JP2017164755A - プレス成形品の製造方法およびプレス成形品 - Google Patents
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Abstract
【課題】ステンレス鋼等の硬度の高い金属に冷間鍛造加工によって薄膜部を形成することが可能なプレス成形品の製造方法と、ステンレス鋼等の硬度の高い金属に薄膜部が形成されたプレス成形品を提供する。
【解決手段】
本発明に係るプレス成形品の製造方法は、一端に設けられた開口部と、前記開口部から他端に向かって延びる凹部と、を有するプレス成形品の製造方法であって、
被加工材の一端をプレスして前記凹部の一部分を構成する第1の凹部を形成する第1の冷間鍛造工程と、
前記第1の凹部の底面をプレスして前記凹部の残りの部分を構成する第2の凹部を形成する第2の冷間鍛造工程と、を有し、
前記第2の凹部の底面と前記被加工材の前記他端とで構成された薄膜部を形成することを特徴とする。
【選択図】図1
【解決手段】
本発明に係るプレス成形品の製造方法は、一端に設けられた開口部と、前記開口部から他端に向かって延びる凹部と、を有するプレス成形品の製造方法であって、
被加工材の一端をプレスして前記凹部の一部分を構成する第1の凹部を形成する第1の冷間鍛造工程と、
前記第1の凹部の底面をプレスして前記凹部の残りの部分を構成する第2の凹部を形成する第2の冷間鍛造工程と、を有し、
前記第2の凹部の底面と前記被加工材の前記他端とで構成された薄膜部を形成することを特徴とする。
【選択図】図1
Description
本発明は、プレス成形品の製造方法およびプレス成形品に関し、特に薄膜部を有するステンレス鋼製の部品を冷間鍛造によって製造する方法と、薄膜部が形成されたステンレス鋼製のプレス成形品に関する。
一般に、ステンレス鋼等の硬度の高い金属部品は、主に切削加工、放電加工、熱間鍛造加工またはこれらを組み合わせた加工法によって製造されている。特許文献1には、ステンレスなどの金属を材質とするダイヤフラムを含む圧力センサの加工方法として、切削や放電加工、あるいはプレス加工が開示されている。
上述した従来の切削加工または放電加工においては、材料取り(材料の利用効率)が悪く、製作時間も多くなる。また、熱間鍛造加工では高い温度(1000℃前後)が必要となり、製造コストが高くなる。プレス加工(冷間鍛造加工を含む。)は切削加工等よりも材料取りが良く、高い温度をかける必要は無いが、硬度の高い金属を一度のプレスで加工しようとすると成形圧力を高くせざるを得ない。特に、ステンレス鋼などの硬度の高い材料に圧力センサのダイヤフラムのような薄膜部を一度の加工で成形するためには成形圧力を高くしなければならないが、成形圧力を高くすると被加工材をプレスするパンチの強度がもたず、加工することができなくなる。成形圧力を低く抑えるためには被加工材の焼鈍等の前処理工程が有効であるが、工程数を増やす分、製造コストが高くなる問題があった。また、1回のプレスで形成する場合、直角段差部を有するパンチを使用しなければならないが、その直角段差部によって被加工材へ負担がかかり、また、パンチの直角段差部に応力が集中し、パンチが破損しやすくなる。さらに、被加工材は塑性流動しやすい前方への流動が増えるので、被加工材がせん断しやすくなり、クラックを生じやすいという課題があった。
本発明の目的は、上記事情に鑑み、ステンレス鋼等の硬度の高い金属に冷間鍛造加工によって薄膜部を形成することが可能なプレス成形品の製造方法と、ステンレス鋼等の硬度の高い金属に薄膜部が形成されたプレス成形品を提供することにある。
本発明は、上記目的を達成するため、一端に設けられた開口部と、該開口部から他端に向かって延びる凹部と、を有するプレス成形品の製造方法であって、被加工材の一端をプレスして上記凹部の一部分を構成する第1の凹部を形成する第1の冷間鍛造工程と、上記第1の凹部の底面をプレスして上記凹部の残りの部分を構成する第2の凹部を形成する第2の冷間鍛造工程と、を有し、第2の凹部の底面と被加工材の他端とで構成された薄膜部を形成することを特徴とするプレス成形品の製造方法を提供する。
