JP6593820B1 - 温度制御された温間シェービング加工法及び装置 - Google Patents
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Abstract
Description
炉内温度差を5℃以内に温度制御された加熱炉で、高硬度鋼材の表層のみを450℃〜550℃に加熱処理する表層加熱処理により、寸法精度を確保するために行うシェービング加工に必要な加工取り代を考慮した高硬度鋼材の表層のみを450℃〜550℃にすることになる。これにより、シェービング金型による材料の引き込まれにより生ずるダレ量を少なくすることができ、また加工に必要な加工取り代も少なくできるという効果がある。
ここで、本願発明の表層とは、シェービング加工に必要な加工取り代に近似する高硬度鋼材の表層厚みをいい、具体的には、0.5mm以下、好ましくは、0.1〜0.2mmである。
表面硬度が180HV未満の冷間鍛造用鋼材は、プレス加工することにより、表面硬度を180HV〜320HVにすることができるからである。このような処理をした冷間鍛造用鋼材も、本発明の高硬度鋼材として採用することができる。
自動車部品として使用される各種歯車等の精密機械部品の寸法精度を確保するためのシェービング加工は、炉内温度差を5℃以内に温度制御できる温度制御機構及び被加工鋼材を載置できる搬送機構(例、搬送チェーン)を備え、前記被加工鋼材の表層温度のみを450℃〜550℃に加熱処理できる加熱炉と、温度変動が20℃以下に温度制御されたシェービング金型からなる加工部と、を備える鋼材端面のシェービング加工装置により実現できるからである。加熱炉内壁に設けた側面ヒータ及び被加工鋼材を加熱炉に搬入し搬出する側に設けたカートリッジ式加熱ヒータからなる熱源、並びに側面ヒータ及びカートリッジ式加熱ヒータを温度制御する加熱炉温度制御装置により、炉内温度差を5℃以内に温度制御できる。
図1に示すように、本願発明の加工方法は、表面硬度が180HV〜320HVの高硬度鋼材の表層を450℃〜550℃に加熱処理する表層加熱処理工程と、前記表層加熱処理された高硬度鋼を温度変動が20℃以下に温度制御された金型を用いて200℃〜300℃でシェービング加工するシェービング加工工程、からなる高硬度鋼材の温間シェービング加工方法である。なお、被成形鋼材の表面硬度が180HV以下である場合は、前記被成形鋼材に事前プレス処理を行って、被成形鋼材の表面硬度を180HV〜320HVとする。
以下、本発明の温度制御された加熱炉及び温度制御されたシェービング金型について説明する。
本願発明は、炉内温度差を5℃以内に温度制御された加熱炉により、高硬度鋼の表層を450℃〜550℃に加熱処理することを特徴とする。
図2は、本願発明の温度制御された加熱炉(1)の構造を示す平面図である。加熱炉(1)は、温度変動を抑えるため、保温プレート(11)が内貼されている。被加工鋼材(図示せず)は、搬送チェーン(13)に装着された搬送冶具に載置する。搬送冶具に載置された被加工鋼材は、搬送チェーン駆動装置(12)により加熱炉(1)内を矢印の順で搬送されて加熱処理される。また、炉内温度は、炉内の四隅と中央にも置けた温度センサ(15)によって、計測されている。温度センサ(15)は天板から差し入れている。
また、被加工鋼材の表層を450℃〜550℃に加熱処理するために必要な処理条件(炉内温度、被加工鋼材の炉内滞留時間)は、被加工鋼材について、事前に温度分布シミュレーションを実施した結果を反映して、加熱炉温度制御装置に入力されている。
図6は、本願発明の温度制御されたシェービング金型の断面構造を示す模式図である。本願発明の温度制御されたシェービング金型(2)は上面金型と底面金型で構成され、上面金型(パンチ部)と底面金型(ダイス部)には、カートリッジ式加熱ヒータ(21)が側面に配置され、カートリッジ式加熱ヒータ(21)の側面及び底面には保温プレート(22)が配置されている。また保温プレートには水冷パイプを循環させた冷却プレート(図示せず)が付設され装置の過熱を防いでいる。プレス可動部の温度上昇は、熱膨張による寸法精度の悪化、機構部の故障の原因となるからである。また、上面金型(パンチ部)と底面金型(ダイス部)には温度センサ(23)が接続されて金型温度がリアルタイムに測定される。これにより、金型温度の変動が20℃以下に保持される。この温度制御されたシェービング金型(2)より、被加工鋼材(24)がシェービンング処理される。
