JP5624754B2 - 内服固形製剤 - Google Patents

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Description

本発明は、内服固形製剤に関する。
一般的に、医薬品には複数の有効成分が配合される。例えば、主剤として解熱鎮痛成分を配合した内服固形製剤には、解熱鎮痛成分による胃への負担を低減するために制酸剤が配合される場合がある。解熱鎮痛成分としてアセトアミノフェンを選択し制酸剤と共に配合すると、アセトアミノフェンが変色し商品の価値を低下させるという問題がある。
従来、このような変色の問題に対して、アセトアミノフェンと制酸剤との接触を避けることで、製剤の変色防止を図った内服固形製剤の製造方法が提案されている。例えば、特許文献1には、アセトアミノフェン及び制酸剤の少なくとも一方が被覆剤で被覆された製剤が開示されている。また、特許文献2には、制酸剤を主体とする層以外の層にアセトアミノフェンが含まれる積層製剤が開示されている。
特開平2−286614号公報 特開平5−294829号公報
しかしながら、特許文献1の技術では、アセトアミノフェン又は制酸剤を被覆剤で被覆するため、被覆剤の分だけ服用量が増大すると共に、製造プロセスの複雑化、コストアップ等の問題がある。加えて、有効成分は、服用後、短時間で効果が発揮されること(速効性)が求められるが、被覆造粒した場合、有効成分の溶出が遅くなり、速効性を損なうおそれがある。
また、特許文献2の技術では、積層製剤とするための特殊な製造設備を必要とする上、組成によっては層間の剥離等の問題を生じることがある。
さらに、上述の技術によるアセトアミノフェンの変色抑制効果は、未だ十分に満足できるものではなく、より確実に変色を抑制できる内服固形製剤が望まれている。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、簡便な方法によりアセトアミノフェンの変色防止が図れる内服固形製剤を目的とする。
本発明の内服固形製剤は、(A)成分:アセトアミノフェンと、(B)成分:アルミニウム系制酸剤と、(C)成分:カルメロースとを含有し、(B)成分/(A)成分で表される質量比が0.05〜10であり、(C)成分/(A)成分で表される質量比が0.05〜2であることを特徴とする。
前記(B)成分は、乾燥水酸化アルミニウムゲル及びアルミニウムグリシネートから選ばれる1種以上であることが好ましい。
本発明によれば、簡便な方法によりアセトアミノフェンの変色防止が図れる内服固形製剤を提供できる。
(内服固形製剤)
本発明の内服固形製剤は、(A)成分:アセトアミノフェンと、(B)成分:アルミニウム系制酸剤と、(C)成分:カルメロースとを含有するものである。
内服固形製剤の剤形は、固形であり、例えば、粉体、顆粒、造粒物等の粒状製剤、口腔内崩壊錠、チュアブル錠等の錠剤等が挙げられる。中でも、本発明は、粒状製剤が好ましく、粉体がより好ましい。このような剤形において、本発明の効果が顕著なためである。
[(A)成分:アセトアミノフェン]
(A)成分のアセトアミノフェン(N−(4−ヒドロキシフェニル)アセトアミド)は、別名パラセタモールとも呼ばれ、日本薬局方に収載されている解熱鎮痛成分である。
内服固形製剤中の(A)成分の配合量は、内服固形製剤の用途、経口投与量等を勘案して決定でき、例えば、1〜99質量%が好ましく、10〜70質量%がより好ましく、20〜60質量%がさらに好ましい。上記範囲であれば、他の配合成分とのバランスを取りつつ、(A)成分の薬効が充分に発揮できる。
[(B)成分:アルミニウム系制酸剤]
(B)成分のアルミニウム系制酸剤は、通常、制酸剤として用いられる物質のうち、金属としてアルミニウムを含有するものをいい、アルミニウム以外の金属、例えばマグネシウム等を含有しないものである。従って、アルミニウムを含有する制酸剤であっても、例えば、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等は、本稿における(B)成分に含まれない。後述する(C)成分による(A)成分の変色抑制効果は、このような(B)成分と(A)成分との存在下において発揮されるためである。
