以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
また、実施の形態で用いる図面においては、断面図であっても図面を見易くするためにハッチングを省略する場合もある。また、平面図であっても図面を見易くするためにハッチングを付す場合もある。
(実施の形態1)
<半導体装置の構造>
図1は、本発明の一実施の形態である半導体装置CP1、ここではトライアック(TRIAC)を有する半導体装置CP1の平面図(平面レイアウト図)であり、図2および図3は、その要部断面図である。図1のA1−A2線の断面図が図2にほぼ対応し、図1のB1−B2線の断面図が図3にほぼ対応する。なお、図1においては、絶縁膜PV,ILおよび電極E1,E2,E3を透視し、半導体装置CP1を構成する半導体基板1の主面(表面)におけるp型半導体領域P1,P2,P4、n型基板領域N1およびn型半導体領域N2,N3,N5の平面レイアウトが示されている。また、図1においては、理解を簡単にするために、電極E1用のコンタクトホールCT1と、電極E2用のコンタクトホールCT2とを点線で示してある。
図1〜図3に示される本実施の形態の半導体装置(半導体チップ)CP1は、トライアックを有する半導体装置、すなわち双方向サイリスタを有する半導体装置であり、半導体装置を構成する半導体基板1にトライアックが形成されたもの、すなわち半導体装置を構成する半導体基板1に双方向サイリスタが形成されたものである。本実施の形態の半導体装置CP1の構成を具体的に説明する。
本実施の形態の半導体装置CP1を構成する半導体基板1には、p型半導体領域P1、p型半導体領域P2、p型半導体領域P3、p型半導体領域P4、p型半導体領域P5、n型半導体領域N2、n型半導体領域N3、n型半導体領域N4およびn型半導体領域N5が形成されている。これらのp型半導体領域P1,P2,P3,P4,P5およびn型半導体領域N2,N3,N4,N5は、半導体基板1に不純物(p型半導体領域P1,P2,P3,P4,P5はホウ素などのp型不純物、n型半導体領域N2,N3,N4,N5はリンなどのn型不純物)を導入(より特定的には拡散)することで形成されている。
半導体基板1は、n型の単結晶シリコンなどからなる半導体基板(n型半導体基板)であり、半導体基板1において、p型半導体領域P1,P2,P3,P4,P5およびn型半導体領域N2,N3,N4,N5となっていない領域(すなわちp型半導体領域P1,P2,P3,P4,P5またはn型半導体領域N2,N3,N4,N5用の不純物がほとんど拡散していない領域)は、n型基板領域(n型半導体領域)N1となっている。すなわち、n型基板領域N1は、半導体基板1の一部で構成されており、p型半導体領域P1,P2,P3,P4,P5およびn型半導体領域N2,N3,N4,N5を形成する前の段階の半導体基板1の不純物状態(n型半導体状態)をほぼ維持している領域(基板領域)に対応しており、n型半導体領域とみなすこともできる。n型基板領域N1は、p型半導体領域P2とp型半導体領域P3との間に介在している。n型基板領域N1とp型半導体領域P1,P2,P3,P4,P5およびn型半導体領域N2,N3,N4,N5とを合わせたものが、半導体基板1全体となる。
これらの半導体領域(P1〜P5,N1〜N5)について具体的に説明すると以下のようになる。
p型半導体領域(第8半導体領域)P1は、本実施の形態の半導体装置CP1を構成する半導体基板1の外周部分(外周領域)に形成されており、半導体基板1の表面から裏面まで達している。このため、半導体基板1において、半導体基板1の側面に接する部分(領域)は、p型半導体領域P1となっている。このp型半導体領域P1によってn型基板領域N1が規定(画定)されており、平面的に見て、n型基板領域N1は、周囲をp型半導体領域P1によって囲まれている。従って、n型基板領域N1の側面は、p型半導体領域P1に接している。
なお、半導体基板1の互いに反対側に位置する2つの主面のうち、後述の電極E1,E2が形成されている側の主面(第1主面)を半導体基板1の表面と呼び、裏面電極BEが形成されている側の主面(第2主面)を半導体基板1の裏面と呼ぶものとする。p型半導体領域(第1半導体領域)P2、p型半導体領域(第2半導体領域)P4、n型半導体領域(第3半導体領域)N2、n型半導体領域(第4半導体領域)N3およびn型半導体領域(第9半導体領域)N5は、半導体基板1の表面(第1主面)側に形成されている。p型半導体領域(第7半導体領域)P3、p型半導体領域(第5半導体領域)P5およびn型半導体領域(第6半導体領域)N4は、半導体基板1の裏面(第2主面)側に形成されている。p型半導体領域P1は、n型基板領域N1およびp型半導体領域P3,P5に接しているが、p型半導体領域P2,P4およびn型半導体領域N2,N3,N4,N5からは離間して形成されている。
p型半導体領域P2は、半導体基板1の表面側の中央付近に形成されている。p型半導体領域P2は、n型基板領域N1内に形成されており、n型基板領域N1で包まれるように形成されている。すなわち、p型半導体領域P2は、n型基板領域N1に内包されるように形成されている。別の見方をすると、p型半導体領域P2の側面と底面(底部)とが、n型基板領域N1に接しており、p型半導体領域P2の上面は半導体基板1の表面で露出している。p型半導体領域P2は、半導体基板1の表面から、例えば20〜50μm程度の深さに渡って形成されている。
p型半導体領域P4は、半導体基板1の表面側の中央付近に形成されているが、p型半導体領域P2内に形成されており、p型半導体領域P2で包まれるように形成されている。すなわち、p型半導体領域P4は、p型半導体領域P2に内包されるように形成されている。別の見方をすると、p型半導体領域P4の側面と底面(底部)とが、p型半導体領域P2に接しており、p型半導体領域P4の上面は半導体基板1の表面で露出している。このため、p型半導体領域P4は、n型基板領域N1とは接しておらず、p型半導体領域P4とn型基板領域N1との間にp型半導体領域P2が介在した状態となっている。
p型半導体領域P4は、p型半導体領域P2よりも浅く形成されている。すなわち、半導体基板1の表面からp型半導体領域P4の底部(底面)までの深さ(距離)は、半導体基板1の表面からp型半導体領域P2の底部(底面)までの深さ(距離)よりも、浅く(小さく)なっている。例えば、p型半導体領域P4は、半導体基板1の表面から、10〜30μm程度の深さに渡って形成されている。
p型半導体領域P4は、p型半導体領域P2よりも不純物濃度(p型不純物濃度)が高い。このため、p型半導体領域P4を高濃度p型半導体領域または高濃度p型不純物拡散領域とみなし、p型半導体領域P2を低濃度p型半導体領域または低濃度p型不純物拡散領域とみなすことができる。p型半導体領域P4は、p型半導体領域P2よりも高不純物濃度であることから、p型半導体領域P4の比抵抗(抵抗率)は、p型半導体領域P2の比抵抗(抵抗率)よりも低くなっている。
n型半導体領域N2およびn型半導体領域N3は、半導体基板1の表面側の中央付近に形成されているが、p型半導体領域P4内に形成されており、p型半導体領域P4で包まれるように形成されている。すなわち、n型半導体領域N2およびn型半導体領域N3は、p型半導体領域P4に内包されるように形成されている。別の見方をすると、n型半導体領域N2の側面および底面(底部)と、n型半導体領域N3の側面および底面(底部)とが、p型半導体領域P4に接しており、n型半導体領域N2の上面とn型半導体領域N3の上面とは、半導体基板1の表面で露出している。但し、n型半導体領域N2とn型半導体領域N3とは、互いに離間して形成されている。このため、n型半導体領域N2とn型半導体領域N3とは、互いに接しておらず、n型半導体領域N2とn型半導体領域N3との間にp型半導体領域P4が介在した状態となっている。また、n型半導体領域N2およびn型半導体領域N3は、p型半導体領域P2にもn型基板領域N1にも接しておらず、n型半導体領域N2とp型半導体領域P2との間、およびn型半導体領域N3とp型半導体領域P2との間に、p型半導体領域P4が介在した状態となっている。
n型半導体領域N2およびn型半導体領域N3は、p型半導体領域P4よりも浅く形成されている。すなわち、半導体基板1の表面からn型半導体領域N2の底部(底面)までの深さ(距離)は、半導体基板1の表面からp型半導体領域P4の底部(底面)までの深さ(距離)よりも浅く(小さく)、かつ、半導体基板1の表面からn型半導体領域N3の底部(底面)までの深さ(距離)は、半導体基板1の表面からp型半導体領域P4の底部(底面)までの深さ(距離)よりも浅く(小さく)なっている。例えば、n型半導体領域N2,N3は、半導体基板1の表面から、2〜20μm程度の深さに渡って形成されている。
n型半導体領域N5は、半導体基板1の表面側に形成されているが、n型基板領域N1の表層部の一部に形成されており、n型基板領域N1で包まれるように、すなわち、n型基板領域N1に内包されるように形成されている。別の見方をすると、n型半導体領域N5の側面および底面(底部)が、n型基板領域N1に接しており、n型半導体領域N5の上面は、半導体基板1の表面で露出している。n型半導体領域N5は、n型基板領域N1よりも高不純物濃度とされている。
n型半導体領域N5は、n型半導体領域N2,N3と同程度の深さとされており、例えば、半導体基板1の表面から、2〜20μm程度の深さに渡って形成されている。n型半導体領域N5は、p型半導体領域P2とp型半導体領域P1との間に形成されており、p型半導体領域P1,P2,P4およびn型半導体領域N2,N3とは離間して形成されている。このため、n型半導体領域N5は、p型半導体領域P1,P2,P4およびn型半導体領域N2,N3のいずれにも接していない。図1に示されるように、n型半導体領域N5は、好ましくは、平面的に見て、p型半導体領域P2を囲むように形成されており、例えばp型半導体領域P2を囲むリング状の平面形状に形成されている。
p型半導体領域P3およびp型半導体領域P5は、半導体基板1の裏面側に形成されている。p型半導体領域P3,P5のうち、p型半導体領域P5が半導体基板1の裏面に接する領域に形成され、p型半導体領域P3は、p型半導体領域P5よりも半導体基板1の内部側に形成されている。すなわち、p型半導体領域P3は、p型半導体領域P5とn型基板領域N1との間に介在した状態となっている。平面的に見て、p型半導体領域P3,P5の周囲はp型半導体領域P1に囲まれているため、p型半導体領域P3,P5の側面はp型半導体領域P1に接している。p型半導体領域P5をp型半導体領域P1よりも高不純物濃度とした場合には、半導体基板1の裏面に接する部分のp型半導体領域P1がp型半導体領域P5に置換され得る。
p型半導体領域P5は、p型半導体領域P3よりも不純物濃度(p型不純物濃度)が高く、p型半導体領域P3は、p型半導体領域P5よりも不純物濃度(p型不純物濃度)が低い。このため、p型半導体領域P5を高濃度p型半導体領域または高濃度p型不純物拡散領域とみなし、p型半導体領域P3を低濃度p型半導体領域または低濃度p型不純物拡散領域とみなすことができる。p型半導体領域P5は、p型半導体領域P3よりも高不純物濃度であることから、p型半導体領域P5の比抵抗(抵抗率)は、p型半導体領域P3の比抵抗(抵抗率)よりも低くなっている。また、p型半導体領域P1は、p型半導体領域P2,P3よりも不純物濃度(p型不純物濃度)が高いため、p型半導体領域P1を高濃度p型半導体領域または高濃度p型不純物拡散領域とみなすことができる。
