JP5625338B2 - 電界効果トランジスタ - Google Patents

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Description

本発明は、電界効果トランジスタに関し、特に窒化物半導体を用いたノーマリオフ型の電界効果トランジスタに関する。
半導体層を積層して構成された電界効果トランジスタ(FET:Field effect Transistor)は、高周波かつ高耐圧で動作可能な高出力パワー半導体装置として期待され、MESFET(Metal Semiconductor FET)や高電子移動度トランジスタ(HEMT:High Electron Mobility Transistor)等が提案されている。近年、窒化ガリウム系化合物を用いたHEMT(以下「GaN系HEMT」とも言う。)が、次世代型の高速FETとして注目されている。GaN系HEMTはSi系化合物やGaAs系化合物等に比べて、その材料特性から、(1)バンドギャップが広く、電子有効質量から見積もられる電子の飽和電子移動度も高いこと、(2)破壊電界が大きいこと、(3)高温でも安定しているため、内燃機関の近傍等の高温領域でも使用できる等、応用分野が広いこと、(4)原材料となる窒化ガリウム系化合物半導体自身が基本的に無毒の材料であること、等の優れた利点があるため、より大出力で高耐圧かつ高温動作可能な高周波デバイスを実現できる可能性がある。
図9に示すGaN系化合物のHEMTの一例は、サファイア基板911上にGaNバッファ層912を介して、キャリア走行層913のアンドープGaN層、チャネルの波動関数が染み出しても高い移動度を好適に確保するスペーサ層のアンドープAlGaN層918、キャリア供給層(電子供給層)のn型AlGaN層914を順次積層している。スペーサ層は、電子を失った不純物イオンの電気的影響がチャネルに及ぶのを抑制して、チャネルにおける電子の走行に影響を与えないようにする。またn型AlGaN層914の上面には、ソース電極915、ゲート電極916、ドレイン電極917がそれぞれ形成される。このHEMTは、キャリア供給層914がキャリア走行層913に電子を供給し、供給された電子はキャリア走行層913のキャリア供給層914側の界面近傍の領域913aにチャネル領域を形成する。ドレイン電圧を印加すると、ソース電極915から電子がキャリア供給層914に注入され、チャネル913aを高移動度で走行し、再びキャリア供給層914を通過して、ドレイン電極917に流れる。ここで、ゲート電極916に印加される電圧に応じてチャネル領域が制御されるため、ゲート電極916に印加する電圧を制御することにより、ソース電極915とドレイン電極917間に流れる電流量が制御されることになる。
このようなGaN系HEMTは、ゲート電極に電圧を印加しない状態では、ソース電極とドレイン電極との間に電流が流れるノーマリオン型であり、電流が流れないようにするためには、ゲート電極に負電圧を印加する必要がある。一方、ノーマリオフ型であれば、ゲート電極に電圧を印加しない状態では、ソース電極とドレイン電極との間に電流が流れず、安全性や利便性の面から好ましい。
ノーマリオフ型のHEMTを得るためには、いくつかの方法が提案されている。例えば、キャリア走行層上に設けられたアンドープAlGaN層の膜厚を薄くすることが提案されている。AlGaN層の膜厚を薄くする場合は、薄層化にしたがって抵抗が増大するため、図10のように、ゲート電極916B直下またはその付近のキャリア供給層914Bのみを部分的に薄くするいわゆるリセスゲート構造によって、抵抗の増大を抑制している(例えば、特許文献1参照)。また、AlGaN層表面には、SiNやSiO2などが設けられる(例えば、特許文献2及び3参照)。
特開2005−183733号公報 特開2004−319552号公報 国際公開2004/066393号 特開2008−112949号公報
このようなノーマリオフ型のHEMTを得るためには、ソース・ドレイン電極間に電流が流れなくなる閾値電圧Vthを大きくする必要がある。閾値電圧が低いと、低電圧でオンするため、雑音等が原因で意図せずにオンしてしまう場合があるからである。このため、2〜3V程度の閾値電圧を有するノーマリオフ型のトランジスタが求められている。例えば、従来のHEMT構造のノーマリオフ動作可能なGaN系トランジスタの場合は、閾値電圧が+1V程度に過ぎず、従来のシリコン系パワーMOSFETと同等の閾値電圧となる+2.8V程度の構造が望まれていた。
しかしながら、従来のトランジスタでは、閾値電圧Vthを大きくしようとすれば、それにつれてオン抵抗Ronも高くなってしまい、損失が増大するという問題があった。このような問題を解決するため、本願出願人は図11に示すように、障壁層1114の表面にチャネル改質膜928を設けたFET1100を先に開発した(特許文献4参照)。このFET1100は、チャネル1113aを有するキャリア走行層1113と、キャリア走行層1113に接する障壁層1114と、障壁層1114の同一平面の表面に設けられる、ゲート電極1126と、ソース電極1125と、ドレイン電極1127とを有する。キャリア走行層1113は、サファイア基板1111上にバッファ層1112を介して成長される。このキャリア走行層1113及び障壁層1114は、窒化物半導体からなる。また障壁層1114は、第1窒化物層1114aと第2窒化物層1114bで構成される。さらに障壁層1114表面におけるソース・ドレイン電極間には、チャネル改質膜1128が設けられる。ソース・ドレイン電極間のホール測定により得られるシートキャリア濃度N1、シート抵抗R1、移動度μ1と、改質膜を有するソース・ドレイン電極間のホール測定により得られるシートキャリア濃度N2、シート抵抗R2、移動度μ2との間には、N1<N2、R1>R2、μ1<μ2のいずれかの関係が成り立つように設定する。以上の構成である程度の低抵抗化が図られるものの、依然として閾値電圧Vthの上昇に伴うオン抵抗Ronの増大という根本的な問題を解決するには至らず、さらに実用上求められる2〜3V程度の高い閾値電圧を、オン抵抗を増大させること無しに実現可能なノーマリオフ型のトランジスタが求められていた。