(B)成分としては、例えば、乾燥水酸化アルミニウムゲル、アルミニウムグリシネート、水酸化アルミニウム等が挙げられ、中でも乾燥水酸化アルミニウムゲル、アルミニウムグリシネートが好ましい。乾燥水酸化アルミニウムゲル、アルミニウムグリシネートを(B)成分として用いた場合において、後述する(C)成分による(A)成分の変色抑制効果が顕著に発揮されるためである。
内服固形製剤中の(B)成分の配合量は、(A)成分の配合量を勘案して決定でき、(B)成分/(A)成分で表される質量比が0.05〜10であり、好ましくは0.1〜3である。(B)成分/(A)成分が0.05未満であると、そもそも(A)成分の変色が生じにくく、10超であると内服固形製剤中の(A)成分の含有量が少なすぎて、(A)成分の変色が認識されにくい。
また、例えば、(B)成分として乾燥水酸化アルミニウムを用いた場合、(B)成分/(A)成分で表される質量比が0.05〜10であれば、(A)成分及び乾燥水酸化アルミニウムゲルがそれぞれ薬効を発揮すると共に、内服固形製剤の1回の服用量において、(A)成分及び乾燥水酸化アルミニウムゲルを所定の量に抑えることができる。このように、内服固形製剤の薬効のバランスを確保する観点から、(B)成分/(A)成分は、上記範囲内とすることが好ましい。
[(C)成分:カルメロース]
(C)成分は、カルメロース(カルボキシメチルセルロース)は、セルロースの多価カルボキシメチルエーテルである。
内服固形製剤中の(C)成分の配合量は、(A)成分の配合量を勘案して決定でき、例えば、(C)成分/(A)成分で表される質量比が0.05〜2であり、好ましくは0.1〜0.5である。(C)成分/(A)成分が0.05未満であると、(A)成分の変色抑制効果が得られにくい。(C)成分/(A)成分が2超であると、(C)成分と、(A)成分及び/又は(B)成分との混合粉体の流動性が極端に悪化し、製造上の不具合が生じる。
[任意有効成分]
内服固形製剤には、本発明の効果を損なわない範囲で、(A)成分、(B)成分及び(C)成分以外の有効成分(任意有効成分)を配合することができる。任意有効成分としては、例えば、アスピリン、イブプロフェン、エテンザミド等の(A)成分を除く解熱鎮痛成分、アリルイソプロピルアセチル尿素、ブロムワレリル尿素等の鎮静催眠剤、塩酸イソチベンジル、塩酸ジフェニルピラリン、塩酸ジフェンヒドラミン、塩酸メトジラジン、サリチル酸ジフェンヒドラミン、酒石酸アリメマジン、タンニン酸ジフェンヒドラミン、dl−マレイン酸クロルフェニラミン、d−マレイン酸クロルフェニラミン等の抗ヒスタミン剤、カフェイン、無水カフェイン等の中枢興奮剤、ビタミンB1もしくはその誘導体又はこれらの塩類、ビタミンB2もしくはその誘導体又はこれらの塩類、ビタミンCもしくはその誘導体又はそれらの塩類等が挙げられる。これらの任意有効成分は、1種単独又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
内服固形製剤中の任意有効成分の配合量は、内服固形製剤の用途等を勘案して決定でき、例えば、0.01〜90質量%が好ましく、0.01〜70質量%がより好ましい。
[任意成分]
さらに、本発明の内服固形製剤には、本発明の効果を損なわない範囲で、任意成分として乳糖、デンプン、ショ糖、マンニトール、結晶セルロース等の賦形剤;ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アラビアゴム、α化デンプン(部分α化デンプン・PCS:旭化成工業株式会社製)等の結合剤;ポリビニルピロリドン又はその架橋体、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、α化デンプン(部分α化デンプン・PCS:旭化成工業株式会社製)、クロスカルメロースナトリウム等の崩壊剤;ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシソルビタン脂肪酸エステル等の非イオン性界面活性剤;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ジメチルポリシロキサン、タルク、ポリエチレングリコール、硬化油等の滑沢剤、着色剤、甘味剤等を配合することができる。内服固形製剤中の任意成分の配合量は、内服固形製剤の剤形等に応じて決定できる。
(製造方法)