本発明によれば、ステンレス鋼等の硬度の高い金属に冷間鍛造加工によって薄膜部を形成することが可能なプレス成形品の製造方法と、ステンレス鋼等の硬度の高い金属に薄膜部が形成されたプレス成形品を提供することができる。
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
以下、本発明に係るプレス成形品の製造方法について詳細に説明する。
(1)プレス成形品の製造方法
図1は本発明に係るプレス成形品の製造方法を用いて製造されたプレス成形品の一例を示す断面模式図である。図1に示すように、プレス成形品100は、被加工材1の一端2に開口部3を有し、他端2´に向かって延びる凹部4を有する。凹部4は、第1の冷間鍛造工程によって加工された第1の凹部40と、第2の冷間鍛造工程によって加工された第2の凹部41を含む。そして、第2の凹部41の底面と被加工材1の他端2´とで構成された薄膜部16(図1の斜線部分であり、Ttの厚さを有する。)を有する。
図1は本発明に係るプレス成形品の製造方法を用いて製造されたプレス成形品の一例を示す断面模式図である。図1に示すように、プレス成形品100は、被加工材1の一端2に開口部3を有し、他端2´に向かって延びる凹部4を有する。凹部4は、第1の冷間鍛造工程によって加工された第1の凹部40と、第2の冷間鍛造工程によって加工された第2の凹部41を含む。そして、第2の凹部41の底面と被加工材1の他端2´とで構成された薄膜部16(図1の斜線部分であり、Ttの厚さを有する。)を有する。
本発明に係るプレス成形品の製造方法は、薄膜部16を形成するために冷間鍛造工程を2回(第1の冷間鍛造工程および第2の冷間鍛造工程)に分けている点に特徴がある。このように冷間鍛造工程を2回に分けることで、それぞれの冷間鍛造工程における成形圧力を1回の冷間鍛造工程で形成する場合よりも低くすることができ、パンチを破損させることなく薄膜部を形成することができる。また、冷間鍛造加工は切削加工と比較して材料取りがよく、製造時間を短縮することができる。さらに、冷間鍛造加工は熱間鍛造のように加工温度を高くする必要が無く、本発明に係る製造方法によれば、鍛造加工するための前処理工程も必要無い。以上より、本発明によれば、従来の製造方法と比較して製造コストの大幅な低減が望める。
従来、ステンレス鋼(特に、高度の高い析出硬化系ステンレス鋼)を冷間鍛造加工して薄膜部等の微細な構造を有する製品を製造(量産)することは発想されなかったことである。本発明は、冷間鍛造工程を2回に分けることでステンレス鋼への薄膜部形成を実現可能であることを見出してなされたものである。
図2(a)〜図2(n)は、それぞれ本発明に係るプレス成形品の製造方法の一工程を示す断面模式図である。以下、図2(a)〜図2(n)を用いて本発明に係る製造方法の各工程について説明する。
まず始めに、被加工材1を準備する(図2(a))。被加工材1の材料については、後述する冷間鍛造工程を実施することが可能な材料であれば特に限定は無いが、ステンレス鋼、特に硬度の高い析出硬化系ステンレス鋼(SUS630(JIS(Japanese Industrial Standards)に基づくステンレス鋼の規格の記号である。)等)を好ましく用いることができる。本発明によれば、このような硬度の高い材料に対しても冷間鍛造加工によって薄膜部を形成することができる。
図2(b)に示すように、上記した被加工材1をダイ(金型)5およびカウンタパンチ7の間に設置し、パンチ6を図の矢印方向に駆動させて被加工材1に押し付ける(第1の冷間鍛造工程)。この工程によって、被加工材1に第1の凹部40が形成される(図2(c))。第1の冷間鍛造工程において、第1の凹部40は後方押出し成形によって形成される。このため、第1の冷間鍛造工程後の被加工材1の厚さは、第1の冷間鍛造工程前の被加工材1の厚さ(図2(c)中の「T」))よりも大きくなる。
