JP5623169B2 - 異形断面銅合金条の製造方法 - Google Patents
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Description
一般的には、粗圧延或いは仕上げ圧延工程では、一組のロールの一方を複数の大径部と小径部とが交互に並べられた段付きロールとし、他方を平ロールとして、これらロールの間に平板状銅合金材を送り込んで圧延することにより、大径部によって成形される薄肉部と小径部によって成形される厚肉部とを有する異形断面条が製造されている。
特許文献1に記載の技術では、複数個の大径部を同じ断面形状で並べた段付きロールとし、幅方向の最も両端位置に、中央部の厚肉部とその両側の薄肉部との間の傾斜面と同じ角度の傾斜面で薄肉部から連続する端部側厚肉部を形成することにより、この端部側厚肉部では材料の充満が不十分となるが、製品となる中央部の厚肉部では十分に材料を充満させることができるようにしている。
特許文献2に記載の技術では、ロールの幅方向の両端部に、材料のメタルフローを規制するために、端部側の厚肉部の断面積を中央部の厚肉部の断面積のほぼ1/2とする位置に、薄肉部形成用の凸条部(大径部)よりも高いメタルフロー規制用凸条部と、このメタルフロー規制用凸条部に対応する凹条部とを配置することにより、このメタルフロー規制用凸条部と凹条部との間では圧延が行われないようにして、材料の流れ込みが生じないようにしている。
特許文献3に記載の技術は、鋳塊から板厚方向に一定の厚さを有する平板を製造し、その平板を異形ロールにより冷間圧延して、板幅方向に厚さの異なる異形断面銅合金板を製造するに当たり、異形ロールによる冷間圧延の中間又は最終で一度も焼鈍を行わずに、高耐熱性を有し、かつ高導電性及び優れた曲げ加工性を有する異形断面銅合金板を得ており、薄肉部の冷間加工率は30〜90%である。Ni:0.03〜0.5質量%、P:0.01〜0.2質量%を含有し、NiとPとの質量比であるNi/Pが2〜10であり、残部銅及び不可避不純物からなる銅合金を用い、望ましくはSn:0.005〜0.5%又は/及びFe:0.005〜0.20%を含み、必要に応じてZn:0.005〜0.5%を含む。
特許文献2記載の技術も、メタルフロー規制用凸条部と凹条部とで成形した部分は、使用に供される部分ではないため、特許文献1記載の技術と同様に、材料ロスとなって歩留まりを低下させるとともに、メタルフローを生じさせないように成形することが難しく、また、二つのロールともが段付き形状となるため、設備費がかさむ問題も生じていた。
特許文献3記載の技術では、異形断面成形材時の焼鈍工程は省けるが、寸法精度に若干問題があり、仕上げ圧延工程を省くことは出来なかった。
特に、Fe;0.05〜0.15質量%、P;0.015〜0.050質量%およびZn;0.01〜0.20質量%、Ni;0.01〜0.50質量%を含有し、残部がCuおよび不可避的不純物からなる組成を有する銅合金材を使用することにより、仕上げ圧延工程を必要とせず、焼鈍工程も必要としない、厚み方向の寸法精度を±0.003mm以下に成形する異形断面銅合金条の製造方法を提供する。
また、Fe;0.05〜0.15質量%、P;0.015〜0.050質量%およびZn;0.01〜0.20質量%、Ni;0.01〜0.50質量%を含有し、残部がCuおよび不可避的不純物からなる組成を有する銅合金材に本発明の加工方法を適用することにより、異形断面条の厚み方向の寸法精度を±0.003mm以下に成形可能であることを見出した。この場合、銅合金材自体に耐熱性があるので、異形断面条に耐熱性を付与する為の焼鈍工程は当然不要となる。
T2が0.20×T未満であると、厚み方向の寸法精度が低下すると共にねじれ変形が起き、0.85×Tを超えると、メタルフローを抑制する効果が薄れて、角部にダレが起き易く、厚み方向の寸法精度が低下する。
角度θが60°を超えると、メタルフローを抑制する効果が薄れて角部のだれがおき易くなり、厚み方向の寸法精度も低下する。
特に、Tが0.5〜0.8mmの範囲内であると、異形断面条の厚み方向の寸法精度を±0.005mm以下にて成形可能となり、Tがこの範囲内を外れると、異形断面条の厚み方向の寸法精度が±0.008mm程度まで低下する傾向が見られる。
更に、異形断面条の厚み方向の寸法精度を±0.005mm以下にて成形可能となるので、寸法精度を上げる為の仕上げ圧延工程を省略することができる。
また、異形断面条の厚み方向の寸法精度を±0.003mm以下にて成形可能となるので、寸法精度を上げる為の仕上げ圧延工程を省略することができ、平板状銅合金材がNi;0.01〜0.050質量%を含有しているので耐熱性を有しており、異形断面条に耐熱性を付与する為の焼鈍工程も不要となる。
本実施形態では、図1に示す製造装置を使用することが好ましい。
この製造装置は、図1に示すように、段付きロール1と平ロール2とを備えている。段付きロール1は、半径R1とされた複数の大径部3と、半径R2とされた複数の小径部4とが幅方向に交互に並んだ形状とされ、平ロール2は、幅方向にわたって均一な半径R3とされることにより、外周面が凹凸のない平坦な円周面とされている。これら両ロール1,2は、その間に間隙を開けて両軸線P1,P2を平行にして配置され、図示略の駆動機構によって回転駆動される構成とされている。これら段付きロール1と平ロール2との間に平板状銅合金材5を通すことにより、段付きロール1の大径部3と小径部4とに対応して、薄肉部6と厚肉部7とが幅方向に並んだ異形断面条8が形成されるようになっている。