本発明は、このような背景に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、オン抵抗の上昇を抑制しつつ閾値電圧を大きくできる電界効果トランジスタを提供することにある。
課題を解決するための手段及び発明の効果
以上の目的を達成するために、本発明の第1の電界効果トランジスタによれば、キャリア走行層である第1窒化物半導体層と、前記第1窒化物半導体層の上に設けられた、前記第1窒化物半導体層よりもバンドギャップエネルギーの大きい第2窒化物半導体層と、前記第2窒化物半導体層の上に順に設けられた、InGaN層と、p型窒化物半導体層と、ゲート電極と、を備える電界効果トランジスタであって、前記InGaN層は、前記ゲート電極側に面した直下の表面に、第1の凹部を有することができる。これにより、オン抵抗を一定に抑えつつ、閾値電圧を大きくすることができ、ノーマリオフ型のトランジスタが実現できる。
また、前記InGaN層に、前記p型窒化物半導体層よりもp型不純物の含有量が少ないか若しくは含有しない構成とできる。InGaN層は、好ましくはアンドープとする。p型層とInGaN層を別個に設け、それぞれを個別に作用させることで、閾値電圧を効率よく上昇できる。
さらに電界効果トランジスタは、前記p型窒化物半導体層とInGaN層の間に、バンドギャップエネルギーが前記InGaN層よりも大きく且つ前記p型窒化物半導体層以下であって、p型不純物の含有量が前記p型窒化物半導体層よりも少ないか若しくは含有しない第3窒化物半導体層をさらに有することができる。これにより、InGaN層へのp型不純物拡散を抑制することができる。
また第2の電界効果トランジスタによれば、前記p型窒化物半導体層が、前記ゲート電極側の表面の、前記InGaN層の第1の凹部に対応する位置に、第2の凹部を有することができる。これにより、ゲート電極のコンタクト層となるInGaN層からp型層の表面に第2の凹部を設け、第2の凹部を含む領域にゲート電極を形成できる。
さらに第3の電界効果トランジスタによれば、前記第1窒化物半導体層及び前記第2窒化物半導体層の少なくともいずれか一方の内部に転位が存在しており、該転位の直上に、前記InGaN層の第1の凹部が位置するよう構成できる。これにより、第1の凹部を形成する工程を簡素化できる。
さらにまた、第4の電界効果トランジスタによれば、前記第2窒化物半導体層に、ソース電極とドレイン電極を設けることができる。これらソース電極とドレイン電極は、ゲート電極のコンタクト層であるInGaN層からp層上に設けないことが好ましい。好ましくは、InGaN層からp層を、ゲート電極下を除いて除去する。
さらにまた、第5の電界効果トランジスタによれば、前記InGaN層を、膜厚が15nm〜50nm、In混晶比を0.1〜0.2とすることができる。これにより、オン抵抗の上昇を抑制しつつ閾値電圧を大きくできる。
さらにまた、第8の電界効果トランジスタによれば、前記p型窒化物半導体層をGaNで構成できる。これにより、閾値電圧を上昇できる。
本発明の一実施の形態に係るHEMTを示す概略断面図である。 本発明の実施例1に係るGaN系HEMTを示す概略断面図である。 実施例1に係るGaN系HEMTの静特性を示すグラフである。 本発明の他の実施の形態に係るHEMTの一例を示す概略断面図である。 介在層の膜厚を変化させたときの閾値電圧とオン抵抗の変化を示すグラフである。 フェルミ準位が介在層の挿入により低下する様子を示すバンド図である。 介在層成長時のIn気相比を変化させた場合の閾値電圧とオン抵抗の変化を示すグラフである。 実施例2に係るGaN系HEMTを示す概略断面図である。 本発明と比較のためのGaN系化合物を用いたHEMT構造の一例を示す概略断面図である。 本発明と比較のためのGaN系化合物を用いたHEMT構造の別の一例を示す概略断面図である。 従来のFETの一例を示す概略断面図である。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための電界効果トランジスタを例示するものであって、本発明は電界効果トランジスタを以下のものに特定しない。また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。また、一部の実施例、実施形態において説明された内容は、他の実施例、実施形態等に利用可能なものもある。
なお、本明細書において半導体層構造上に形成するとは、該層に接触する形で直接形成する他、1層又は2層以上の介在する層その他の介在物を介して形成する構成も含むものとする。また、形成面は主面と同一の平面に限定されず、主面と直交する端面等、他の面上に形成する場合も含む意味で使用する。