次に、図2(d)に示すように、第1の冷間鍛造工程後の被加工材1を被加工材ガイド8およびダイ9の間に設置し、パンチ11をパンチガイド10に沿って図の矢印方向に駆動させて被加工材1の第1の凹部40の底面に押し付ける(第2の冷間鍛造工程)。この工程では、前方押出し成形によって第2の凹部41が形成され、被加工材1の端部2´の一部が突出して形成された突出部14aが形成される(図2(e)および図2(f))。
次に、突出部14aを除去する工程を実施する。図2(g)に示すように、ノッチパンチ12を矢印方向に駆動して上記した突出部14aの根元に衝突させ(図2(h))、図2(i)に示すように、突出部14aの根元にノッチ部12を形成する((プレス切断第1工程(ノッチ部形成工程))。次に、図2(j)および図2(k)に示すように、突出部14(a)にカチワリパンチ15を衝突させ、被加工材1から突出部14aを切り離す(プレス切断第2工程(カチワリ工程))。そして、図2(k)に示すように、被加工材1の底面の切断面には突出部14aの一部(突出部14b)が残るため、図2(l)および図2(m)に示すように、シェービングパンチ16を矢印方向に駆動してこの突出部14bを削り落として切断面を平滑にする(プレス切断第3工程(シェービング工程))。以上の工程によって、凹部4および薄膜部17を有するプレス成形品100を得ることができる(図2(n))。
本発明は、少なくとも上述した第1の冷間鍛造工程および第2の冷間鍛造工程を有していればよい。第2の冷間鍛造工程において形成された突起部14aを取り除く方法は、上述したプレス切断工程(プレス切断第1工程〜第3工程)に限定されるものではない。また、製品として求められる特性を得るために、必要に応じてプレス切断工程後に熱処理を行ってもよい。
(2)プレス成形品
図9(a)は本発明に係るプレス成形品の断面の一例を模式的に示す図であり、図9(b)は本発明に係るプレス成形品の断面の他の例を模式的に示す図である。図9(a)および9(b)において、第2の凹部は直方体形状を有しており、図9(a)は、第2の凹部の底面の中心を通り、かつ、底面の長辺に垂直な面で切断した図であり、図9(b)は、第2の凹部の底面の中心を通り、かつ、底面の短辺に垂直な面で切断した図である。また、図9(c)は図9(a)のZ1部分の拡大図(光学顕微鏡写真)であり、図9(d)は図9(a)のZ2部分の拡大図(光学顕微鏡写真)である。以下、図9(a)〜(d)を用いて本発明に係るプレス成形品が有する特有の鍛造組織について説明する。なお、図9(c)および(d)の写真は、熱処理工程(条件:1000〜1100℃、1〜2時間)を行った後の状態のものである。
図9(a)は本発明に係るプレス成形品の断面の一例を模式的に示す図であり、図9(b)は本発明に係るプレス成形品の断面の他の例を模式的に示す図である。図9(a)および9(b)において、第2の凹部は直方体形状を有しており、図9(a)は、第2の凹部の底面の中心を通り、かつ、底面の長辺に垂直な面で切断した図であり、図9(b)は、第2の凹部の底面の中心を通り、かつ、底面の短辺に垂直な面で切断した図である。また、図9(c)は図9(a)のZ1部分の拡大図(光学顕微鏡写真)であり、図9(d)は図9(a)のZ2部分の拡大図(光学顕微鏡写真)である。以下、図9(a)〜(d)を用いて本発明に係るプレス成形品が有する特有の鍛造組織について説明する。なお、図9(c)および(d)の写真は、熱処理工程(条件:1000〜1100℃、1〜2時間)を行った後の状態のものである。