本発明の内服固形製剤は、例えば、(A)成分、(B)成分及び(C)成分と、必要に応じて任意有効成分等とを粉体混合した粉体混合物、該粉体混合物に賦形剤や結合剤を加えて造粒した造粒物等、一般に粉体、顆粒、造粒物と呼ばれる粒状製剤を得る方法にて製造できる。粉体混合は、例えば、ボーレコンテナミキサー20L型(コトブキ技研工業株式会社製)等の混合容器、粉体混合ミキサー等、公知の粉体混合装置を用いて製造できる。また、造粒には、攪拌造粒装置、転動造粒装置等、公知の造粒装置を用いることができる。
さらに、上記の粒状製剤に、必要に応じて賦形剤、結合剤、崩壊剤等を加えて打錠成形することで、口腔内崩壊錠、チュアブル錠等、錠剤の内服固形製剤を製造できる。
本発明によれば、(A)成分及び(B)成分に加え(C)成分を配合することで、(A)成分と(B)成分との接触による(A)成分の変色を防止できる。従って、(A)成分又は(B)成分を被覆したり、内服固形製剤を積層製剤に成形する必要がなく、(C)成分を加えるという簡便な方法で、(A)成分の変色を抑制できる。
(A)成分は、(B)成分に含有されるアルミニウムと配合変化し、変色を生じるものと推測される。内服固形製剤に(C)成分を配合することによる(A)成分の変色抑制の機構は定かでないが、(C)成分により、(A)成分とアルミニウムとの配合変化を抑制しているものと推測される。
本発明について、実施例を示してさらに詳細に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
(使用原料)
各例に用いた原料は以下の通りである。
[(A)成分:アセトアミノフェン]
・アセトアミノフェン:顆粒、岩城製薬株式会社製
[(B)成分:アルミニウム系制酸剤]
・乾燥水酸化アルミニウムゲル:乾燥水酸化アルミニウムゲルS100(商品名)、協和化学工業株式会社製
・アルミニウムグリシネート(ジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート):協和化学株式会社製
[(B’)成分:(B)成分の比較品]
・メタケイ酸アルミン酸マグネシウム:ノイシリンUS2(商品名)、富士化学工業株式会社製
・酸化マグネシウム:富田製薬株式会社製
・炭酸マグネシウム:富田製薬株式会社製
[(C)成分:カルメロース]
・カルメロース:NS−300(商品名)、五徳薬品株式会社製
[(C’)成分:(C)成分の比較品]
・低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L−HPC):信越化学工業株式会社製
・クロスカルメロースナトリウム:キッコレート(商品名)、旭化成株式会社製
・カルボキシメチルスターチナトリウム:プリモジェル(商品名)、松谷化学工業株式会社製
・クロスポビドン:コリドンCL(商品名)、BASFジャパン株式会社製
[その他]
・ステアリン酸マグネシウム:太平化学産業株式会社製
・アスピリン:ローディアジャパン株式会社製
・イブプロフェン:BASFジャパン株式会社製
・エテンザミド:岩城製薬株式会社製
・無水カフェイン:株式会社静岡カフェイン工業所製
・アリルイソプロピルアセチル尿素:アリプロナール(商品名)、金剛化学株式会社製
(評価方法)
[変色抑制効果の評価方法]
各例の内服固形製剤について、次のように変色抑制効果を評価した。まず、保管開始時の内服固形製剤のb*値を分光測色計CM−2022(コニカミノルタセンシング株式会社製、測定条件:*L*a*b系)にて測定し、この値をb*値−Aとした。また、保管後の内服固形製剤のb*値を測定し、この値をb*値−Bとした。求めた各b*値から下記(1)式によりΔb*値を算出した。
Δb*値=[b*値−B]−[b*値−A] ・・・(1)
算出したΔb*値を下記基準により分類し、変色抑制効果を評価した。評価が「◎」又は「○」に分類されたものを変色抑制効果があると判断した。
◎:Δb*値が1.0未満(目視では、変色が認められない)
○:Δb*値が1.0以上2.5未満(目視で、わずかに変色が認められる)
×:Δb*値が2.5以上(目視で、明らかに変色が認められる)
(流動性の評価方法)
内服固形製剤の安息角(°)を指標にして流動性を評価した。安息角は、下記の方法により測定した。
