JP5560104B2 - アスコルビン酸(塩)含有固形製剤 - Google Patents

アスコルビン酸(塩)含有固形製剤 Download PDF

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Description

本発明は、アスコルビン酸(塩)含有固形製剤に関する。
アスコルビン酸及び/又はその塩(アスコルビン酸(塩))は、医薬品、医薬部外品、食品、化粧品等に配合される汎用の原料である。一般に、アスコルビン酸(塩)は、高温高湿下で酸化して変色したり、他の配合成分との共存下で変色することが知られている。アスコルビン酸(塩)が変色すると、その商品価値が著しく低下することから、アスコルビン酸(塩)の変色抑制技術の開発が望まれてきた。
従来、アスコルビン酸(塩)と共に抗酸化剤を製剤に配合することで、アスコルビン酸(塩)の変色抑制を図る試みがなされてきた。
また、マイナスイオン水にビタミンC(アスコルビン酸)誘導体粉末を高濃度に溶解することで、ビタミンC誘導体の安定化が図られたビタミンC誘導体含有外用剤が提案されている(例えば、特許文献1)。
ところで、アスコルビン酸(塩)は、いわゆる風邪薬等、解熱鎮痛成分を含有する製剤に配合されることが多い。このような製剤には、解熱鎮痛成分による胃への負担を低減するために、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム等を対イオンとし、水溶液がアルカリ性を示す金属塩等の制酸剤が配合される(例えば、特許文献2)。アスコルビン酸(塩)は、制酸剤、特にアルミニウムやマグネシウムを含有する制酸剤の存在下において、著しく変色し、その商品価値の低下を来たすという問題がある。
特開2003−160428号公報 特開平6−56677号公報
しかしながら、特許文献1に記載の発明は、液体製剤中のアスコルビン酸(塩)の変性防止を目的としたものであり、固形製剤への適用ができない。また、製剤に抗酸化剤を配合する技術では、製剤のコストが高くなるという問題や、抗酸化剤によってはアスコルビン酸(塩)以外の成分と配合変化を起こすという問題が生じる場合もある。加えて、制酸剤を含有する製剤においては、抗酸化剤を配合してもアスコルビン酸(塩)の変色を抑制できないことが判明した。
そこで、本発明は、制酸剤を含有する固形製剤において、アスコルビン酸(塩)の変色を容易に抑制できるアスコルビン酸(塩)含有固形製剤を目的とする。
本発明のアスコルビン酸(塩)含有固形製剤は、(A)成分:アスコルビン酸及び/又はその塩と、(B)成分:アルミニウム及び/又はマグネシウムを含有する金属塩からなる制酸剤と、(C)成分:pKaが4.0以下の酸とを含有することを特徴とする。
前記(A)成分は、アスコルビン酸カルシウムであることが好ましく、前記(C)成分は、酒石酸、乳酸及びリン酸から選択される少なくとも1種であることが好ましく、前記(A)成分と前記(B)成分との質量比は、(A)成分/(B)成分=0.1〜10であることが好ましく、前記(B)成分と前記(C)成分との質量比は、(C)成分/(B)成分=0.01〜1であることが好ましく、粒剤又は錠剤であることが好ましい。
本発明によれば、制酸剤を含有する固形製剤において、アスコルビン酸(塩)の変色を容易に抑制できる。
(アスコルビン酸(塩)含有固形製剤)
本発明のアスコルビン酸(塩)含有固形製剤は、(A)成分:アスコルビン酸(塩)と、(B)成分:アルミニウム及び/又はマグネシウムを含有する金属塩からなる制酸剤と、(C)成分:pKaが4.0以下の酸とを含有するものである。
<(A)成分:アスコルビン酸及び/又はその塩>
(A)成分は、アスコルビン酸及び/又はその塩(アスコルビン酸(塩))である。
