JP5645015B2 - 酸化イットリウム安定化酸化ジルコニウムゾルの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、イットリウムのカルボン酸塩とオキシ酢酸ジルコニウムとの混合水溶液を出発原料として水熱処理することを特徴とする酸化イットリウム安定化酸化ジルコニウム水性ゾルの製造方法及び、その水性ゾルの水媒体を有機溶媒に置換する工程を含む酸化イットリウム安定化酸化ジルコニウム有機溶媒ゾルの製造方法に関する。
ジルコニウム塩とイットリウム塩との混合水溶液を出発原料とした酸化イットリウム安定化酸化ジルコニウム水性ゾルの製造方法としては、オキシ塩化ジルコニウムと塩化イットリウムとの混合水溶液をアンモニア水と炭酸水素アンモニウムとの混合水溶液に添加して得たスラリーを150℃で加熱した後、塩酸を添加し、二層分離した沈降相を取り出して、水希釈する方法が知られている。この製造方法で得られたゾルに含まれる粒子は、透過型電子顕微鏡観察で200Å以下であった(特許文献1を参照)。
また、オキシ酢酸ジルコニウム及び希土類金属の酢酸塩の混合液にアルカリ水溶液を添加してpHを8以上にしたものを出発原料として、300〜400℃、20〜40MPaで水熱反応をなすことにより、希土類元素が固溶した酸化ジルコニウム微粒子を製造する方法が開示されている(特許文献2を参照)。
特許3250243号公報 特開2008−184339号公報
特許文献1に記載の製造方法では、加熱により生成した酸化ジルコニウム微粒子は二層分離後に解膠されるため、微粒子同士が二次凝集し、透明性の高い酸化イットリウム安定化酸化ジルコニウムゾルを得ることはできない。
また、特許文献2に記載の製造方法では、水熱反応は300〜400℃の高い反応温度と20〜40MPaの高い反応圧力を条件とするため、その反応装置は少なくとも20MPaの耐圧設計のものにせざるを得ないという大きな制約があり、高コストの方法となる。従って、上記の製造方法は、酸化イットリウム安定化酸化ジルコニウムゾルの大量生産をするには不利である。
本発明は、水熱反応条件が従来の方法よりも緩和され、且つ得られるコロイド粒子の二次凝集が殆ど生じない透明性の極めて良好なゾルを製造できる酸化イットリウム安定化酸化ジルコニウム水性ゾル及び有機溶媒ゾルの製造方法を提供することを課題とする。
本発明は、上記の課題を解決するものであり、以下の要旨を有するものである。
第1観点として、イットリウムのカルボン酸塩とオキシ酢酸ジルコニウムとをY/(Y+Zr)原子比として0.10〜0.60の範囲で水に溶解した混合水溶液を、160〜280℃で2時間以上水熱処理する工程を含むことを特徴とする酸化イットリウム安定化酸化ジルコニウム水性ゾルの製造方法である。
第2観点として、前記イットリウムのカルボン酸塩が酢酸塩又はクエン酸塩である第1観点に記載の酸化イットリウム安定化酸化ジルコニウム水性ゾルの製造方法である。
第3観点として、前記混合水溶液における前記イットリウムのカルボン酸塩及びオキシ酢酸ジルコニウムの両者の金属酸化物(Y23+ZrO2)換算濃度が全質量に対して1〜10質量%の範囲である第1観点又は第2観点に記載の酸化イットリウム安定化酸化ジルコニウム水性ゾルの製造方法である。
第4観点として、前記混合水溶液におけるCOOH基/(Y+Zr)モル比が1.2〜2.5の範囲である第1観点乃至第3観点のいずれか1つに記載の酸化イットリウム安定化酸化ジルコニウム水性ゾルの製造方法である。
第5観点として、前記混合水溶液への酢酸又はクエン酸の添加により、該混合水溶液におけるCOOH基/(Y+Zr)モル比を1.2〜2.5の範囲に調整する第4観点に記載の酸化イットリウム安定化酸化ジルコニウム水性ゾルの製造方法である。
第6観点として、前記混合水溶液のpHが4.0〜5.5である第1観点乃至第5観点のいずれか1つに記載の酸化イットリウム安定化酸化ジルコニウム水性ゾルの製造方法である。
第7観点として、前記混合水溶液への酢酸又はクエン酸の添加により、該混合水溶液におけるpHを4.0〜5.5に調整する第6観点に記載の酸化イットリウム安定化酸化ジルコニウム水性ゾルの製造方法である。
第8観点として、前記水熱処理された前記混合水溶液を更に脱塩処理する工程を含む第1観点乃至第7観点のいずれか1つに記載の酸化イットリウ安定化酸化ジルコニウム水性ゾルの製造方法である。
第9観点として、第1観点乃至第8観点のいずれか1つに記載の製造方法で得られたイットリウム安定化酸化ジルコニウム水性ゾルの水性媒体を有機溶媒置換法により有機溶媒に置換する工程を含むイットリウム安定化酸化ジルコニウム有機溶媒ゾルの製造方法である。
本発明の製造方法により、酸化イットリウム及び酸化ジルコニウムを水に溶解させた混合水溶液から、透過電子顕微鏡観察による一次粒子径が2〜15nmで粒子径分布が非常に狭く、且つ二次凝集の少ない酸化イットリウム安定化酸化ジルコニウムコロイド粒子の水性ゾルを製造することができる。さらに、本発明の製造方法により、前記酸化イットリウム及び酸化ジルコニウムの両者の金属酸化物(Y23+ZrO2)換算濃度を全質量の1〜10質量%に調整した混合水溶液から、光路長10mmにおける波長500nmの光線透過率が70%以上となる水性ゾルを製造することができる。また本発明の製造方法は、水熱処理条件が280℃以下であるため、耐圧及び耐食設計の制限の少ない安価な水熱処理装置を用いることができ、酸化イットリウム安定化酸化ジルコニウム水性ゾルの大量生産に適する。さらに、本発明の製造方法により得られた水性ゾルの水媒体を有機溶媒に置換することにより、酸化イットリウム安定化酸化ジルコニウム有機溶媒ゾルを製造することができる。
本発明により製造される酸化イットリウム安定化酸化ジルコニウム水性ゾル及びその有機溶媒ゾルは、触媒、研磨砥粒、樹脂フィラー、燃料電池の固体電解質等に有用に適用することができる。
図1は実施例3で製造された水性ゾルの乾燥粉末の粉末X線回折図である。
本発明は、原料としてイットリウムのカルボン酸塩とオキシ酢酸ジルコニウム塩とを使用することを1つの特徴とする。前記原料を水に溶解させた混合水溶液の水熱処理により、酸化イットリウムが酸化ジルコニウムに固溶し、酸化ジルコニウム単体よりも結晶系の破壊が抑制され経時的に安定な、酸化イットリウムと酸化ジルコニウムとの固溶体の水性ゾル(以下、酸化イットリウム安定化酸化ジルコニウム水性ゾル)が製造される。これに対して、原料としてイットリウム及びジルコニウムの塩化物又は硝酸塩等の強酸塩を使用した場合には、水熱処理した際に、酸化イットリウムと酸化ジルコニウムとの固溶が進行せずに、酸化イットリウム微小コロイド粒子と単斜晶系の酸化ジルコニウムの紡錘状粒子とが分離して生成する。前記酸化ジルコニウムの紡錘状粒子は長径が40nm以上に成長するため、生成する水性ゾルの透明性が低いという問題が生じる。
本発明のイットリウムのカルボン酸塩としては、酢酸塩又はクエン酸塩が好ましい。イットリウム酢酸塩はY(CH3COO)3・3H2Oで表される三水和物の粉末として市販のものを入手することができる。イットリウムクエン酸塩は、水酸化イットリウムを1〜20質量%クエン酸水溶液に室温で溶解することにより、0.2〜3質量%のY(C657)水溶液として得ることができる。
本発明に用いられるジルコニウム塩は、オキシ酢酸ジルコニウムである。オキシ酢酸ジルコニウムは一般式(1)
ZrOa(CH3COO)b (1)
(式(1)中、aは0<a<2であり、bは0<b<4であり、かつ、2a+b=4を満たす。)で表される。オキシ酢酸ジルコニウムは粉末又は水溶液の形態で市販のものを入手することができる。
イットリウムのカルボン酸塩及びオキシ酢酸ジルコニウムは、予め用意された純水にY/(Y+Zr)原子比として0.10〜0.60の範囲となるように添加され、攪拌により均一な混合水溶液に調製される。Y/(Y+Zr)原子比が0.10未満の場合は、水熱処理後に得られるコロイド粒子が長軸40nm以上の紡錘状粒子となり、透明性の低い水性ゾルが生成するため好ましくない。
Y/(Y+Zr)原子比が0.60より大きい場合は、酸化イットリウムが酸化ジルコニウムに完全に固溶する範囲を越え、酸化イットリウム成分と酸化イットリウム安定化酸化ジルコニウム成分とに分相するため好ましくない。
また、前記混合水溶液は、イットリウムのカルボン酸塩及びオキシ酢酸ジルコニウムの両者の金属酸化物(Y23+ZrO2)換算濃度が全質量の1〜10質量%、好ましくは1〜5質量%であるように調整される。前記金属酸化物(Y23+ZrO2)換算濃度が1質量%未満では生産性が悪くなり、10質量%より高い場合は得られる水性ゾル中のコロイド粒子が凝集しやすくなるため好ましくない。なお、本明細書中において、金属酸化物(Y23+ZrO2)換算濃度は、溶液又は水性ゾルに含まれる金属(イットリウム及びジルコニウム)塩の濃度を、それら金属塩を全て金属酸化物(酸化イットリウム及び酸化ジルコニウム)と置き換えた場合の質量を基準として換算した場合の濃度で、質量%濃度で表される。
