことはもちろん、容量可変バルブとウエストゲートバルブの開度精度の劣化を防ぐことができる。
その結果、1つのアクチュエータによって容量可変バルブとウエストゲートバルブを駆動するターボチャージャの信頼性を高めることができる。
ターボチャージャは、
タービン羽根車1に流入する排気の流路面積を可変する容量可変バルブ2と、
タービン羽根車1を迂回する排気の流路面積を可変するウエストゲートバルブ3とを備える。
このターボチャージャは、1つ電動アクチュエータ4と、この電動アクチュエータ4によって駆動されるカムプレート5とを用いて、容量可変バルブ2とウエストゲートバルブ3を駆動する。
電動アクチュエータ4およびカムプレート5は、タービン羽根車1を収容するタービンハウジング6とは異なる部材(コンプレッサハウジング7、センターハウジング8等)に取り付けられることで、電動アクチュエータ4およびカムプレート5をタービンハウジング6から離して低温環境に配置する。
ターボチャージャは、エンジン(燃料の燃焼により回転動力を発生する内燃機関:ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン等を問わない、レシプロエンジン、ロータリーエンジン等を問わない)に搭載されるものであり、この実施例のターボチャージャは、車両走行用エンジンに搭載されるものとして説明する。
・排気によって回転駆動されるタービン羽根車1と、
・このタービン羽根車1を収容する渦巻形状を呈するタービンハウジング6と、
・タービン羽根車1の回転力により駆動されて吸気を加圧するコンプレッサ羽根車9と、・このコンプレッサ羽根車9を収容する渦巻形状を呈するコンプレッサハウジング7と、・タービン羽根車1の回転をコンプレッサ羽根車9に伝達するシャフト10と、
・このシャフト10を高速回転自在に支持するセンターハウジング8と、
を備える。
そして、ターボチャージャは、タービンハウジング6とコンプレッサハウジング7の間にセンターハウジング8を配置した状態で、スタットボルト等により結合した構成を採用する。
このターボチャージャは、容量可変タイプであり、タービンハウジング6の内部は、図2(a)に示すように、仕切壁11によって区画されており、タービンハウジング6の内部に、第1スクロール流路12と第2スクロール流路13(図2中のスクロール1とスクロール2)が形成されている。
この第1、第2スクロール流路12、13は、それぞれタービン羽根車1の周囲に形成されて、排気ガスの流れをタービン羽根車1に与えるものである。
この絞り部を形成する仕切壁11には、第1スクロール流路12と第2スクロール流路13とを連通する容量可変用連通穴14が形成されている。
この容量可変用連通穴14は、容量可変バルブ2によって開閉される。この容量可変バルブ2が容量可変用連通穴14の開度調整を行なうことで、第2スクロール流路13からタービン羽根車1に向かう排気ガスの量をコントロールすることができる。即ち、容量可変バルブ2の開度に応じてタービン羽根車1に流入する排気の流路面積を可変することができる。
これにより、第1外部アーム18を回動操作することで、第1弁体16によって容量可変用連通穴14の開度を調整でき、結果的に第2スクロール流路13からタービン羽根車1に向かう排気ガスの量をコントロールすることができる。
なお、この実施例は、第1バルブ回転軸15と第1内部アーム17が1つの部品で形成されたものである。
一方、第2スクロール流路13の外壁には、図2(b)に示すように、排気ガスの一部を、タービン羽根車1を迂回(バイパス)させて排気下流側(マフラー側)に導くウエストゲート用連通穴21が形成されている。
このウエストゲート用連通穴21は、ウエストゲートバルブ3によって開閉される。このウエストゲートバルブ3がウエストゲート用連通穴21の開度調整を行なうことで、タービン羽根車1を迂回する排気ガスの量をコントロールすることができる。