n型半導体領域N4は、半導体基板1の裏面側に形成されているが、p型半導体領域P5内に形成されており、p型半導体領域P5で包まれるように形成されている。すなわち、n型半導体領域N4は、p型半導体領域P5に内包されるように形成されている。別の見方をすると、n型半導体領域N4の側面および底面(底部)が、p型半導体領域P5に接しており、n型半導体領域N4の上面は半導体基板1の裏面で露出している。このため、n型半導体領域N4は、p型半導体領域P3にもn型基板領域N1にも接しておらず、n型半導体領域N4とp型半導体領域P3との間にp型半導体領域P5が介在した状態となっている。
n型半導体領域N4は、p型半導体領域P5よりも浅く形成されている。すなわち、半導体基板1の裏面からn型半導体領域N4の底部(底面)までの深さ(距離)は、半導体基板1の裏面からp型半導体領域P5の底部(底面)までの深さ(距離)よりも浅く(小さく)なっている。例えば、n型半導体領域N4は、半導体基板1の裏面から、2〜20μm程度の深さに渡って形成されている。ここで、n型半導体領域N4およびp型半導体領域P5においては、これらが半導体基板1の裏面側に形成されていることから、半導体基板1の裏面側を上面と呼び、半導体基板1の内部側を底面(底部)と呼んでいる。
n型半導体領域N2、n型半導体領域N3、n型半導体領域N4およびn型半導体領域N5は、n型基板領域N1よりも不純物濃度(n型不純物濃度)が高い。このため、n型半導体領域N2,N3,N4,N5の各比抵抗(抵抗率)は、n型基板領域N1の比抵抗(抵抗率)よりも低くなっている。n型半導体領域N2,N3,N4,N5を高濃度n型半導体領域または高濃度n型不純物拡散領域とみなし、n型基板領域N1を低濃度n型半導体領域または低濃度n型不純物拡散領域とみなすことができる。また、n型半導体領域N2,N3,N4,N5の各不純物濃度(n型不純物濃度)は、互いにほぼ同程度とすることができる。
半導体基板1の厚み(半導体基板1の厚みは後述の半導体基板1Wの厚みにほぼ対応する)は、例えば150〜300μm程度とすることができる。また、p型半導体領域P2の底部(底面)からp型半導体領域P3の上面までの距離(すなわちp型半導体領域P2とp型半導体領域P3との間に位置する部分のn型基板領域N1の厚み)は、例えば50〜260μm程度とすることができる。ここで、p型半導体領域P2の底部(底面)は、p型半導体領域P2とn型基板領域N1とのPN接合面に対応し、p型半導体領域P3の上面は、p型半導体領域P3とn型基板領域N1とのPN接合面に対応している。
このような半導体基板1を構成するn型基板領域N1、n型半導体領域N2,N3,N4,N5およびp型半導体領域P1,P2,P3,P4,P5における接触関係を更に具体的に説明すると、以下のようになる。
すなわち、p型半導体領域P1は、n型基板領域N1およびp型半導体領域P3,P5と接触しているが、他の半導体領域(N2,N3,N4,N5,P2,P4)とは接触していない。p型半導体領域P2は、n型基板領域N1およびp型半導体領域P4と接触しているが、他の半導体領域(N2,N3,N4,N5,P1,P3,P5)とは接触していない。p型半導体領域P3は、n型基板領域N1およびp型半導体領域P1,P5と接触しているが、他の半導体領域(N2,N3,N4,N5,P2,P4)とは接触していない。p型半導体領域P4は、n型半導体領域N2,N3およびp型半導体領域P2と接触しているが、他の半導体領域(N1,N4,N5,P1,P3,P5)とは接触していない。p型半導体領域P5は、n型半導体領域N4およびp型半導体領域P1,P3と接触しているが、他の半導体領域(N1,N2,N3,N5,P2,P4)とは接触していない。n型基板領域N1は、n型半導体領域N5およびp型半導体領域P1,P2,P3と接触しているが、他の半導体領域(N2,N3,N4,P4,P5)とは接触していない。n型半導体領域N2は、p型半導体領域P4と接触しているが、他の半導体領域(N1,N3,N4,N5,P1,P2,P3,P5)とは接触していない。n型半導体領域N3は、p型半導体領域P4と接触しているが、他の半導体領域(N1,N2,N4,N5,P1,P2,P3,P5)とは接触していない。n型半導体領域N4は、p型半導体領域P5と接触しているが、他の半導体領域(N1,N2,N3,N5,P1,P2,P3,P4)とは接触していない。n型半導体領域N5は、n型基板領域N1と接触しているが、他の半導体領域(N2,N3,N4,P1,P2,P3,P4,P5)とは接触していない。これらの半導体領域(N1,N2,N3,N4,N5,P1,P2,P3,P4,P5)により、半導体基板1が構成されている。
本実施の形態の半導体装置CP1を構成する半導体基板1の裏面(より特定的には裏面全体)には、裏面電極(第3電極)BEが形成されている。裏面電極BEは、p型半導体領域P5とn型半導体領域N4との両方に接しており、p型半導体領域P5とn型半導体領域N4との両方に電気的に接続されている。裏面電極BEは、例えばAu(金)膜などの金属膜からなる。また、裏面電極BEがp型半導体領域P1に接していてもよい。但し、裏面電極は、他の半導体領域(N1,N2,N3,N5,P2,P3,P4)には接触していない。
本実施の形態の半導体装置CP1を構成する半導体基板1の表面(裏面電極BEが形成された側とは反対側の主面)には、絶縁膜(層間絶縁膜)ILが形成されている。絶縁膜ILは、例えばPSG(Phospho Silicate Glass)膜などからなる。絶縁膜ILには、複数のコンタクトホール(開口部、貫通孔)CTが形成されており、各コンタクトホールCTの底部では、半導体基板1の主面(表面)の一部が露出されている。
絶縁膜ILに形成された複数のコンタクトホールCTは、コンタクトホールCT1,CT2,CT3を有している。このうち、コンタクトホールCT1は、n型半導体領域N2とp型半導体領域P4の両領域にまたがるように形成されており、コンタクトホールCT1の底部では、n型半導体領域N2の少なくとも一部とp型半導体領域P4の一部とが露出されている。また、コンタクトホールCT2は、n型半導体領域N3とp型半導体領域P4の両領域にまたがるように形成されており、コンタクトホールCT2の底部では、n型半導体領域N3の少なくとも一部とp型半導体領域P4の一部とが露出されている。なお、コンタクトホールCT1とコンタクトホールCT2とは平面的に重なっていないため、p型半導体領域P4のうち、コンタクトホールCT1の底部で露出する領域とコンタクトホールCT2の底部で露出する領域とは、平面的に重なっていない。また、コンタクトホールCT3は、n型半導体領域N5の上部に形成されており、コンタクトホールCT3の底部では、n型半導体領域N5の一部が露出されている。
半導体基板1の表面(第1主面)上には、電極(第1電極)E1、電極(第2電極)E2および電極E3が形成されている。すなわち、コンタクトホールCT1の底部で露出するn型半導体領域N2およびp型半導体領域P4の上部に、電極E1が形成され、コンタクトホールCT2の底部で露出するn型半導体領域N3およびp型半導体領域P4の上部に、電極E2が形成され、コンタクトホールCT3の底部で露出するn型半導体領域N5の上部に、電極E3が形成されている。このため、電極E1は、n型半導体領域N2およびp型半導体領域P4の両方に接して電気的に接続され、電極E2は、n型半導体領域N3およびp型半導体領域P4の両方に接して電気的に接続され、電極E3は、n型半導体領域N5に接して電気的に接続されている。平面的に見て、電極E1はコンタクトホールCT1を内包し、電極E2はコンタクトホールCT2を内包し、電極E3はコンタクトホールCT3を内包している。平面的に見て、電極E1,E2,E3のうち、コンタクトホールCTの外部に位置する部分は、絶縁膜IL上に位置している。
電極E1,E2,E3の接触関係をより具体的に説明すると、次のようになる。すなわち、電極E1は、n型半導体領域N2およびp型半導体領域P4に接しているが、他の半導体領域(N1,N3,N4,N5,P1,P2,P3,P5)および電極E2,E3とは接触していない。電極E2は、n型半導体領域N3およびp型半導体領域P4に接しているが、他の半導体領域(N1,N2,N4,N5,P1,P2,P3,P5)および電極E1,E3とは接触していない。電極E3は、n型半導体領域N5に接しているが、他の半導体領域(N1,N2,N3,N4,P1,P2,P3,P4,P5)および電極E1,E2とは接触していない。電極E1と電極E2と電極E3とは、互いに接触していない。
電極E1と電極E2と電極E3とは、同層の導電体膜により形成されており、例えばアルミニウムを主体とする導電体膜により形成されている。電極E1,E2,E3は、例えば、絶縁膜IL上にコンタクトホールCT内を埋めるように導電体膜を形成してから、この導電体膜をパターニングすることで、形成されている。
半導体基板1の表面側の最上層には、すなわち絶縁膜IL上に、表面保護膜(パッシベーション膜)として、絶縁膜PVが形成されている。電極E1,E2,E3は、同層の導電体膜により形成されているが、互いに分離されており、電極E1,E2,E3間は、絶縁膜PVで満たされている。絶縁膜PVは、例えばポリイミド樹脂などの樹脂材料膜(樹脂膜)とすることができる。
絶縁膜PVには、複数の開口部(コンタクトホール、貫通孔)OPが形成されている。絶縁膜PVに形成された複数の開口部OPは、開口部OP1,OP2を有している。このうち、開口部OP1は、電極E1の上部に形成されており、開口部OP1の底部では、電極E1の一部が露出されている。すなわち、電極E1の上面の周辺部と側面とは絶縁膜PVで覆われ、電極E1の上面の中央部は開口部OP1から露出されている。また、開口部OP2は、電極E2の上部に形成されており、開口部OP2の底部では、電極E2の一部が露出されている。すなわち、電極E2の上面の周辺部と側面とは絶縁膜PVで覆われ、電極E2の上面の中央部は開口部OP2から露出されている。一方、電極E3は、絶縁膜PVで覆われており、露出されていない。電極E3は、平面的に見て、n型半導体領域N5とほぼ同様のパターン形状を有しており、例えば、電極E1,E2を囲むリング状のパターンとされている。このため、電極E3を、配線とみなすこともできる。
開口部OP1から露出する部分の電極E1と、開口部OP2から露出する部分の電極E2とが、ボンディングパッド(パッド、パッド電極)となって、そこにボンディングワイヤなどの接続用部材が接続できるようになっている。このため、電極E1,E2を端子とみなすこともできる。また、他の形態として、開口部OP1,OP2から露出する電極E1,E2上にバンプ電極(突起状電極)を形成することもできる。
また、本実施の形態の半導体装置は、後述のように、半導体基板(半導体ウエハ)1Wを複数のチップに切断(ダイシング)したものである。このため、本実施の形態の半導体装置CP1を構成する半導体基板1の表面の周辺部(半導体基板1の表面のうちの側面近傍領域)には、絶縁膜IL,PVが形成されていなくともよく、これにより、半導体基板1Wを切断(ダイシング)しやすくすることができる。
<半導体装置の製造方法>
次に、本実施の形態の半導体装置の製造工程を図面を参照して説明する。
図4〜図13は、本実施の形態の半導体装置CP1、ここではトライアックを有する半導体装置CP1の製造工程中の断面図であり、上記図2に対応する断面が示されている。
まず、図4に示されるように、例えば10〜100Ωcm程度の比抵抗を有するn型の単結晶シリコンなどからなる半導体基板(半導体ウエハ)1Wを準備(用意)する。
次に、図5に示されるように、半導体基板1Wの表面および裏面を酸化させて酸化シリコン膜(絶縁膜)OXを形成する。ここで、半導体基板1Wの互いに反対側に位置する二つの主面のうち、後で電極E1,E2が形成される側の主面(第1主面)を半導体基板1Wの表面と呼び、後で裏面電極BEが形成される側の主面(第2主面)を半導体基板1Wの裏面と呼ぶこととする。