また、前記混合水溶液におけるCOOH基/(Y+Zr)モル比は1.2〜2.5の範囲が好ましい。COOH基は前記カルボン酸塩に由来するものである。COOH基/(Y+Zr)モル比が1.2未満の場合、イットリウムのカルボン酸塩の溶液とオキシ酢酸ジルコニウムとの溶液を混合すると、混合直後にゲル化が始まり好ましくない。COOH基/(Y+Zr)モル比が2.5より大きい場合、水熱処理後に得られるコロイド粒子が長軸40nm以上の紡錘状粒子となり、透明性の低い水性ゾルが生成するため好ましくない。原料であるイットリウムのカルボン酸塩とオキシ酢酸ジルコニウムとを混合した段階でCOOH基/(Y+Zr)モル比が1.2未満の場合は、前記混合水溶液に酢酸又はクエン酸を添加して、COOH基/(Y+Zr)モル比を1.2〜2.5の範囲に調整すればよい。前記酢酸又はクエン酸はそれらの純物質又は水溶液の形態で添加しても良いが、水溶液として添加することが好ましい。酢酸又はクエン酸水溶液の好ましい濃度は1〜20質量%である。
また前記混合水溶液は、そのpHが4.0〜5.5に調整される。前記混合水溶液のpHが5.5を超える場合は、酢酸又はクエン酸を添加してpH4.0〜5.5の範囲内に調整することができる。酢酸又はクエン酸はそれらの純物質又は水溶液の形態で添加しても良いが、水溶液として添加することが好ましい。酢酸又はクエン酸水溶液の好ましい濃度は1〜20質量%である。
前記混合水溶液を、耐圧容器に投入された後、160〜280℃に加熱し、2時間以上水熱処理すると、目的の酸化イットリウム安定化酸化ジルコニウム水性ゾルが生成する。水熱処理温度が160℃未満の場合、酸化イットリウム安定化酸化ジルコニウムコロイド粒子が充分に生成せずに、未反応の無定形物質が水熱処理後の水性ゾル中に混在するため好ましくない。また、水熱処理温度が280℃より高い場合、耐圧容器が通常の化学装置に用いられるステンレス製である場合には、酢酸による金属腐食が起こるため、耐圧容器の劣化が起こる。更に得られる酸化イットリウム安定化酸化ジルコニウムコロイド粒子が凝集するため好ましくない。水熱処理温度が160〜280℃の範囲において、耐圧容器内の圧力は0.6〜7.0MPaの範囲である。
前記混合水溶液の水熱処理時間は2時間以上であり、3〜48時間が好ましく、3〜24時間が更に好ましい。水熱処理時間が2時間未満の場合、酸化イットリウム安定化酸化ジルコニウムコロイド粒子が充分生成せずに、反応が完結していない無定形物質が水熱処理後の水性ゾル中に混在し、得られるゾルの透明性を低下させるため好ましくない。一方、本発明では、酸化イットリウム安定化酸化ジルコニウムコロイド粒子の生成は48時間以内の水熱処理により完了するため、水熱処理時間を48時間より長くする必要はほとんどない。
本発明で得られる酸化イットリウム安定化酸化ジルコニウム水性ゾルは、水熱処理後のイットリウム及びジルコニウムの両者の金属酸化物(Y23+ZrO2)換算濃度が全質量に対して1〜10質量%であるが、30質量%に濃縮することもできる。
本発明により得られる酸化イットリウム安定化酸化ジルコニウム水性ゾルは、そのままで各種用途に用いることができるが、前記水性ゾルに含まれる塩類を除去して各種用途に用いることが好ましい。前記水性ゾルに含まれる塩類の脱塩処理方法は、限外濾過法、遠心濾過法、イオン交換法等の一般に知られているどのような方法を用いてもよいが、限外濾過による脱塩処理が好ましい。限外濾過としては特にチューブ式限外濾過膜を用いることにより効果的に脱塩することが可能である。限外濾過は、通常5〜80℃条件下、充分に塩類を除去するために連続又は断続的に純水を注水しながら行う。濾過時間は特に限定されないが、通常1〜50時間で行われる。脱塩処理した水性ゾルの電気伝導度は低下する。水性ゾルの電気伝導度が0.5mS/cm以下になるまで脱塩した場合には、脱塩処理後の酸化イットリウム安定化酸化ジルコニウム水性ゾルの金属酸化物(Y23+ZrO2)換算濃度を全質量の50質量%まで濃縮することができる。
本発明により得られる酸化イットリウム安定化酸化ジルコニウム水性ゾルは、水媒体を有機溶媒に置換することにより有機溶媒ゾルとすることができる。置換に用いる有機溶媒としてはメタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン、酢酸メチル、酢酸エチル、2−メトキシエタノール、エチレングリコール、及びトリエチレングリコール等が挙げられる。
前記水媒体を有機溶媒に置換する方法としては、一般に知られているどのような方法でも良く、常圧蒸留置換法、減圧蒸留置換法、限外濾過による置換法、又は溶媒抽出法等を用いることができるが、常圧蒸留置換法又は減圧蒸留置換法が好ましく用いられる。
本発明により得られる酸化イットリウム安定化酸化ジルコニウム水性ゾルの水媒体を有機溶媒に置換する場合、用いる水性ゾルは前記の脱塩処理方法により脱塩処理された水性ゾルであることが好ましい。脱塩処理して用いる水性ゾルの電気伝導度として0.5mS/cm以下のものが好ましく、0.3mS/cm以下のものが更に好ましい。
本発明により得られる酸化イットリウム安定化酸化ジルコニウム水性ゾルの水媒体を有機溶媒に置換する場合、前記の脱塩処理方法により脱塩処理された水性ゾルにオキシカルボン酸とアミン類とを適量添加して、予め水性ゾルのpHを中性又はアルカリ性に調整した後に有機溶媒置換することができる。
用いられるオキシカルボン酸としては、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸等が挙げられる。オキシカルボン酸は前記水性ゾルに含まれるZrO21モルに対して0.01〜0.5のモル比で添加することが好ましい。
用いられるアミン類としては、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルオクチルアミン、ジメチルデシルアミン、及びジメチルラウリルアミン等のアルキルアミン、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、1,5−ジアザ−ビシクロ(4,3,0)ノネン−5、及び1,4−ジアザ−ビシクロ(2,2,2)オクタン等の環状アミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン、エチレンジアミン等のジアミン、並びに水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、及び水酸化モノメチルトリエタノールアンモニウム等の第4級アンモニウム水酸化物が挙げられる。アミン類は前記水性ゾルに含まれるZrO21モルに対して0.001〜0.1のモル比で添加することが好ましい。
また、前記水性ゾルの水媒体をメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン、酢酸メチル、及び酢酸エチル等の疎水性の高い有機溶媒に置換する場合には、前記水性ゾルを予め有機シラン化合物等で疎水化処理することが好ましい。
本発明により得られる酸化イットリウム安定化酸化ジルコニウム有機溶媒ゾルは、含まれるイットリウム及びジルコニウムの両者の金属酸化物(Y23+ZrO2)換算濃度が全質量に対して1〜50質量%の安定なゾルである。
本発明により得られる酸化イットリウム安定化酸化ジルコニウム水性ゾルに含まれるコロイド粒子は、粉末X線回折分析により酸化イットリウム安定化酸化ジルコニウムの結晶粒子であることが確認される。粉末X線回折分析によれば、回折角度2θ=30.0°、50.2°及び59.5°に主ピークが測定され、ASTMカード30−1468に記載の酸化イットリウム安定化酸化ジルコニウムの特性ピークとほぼ一致する。
本発明により得られる酸化イットリウム安定化酸化ジルコニウム水性ゾルは、透過電子顕微鏡観察による一次粒子径が2〜15nmであり、かつ非常に狭い粒子径分布を有する酸化イットリウム安定化酸化ジルコニウムコロイド粒子のゾルである。前記水性ゾルの動的光散乱法による測定粒子径は5〜30nmの範囲である。動的光散乱法による粒子径の測定は、N4プラス装置(COULTER ELECTRONICS社製)、DLS−6000(大塚電子(株)製)等の動的光散乱法測定装置によって測定することができる。
本発明により得られる酸化イットリウム安定化酸化ジルコニウム水性ゾルは高い透明性を有することが特徴である。前記水性ゾルにおいて、含まれるイットリウム及びジルコニウムの両者の金属酸化物(Y23+ZrO2)換算濃度を全質量の1〜10質量%に調整したとき、光路長10mmにおける波長500nmの光線透過率が70%以上である。
本発明により得られる酸化イットリウム安定化酸化ジルコニウム水性ゾル及び有機溶媒ゾルは、室温で1ヶ月以上静置しても物性に変化はなく、沈降物は全く発生しない、安定に分散したゾルである。