具体的に、ウエストゲートバルブ3は、タービンハウジング6に対して回転自在に支持される第2バルブ回転軸22の回動操作により回動してウエストゲート用連通穴21の開閉を行なうものであり、ウエストゲート用連通穴21を直接開閉する第2弁体23と、タービンハウジング6の内部に配置されて第2弁体23と第2バルブ回転軸22を結合する第2内部アーム24と、タービンハウジング6の外部に配置されて第2バルブ回転軸22と一体に回転する第2外部アーム25とを備える。
これにより、第2外部アーム25を回動操作することで、第2弁体23によってウエストゲート用連通穴21の開度を調整でき、結果的にタービン羽根車1を迂回する排気ガスの量をコントロールすることができる。
なお、この実施例は、第2バルブ回転軸22と第2内部アーム24が1つの部品で形成されたものである{図2(a)参照}。
また、第1バルブ回転軸15と第2バルブ回転軸22は、タービンハウジング6に装着された軸受部(筒状の軸受ブッシュ等)26によって回転自在に支持されるものであり、内部を流れる排気がタービンハウジング6の外部へ漏れないように設けられている。
この実施例では、容量可変バルブ2およびウエストゲートバルブ3のそれぞれに、常にバルブ開度を初期位置へ戻すためのリターンスプリング(図示しない)が独立して設けられている。
具体的に、容量可変バルブ2には、バルブ開度を初期位置(容量可変用連通穴14を閉塞する閉弁位置)へ戻すための専用リターンスプリングが設けられている。
同様に、ウエストゲートバルブ3には、バルブ開度を初期位置(ウエストゲート用連通穴21を閉塞する閉弁位置)へ戻すための専用リターンスプリングが設けられている。
具体的に、容量可変バルブ2とウエストゲートバルブ3の両方は、
・1つの電動アクチュエータ4と、
・この電動アクチュエータ4の出力トルクを変換して容量可変バルブ2およびウエストゲートバルブ3に伝達するリンク装置30と、
によって駆動されるように設けられている。
電動アクチュエータ4は、通電により回転出力を発生する電動モータ(例えば、DCモータ)と、この電動モータの回転出力を減速して出力トルクを増大させる減速装置(例えば歯車減速装置)とを組み合わせたものであり、電動モータに印加される通電量に応じた回転出力を発生するものである。
この実施例の電動アクチュエータ4は、一例として、リターンスプリングを内蔵しないものである。
なお、この実施例とは異なるが、電動アクチュエータ4に付勢力の小さい補助リターンスプリングを設けて、電動アクチュエータ4の出力軸の開度を初期位置に戻す力を発生させても良い。
(i)電動モータの通電量を大きくして電動アクチュエータ4の出力トルクを大きくするに従い、リターンスプリングの付勢力に抗して電動アクチュエータ4の出力軸の回転角度が大きくなり、
(ii)電動モータの通電量を小さくして電動アクチュエータ4の出力トルクを小さくするに従い、リターンスプリングの付勢力によって電動アクチュエータ4の出力軸の回転角度が小さくなり、
(iii)電動モータの通電を停止することにより、リターンスプリングの付勢力によって電動アクチュエータ4の出力軸の回転角度が初期位置(回転角度0°の位置)に戻される。
回転角センサのセンサ出力は、電動アクチュエータ4を通電制御することで容量可変バルブ2およびウエストゲートバルブ3の開度制御を行なうECU(エンジン・コントロール・ユニットの略:図示しない)に出力される。
この実施例は、上述した電動アクチュエータ4と、この電動アクチュエータ4の出力軸に結合されるカムプレート5とが、タービンハウジング6から離れた位置に取り付けられるものである。
具体的には、電動アクチュエータ4およびカムプレート5を、タービンハウジング6から離して低温環境に配置するものであり、電動アクチュエータ4は、コンプレッサハウジング7(またはセンターハウジング8)に、ステー等を介して取り付けられるものである。
なお、電動アクチュエータ4およびカムプレート5をステー等を介して支持する部材は、コンプレッサハウジング7またはセンターハウジング8に限定されるものではなく、電動アクチュエータ4およびカムプレート5を低温環境に配置可能であれば良い。
リンク装置30は、