まず、角度の目盛りが記入されたアクリル樹脂製測定器(高さ10cm×奥行き10cm×幅3cm)を水平な場所に置き、測定の横蓋を閉じた状態で、測定器の1〜2cm上部より各例の内服固形製剤を流し入れた。内服固形製剤が測定器上部を0〜1cm程度超え、山盛りの状態になった後、横蓋を静かに開け、内服固形製剤を自然排出させた。排出終了後に、測定器内に残った内服固形製剤の水平面との角度(°)を測定器側面の目盛りから読み取った。この操作を3回行い、値を平均して、安息角を求めた。求めた安息角を下記基準により分類し、流動性の評価とした。
評価が「◎」又は「○」に分類されたものを流動性がよいと判断した。
◎:安息角が45°未満
○:安息角が45°以上60°未満
×:安息角が60°以上
(実施例1〜11、比較例1〜12)
表1〜3の組成に従い、所定量の各原料をボーレコンテナミキサー(コトブキ技研工業株式会社製)で混合し、粉体の内服固形製剤6.5kgを得た。この内服固形製剤から100gを取り出しシャーレに入れ、50℃で2週間保管し、変色抑制効果及び流動性の評価を行った。その結果を表1〜3に示す。なお、表中、(B)成分に換えて(B’)成分を用いた例について、(B’)成分/(A)成分は、(B)成分/(A)成分として記載した。又、表中、(C)成分に換えて(C’)成分を用いた例について、(C’)成分/(A)成分は、(C)成分/(A)成分として記載した。
Figure 0005624754
Figure 0005624754
Figure 0005624754
表1〜2に示すとおり、(A)成分に(B)成分を配合し、さらに、(C)成分を配合した実施例1〜11には、変色抑制効果が認められた。一方、表2に示すとおり、カルメロースを配合しない比較例1、及び、(B)成分以外の制酸剤を配合した比較例2〜4には、顕著な外観変化(変色)が認められた。また、表2〜3に示すとおり、(C)成分に換えて(C’)成分を配合した比較例5〜8には、顕著な外観変化(変色)が認められた。
表1に示すとおり、(B)成分/(A)成分=0.05〜10とした実施例3〜7には、変色抑制効果が認められた。一方、表3に示すとおり、(B)成分/(A)成分=0.01とし、(C)成分を配合しなかった比較例9、(B)成分/(A)成分=20とし、(C)成分を配合しなかった比較例10には、変色が認められなかった。加えて、表2に示すとおり、(B)成分/(A)成分=0.3とし、(C)成分を配合しなかった比較例1には、顕著な外観変化(変色)が認められた。これらの結果から、(B)成分/(A)成分=0.05〜10の範囲において、(A)成分の変色が認められることが判った。
表1〜2に示すとおり、(C)成分/(A)成分=0.05〜2とした実施例8〜11には、変色抑制効果が認められた。一方、表3に示すとおり、(C)成分/(A)成分=0.01とした比較例11には、変色抑制効果が認められなかった。加えて、(C)成分/(A)成分=3とした比較例12では、変色抑制効果が認められたものの、粉体の流動性が極端に悪化するといった製造上の不具合が生じた。
以上の結果から、本発明を適用した粉体の内服固形製剤は、(A)成分の変色抑制効果に優れることが判った。
(実施例12〜14)
表4に示す組成に従い、各原料をボーレコンテナミキサーで混合し、混合粉体6.5kgを得た。得られた混合粉体をリブラ(株式会社菊水製作所製)にて、φ10.5mm、厚さ5.8mm、550mgの円盤状に成形し、錠剤の内服固形製剤を得た。この内服固形製剤から100gを取り出しシャーレに入れ、50℃で2週間保管し、変色抑制効果の評価を行った。その結果を表4に示す。
Figure 0005624754
表4に示すとおり、(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含有する実施例12〜14の錠剤には、いずれも変色抑制効果が認められた。
この結果から、本発明を適用した錠剤の内服固形製剤は、(A)成分の変色抑制効果に優れることが判った。

Claims (2)

  1. (A)成分:アセトアミノフェンと、(B)成分:アルミニウム系制酸剤と、(C)成分:カルメロースとを含有し、
    (B)成分/(A)成分で表される質量比が0.05〜10であり、(C)成分/(A)成分で表される質量比が0.05〜2であることを特徴とする内服固形製剤。
  2. 前記(B)成分は、乾燥水酸化アルミニウムゲル及びアルミニウムグリシネートから選ばれる1種以上であることを特徴とする、請求項1に記載の内服固形製剤。
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