実施例1 純水244.1gに市販の酢酸イットリウム粉末(アルドリッチ社製、酸化イットリウム(Y23)換算濃度35.5質量%、酢酸濃度54.0質量%)2.3gと市販のオキシ酢酸ジルコニウム水溶液(第一稀元素化学工業(株)製、酸化ジルコニウム(ZrO2)換算濃度20.15質量%、酢酸濃度12.8質量%)34.0gを加えて、Y/(Y+Zr)原子比が0.11、COOH基/(Y+Zr)モル比が1.5、固形分(酢酸イットリウムと酢酸ジルコニウムの酸化物換算の合計:Y23+ZrO2)濃度が2.7質量%、pH4.7、電気伝導度2.40mS/cmの混合水溶液を279g調製した。この混合水溶液をSUS316製の300mlオートクレーブ容器に仕込み、180℃で6時間水熱処理した。オートクレーブ容器内の圧力は0.82MPaであった。得られた水性ゾルはpH3.3、電気伝導度0.90mS/cmであった。この水性ゾルをエバポレーターで減圧濃縮して固形分濃度を5.0質量%に調整し、分光式測色色差計TC−1899MK(東京電色製)で光路長10mmにおける波長550nmの光線透過率を測定したところ73%であった。次いで、前記固形分濃度5.0質量%に濃縮した水性ゾルを限外濾過膜を用いて純水で洗浄を行い、pH5.3、電気伝導度0.118mS/cm、固形分濃度5.0質量%の水性ゾル138gを得た。この固形分濃度5.0質量%の水性ゾルの光路長10mmにおける波長550nmの光線透過率は76%であった。この水性ゾルに含まれるコロイド粒子を透過型電子顕微鏡で観察したところ、一次粒子径の最大値が12nm、一次粒子径の平均値が10nmの立方体粒子であった。この水性ゾルの動的光散乱法による測定粒子径(N4プラス装置、コールターエレクトロニクス(COULTER ELECTRONICS)社製で測定)は25nmであった。また、この水性ゾルを120℃で乾燥して粉末X線回折を測定したところ、回折角度2θ=30.0°、50.2°及び59.5°に主ピークを有し、ASTMカード30−1468に記載の正方晶又は立方晶系の酸化イットリウム安定化酸化ジルコニウムの特性ピークと一致した。X線結晶子は11.5nmであった。更にこの水性ゾルに含まれるコロイド粒子は、蛍光X線装置(SEA2120L エスアイアイNT(株))で定量分析した結果、Y/(Y+Zr)原子比が0.08の組成を有していた。前記エバポレーターで固形分濃度5.0質量%に濃縮した水性ゾルを25℃で1ヶ月静置したところ、物性及び外観に変化はなく、安定であった。
実施例2 純水244.1gに市販の酢酸イットリウム粉末(アルドリッチ社製、酸化イットリウム(Y23)換算濃度35.5質量%、酢酸濃度54.0質量%)2.9gと市販のオキシ酢酸ジルコニウム水溶液(第一稀元素化学工業(株)製、酸化ジルコニウム(ZrO2)換算濃度20.15質量%、酢酸濃度12.8質量%)32.0gを加えて、Y/(Y+Zr)原子比が0.15、COOH基/(Y+Zr)モル比が1.5、固形分(酢酸イットリウムと酢酸ジルコニウムの酸化物換算の合計:Y23+ZrO2)濃度が2.7質量%、pH4.8、電気伝導度3.05mS/cmの混合水溶液を279g調製した。この混合水溶液をSUS316製の300mlオートクレーブ容器に仕込み、180℃で6時間水熱処理した。オートクレーブ容器内の圧力は0.82MPaであった。得られた水性ゾルは、pH3.4、電気伝導度0.98mS/cmであった。この水性ゾルをエバポレーターで減圧濃縮して固形分濃度を5.0質量%に調整し、分光式測色色差計TC−1899MKで光路長10mmにおける波長550nmの光線透過率を測定したところ77%であった。次いで、前記固形分濃度5.0質量%に濃縮した水性ゾルを限外濾過膜を用いて純水で洗浄し、pH4.9、電気伝導度0.157mS/cm、動的光散乱法による測定粒子径(N4プラス装置で測定)24nm、固形分濃度5.0質量%の水性ゾル133gを得た。この固形分濃度5.0質量%の水性ゾルの光路長10mmにおける波長550nmの光線透過率は80%であった。この水性ゾルに含まれるコロイド粒子を透過型電子顕微鏡で観察したところ、一次粒子径の最大値が10nm、一次粒子径の平均値が8nmの立方体粒子であった。また、この水性ゾルを120℃で乾燥して粉末X線回折を測定したところ、回折角度2θ=30.0°、50.2°及び59.5°に主ピークを有し、ASTMカード30−1468に記載の正方晶又は立方晶系の酸化イットリウム安定化酸化ジルコニウムの特性ピークと一致した。X線結晶子は10.7nmであった。更にこの水性ゾルに含まれるコロイド粒子は、蛍光X線装置で定量分析した結果、Y/(Y+Zr)原子比が0.11の組成を有していた。前記エバポレーターで固形分濃度5.0質量%に濃縮した水性ゾルを25℃で1ヶ月静置したところ、物性及び外観に変化はなく、安定であった。
実施例3 純水244.1gに市販の酢酸イットリウム粉末(アルドリッチ社製、酸化イットリウム(Y23)換算濃度35.5質量%、酢酸濃度54.0質量%)4.0gと市販のオキシ酢酸ジルコニウム水溶液(第一稀元素化学工業(株)製、酸化ジルコニウム(ZrO2)換算濃度20.15質量%、酢酸濃度12.8質量%)30.9gを加えて、Y/(Y+Zr)原子比が0.20、COOH基/(Y+Zr)モル比が1.6、固形分(酢酸イットリウムと酢酸ジルコニウムの酸化物換算の合計:Y23+ZrO2)濃度が2.7質量%、pH4.8、電気伝導度3.76mS/cmの混合水溶液を279g調製した。この混合水溶液をSUS316製の300mlオートクレーブ容器に仕込み、180℃で6時間水熱処理した。オートクレーブ容器内の圧力は0.82MPaであった。得られた水性ゾルは、pH3.6、電気伝導度1.44mS/cm、動的光散乱法による測定粒子径(N4プラス装置で測定)は17nmであった。この水性ゾルをエバポレーターで減圧濃縮して固形分濃度を5.0質量%に調整し、分光式測色色差計TC−1899MKで光路長10mmにおける波長550nmの光線透過率を測定したところ84%であった。次いで、前記固形分濃度5.0質量%に濃縮した水性ゾルを限外濾過膜を用いて純水で洗浄を行い、pH5.0、電気伝導度0.175mS/cm、固形分濃度5.0質量%の水性ゾル137gを得た。この固形分濃度5.0質量%の水性ゾルの光路長10mmにおける波長550nmの光線透過率は87%であった。この水性ゾルに含まれるコロイド粒子を透過型電子顕微鏡で観察したところ、一次粒子径の最大値が8nm、一次粒子径の平均値が6nmの立方体粒子であった。この水性ゾルの動的光散乱法による測定粒子径(N4プラス装置で測定)は16nmであった。また、この水性ゾルを120℃で乾燥して粉末X線回折を測定したところ、回折角度2θ=30.0°、50.2°及び59.5°に主ピークを有し、ASTMカード30−1468に記載の正方晶又は立方晶系の酸化イットリウム安定化酸化ジルコニウムの特性ピークと一致した。X線結晶子は9.4nmであった。更にこの水性ゾルに含まれるコロイド粒子は、蛍光X線装置で定量分析した結果、Y/(Y+Zr)原子比が0.13の組成を有していた。前記エバポレーターで固形分濃度5.0質量%に濃縮した水性ゾルを25℃で1ヶ月静置したところ、物性及び外観に変化はなく、安定であった。
実施例4 純水244.1gに市販の酢酸イットリウム粉末(アルドリッチ製、酸化イットリウム(Y23)換算濃度35.5質量%、酢酸濃度54.0質量%)7.5gと市販のオキシ酢酸ジルコニウム水溶液(第一稀元素化学工業(株)製、酸化ジルコニウム(ZrO2)換算濃度20.15質量%、酢酸濃度12.8質量%)28.4gを加えて、Y/(Y+Zr)原子比が0.33、COOH基/(Y+Zr)モル比が1.8、固形分(酢酸イットリウムと酢酸ジルコニウムの酸化物換算の合計:Y23+ZrO2)濃度が3.0質量%、pH5.0、電気伝導度5.09mS/cmの混合水溶液を279g調製した。この混合水溶液をSUS316製の300mlオートクレーブ容器に仕込み、180℃で6時間水熱処理した。オートクレーブ容器内の圧力は0.82MPaであった。得られた水性ゾルは、pH4.0、電気伝導度2.79mS/cm、動的光散乱法による測定粒子径(N4プラス装置で測定)12nmであった。このコロイド溶液をエバポレーターで減圧濃縮して固形分濃度を5.0質量%に調整し、分光式測色色差計TC−1899MKで光路長10mmにおける波長550nmの光線透過率を測定したところ92%であった。次いで、前記固形分濃度5.0質量%に濃縮した水性ゾルを限外濾過膜を用いて純水で洗浄を行い、pH5.4、電気伝導度0.275mS/cm、固形分濃度5.0質量%の水性ゾル130gを得た。この固形分濃度5.0質量%の水性ゾルの光路長10mmにおける波長550nmの光線透過率は96%であった。この水性ゾルに含まれるコロイド粒子を透過型電子顕微鏡で観察したところ、一次粒子径の最大値が6nm、一次粒子径の平均値が4nmの立方体粒子であった。この水性ゾルの動的光散乱法による測定粒子径(N4プラス装置で測定)は10nmであった。また、この水性ゾルを120℃で乾燥して粉末X線回折を測定したところ、回折角度2θ=30.0°、50.2°及び59.5°に主ピークを有し、ASTMカード30−1468に記載の正方晶又は立方晶系の酸化イットリウム安定化酸化ジルコニウムの特性ピークと一致した。X線結晶子は9.0nmであった。更にこの水性ゾルに含まれるコロイド粒子は、蛍光X線装置で定量分析した結果、Y/(Y+Zr)原子比が0.19の組成を有していた。前記限外濾過洗浄して固形分濃度5.0質量%に濃縮した水性ゾルを25℃で1ヶ月静置したところ、物性及び外観に変化はなく、安定であった。