この場合、凸条部12は、段付きロール1の幅方向内方に位置する側縁部で平板状銅合金材5を押圧加工するようになっており、その部分の側面13は、半径方向内方に向かうにしたがって隣接する大径部3の側面11に近づくように、半径方向に対して所定の角度で傾斜した傾斜面とされ、この側面13と外周面との間の角度が90°よりも大きく形成されている。また、その傾斜面13と外周面との間は0.1〜0.2mmの曲率半径r2で面取り加工されている。
平板状銅合金材5は、銅を97.0質量%以上含有し、Fe、P、Mg、Zn、Si、Ni、Sn、Zr等の金属を少なくとも一種以上含み、他が不可避不純物である組成の厚さ0.6〜1.0mmの銅合金材を用途に応じて適宜選択することが好ましい。
具体的には、三菱伸銅(株)製の商品名OFC、TC、C151、TAMAC194、TAMAC4、TAMAC2、DC1B、ZC、MZC1等の銅合金条であり、強度と導電率のバランスの優れた、Cu−Fe−P系のTAMAC194、TAMAC4、TAMAC2、或いは、Cu−Zr系のZC、MZC1を適用するのが好ましい。
更に、Fe;0.05〜0.15質量%、P;0.015〜0.050質量%およびZn;0.01〜0.20質量%、Ni;0.01〜0.50質量%を含有し、残部がCuおよび不可避的不純物からなる組成を有する銅合金材を適用するのが特に好ましい。
一方、段付きロール1の両端部に位置する小径部4の部分(図2の左側半分の部分)では、その内側の大径部3の側面11によって材料が押圧されるので、凸条部12がなければ外側に材料が逃げてしまい、大径部3と小径部4との間に鎖線で示すような欠肉部Aが生じることになるが、凸条部12が平板状銅合金材5の端縁部を押圧することにより、図2に実線矢印で示したように、この凸条部12の外周面と平ロール2との間で材料が、小径部4と平ロール2との間に回り込むように流動し、また、凸条部12の内側の側面13は傾斜面であるので、この側面13が小径部4を介して隣接する大径部3に向けて材料を押圧する。
T2が0.20×T未満であると、厚み方向の寸法精度が低下すると共にねじれ変形が起き、0.85×Tを超えると、メタルフローを抑制する効果が薄れて、角部にダレが起き易く、厚み方向の寸法精度が低下する。
角度θが60°を超えると、メタルフローを抑制する効果が薄れて角部のだれがおき易くなり、厚み方向の寸法精度も低下する。
その結果を表3に示す。
例えば、上記実施形態では、凸条部12に、その側面13と外周面との間の角部を若干の曲率半径r2で面取りしたが、図7に示す段付きロール21の凸条部22のように、曲率半径r3をさらに大きくして、断面が凸円弧面となる側面23としてもよい。
要は、凸条部は、段付きロールの幅方向内方に向く側面が、その外周端から半径方向内方に向かうにしたがって隣接する大径部の側面に漸次近づく方向に傾斜している形状であればよく、平坦面、凸円弧面のいずれでもよい。
また、厚肉部と薄肉部との数や寸法等は図示例に限定されるものではなく、複数の厚肉部どうし、薄肉部どうしの厚さや幅をそれぞれ同じ寸法に設定してもよいし、それぞれ異なる寸法に設定したものとしてもよい。
2 平ロール
3 大径部
4 小径部
5 平板状銅合金材
6 薄肉部
7 厚肉部
7a 側面
8 異形断面銅合金条
11 側面(傾斜面)
12 凸条部
13 側面(傾斜面)
14 溝状部
21 段付きロール
22 凸条部
23 側面(傾斜面)
Claims (3)
- 複数の大径部と小径部とが交互に並んだ段付きロールと、該段付きロールと平行に配置した平ロールとの間で平板状銅合金材を圧延して、複数の厚肉部と薄肉部とが幅方向に並んだ異形断面銅合金条を製造する方法であって、前記段付きロールと平ロールとの間で前記平板状銅合金材を圧延するに際し、前記平板状銅合金材の幅方向の両端部に、前記段付きロールの小径部により厚肉部を形成しつつ、前記小径部から突出する凸条部により、前記厚肉部の端縁部の少なくとも一部を幅方向の内方に向けて押圧加工を施し、当該厚肉部の厚さTを0.5〜0.8mmとし、前記厚肉部の端縁部を押圧加工して形成される端縁溝部により残る厚さT1が、T1=0.3×T〜0.9×Tの範囲に設定され、前記厚肉部に隣接する前記薄肉部の厚さT2が、T2=0.20×T〜0.85×Tの範囲に設定され、前記端縁溝部を有する厚肉部の側面と半径方向に沿う垂線とのなす角度θが、θ=0〜60°の範囲に設定され、仕上げ圧延工程を必要とせず、厚み方向の寸法精度が±0.005mm以下であることを特徴とする異形断面銅合金条の製造方法。
- 前記平板状銅合金材が、Fe;0.05〜0.15質量%、P;0.015〜0.050質量%およびZn;0.01〜0.20質量%、Ni;0.01〜0.50質量%を含有し、残部がCuおよび不可避的不純物からなる組成を有することを特徴とする請求項1に記載の異形断面銅合金条の製造方法。
- 前記平板状銅合金材の製造原料の一部として、半導体用リードフレーム材等の製造時に発生する廃棄物から得られるNiめっき付き銅合金を使用することを特徴とする請求項2に記載の異形断面銅合金条の製造方法。
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