次に、フォトリソグラフィ法およびエッチング法を用いることで、半導体基板1Wの表面および裏面において、チップ領域CPRの外周部の酸化シリコン膜OXを除去する。それから、ドーパントとしてホウ素(B)などのp型不純物を、半導体基板1Wの表面および裏面から半導体基板1Wの内部方向に拡散させることで、図5に示されるように、p型半導体領域P1を形成する。ここで、チップ領域CPRは、そこから1つの半導体装置(半導体チップ)CP1が製造される領域に対応する。p型半導体領域P1は、他の半導体領域(N2,N3,N4,N5、P2,P3,P4,P5)を形成する前に形成することが好ましい。
p型半導体領域P1を形成するためのp型不純物の拡散は、例えば、ホウ素(B)のようなp型不純物を含む固体、液体または気体を、半導体基板1Wの表面および裏面に接触させることで、ドーパント源を半導体基板1Wの表面および裏面に付与してから、このドーパント(p型不純物)を半導体基板1Wの表面および裏面から半導体基板1Wの内部に熱拡散させることで、行うことができる。また、p型半導体領域P1を形成するためのp型不純物(ドーパント)の熱拡散の条件としては、例えば、1250〜1300℃で100〜200時間程度の熱処理を例示できる。この際、酸化シリコン膜OXがマスク(拡散マスク)として機能するため、半導体基板1Wの表面および裏面のうちの酸化シリコン膜OXが形成されていない領域から、半導体基板1Wの内部に向かってp型不純物が拡散するが、半導体基板1Wの表面および裏面のうちの酸化シリコン膜OXが形成されている領域からは、半導体基板1Wの内部に向かってp型不純物は拡散しない。このため、図5に示されるように、p型半導体領域P1は、チップ領域CPRのうちの外周部(外周領域)に形成される。また、半導体基板1Wの表面側からp型不純物が拡散することで形成されたp型半導体領域P1と、半導体基板1Wの裏面側からp型不純物が拡散することで形成されたp型半導体領域P1とは、半導体基板1Wの厚み方向の中央付近でつながっている。このため、p型半導体領域P1は、半導体基板1Wの表面から裏面まで達している。
平面的に見てチップ領域CPRの外周部にp型半導体領域P1を形成したことで、チップ領域CPRにおいて、平面的に見てp型半導体領域P1に周囲を囲まれたn型基板領域(n型半導体領域)N1が規定される。この段階では、n型基板領域N1は、半導体基板1Wの表面から裏面まで達している。このn型基板領域N1は、上述のようにn型の半導体基板1Wを準備した後に、不純物がほとんど拡散されずにn型の半導体基板1Wの不純物状態がそのまま維持されている領域に対応している。このため、n型基板領域N1は、n型半導体領域とみなすこともできる。p型半導体領域P1の形成後、半導体基板1Wの各チップ領域CPRにおいて、p型半導体領域P1に囲まれた領域(この段階ではn型基板領域N1)に、以下に説明するように、他の半導体領域(P2,P3,P4,P5,N2,N3,N4,N5)が形成される。
次に、図6に示されるように、半導体基板1Wの表面側から半導体基板1W内にp型半導体領域P2用の不純物(p型不純物)を拡散させることで半導体基板1Wの表面側にp型半導体領域P2を形成し、半導体基板1Wの裏面側から半導体基板1W内にp型半導体領域P3用の不純物(p型不純物)を拡散させることで半導体基板1Wの裏面側にp型半導体領域P3を形成する。具体的には、p型半導体領域P2,P3は、次のようにして形成することができる。
まず、半導体基板1Wの表面側からp型半導体領域P2用のイオン注入を行うことで、半導体基板1Wの表面付近(表面側の表層部分)にp型半導体領域P2用の不純物(p型不純物)を導入し、また、半導体基板1Wの裏面側からp型半導体領域P3用のイオン注入を行うことで、半導体基板1Wの裏面付近(裏面側の表層部分)にp型半導体領域P3用の不純物(p型不純物)を導入する。それから、上記p型半導体領域P2用のイオン注入および上記p型半導体領域P3用のイオン注入で導入されたp型不純物(例えばホウ素など)を、熱処理によって半導体基板1W内に更に拡散させる(主として半導体基板1Wの厚み方向に拡散させる)ことで、p型半導体領域P2,P3を形成する。p型半導体領域P2,P3を形成するためのp型不純物(例えばホウ素など)の熱拡散の条件としては、例えば、1250〜1300℃で25〜50時間程度の熱処理を例示できる。p型半導体領域P2を形成するために行う熱拡散処理と、p型半導体領域P3を形成するために行う熱拡散処理とを、同じ熱処理により行っているため、製造工程数を低減できる。
p型半導体領域P2は、半導体基板1Wの表面から、20〜50μm程度の深さに渡って形成される。また、p型半導体領域P2用のイオン注入を行なう際に、フォトリソグラフィ法で形成したフォトレジストパターンをイオン注入阻止マスクとして使用することなどにより、p型半導体領域P2は、平面的に見て、p型半導体領域P1から離間するように形成され、また、チップ領域CPRの端部(外周部)から400〜1000μm程度離間するように形成される。
一方、p型半導体領域P3は、半導体基板1Wの裏面から、20〜50μm程度の深さに渡って形成される。p型半導体領域P3の側面はp型半導体領域P1に接した状態となる。また、p型半導体領域P2形成用の熱拡散処理とp型半導体領域P3形成用の熱拡散処理とを同じ熱処理により行っていることから、半導体基板1の表面からp型半導体領域P2の底面(底部)までの深さと、半導体基板1の裏面からp型半導体領域P3の底面(底部)までの深さとは、ほぼ同じとなる。
次に、図7に示されるように、半導体基板1Wの表面側から半導体基板1W内にp型半導体領域P4用の不純物(p型不純物)を拡散させることで半導体基板1Wの表面側にp型半導体領域P4を形成し、半導体基板1Wの裏面側から半導体基板1W内にp型半導体領域P5用の不純物(p型不純物)を拡散させることで半導体基板1Wの裏面側にp型半導体領域P5を形成する。形成されたp型半導体領域P4は、p型半導体領域P2よりも高不純物濃度であり、形成されたp型半導体領域P5は、p型半導体領域P3よりも高不純物濃度である。具体的には、p型半導体領域P4,P5は、次のようにして形成することができる。
まず、半導体基板1Wの表面側からp型半導体領域P4用のイオン注入を行うことで、半導体基板1Wの表面付近(表面側の表層部分)にp型半導体領域P4用の不純物(p型不純物)を導入し、また、半導体基板1Wの裏面側からp型半導体領域P5用のイオン注入を行うことで、半導体基板1Wの裏面付近(裏面側の表層部分)にp型半導体領域P5用の不純物(p型不純物)を導入する。それから、上記p型半導体領域P4用のイオン注入および上記p型半導体領域P5用のイオン注入で導入されたp型不純物(例えばホウ素など)を、熱処理によって半導体基板1W内に更に拡散させる(主として半導体基板1Wの厚み方向に拡散させる)ことで、p型半導体領域P4,P5を形成する。p型半導体領域P4,P5を形成するためのp型不純物(例えばホウ素など)の熱拡散の条件としては、例えば、1100〜1250℃で10〜30時間程度の熱処理を例示できる。p型半導体領域P4を形成するために行う熱拡散処理と、p型半導体領域P5を形成するために行う熱拡散処理とを、同じ熱処理により行っているため、製造工程数を低減できる。
p型半導体領域P4用のイオン注入を行なう際に、フォトリソグラフィ法で形成したフォトレジストパターンをイオン注入阻止マスクとして使用することなどにより、p型半導体領域P4は、平面的に見て、p型半導体領域P2に内包されるように形成される。また、p型半導体領域P4は、p型半導体領域P2よりも浅く形成され、例えば、半導体基板1Wの表面から、10〜30μm程度の深さに渡って形成される。このため、p型半導体領域P2内にp型半導体領域P4が形成され、平面的に見ても、厚み方向に見ても、p型半導体領域P4は、p型半導体領域P2に内包されるように形成される。このため、p型半導体領域P4は、n型基板領域N1には接しておらず、p型半導体領域P4とn型基板領域N1との間にp型半導体領域P2が介在した状態となる。
一方、p型半導体領域P5は、p型半導体領域P3よりも浅く形成され、例えば、半導体基板1Wの裏面から、10〜30μm程度の深さに渡って形成される。このため、p型半導体領域P5は、n型基板領域N1には接しておらず、p型半導体領域P5とn型基板領域N1との間にp型半導体領域P3が介在した状態となる。また、p型半導体領域P5の側面はp型半導体領域P1に接した状態となる。また、p型半導体領域P4形成用の熱拡散処理とp型半導体領域P5形成用の熱拡散処理とを同じ熱処理により行っていることから、半導体基板1の表面からp型半導体領域P4の底面(底部)までの深さと、半導体基板1の裏面からp型半導体領域P5の底面(底部)までの深さとは、ほぼ同じとなる。
次に、図8に示されるように、半導体基板1Wの表面側から半導体基板1W内にn型半導体領域N2,N3,N5用の不純物(n型不純物)を拡散させることで、半導体基板1Wの表面側にn型半導体領域N2,N3,N5を形成し、半導体基板1Wの裏面側から半導体基板1W内にn型半導体領域N4用の不純物(n型不純物)を拡散させることで、半導体基板1Wの裏面側にn型半導体領域N4を形成する。形成されたn型半導体領域N2,N3,N4,N5は、n型基板領域N1よりも高不純物濃度である。具体的には、n型半導体領域N2,N3,N4,N5は、次のようにして形成することができる。
n型半導体領域N2,N3,N4,N5を形成するためのn型不純物の拡散は、例えば、リン(P)のようなn型不純物を含む固体、液体または気体を、半導体基板1Wの表面および裏面に接触させることで、ドーパント源を半導体基板1Wの表面および裏面に付与してから、このドーパント(n型不純物)を半導体基板1Wの表面および裏面から半導体基板1Wの内部に熱拡散させることで、行うことができる。この際、フォトリソグラフィ法を用いて形成したフォトレジストパターン(このフォトレジストパターンは、半導体基板1Wの表面および裏面においてn型半導体領域N2,N3,N4,N5を形成しない領域に形成される)を利用することによって、半導体基板1Wの表面および裏面に部分的にドーパント源を付与すればよい。また、n型半導体領域N2,N3,N4,N5を形成するためのn型不純物の熱拡散の条件としては、例えば、1000〜1200℃で1〜20時間程度の熱処理を例示できる。n型半導体領域N2を形成するために行う熱拡散処理と、n型半導体領域N3を形成するために行う熱拡散処理と、n型半導体領域N4を形成するために行う熱拡散処理と、n型半導体領域N5を形成するために行う熱拡散処理とを、同じ熱処理により行っているため、製造工程数を低減できる。
n型半導体領域N2とn型半導体領域N3とは、平面的に見て、互いに離間して形成される。n型半導体領域N2とn型半導体領域N3とは、互いに離間しているため、間にp型半導体領域P4の一部が介在する。また、n型半導体領域N2およびn型半導体領域N3のいずれも、平面的に見て、p型半導体領域P4に内包されるように形成される。n型半導体領域N2およびn型半導体領域N3は、p型半導体領域P4よりも浅く形成され、例えば、半導体基板1Wの表面から、2〜20μm程度の深さに渡って形成される。このため、p型半導体領域P4内にn型半導体領域N2,N3が形成され、平面的に見ても、厚み方向に見ても、n型半導体領域N2,N3は、p型半導体領域P4に内包されるように形成される。
一方、n型半導体領域N5は、n型基板領域N1の表層部分の一部に形成され、例えば、上記図1に示されるように、平面的に見て、p型半導体領域P2を囲むリング状の平面形状に形成され、また、p型半導体領域P1,P2から離間し、かつ、p型半導体領域P2とp型半導体領域P1との間に形成される。