実施例5 純水242.9gに市販の酢酸イットリウム粉末(アルドリッチ社製、酸化イットリウム(Y23)換算濃度35.5質量%、酢酸濃度54.0質量%)14.8gと市販のオキシ酢酸ジルコニウム水溶液(第一稀元素化学工業(株)製、酸化ジルコニウム(ZrO2)換算濃度20.15質量%、酢酸濃度12.8質量%)21.3gを加えて、Y/(Y+Zr)原子比が0.57、COOH基/(Y+Zr)モル比が2.2、固形分(酢酸イットリウムと酢酸ジルコニウムの酸化物換算の合計:Y23+ZrO2)濃度が3.4質量%、pH5.1、電気伝導度7.00mS/cmの混合水溶液を279g調製した。この混合水溶液をSUS316製の300mlオートクレーブ容器に仕込み、230℃で6時間水熱処理した。オートクレーブ容器内の圧力は2.7MPaであった。得られた水性ゾルは、pH4.2、電気伝導度5.31mS/cmであった。この水性ゾルをエバポレーターで減圧濃縮して固形分濃度を5.0質量%に調整し、分光式測色色差計TC−1899MKで光路長10mmにおける波長550nmの光線透過率を測定したところ93%であった。次いで、前記固形分濃度5.0質量%に濃縮した水性ゾルを限外濾過膜を用いて純水で洗浄を行い、pH5.8、電気伝導度0.354mS/cm、固形分濃度5.0質量%の水性ゾル112gを得た。この固形分濃度5.0質量%の水性ゾルの光路長10mmにおける波長550nmの光線透過率は96%であった。この水性ゾルに含まれるコロイド粒子を透過型電子顕微鏡で観察したところ、一次粒子径の最大値が5nm、一次粒子径の平均値が3nmの立方体粒子であった。この水性ゾルの動的光散乱法による測定粒子径(N4プラス装置で測定)は9nmであった。また、この水性ゾルを120℃で乾燥して粉末X線回折を測定したところ、回折角度2θ=30.0°、50.2°及び59.5°に主ピークを有し、ASTMカード30−1468に記載の正方晶又は立方晶系の酸化イットリウム安定化酸化ジルコニウムの特性ピークと一致した。X線結晶子は5.5nmであった。更にこの水性ゾルに含まれるコロイド粒子は、蛍光X線装置で定量分析した結果、Y/(Y+Zr)原子比が0.22の組成を有していた。前記限外濾過洗浄して固形分濃度5.0質量%に濃縮した水性ゾルを25℃で1ヶ月静置したところ、物性及び外観に変化はなく、安定であった。
比較例2 純水244.2gに市販の酢酸イットリウム粉末(アルドリッチ社製、酸化イットリウム(Y23)換算濃度35.5質量%、酢酸濃度54.0質量%)1.1gと市販のオキシ酢酸ジルコニウム水溶液(第一稀元素化学工業(株)製、酸化ジルコニウム(ZrO2)換算濃度20.15質量%、酢酸濃度12.8質量%)33.7gを加えて、Y/(Y+Zr)原子比が0.06、COOH基/(Y+Zr)モル比が1.4、固形分(酢酸イットリウムと酢酸ジルコニウムの酸化物換算の合計:Y23+ZrO2)濃度が2.6質量%、pH4.6、電気伝導度1.81mS/cmの混合水溶液を279g調製した。この混合水溶液をSUS316製の300mlオートクレーブ容器に仕込み、180℃で6時間水熱処理した。オートクレーブ容器内の圧力は0.82MPaであった。得られた水性ゾルは白色を呈し、pH3.1、電気伝導度0.82mS/cmであった。この水性ゾルを限外濾過膜を用いて純水で洗浄を行い、pH5.0、電気伝導度0.081mS/cm、固形分濃度5.0質量%の水性ゾル125gを得た。この水性ゾルに含まれるコロイド粒子を透過型電子顕微鏡で観察したところ、一次粒子は15nmの立方体粒子と短軸20nm、長軸40nmの紡錘状粒子との混在であった。この水性ゾルの動的光散乱法による測定粒子径(N4プラス装置で測定)は36nmであった。またこの水性ゾルを120℃で乾燥して粉末X線回折を測定したところ6つの主ピークを有し、そのうち回折角度2θ=30.0°、50.2°及び59.5°の3つの主ピークはASTMカード30−1468に記載の正方晶又は立方晶系の酸化イットリウム安定化酸化ジルコニウムの特性ピークと一致し、並びに残りの回折角度2θ=28.2°、31.5°及び49.9°の3つの主ピークはASTMカード36−420に記載の単斜晶系酸化ジルコニウムの特性ピークと一致した。よって、この水性ゾルは正方晶又は立方晶系の酸化イットリウム安定化酸化ジルコニウムと単斜晶系酸化ジルコニウムとの混合相である。上記固形分濃度5.0質量%の水性ゾルの光路長10mmにおける波長550nmの光線透過率は38%と低く、水性ゾルの透明性は悪かった。
比較例3 純水244.7gに市販の酢酸イットリウム粉末(アルドリッチ社製、酸化イットリウム(Y23)換算濃度35.5質量%、酢酸濃度54.0質量%)19.9gと市販のオキシ酢酸ジルコニウム水溶液(第一稀元素化学工業(株)製、酸化ジルコニウム(ZrO2)換算濃度20.15質量%、酢酸濃度12.8質量%)14.4gを加えて、Y/(Y+Zr)原子比が0.73、COOH基/(Y+Zr)モル比が2.4、固形分(酢酸イットリウムと酢酸ジルコニウムの酸化物換算の合計:Y23+ZrO2)濃度が2.7質量%、pH5.2、電気伝導度7.68mS/cmの混合水溶液を279g調製した。この混合水溶液をSUS316製の300mlオートクレーブ容器に仕込み、230℃で6時間水熱処理した。オートクレーブ容器内の圧力は2.7MPaであった。得られた水性ゾルには、半透明のコロイド溶液の他少量の白色沈殿物が混在していた。この水性ゾルに含まれるコロイド粒子を透過型電子顕微鏡で観察したところ、一次粒子径の平均値が2nmの立方体粒子と、一次粒子径が凝集して50〜300nm程度の二次凝集体とが視野全体に観察された。この水性ゾルの動的光散乱法による測定粒子径(N4プラス装置で測定)は417nmと大きかった。またこの水性ゾルを120℃で乾燥して粉末X線回折を測定したところ、回折角度2θ=30.0°、50.2°及び59.5°に小さいピークを有し、これらピークはASTMカード30−1468に記載の正方晶又は立方晶系の酸化イットリウム安定化酸化ジルコニウムの特性ピークと一致した。
表1に実施例1〜5及び比較例2〜3の結果を示す。
Figure 0005645015
表1の実施例1〜5より、水熱処理前の酢酸イットリウムとオキシ酢酸ジルコニウムの混合水溶液のY/(Y+Zr)原子比が0.10以上0.60以下の場合、得られた水性ゾルは、粒子径が小さく、二次凝集が少なく、及び透明性が高いことが示された。それに対して、比較例2より、水熱処理前の酢酸イットリウムとオキシ酢酸ジルコニウムの混合水溶液のY/(Y+Zr)原子比が0.10未満の場合、短軸20nm、長軸40nmの紡錘状の単斜晶系酸化ジルコニウム粒子が生成するため、得られた水性ゾルは透明性が低くなることが示された。
また、表1の比較例3より、水熱処理前の酢酸イットリウムとオキシ酢酸ジルコニウムの混合水溶液のY/(Y+Zr)原子比が0.60より大きい場合、二次凝集体が生成するため、得られた水性ゾルの透明性が低くなることが示された。
実施例6純水244.1gに市販の酢酸イットリウム粉末(アルドリッチ社製、酸化イットリウム(Y23)換算濃度35.5質量%、酢酸濃度54.0質量%)2.9gと市販のオキシ酢酸ジルコニウム水溶液(第一稀元素化学工業(株)製、酸化ジルコニウム(ZrO2)換算濃度20.15質量%、酢酸濃度12.8質量%)32.0gを加えて、Y/(Y+Zr)原子比が0.15、COOH基/(Y+Zr)モル比が1.5、固形分(酢酸イットリウムと酢酸ジルコニウムの酸化物換算の合計:Y23+ZrO2)濃度が2.7質量%、pH4.8、電気伝導度3.05mS/cmの混合水溶液を279g調製した。この混合水溶液をSUS316製の300mlオートクレーブ容器に仕込み、180℃で21時間水熱処理した。オートクレーブ容器内の圧力は0.82MPaであった。得られた水性ゾルは、pH3.6、電気伝導度0.95mS/cmであった。この水性ゾルをエバポレーターで減圧濃縮して固形分濃度を5.0質量%に調整し、分光式測色色差計TC−1899MKで光路長10mmにおける波長550nmの光線透過率を測定したところ74%であった。次いで、前記固形分濃度5.0質量%に濃縮した水性ゾルを限外濾過膜を用いて純水で洗浄を行い、pH4.9、電気伝導度0.150mS/cm、固形分濃度5.0質量%の水性ゾルを得た。この水性ゾルに含まれるコロイド粒子を透過型電子顕微鏡で観察したところ、一次粒子径の最大値が10nm、一次粒子径の平均値が8nmの立方体粒子であった。動的光散乱法による測定粒子径(N4プラス装置で測定)は21nmであった。また、この水性ゾルを120℃で乾燥して粉末X線回折を測定したところ、回折角度2θ=30.0°、50.2°及び59.5°に主ピークを有し、ASTMカード30−1468に記載の正方晶又は立方晶系の酸化イットリウム安定化酸化ジルコニウムの特性ピークと一致した。X線結晶子は10.8nmであった。上記固形分濃度5.0質量%の水性ゾルの光路長10mmにおける波長550nmの光線透過率は77%であった。前記エバポレーターで固形分濃度5.0質量%に濃縮した水性ゾルを25℃で1ヶ月静置したところ、物性及び外観に変化はなく、安定であった。