図1に、本発明の一実施の形態に係るFETとして、HEMTを構成した例を示す。この図に示すHEMT10は、第1窒化物半導体層としてキャリア走行層13と、その上に形成された第2窒化物半導体層として障壁層14とを含む半導体構造と、半導体構造の表面に形成されたソース電極21、ゲート電極22、ドレイン電極23を備える。この構造のHEMT10においては、キャリア走行層13の上部で障壁層14との界面近傍にチャネル13aを形成し、このチャネル13aを電子などのキャリアは高移動度で走行できる。チャネル13aのキャリア濃度は、ゲート電極22に印加されるゲート電圧によって形成される空乏層により制御される。
(キャリア走行層13)
キャリア走行層13は、アンドープの層とすることが好ましい。一方で、窒化物半導体は、形成時に窒素抜けなどでn型となり易いため、それを補償できる程度にp型不純物をドープすることもできる。またキャリア走行層13は、適切なドーパントでドープして、チャネル13a以外のキャリア走行層13におけるキャリア走行を軽減することもできる。なおキャリア走行層13にn型不純物をドープする場合、n型もしくはn+型ではキャパシタンスの形成によりスイッチオフ時に意図しない電流が流れることがあるため、n-型とすることが好ましい。なお、本明細書においてアンドープとは、形成時に意図的に不純物を添加しないものをいう。
図1の例では、キャリア走行層13としてアンドープのGaN層、障壁層14としてアンドープのAlXGa1-XN層(0<X≦1)を採用している。また、この例では、FETとして、電子をキャリアとしたユニポーラ素子のHEMTであるが、ホールをキャリアとする場合には、上記不純物、導電型層として、p型不純物、p型層を用いる。
(障壁層14)
キャリア走行層13上に結晶成長され、その成長表面にゲート電極22が設けられる障壁層14は、キャリア走行層13よりもバンドギャップエネルギーの大きな窒化物半導体で構成される。この障壁層14は、アンドープの層とすることが好ましい。また窒化物半導体の窒素抜けを補償できる程度に、p型不純物を障壁層14にドープすることもできる。
さらに障壁層14は、第1の層で構成する他、好ましくは第1の層に加え、その下面に設けられたスペーサ層として機能する第2の層とで構成される。第1の層側には、その上にゲート電極22が設けられる。また第1の層とチャネル13aとの間に、スペーサ層として第2の層を設けることで、チャネル13aにおけるキャリア移動度を向上させることができる。キャリア走行層13がGaN層である場合、例えば、第1の層としてアンドープのAlGaN層、第2の層としてアンドープのAlN層を、それぞれ用いることができる。
第1の層としてAlGaN層を用いる場合は、AlXGa1-XN(0<X<0.4)層を用いることが好ましい。Al混晶比Xが0.4未満の範囲であると、結晶性の良好なAlGaN層が形成可能なため、移動度μを高いものとでき、またAl混晶比Xは特に0.2以上が好ましい。
一方、第2の層としてAlN層を用いる場合は、2nm以下の膜厚とすると、結晶性よく形成でき好ましく、特に0.5〜1nm程度の膜厚とすることが好ましい。障壁層14とキャリア走行層13との間は、接触させること好ましいが、その間に層を設けても良い。
(エッチングストップ層315)
さらに半導体構造には、HEMTのチャネルの厚さを正確に制御するためのエッチングストップ層315(蒸発防止層)を設けることが好ましい。図8に示す実施例2に係るGaN系HEMT300では、障壁層314の上面にAlGaN層のエッチングストップ層315を設けている。Alを含む窒化物半導体層は、他の組成、若しくはそれよりもAl混晶比の小さい窒化物半導体層に比してエッチングレートが小さい、すなわちAl混晶比が大きいほどエッチングレートが小さくなる。この性質を利用して、AlGaN、AlNなどのAlを含む窒化物半導体層(Al高混晶層)の上層に、それよりもAl混晶比の小さい窒化物半導体層、若しくはAl混晶比の小さい別の窒化物半導体層を配置することで、Alを含む窒化物半導体層(Al高混晶層)で好適にエッチング制御できるエッチングストップ層315として機能させることができる。またエッチングストップ層315の上面は、SiO2等の保護膜324で被覆している。
一般に良好なノーマリオフ特性を得るためには、ソース・ドレイン電極間に電流が流れなくなるときのゲート電極の印加電圧である閾値電圧を−1V以上とすることが好ましく、さらに0V以上とすることで、完全なノーマリオフ型とすることができる。実際に使用する場合には閾値電圧2V以上が好ましい。従来は、障壁層の膜厚を薄くすることで、閾値電圧を正側にシフトさせていた。これは、障壁層を薄くし、ゲート電極からチャネルまでの距離を短くすることで、ゲート電極下の空乏層がチャネルまで届きやすくなるためと考えられる。これに対し本願発明では、逆に障壁層14に介在層16を付加して厚くすることで、ノーマリオフ型のHEMTを実現している。
(介在層16)
介在層16は、ゲート電極22と障壁層14との間に設ける。この介在層16は、格子緩和を生じさせる機能を有させるため、その膜厚は臨界膜厚以上とする。またこの介在層16は、InGaNで構成する。これにより、閾値電圧を好適に大きくすることができるので、ノーマリオフ型のトランジスタが実現できる。またこの際、オン抵抗の上昇を抑制することもできるので、消費電力や発熱を抑制できる。このような介在層16としては、InGaN層が好適に利用できる。InGaN層は、膜厚(nm)とIn混晶比の積を1.5〜10とすることが好ましい。具体的には、膜厚を15nm〜50nm、In混晶比を0.1〜0.2とすることが好ましく、これによりオン抵抗の上昇を抑制しつつ閾値電圧を大きくできる。さらにInGaN層は好ましくは、後述するp型層よりもp型不純物の含有量を少なくするか、若しくは含有しない構成とする。より好ましくは、InGaN層をアンドープとする。このようにドープ量を違えたp型層とInGaN層を別個に設け、それぞれを個別に作用させることで、閾値電圧を効率よく上昇できる。
