JP5622386B2 - Zr−O系粒子を分散質とするゾル及びその製造方法 - Google Patents
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Description
また、特許文献2には、水酸化ジルコニウムを含有する水性懸濁液を80℃以上の温度で酸性雰囲気下、結晶化物が十分に生成するまで保持して、結晶化ジルコニア含有水性懸濁液を得た後、これから酸を除去して水系弱酸性結晶化ジルコニア系ゾルを得る方法が記載されている。これらのゾルは塩酸、硝酸などの強酸を含有し、酸性であるため、腐食性を有する問題がある。
また、特許文献3には、酸性の水性ジルコニアゾルにヒドロキシル基を持つ水溶性有機酸及びヒドロキシル基を少なくとも2個持つ水溶性有機化合物の中から選ばれた少なくとも1種の化合物を添加した後、塩基性化合物でpHを6〜14とするジルコニアゾルの製造方法が記載されている。このゾルには、酸性による腐食の問題はないが、有機酸又は有機化合物を相当量含有するため、このゾルを原料として使用した塗液によって作製した皮膜の構造中にこれらの有機物が残留し、皮膜の硬度、強度及び耐水性が損なわれることが新たな問題であった。
一方、特許文献4には、第4級アンモニウムの炭酸塩を含む水性媒体中でジルコニウム塩(B2)を60〜110℃で加熱する工程(i)及び工程(i)に続いて110〜250℃で水熱処理を行う工程(ii)を含む方法で得られたアルカリ性ジルコニアゾル(A)と、塩基性ジルコニウム塩(B1)とを混合する工程(I)を含むアルカリ性ジルコニアゾルの製造方法が開示されている。しかし、このゾルは、ジルコニウム塩(B2)としてオキシ炭酸ジルコニウムを用いるため、炭酸含有量が多く、上記炭酸ジルコニウムアンモニウム水溶液と同じ問題がある。
すなわち、本発明は、
(1) Zrに対する炭酸化学種のモル比が0.1〜1.2であるZr−O系粒子を分散質とするゾルであって、
前記ゾルは、Zr−O系粒子を分散質とするゾルへ、アルカリ金属を除く金属イオンを含まない炭酸化学種を添加する工程を含む製造方法により得られる、
ことを特徴とする、Zr−O系粒子を分散質とするゾル。
(2) カルボン酸又はその塩、グリセロール及びエタノールアミン類から選ばれる1種以上を含有し、Zrに対するカルボン酸又はその塩、グリセロール及びエタノールアミン類から選ばれる1種以上のモル比が0.2未満であることを特徴とする前記(1)記載のZr−O系粒子を分散質とするゾル。
(3) pHが7〜12であることを特徴とする前記(1)又は前記(2)記載のZr−O系粒子を分散質とするゾル。
(4) Zrに対する炭酸化学種のモル比が0.1〜1.2であるZr−O系粒子を分散質とするゾルの製造方法であって、
Zr−O系粒子を分散質とするゾルへ、アルカリ金属を除く金属イオンを含まない炭酸化学種を添加する工程を含むことを特徴とする、Zr−O系粒子を分散質とするゾルの製造方法。
(5) カルボン酸又はその塩、グリセロール及びエタノールアミン類から選ばれる1種以上を含有し、Zrに対するカルボン酸又はその塩、グリセロール及びエタノールアミン類から選ばれる1種以上のモル比が0.2未満であることを特徴とする前記(4)記載のZr−O系粒子を分散質とするゾルの製造方法。
(6) pHが7〜12であることを特徴とする前記(4)又は前記(5)記載のZr−O系粒子を分散質とするゾルの製造方法。
を提供する。
本発明のゾルは、Zr−O系粒子を分散質とする。Zr−O系粒子は、成分元素としてZr及びOを含有すればよく、例えば水酸化ジルコニウム(Zr(OH)4)、水酸化ジルコニル(ZrO(OH)2)、水和酸化ジルコニウム(ZrO2・xH2O)、酸化ジルコニウム(ZrO2)及びこれらの混合物が例示される。
分散質であるZr−O系粒子の粒子径D50は特に限定されないが、1〜300nmが好ましく、その範囲外であると増粘や凝集を生じゾルとしての安定性を損なう可能性がある。