図9(a)〜(d)に示すように、本発明に係るプレス成形品100の薄膜部は、凹部の底面から被加工材の他端(開口部が設けられている端部と反対側の端部)に向かう直線状の鍛流線(第1の鍛流線)50を有し、凹部(第2の凹部)の外周は、断面山型状の鍛流線(第2の鍛流線)51を有する。第1の鍛流線50は、第1の冷間鍛造工程(後方押出し成形)および第2の冷間鍛造工程(前方押出し成形)の両方で形成されたものである。第2の鍛流線51は、第1の冷間鍛造工程で形成された鍛流線が、第2の冷間鍛造工程によって変形を受けて形成されたものである。すなわち、第1の冷間鍛造工程では、材料が塑性流動によって流れる方向(第1の凹部の底面から後方(開口部)に向かう方向)に流れる鍛流線が形成されるが、第2の鍛流線51は、この第1の冷間鍛造工程で形成された鍛流線が、第2の冷間鍛造工程によって変形を受けて形成されたものである。上述した第1および第2の鍛流線は、冷間鍛造工程を2回に分けて実施する本発明に係るプレス成形品の製造方法を用いて作製したプレス成形品に特有のものであるということができる。
第2の鍛流線51は、図9(a)では、第1の凹部の底面から第2の凹部の底面に向かって下降し、その途中から開口部に向かって上昇した後、再び第2の凹部の底面に向かって下降するように曲線を描いている。山の頂点が、凹部の外周側へ向かって引っ張られるような形状を有している。一方、図9(b)では、第2の凹部の側面から開口部に向かって上昇した後、再び第2の凹部の底面に向かって真っすぐ下降するように曲線を描いている。第2の鍛流線51の形状(山の頂点の位置および山の勾配)は、被加工材の切断面や、第2の冷間鍛造工程におけるつぶし形状(第2の凹部の底部の形状)によって変わるが、いずれの場合であっても、断面山形状をなしていることには変わりはない。
そして、第1の鍛流線50と第2の鍛流線51との境界部分であって、第2の鍛流線51の山の片側(第2の凹部側)の斜面は、薄膜部へ向かって直線状に下降する形状を有する(図9(a)および(b))。この部分は、第2の凹部を挟んで逆ハの字形状を有しているように見える。この鍛流線が密集した境界部分は、第1の冷間鍛造工程における複雑な塑性流動で生じた鍛流線が、第2の冷間鍛造工程で大きく変形させられて形成された部分であり、前方押出し成形および後方押出し成形を組み合わせて実施した本発明に係るプレス成形品に特徴的な部分である。
第1の鍛流線50は材料の硬度の向上に寄与するものである一方、第2の鍛流線51は材料の硬度を比較的低くするものであり、この第2の鍛流線51によって次に実施される第2の冷間鍛造工程を容易に行うことができる。
次に、プレス成形品の具体的な形状およびサイズの一例について説明する。図3は被加工材の(i)第1の冷間鍛造工程後、(ii)第2の冷間鍛造工程後および(iii)プレス切断工程後の形状の一例を示す図である。(i)〜(iii)の図において、上段は被加工材1の上面(開口部側)側から見た図であり、中段は断面図であり、下段は被加工材1の底面側から見た図である。図3に示すプレス成形品100は、円柱形の被加工材1(Φ9×5mm)に(i)第1の冷間鍛造工程(パンチの荷重:65〜110kN(測定値))によって円筒形状の第1の凹部40(Φ4.5×3mm)を形成し、(ii)第1の凹部40の底面に第2の冷間鍛造工程(パンチの荷重:25〜60kN(測定値))によって直方体形状の第2の凹部41(1.5mm×4.5mm)を形成し、(iii)突出部14aをプレス切断して厚さ(Tt)0.3〜1mmの薄膜部16を形成している。
薄膜部を1回のプレスで形成する場合、直角段差部を有するパンチを使用しなければならないが、その直角段差部によって被加工材へ負担がかかり、また、パンチの直角段差部に応力が集中し、パンチが破損しやすくなる。さらに、被加工材は塑性流動しやすい前方への流動が増えるので、被加工材がせん断しやすくなり、クラックを生じやすい。これに対して、本発明のように鍛造工程を2回に分けて実施する場合は、テーパー部(R部)を有するパンチを用いることができるので、被加工材への負担おおびパンチ破損を軽減できる。また、パンチの押し込み深さを1回で鍛造する場合よりも低減することができるため、被加工材とパンチへの負担を軽減できる。