実施例7 純水244.1gに市販の酢酸イットリウム粉末(アルドリッチ社製、酸化イットリウム(Y23)換算濃度35.5質量%、酢酸濃度54.0質量%)2.9gと市販のオキシ酢酸ジルコニウム水溶液(第一稀元素化学工業(株)製、酸化ジルコニウム(ZrO2)換算濃度20.15質量%、酢酸濃度12.8質量%)32.0gを加えて、Y/(Y+Zr)原子比が0.15、COOH基/(Y+Zr)モル比が1.5、固形分(酢酸イットリウムと酢酸ジルコニウムの酸化物換算の合計:Y23+ZrO2)濃度が2.7質量%、pH4.8、電気伝導度3.05mS/cmの混合水溶液を279g調製した。この混合水溶液をSUS316製の300mlオートクレーブ容器に仕込み、200℃で6時間水熱処理した。オートクレーブ容器内の圧力は1.3MPaであった。得られた水性ゾルはpH3.2、電気伝導度0.92mS/cmであった。この水性ゾルをエバポレーターで減圧濃縮して固形分濃度を5.0質量%に調整し、分光式測色色差計TC−1899MKで光路長10mmにおける波長550nmの光線透過率を測定したところ77%であった。次いで、前記固形分濃度5.0質量%に濃縮した水性ゾルを限外濾過膜を用いて純水で洗浄を行い、pH4.9、電気伝導度0.145mS/cm、固形分濃度5.0質量%の水性ゾルを得た。この水性ゾルに含まれるコロイド粒子を透過型電子顕微鏡で観察したところ、一次粒子径の最大値が10nm、一次粒子径の平均値が8nmの立方体粒子であった。動的光散乱法による測定粒子径(N4プラス装置で測定)は29nmであった。また、この水性ゾルを120℃で乾燥して粉末X線回折を測定したところ、回折角度2θ=30.0°、50.2°及び59.5°に主ピークを有し、ASTMカード30−1468に記載の正方晶又は立方晶系の酸化イットリウム安定化酸化ジルコニウムの特性ピークと一致した。X線結晶子は9.3nmであった。上記固形分濃度5.0質量%の水性ゾルの光路長10mmにおける波長550nmの光線透過率は80%であった。前記エバポレーターで固形分濃度5.0質量%に濃縮した水性ゾルを25℃で1ヶ月静置したところ、物性及び外観に変化はなく、安定であった。
実施例8 純水244.1gに市販の酢酸イットリウム粉末(アルドリッチ社製、酸化イットリウム(Y23)換算濃度35.5質量%、酢酸濃度54.0質量%)2.9gと市販のオキシ酢酸ジルコニウム水溶液(第一稀元素化学工業(株)製、酸化ジルコニウム(ZrO2)換算濃度20.15質量%、酢酸濃度12.8質量%)32.0gを加えた後、陰イオン交換樹脂IRA−410(オルガノ(株)製)を9ml添加して1時間30分攪拌した後、陰イオン交換樹脂を除くことにより、Y/(Y+Zr)原子比が0.15、COOH基/(Y+Zr)モル比が1.3、固形分(酢酸イットリウムと酢酸ジルコニウムの酸化物換算の合計:Y23+ZrO2)濃度が2.7質量%、pH5.0、電気伝導度2.66mS/cmの混合水溶液を279g調製した。この混合水溶液をSUS316製の300mlオートクレーブ容器に仕込み、180℃で6時間水熱処理した。オートクレーブ容器内の圧力は0.82MPaであった。得られた水性ゾルはpH3.5、電気伝導度0.84mS/cmであった。この水性ゾルをエバポレーターで減圧濃縮して固形分濃度を5.0質量%に調整し、分光式測色色差計TC−1899MKで光路長10mmにおける波長550nmの光線透過率を測定したところ72%であった。次いで、前記固形分濃度5.0質量%に濃縮した水性ゾルを限外濾過膜を用いて純水で洗浄を行い、pH5.1、電気伝導度0.135mS/cm、固形分濃度5.0質量%の水性ゾル130gを得た。この水性ゾルに含まれるコロイド粒子を透過型電子顕微鏡で観察したところ、一次粒子径の最大値が10nm、一次粒子径の平均値が8nmの立方体粒子であった。動的光散乱法による測定粒子径(N4プラス装置で測定)は23nmであった。また、この水性ゾルを120℃で乾燥して粉末X線回折を測定したところ、回折角度2θ=30.0°、50.2°及び59.5°に主ピークを有し、ASTMカード30−1468に記載の正方晶又は立方晶系の酸化イットリウム安定化酸化ジルコニウムの特性ピークと一致した。X線結晶子は13.0nmであった。更にこの水性ゾルに含まれるコロイド粒子は、蛍光X線装置で定量分析した結果、Y/(Y+Zr)原子比が0.11の組成を有していた。また上記固形分濃度5.0質量%の水性ゾルの光路長10mmにおける波長550nmの光線透過率は75%であった。前記エバポレーターで固形分濃度5.0質量%に濃縮した水性ゾルを25℃で1ヶ月静置したところ、物性及び外観に変化はなく、安定であった。
実施例9 99.7質量%酢酸22.0gを純水68gで希釈した水溶液に市販のオキシ炭酸ジルコニウム粉末(酸化ジルコニウム(ZrO2)換算濃度40.3質量% アドバンスド マテリアル リソーシズ社(ADVANCED MATERIAL RESOURCES LTD)社製)74.4を溶解し、酸化ジルコニウム(ZrO2)換算濃度が18.2質量%、酢酸濃度13.3質量%のオキシ酢酸ジルコニウム水溶液159.5gを作製した。純水241.8gに市販の酢酸イットリウム粉末(アルドリッチ社製、酸化イットリウム(Y23)換算濃度35.5質量%、酢酸濃度54.0質量%)2.9gと上記で調製したオキシ酢酸ジルコニウム水溶液(酸化ジルコニウム(ZrO2)換算濃度18.8質量%、酢酸濃度13.3質量%)34.3gとをY/(Y+Zr)原子比が0.15、COOH基/(Y+Zr)モル比が1.9、固形分(酢酸イットリウムと酢酸ジルコニウムの酸化物換算の合計:Y23+ZrO2)濃度が2.7質量%、pH4.7、電気伝導度3.17mS/cmの混合水溶液を279g調製した。この混合水溶液をSUS316製の300mlオートクレーブ容器に仕込み、180℃で6時間水熱処理した。オートクレーブ容器内の圧力は0.82MPaであった。得られた水性ゾルはpH3.4、電気伝導度1.15mS/cmであった。この水性ゾルをエバポレーターで減圧濃縮して固形分濃度を5.0質量%に調製し、分光式測色色差計TC−1899MKで光路長10mmにおける波長550nmの光線透過率を測定したところ80%であった。次いで、前記固形分濃度5.0質量%に濃縮した水性ゾルを限外濾過膜を用いて純水で洗浄を行い、pH4.7、電気伝導度0.200mS/cm、固形分濃度5.0質量%の水性ゾル132gを得た。この水性ゾルに含まれるコロイド粒子を透過型電子顕微鏡で観察したところ、一次粒子径の最大値が10nm、一次粒子径の平均値が8nmの立方体粒子であった。動的光散乱法による測定粒子径(N4プラス装置で測定)は19nmであった。また、この水性ゾルを120℃で乾燥して粉末X線回折を測定したところ、回折角度2θ=30.0°、50.2°及び59.5°に主ピークを有し、ASTMカード30−1468に記載の正方晶又は立方晶系の酸化イットリウム安定化酸化ジルコニウムの特性ピークと一致した。X線結晶子は9.3nmであった。更にこの水性ゾルに含まれるコロイド粒子は、蛍光X線装置で定量分析した結果、Y/(Y+Zr)原子比が0.11の組成を有していた。また上記固形分濃度5.0質量%の水性ゾルの光路長10mmにおける波長550nmの光線透過率は83%であった。前記エバポレーターで固形分濃度5.0質量%に濃縮した水性ゾルを25℃で1ヶ月静置したところ、物性及び外観に変化はなく、安定であった。