(A)成分は、特に限定されず、アスコルビン酸や、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カルシウム等のアスコルビン酸塩が挙げられ、中でもアスコルビン酸塩が好ましく、アスコルビン酸カルシウムがより好ましい。アスコルビン酸塩は、アスコルビン酸に比べ、(B)成分との共存下での変色の進行が遅いため、(C)成分の存在により相乗的に変色が抑制されるためである。
(A)成分の粒子径分布は、特に限定されないが、例えば、粒子径500μm以下の粒子が(A)成分中の90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上がより好ましい。上記範囲内であれば、(A)〜(C)成分の混合均一性に優れ、バインディング等の打錠障害を防止できる。
なお、粒子径分布は、下記の篩分けにより測定できる。まず、目開き850μm、710μm、500μm、355μm、250μm、150μm、100μmの篩を目開きの小さい篩から目開きの大きな篩の順に積み重ねる。最上部の目開き850μmの篩に試料100gを入れ、振動装置(M−2型、筒井理化学器械株式会社製)を用いて篩を5分間振動させる。その後、各篩上の試料の質量を測定して、粒子径分布を算出できる。
アスコルビン酸(塩)含有固形製剤中の(A)成分の含有量は、アスコルビン酸(塩)含有固形製剤の用途、経口投与量等に応じて決定でき、例えば、好ましくは1〜90質量%、より好ましくは3〜70質量%とされる。1質量%未満では、(A)成分の配合効果が発揮されにくい傾向となり、90質量%超では、他の配合成分、特に(C)成分との配合バランスが取れず、十分な変色抑制効果が発揮されにくい傾向となる。さらに、3〜70質量%であれば、アスコルビン酸(塩)含有固形製剤の変色を認識しやすく、本発明の効果が発揮されやすい。
<(B)成分:アルミニウム及び/又はマグネシウムを含有する金属塩からなる制酸剤>
(B)成分は、アルミニウム及び/又はマグネシウムを含有する金属塩からなる制酸剤である。(B)成分としては、例えば、第十五改正日本薬局方(広川書店)又は医薬品添加物事典2007(日本医薬品添加剤協会編集、株式会社薬事日報社)に収載の制酸剤の内、アルミニウム及び/又はマグネシウムを含有する金属塩からなるものをいずれか1種を単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。中でも、乾燥水酸化アルミニウムゲル、アルミニウムグリシネート、炭酸マグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ヒドロタルサイトが好ましく、乾燥水酸化アルミニウムゲルがより好ましい。このような(B)成分の存在下において、(A)成分の変色が促進されるため、本発明の効果が顕著に現れる。
(B)成分の粒子径分布は、(A)成分の粒子径分布を勘案して決定でき、例えば、粒子径500μm以下の粒子が(B)成分中の90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上がより好ましい。上記範囲内であれば、(A)〜(C)成分の混合均一性に優れ、バインディング等の打錠障害を防止できる。
アスコルビン酸(塩)含有固形製剤中の(B)成分の含有量は、アスコルビン酸(塩)含有固形製剤の用途、経口投与量等に応じて決定でき、例えば、1〜80質量%が好ましく、5〜60質量%がより好ましい。1質量%未満であると、制酸効果を得るために多量の製剤を必要とするため、利便性の面で好ましくない。80質量%超であると、他の成分、例えば、(A)成分や賦形剤の含有量が少なくなるため、製剤の機能としてのバランスが悪くなり、好ましくない。さらに、5〜60質量%であると、アスコルビン酸(塩)含有固形製剤の変色を認識しやすく、本発明の効果が発揮されやすい。
アスコルビン酸(塩)含有固形製剤中、(A)成分と(B)成分との質量比は、(A)成分/(B)成分=0.1〜10が好ましく、0.25〜5がより好ましく、0.4〜3.0がさらに好ましい。0.1未満であるとアスコルビン酸(塩)含有固形製剤中の(A)成分の含有量が少なすぎて、(A)成分の変色が認識されにくく、10超であると、そもそも(A)成分の変色が生じにくい。加えて、上記範囲内であれば、(A)成分及び(B)成分のそれぞれの効果が、十分に発揮できる。