本発明において、第1の凹部40および第2の凹部41の形状は上述した形状に限られず、パンチおよび金型の形状を変えることで様々な形状とすることができる。図3においては、第1の凹部40が円筒形状であり、第2の凹部41が直方体形状であるが、第1の凹部40が直方体形状であり、第2の凹部41が円筒形状であってもよい。また、薄膜部17を上面から見たときの形状(第2の凹部41の横断面の形状、つぶし形状)が瓢箪形状であってもよい。さらに、第2の凹部41の底面が湾曲した形状(第2の凹部41の断面が椀型の形状)を有していてもよい。
図4(a)は図3の(ii)の断面(第2の凹部の底面の長辺に垂直な面で切断した断面)模式図であり、図4(b)は図4(a)のX部分の拡大図(光学顕微鏡写真)である。また、図5(a)は図3の(ii)の断面(第2の凹部の底面の短辺に垂直な面で切断した断面)模式図であり、図5(b)は図5(a)のY部分の拡大図(光学顕微鏡写真)である。図4(b)および5(b)から、第2の冷間鍛造工程直後の被加工材に、図9(a)および9(b)で説明した鍛流線が現れていることがわかる。また、切断面によって断面山形状の第2の鍛流線の形状が変わることも確認できる。
図4(b)および図5(b)中の数値は、各プロットの位置におけるビッカース硬さ(HV)を示す。図4(b)および5(b)からわかるように、被加工材1の第2の凹部41の底面の外周端(図4(b)中のX1部分および図5(b)中のY1部分)は、その周囲の部分よりも硬度が高くなっている。ビッカース硬さがこのように分布するのは、第1の冷間鍛造工程および第2の冷間鍛造工程における塑性変形によって第2の凹部41の外周端が加工硬化を生じているためと考えられる。第2の凹部41の底面の外周端以外の部分は、第2の凹部41の底面の外周端よりもビッカース硬さは小さいため、プレス切断工程によって容易に突起部を切り離すことができる。
図4(b)および図5(b)中の数値は、各プロットの位置におけるビッカース硬さ(HV)を示す。図4(b)および5(b)からわかるように、被加工材1の第2の凹部41の底面の外周端(図4(b)中のX1部分および図5(b)中のY1部分)は、その周囲の部分よりも硬度が高くなっている。ビッカース硬さがこのように分布するのは、第1の冷間鍛造工程および第2の冷間鍛造工程における塑性変形によって第2の凹部41の外周端が加工硬化を生じているためと考えられる。第2の凹部41の底面の外周端以外の部分は、第2の凹部41の底面の外周端よりもビッカース硬さは小さいため、プレス切断工程によって容易に突起部を切り離すことができる。
なお、図4(b)および5(b)に示す組織は、第2の冷間鍛造工程を実施した直後のものであり、第2の冷間鍛造工程後に熱処理工程を行っていないものである。熱処理工程後の図9(c)および(d)に示したように、鍛流線の形状は熱処理工程後も保存されるが、図4(b)および5(b)に示した硬度分布は無くなる。これは、熱処理工程を実施することで残留応力が解放されて消失するためである。
第2の冷間鍛造工程後に熱処理工程の要否については、本発明に係るプレス成形品に最終的にどのような特性を持たせるかによって判断する。被加工材として析出硬化系ステンレス鋼を用いるならば、第2の冷間鍛造工程後に固溶化熱処理および析出硬化熱処理を行うことが一般的である。上述したように、熱処理工程を実施したとしても、第1および第2の鍛流線は観測される。
図6(a)はダイヤフラムを有する製品(圧力センサのポート(以下、単に「ポート」と称する。)の一例を示す模式図であり、図6(b)は図6(a)の断面図である。圧力センサのポート20は、一般に、ステンレス鋼からなり、厚さ0.3〜1mmのダイヤフラムを有する。図6(b)に示すように、上述した本発明に係るプレス成形品の製造方法を用いて製造したプレス成形品を、ポート20の内側部分18に適用することで、ダイヤフラム(薄膜部)17を有するポート20を構成することができる。