実施例10 純水1750gに市販の酢酸イットリウム粉末(アルドリッチ社製、酸化イットリウム(Y23)換算濃度35.7質量%、酢酸濃度54.0質量%)28.7gと市販のオキシ酢酸ジルコニウム水溶液(第一稀元素化学工業(株)製、酸化ジルコニウム(ZrO2)換算濃度20.15質量%、酢酸濃度12.8質量%)221.3gを加えて、Y/(Y+Zr)原子比が0.20、COOH基/(Y+Zr)モル比が1.5、固形分(酢酸イットリウムと酢酸ジルコニウムの酸化物換算の合計:Y23+ZrO2)濃度が2.7質量%、pH5.0、電気伝導度4.60mS/cmの混合水溶液を2000g調製した。この混合水溶液をSUS316製の3リットルのオートクレーブ容器に仕込み、碇型攪拌翼で攪拌しながら180℃で6時間水熱処理した。オートクレーブ容器内の圧力は0.82MPaであった。得られた水性ゾルはpH4.0、電気伝導度2.85mS/cm、動的光散乱法による測定粒子径(N4プラス装置で測定)は13nmであった。このコロイド溶液をエバポレーターで減圧濃縮して固形分濃度を5.0質量%に調製し、分光式測色色差計TC−1899MKで光路長10mmにおける波長550nmの光線透過率を測定したところ95%であった。次いで、前記5.0質量%に濃縮された水性ゾルを限外濾過膜を用いて純水で洗浄を行い、pH5.2、電気伝導度0.266mS/cm、固形分5.0質量%の水性ゾル1020gを得た。この水性ゾルを透過型電子顕微鏡で観察したところ、一次粒子径の最大値が8nm、一次粒子径の平均値が6nmの立方体粒子であった。動的光散乱法による測定粒子径(N4プラス装置で測定)は8nmであった。また、この水性ゾルを120℃で乾燥して粉末X線回折を測定したところ、回折角度2θ=30.0°、50.2°及び59.5°に主ピークを有し、ASTMカード30−1468に記載の正方晶又は立方晶系の酸化イットリウム安定化酸化ジルコニウムの特性ピークと一致した。X線結晶子は8.7nmであった。更にこの水性ゾルに含まれるコロイド粒子は、蛍光X線装置で定量分析した結果、Y/(Y+Zr)原子比が0.20の組成を有していた。上記固形分濃度5.0質量%の水性ゾルの光路長10mmにおける波長550nmの光線透過率は96%であった。
上記水性ゾル600gを2リットルのポリ瓶に入れ、ディスパーで攪拌しながら5質量%のクエン酸水溶液108gを添加した。その後2時間攪拌し、pH2.8、電気伝導度0.979mS/cmの白色スラリーを調製した。次いで、この白色スラリーをヌッチェを用いて純水で濾過、洗浄を行った。得られたウェットケーキを純水で分散して、pH3.4、電気伝導度0.112mS/cm、固形分3.8質量%の白色スラリーを800g作製した。この白色スラリーを攪拌しながら10質量%のイソプロピルアミン水溶液を7.8g添加したところ、pH6.6、電気伝導度0.914mS/cm、動的光散乱法による測定粒子径11nmの水性ゾルが得られた。このゾルの攪拌下に、5質量%のクエン酸水溶液10.4gを添加後、限外濾過膜を用いて濃縮することにより動的光散乱法による粒子径が8nm、pH4.5、電気伝導度1.45mS/cm、固形分10.0質量%の酸化イットリウム安定化酸化ジルコニウム粒子の水性ゾル278gが得られた。純水で固形分濃度5.0質量%に調整した水性ゾルの光路長10mmにおける波長550nmの光線透過率は94%であった。この水性ゾル278gを1リットルのナス型フラスコを備えたロータリーエバポレーターに投入し、70Torrの減圧下でメタノールを連続的に投入して、前記水性ゾルの水媒体をメタノールに置換し、酸化イットリウム安定化酸化ジルコニウムメタノールゾル270gを得た。このメタノールゾルは、固形分10.3質量%、メタノールゾルを純水で希釈(質量比1:1)した溶液のpHは5.7、動的光散乱法による測定粒子径は8nmであった。また、このメタノールゾルをメタノールにより固形分濃度5質量%に調整したゾルの光路長10mmにおける550nmの光線透過率は94%であった。得られた固形分10.3質量%のメタノールゾルを25℃で1ヶ月静置したところ、物性及び外観に変化はなく、安定であった
実施例11 純水1750gに市販の酢酸イットリウム粉末(アルドリッチ社製、酸化イットリウム(Y23)換算濃度35.7質量%、酢酸濃度54.0質量%)28.7gと市販のオキシ酢酸ジルコニウム水溶液(第一希元素化学工業(株)製、酸化ジルコニウム(ZrO2)換算濃度20.15質量%、酢酸濃度12.8質量%)221.3gを加えて、Y/(Y+Zr)原子比が0.20、COOH基/(Y+Zr)モル比が1.5、固形分(酢酸イットリウムと酢酸ジルコニウムの酸化物換算の合計:Y23+ZrO2)濃度が2.7質量%、pH4.9、電気伝導度4.71mS/cmの混合水溶液を2000g調製した。この混合水溶液をSUS316製の3リットルのオートクレーブ容器に仕込み、碇型攪拌翼で攪拌しながら180℃で6時間水熱処理した。得られた水性ゾルはpH4.1、電気伝導度2.45mS/cm、動的光散乱法による測定粒子径(N4プラス装置で測定)は12nmであった。この水性ゾルをエバポレーターで減圧濃縮して固形分濃度を5.0質量%に調製し、分光式測色色差計TC−1899MKで光路長10mmにおける波長550nmの光線透過率を測定したところ97%であった。次いで、前記5.0質量%に濃縮された水性ゾルを限外濾過膜を用いて純水で洗浄を行い、pH5.7、電気伝導度0.245mS/cm、固形分5.0質量%の水性ゾル1020gを得た。この水性ゾルを透過型電子顕微鏡で観察したところ、一次粒子径8の最大値は8nmであり、一次粒子径の平均値は6nmの立方体粒子であった。動的光散乱法による測定粒子径(N4プラス装置で測定)は10nmであった。また、この水性ゾルを120℃で乾燥して粉末X線回折を測定したところ、回折角度2θ=30.0°、50.2°及び59.5°に主ピークを有し、ASTMカード30−1468に記載の正方晶又は立方晶系の酸化イットリウム安定化酸化ジルコニウムの特性ピークと一致した。X線結晶子は8.5nmであった。更にこの水性ゾルに含まれるコロイド粒子は、蛍光X線装置で定量分析した結果、Y/(Y+Zr)原子比が0.20の組成を有していた。上記固形分濃度5.0質量%の水性ゾルの光路長10mmにおける波長550nmの光線透過率は97%であった。
2リットルのポリ瓶にイソプロピルアルコール940gを投入後、マグネットスターラーで攪拌しながら10質量%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液18.8g及び10質量%酢酸水溶液3.8gを加えて調製した。続いてマグネットスターラーで攪拌しながら上記水性ゾル376gを添加し、動的光散乱法による粒子径が12nm、pH4.2、電気伝導度0.050mS/cm、固形分1.4質量%の酸化イットリウム安定化酸化ジルコニウム粒子を含有したイソプロピルアルコールと水の混合溶媒ゾル1339gが得られた。この混合溶媒ゾル1339gを1リットルのナス型フラスコを備えたロータリーエバポレーターに投入し、70Torrの減圧下でイソプロピルアルコールを連続的に投入して、前記混合溶媒ゾル中の水をイソプロピルアルコールに置換し、酸化イットリウム安定化酸化ジルコニウムイソプロピルアルコールゾル180gが得られた。このイソプロピルアルコールゾルは、固形分10.4質量%、イソプロピルアルコールゾルを純水で希釈(質量比1:1)した溶液のpHは4.1、動的光散乱法による測定粒子径は10nmであった。また、このイソプロピルアルコールゾルをイソプロピルアルコールにより固形分濃度5質量%に調整したゾルの光路長10mmにおける550nmの光線透過率は93%であった。得られた固形分10.4質量%のイソプロピルアルコールゾルを25℃で1ヶ月静置したところ、物性及び外観に変化はなく、安定であった。
比較例4 純水244.1gに市販の酢酸イットリウム粉末(アルドリッチ社製、酸化イットリウム(Y23)換算濃度35.5質量%、酢酸濃度54.0質量%)2.9gと市販のオキシ酢酸ジルコニウム水溶液(第一稀元素化学工業(株)製、酸化ジルコニウム(ZrO2)換算濃度20.15質量%、酢酸濃度12.8質量%)32.0gを加えて、Y/(Y+Zr)原子比が0.15、COOH基/(Y+Zr)モル比が1.5、固形分(酢酸イットリウムと酢酸ジルコニウムの酸化物換算の合計:Y23+ZrO2)濃度が2.7質量%、pH4.8、電気伝導度3.05mS/cmの混合水溶液を279g調製した。この混合水溶液をSUS316製の300mlオートクレーブ容器に仕込み、180℃で1時間水熱処理した。オートクレーブ容器内の圧力は0.82MPaであった。水熱処理後の生成物はpH4.0、電気伝導度1.65mS/cmの半透明の白色スラリーであった。このスラリーに含まれる粒子を透過型電子顕微鏡で観察したところ、25〜100nmのアメーバ状の無定形物質と一次粒子径の最大値が10nm、一次粒子径の平均値が8nmの立方体粒子が観察された。このスラリーの動的光散乱法による測定粒子径(N4プラス装置で測定)は310mであった。このスラリーを120℃で乾燥して粉末X線回折を測定したところ小さいピークを有し、ASTMカード30−1468に記載の正方晶又は立方晶系の酸化イットリウム安定化酸化ジルコニウムの特性ピークと一致した。このスラリーをエバポレーターで減圧濃縮して、固形分濃度5.0質量%にしたときの光路長10mmにおける波長550nmの光線透過率は1%であった。