(p型層18)
さらに介在層16とゲート電極22との間には、p型層18を含めることが好ましい。p型層18は、ゲート電極のコンタクト層として機能する。ゲート電極22の直下にp型層18を付加することで、ゲート電極22にバイアスを印加しない状態で空乏層が広がるため、フラットバンドにするために必要なバイアスを大きくする効果、言い換えると閾値電圧を一層大きくする効果が得られる。このp型層18は、ゲート電極22の下に設け、ソース電極21とドレイン電極23の下には設けない。ソース電極21とドレイン電極23の下にもp型層18を積層すると、空乏層が形成され電流を阻害するので、ゲート電極22の下のみを残して、後の部分ではAlGaN層を露出させることが好ましい。上述の介在層16も同様に、ゲート電極22の下のみを残して除去することが好ましい。
またp型層18はp型窒化物半導体層、好ましくはp型GaN層とする。またp型層18は複数層で構成することもできる。
さらにp型層とInGaN層の間に第3の窒化物半導体層を介在させてもよい。第3窒化物半導体層は、バンドギャップエネルギーがInGaN層よりも大きく、且つp型窒化物半導体層以下とする。またp型不純物の含有量が、p型窒化物半導体層よりも少ないか、若しくは含有しない。このようにp型層とInGaN層の間に第3窒化物半導体層を設けることで、InGaN層へのp型不純物拡散を抑制することができる。この第3窒化物半導体層は、ピエゾ電荷の発生を防ぐため、InGaN層よりも大きく、且つp型層以下のバンドギャップエネルギーを有する半導体層とする。この第3窒化物半導体層は、p型層と同じ組成であることが好ましい。図2に示す実施例1に係るHEMT100では、p型層118であるp型GaN層と介在層116であるInGaN層との間に、第3窒化物半導体層としてアンドープのGaN層117を設けている。
(電極)
障壁層14上には、ソース電極21、ゲート電極22、ドレイン電極23の各電極が形成される。これらの電極の内、ソース電極21とドレイン電極23は、障壁層14に電流を供給するためにオーミック電極が好適に用いられる。ゲート電極22は、キャリア走行層13に形成される空乏層を制御性よく形成し、チャネルを走行する電子を制御できるように、一般的にはショットキー電極が用いられるが、ゲート電極のコンタクト層がp層である場合にはオーミック電極を用いることができる。また、これらの電極は、図示しないが複数の層からなる金属層や合金層及びそれらの組合せを適宜用いることができる。
電界効果トランジスタにおいて、キャリアとなる電子は、キャリア走行層13中の障壁層14との界面近傍に蓄積され、チャネル13a中を走行する。一方、ソース電極21とドレイン電極23との電極間にドレイン−ソース間電圧Vdsを印加すると、チャネル13aを介してソース電極21とドレイン電極23の間にドレイン電流Idが流れる(図3参照)。またゲート電極22にゲート電圧Vgを印加すると、その電圧に応じてゲート電極22の下に発生する空乏層が延びるため、ゲート電圧Vgでドレイン電流Idを制御することができる。すなわちゲート電圧Vgを大きくする程、同じドレインソース間電圧Vdsでもドレイン電流Idを大きくすることができる。
(第1の凹部19)
また図1に示すように、InGaN層は、ゲート電極直下の表面に第1の凹部19を設けている。またこれに応じて、好ましくはInGaN層上面のp型窒化物半導体層にも第2の凹部20を設ける。このような凹部を設けることで、閾値電圧を大きくできる。このような効果は、ゲート電極のコンタクト層として、表面に第1の凹部19を有するInGaN層の上にp型層を積層した構造を用いることにより得られる。そのメカニズムは明らかでないが、以下の要因が考えられる。
(1)表面に第1の凹部19を有するInGaN層の上に更に半導体層を成長させると、第1の凹部19内は平坦でないため半導体層が成長し難く、InGaN層とその表面に形成された層との間に空隙ができ易い。この空隙の存在によって帯電し、閾値電圧が上昇する。
(2)InGaN層の上面は一般にC面である。これに対して第1の凹部19は、上面に対して傾斜した面であるため、M面やA面といった、C面よりもノーマリオフになりやすい無極性面が露出している。
(3)第1の凹部19上にp型層を形成するため、第1の凹部19が存在する領域では、他の領域よりも、p型層がチャネルに近付く。これにより、空乏層が広がりやすく、閾値電圧が上昇する。
第1の凹部19は、InGaN層を貫通していてもよい。好ましくは、第1の凹部19の底部がInGaN層内に位置するようにする。第1の凹部19は、底部に向かって寸法が小さくなる形状であり、第1の凹部19の側面とInGaN層の成長軸が成す角を30度〜85度程度とすることが好ましく、さらに好ましくは50度〜70度とする。InGaN層の成長軸とは、InGaN層の成長方向と平行な方向を指す。平面視における第1の凹部19の最大幅は、InGaN層厚みと同程度かそれよりも大きいことが好ましく、上限は1μm以下、さらに好ましくは0.5μm以下とする。また、第1の凹部19の密度は、1×105/cm2〜1×1010/cm2程度とすることが好ましい。