<(C)成分:pKaが4.0以下の酸>
(C)成分は、pKa(酸解離定数)が4.0以下の酸である。(C)成分を含有することで、(B)成分の存在下においても、(A)成分の変色を抑制できる。
(C)成分のpKaは、3.0以下が好ましく、2.0以下がより好ましい。pKaが低いほど、(A)成分の変色抑制効果のさらなる向上が図れるためである。
(C)成分のpKaの下限値は、特に限定されないが、1以上が好ましい。
(C)成分は、pKaが4.0以下の酸であればよく、例えば、医薬品添加物事典2007に収載の酸の内、pKaが4.0以下の酸が挙げられ、中でも、乳酸(pKa=3.6)、酒石酸(pKa=2.9)、クエン酸(pKa=2.9)等の有機酸、リン酸(pKa=2.2)が好ましく、7.0以下のpKaが1つである乳酸、酒石酸、リン酸がより好ましく、リン酸がさらに好ましい。乳酸、酒石酸又はリン酸を含有することで、変色抑制効果をより向上できる。
上記の(C)成分は、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
本明細書及び特許請求の範囲において、pKaは、25℃におけるpKaであり、複数のpKa値を有する酸においては最も低い値のpKaである。例えば、リン酸は3価の酸でありpKa1、pKa2、pKa3を有する。本発明において、リン酸のpKaは、pKa1=2.2(25℃)を示すものとする。
pKaは、社団法人日本化学会編集の化学便覧基礎編 改訂3版(丸善株式会社出版)に収載された値(25℃の(C)成分の水溶液を測定した値)を示す。
また、pKaは、25℃において窒素置換された超純水を使用してイオン強度を0.1mol/Lとした水溶液を調製し、この水溶液を、COM−2500(平沼産業株式会社製)やAT−510(京都電子工業株式会社製)等の電位差滴定装置を用いた測定により求めることができる。
(C)成分の粒子径分布は、(C)成分の配合方法に応じて決定でき、例えば、(A)成分と(B)成分とに(C)成分を粉体混合する場合、(C)成分の粒子径分布は、粒子径500μm以下の粒子が(C)成分中の90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上がより好ましい。上記範囲内であれば、(A)〜(C)成分の混合均一性に優れ、バインディング等の打錠障害を防止できる。
また、例えば、(A)成分と(B)成分とに、(C)成分を含有する水溶液を混合する場合、(C)成分の粒子径分布は、水溶液の調製の効率を勘案して決定できる。
アスコルビン酸(塩)含有固形製剤中の(C)成分の含有量は、アスコルビン酸(塩)含有固形製剤の用途、(A)成分、(B)成分の含有量等に応じて決定でき、例えば、0.02〜45質量%が好ましく、0.2〜30質量%がより好ましい。0.02質量%未満であると、(A)成分の変色抑制効果が不十分になりやすく、45質量%超であると、他の成分、例えば、(A)成分や(B)成分の含有量が少なくなるため、製剤の機能としてのバランスが悪くなり、好ましくない。
アスコルビン酸(塩)含有固形製剤中、(B)成分と(C)成分との質量比は、(C)成分/(B)成分=0.01〜1が好ましく、0.1〜1がより好ましく、0.2〜1がさらに好ましい。0.01未満であるとアスコルビン酸(塩)の変色抑制効果が不十分となる傾向となり、1超であるとアスコルビン酸(塩)含有固形製剤が凝集しやすい傾向となる。
アスコルビン酸(塩)含有固形製剤中、(A)成分と(C)成分との質量比は、(A)成分/(C)成分=20〜100が好ましく、40〜80がより好ましい。20未満であると他の成分、例えば、(A)成分や(B)成分の含有量が少なくなり、製剤の機能としてのバランスが悪くなり、好ましくない。100超であると変色抑制に有効な(C)成分の含有比率が少なくなり、変色抑制効果が不十分となりやすい。