・低温環境のカムプレート5と高温環境の第1外部アーム18(上述したように、容量可変バルブ2を回動操作するアーム)を連結する第1リンク31と、
・低温環境のカムプレート5と高温環境の第2外部アーム25(上述したように、ウエストゲートバルブ3を回動操作するアーム)を連結する第2リンク32と、
を用いる。
カムプレート5は、板状を呈し、耐熱・耐摩耗性に優れた材料(例えば、金属材料あるいは樹脂材料)により形成されたものであり、具体的な一例を開示すると電動アクチュエータ4の出力軸に対して直角に固定配置されるものである。なお、図3の符号5aは、カムプレート5に形成された二面幅のシャフト挿通穴であり、電動アクチュエータ4の出力軸と嵌まり合うことで、カムプレート5が電動アクチュエータ4の出力軸と一体に回転する。
このカム溝33は、図3に示すように、
(i)第1リンク31(容量可変バルブ2)のみを駆動する第1カム溝領域33aと、
(ii)第1、第2リンク31、32(容量可変バルブ2およびウエストゲートバルブ3)を非駆動にする第2カム溝領域33bと、
(iii)第2リンク32(ウエストゲートバルブ3)のみを駆動する第3カム溝領域33cと、
で構成される。
第1、第2リンク31、32は、後述するように棒状を呈するロッド部品であり、この実施例では、図1に示すように、第1、第2リンク31、32の各延長線上にカムプレート5の回転中心が位置するように、第1、第2リンク31、32がV字配置されるものである。
・カム溝33の中央部分に第2カム溝領域33bを配置する構成に加え、
・第1、第2リンク31、32の角度をXとした場合、
(i)第1カム溝領域33aの回動範囲θaが「X以下」に設けられ、
(ii)第2カム溝領域33bの回動範囲θbが「X以上」に設けられ、
(iii)第3カム溝領域33cの回動範囲θcが「X以下」に設けられるものである。
この実施例では、
・第1、第2リンク31、32の角度Xが「38°」に設けられ、
・第1カム溝領域33aの回動範囲θaが「38°」に設けられ、
・第2カム溝領域33bの回動範囲θbが「40°」に設けられ、
・第3カム溝領域33cの回動範囲θcが「35°」に設けられる。
そして、カムプレート5の回動範囲は、後述する第2ローラ36(第2リンク32とカム溝33の係合部)が、第1カム溝領域33aと第2カム溝領域33bの境界部から、第3カム溝領域33cの終端部までの範囲(40°+35°)で、回動可能に設けられている。
この実施例のカム溝33は、大円弧溝、同心円弧溝、小円弧溝を繋いで形成されるものである。
大円弧溝は、第1カム溝領域33aに相当するものであり、同心円弧溝の一端に連続し、同心円弧溝より曲率半径が大きく設けられている。具体的な大円弧溝の円弧の中心点を図3のR1に示す。
同心円弧溝は、第2カム溝領域33bに相当するものであり、カムプレート5の回転中心と同一中心の円弧溝である。同心円弧溝の円弧の中心点を図3のR2に示す。
小円弧溝は、第3カム溝領域33cに相当するものであり、同心円弧溝の他端に連続し、同心円弧溝より曲率半径が小さく設けられている。具体的な小円弧溝の円弧の中心点を図3のR3に示す。
第1リンク31は、カムプレート5のカム溝33と第1外部アーム18を駆動連結するものであり、棒状を呈し、耐熱性に優れた材料(例えば、金属材料)により形成されたロッド部品である。
第1リンク31は、例えば、図示しないガイド手段によって、主に長手方向のみに変位可能に支持される。
具体的に第1リンク31は、カムプレート5の回転中心と、第1リンク31と第1外部アーム18との結合部(後述する第1アーム結合部35)とを結ぶ軸線上に沿って変位するように設けられている。
第1リンク31の他端(第1外部アーム18側)には、第1外部アーム18の外側(第1バルブ回転軸15の回動中心から離れた部位)と回転自在に係合する第1アーム結合部35が設けられている。
逆に、カムプレート5の回転に伴うカム溝33の変位によって第1ローラ34がカムプレート5の回転中心側とは異なる側へ変位すると、第1リンク31もカムプレート5の外側へ変位し、結果的に容量可変バルブ2が閉じる側へ回動する。