n型半導体領域N4は、平面的に見て、p型半導体領域P5に内包されるように形成される。また、n型半導体領域N4は、p型半導体領域P5よりも浅く形成され、例えば、半導体基板1Wの裏面から、2〜20μm程度の深さに渡って形成される。このため、p型半導体領域P5内にn型半導体領域N4が形成され、平面的に見ても、厚み方向に見ても、n型半導体領域N4は、p型半導体領域P5に内包されるように形成される。また、n型半導体領域N2,N3,N4,N5形成用の熱拡散処理を同じ熱処理により行っていることから、半導体基板1の表面からn型半導体領域N2,N3,N5の各底面(底部)までの各深さと、半導体基板1の裏面からn型半導体領域N4の底面(底部)までの深さとは、互いにほぼ同じとなる。
次に、図9に示されるように、半導体基板1Wの表面側の主面全体に絶縁膜(層間絶縁膜)ILを形成する。絶縁膜ILは、例えばPSG(Phospho Silicate Glass)膜などとすることができる。それから、例えばフォトリソグラフィ法およびエッチング法などを用いて絶縁膜ILに複数のコンタクトホールCT(すなわちコンタクトホールCT1,CT2,CT3)を形成する。図9には、コンタクトホールCTが形成された段階が示されている。絶縁膜ILのコンタクトホールCTの底部では、半導体基板1Wの主面(表面)の一部が露出する。具体的には、コンタクトホールCT1の底部では、n型半導体領域N2の少なくとも一部とp型半導体領域P4の一部とが露出され、コンタクトホールCT2の底部では、n型半導体領域N3の少なくとも一部とp型半導体領域P4の一部とが露出され、コンタクトホールCT3の底部では、n型半導体領域N5の一部が露出される。
次に、図10に示されるように、半導体基板1Wの表面側の主面全体に導電体膜を形成してから、この導電体膜を例えばフォトリソグラフィ法およびエッチング法などを用いてパターニングすることで、電極E1,E2,E3を形成する。電極E1,E2,E3形成用の上記導電体膜は、例えばアルミニウムを主体とする導電体膜とすることができ、PVD法などにより形成することができる。電極E1は、コンタクトホールCT1の底部でn型半導体領域N2およびp型半導体領域P4に接してそれらに電気的に接続され、電極E2は、コンタクトホールCT2の底部でn型半導体領域N3およびp型半導体領域P4に接してそれらに電気的に接続され、電極E3は、コンタクトホールCT3の底部でn型半導体領域N5に接して電気的に接続される。
次に、図11に示されるように、半導体基板1Wの表面側の主面全体に、表面保護膜(パッシベーション膜)として、絶縁膜PVを形成する。すなわち、電極E1,E2,E3を覆うように絶縁膜IL上に絶縁膜PVを形成する。絶縁膜PVは、例えばポリイミド樹脂などの樹脂材料膜(樹脂膜)とすることができる。これにより、電極E1,E2,E3が、表面保護膜としての絶縁膜PVにより被覆される(覆われる)。この絶縁膜PVは、半導体装置CP1の最上層の膜となり、半導体装置CP1を保護する最上層保護膜として機能する。最上層の絶縁膜PVをポリイミド樹脂などのような樹脂膜(有機系絶縁膜)とすることで、比較的軟らかい樹脂膜を最上層として半導体装置CP1の取り扱いを容易にすることができる。
次に、例えばフォトリソグラフィ法およびエッチング法などを用いて絶縁膜PVに複数の開口部OP(すなわち開口部OP1,OP2)を形成する。図11には、開口部OPが形成された段階が示されている。絶縁膜PVの開口部OPの底部では、電極E1,E2の一部が露出する。具体的には、開口部OP1から電極E1の一部が露出され、開口部OP2から電極E2の一部が露出される。
次に、図12に示されるように、半導体基板1Wの裏面側の主面全体に、裏面電極BEを形成する。裏面電極BEは、例えばPVD法などにより形成することができる。裏面電極BEは、n型半導体領域N4およびp型半導体領域P1,P5に接している。
その後、図13に示されるように、半導体基板1Wを切断して各チップ領域CPRに分離する。個片化された個々のチップ領域CPRが、本実施の形態の半導体装置(半導体チップ)CP1となる。このため、上記半導体基板1の切断前が上記半導体基板1Wであり、上記半導体基板1Wの個片化されたものが上記半導体基板1に対応する。
<トライアックの説明>
図14は、本実施の形態の半導体装置CP1に形成されているトライアックの説明図であり、上記図2と同じ断面が示されている。
本実施の形態の半導体装置CP1は、トライアックが形成された半導体装置、すなわち、双方向サイリスタが形成された半導体装置である。具体的には、電極E1と裏面電極BEとの間に、サイリスタTY1とサイリスタTY2とが形成されている。なお、図14では、サイリスタTY1,TY2に流れ得る電流を矢印で模式的に示してある。半導体装置CP1は、電極E1と裏面電極BEとの間にサイリスタTY1とサイリスタTY2とが並列に接続された回路構成を有しているが、サイリスタTY1とサイリスタTY2とは、電極E1と裏面電極BEとの間に流れる電流の向きが反対である。
サイリスタTY1は、裏面電極BEと電極E1との間に、p型半導体領域P5,P3、n型基板領域N1、p型半導体領域P2,P4およびn型半導体領域N2によって形成されている。すなわち、サイリスタTY1は、裏面電極BEと電極E1との間に、裏面電極BE側から順に、p型半導体領域(ここではp型半導体領域P5,P3)、n型半導体領域(ここではn型基板領域N1)、p型半導体領域(ここではp型半導体領域P2,P4)およびn型半導体領域(ここではn型半導体領域N2)が直列に接続されることで形成されている。
サイリスタTY2は、電極E1と裏面電極BEとの間に、p型半導体領域P4,P2、n型基板領域N1、p型半導体領域P3,P5およびn型半導体領域N4によって形成されている。すなわち、サイリスタTY2は、電極E1と裏面電極BEとの間に、電極E1側から順に、p型半導体領域(ここではp型半導体領域P4,P2)、n型半導体領域(ここではn型基板領域N1)、p型半導体領域(ここではp型半導体領域P3,P5)およびn型半導体領域(ここではn型半導体領域N4)が直列に接続されることで形成されている。
サイリスタTY1においては、裏面電極BE側がアノード側となり、電極E1側がカソード側となっており、一方、サイリスタTY2においては、電極E1側がアノード側となり、裏面電極BE側がカソード側となっている。電極E2は、ゲート端子(サイリスタTY1,TY2のゲート端子)として機能することができる。サイリスタTY1は、裏面電極BEから電極E1に、p型半導体領域P5、p型半導体領域P3、n型基板領域N1、p型半導体領域P2、p型半導体領域P4およびn型半導体領域N2を経由して電流が流れるサイリスタとみなすこともできる。サイリスタTY2は、電極E1から裏面電極BEに、p型半導体領域P4、p型半導体領域P2、n型基板領域N1、p型半導体領域P3、p型半導体領域P5およびn型半導体領域N4を経由して電流が流れるサイリスタとみなすこともできる。
サイリスタTY1をオン状態(導通状態、ターンオン状態)にするには、電極E1よりも裏面電極BEを高電位とした状態(例えば裏面電極BEに正電位を、電極E1に負電位をそれぞれ印加した状態)で、ゲート端子である電極E2に、電極E1よりも高電位のオン電圧(例えば正電位)を印加する。電極E2の電位は、p型半導体領域P4に印加される。これにより、まず、n型半導体領域N2とp型半導体領域P4,P2とn型基板領域N1とで形成されるトランジスタがオンし、それから、p型半導体領域P4,P2とn型基板領域N1とp型半導体領域P3,P5とで形成されるトランジスタがオンすることで、サイリスタTY1がターンオンする。サイリスタTY1がターンオンすることにより、裏面電極BE(ここではアノード)と電極E1(ここではカソード)との間が導通(ターンオン)し、裏面電極BE(ここではアノード)から電極E1(ここではカソード)に、p型半導体領域P5、p型半導体領域P3、n型基板領域N1、p型半導体領域P2、p型半導体領域P4およびn型半導体領域N2を経由して電流が流れる。すなわち、図14において、符号TY1を付した矢印の向きに電流が流れる。
サイリスタTY1が一旦オン状態になると、電極E2(ゲート端子)へのオン電圧(正電位)の印加を停止しても、サイリスタTY1のオン状態は維持され、裏面電極BEから電極E1への電流通過(図14において符号TY1を付した電流の通過)は継続される。サイリスタTY1の導通を停止(ターンオフ)するためには、裏面電極BEと電極E1との間を通過する電流を所定の電流値以下にする必要がある。すなわち、サイリスタTY1が一旦オン状態となると、裏面電極BEと電極E1との間を通過する電流が所定の電流値よりも大きい間は、サイリスタTY1のオン状態が継続されるが、裏面電極BEと電極E1との間を通過する電流が所定の電流値以下になると、サイリスタTY1の導通は停止(ターンオフ)する。
サイリスタTY2をオン状態(導通状態、ターンオン状態)にするには、裏面電極BEよりも電極E1を高電位とした状態(例えば裏面電極BEに負電位を、電極E1に正電位をそれぞれ印加した状態)で、ゲート端子である電極E2に、電極E1よりも低電位のオン電圧(例えば負電位)を印加する。電極E2の電位は、n型半導体領域N3に印加される。これにより、まず、n型半導体領域N3とp型半導体領域P4,P2とn型基板領域N1とで形成されるトランジスタがオンし、それから、p型半導体領域P4,P2とn型基板領域N1とp型半導体領域P3,P5とで形成されるトランジスタがオンし、それから、n型基板領域N1とp型半導体領域P3,P5とn型半導体領域N4とで形成されるトランジスタがオンすることで、サイリスタTY2がターンオンする。サイリスタTY2がターンオンすることにより、電極E1(ここではアノード)と裏面電極BE(ここではカソード)との間が導通(ターンオン)し、電極E1(ここではアノード)から裏面電極BE(ここではカソード)に、p型半導体領域P4、p型半導体領域P2、n型基板領域N1、p型半導体領域P3、p型半導体領域P5、およびn型半導体領域N4を経由して電流が流れる。すなわち、図14において、符号TY2を付した矢印の向きに電流が流れる。
サイリスタTY2が一旦オン状態になると、電極E2(ゲート端子)へのオン電圧(負電位)の印加を停止しても、サイリスタTY2のオン状態は維持され、電極E1から裏面電極BEへの電流通過(図14において符号TY2を付した電流の通過)は継続される。サイリスタTY2の導通を停止(ターンオフ)するためには、電極E1と裏面電極BEとの間を通過する電流を所定の電流値以下にする必要がある。すなわち、サイリスタTY2が一旦オン状態となると、電極E1と裏面電極BEとの間を通過する電流が所定の電流値よりも大きい間は、サイリスタTY2のオン状態が継続されるが、電極E1と裏面電極BEとの間を通過する電流が所定の電流値以下になると、サイリスタTY2の導通は停止(ターンオフ)する。
図15は、トライアックの使用例を示す回路図である。
トライアックは、交流を制御する素子として用いることができ、例えば、図15に示されるように、交流電源ACPに負荷LDとトライアックとを直列に接続して使用することができる。図15の場合は、トライアックの2つの主端子(電極E1および裏面電極BEに相当するもの)のうちの一方が、負荷LDを介して交流電源ACPの一方の端子に接続され、他方が、交流電源ACPの他方の端子に接続されている。