<任意成分>
本発明のアスコルビン酸(塩)含有固形製剤は、(A)成分の物性、保存安定性を損なわない範囲で、薬効成分や、結合剤、賦形剤、滑沢剤、香料、矯味剤(甘味料)、色素、安定化剤等の任意成分を含有してもよい。
薬効成分としては、例えば、解熱鎮痛消炎剤、抗ヒスタミン剤、抗アレルギー剤、鎮咳去痰剤等が挙げられる。より具体的には解熱鎮痛消炎剤としては、イブプロフェン、アセトアミノフェン、フェナセチン、メフェナム酸、ジクロフェナク、アスピリン、エテンザミド、サリチルアミド、サリチル酸、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、フェンブフェン、メピリゾール、インドメタシン、ロキソプロフェン等が挙げられる。抗ヒスタミン剤としては、シプロヘプタジン塩酸塩水和物、ジフェンヒドラミン、クレマスチンフマル酸塩、アゼラスチン塩酸塩、オキサトミド、メキタジン、エピナスチン塩酸塩、エバスチン、セチリジン塩酸塩、フェキソフェナジン塩酸塩、オロパタジン塩酸塩、ロラタジン等が挙げられる。鎮咳去痰剤としては、コデインリン酸塩、デキストロメトルファン臭化水素酸塩、ジメモルファンリン酸塩、チペピジンヒベンズ酸塩、メトキシフェナミン塩酸塩、トリメトキノール塩酸塩、カルボシステイン、アセチルシステイン、エチルシステイン、ブロムヘキシン塩酸塩、セラペプターゼ、塩化リゾチーム、アンブロキソール、テオフィリン、アミノフィリン等が挙げられる。これらの薬効成分は、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
結合剤としては、澱粉、α化デンプン、ショ糖、ゼラチン、アラビアゴム末、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、プルラン、デキストリン等が挙げられる。
賦形剤としては、乳糖、コーンスターチ、タルク、結晶セルロース(セオラス等)、粉糖、マンニトール、軽質無水ケイ酸、炭酸カルシウム、L−システイン、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、クロスカルメロースナトリウム等が挙げられる。
滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ポリエチレングリコール、タルク、ステアリン酸、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられる。
香料としては、メントール、リモネン、植物精油(ハッカ油、ミント油、ライチ油、オレンジ油、レモン油等)等が挙げられる。甘味料としては、サッカリンナトリウム、アスパルテーム、ステビア、グリチルリチン酸二カリウム、アセスルファムカリウム、ソーマチン、スクラロース等が挙げられる。
<剤形>
本発明のアスコルビン酸(塩)含有固形製剤の剤形は、特に限定されず、例えば、粒剤、錠剤又はカプセル剤であることが好ましく、粒剤又は錠剤であることがより好ましい。
粒剤としては、顆粒剤、散剤、細粒剤が挙げられ、特に顆粒剤が好ましい。
ここで、顆粒剤、散剤及び細粒剤は、それぞれ、第十五改正日本薬局方解説書に定義されたものである。粒度として、顆粒剤は、目開き1700μmの篩を全量通過し、1400μmの篩に残留するものが全量の5質量%以下であり、かつ目開き355μmの篩を通過するものは全量の15質量%以下のものである。散剤は、目開き850μmの篩を全量通過し、目開き500μmの篩に残留するものが全量の5質量%以下のものである。散剤の内、目開き75μmの篩を通過するものが全量の10質量%以下のものが、細粒剤と称することができる。
錠剤としては、単一の層からなる単層錠であってもよく、複数の層が積層された多層錠であってもよい。
本発明においては、特に、(A)成分と(B)成分と(C)成分とを同一層に含む錠剤であることが好ましい。(A)成分と(B)成分と(C)成分とを同一層に含む錠剤は製造が容易であり、崩壊性や成形性等の物性も良好となる。