第2リンク32は、カムプレート5のカム溝33と第2外部アーム25を駆動連結するものであり、第1リンク31と同様、棒状を呈し、耐熱性に優れた材料(例えば、金属材料)により形成されたロッド部品である。
第2リンク32は、例えば、図示しないガイド手段によって、主に長手方向のみに変位可能に支持される。
具体的に第2リンク32は、カムプレート5の回転中心と、第2リンク32と第2外部アーム25との結合部(後述する第2アーム結合部37)とを結ぶ軸線上に沿って変位するように設けられている。
第2リンク32の他端(第2外部アーム25側)には、第2外部アーム25の外側(第2バルブ回転軸22の回動中心から離れた部位)と回転自在に係合する第2アーム結合部37が設けられている。
逆に、カムプレート5の回転に伴うカム溝33の変位によって第2ローラ36がカムプレート5の回転中心側とは異なる側へ変位すると、第2リンク32もカムプレート5の外側へ変位し、結果的にウエストゲートバルブ3が閉じる側へ回動する。
次に、電動アクチュエータ4の出力軸の回転角度(カムプレート5の回転角度と同じ)に対する容量可変バルブ2およびウエストゲートバルブ3の開度との関係を、図4を参照して説明する。
この実施例は、電動アクチュエータ4およびカムプレート5が0°〜75°(第2カム溝領域33bの40°+第3カム溝領域33cの35°)の回転範囲で回転するものである。なお、図4では、容量可変バルブ2の開度を実線Aに示し、ウエストゲートバルブ3の開度を実線Bに示す。
電動アクチュエータ4の通電停止時は、容量可変バルブ2およびウエストゲートバルブ3のそれぞれのリターンスプリングの作用によって、図1(a)、(a’)に示すように、第1外部アーム18(第1内部アーム17)と第2外部アーム25(第2内部アーム24)が、ともに閉弁側へ付勢され、容量可変バルブ2およびウエストゲートバルブ3が、容量可変用連通穴14およびウエストゲート用連通穴21を閉じる。
これにより、エキマニからタービンハウジング6に流入した排気ガスの全てが第1スクロール流路12を流れる。これにより、タービン羽根車1は、第1スクロール流路12を流れる排気ガスのみによって回転駆動される。
電動アクチュエータ4の通電が行なわれてカムプレート5が回動する場合で、且つカムプレート5の回転角度が38°以下の場合は、
・容量可変バルブ2を駆動する第1ローラ34が大円弧溝(第1カム溝領域33a)の範囲内で変位し、
・ウエストゲートバルブ3を駆動する第2ローラ36が同心円弧溝(第2カム溝領域33b)の範囲内で変位する。
即ち、カムプレート5の回転角度が38°以下の範囲では、ウエストゲートバルブ3がウエストゲート用連通穴21を閉じた状態のままで、カムプレート5の回動に伴って容量可変バルブ2の開度制御を実施できる。
このようにして、カムプレート5の回動制御によりタービン羽根車1を駆動する排気ガスの圧力をコントロールすることができる。
電動アクチュエータ4の通電によりカムプレート5の回転角度が38°より大きく40°以下の場合は、
容量可変バルブ2を駆動する第1ローラ34と、ウエストゲートバルブ3を駆動する第2ローラ36とが、ともに同心円弧溝(第2カム溝領域33b)の範囲内で変位する。
これにより、カムプレート5の回転角度が38°より大きく40°以下の範囲では、容量可変バルブ2が全開開度(バルブ開度30°)に維持されるとともに、ウエストゲートバルブ3が閉弁状態に維持される。
電動アクチュエータ4の通電によりカムプレート5の回転角度が40°より大きい場合は、
・容量可変バルブ2を駆動する第1ローラ34が同心円弧溝(第2カム溝領域33b)の範囲内で変位し、
・ウエストゲートバルブ3を駆動する第2ローラ36が小円弧溝(第3カム溝領域33c)の範囲内で変位する。
即ち、カムプレート5の回転角度が40°以上の範囲では、容量可変バルブ2が全開開度のままで、カムプレート5の回動に伴ってウエストゲートバルブ3の開度制御を実施できる。