比較例5 純水244.1gに市販の酢酸イットリウム粉末(アルドリッチ社製、酸化イットリウム(Y23)換算濃度35.5質量%、酢酸濃度54.0質量%)2.9gと市販のオキシ酢酸ジルコニウム水溶液(第一稀元素化学工業(株)製、酸化ジルコニウム(ZrO2)換算濃度20.15質量%、酢酸濃度12.8質量%)32.0gを加えて、Y/(Y+Zr)原子比が0.15、COOH基/(Y+Zr)モル比が1.5、固形分(酢酸イットリウムと酢酸ジルコニウムの酸化物換算の合計:Y23+ZrO2)濃度が2.7質量%、pH4.8、電気伝導度3.05mS/cmの混合水溶液を279g調製した。この混合水溶液をSUS316製の300mlオートクレーブ容器に仕込み、150℃で21時間水熱処理した。オートクレーブ容器内の圧力は0.44MPaであった。水熱処理後の生成物はpH4.3、電気伝導度2.45mS/cmの半透明の白色スラリーであった。このスラリーに含まれる粒子を透過型電子顕微鏡で観察したところ、25〜100nmのアメーバ状の無定形物質であった。このスラリーを120℃で乾燥して粉末X線回折を測定したところ、回折ピークは現れず、この乾燥物は無定形であることが示された。また、このスラリーをエバポレーターで減圧濃縮して、固形分濃度5.0質量%にしたときの光路長10mmにおける波長550nmの光線透過率は2%であった。
比較例6 純水244.1gに市販の酢酸イットリウム粉末(アルドリッチ社製、酸化イットリウム(Y23)換算濃度35.5質量%、酢酸濃度54.0質量%)2.9gと市販のオキシ酢酸ジルコニウム水溶液(第一稀元素化学工業(株)製、酸化ジルコニウム(ZrO2)換算濃度20.15質量%、酢酸濃度12.8質量%)32.0gを加えて、Y/(Y+Zr)原子比が0.15、COOH基/(Y+Zr)モル比が1.5、固形分(酢酸イットリウムと酢酸ジルコニウムの酸化物換算の合計:Y23+ZrO2)濃度が2.7質量%、pH4.8、電気伝導度3.05mS/cmの混合水溶液を279g調製した。この混合水溶液をSUS316製の300mlオートクレーブ容器に仕込み、300℃で6時間水熱処理した。オートクレーブ容器内の圧力は9.4MPaであった。得られた水性ゾルは薄茶色を呈し、pH3.1、電気伝導度0.99mS/cmであった。また、SUS316製オートクレーブ容器に腐食がみられた。この水性ゾルを限外濾過膜を用いて純水で洗浄を行い、pH3.1、電気伝導度0.99mS/cm、固形分濃度5.0質量%の水性ゾルを得た。この水性ゾルに含まれるコロイド粒子を透過型電子顕微鏡で観察したところ、一次粒子径の最大値が10nm、一次粒子径の平均値が8nmの立方体粒子であった。動的光散乱法による測定粒子径(N4プラス装置で測定)は64nmであった。また、この水性ゾルを120℃で乾燥して粉末X線回折を測定したところ、回折角度2θ=30.0°、50.2°及び59.5°に主ピークを有し、ASTMカード30−1468に記載の正方晶又は立方晶系の酸化イットリウム安定化酸化ジルコニウムの特性ピークと一致した。X線結晶子は8.1nmであった。上記固形分濃度5.0質量%の水性ゾルの光路長10mmにおける波長550nmの光線透過率は53%であった。
比較例7 純水244.1gに市販の酢酸イットリウム粉末(アルドリッチ社製、酸化イットリウム(Y23)換算濃度35.5質量%、酢酸濃度54.0質量%)2.9gと市販のオキシ酢酸ジルコニウム水溶液(第一稀元素化学工業(株)製、酸化ジルコニウム(ZrO2)換算濃度20.15質量%、酢酸濃度12.8質量%)32.0gを加えた後、陰イオン交換樹脂IRA−410(オルガノ(株)製)を19ml添加して1時間30分攪拌した後、陰イオン交換樹脂を除くことにより、Y/(Y+Zr)原子比が0.15、COOH基/(Y+Zr)モル比が1.0、固形分(酢酸イットリウムと酢酸ジルコニウムの酸化物換算の合計:Y23+ZrO2)濃度2.7質量%、pH5.5、電気伝導度2.07mS/cmの混合水溶液を279g調製した。この混合水溶液をSUS316製の300mlオートクレーブ容器に仕込み、180℃で6時間水熱処理した。オートクレーブ容器内の圧力は0.82MPaであった。得られた水性ゾルはpH3.6、電気伝導度0.73mS/cmであった。この水性ゾルを限外濾過膜を用いて純水で洗浄することによりpH5.2、電気伝導度0.130mS/cm、固形分濃度5.0質量%の水性ゾルが130g得られた。この水性ゾルに含まれるコロイド粒子を透過型電子顕微鏡で観察したところ、一次粒子径の最大値が10nm、一次粒子径の平均値が8nmの立方体粒子であった。動的光散乱法による測定粒子径(N4プラス装置で測定)は69nmであった。また、この水性ゾルを120℃で乾燥して粉末X線回折を測定したところ、回折角度2θ=30.0°、50.2°及び59.5°に主ピークを有し、ASTMカード30−1468に記載の正方晶又は立方晶系の酸化イットリウム安定化酸化ジルコニウムの特性ピークと一致した。X線結晶子は10.3nmであった。更にこの水性ゾルに含まれるコロイド粒子は、蛍光X線装置で定量分析した結果、Y/(Y+Zr)原子比が0.11の組成を有していた。また上記固形分濃度5.0質量%の水性ゾルの光路長10mmにおける波長550nmの光線透過率は38%であった。また、前記混合水溶液は、1日後にゲル化し、不安定な水溶液であった。
比較例8 99.7質量%酢酸29.6gを純水49gで希釈した水溶液に市販のオキシ炭酸ジルコニウム粉末(酸化ジルコニウム(ZrO2)換算濃度40.3質量%、アドバンスド マテリアル リソーシズ社(ADVANCED MATERIAL RESOURCES LTD)社製)60.0gを溶解し、酸化ジルコニウム(ZrO2)換算濃度が16.6質量%、酢酸濃度20.3質量%のオキシ酢酸ジルコニウム水溶液145.7gを作製した。純水237.4gに市販の酢酸イットリウム粉末(アルドリッチ社製、酸化イットリウム(Y23)換算濃度35.5質量%、酢酸濃度54.0質量%)2.9gと作製したオキシ酢酸ジルコニウム水溶液(酸化ジルコニウム(ZrO2)換算濃度16.6質量%、酢酸濃度20.3質量%)38.8gをY/(Y+Zr)原子比が0.15、COOH基/(Y+Zr)モル比が2.6、固形分(酢酸イットリウムと酢酸ジルコニウムの酸化物換算の合計:Y23+ZrO2)濃度が2.7質量%、pH4.2、電気伝導度3.18mS/cmの混合水溶液を279g調製した。この混合水溶液をSUS316製の300mlオートクレーブ容器に仕込み、180℃で6時間水熱処理した。オートクレーブ容器内の圧力は0.82MPaであった。得られた水性ゾルはpH3.4、電気伝導度1.44mS/cmであった。この水性ゾルを限外濾過膜を用いて純水で洗浄することによりpH4.7、電気伝導度0.210mS/cm、固形分濃度5.0質量%の水性ゾルが135g得られた。この水性ゾルに含まれるコロイド粒子を透過型電子顕微鏡で観察したところ、一次粒子には15nmの立方体粒子と短軸20nm、長軸40nmの紡錘状粒子とが混在していた。動的光散乱法による測定粒子径(N4プラス装置で測定)は29nmであった。また、この水性ゾルを120℃で乾燥して粉末X線回折を測定したところ6つの主ピークを有し、そのうち回折角度2θ=30.0°、50.2°及び59.5°の3つの主ピークはASTMカード30−1468に記載の正方晶又は立方晶系の酸化イットリウム安定化酸化ジルコニウムの特性ピークと一致し、並びに残りの回折角度2θ=28.2°、31.5°及び49.9°の3つの主ピークはASTMカード36−420に記載の単斜晶系酸化ジルコニウムの特性ピークと一致した。よって、得られた水性ゾルは正方晶又は立方晶系の酸化イットリウム安定化酸化ジルコニウムと単斜晶系酸化ジルコニウムとの混合相である。上記固形分濃度5.0質量%の水性ゾルの光路長10mmにおける波長550nmの光線透過率は55%であった。
比較例9 市販のオキシ炭酸ジルコニウム粉末(酸化ジルコニウム(ZrO2)換算濃度40.3質量% アドバンスド マテリアル リソーシズ社(ADVANCED MATERIAL RESOURCES LTD)社製)を60質量%濃硝酸で溶解し、酸化ジルコニウム(ZrO2)換算濃度が24.5質量%の硝酸ジルコニウム水溶液を調製した。続いて純水236.7gに市販の硝酸イットリウム水溶液(日本イットリウム社製 酸化イットリウム(Y23)換算濃度8.5質量%)16.9gと上記硝酸ジルコニウム水溶液25.4gとを加えて、Y/(Y+Zr)原子比が0.20、固形分(硝酸イットリウムと硝酸ジルコニウムの酸化物換算の合計:Y23+ZrO2)濃度の合計が2.7質量%、pHが1.4、電導度が47.2mS/cmの混合水溶液を279g調製した。この混合水溶液をSUS316製の300mlオートクレーブ容器に仕込み、180℃で6時間水熱処理した。オートクレーブ容器内の圧力は0.82MPaであった。得られた水性ゾルはpH0.8、電導度が122.1mS/cmであった。この水性ゾルを限外濾過膜を用いて純水で洗浄することによりpH3.9、電気伝導度0.479mS/cm、固形分濃度5.0質量%の白色コロイド溶液が得られた。透過型電子顕微鏡で観察したところ、一次粒子として短軸20nm、長軸40nmの紡錘状粒子と40〜100nmのアメーバ状粒子とが混在していた。動的光散乱法による測定粒子径(N4プラス装置で測定)は100nmであった。洗浄後の水性ゾルを120℃で乾燥して粉末X線回折を測定したところ、回折角度2θ=28.2°、31.5°及び49.9°に主ピークを有し、ASTMカード36−420に記載の単斜晶系酸化ジルコニウムの特性ピークと一致した。上記固形分濃度5.0質量%の水性スラリーの光路長10mmにおける波長550nmの光線透過率は1%であった。