また第1の凹部19は、転位の直上に位置するように設けることが好ましい。半導体層の内部には転位が存在しているため、この転位に合わせてInGaN層の第1の凹部19を位置させる。本発明者の行った試験によれば、キャリア走行層である第1窒化物半導体層(GaN層)から続く転位の上のInGaN層が陥没して、ピットとなっていることが確認できた。InGaN層の第1の凹部19は、このように転位上にInGaN層を成長させて形成することで、第1の凹部を形成する工程を不要にでき、製造コストを削減できる。また、このように半導体層の成長方向に伸びる転位は、本実施例のように各電極を同一面側に形成した横型構造において、リークの低減にも寄与する。このような転位は、例えば、サファイア基板等の異種基板上に半導体層を積層することや、転位を有するGaN基板等の半導体基板上に半導体層を積層することによって形成される。
(第2の凹部20)
第2の凹部20は、第1の凹部19と同様の構成を採用できる。第2の凹部20は、好ましくは第1の凹部19の直上に設けられる。第2の凹部20は、第1の凹部19を有するInGaN層の上にp型層18を形成することで、第1の凹部19に対応した第2の凹部20を形成することが好ましい。第2の凹部20を設けることで閾値電圧を大きくできるメカニズムは明らかでないが、p型層によって空乏層を広げる一方で、p型層表面に部分的に第2の凹部20を設けることにより、効率的に空乏層が広がりやすく、閾値電圧が上昇することが考えられる。
(窒化物半導体層)
GaN系HEMTは、窒化ガリウム系化合物半導体で構成される。窒化ガリウム系化合物半導体層は、基板上に必要に応じてバッファ層を形成し、さらにキャリア走行層13、障壁層14を順にエピタキシャル成長し、さらに電極を積層して形成することができる。なおバッファ層は、GaN等のエピタキシャル層と格子整合する基板を用いる場合は必ずしも必要でない。結晶成長方法としては、例えば、有機金属気相成長法(MOCVD:metal-organic chemical vapor deposition)、ハイドライド気相成長法(HVPE)、ハイドライドCVD法、MBE(molecularbeam epitaxy)等の方法が利用できる。窒化ガリウム系化合物半導体は、一般式がInxAlyGa1-x-yN(0≦x、0≦y、x+y≦1)であって、BやP、Asを混晶してもよい。また、各半導体層、例えばキャリア走行層13、障壁層14は、単層、多層を特に限定しない。また窒化物半導体層には、n型不純物、p型不純物を適宜含有させることもできる。n型不純物としては、Si、Ge、Sn、S、O、Ti、Zr等のIV族、若しくはVI族元素を用いることができ、好ましくはSi、Ge、Snを、最も好ましくはSiを用いる。またp型不純物としては、特に限定されないが、Be、Zn、Mn、Cr、Mg、Ca等が挙げられ、好ましくはMgが用いられる。これにより、各導電型の窒化物半導体を形成することができる。また半導体構造を形成する成長用の基板はサファイア基板やGaN基板等が利用でき、また熱伝導が高く放熱性に優れたSiC基板、CuW基板等も利用できる。熱伝導性基板としては、その他Al、Cu、W等の金属、AlN、SiC、ダイヤモンド、銅ダイヤモンド、GaN、Si等及びその混晶、合金、混合物等を用いることができ、放熱を担える基体であれば、金属以外でも樹脂類やガラス類等、材料組成、形状は限定されない。
窒化物半導体層の形成後、基板及びバッファ層は除去されると、バッファ層の存在によるリーク電流が生じてリークパスが形成されることを防ぐことができる。基板のみならずバッファ層まで除去すること、例えば基板剥離後に半導体構造の一部を研磨してバッファ層を除去することで、リーク電流を抑制することも可能となる。また、成長初期のバッファ層、下地層などは、結晶性が悪い傾向にあり、その場合、その部分がリークパスとなるため、結晶性の悪い深さで除去して、キャリア走行層13、障壁層14が形成されることでリーク電流を抑制できる。基板は、全て除去すれば、バッファ層の除去が容易になる。
(段差部)
また、キャリア走行層213と障壁層214とを含む積層構造が、図4に示すように、ゲート電極222の片側、好ましくは両側にキャリア走行層213の端部を露出させる側面を備えた段差部を有するメサ構造としてもよい。段差部の側面には、少なくともキャリア走行層213端部と接続された、ソース電極221、ドレイン電極223の少なくとも一方、好ましくは両方が設けられ、ソース電極221、ドレイン電極223の一部は、段差部上面、つまり障壁層214上に設けられる。これにより、ソース・ドレイン電極が好適に低接触抵抗化でき、さらに抵抗を低減させることができる。また、オフ時の高耐圧化も可能である。
また、このようなメサ構造における寸法の具体例は、以下のようなものがある。段差部の上面に設けられたソース電極221、ドレイン電極223の少なくとも一方のゲート電極222側端部から段差部上面の端部側面までの距離Lを、0<L≦10μm、好ましくは0.1μm以上、5μm以下の範囲とする。これは、0.1μm以下であると、段差部上面に設けられる電極が微細となるため、生産性・信頼性に劣る傾向にあり、各電極、特にゲート電極222の位置精度、及びゲート電極222と各電極との距離の精度が、素子特性の要因として大きくなるためである。また、5μm以下であると、TLM(Transmission line model)測定による接触抵抗を十分に小さなものとできる。
