JP6621040B2 - 金属部品製造装置及び金属部品製造方法 - Google Patents
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近年、環境負荷の軽減から軽量化が求められるため高張力鋼(ハイテン材)、マグネシウム合金、チタン合金などの難加工材や新素材を加工した精密金属部品が求められている。このような難加工材、新素材は、常温では延性が乏しいため、帯状金属板及び金型の両方を加熱する温間鍛造加工が望ましい。このため、順送鍛造加工では、帯状金属板を局所加熱する方法が採用されている。
完全冷間鍛造加工は、素材表面には押し込みにより生じた加工素材の引け、いわゆるダレが大きく、裏面に発生するバリも大きい。特に、材料高張力鋼(ハイテン材)、マグネシウム合金、チタン合金などの難加工材の鍛造加工においては、顕著である。生じたダレやバリを除くための研削加工が必要であり、高精度精密部品の加工には適さない。
このため、加工温度を200℃〜400℃とする完全温間鍛造加工が行われている。完全温間鍛造は、材料高張力鋼(ハイテン材)、マグネシウム合金、チタン合金などの難加工材の鍛造加工に適するが、素材に加熱により素材表面に変色が生じ、脱色処理を行う必要がある。また、金型設計において加工素材の膨張を考慮する必要がある。さらに、順送鍛造加工においては、加工素材である帯状金属板を局所加熱するための設備も必要であり、生産コストが高くなる。
素材加熱鍛造加工は、金型設計において加工素材の膨張を考慮する必要があり、金型に加工素材の熱を奪われ、ダレやバリが低減しないという問題がある。
帯状金属板を加熱または保温する機構を備えず、かつ鍛造機構部の特定した成形金型のみに温度制御する機構を備える金型加熱鍛造加工を行うことで、帯状金属板の加熱・保温機構を設ける必要がなく、金型破損が生じにくく、かつ加工後のダレやバリによる研削加工も必要がないため加工コストが低い、順送鍛造加工が実現できるからである。
帯状金属板を温度制御する機構を備えず、かつ鍛造機構部の特定の成形金型のみに温度制御する機構を備える金型加熱鍛造加工を行うことで、帯状金属板の加熱・保温機構を設ける必要がなく、金型破損が生じにくく、かつ加工後のダレやバリによる研削加工も必要がないため加工コストが低い、順送鍛造加工が実現できるからである。また、成形金型の温度を200℃以上400℃以下にすることで、加工品のバリや金型の寿命低下を防ぐことができ、加工品の変色も生じないからである。
金型加熱鍛造加工では、帯状金属板の厚みが10mmを超えると金型加熱のみの加工効果がなくなり、加工品のバリや金型の寿命低下が生じるからである。
図2は、本願発明の順送鍛造加工装置の概略構成図である。本願発明の金属部品を製造するための順送鍛造加工装置は、帯状金属板(11)を所定方向に送り出す搬送機構(1)と、帯状金属板(11)の送り方向に沿って送りピッチと同じ間隔で配置された複数の金型(31,32)からなる鍛造機構部(3)からなる。また、必要に応じて、搬送機構(1)と鍛造機構部(3)の間にレベラーフィーダ(2)を設けることができる。鍛造機構部(3)に送りピッチと同じ間隔で配置された金型は、温度制御された温間鍛造金型(31)と温度非制御金型(32)で構成されている。図1では、温度制御された温間鍛造金型(31)と温度非制御金型(32)が交互に配置されているが、製造する金属部品により温度制御された温間鍛造金型(31)及び温度非制御金型(32)の配置、構成数は適宜選択することができる。温度制御された温間鍛造金型(31)は、後述する温度管理システムにより金型温度が200℃以上400℃以下に維持されている。
図3は、本願発明の順送鍛造加工装置の温度管理システムを示す模式図である。温度制御された温間鍛造金型(31)は、温度計測を行うことで金型の温度が200℃以上400℃以下に維持されている。温度制御された温間鍛造金型(31)の温度は、成形加工毎に温度測定値を温度センサ(33,34)により、リアルタイムに取り込み、温度制御プログラムで処理され、金型温度制御処置により温度制御される。温度制御プログラムは、事前に温度分布シミュレーションを実施して、温間鍛造金型(31)の加熱温度と帯状金属板(11)の温度差を求めた結果が入力されている。これにより帯状金属板(11)の温度制御された温間鍛造金型(31)における塑性変形温度が200℃以上400℃以下に維持される。
図4は、本願発明の順送鍛造加工装置の温度制御された温間鍛造金型(31)の断面構造を示す模式図である。本願発明の温度制御された温間鍛造金型(31)は上面金型と底面金型で構成され、上面金型(パンチ部)と底面金型(ダイス部)には、加熱ヒータ(35)が側面に配置され、加熱ヒータ(35)の側面及び底面には断熱プレート(36)が配置されている。また断熱プレートには水冷パイプ(図示せず)が付設され装置の過熱を防いでいる。また、上面金型(パンチ部)と底面金型(ダイス部)には温度センサ(33,34)が接続されて金型温度(以下、「金型保持温度」という。)がリアルタイムに測定される。