図16は、電圧・電流波形とトライアックに印加するゲート信号とを示す説明図である。図16において点線で示された交流電圧は、交流電源ACPの交流電圧の波形にほぼ対応するものであり、図16において点線で示される交流電流は、図15の回路において、トライアックが無い場合に流れ得る交流電流(仮想的な交流電流)の波形を示しており、これら交流電圧の波形と交流電流の波形とは、負荷LDなどに起因して位相差を有している。また、図16において実線で示される電圧vは、トライアックに印加されている電圧に対応するものであり、図16においてハッチングを付して示された波形は、トライアックを通過した電流iに対応するものである。図16に示されるゲート信号は、トライアック(半導体装置CP1)のゲート端子(ここでは電極E2)に印加される電圧信号に対応するものである。
図16において、ゲート信号GS1をトライアックのゲート端子(電極E2に相当するもの)に印加すると、トライアック(上記サイリスタTY1,TY2に相当する2つのサイリスタのうちの一方)がターンオンして、図16に示される電流i1が流れる。一旦電流i1が流れると、ゲート信号GS1がオフされても、電流i1は流れ続けるが、電流i1がゼロ近くになった段階でトライアックはターンオフする。その後は、次のゲート信号GS2がトライアックのゲート端子(電極E2に相当するもの)に印加されるまで、トライアックは非導通の状態を維持し、電流は流れない。そして、次のゲート信号GS2が印加されると、半導体装置CP1に形成されているトライアック(上記サイリスタTY1,TY2に相当する2つのサイリスタのうちの他方)がターンオンして図16に示される電流i2(この電流i2の流れる向きは電流i1が流れる向きと反対である)が流れる。一旦電流i2が流れると、ゲート信号GS2がオフされても、電流i2は流れ続け、電流i2がゼロ近くになった段階でトライアックはターンオフし、その後は、次のゲート信号GS3が印加されるまで、トライアックは非導通の状態(オフ状態)を維持し、電流は流れない。この動作が繰り返されることで、交流制御される。このように、トライアックは、交流を制御する素子として用いることができ、プラスからマイナス方向に流れる電流を反対方向(マイナスからプラス)に変えて使用する。このことを転流という。
しかしながら、図16においては、転流失敗が発生している。図16において、「転流失敗」として示された箇所では、ゲート信号の印加無しにトライアックがオン状態に移行(ターンオン)しており、これは転流失敗を意味している。転流失敗は、ゲート信号を入力しないのにトライアックが意図せずしてターンオンしてしまう現象に対応している。この転流失敗は、電流変化率(電流の時間微分値)である(di/dt)cや電圧変化率(電圧の時間微分値)である(dv/dt)cがある値以上になると発生してしまう現象である。この転流失敗を防ぐためには、図17に示される回路図のように、CRアブソーバを接続することで、トライアックに加わる電圧の変化率(電圧の時間微分値)である(dv/dt)cを制御することが有効である。ここで、図17は、トライアックの他の使用例を示す回路図である。
CRアブソーバは、直列に接続された抵抗とコンデンサとで形成され、トライアックと並列に接続される。しかしながら、CRアブソーバは、抵抗やコンデンサなどで形成されるため、CRアブソーバを使用する分、製造コストの増大や、電子装置の大型化を招いてしまう。このため、トライアック自身を工夫することで、転流失敗を生じ難くすることが望まれる。また、トライアックには大電流が流れ、また印加される電圧も高いことから、半導体装置(半導体基板)に形成されたトライアック自身を工夫することで、トライアックの高耐圧化を図ることも望まれる。
<主要な特徴>
そこで、本実施の形態では、次のような工夫を行っている。以下では、比較例の半導体装置CP101,CP201,CP301を参照しながら、本実施の形態の半導体装置CP1の主要な特徴について説明する。
図18は、第1の比較例の半導体装置CP101の断面図であり、本実施の形態の上記図2に対応する断面が示されている。
図18に示される第1の比較例の半導体装置CP101も、トライアックが形成された半導体装置である。
第1の比較例の半導体装置CP101を構成する半導体基板101(本実施の形態の半導体基板1に相当するもの)には、p型半導体領域P101、p型半導体領域P102、p型半導体領域P103、n型半導体領域N102、n型半導体領域N103、n型半導体領域N104およびn型半導体領域N105が形成されている。半導体基板101は、n型の単結晶シリコンなどからなる半導体基板であり、半導体基板1において、p型半導体領域P101,P102,P103およびn型半導体領域N102,N103,N104,N105となっていない領域は、これらの半導体領域を形成する前の段階の半導体基板101の不純物状態をほぼ維持しているn型基板領域(n型半導体領域)N101となっている。
p型半導体領域P102は半導体基板101の表面側に形成されている。n型半導体領域N102(本実施の形態におけるn型半導体領域N2に相当するもの)およびn型半導体領域N103(本実施の形態におけるn型半導体領域N3に相当するもの)は、半導体基板101の表面側に、p型半導体領域P102に内包されるようにかつ互いに離間して形成されている。p型半導体領域P103は、半導体基板101の裏面側に形成されている。n型半導体領域N104(本実施の形態におけるn型半導体領域N4に相当するもの)は、半導体基板101の裏面側に、p型半導体領域P103に内包されるように形成されている。p型半導体領域P101(本実施の形態におけるp型半導体領域P1に相当するもの)は、半導体基板101の外周領域に形成されている。n型基板領域N101(本実施の形態におけるn型基板領域N1に相当するもの)は、p型半導体領域P102とp型半導体領域P103との間に介在している。n型半導体領域N105(本実施の形態におけるn型半導体領域N5に相当するもの)は、半導体基板101の表面側に、p型半導体領域P101とp型半導体領域P102との間に形成されており、n型基板領域N101よりも高不純物濃度とされている。電極E101(本実施の形態における電極E1に相当するもの)は、半導体基板101の表面上に、n型半導体領域N102およびp型半導体領域P102に接して電気的に接続されるように形成されている。電極E102(本実施の形態における電極E2に相当するもの)は、半導体基板101の表面上に、n型半導体領域N103およびp型半導体領域P102に接して電気的に接続されるように形成されている。電極E103(本実施の形態における電極E3に相当するもの)は、半導体基板101の表面上に、n型半導体領域N105に接して電気的に接続されるように形成されている。裏面電極BE101(本実施の形態における裏面電極BEに相当するもの)は、半導体基板101の裏面上に、n型半導体領域N104およびp型半導体領域P101,P103に接して電気的に接続されるように形成されている。半導体基板101の表面上には、絶縁膜IL,PVも形成されている。
このような第1の比較例の半導体装置CP101では、サイリスタTY101,TY102が形成されている。ここで、サイリスタTY101は、裏面電極BE101から電極E101にp型半導体領域P103、n型基板領域N101、p型半導体領域P102およびn型半導体領域N102を経て電流が流れ、サイリスタTY102は、電極E101から裏面電極BEにp型半導体領域P102、n型基板領域N101、p型半導体領域P103およびn型半導体領域N104を経て電流が流れる。電極E102はゲート端子として機能することができる。
このような構成の第1の比較例の半導体装置CP101では、次のような課題が生じることが、本発明者による検討により分かった。
トライアックの耐圧は、主としてPN接合の接合面で決まるため、その接合面での電界集中を緩和することが、耐圧を高める上で重要である。図18に示される第1の比較例の半導体装置CP101に形成されたトライアックの耐圧は、主として、n型基板領域N101とp型半導体領域P102との間のPN接合と、n型基板領域N101とp型半導体領域P103との間のPN接合とで決定される。n型基板領域N101とp型半導体領域P102との間のPN接合を考えると、この接合面の耐圧を高めるためには、p型半導体領域P102の不純物濃度を低くして、n型基板領域N101とp型半導体領域P102との間のPN接合面近傍での電界集中を緩和させることが有効である。しかしながら、第1の比較例の半導体装置CP101においてp型半導体領域P102全体の不純物濃度を低くした場合には、トライアックの転流失敗が生じやすくなる。
すなわち、サイリスタTY101をオフ状態からターンオンするときには、ゲート端子(ここでは電極E102)に正電位のゲート信号を入力することで、p型半導体領域P102の電位がn型半導体領域N102の電位よりも高電位となったことで、n型半導体領域N102からp型半導体領域P102に電子が注入される。つまり、ゲート信号を入力することでサイリスタTY101をターンオンする際には、ゲート電圧(ゲート端子への入力電圧)によってn型半導体領域N102からp型半導体領域P102に電子を十分に注入することができるため、p型半導体領域P102の不純物濃度の大小にはあまり影響されることなく、確実にサイリスタTY101をターンオンすることができる。しかしながら、転流失敗は、ゲート電圧を印加せずとも、n型半導体領域N102からp型半導体領域P102に電子が注入されることで、サイリスタTY101が意図せずにターンオンしてしまうことで発生するが、これを防止するには、p型半導体領域P102の不純物濃度を高くすることが有効である。ゲート電圧を印加しないのに、n型半導体領域N102からp型半導体領域P102に電子が若干量注入される現象が生じたとしても、p型半導体領域P102の不純物濃度を高くしておけば、p型半導体領域P102に注入された電子を、p型半導体領域P102のホールと結合させて消滅させることができるため、サイリスタTY101が意図せずにターンオンしてしまうことを防ぐことができる。このため、転流失敗を抑制するには、p型半導体領域P102の不純物濃度を高めることが有効である。
従って、第1の比較例の半導体装置CP101では、p型半導体領域P102の不純物濃度を低くした場合には、耐圧は向上するが、転流失敗が生じやすくなり、一方、p型半導体領域P102の不純物濃度を高くした場合には、転流失敗は生じにくくなるが、耐圧が低下してしまう。同様のことは、p型半導体領域P103についても言うことができ、p型半導体領域P103の不純物濃度を低くした場合には、耐圧は向上するが、転流失敗(サイリスタTY102が意図せずにターンオンしてしまうこと)が生じやすくなり、一方、p型半導体領域P103の不純物濃度を高くした場合には、転流失敗(サイリスタTY102が意図せずにターンオンしてしまうこと)は生じにくくなるが、耐圧が低下してしまう。このため、第1の比較例の半導体装置CP101では、耐圧の向上と転流失敗の抑制とを両立させることは難しい。
それに対して、本実施の形態の半導体装置CP1では、半導体基板1の表面側にp型半導体領域P4,P2を設けており、p型半導体領域P2を低不純物濃度とし、p型半導体領域P4を高不純物濃度(p型半導体領域P2よりも高不純物濃度)としている。また、半導体基板1の裏面側にp型半導体領域P5,P3を設けており、p型半導体領域P3を低不純物濃度とし、p型半導体領域P5を高不純物濃度(p型半導体領域P3よりも高不純物濃度)としている。n型半導体領域N2およびn型半導体領域N3は、半導体基板1の表面側に、高不純物濃度のp型半導体領域P4に内包されるようにかつ互いに離間して形成されている。また、n型半導体領域N4は、半導体基板1の裏面側に、高不純物濃度のp型半導体領域P5に内包されるように形成されている。