また、ソース電極、ドレイン電極の少なくとも一方が、段差部の下段部分にまで延長して電極が設けられることで、制御性良く各電極構造を形成できる。また、その底面における電極形成層を、キャリア走行層213と同一の層とすることで、チャネル近傍においては、キャリア走行層213端部と同様に好適に各電極との接続が実現され、それと離れた領域では、高接触抵抗として、選択的にキャリア走行層213にキャリアを誘導できる構造となる。さらに、段差部が上面側より底面側を幅広とする形状であると、各電極及びその形成位置・領域を好適に制御でき、生産性に富み、好適な特性のFETとできる。従って、この例では、段差の下段部又は電極形成層の少なくとも一方をチャネルより下に位置するようにすること、好ましくはチャネルを有する窒化物半導体、若しくはキャリア走行層213内に位置するようにすることとなる。
段差部は、キャリア走行層213及び障壁層214などの半導体積層構造に、エッチング等により形成される。エッチングの方法は、例えば、レジストパターンなどのマスクを介して、RlE(reactive ion etching)やイオンミリング(ion milling)等で行うことができる。同様に、段差構造のその他の形成方法としては、結晶の成長速度の違いを利用した再成長により段差構造を形成することができる。より具体的には、キャリア走行層213を成長した後、一部を例えばSiO2などで覆い、開口部を選択的に成長させることで段差構造とすることもできる。
(ソース電極21、ゲート電極22、ドレイン電極23)
ソース電極21、ゲート電極22、ドレイン電極23等の電極は、典型的には素子を構成する半導体材料とは異なる組成から形成され、例えばTi、Al、Cu、W、Au、Ag、Mo、Ni、Pt、In、Rh、Ir、Cr等導電性に優れた材質で構成される。また金属材料に限定せず、導電性酸化物、導電性を有する導電性プラスチック等も利用できる。さらに電極は単一元素の材料のみならず、合金化、共晶化、混晶等、複数の元素で構成し、例えばITOや酸化亜鉛(ZnO)等が利用できる。さらにまた2層以上の層構造も採用できる。好ましくは、AlGaN系やGaN系半導体層に対するオーミック電極の一例として、Ti/Al系電極、ショットキー電極の一例としてNi/Au系材料からなる電極が採用される。これによってHEMT用電極として要求されるオーミック特性、ショットキー特性等において良好に機能する。また、各電極とワイヤとの密着性等を考慮して、パッド電極を形成してもよい。電極の上には、外部電極等と接続させるための導電部材(例えばバンプ)を好適に形成する。導電部材は、Ag、Au、Sn、In、Bi、Cu、Zn等の材料から成る。電界効果トランジスタの電極形成面側をサブマウント上に設けられた外部電極と対向させ、バンプにて各々の電極を接合してもよい。サブマウントに対してはワイヤ等が配線される。各電極は、スパッタや蒸着等により形成することができ、半導体構造の同一面側に形成し、横型構造のFETとすることができる。一方、ソース電極21とドレイン電極23とを、半導体構造を挟んで対向する面にそれぞれ設け、ゲート電極22をその対向面のいずれかに設けた縦型構造のFETとすることもできる。なお、本明細書において、例えばTi/Alとは、半導体側からTiとAlが順に積層された構造を指す。
(電界効果トランジスタの製造方法)
実施例に係る電界効果トランジスタ、例えば図2に係るHEMT100は、以下のようにして製造される。ここでは結晶成長装置を用いて、MOCVDによりサファイア基板111上にGaN系HEMTを作製する。まず、MOCVD反応炉内にサファイア基板111をセットし、C面サファイア基板111の表面を水素雰囲気中で、熱処理クリーニングを行い、510℃まで下げ、水素雰囲気にてサファイア基板111上にGaNよりなるバッファ層112を約20nm、結晶成長温度まで昇温して、素子構造となる積層構造として、3μmアンドープGaNのキャリア走行層113(このアンドープGaN層の障壁層114との界面近傍部がチャネル113aとなる)、その上の障壁層114として、アンドープのAlNよりなるAlNの第2の層114a(0.9nm)、Al組成が0.3であるアンドープのAl0.3Ga0.7NよりなるAlGaNの第1の層114b(7nm)を成長させる。なお、アンドープAlN層114aを設けることにより、チャネルの移動度をより向上させることができる。さらにその上に、介在層116として30nmのIn0.16Ga0.84N層、5nmのアンドープのi−GaN層117、p型層118として20nmのGaN層を順に成長させる。反応終了後、温度を室温まで下げウェハを反応容器から取り出す。
次に、p型層118の成長表面に、スパッタ装置でNiを10nm、Auを150nm、順に成膜し、リフトオフしてゲート電極122を形成する。このゲート電極122をマスクとして、p型層118から介在層116まで除去し、第1の層114bを露出させる。次に、ゲート電極122両端のキャリア走行層113の一部を除去して段差部を形成し、段差部の底面から上面にかけて、ソース電極121、ドレイン電極123として、スパッタにて、Tiを10nmと、Alを300nmとを順に成膜し、リフトオフにてTi/Alの電極を形成する。その後、550℃で電極をアニールする。さらに、第1の層114bの露出面からゲート電極122の上面にかけて、保護膜24としてSiO2で被覆する。実施例1では、ソース・ドレイン電極間距離LSDを約20μm、ソース・ゲート電極間距離を約3μm、ゲート電極長(図2の断面図における断面幅)を約3μm、ゲート電極幅(ゲート電極長手方向)を約100μmとして形成する。
(実施例1)