図6は、本願発明の順送鍛造加工装置における帯状金属板(11)の鍛造加工のプロセスの一部を例示的に示した平面図及び断面図である。搬送機構(図示せず)により逐次搬送され、型抜きされた帯状金属板(12)は、精密加工プロセス(工程1〜工程4)により、成形される。工程1は常温で行う穴開け加工であり、工程2は温間鍛造(200℃以上400℃以下)で行う成形加工であり、工程3は温間鍛造(200℃以上400℃以下)で行う仕上成形加工であり、工程4は常温で行う穴開け加工である。精密成型加工を本願発明の金型加熱鍛造加工とすることで、帯状金属板(11)から高精度金属部品を成形することができる。
帯状金属板(11)を加熱または保温をすることを必要としないため加工コストが低く、金型破損が少なく設備維持費が低く、加工後のダレ込みが少ないため、加工品の検査コストが低く、加工後の研削加工を必要としないため加工コストも低い順送鍛造加工装置及び順送鍛造加工方法を提供することができる。
本願発明に用いることができる帯状金属板の素材は、特に限定されるものではない。具体的には、軟鋼、炭素鋼、合金鋼、ステンレス鋼、軸受鋼などの鋼材、アルミニウムにマグネシウム、マンガン、シリカ、銅、ニッケル等の合金成分を加えたアルミニウム合金を好適に用いることができる。
本願発明に用いることができる帯状金属板の素材の厚みは、素材の種類によるが、帯状金属板自体を加熱しないことから、10mm以下、より好ましくは6mm以下である。
自動車用バルブプレートを金型加熱鍛造(実施例1)、完全冷間鍛造(比較例1)、完全温間鍛造(比較例2)として製作を行った。
加工金属素材としてフェライト系ステンレス鋼(SUS430)の帯状材(w30.0mm,t5.8mm)を搬送機構により送り出し、図6に示すように送り出しピッチと等間隔に並んだ複数の金型で鍛造加工を行った。成形(工程2)、仕上成形(工程2)を金型保持温度280℃として、金型加熱鍛造加工を行った。ダレ量は、0.010mmであった。また、加工品表面に変色は認められなかった。ワンショット3D測定機(キーエンス社製 VR−3000)により測定した加工品の表面形状とダレ量を図7に示す。
加工金属素材としてフェライト系ステンレス鋼(SUS430)の帯状材(w30.0mm,t5.8mm)を搬送機構により送り出し、図6に示すように送り出しピッチと等間隔に並んだ複数の金型で鍛造加工を行った。成形(工程2)、仕上成形(工程2)を金型保持温度25℃として、完全冷間鍛造加工を行った。ダレ量は、0.215mmであった。また、加工品表面に変色は認められなかった。ワンショット3D測定機(キーエンス社製 VR−3000)により測定した加工品の表面形状とダレ量を図8に示す。
加工金属素材としてフェライト系ステンレス鋼(SUS430)の帯状材(w30.0mm,t5.8mm)を搬送機構により送り出し、図6に示すように送り出しピッチと等間隔に並んだ複数の金型で鍛造加工を行った。成形(工程2)、仕上成形(工程2)を金型保持温度280℃として、また、工程2の直前に帯状材を一時停止して300℃に加熱して、完全冷間鍛造加工を行った。ダレ量は、0.011mmであった。加工品表面に赤さび色に変色した(図示せず)。
11 帯状金属板
12 型抜きされた帯状金属板
2 レベラーフィーダ
3 鍛造機構部
31 温度制御された温間鍛造金型
32 温度非制御金型
33 温度センサ(パンチ)
34 温度センサ(ダイス)
35 加熱ヒータ
36 断熱プレート
Claims (5)
- 帯状金属板を所定方向に送り出す搬送機構と、前記帯状金属板の送り方向に沿って送りピッチと同じ間隔で配置された複数の金型からなる鍛造機構部とを備える金属部品の順送鍛造加工装置であって、前記帯状金属板を加熱または保温する機構を備えず、かつ前記鍛造機構部の特定した成形金型のみに温度制御する機構を備える成形金型のみを加熱する金属部品の順送鍛造加工装置。
- 前記帯状金属板の厚みが10mm以下であることを特徴とする請求項1に記載した成形金型のみを加熱する金属部品の順送鍛造加工装置。
- 前記温度制御された成形金型の温度が200℃以上400℃以下であることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載した成形金型のみを加熱する金属部品の順送鍛造加工装置。
- 帯状金属板を所定方向に送り出す搬送工程と、送りピッチと同じ間隔で配置された複数の金型により前記帯状金属板を鍛造加工する鍛造工程と、からなる金属部品の順送鍛造加工方法であって、前記帯状金属板を鍛造加工する鍛造工程において、前記帯状金属板を加熱または保温することなく、前記送りピッチと同じ間隔で配置された複数の成形金型の少なくとも1つを、金型温度を200℃以上400℃以下に維持することを特徴とする成形金型のみを加熱する金属部品の順送鍛造加工方法。
- 前記帯状金属板の厚みが10mm以下であることを特徴とする請求項4に記載した成形金型のみを加熱する金属部品の順送鍛造加工方法。
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