本実施の形態の半導体装置CP1では、サイリスタTY1,TY2において耐圧を決めるPN接合を形成しているのは、n型基板領域N1と低不純物濃度のp型半導体領域P2とのPN接合面と、n型基板領域N1と低不純物濃度のp型半導体領域P3との間のPN接合面である。n型基板領域N1と高不純物濃度のp型半導体領域P4との間には、低不純物濃度のp型半導体領域P2が介在し、また、n型基板領域N1と高不純物濃度のp型半導体領域P5との間には、低不純物濃度のp型半導体領域P3が介在しているため、高不純物濃度のp型半導体領域P4,P5は、n型基板領域N1との間にPN接合を形成していない。
このように、本実施の形態の半導体装置CP1では、トライアックの耐圧を決定するPN接合面をn型基板領域N1との間に形成するp型半導体領域を、低不純物濃度のp型半導体領域P2,P3で構成したことにより、そのPN接合面(n型基板領域N1とp型半導体領域P2とのPN接合面およびn型基板領域N1とp型半導体領域P3とのPN接合面)近傍での電界集中を緩和することができる。これにより、半導体装置CP1(に形成されたトライアック)の耐圧を向上させることができる。
そして、本実施の形態の半導体装置CP1では、n型半導体領域N2およびn型半導体領域N3は、高不純物濃度のp型半導体領域P4に内包されるように形成されており、n型半導体領域N2,N3と低不純物濃度のp型半導体領域P2との間には、高不純物濃度のp型半導体領域P4が介在している。また、n型半導体領域N4は、高不純物濃度のp型半導体領域P5に内包されるように形成されており、n型半導体領域N4と低不純物濃度のp型半導体領域P3との間には、高不純物濃度のp型半導体領域P5が介在している。このため、半導体装置CP1に形成しているトライアックの転流失敗の発生を抑制または防止することができる。
すなわち、転流失敗(サイリスタTY1の意図しないターンオン)は、ゲート電圧(電極E1への入力電圧)を印加せずとも、n型半導体領域N2からp型半導体領域P4に電子が注入されることに起因して、サイリスタTY1が意図せずにターンオンしてしまうことで発生する。それに対して、本実施の形態では、p型半導体領域P4の不純物濃度を高くしたことで、p型半導体領域P4のホール量を多くすることができるため、ゲート電圧を印加しないのにn型半導体領域N2からp型半導体領域P4に電子が若干量注入される現象が生じたとしても、p型半導体領域P4に注入された電子を、p型半導体領域P4のホールと結合させて消滅させることができる。このため、サイリスタTY1がゲート電圧の印加なしに意図せずにターンオンしてしまうことを抑制または防止することができる。従って、半導体装置CP1に形成されているトライアックの転流失敗を抑制または防止することができる。
また、転流失敗(サイリスタTY2の意図しないターンオン)は、ゲート電圧(電極E1への入力電圧)を印加せずとも、n型半導体領域N4からp型半導体領域P5に電子が注入されることに起因して、サイリスタTY2が意図せずにターンオンしてしまうことで発生する。それに対して、本実施の形態では、p型半導体領域P5の不純物濃度を高くしたことで、p型半導体領域P5のホール量を多くすることができるため、ゲート電圧を印加しないのにn型半導体領域N4からp型半導体領域P5に電子が若干量注入される現象が生じたとしても、p型半導体領域P5に注入された電子を、p型半導体領域P5のホールと結合させて消滅させることができる。このため、サイリスタTY2がゲート電圧の印加なしに意図せずにターンオンしてしまうことを抑制または防止することができる。従って、半導体装置CP1に形成されているトライアックの転流失敗を抑制または防止することができる。
つまり、ゲート電圧の印加時以外にn型半導体領域N2からp型半導体領域P4に注入された電子がp型半導体領域P4のホールで消滅できるように、p型半導体領域P4を高不純物濃度としておくことで、サイリスタTY1が意図せずにターンオンしてしまうことを抑制または防止して、トライアック(半導体装置CP1)の転流失敗を抑制または防止することができる。また、ゲート電圧の印加時以外にn型半導体領域N4からp型半導体領域P5に注入された電子がp型半導体領域P5のホールで消滅できるように、p型半導体領域P5を高不純物濃度としておくことで、サイリスタTY2が意図せずにターンオンしてしまうことを抑制または防止して、トライアック(半導体装置CP1)の転流失敗を抑制または防止することができる。すなわち、高不純物濃度のp型半導体領域P4,P5を設けたことで、転流時のキャリアによる電圧変動を抑制することができ、転流失敗が生じ得る限界の電流変化率(di/dt)cを大きくすることができる。
また、サイリスタTY1を意図してターンオンするときには、ゲート電圧を印加することで、n型半導体領域N2からp型半導体領域P4に電子を十分に注入することができるため、p型半導体領域P4の不純物濃度が高くても、それに影響されることなく、確実にサイリスタTY1をターンオンすることができる。同様に、サイリスタTY2を意図してターンオンするときには、ゲート電圧を印加することで、n型半導体領域N4からp型半導体領域P5に電子を十分に注入することができるため、p型半導体領域P5の不純物濃度が高くても、それに影響されることなく、確実にサイリスタTY2をターンオンすることができる。
このように、本実施の形態の半導体装置CP1では、耐圧を向上でき、また、転流失敗を抑制または防止することができる。すなわち、半導体装置CP1(に形成されたトライアック)の耐圧の向上と転流失敗の抑制(防止)とを両立させることができる。従って、半導体装置の性能を向上させることができる。
また、本実施の形態では、半導体装置CP1(トライアック)自身を工夫することで、転流失敗を生じ難くしているため、上記CRアブソーバなどを使用しなくとも転流失敗を抑制または防止することができる。このため、半導体装置CP1(トライアック)を用いた電子装置の低コスト化や小型化を図ることが可能となる。
本実施の形態を別の観点から見ると、n型半導体領域N2,N3とn型基板領域N1との間に位置するp型半導体領域(P2,P4を合わせた領域)について、n型半導体領域N2,N3に隣接する領域を高不純物濃度とし、n型基板領域N1に隣接する領域を低不純物濃度とすることができるように、このp型半導体領域をp型半導体領域P4とp型半導体領域P2とに作り分けている。p型半導体領域P4をp型半導体領域P2よりも高不純物濃度とすることで、n型半導体領域N2,N3とn型基板領域N1との間に位置するp型半導体領域のうち、n型半導体領域N2,N3に隣接する領域を高不純物濃度とし、n型基板領域N1に隣接する領域を低不純物濃度とすることができ、耐圧向上と転流失敗の抑制(防止)とを図ることができる。また、n型半導体領域N4とn型基板領域N1との間に位置するp型半導体領域(P3,P5を合わせた領域)について、n型半導体領域N4に隣接する領域を高不純物濃度とし、n型基板領域N1に隣接する領域を低不純物濃度とすることができるように、このp型半導体領域をp型半導体領域P5とp型半導体領域P3とに作り分けている。p型半導体領域P5をp型半導体領域P3よりも高不純物濃度とすることで、n型半導体領域N4とn型基板領域N1との間に位置するp型半導体領域のうち、n型半導体領域N4に隣接する領域を高不純物濃度とし、n型基板領域N1に隣接する領域を低不純物濃度とすることができ、耐圧向上と転流失敗の抑制(防止)とを図ることができる。
また、n型半導体領域N2,N3とn型基板領域N1との間に位置するp型半導体領域(P2,P4を合わせた領域)を、高不純物濃度のp型半導体領域P4と低不純物濃度のp型半導体領域P2とで構成したことで、次のような利点もある。すなわち、n型基板領域N1とp型半導体領域P2とのPN接合面からp型半導体領域P2側に伸びる空乏層を高不純物濃度のp型半導体領域P4で抑えることができるため、p型半導体領域P4がパンチスルーストッパとして機能し、n型半導体領域N2へのパンチスルーによる意図しないターンオンを防止することができる。
また、n型半導体領域N4とn型基板領域N1との間に位置するp型半導体領域(P3,P5を合わせた領域)を、高不純物濃度のp型半導体領域P5と低不純物濃度のp型半導体領域P3とで構成したことで、次のような利点もある。すなわち、n型基板領域N1とp型半導体領域P3とのPN接合面からp型半導体領域P3側に伸びる空乏層を高不純物濃度のp型半導体領域P5で抑えることができるため、p型半導体領域P5がパンチスルーストッパとして機能し、n型半導体領域N4へのパンチスルーによる意図しないターンオンを防止することができる。
また、電極E1が接するp型半導体領域を、高不純物濃度のp型半導体領域P4としたことで、電極E1のコンタクト抵抗を低減することができる。また、裏面電極BEが接するp型半導体領域を、高不純物濃度のp型半導体領域P5としたことで、裏面電極BEのコンタクト抵抗を低減することができる。
また、上記第1の比較例の半導体装置CP101において、トライアックの耐圧向上には、n型基板領域N1の不純物濃度を少なく(すなわち比抵抗を高く)して半導体基板1の厚みを厚くするとともにp型半導体領域P102,P103の深さを深くすることも有効である。しかしながら、この場合、半導体基板101の厚みが厚くなることから、半導体装置CP101の厚みが厚くなって半導体装置CP1の大型化(膜厚増大)を招いてしまう。また、半導体基板101の厚みの増大は、上記p型半導体領域P101を形成しづらくなることに繋がるため、プロセス制御が難しくなってしまう。
それに対して、本実施の形態の半導体装置CP1では、転流失敗の抑制はp型半導体領域P4,P5で制御できるため、p型半導体領域P2,P3の不純物濃度を低くすることで耐圧向上を図ることが可能となるので、同じ耐圧であれば、上記第1の比較例の半導体装置CP101よりもn型基板領域(N1,N101)の不純物濃度を高く(比抵抗を低く)することができ、また、半導体基板(1,101)の厚みを薄くすることができる。このため、本実施の形態では、半導体装置CP1の厚みを薄くすることができ、半導体装置CP1の薄型化を図ることができる。また、半導体基板1の厚みを薄くできることは、上記p型半導体領域P1を形成しやすくなることに繋がり、プロセス制御が容易となる。また、n型基板領域N1の比抵抗を低くして、トライアックの特性向上を図ることができる。また、n型基板領域N1の不純物濃度を高めることは、n型基板領域N1で少数キャリアを消滅しやすくするため、この点でも、転流失敗を抑制する効果を得ることができる。
また、トライアックの耐圧向上には、図19に示される第2の比較例の半導体装置CP201のように、半導体基板101の表面側に、p型半導体領域P102とn型半導体領域N105との間に、p型半導体領域P102を囲むようなリング状(平面形状がリング状)のp型半導体領域P201を形成することも有効である。ここで、図19は、第2の比較例の半導体装置CP201の断面図であり、本実施の形態の上記図2や第1の比較例の上記図18に対応する断面が示されている。図19に示される第2の比較例の半導体装置CP201においては、p型半導体領域P102とn型半導体領域N105との間に、p型半導体領域P102を囲むようなリング状(平面形状がリング状)のp型半導体領域P201a,P201bが形成され、リング状のp型半導体領域P201aはリング状のp型半導体領域P201bよりも内側(p型半導体領域P102に近い側)に設けられている。
しかしながら、図19に示される第2の比較例の半導体装置CP201のように、リング状のp型半導体領域P201を形成して耐圧を向上させた場合には、リング状のp型半導体領域P201を形成する分、半導体基板101の主面方向の寸法が大きくなり、半導体装置CP201の平面積の増大を招いてしまう。