(3)トランスファプレス
次に、本発明に係るプレス成形品の製造方法の実施態様の一例について説明する。図7はトランスファプレス装置の一例を示す正面図である。図7に示すように、トランスファプレス装置30は、上述した各工程で使用される複数の金型を工程順に並べた金型ライン31と、金型ライン31の上方に設けられたプレス機32と、被加工材1を金型ライン31の入口に搬入し、プレス終了後の被加工材(プレス成型品)37を金型ライン31の出口から搬出するコンベア33と、被加工材1を各金型に移動する送り装置(トランスファ)34を有する。
次に、本発明に係るプレス成形品の製造方法の実施態様の一例について説明する。図7はトランスファプレス装置の一例を示す正面図である。図7に示すように、トランスファプレス装置30は、上述した各工程で使用される複数の金型を工程順に並べた金型ライン31と、金型ライン31の上方に設けられたプレス機32と、被加工材1を金型ライン31の入口に搬入し、プレス終了後の被加工材(プレス成型品)37を金型ライン31の出口から搬出するコンベア33と、被加工材1を各金型に移動する送り装置(トランスファ)34を有する。
図8(a)〜8(d)は、図7の金型ライン31、被加工材1および送り装置34の上面図であり、送り装置34の動作(動作(1)〜(4))を示す図である。図8(a)に示すように、送り装置34は、被加工材1をつかむための複数のフィンガー35と、複数のフィンガー35が所定の間隔で固定され、複数のフィンガー35を同時に同方向に移動するロッド36を有する。送り装置34は、被加工材1を移動しない待機時において、複数のフィンガー35が各金型(金型31a〜31e)の間に配置される位置で停止している。そして、被加工材1の移動開始時に図の矢印方向に移動する(動作(1))。次に、図8(b)に示すように、フィンガー35が被加工材1の直上に配置されるところまで送り装置34が移動した後、下降し、フィンガー36が被加工材1を掴む。その後、被加工材1を次の工程の金型の直上の位置まで図の矢印方向に移動し、それぞれの工程の金型に被加工材1を設置する(動作(2))この動作で、最終工程を終えたプレス成形品37は、搬出用のコンベア33に設置される。次に、図8(c)に示すように、送り装置34は図の矢印方向に移動し(動作(3))、複数のフィンガー35が各金型の間に配置される位置まで移動した後停止し(動作(4))、次の被加工材1の移動開始まで待機状態となる。上記動作(1)〜(4)を繰り返すことで、複数の被加工材1の移動を一括して行うことができ、複数の被加工材1の各工程を逐次実施することができるので、製造効率を高めることができる。
上述した本発明に係るプレス成形品の製造方法における第1の冷間鍛造工程、第2の冷間鍛造工程およびプレス切断工程は、すべてプレス加工装置で実施することができるため、上述したようなトランスファプレス装置を用いることによって、複数の被加工材の各工程の成形を1台のプレス機によって同時に実施することができる。このため、順次プレス成形品を得ることができ、高い効率で量産することが可能であるから、製造コストを大幅に低減することができる。工程数が増えるほど、製造効率を高くすることができる。
なお、図7には図示していないが、必要に応じて、金型間で被加工材1を上下逆方向にして設置する機構を備えていてもよい。また、実施する工程に応じて、複数種類の金型ライン31を繋げたものであってもよい。
以上説明したように、本発明によれば、ステンレス鋼等の硬度の高い金属に冷間鍛造加工によって薄膜部を形成することが可能なプレス成形品の製造方法と、ステンレス鋼等の硬度の高い金属に薄膜部が形成されたプレス成形品を提供することができることが示された。
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