本発明のアスコルビン酸(塩)含有固形製剤は、必要に応じてコーティング剤によりコーティング処理が施されていてもよい。かかるコーティング剤としては、本発明の目的を損なわない範囲で選択でき、水溶性高分子化合物、可塑剤が好ましい。
例えば、カルメロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース類;アラビアゴム、カルボキシビニルポリマー、ポビドン、クロスポビドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、単糖類、二糖類以上の多糖類(砂糖(グラニュー糖等)、乳糖、麦芽糖、キシロース、異性化乳糖等)、糖アルコール(パラチニット、ソルビトール、ラクチトール、エリスリトール、キシリトール、還元澱粉糖化物、マルチトール、マンニトール等)、水飴、異性化糖類、オリゴ糖、スクロース、トレハロース、還元澱粉糖化物(還元澱粉分解物)等が挙げられる。
可塑剤としては、クエン酸トリエチル、トリアセチン等、第十五改正日本薬局方及び医薬品添加物規格(株式会社薬事日報社)等の公定書に記載されているものが挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。コーティング剤の使用量は、錠剤全体に対して、例えば、0.5〜5質量%とされる。
(製造方法)
本発明のアスコルビン酸(塩)含有固形製剤の製造方法は、剤形に応じて、従来公知の製剤の製造方法を用いることができる。
粒状のアスコルビン酸(塩)含有固形製剤の製造方法としては、例えば、(A)成分と、(B)成分及び(C)成分の造粒粒子とを粉体混合する方法が挙げられる。
(B)成分及び(C)成分の造粒粒子の製造方法は、乾式造粒法、湿式造粒法のいずれを用いてもよく、湿式造粒法としては、例えば、(B)成分を流動させながら(C)成分を含有する水溶液を添加して造粒する方法や、(B)成分に、(C)成分を含有する水溶液を混合し、この混合物を破砕して造粒する方法が挙げられる。
(C)成分の添加方法は、例えば、(B)成分に対して(C)成分を含有する水溶液を噴霧又は滴下したり、予め(C)成分を含有する水溶液を賦形剤に含浸させ、この賦形剤を(B)成分に添加する方法が挙げられる。中でも、(A)成分の変色抑制、製造性の観点から、予め(C)成分を含有する水溶液を賦形剤に含浸することが好ましい。
(A)成分と、(B)成分及び(C)成分の造粒物の粉体混合は、例えば、ボーレミキサー、ダブルコーンミキサー、V型ミキサー、コンテナーブレンダー等の公知の混合機を用いて行うことができる。
あるいは、粒状の(A)〜(C)成分を単に粉体混合して、又は前記混合物を造粒して、粒状のアスコルビン酸(塩)含有固形製剤を得ることができる。また、例えば、(C)成分を含有する水溶液を賦形剤に含浸し、この賦形剤と、粒状の(A)成分及び(B)成分とを粉体混合して、アスコルビン酸(塩)含有固形製剤を得てもよい。
なお、(C)成分を含有する水溶液は、(C)成分を水に溶解したもののみならず、(C)成分の塩、例えば乳酸ナトリウム、酒石酸カリウム等の有機酸の金属塩を水に溶解したものを含む。
単層状の錠剤のアスコルビン酸(塩)含有固形製剤の製造方法としては、例えば、上述した方法により粒状のアスコルビン酸(塩)含有固形製剤を得、この粒状のアスコルビン酸(塩)含有固形製剤を、結合剤等と共に打錠するものが挙げられる。
打錠には、公知の打錠成型機、例えばLIBRA(製品名、株式会社菊水製作所製)、HP−AP−MS型(製品名、株式会社畑鐵工所製)等のロータリー式の打錠成型機等、を用いることができる。
錠剤の寸法は特に限定されず、(A)成分の含有量、経口投与量等を考慮して決定でき、例えば、錠剤の径として5〜14mmφが好ましく、7〜12mmφがより好ましい。
カプセル剤のアスコルビン酸(塩)含有固形製剤の製造方法は、例えば、上述した方法により粒状のアスコルビン酸(塩)含有固形製剤を得、この粒状のアスコルビン酸(塩)含有固形製剤を、任意のカプセル内に充填するものが挙げられる。