それに対して、本実施の形態の半導体装置CP1では、p型半導体領域P2の不純物濃度を低くすることで耐圧向上を図ることができるため、上記リング状のp型半導体領域P201に相当するものを形成しなくとも、高耐圧化することができる。このため、半導体基板1の主面方向の寸法を抑制でき、半導体装置CP1の小面積化に有利となる。
図20は、第3の比較例の半導体装置CP301の断面図であり、本実施の形態の上記図2や第1の比較例の上記図18に対応する断面が示されている。
図20に示される第3の比較例の半導体装置CP301も、トライアックが形成された半導体装置である。
図20に示される第3の比較例の半導体装置CP301は、p型半導体領域P104,P105を設けた点が、上記図18に示される第1の比較例の半導体装置CP101と相違している。第3の比較例の半導体装置CP301において、p型半導体領域P104は、p型半導体領域P102よりも高不純物濃度であり、p型半導体領域P105は、p型半導体領域P103よりも高不純物濃度である。このp型半導体領域P104は、半導体基板101の表面側において、p型半導体領域P102の表層部分に形成されているが、n型半導体領域N102,N103はp型半導体領域P104に内包されておらず、n型半導体領域N102,N103の底部(底面)は、p型半導体領域P104ではなくp型半導体領域P102に接している。また、p型半導体領域P105は、半導体基板101の裏面側において、p型半導体領域P103の表層部分に形成されているが、n型半導体領域N104はp型半導体領域P105に内包されておらず、n型半導体領域N4の底部(底面)は、p型半導体領域P105ではなくp型半導体領域P103に接している。
このような構成の第3の比較例の半導体装置CP301においては、本実施の形態の半導体装置CP1とは異なり、耐圧向上と転流失敗の抑制(防止)との両立を図ることはできない。
すなわち、第3の比較例の半導体装置CP301でも、第1の比較例の半導体装置CP101と同様に、p型半導体領域P102,P103の不純物濃度を低くした場合には、耐圧は向上するが、転流失敗が生じやすくなってしまう。これは、第3の比較例の半導体装置CP301では、n型半導体領域N102,N103がp型半導体領域P104に内包されておらず、n型半導体領域N102,N103の底部(底面)が、高不純物濃度のp型半導体領域P104ではなくp型半導体領域P102に接するためである。また、n型半導体領域N104がp型半導体領域P105に内包されておらず、n型半導体領域N104の底部(底面)が、高不純物濃度のp型半導体領域P105ではなくp型半導体領域P103に接しているためである。第3の比較例の半導体装置CP301の場合、転流失敗は、ゲート電圧の印加時以外にn型半導体領域N102,N104からp型半導体領域P102,P103に注入された電子に起因して生じる。このため、たとえp型半導体領域P104,P105を高不純物濃度としても、それはn型半導体領域N102,N104からp型半導体領域P102,P103に注入された電子を消滅させることには寄与しないため、転流失敗の抑制効果を得ることはできない。
それに対して、本実施の形態の半導体装置CP1では、n型半導体領域N2,N3はp型半導体領域P4に内包されており、n型半導体領域N2,N3の底部(底面)は、低不純物濃度のp型半導体領域P2ではなくp型半導体領域P4に接し、また、n型半導体領域N4はp型半導体領域P5に内包されており、n型半導体領域N4の底部(底面)は、低不純物濃度のp型半導体領域P3ではなくp型半導体領域P5に接している。この場合、転流失敗は、ゲート電圧の印加時以外にn型半導体領域N2,N4からp型半導体領域P3,P5に注入された電子に起因して生じるが、これは、p型半導体領域P3,P5を高不純物濃度としたことで抑制または防止できるため、p型半導体領域P2,P4の不純物濃度を低くしたことによる耐圧向上効果と両立することができる。従って、耐圧向上と転流失敗の抑制(防止)との両立を図ることができる。
また、本実施の形態の半導体装置CP1では、半導体基板1の外周領域には、p型半導体領域P1を形成することが好ましい。このため、半導体装置CP1を構成する半導体基板1の側面では、n型基板領域N1は露出しておらず、p型半導体領域P1で構成された側面となっている。半導体基板1の外周領域にp型半導体領域P1を形成したことにより、第一主面にPN接合を露出させることで、ダイシング面(半導体基板1の側面)へのn型基板領域N1とp型半導体領域P3との間のPN接合の露出を防ぐという効果を得ることができる。
また、本実施の形態の半導体装置CP1では、半導体基板1の表面側に、p型半導体領域P1とp型半導体領域P2との間に(p型半導体領域P2を囲むように)、n型基板領域N1よりも高不純物濃度のn型半導体領域N5を形成することが好ましい。更に、n型半導体領域N5の上部に電極E3を形成することが、より好ましい。これにより、表面(横)方向への電界の広がりを抑えるという効果を得ることができる。
また、本実施の形態の半導体装置CP1では、半導体基板1の表面側に、p型半導体領域P2、p型半導体領域P4、n型半導体領域N2、n型半導体領域N3およびn型半導体領域N5が形成され、半導体基板1の裏面側に、p型半導体領域P3、p型半導体領域P5およびn型半導体領域N4が形成され、半導体基板1の外周領域に、p型半導体領域P1が形成されている。これらの半導体領域(P1,P2,P3,P4,P5,N2,N3,N4,N5)は、半導体基板1Wの表面または裏面から半導体基板1Wの内部に不純物を熱拡散すること(すなわち熱拡散処理)を用いて、形成されている。
半導体基板1の表面側に形成したp型半導体領域P2,P4およびn型半導体領域N2,N3,N5は、半導体基板1(1W)の表面側から半導体基板1(1W)内に不純物を熱拡散させることにより形成するため、半導体基板1(1W)の表面からの深さが深い半導体領域ほど、先に形成する必要がある。本実施の形態では、n型半導体領域N2,N3はp型半導体領域P4に内包され、p型半導体領域P4はp型半導体領域P2に内包されるため、半導体基板1(1W)の表面からの深さは、p型半導体領域P2がp型半導体領域P4およびn型半導体領域N2,N3よりも深く、p型半導体領域P4がn型半導体領域N2,N3よりも深くなっている。このため、p型半導体領域P2、p型半導体領域P4およびn型半導体領域N2,N3のうち、最初にp型半導体領域P2を形成し(すなわちp型半導体領域P2形成用の熱拡散処理を行い)、その後でp型半導体領域P4を形成し(すなわちp型半導体領域P4形成用の熱拡散処理を行い)、更にその後でn型半導体領域N2,N3を形成する(すなわちn型半導体領域N2,N3形成用の熱拡散処理を行う)。これにより、p型半導体領域P2に内包されるようにp型半導体領域P4を形成でき、また、p型半導体領域P4に内包されるようにn型半導体領域N2,N3を形成することができる。
また、n型半導体領域N2とn型半導体領域N3とは、別工程(別の熱拡散処理)で形成することもできるが、同工程(同じ熱拡散処理)で形成すれば、半導体装置の製造工程数を低減することができるため、より好ましい。n型半導体領域N2とn型半導体領域N3とを同工程(同じ熱拡散処理)で形成した場合には、半導体基板1(1W)の表面からの深さは、n型半導体領域N2とn型半導体領域N3とでほぼ同じとなる。また、n型半導体領域N5もn型半導体領域N2およびn型半導体領域N3と同工程(同じ熱拡散処理)で形成すれば、半導体装置の製造工程数を更に低減できるため、更に好ましい。
半導体基板1の裏面側に形成したp型半導体領域P3,P5およびn型半導体領域N4は、半導体基板1(1W)の裏面側から半導体基板1(1W)内に不純物を熱拡散させることにより形成するため、半導体基板1(1W)の裏面からの深さが深い半導体領域ほど、先に形成する必要がある。本実施の形態では、n型半導体領域N4はp型半導体領域P5に内包され、p型半導体領域P3はp型半導体領域P5とn型基板領域N1との間に介在しているため、半導体基板1(1W)の裏面からの深さは、p型半導体領域P3がp型半導体領域P5およびn型半導体領域N4よりも深く、p型半導体領域P5がn型半導体領域N4よりも深くなっている。このため、p型半導体領域P3,P5およびn型半導体領域N4のうち、最初にp型半導体領域P3を形成し(すなわちp型半導体領域P3形成用の熱拡散処理を行い)、その後でp型半導体領域P5を形成し(すなわちp型半導体領域P5形成用の熱拡散処理を行い)、更にその後でn型半導体領域N4を形成する(すなわちn型半導体領域N4形成用の熱拡散処理を行う)。これにより、p型半導体領域P5に内包されるようにn型半導体領域N4を形成でき、また、p型半導体領域P5とn型基板領域N1との間にp型半導体領域P3を介在させることができる。
また、上記図6に示されるように、p型半導体領域P2とp型半導体領域P3とを同工程(同じ熱拡散処理)で形成すれば、半導体装置の製造工程数を低減することができるため、より好ましい。また、上記図7に示されるように、p型半導体領域P4とp型半導体領域P5とを同工程(同じ熱拡散処理)で形成すれば、半導体装置の製造工程数を低減することができるため、より好ましい。また、上記図8に示されるように、n型半導体領域N2とn型半導体領域N3とn型半導体領域N4とn型半導体領域N5とを同工程(同じ熱拡散処理)で形成すれば、半導体装置の製造工程数を低減することができるため、より好ましい。
また、トライアックは大電流(例えば数A〜数十A程度)を流す素子であるため、発熱を抑制するために体積をある程度確保する必要がある。また、トライアックに瞬間的に数十〜数百Aのサージ電流が流れても素子が破壊されないように、体積を大きくして単位体積当たりの発熱量を抑える必要がある。このため、半導体基板1(1W)において、かなり深い位置にまで不純物を拡散させて、p型半導体領域P1,P2,P3,P4,P5およびn型半導体領域N2,N3,N4,N5を形成する必要がある。このため、これらの半導体領域(P1,P2,P3,P4,P5,N2,N3,N4,N5)をイオン注入のみで形成することは困難であり、熱処理により不純物を半導体基板1(1W)の内部に拡散させる熱拡散処理によって、これらの半導体領域(P1,P2,P3,P4,P5,N2,N3,N4,N5)を形成することになる。しかも、上述のように、半導体基板1(1W)において、かなり深い位置にまで不純物を拡散させる必要があるため、一般的な半導体装置を製造する場合に比べて、熱拡散処理は高温で長時間になる。
上述したように、転流失敗の防止と耐圧向上を両立させるためには、半導体基板1(1W)の表面側に形成したp型半導体領域P2とp型半導体領域P4とのうち、p型半導体領域P4は、p型半導体領域P2よりも浅く(すなわちp型半導体領域P4がp型半導体領域P2に内包されるように)かつp型半導体領域P2よりも高不純物濃度に形成することが重要である。このため、p型半導体領域P2形成用の熱拡散処理を行った後で、p型半導体領域P4形成用の熱拡散処理を行うことが重要である。具体的には、p型半導体領域P2は、p型半導体領域P2用のイオン注入で半導体基板1Wの表面付近(表面側の表層部分)にp型不純物を導入してから、このp型不純物をp型半導体領域P2形成用の熱拡散処理(熱処理)で半導体基板1Wの内部に拡散させることにより、形成される。p型半導体領域P4は、p型半導体領域P4用のイオン注入で半導体基板1Wの表面付近(表面側の表層部分)にp型不純物を導入してから、このp型不純物をp型半導体領域P4形成用の熱拡散処理(熱処理)で半導体基板1Wの内部に拡散させることにより、形成される。このため、p型半導体領域P2用のイオン注入、p型半導体領域P2形成用の熱拡散処理(熱処理)、p型半導体領域P4用のイオン注入およびp型半導体領域P4形成用の熱拡散処理(熱処理)の順に、これらの工程を行う必要がある。