金型温度を200℃〜300℃としてシェービング加工するのは、被加工鋼材の表層温度(450℃〜550℃)より、250℃温度を低くすることにより、シェービング加工精度が保たれるからである
<実施例1>
(1)厚板ギア形状の製作
(1−1)事前プレス加工
加工金属素材としてクロムモリブデン鋼(SCM415)の厚板材(板厚11mm)を加熱炉で450℃に加熱した後、金型温度250℃として、平つぶし温間鍛造加工(事前プレス加工)を行い、厚板材(板厚6mm)を得た。得られた厚板材の表面硬度(ビッカース硬さ(HV0.2))をマイクロビッカース硬さ試験機(ミツトヨ製 HM220D)により測定した。ビッカース硬さ(HV0.2)は、230であった。
(1−2)表層加熱処理
次いで、得られた厚板材(板厚6mm)を、炉内温度差を5℃以内に温度制御された加熱炉で、炉内温度470℃、加熱時間10分加熱処理を行った。
(1−3)シェービング処理
次いで、表層加熱処理された厚板材(板厚6mm)を、温度変動が20℃以下に温度制御されたシェービング金型を用いて、金型温度300℃でシェービング加工し、「実施例1品」を得た。取り代は0.2mmであった。
(2)加工品評価
「実施例1品」のギア形状エッジ部(図9)のダレ量は、0.023mmであった。またシェービング加工面の表面粗さ(Ra)は、0.02であり、破断形態は認められなかった。
(1)厚板ギア形状の製作
表層加熱処理の加熱時間を40分とした以外は、実施例1と同様にして、「比較例1−1品」を得た。
(2)加工品評価
「比較例1−1品」のギア形状エッジ部(図9)のダレ量は、0.061mmであった。またシェービング加工面の表面粗さ(Ra)は、0.02であり、破断形態は認められなかった。
(1)厚板ギア形状の製作
(1−1)事前プレス加工
加工金属素材としてクロムモリブデン鋼(SCM415)の厚板材(板厚5mm)について、事前プレス加工を行わなかった。厚板材の表面硬度(ビッカース硬さ(HV0.2))をマイクロビッカース硬さ試験機(ミツトヨ製 HM220D)により測定した。ビッカース硬さ(HV0.2)は、150であった。
(1−2)表層加熱処理
炉内温度差を5℃以内に温度制御された加熱炉で、炉内温度450℃、加熱時間20分加熱処理を行った。
(1−3)シェービング処理
加熱処理を行った厚板材(板厚5mm)を、温度変動が20℃以下に温度制御されたシェービング金型を用いて、金型温度300℃でシェービング加工し、「比較例1−2品」を得た。取り代は0.3mmであった。
(2)加工品評価
「比較例1−2品」のギア形状エッジ部(図9)のダレ量は、1.066mmであった。またシェービング加工面の表面粗さ(Ra)は、0.02であり、破断形態は認められなかった。
(1)厚板ギア形状の製作
(1−1)事前プレス加工
加工金属素材としてクロムモリブデン鋼(SCM415)の厚板材(板厚5.5mm)を加熱炉で450℃に加熱した後、金型温度250℃として、平つぶし温間鍛造加工(事前プレス加工)を行い、厚板材(板厚5mm)を得た。得られた厚板材の表面硬度(ビッカース硬さ(HV0.2))をマイクロビッカース硬さ試験機(ミツトヨ製 HM220D)により測定した。ビッカース硬さ(HV0.2)は、200であった。
(1−2)表層加熱処理
表層加熱処理は行わなかった。
(1−3)シェービング処理
厚板材(板厚5mm)を、温度変動が20℃以下に温度制御されたシェービング金型の加熱機能、温度制御機能を停止して、金型温度25℃(常温)でシェービング加工し、「比較例1−3品」を得た。取り代は0.3mmであった。
(2)加工品評価
「比較例1−3品」のシェービング加工面の表面粗さ(Ra)は、0.20であった。
(a)炉内温度が同一(470℃)であっても、加熱処理時間が多くなると、表層のみの加熱とならず、同一条件でシェービング処理を行っても、ダレ量が増加する(実施例1vs比較例1−1)。
(b)加工素材の表面硬度がHV180以下であると、表層加熱処理を行っても、ダレ量が増加する(実施例1vs比較例1−2)。
(c)加工素材の表面硬度がHV180以上であっても、表層加熱処理を行わず、かつ冷間シェービング処理であると、表面粗さが大きくなる(実施例1vs比較例1−3)。
(1)厚板ギア形状の製作
(1−1)事前プレス加工