カプセルとしては、従来公知のカプセルが挙げられる。
カプセルへの粒状のアスコルビン酸(塩)含有固形製剤の充填方法としては、公知の方法が挙げられる。
(A)成分は、(B)成分との共存下において、変色が促進される。本発明によれば、(A)成分と(B)成分とに加え、(C)成分を含有することで、(A)成分と(B)成分との接触による(A)成分の変色を抑制できる。従って、(A)成分を被覆する等の煩雑な工程を経ることなく、(C)成分を共存させるという簡便な方法で、(A)成分の変色を抑制できる。
(A)成分は、(B)成分に含有される金属と配合変化し、変色を生じるものと推測される。アスコルビン酸(塩)含有固形製剤に(C)成分を配合することによる(A)成分の変色抑制の機構は定かでないが、(C)成分により、(A)成分と(B)成分中の金属との配合変化を抑制しているものと推測される。
また、(A)成分は、(B)成分のアルカリ作用により、変色が促進されると推測される。アスコルビン酸(塩)含有固形製剤は、(C)成分が配合されることにより、(B)成分のアルカリ作用が低減され、変色が抑制されると推測される。
加えて、本発明によれば、例えば、錠剤、カプセル剤の製造に当たり、(A)〜(C)成分を含有する粒剤を一次的に保管する際、この粒剤は、(C)成分を含有するため、(A)成分の変色を抑制できる。
本発明について、実施例を示してさらに詳細に説明する。ただし、本発明は実施例に限定されるものではない。
(使用原料)
<(A)成分:アスコルビン酸(塩)>
A−1:アスコルビン酸カルシウム(VCCa)、DSMニュートリションジャパン株式会社製
A−2:アスコルビン酸(VC)、DSMニュートリションジャパン株式会社製
A−3:アスコルビン酸ナトリウム(VCNa)、DSMニュートリションジャパン株式会社製
<(B)成分:金属塩からなる制酸剤>
B−1:乾燥水酸化アルミニウムゲル、協和化学工業株式会社製
B−2:アルミニウムグリシネート、協和化学工業株式会社製
B−3:炭酸マグネシウム、協和化学工業株式会社製
B−4:酸化マグネシウム、富田製薬株式会社製
<(B’)成分:(B)成分の比較品>
B’−1:炭酸水素ナトリウム、和光純薬工業株式会社製
B’−2:炭酸カルシウム、和光純薬工業株式会社製
B’−3:塩化マグネシウム(中性塩)、和光純薬工業株式会社製
B’−4:軽質無水ケイ酸、富士シリシア化学株式会社製
<(C)成分:pKaが4.0以下の酸>
C−1:乳酸(pKa=3.6)、昭和化工株式会社製
C−2:リン酸(pKa=2.2)、太平化学産業株式会社製
C−3:酒石酸(pKa=2.9)、昭和化工株式会社製
<(C’)成分:(C)成分の比較品>
C’−1:氷酢酸(pKa=4.7)、日本合成化学工業株式会社製
<任意成分>
低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L−HPC):信越化学工業株式会社製
ヒドロキシプロピルセルロース(HPC−SSL):日本曹達株式会社製
ステアリン酸マグネシウム:太平化学産業株式会社製
イブプロフェン:BASF社製
無水カフェイン:白鳥製薬株式会社製
ブロムへキシン塩酸塩:白鳥製薬株式会社製
クレマスチンフマル酸:ダイト株式会社製
コデインリン塩酸:大日本住友製薬株式会社製
エフェドリン塩酸塩:アルプス薬品工業株式会社製
クロスカルメロースナトリウム:旭化成株式会社製
乳糖:DSMニュートリションジャパン株式会社製
(実験例1〜12)
表1に示す組成に従い、各成分を粉体混合し、粒剤のアスコルビン酸(塩)含有固形製剤を得た。得られたアスコルビン酸(塩)含有固形製剤について、変色を評価し、制酸剤によるアスコルビン酸(塩)の変色の度合いを表に示す。
<変色の評価方法>