次に、ECUによる電動アクチュエータ4の制御例を、図5を参照して説明する。なお、図5では、容量可変バルブ2の開度を実線Aに示し、ウエストゲートバルブ3の開度を実線Bに示す。
ECUは、車両の運転状態に応じて、
・容量可変バルブ2が容量可変用連通穴14を閉じるとともに、ウエストゲートバルブ3がウエストゲート用連通穴21を閉じるモード1と{図1(a)、(a’)参照}、
・ウエストゲートバルブ3がウエストゲート用連通穴21を閉じた状態で、容量可変バルブ2の開度制御を行なうモード2{図1(b)、(b’)参照}と、
・容量可変バルブ2を全開にした状態で、ウエストゲートバルブ3の開度制御を行なうモード3{図1(c)、(c’)参照}とを実行する。
そして、算出された容量可変バルブ2の開度が得られるように、電動アクチュエータ4の通電量を回転角センサの検出値に基づいてフィードバック制御する。
そして、過給圧センサによって検出される過給圧が所定過給圧を超えないように、電動アクチュエータ4の通電量を過給圧センサの検出値に基づいてフィードバック制御する。あるいは、排気圧センサによって検出される排気圧力が所定排気圧力を超えないように、電動アクチュエータ4の通電量を排気圧センサの検出値に基づいてフィードバック制御する。
なお、ECUは、容量可変バルブ2の開度制御より、ウエストゲートバルブ3の開度制御を優先するように設けられている。
本実施例のターボチャージャは、上述したように、それぞれが異なる運転要因に基づいて作動制御される容量可変バルブ2およびウエストゲートバルブ3の両方を、1つの電動アクチュエータ4で駆動制御する。このため、容量可変バルブ2およびウエストゲートバルブ3を、独立した2つの専用アクチュエータを用いて制御する場合に比較して、コストを抑えることができる。
本実施例のターボチャージャは、上述したように、電動アクチュエータ4とカムプレート5を、タービンハウジング6とは異なるコンプレッサハウジング7(またはセンターハウジング8等)に取り付け、電動アクチュエータ4とカムプレート5を低温環境に配置するものである。
このように、電動アクチュエータ4を低温環境に配置するため、電動アクチュエータ4の耐熱性を確保する必要が無くなり、電動アクチュエータ4のコストを抑えることができる。
カムプレート5を低温環境に配置するため、カムプレート5がタービンハウジング6の高熱に晒されて歪む不具合を回避でき、カムプレート5と第1リンク31の係合部、およびカムプレート5と第2リンク32の係合部のそれぞれにガタが発生する不具合を回避することができる。
このように、ガタの発生が防がれるため、容量可変バルブ2およびウエストゲートバルブ3の作動不良および開度精度の劣化を防ぐことができる。
その結果、容量可変バルブ2およびウエストゲートバルブ3を1つの電動アクチュエータ4で駆動するターボチャージャの信頼性を高めることができる。
本実施例のターボチャージャは、上述したように、容量可変バルブ2およびウエストゲートバルブ3のそれぞれに、常にバルブ開度を初期位置へ戻すためのリターンスプリングを独立して設けている。
これにより、容量可変バルブ2およびウエストゲートバルブ3には、それぞれの専用リターンスプリングによって閉弁位置へ戻すための付勢力が常に作用する。
このため、排気脈動やエンジン振動等によって、容量可変バルブ2およびウエストゲートバルブ3のそれぞれがばたつく不具合を回避できる。
本実施例のターボチャージャは、上述したように、1つのカム溝33に第1リンク31と第2リンク32の2つを係合させて、容量可変バルブ2とウエストゲートバルブ3を駆動する。
このため、カムプレート5を小型化でき、車両への搭載性を向上できるとともに、コストを抑えることができる。
本実施例のターボチャージャは、上述したように、カム溝33の中央部分に同心円弧溝(第2カム溝領域33b)を配置したことにより、電動アクチュエータ4が、容量可変バルブ2とウエストゲートバルブ3(2つのバルブ)を同時に駆動する回動区間を無くすことができる。
具体的には、第1、第2リンク31、32の角度Xに対し、
(i)第1カム溝領域33aの回動範囲θaを「X以下」に設け、