以上のようにして製造された実施例1に係るGaN系HEMT100は、図2に示すように、チャネル113aを有するキャリア走行層113としてアンドープのGaN層3μmと、その上に障壁層114とが設けられる。障壁層114は、第2の層114aとしてアンドープのAlN層(スペーサ層)が0.9nmの膜厚で、第1の層114bとしてアンドープのAlGaN層が7nmの膜厚で、順に積層される。さらに介在層116であるInGaN層の膜厚は30nm、その上面には5nmのi−GaN層、さらにその上にp型層118として20nmのGaN層を積層し、その上面にゲート電極122をNi/Auで作成した。一方でゲート電極122形成部分以外では介在層116を除去し、ソース電極121、ドレイン電極123を各々形成後、電極面を除いて保護膜24で被覆している。
実施例1に係るGaN系HEMTの静特性を図3に示す。図3は、ゲート電圧Vgを1V〜8Vに1V刻みで変化させたときの、ドレインソース間電圧Vdsに対するドレイン電流Idの変化を示している。ゲート電圧Vgが1〜3Vのときのドレイン電流Idはほぼ同じであり、0[A/mm]付近である。この例では、閾値電圧が約3V、オン抵抗が約12.7Ωmmという良好なノーマリオフ特性のFETを得ることができた。このようなFETにおいて、介在層116であるInGaN層表面に第1の凹部が確認された。第1の凹部は、キャリア走行層113の成長方向に伸びた転位上に位置する。EDS(Energy-Dispersive-Spectroscopy)によってInGaN層と第1の凹部内のIn混晶比を測定すると、第1の凹部内のIn混晶比はInGaN層のIn混晶比の半分程度であった。第1の凹部の側面とInGaN層の成長軸とが成す角は60度〜70度程度であり、平面視における第1の凹部の最大幅は30nm〜250nm程度である。InGaN層の上に形成されたp型層118の表面にも同様の第2の凹部が確認された。
また以上のHEMTにおいて、介在層116としてIn0.1Ga0.9N層の膜厚を変化させたときの閾値とオン抵抗の変化を図5に示す。図5において、●はオン抵抗Ron(右側の縦軸[Ω・mm])を示し、○は閾値電圧Vth(左側の縦軸[V])を、それぞれ示している。この図から明らかなように、閾値電圧は介在層116の膜厚増加に従って増大しており、特に10nm付近から急激に増大していることが判る。一方でオン抵抗は、閾値電圧の上昇に比べて増加幅が極めて少なく、ほぼ一定を維持している。このように、介在層116によって閾値電圧の上昇とオン抵抗の均質化が図られていることが確認できた。
次に、介在層116としてInGaN層の膜厚を変化させたときの逆格子ベクトルの変化を測定した結果を、表1に示す。この表から明らかなとおり、5nmから10nmに変化させたときの逆格子ベクトルの変化が顕著であり、この間に薄膜結晶が歪緩和する臨界膜厚があると推測できる。よって介在層116の膜厚は、10nm以上とすることが好ましい。より好ましくは、介在層116の膜厚を、閾値電圧の急激な増大がみられる10nmよりも大きい膜厚とし、さらに好ましくは15nm以上とする。また、膜厚を50nmより大とすると、オン抵抗が増大するため、介在層116の膜厚は、50nm以下とすることが好ましい。このようにInGaN層の膜厚を設定することで、低オン抵抗と高閾値を両立させることができる。
Figure 0005625338
以上のように、介在層116としてInGaN層を追加したことで、従来困難と思われていた閾値電圧Vthを上昇させつつオン抵抗Ronを維持するという相反する問題を解決することに成功した。このような知見は、本発明者が試行錯誤の末見出したものであり、そのメカニズムは明らかでないが、凡そ以下の理由であると推察される。すなわち、図6に示すバンド図において、フラットバンドになったときのp側フェルミ準位が、介在層の挿入により下がったことが原因と推測される。
ただ、InGaN層はナローギャップであるため、p側の擬フェルミ準位Efpが価電子帯にかかって2次元ホールガス(2DHG)が形成されると、閾値増大効果は薄れてしまう。実際、空間電荷としてピエゾ分極と自発分極のみを置いた自己無撞着(self-consistent)のシミュレーションによれば、InGaN/AlGaN界面で界面準位が価電子帯にかかり2次元ホールガスが形成され、InGaNの負の分極を打ち消すので、殆ど閾値電圧が変化しないという結果が得られ、実験結果を再現できていない。よって介在層による閾値増加には、格子緩和が何らかの影響を及ぼしている可能性があると考えられる。
(In混晶比)
次に、InGaNの介在層116を成長させる際のIn気相比を変化させたときの閾値電圧とオン抵抗の変化を、図7に示す。図7においても、●はオン抵抗Ron(右側の縦軸[Ω・mm])を、○は閾値電圧Vth(左側の縦軸[V])を、それぞれ示している。この図から明らかなように、In気相比が増大するに従って閾値電圧が上昇する傾向がみられる。また、この場合においてもオン抵抗はほぼ一定の結果が得られた。よって介在層116のInGaNは、In混晶比を大きくすることが好ましいと言える。具体的には、InxGa1-xNにおいて、0<x≦0.5、好ましくは0.1≦x≦0.2とする。上述の膜厚範囲は、特にこのようなIn混晶比の場合に好ましい。
(実施例2)
また一方で、介在層はゲート電極下の領域にのみ設け、他の領域であるソース電極やドレイン電極の部分では除去することが好ましい。なお介在層の除去方法にエッチングを用いると、その下の半導体構造表面のAlGaN層の表面近傍にエッチングダメージ領域が残る虞がある。これを表面処理等を行って除去すればキャリア濃度と移動度を向上できるものの、一方でAlGaN層の膜厚を薄くしすぎると、逆にキャリア濃度と移動度が低下してしまう問題がある。