一方、本発明のゾルにおいて、ジルコニウム濃度はとくに制約がなく、ZrO2換算で0.01〜50重量%とすることができる。本発明のゾルは、炭酸化学種を含有しており、その炭酸化学種とは水溶性の炭酸塩を水に溶解したときにその水溶液中に生成する化学種ならいずれでもよく、炭酸水素イオン(HCO3 −)や炭酸イオン(CO3 2−)などが例示される。本発明のゾルの炭酸化学種の含有量は、Zrに対する炭酸化学種のモル比が0.1〜1.2が適当で、より好ましくは0.3〜1.0である。
本発明のゾルの特徴は、従来のゾルにおいて、カルボン酸又はその塩、グリセロール及びエタノールアミン類から選ばれる1種以上が担っていたZr−O系粒子表面に静電気的な反発力を与えるという機能を、炭酸化学種によって全部又は一部を代替させることによって、ゾル中のカルボン酸又はその塩、グリセロール及びエタノールアミン類から選ばれる1種以上の有機化合物濃度を、後述する水準まで低減することである。そのために、上記の炭酸化学種量が必要となる。
一方、Zrに対して1.2を越える炭酸化学種の添加は、炭酸化学種と一緒にゾルに供給されることになるカチオンの影響によってZr−O系粒子を凝析させ、ゾルの安定性を損ねるため、また、ゾルを原料として使用したセラミックス構造体や塗膜の形成過程おける炭酸化学種の揮発によってセラミックス構造体や塗膜の構造に欠陥を生じやすくなるため好ましくない。
これは、炭酸ジルコニウムアンモニウム及びこれらのゾルでは、それらの原料となる炭酸ジルコニル又はオキシ炭酸ジルコニウムに起因して炭酸化学種がZr化学種に対して強い配位結合を形成するが、本発明のゾルでは、Zr原子に直接結合せず、Zr−O系粒子の表面に吸着されるにとどまるためと考えられる。
また、本発明のゾルは、カルボン酸又はその塩、グリセロール及びエタノールアミン類から選ばれる1種以上を含有してもよい。
カルボン酸としてはクエン酸、酒石酸、グリコール酸、乳酸、グルコン酸など、エタノールアミン類としてはモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどが例示されるがこれらに限定されるものではない。
カルボン酸又はその塩の目的はゾルにカルボン酸を供給することであるため、カルボン酸塩の種類は後述するゾルの分散媒に溶解するものであればいずれでもよく、アンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩などが例示される。
カルボン酸又はその塩、グリセロール及びエタノールアミン類から選ばれる1種以上の添加量は、Zrに対するカルボン酸又はその塩、グリセロール及びエタノールアミン類から選ばれる1種以上のモル比が0.2未満、好ましくは0.1未満、さらに好ましくは0.05未満である。このモル比が0.2以上の場合、ゾルを用いたセラミックス構造体や塗膜の不要な乾燥残留成分量が十分に低減できず目的の効果を発揮しないため不適当である。
本発明のゾルは、既知の方法によってZr−O系粒子を分散質とするゾルを得て、それを原料とすることで効率的に製造できる。以下に三つの製造方法を説明する。
第一の製造方法としては、一般的に知られているオキシ塩化ジルコニウム水溶液を加熱し加水分解させる方法や、特開平2−13772に開示される、水酸化ジルコニウムを含有する水性懸濁駅を80℃以上の温度で酸性雰囲気下、結晶化物が十分に生成するまで保持して、結晶化ジルコニア懸濁液を得た後、これから酸を除去する方法、また、特開2007−70212号に開示される、水酸化ジルコニウム、酸及び溶媒からなる反応分散液中のZrO2換算のジルコニウム濃度をX重量%及び1モルのZrに対する酸のグラム当量数Yとした場合、
3≦X≦20かつ(2.0−0.07X)≦Y≦(3.0−0.08X)
となるように該反応分散液を調製し、ついでこれを80℃(好ましくは90℃)以上で加熱して得た非晶質Zr−O系粒子を分散質とするゾルなどを原料として使用できる。
以上が第一の製造方法であり、製造効率やゾルのD50の制御精度といった点で最も優れている。
3≦X≦20かつ(2.0−0.07X)≦Y≦(3.0−0.08X)
となるように該反応分散液を調製し、ついでこれを80℃(好ましくは90℃)以上で加熱して得た非晶質Zr−O系粒子を分散質とするゾルに所定量の無水クエン酸とアンモニア水を添加して得た塩基性ゾルなどを原料として使用できる。