比較例10 純水199.9gに市販の硝酸イットリウム水溶液(日本イットリウム社製、酸化イットリウム(Y23)換算濃度8.5質量%)16.9gと比較例6で調製した硝酸ジルコニウム水溶液25.4gとを加えた後、10質量%水酸化カリウム水溶液を51.8g添加して、Y/(Y+Zr)原子比が0.20、固形分(硝酸イットリウムと硝酸ジルコニウムの酸化物換算の合計:Y23+ZrO2)濃度の合計が2.8質量%、pH5.2、電導度が47.8mS/cmの混合水溶液を294g調製した。この混合水溶液をSUS316製の300mlオートクレーブ容器に仕込み、180℃で6時間水熱処理した。オートクレーブ容器内の圧力は0.82MPaであった。水熱処理後の生成物はpH1.8、電気伝導度51.8mS/cmの白色スラリーであった。このスラリーを透過型電子顕微鏡で観察したところ、一次粒子としては8nm立方体粒子と短軸20nm、長軸40nmの紡錘状粒子とが混在していた。動的光散乱法による測定粒子径(N4プラス装置で測定)は220nmであった。このスラリーを120℃で乾燥して粉末X線回折を測定したところ6つの主ピークを有し、そのうち回折角度2θ=30.0°、50.2°及び59.5°の3つの主ピークはASTMカード30−1468に記載の正方晶又は立方晶系の酸化イットリウム安定化酸化ジルコニウムの特性ピークと一致し、並びに残りの回折角度2θ=28.2°、31.5°及び49.9°の3つの主ピークはASTMカード36−420に記載の単斜晶系酸化ジルコニウムの特性ピークと一致した。よって、得られた水性ゲルは正方晶又は立方晶系の酸化イットリウム安定化酸化ジルコニウムと単斜晶系酸化ジルコニウムとの混合相である。上記スラリーを洗浄した白色スラリーを限外濾過膜を用いて純水で洗浄することにより、pH3.1、電気伝導度0.08mS/cm、固形分濃度5.0質量%のスラリーを得た。この固形分濃度5.0質量%に調製したスラリーの光路長10mmにおける波長550nmの光線透過率は1%であった。
表2に実施例6乃至実施例10及び比較例3乃至比較例10の結果を示す。
Figure 0005645015
表1の実施例2、及び表2の実施例6乃至実施例9より、水熱処理する酢酸イットリウムとオキシ酢酸ジルコニウムの混合水溶液におけるCOOH基/(Y+Zr)モル比が1.2〜2.5の範囲の場合、得られる粒子の一次粒子径は8nmの立方体の酸化イットリウムで安定化された酸化ジルコニウム粒子であり、二次粒子径も30nm以下であり、固形分濃度5.0質量%に調製したスラリーの光路長10mmにおける波長550nmの光線透過率は70%以上であり、水性ゾルの透明性が高いことが示された。
それに対して、比較例4より、水熱処理時間が1時間と短い場合、又は比較例5の水熱処理温度が160℃より低い場合において、コロイド粒子は十分に又は全く成長せず、無定形物質が生成する。また比較例6の水熱処理温度が300℃より高い場合、SUS316製オートクレーブ容器が腐食し、容器から溶出した金属イオンが水性ゾルの凝集を引き起こしていることが分かる。
比較例7より、水熱処理する酢酸イットリウムとオキシ酢酸ジルコニウムの混合水溶液におけるCOOH基/(Y+Zr)モル比が1.2より小さい場合、得られた一次粒子は8nmの立方体の酸化イットリウムで安定化された酸化ジルコニウム粒子状であるが、動的光散乱法による測定した粒子は30nmより大きい粒子径を有することが分かる。さらに、固形分濃度を全質量の5.0質量%に調製したスラリーの光路長10mmにおける波長550nmの光線透過率は70%未満であり、透明性が低いことが示された。また調製した混合水溶液は、1日後にゲル化し、不安定であった。
比較例8より、水熱処理する酢酸ジルコニウムとオキシ酢酸ジルコニウムの混合水溶液におけるCOOH基/(Y+Zr)モル比が2.5より大きい場合、得られる粒子の一次粒子は15nmの立方体の酸化イットリウムで安定化された酸化ジルコニウム粒子と短軸20nm、長軸40nmの紡錘状の単斜晶系酸化ジルコニウム粒子との混合物であった。さらに、固形分濃度を全質量の5.0質量%に調製したスラリーの光路長10mmにおける波長550nmの光線透過率が55%であることから、得られた水性ゾルの透明性が悪いことが分かる。
比較例9及び比較例10より、イットリウムの酢酸塩の代わりにイットリウムの硝酸塩等の強酸塩を使用した場合、透明性が高く単分散に近い酸化イットリウム安定化酸化ジルコニウム粒子は得られないことが分かる。
本発明により得られる酸化イットリウム安定化酸化ジルコニウムゾルに含まれるコロイド粒子は、モース硬度が8.5でコランダム(α−アルミナ)に次ぐ硬度を有し、またダイヤモンドと同程度の高い屈折率を有している。更に本発明により得られる酸化イットリウム安定化酸化ジルコニウム有機溶媒ゾルは高透明性であるため、樹脂のフィラー材に用いることにより、透明性を維持しつつ屈折率及び機械的強度特性の調節材として有用である。また本発明により得られる酸化イットリウム安定化酸化ジルコニウムゾルに含まれるコロイド粒子は、高硬度で高分散性であるため、精密研磨における研磨砥粒としても有用である。更に本発明により得られる酸化イットリウム安定化酸化ジルコニウムゾルに含まれるコロイド粒子は、固体酸化物燃料電池の固体電解質や自動車用エンジンの三元触媒又は四元触媒にも有用である。

Claims (8)

  1. イットリウムのカルボン酸塩とオキシ酢酸ジルコニウムとをY/(Y+Zr)原子比として0.10〜0.60の範囲で水に溶解した混合水溶液であって、COOH基/(Y+Zr)モル比が1.2〜2.5の範囲である混合水溶液を、160〜280℃で2時間以上水熱処理する工程を含むことを特徴とする、水性ゾルに含まれるイットリウム及びジルコニウムの両者の金属酸化物(Y +ZrO )換算濃度を全質量の1〜10質量%に調製したとき、光路長10nmにおける波長550nmの光線透過率が70%以上である酸化イットリウム安定化酸化ジルコニウム水性ゾルの製造方法。
  2. 前記イットリウムのカルボン酸塩が酢酸塩又はクエン酸塩である請求項1に記載の酸化イットリウム安定化酸化ジルコニウム水性ゾルの製造方法。
  3. 前記混合水溶液における前記イットリウムのカルボン酸塩及びオキシ酢酸ジルコニウムの両者の金属酸化物(Y+ZrO)換算濃度が全質量に対して1〜10質量%の範囲である請求項1又は請求項2に記載の酸化イットリウム安定化酸化ジルコニウム水性ゾルの製造方法。
  4. 前記混合水溶液への酢酸又はクエン酸の添加により、該混合水溶液におけるCOOH基/(Y+Zr)モル比を1.2〜2.5の範囲に調整する請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の酸化イットリウム安定化酸化ジルコニウム水性ゾルの製造方法。
  5. 前記混合水溶液のpHが4.0〜5.5である請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の酸化イットリウム安定化酸化ジルコニウム水性ゾルの製造方法。
  6. 前記混合水溶液への酢酸又はクエン酸の添加により、該混合水溶液におけるpHを4.0〜5.5に調整する請求項5に記載の酸化イットリウム安定化酸化ジルコニウム水性ゾルの製造方法。
  7. 前記水熱処理された前記混合水溶液を更に脱塩処理する工程を含む請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の酸化イットリウム安定化酸化ジルコニウム水性ゾルの製造方法
  8. 請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の製造方法で得られた酸化イットリウム安定化酸化ジルコニウム水性ゾルの水媒体を有機溶媒置換法により有機溶媒に置換する工程を含む酸化イットリウム安定化酸化ジルコニウム有機溶媒ゾルの製造方法。
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