例えば、本発明に係る製造方法は、上述した圧力センサのポートの製造に限られるものではなく、薄膜部を有する部品に広く適用することができる。
1…被加工材、2,2´…被加工材の端部、3…開口部、4…凹部、40…第1の凹部、41…第2の凹部、5,9…金型(ダイ)、6,11…パンチ、7…カウンタパンチ、8…被加工材ガイド、10…パンチガイド、12…ノッチパンチ、13…ノッチ部、15…カチワリパンチ、14a,14b…突出部、16…シェービングパンチ、17…薄膜部(ダイヤフラム)、18…ポートの内側部分、20…圧力センサ部品(ポート)、30…トランスファプレス装置、31…金型ライン、31a,31b,31c,31d,31e…金型、32…プレス機、33…コンベア、34…送り装置(トランスファ)、35…フィンガー、36…ロッド、50…第1の鍛流線、51…第2の鍛流線、52…第3の鍛流線、37,100…プレス成形品、T…冷間鍛造工程前の被加工材1の厚さ、Tt…薄膜部の厚さ。
Claims (17)
- 一端に設けられた開口部と、前記開口部から他端に向かって延びる凹部と、を有するプレス成形品の製造方法であって、
被加工材の一端をプレスして前記凹部の一部分を構成する第1の凹部を形成する第1の冷間鍛造工程と、
前記第1の凹部の底面をプレスして前記凹部の残りの部分を構成する第2の凹部を形成する第2の冷間鍛造工程と、を有し、
前記第2の凹部の底面と前記被加工材の前記他端とで構成された薄膜部を形成することを特徴とするプレス成形品の製造方法。 - 前記第2の冷間鍛造工程後にプレス切断工程を有し、
前記プレス切断工程は、前記第2の冷間鍛造工程において前記被加工材の前記他端の一部が突出して形成された突出部を除去して前記被加工材に前記薄膜部を形成することを特徴とする請求項1記載のプレス成形品の製造方法。 - 一端に設けられた開口部と、前記開口部から他端に向かって延びる凹部と、を有するプレス成形品の製造方法であって、
被加工材の一端をプレスして前記凹部の一部分を構成する第1の凹部を形成する第1の冷間鍛造工程と、
前記第1の凹部の底面をプレスして前記凹部の残りの部分を構成する第2の凹部を形成する第2の冷間鍛造工程と、
前記第2の冷間鍛造工程によって前記被加工材の前記他端の一部が突出して形成された突出部を除去する工程と、を有し、
前記第2の凹部の底面と前記被加工材の前記他端とで構成された薄膜部を形成することを特徴とするプレス成形品の製造方法。 - 前記突出部を除去する工程は、前記突出部をプレスによって切断するプレス切断工程であることを特徴とする請求項3記載のプレス成形品の製造方法。
- 前記薄膜部の厚さを0.3〜1mmとすることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のプレス成形品の製造方法。
- 前記第1の冷間鍛造工程において後方押し出し成形によって前記第1の凹部を形成し、
前記第2の冷間鍛造工程において前方押し出し成形によって前記第2の凹部を形成することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載のプレス成形品の製造方法。 - 前記プレス切断工程は、前記突出部の両端にノッチ部を形成するプレス切断第1工程と、前記被加工材から前記突出部を切り離すプレス切断第2工程と、前記被加工材における前記突出部の切断面を平滑にするプレス切断第3工程と、を有することを特徴とする請求項2または4に記載のプレス成形品の製造方法。
- 各工程で使用される複数の金型を工程順に並べて金型ラインを形成し、前記金型ラインの上方に1台のプレス機を設け、前記複数の金型に同時に押し付けることが可能な構成とし、