さらに、炭酸化学種の中でもZr−O系粒子の表面に負電位を与える作用をする炭酸化学種は主に炭酸水素イオン(HCO3 −)や炭酸イオン(CO3 2−)であると考えられるため、炭酸化学種を含む水溶液のpHをこれらの化学種の濃度が高い領域に調整することで、同じくZr−O系粒子の表面に負電位を与えているカルボン酸又はその塩、グリセロール及びエタノールアミン類から選ばれる1種以上と炭酸化学種を効率よく置換して、限外濾過による精製を効率よく行うことができる。
て水酸化ジルコニウム、水酸化ジルコニル、水和酸化ジルコニウム、酸化ジルコニウムを作製し、これを、炭酸化学種と必要に応じて所定量の有機化合物を含有する分散媒に物理的粉砕等によって分散させることで本発明のゾルを得ても良いが、粒子径D50の制御が困難となる。
本発明のゾルを使用して、金属板、ガラス板、樹脂板等の様々な基材上に、ハードコート膜を設けることができる。本発明のゾルを水で希釈してZrO2換算で0.01〜5%、好ましくは0.1〜2%としたハードコート液を用いて、スライドガラスなどの基板にディップコート、スピンコートなどの方法によって成膜し、室温〜200℃程度で乾燥することで、鉛筆硬度HB〜9Hのハードコート膜を得ることができる。本発明のゾルによるハードコート膜が優れた鉛筆硬度を示す理由は、ゾルのアンモニア、炭酸化学種、有機化合物などの成分が低濃度であり、かつ、炭酸化学種はZrとの相互作用が弱いことによって乾燥時に大半が揮発することで、結果として、ハードコート膜にはZr以外のこれらの成分が残留せず、膜中でZr−O系粒子同士が緻密に集合し、相互が強固に結着するためと考えられる。
〔粒子径D50〕
ゾルの粒子径D50の測定には、UPA−150(日機装製)を用いた。
〔有機物〕
ゾルに含有される有機物の定量分析には、TOC−V(島津製作所製)を用いた。
〔TG〕
ゾルのTG測定には、TG−8120(リガク製)を用いた。
該ゾル1000gに、炭酸水素アンモニウム64g、つぎに、25%アンモニア水を30g、さらに、水を3906g添加して、ZrO2換算で4.0重量%、pH9.1のゾルを得た。該ゾルの炭酸化学種/Zrモル比は0.5、粒子径D50は74nmであった。
また、該ゾルはTOC分析において有機物が検出されなかった。そして、該ゾルのTG測定を行った。図2に示す該ゾルのTG曲線では炭酸ジルコニウムアンモニウムで見られるような600℃付近における炭酸の分解による減量は観測されず、又、減量率も1%以下と非常に少ないことが分かる。
Claims (6)
- Zrに対する炭酸化学種のモル比が0.1〜1.2であるZr−O系粒子を分散質とするゾルであって、
前記ゾルは、Zr−O系粒子を分散質とするゾルへ、アルカリ金属を除く金属イオンを含まない炭酸化学種を添加する工程を含む製造方法により得られる、
ことを特徴とする、Zr−O系粒子を分散質とするゾル。 - カルボン酸又はその塩、グリセロール及びエタノールアミン類から選ばれる1種以上を含有し、Zrに対するカルボン酸又はその塩、グリセロール及びエタノールアミン類から選ばれる1種以上のモル比が0.2未満であることを特徴とする請求項1記載のZr−O系粒子を分散質とするゾル。
- pHが7〜12であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のZr−O系粒子を分散質とするゾル。
- Zrに対する炭酸化学種のモル比が0.1〜1.2であるZr−O系粒子を分散質とするゾルの製造方法であって、
Zr−O系粒子を分散質とするゾルへ、アルカリ金属を除く金属イオンを含まない炭酸化学種を添加する工程を含むことを特徴とする、Zr−O系粒子を分散質とするゾルの製造方法。 - カルボン酸又はその塩、グリセロール及びエタノールアミン類から選ばれる1種以上を含有し、Zrに対するカルボン酸又はその塩、グリセロール及びエタノールアミン類から選ばれる1種以上のモル比が0.2未満であることを特徴とする請求項4記載のZr−O系粒子を分散質とするゾルの製造方法。
- pHが7〜12であることを特徴とする請求項4又は請求項5記載のZr−O系粒子を分散質とするゾルの製造方法。
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