各例のアスコルビン酸(塩)含有固形製剤について、次の方法により制酸剤による変色を評価した。まず、保管開始時のアスコルビン酸(塩)含有固形製剤のb*値を分光測色計(コニカミノルタセンシング株式会社製、測定条件;*L*a*b系)にて測定し、この値をb*値−Aとした。次いで、各例のアスコルビン酸(塩)含有固形製剤20gをシャーレに入れ、40℃、75%RHの恒温室で3日間保管した。保管後のアスコルビン酸(塩)含有固形製剤のb*値を分光測色計で測定し、この値をb*値−Bとした。各b*値から、下記(1)式により経時Δb*値を算出した。
経時Δb*値=[b*値−B]−「b*値−A」 ・・・(1)
算出した経時Δb*値を下記評価基準に分類し、変色の度合いを評価した。経時Δb*値が高いほど、変色の度合いが高いといえる。
≪評価基準≫
◎:経時Δb*値が2以下(変色を視認できないレベル)
○:経時Δb*値が2超、6以下(わずかに変色したレベル)
△:経時Δb*値が6超、9以下(明らかに変色したレベル)
×:経時Δb*値が9超(著しく変色したレベル)
Figure 0005560104
表1に示す通り、(A)成分と(B)成分との混合物とした実験例1〜6は、いずれも、明らかな変色が見られた。一方、(B)成分に換えて、(B)成分と異なる金属塩の制酸剤や無機賦形剤である(B’)成分を配合した実験例7〜12は、明らかな変色が見られなかった。
(A)成分は、アルミニウム又はマグネシウムを含有する(B)成分との共存下で、変色が著しく促進されることが判った。
なお、(B)成分、(B’)成分は、単独での保管において、変色しないことを確認している。
(実施例1〜35、比較例1〜4)
表2〜4の組成に従い、各成分を粉体混合し、粒剤のアスコルビン酸(塩)含有固形製剤を得た。得られたアスコルビン酸(塩)含有固形製剤について、変色抑制効果を評価し、その結果を表に示す。
ただし、実施例35は、参考例である。
<変色抑制効果の評価方法>
各例のアスコルビン酸(塩)含有固形製剤について、次の方法により変色抑制効果を評価した。各例のアスコルビン酸(塩)含有固形製剤20gをシャーレに入れ、45℃、75%RHの恒温室で3日間保管した。保管後のアスコルビン酸(塩)含有固形製剤のb*値を分光測色計(コニカミノルタセンシング株式会社製、測定条件;*L*a*b系)にて測定し、この値をb*値−αとした。一方、各例のアスコルビン酸(塩)含有固形製剤を、(C)成分及び(C’)成分を除いて製造し、これを標品とした。標品20gをシャーレに入れ、40℃、75%RHの恒温室で3日間保管した。保管後のアスコルビン酸(塩)含有固形製剤のb*値を分光測色計で測定し、この値をb*値−βとした。各b*値から、下記(2)式により添加Δb*値を算出した。
添加Δb*値=[b*値−β]−「b*値−α」 ・・・(1)
算出した添加Δb*値を下記評価基準に分類し、変色抑制効果を評価した。添加Δb*値が大きいほど、変色抑制効果が高いといえる。
≪評価基準≫
◎:添加Δb*値が4.0以上
○:添加Δb*値が2.0以上、4.0未満
△:添加Δb*値が1.0以上、2.0未満
×:添加Δb*値が1.0未満
Figure 0005560104
Figure 0005560104
Figure 0005560104
表2〜4に示す通り、本発明を適用した実施例1〜35は、いずれも変色抑制効果の結果が「△」〜「◎」であった。一方、(C)成分を含有しない比較例1〜4は、いずれも変色抑制効果が「×」であった。
これらの結果から、アスコルビン酸(塩)含有固形製剤は、(C)成分を含有することで、(A)成分と(B)成分とが共存していても、(A)成分の変色を抑制できることが判った。
加えて、(A)成分/(B)成分の質量比を0.5〜2.5とした実施例27〜28は、(A)成分/(B)成分の質量比を0.5〜2.5の範囲外とした実施例25〜26、29〜30に比べて変色抑制効果の向上が見られた。
さらに、(C)成分/(B)成分の質量比を2.0とした実施例35は、変色抑制効果が「◎」であったものの、粒子同士が凝集し、ハンドリング性の低下が見られた。
(実施例36〜41)
<造粒工程>