加工金属素材としてクロムモリブデン鋼(SCM435)の厚板材(板厚15mm)を加熱炉で450℃に加熱した後、金型温度250℃として、平つぶし温間鍛造加工(事前プレス加工)を行い、厚板材(板厚10mm)を得た。得られた厚板材の表面硬度(ビッカース硬さ(HV0.2))をマイクロビッカース硬さ試験機(ミツトヨ製 HM220D)により測定した。ビッカース硬さ(HV0.2)は、300であった。
(1−2)表層加熱処理
次いで、得られた厚板材(板厚10mm)を、炉内温度差を5℃以内に温度制御された加熱炉で、炉内温度500℃、加熱時間30分加熱処理を行った。
(1−3)シェービング処理
次いで、表層加熱処理された厚板材(板厚10mm)を、温度変動が20℃以下に温度制御されたシェービング金型を用いて、金型温度250℃でシェービング加工し、「実施例2品」を得た。取り代は0.1mmであった。
(2)加工品評価
「実施例2品」のシェービング加工面の表面粗さ(Ra)は、0.02であり、破断形態は認められなかった。
実施例2で製作した厚板材(板厚10mm)について、表層加熱処理を行わず、温度変動が20℃以下に温度制御されたシェービング金型の加熱機能、温度制御機能を停止して、金型温度25℃(常温)でシェービング加工し、「比較例2品」を得た。取り代は0.1mmであった。
(2)加工品評価
「比較例2品」のシェービング加工面は、図10に示す通り破断生じ、表面粗さ(Ra)は、測定できなかった。
加工素材の表面硬度がHV180以上であっても、表層加熱処理を行わず、かつ冷間シェービング処理であると、シェービング加工面の表面粗さが大きくなり、破断も生じる(実施例2vs比較例2)。
(1)厚板ギア形状の製作
(1−1)表層加熱処理
加工金属素材として熱間圧延軟鋼板(SPHC)の厚板材(板厚5mm)を、炉内温度差を5℃以内に温度制御された加熱炉で、炉内温度500℃、加熱時間30分加熱処理を行った。
(1−3)シェービング処理
次いで、表層加熱処理された厚板材(板厚5mm)を、温度変動が20℃以下に温度制御されたシェービング金型を用いて、金型温度300℃でシェービング加工し、「実施例3品」を得た。取り代は0.4mmであった。
(2)加工品評価
「実施例3品」のシェービング加工面の端面精度(上下差)は、0.004であり、破断形態は認められなかった。
加工金属素材として熱間圧延軟鋼板(SPHC)の厚板材(板厚5mm)を、表層加熱処理を行わず、温度変動が20℃以下に温度制御されたシェービング金型の加熱機能、温度制御機能を停止して、金型温度25℃(常温)でシェービング加工し、「比較例3品」を得た。取り代は0.4mmであった。
(2)加工品評価
「比較例3品」のシェービング加工面の端面精度(上下差)は、0.013であり、破断形態は認められなかった。
加工素材の表面硬度がHV180以上であっても、表層加熱処理を行わず、かつ冷間シェービング処理であると、シェービング加工面の端面精度が悪くなる(実施例3vs比較例3)。
11 保温プレート
12 搬送チェーン駆動装置
13 搬送チェーン
14 カートリッジ式加熱ヒータ
15 温度センサ
16 チェーン搬送路
17 搬送冶具
18 側面ヒータ
2 シェービング金型
21 カートリッジ式加熱ヒータ
22 保温プレート
23 温度センサ
24 被加工鋼材
Claims (4)
- 表面硬度が180HV〜320HVの高硬度鋼材の温間シェービング加工法であって、炉内温度差を5℃以内に温度制御できる温度制御機構及び被加工鋼材を載置できる搬送機構を備える加熱炉で前記高硬度鋼材の表層のみを450℃〜550℃に加熱処理する表層加熱処理工程と、前記表層加熱処理された高硬度鋼材を温度変動が20℃以下に温度制御された金型を用いて200℃〜300℃でシェービング加工するシェービング加工工程、からなる高硬度鋼材の温間シェービング加工方法。
- 前記表面硬度が180HV〜320HVの高硬度鋼材が、冷間鍛造用鋼材を直前にプレス加工したものであることを特徴とする請求項1に記載した高硬度鋼材の温間シェービング加工方法。
- 炉内温度差を5℃以内に温度制御できる温度制御機構及び被加工鋼材を載置できる搬送機構を備え、前記被加工鋼材の表層温度のみを450℃〜550℃に加熱処理できる加熱炉と、温度変動が20℃以下に温度制御されたシェービング金型からなる加工部と、を備える鋼材端面のシェービング加工装置。
- 前記被加工鋼材が表面硬度180HV〜320HVの高硬度鋼材であることを特徴とする請求項3に記載した鋼材端面のシェービング加工装置。
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