複数の前記被加工材を並べて前記金型ラインの入り口に設置し、複数の前記被加工材のうちの1番目の前記被加工材を前記金型ラインの入り口から前記金型ラインのうちの1番目の工程の前記金型に送り装置によって移動して設置し、前記1番目の工程の金型を介して前記プレス機によってプレスした後、2番目の工程の前記金型に前記送り装置によって移動し、この移動と同時に前記1番目の被加工材の次に並ぶ2番目の被加工材を前記金型ラインの入り口から前記1番目の工程の金型に送り装置によって移動して設置し、前記1番目の被加工材の2番目の工程のプレスと同時に前記2番目の被加工材の1番目の工程におけるプレスを実施し、
同様にして前記被加工材を前記金型へ設置し、プレスした後、次の工程の前記金型へ移動する動作を、前記被加工材のうちの最後の前記被加工材が前記金型ラインのうちの最後の工程の前記金型を介してプレスされるまで繰り返し、
前記最後の工程の前記金型によるプレスが終了した前記被加工材を前記金型ラインの出口から前記金型ラインの外へ前記送り装置によって移動して設置することを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載のプレス成形品の製造方法。 - 前記金型ラインは、前記第1の冷間鍛造工程、前記第2の冷間鍛造工程を含むそれぞれの工程を実施するために必要な金型が工程順に並べられたものであることを特徴とする請求項8記載のプレス成形品の製造方法。
- 前記被加工材が析出硬化系ステンレス鋼であることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1項に記載のプレス成形品の製造方法。
- 前記プレス成形品がダイヤフラムを含む圧力センサの部品であり、前記薄膜部が前記ダイヤフラムを構成していることを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1項に記載のプレス成形品の製造方法。
- 一端に設けられた開口部と、前記開口部から他端に向かって延びる凹部と、を有するプレス成形品であって、
前記凹部の底面と前記他端とで構成された薄膜部を有し、
前記薄膜部は、前記凹部の底面から前記他端に向かう直線状の鍛流線を有し、前記凹部の外周は、断面山型状の鍛流線を有することを特徴とするプレス成形品。 - さらに、前記直線状の鍛流線と前記断面山型状の鍛流線との境界部分であって、前記断面山型状の鍛流線の山の前記凹部側の斜面は、前記薄膜部へ向かって直線状に下降する形状を有することを特徴とする請求項12記載のプレス成形品。
- 前記凹部は、前記開口部を含む第1の凹部と、前記第1の凹部の底面から前記他端に向かって延びる第2の凹部と、から構成され、前記第2の凹部の底面と前記他端とで前記薄膜部が構成されていることを特徴とする請求項12または13に記載のプレス成形品。
- 前記薄膜部の厚さが0.3〜1mmであることを特徴とする請求項12ないし14のいずれか1項に記載のプレス成形品。
- 前記被加工材が析出硬化系ステンレス鋼であることを特徴とする請求項12ないし15のいずれか1項に記載のプレス成形品。
- 前記プレス成形品がダイヤフラムを含む圧力センサの部品であり、前記薄膜部が前記ダイヤフラムを構成していることを特徴とする請求項12ないし16のいずれか1項に記載のプレス成形品。
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| JP2019041807A (ja) * | 2017-08-29 | 2019-03-22 | 株式会社三洋物産 | 遊技機 |
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| CN110243913A (zh) * | 2018-03-07 | 2019-09-17 | 日本特殊陶业株式会社 | 气体传感器及气体传感器的制造方法 |
| JP7578478B2 (ja) | 2020-12-09 | 2024-11-06 | パナソニックホールディングス株式会社 | 製造方法、シリンダ、回路遮断器及び分電盤 |
-
2016
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