そこで、実施例2に係るGaN系HEMT300を提案する。このGaN系HEMT300は、図8に示すように第2の層314aと第1の層314bで障壁層314を構成しており、さらに障壁層314の表面にエッチングストップ層315が形成されている。基板311、バッファ層312、キャリア走行層313、介在層316、アンドープのGaN層317、p型層318、ゲート電極322、ソース電極321、ドレイン電極323、保護膜324等の構成は図2とほぼ同様である。第1の層314bであるAlGaN層は、低Al混晶比のAlGaN層314dと高Al混晶比のAlGaN層314cの2層構成とし、低Al組成AlGaN層314d側を表面側に位置させる。この構成によれば、エッチングダメージが残ったエッチングストップ層315を表面処理によって除去する際に、その下の低Al組成AlGaN層314dの表面がある程度削除されても、キャリア濃度と移動度の低下を免れることができ、閾値電圧の増加を達成しつつエッチングダメージ領域を充分に除去することができる。
この理由は、以下のように考えられる。仮に半導体構造のAlGaN層を単層とする場合、表面から削除されるに従って界面準位濃度が減少し、これに伴いキャリア濃度も減少してしまう。これに対して、低Al組成/高Al組成の2層構成のAlGaN層とすることで、表面側が低Al層であるため、表面から削除されるに従って、界面準位濃度が増加し、キャリア濃度も増加すると考えられる。このように実施例2に係るGaN系HEMT300では、キャリア濃度と移動度の劣化を抑制して高品質なGaN系HEMTを得ることができる。
本発明の電界効果トランジスタは、低抵抗なFETとして、また、良好なノーマリオフ特性のFETとして、スイッチング素子等、好適に用いることができる。また、素子構造、実装構造としては、フェイスダウン構造を持つフリップチップ型の実装、半導体構造を挟んで各電極を対向させた構造の縦型FETなどにも応用できる。
10…HEMT
100、300…GaN系HEMT
111、311…基板
112、312…バッファ層
13、113、213、313…キャリア走行層
13a、113a、313a…チャネル
14、114、214、314…障壁層
114a、314a…第2の層
114b、314b…第1の層
315…エッチングストップ層
314c…高Al組成AlGaN層
314d…低Al組成AlGaN層
315…エッチングストップ層
16、116、316…介在層
117、317…アンドープGaN層
18、118、318…p型層
19…第1の凹部
20…第2の凹部
21、121、221、321…ソース電極
22、122、222、322…ゲート電極
23、123、223、323…ドレイン電極
24、324…保護膜
911…サファイア基板
912…バッファ層
913…キャリア走行層
913a…チャネル
914、914B…キャリア供給層
915…ソース電極
916、916B…ゲート電極
917…ドレイン電極
918…スペーサ層
1100…FET
1111…サファイア基板
1112…バッファ層
1113…キャリア走行層
1113a…チャネル
1114…障壁層
1114a…第1窒化物層
1114b…第2窒化物層
1125…ソース電極
1126…ゲート電極
1127…ドレイン電極
1128…チャネル改質膜

Claims (6)

  1. キャリア走行層である第1窒化物半導体層と、
    前記第1窒化物半導体層の上に設けられた、前記第1窒化物半導体層よりもバンドギャップエネルギーの大きい第2窒化物半導体層と、
    前記第2窒化物半導体層の上に順に設けられた、
    InGaN層と、
    p型窒化物半導体層と、
    ゲート電極と、
    を備える電界効果トランジスタであって、
    前記InGaN層は、前記ゲート電極側に面した直下の表面に、第1の凹部を有し、
    前記InGaN層は、前記p型窒化物半導体層よりもp型不純物の含有量が少ないか若しくは含有せず、
    前記電界効果トランジスタはさらに、前記p型窒化物半導体層とInGaN層の間に、バンドギャップエネルギーが前記InGaN層よりも大きく且つ前記p型窒化物半導体層以下であって、p型不純物の含有量が前記p型窒化物半導体層よりも少ないか若しくは含有しない第3窒化物半導体層を有することを特徴とする電界効果トランジスタ。
  2. 請求項1に記載の電界効果トランジスタであって、
    前記p型窒化物半導体層は、前記ゲート電極側の表面の、前記InGaN層の第1の凹部に対応する位置に、第2の凹部を有することを特徴とする電界効果トランジスタ。
  3. 請求項1又は2に記載の電界効果トランジスタであって、
    前記第1窒化物半導体層及び前記第2窒化物半導体層の少なくともいずれか一方の内部に転位が存在しており、該転位の直上に、前記InGaN層の第1の凹部が位置することを特徴とする電界効果トランジスタ。
  4. 請求項1から3のいずれか一に記載の電界効果トランジスタであって、
    前記第2窒化物半導体層に、ソース電極とドレイン電極が設けられたことを特徴とする電界効果トランジスタ。
  5. 請求項1から4のいずれか一に記載の電界効果トランジスタであって、
    前記InGaN層は、膜厚が15nm〜50nmであり、In混晶比が0.1〜0.2であることを特徴とする電界効果トランジスタ。
  6. 請求項1からのいずれか一に記載の電界効果トランジスタであって、
    前記p型窒化物半導体層がGaNで構成されることを特徴とする電界効果トランジスタ。
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