(ii)第2カム溝領域33bの回動範囲θbを「X以上」に設け、
(iii)第3カム溝領域33cの回動範囲θcを「X以下」に設けることで、
電動アクチュエータ4が、容量可変バルブ2とウエストゲートバルブ3を同時に駆動する回動区間を無くすことができる。
これにより、電動アクチュエータ4に要求される駆動力を抑えることができ、電動アクチュエータ4を小型化できる。
本実施例のターボチャージャのカム溝33は、上述したように、大円弧溝、同心円弧溝、小円弧溝を接続して設けたものである。
このように、カム溝33の全てを円弧の溝で構成することにより、滑らかなカム溝33を形成することができる。
そして、滑らかなカム溝33を用いることにより、カム溝33によるひっかかりを防いで信頼性を高めることができるとともに、電動アクチュエータ4の駆動負荷を軽減することができ、電動アクチュエータ4の小型化を図ることができる。
具体的に、アクチュエータとして油圧アクチュエータや負圧アクチュエータを用いる場合や、離れた位置のカムプレート5を電動アクチュエータ4で駆動する場合などでは、カムプレート5が回動変位するものであっても、スライド変位するものであっても良い。
2 容量可変バルブ(2つのバルブの一方)
3 ウエストゲートバルブ(2つのバルブの他方)
4 電動アクチュエータ
5 カムプレート
6 タービンハウジング
7 コンプレッサハウジング(タービンハウジングとは異なる部材)
8 センターハウジング(タービンハウジングとは異なる部材)
33 カム溝
33a 第1カム溝領域(大円弧溝、一方のバルブを駆動するカム溝)
33b 第2カム溝領域(同心円弧溝)
33c 第3カム溝領域(小円弧溝、他方のバルブを駆動するカム溝)
Claims (5)
- 独立した2つのバルブ(2、3)を備えるターボチャージャにおいて、
このターボチャージャは、
通電制御可能な1つのアクチュエータ(4)と、このアクチュエータ(4)によって駆動されるカムプレート(5)とを用いて、独立した前記2つのバルブ(2、3)を駆動するものであり、
前記アクチュエータ(4)および前記カムプレート(5)は、タービン羽根車(1)を収容するタービンハウジング(6)とは異なる部材に取り付けられることで、前記タービンハウジング(6)から離して低温環境に配置されていると共に、
独立した前記2つのバルブ(2、3)は、前記カムプレート(5)に形成された1つのカム溝(33)によって駆動されることを特徴とするターボチャージャ。 - 請求項1に記載のターボチャージャにおいて、
独立した前記2つのバルブ(2、3)のそれぞれは、常にバルブ開度を初期位置へ戻すためのリターンスプリングを備えることを特徴とするターボチャージャ。 - 請求項1に記載のターボチャージャにおいて、
前記カム溝(33)は、
前記カムプレート(5)の回転中心と同一中心の同心円弧溝(33b)を備え、
この同心円弧溝(33b)の一端に一方のバルブ(2)を駆動するカム溝(33a)が接続され、
前記同心円弧溝(33b)の他端に他方のバルブ(3)を駆動するカム溝(33c)が接続されることを特徴とするターボチャージャ。 - 請求項3に記載のターボチャージャにおいて、
前記一方のバルブ(2)を駆動するカム溝(33a)は、前記同心円弧溝(33b)より曲率半径の大きい大円弧溝(33a)であり、
前記他方のバルブ(3)を駆動するカム溝(33c)は、前記同心円弧溝(33b)より曲率半径の小さい小円弧溝(33c)であることを特徴とするターボチャージャ。 - 請求項1〜請求項4のいずれかに記載のターボチャージャにおいて、
前記2つのバルブ(2、3)のうちの一方のバルブは、前記タービン羽根車(1)に流入する排気ガスを制御する容量可変バルブ(2)であり、
前記2つのバルブ(2、3)のうちの他方のバルブは、前記タービン羽根車(1)を迂回する排気ガスを制御するウエストゲートバルブ(3)であることを特徴とするターボチャージャ。
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