(B)成分1200gとL−HPC300gを予め80℃の温水を通水(通水は内容物排出まで継続)した撹拌造粒機(深江工業株式会社製、ハイスピードミキサーFS.GS.10J型)に投入した。投入後、アジテーター300rpm、チョッパー1500rpmの条件で攪拌を開始し、3分間混合後、結合液(HPC−SSL:(C)成分:水=60:40:1100(質量比)の水溶液)を500g/分の流速で1200g添加した。その後、結合液添加時間も含め合計8分間攪拌操作を継続し、攪拌を停止した。さらに20分間造粒機内で静置し、15秒間アジテーター300rpm、チョッパー1500rpmの攪拌を行い、再度20分間造粒機内で静置した。静置後、造粒物(温度73℃)を攪拌造粒機から排出した。得られた造粒物を、予め吸気温度80℃で予熱し、排気温度が60℃となったスパイラフローSFC−5型(フロイント産業株式会社製)に投入し、吸気温度80℃、排気風量2.6m/分、ローター回転数200rpmの条件で乾燥操作を開始した。90分間乾燥操作を継続し、粒状乾燥物(温度71℃)を得た。該粒状乾燥物を、目開き850μmの篩を用いて篩分けし、篩を通過しなかった粒子を粉砕機(株式会社徳寿工作所製、フィオーレF−0型(スクリーンφ1.2mm、周波数20Hz))に投入し、粉砕した。得られた粉砕物と、目開き850μmの篩を通過した粒子とを混合して、(B)成分及び(C)成分を含む造粒粒子を得た。
<混合工程>
表1の組成に従い、合計量3500gとなるように各成分を測りとった。これらのうち、ステアリン酸マグネシウムを除く成分を混合機(寿工業株式会社製、ボーレコンテナミキサー20L LM−20型)に投入した。20rpmの条件で40分間混合した後、ステアリン酸マグネシウムを投入し、20rpmの条件で3分間混合して混合物を得た。
<打錠工程>
混合工程で得られた混合物を、直径9.0mm(2段R)の杵・臼を装着したロータリー式打錠機(株式会社菊水製作所製、LIBRA2)を用いて、ターンテーブル回転数30rpm、攪拌フィードシュー回転数60rpm、予圧2kN、本圧10kNの条件で打錠し、φ9.1mm、335mgの円柱状の錠剤を得た。得られた錠剤について、実施例1と同様にして変色抑制効果を評価した(変色抑制効果(3日後))。また、各例の錠剤及び標品の保管日数を30日とした以外は、実施例1と同様にして変色抑制効果を評価した(変色抑制効果(30日後))。その結果を表5に示す。なお、表5中の各成分の配合量は、錠剤1錠当たりの配合量(mg)を示す。
Figure 0005560104
表5に示す通り、本発明を適用した錠剤は、いずれも変色抑制効果(3日後)が「◎」であった。中でも、(C)成分としてリン酸を用いた実施例37、40は、変色抑制効果(30日後)が「◎」であった。これらの結果から、(C)成分としてリン酸を用いることで、変色抑制効果を長期に持続できることが判った。

Claims (4)

  1. (A)成分:アスコルビン酸及び/又はその塩と、
    (B)成分:アルミニウム及び/又はマグネシウムを含有する金属塩からなる制酸剤と、
    (C)成分:pKaが4.0以下の酸とを含有し、
    前記(A)成分と前記(B)成分との質量比は、(A)成分/(B)成分=0.1〜10であり、
    前記(B)成分と前記(C)成分との質量比は、(C)成分/(B)成分=0.01〜1であることを特徴とするアスコルビン酸(塩)含有固形製剤。
  2. 前記(A)成分は、アスコルビン酸カルシウムであることを特徴とする、請求項1に記載のアスコルビン酸(塩)含有固形製剤。
  3. 前記(C)成分は、酒石酸、乳酸及びリン酸から選択される少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のアスコルビン酸(塩)含有固形製剤。
  4. 粒剤又は錠剤であることを特徴とする、請求項1〜のいずれか1項に記載のアスコルビン酸(塩)含有固形製剤。
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