また、転流失敗の防止と耐圧向上を両立させるためにp型半導体領域P4を高不純物濃度としかつp型半導体領域P2を低不純物濃度とする観点から、p型半導体領域P4形成用の熱拡散処理(熱処理)に先立って行うp型半導体領域P4用のイオン注入のドーズ量を、p型半導体領域P2形成用の熱拡散処理(熱処理)に先立って行うp型半導体領域P2用のイオン注入のドーズ量よりも大きく(多く)する。更に、p型半導体領域P4形成用の熱拡散処理(熱処理)に先立って行うp型半導体領域P4用のイオン注入のドーズ量を、p型半導体領域P2形成用の熱拡散処理(熱処理)に先立って行うp型半導体領域P2用のイオン注入のドーズ量の10〜5000倍とすれば、より好ましい。これにより、p型半導体領域P4とp型半導体領域P2との不純物濃度の差を的確に確保することができ、転流失敗の防止効果と耐圧向上効果とを的確に得ることができるようになる。
p型半導体領域P4とp型半導体領域P2との上記関係は、同様の観点から、p型半導体領域P5とp型半導体領域P3にも適用できる。
具体的には、p型半導体領域P3は、p型半導体領域P3用のイオン注入で半導体基板1Wの裏面付近(裏面側の表層部分)にp型不純物を導入してから、このp型不純物をp型半導体領域P3形成用の熱拡散処理(熱処理)で半導体基板1Wの内部に拡散させることにより、形成される。p型半導体領域P5は、p型半導体領域P5用のイオン注入で半導体基板1Wの裏面付近(裏面側の表層部分)にp型不純物を導入してから、このp型不純物をp型半導体領域P5形成用の熱拡散処理(熱処理)で半導体基板1Wの内部に拡散させることにより、形成される。このため、p型半導体領域P3用のイオン注入、p型半導体領域P3形成用の熱拡散処理(熱処理)、p型半導体領域P5用のイオン注入およびp型半導体領域P5形成用の熱拡散処理(熱処理)の順に、これらの工程を行う必要がある。また、p型半導体領域P5形成用の熱拡散処理(熱処理)に先立って行うp型半導体領域P5用のイオン注入のドーズ量を、p型半導体領域P3形成用の熱拡散処理(熱処理)に先立って行うp型半導体領域P3用のイオン注入のドーズ量よりも大きく(多く)し、10〜5000倍とすれば、より好ましい。これにより、p型半導体領域P5とp型半導体領域P3との不純物濃度の差を的確に確保することができ、転流失敗の防止効果と耐圧向上効果とを的確に得ることができるようになる。
また、p型半導体領域P4とp型半導体領域P2との深さ(半導体基板1の表面からの深さ)の差を十分に確保できるように、p型半導体領域P2形成用の熱拡散処理(上記図5の状態から上記図6の構造を得るために行った熱拡散処理)は、p型半導体領域P4形成用の熱拡散処理(上記図6の状態から上記図7の構造を得るために行った熱拡散処理)よりも、長時間行う(すなわち熱処理時間を長くする)ことが好ましい。
また、p型半導体領域P5とp型半導体領域P3との深さ(半導体基板1の表面からの深さ)の差を十分に確保できるように、p型半導体領域P3形成用の熱拡散処理(上記図5の状態から上記図6の構造を得るために行った熱拡散処理)は、p型半導体領域P5形成用の熱拡散処理(上記図6の状態から上記図7の構造を得るために行った熱拡散処理)よりも、長時間行う(すなわち熱処理時間を長くする)ことが好ましい。
図21は、本実施の形態の半導体装置CP1の要部断面図(部分拡大断面図)であり、上記図2に対応する断面において、n型半導体領域N2,N3およびp型半導体領域P2,P4とその周囲のn型基板領域N1の一部を拡大して示したものである。図22および図23は、半導体装置CP1を構成する半導体基板1の深さ方向における不純物濃度分布の一例を示すグラフ(説明図)である。図22および図23のグラフの横軸は、半導体基板1の表面からの深さに対応し、図22および図23のグラフの縦軸は、不純物濃度に対応する。図22および図23は片対数グラフで表示してあり、縦軸が対数目盛に対応している。また、図22および図23は、濃度分布の一例であるため、実際の数値の表示は省略してある。なお、図22のグラフには、図21におけるC1−C2線に沿った位置での不純物濃度分布が実線で示されている。また、図23のグラフには、図21におけるC3−C4線に沿った位置での不純物濃度分布が実線で示され、図21におけるC5−C6線に沿った位置での不純物濃度分布が点線で示されている。なお、図23のグラフにおいて、p型半導体領域P2およびn型基板領域N1に相当する領域では、点線(C5−C6線に沿った位置での不純物濃度分布)は、実線(C3−C4線に沿った位置での不純物濃度分布)にほぼ重なるため、図示されていない。また、不純物の濃度分布は、例えばSRP(Spreading Resistance Profiler)測定で測定することができる。
n型半導体領域N2とp型半導体領域P2とp型半導体領域P4の各不純物濃度は、各半導体領域内で一定(この場合は図22および図23のグラフは階段状となる)とすることもできるが、図22および図23に示されるように、n型半導体領域N2とp型半導体領域P2とp型半導体領域P4のそれぞれにおいて、半導体基板1の表面からの深さが深くなるにつれて不純物濃度が低下するような不純物濃度分布を有する場合もある。これは、熱拡散を用いて各半導体領域(N2,N3,N4,N5,P1,P2,P3,P4,P5)を形成するためである。半導体基板の表面から深い位置にまで熱拡散によって不純物を拡散させた場合には、半導体基板1の表面近傍で最も高不純物濃度となり、半導体基板1の表面からの深さが深くなるにつれて不純物濃度が低下する濃度分布になりやすい。
しかしながら、本実施の形態では、製造上p型半導体領域P2とp型半導体領域P4とを作り分けており、p型半導体領域P2形成用の熱拡散処理(熱処理)を行ってからp型半導体領域P4形成用の熱拡散処理(熱処理)を行う。しかも、p型半導体領域P4形成用の熱拡散処理(熱処理)に先立って行うp型半導体領域P4用のイオン注入のドーズ量を、p型半導体領域P2形成用の熱拡散処理(熱処理)に先立って行うp型半導体領域P2用のイオン注入のドーズ量よりも大きく(多く)する。このため、図22および図23のように半導体基板1の表面からの深さが深くなるにつれて不純物濃度が低下する濃度分布になったとしても、本実施の形態では、p型半導体領域P2とp型半導体領域P4との不純物濃度の差を大きくすることができる。
つまり、本実施の形態とは異なりp型半導体領域P4を形成せずに、p型半導体領域P4となるべき領域もp型半導体領域P2のままとした場合に比べて、製造工程でp型半導体領域P2とp型半導体領域P4とを作り分けている本実施の形態の場合は、n型基板領域N1に隣接するp型半導体領域(P2)の不純物濃度を低く抑えながら、n型半導体領域N2,N3に隣接するp型半導体領域(P4)の不純物濃度を高めることができる。このことは、図22および図23のように半導体基板1の表面からの深さが深くなるにつれて不純物濃度が低下する濃度分布になった場合にも言うことができる。このため、転流失敗を抑制(防止)する効果を高めることができる。
また、本実施の形態とは異なりp型半導体領域P2を形成せずに、p型半導体領域P4をp型半導体領域P2となるべき領域と同等の深さまで形成した場合に比べて、製造工程でp型半導体領域P2とp型半導体領域P4とを作り分けている本実施の形態の場合は、n型半導体領域N2,N3に隣接するp型半導体領域(P4)の不純物濃度を高く保ったまま、n型基板領域N1に隣接するp型半導体領域(P2)の不純物濃度を低くできる。このことは、図22および図23のように半導体基板1の表面からの深さが深くなるにつれて不純物濃度が低下する濃度分布になった場合にも言うことができる。このため、耐圧向上効果を高めることができる。
このようなp型半導体領域P2とp型半導体領域P4との不純物濃度分布の関係は、p型半導体領域P3とp型半導体領域P5との不純物濃度分布の関係においても言うことができる。但し、p型半導体領域P2,P4は、半導体基板1の表面側に形成されていることから、半導体基板1の表面からの深さが深くなるにつれて不純物濃度が低下する濃度分布になり得るのに対して、p型半導体領域P3,P5の場合は、半導体基板1の裏面側に形成されていることから、半導体基板1の裏面からの深さが深くなるにつれて不純物濃度が低下する濃度分布になり得る。
従って、本実施の形態では、半導体基板1を構成する各半導体領域(N2,N3,N4,N5,P1,P2,P3,P4,P5)の各不純物濃度は、各半導体領域内で一定である場合はもちろん、図22および図23に示される濃度分布のように、半導体基板1の主面(表面または裏面)からの深さが深くなるにつれて不純物濃度が低下するような不純物濃度分布を有する場合も許容され得る。
また、本実施の形態では、製造工程で、低不純物濃度のp型半導体領域P2と高不純物濃度のp型半導体領域P4とを、あえて作り分けている。このため、p型半導体領域P4の表面濃度(表面での不純物濃度)α1は、p型半導体領域P2の表面濃度(表面での不純物濃度)α2よりも高くなっており、好ましくは、p型半導体領域P4の表面濃度α1は、p型半導体領域P2の表面濃度α2の50倍以上で5000倍以下(すなわちα2×50<α1<α2×5000)となっている。このp型半導体領域P4の表面濃度α1とp型半導体領域P2の表面濃度α2は、図23のグラフに示されている。p型半導体領域P4の表面濃度α1を、p型半導体領域P2の表面濃度α2の50倍以上(すなわちα2×50<α1)とすることで、p型半導体領域P2とp型半導体領域P4との不純物濃度の差を大きくすることができ、耐圧向上効果と転流失敗の抑制(防止)効果とを的確に得ることができる。また、p型半導体領域P4の表面濃度α1を、p型半導体領域P2の表面濃度α2の5000倍以下(すなわちα1<α2×5000)とすることで、耐圧向上を図りつつ、p型半導体領域P2の不純物濃度をある程度確保することができるため、p型半導体領域P2での空乏層の拡がりを的確に抑制することができるようになる。
ここで、p型半導体領域P4の表面濃度α1は、半導体基板1の表面(第1主面)におけるp型半導体領域P4の不純物濃度に対応しており、具体的には、p型半導体領域P4の表面濃度α1は、p型半導体領域P4のうち、半導体基板1の表面近傍の領域(半導体基板1の表面からの深さが概ね0〜2μmの範囲内の領域)における不純物濃度に対応している。例えば、図21に示される領域PS1の不純物濃度を、p型半導体領域P4の表面濃度α1とみなすことができる。p型半導体領域P2の表面濃度α2は、半導体基板1の表面(第1主面)におけるp型半導体領域P2の不純物濃度に対応しており、具体的には、p型半導体領域P2の表面濃度α2は、p型半導体領域P2のうち、半導体基板1の表面近傍の領域(半導体基板1の表面からの深さが概ね0〜2μmの範囲内の領域)における不純物濃度に対応している。例えば、図21に示される領域PS2の不純物濃度を、p型半導体領域P2の表面濃度α2とみなすことができる。
また、本実施の形態では、p型半導体領域P2の表面濃度(表面での不純物濃度)α2は、n型基板領域N1の不純物濃度α3よりも高くなっており、好ましくは、p型半導体領域P2の表面濃度α2は、n型基板領域N1の不純物濃度α3の5倍以上で500倍以下(すなわちα3×5<α2<α3×500)となっている。このn型基板領域N1の不純物濃度α3は、図23のグラフに示されている。p型半導体領域P2の表面濃度α2を、n型基板領域N1の不純物濃度α3の500倍以下(すなわちα2<α3×500)とすることで、電界の集中を緩和して、耐圧向上効果を高めることができる。また、p型半導体領域P2の表面濃度α2を、n型基板領域N1の不純物濃度α3の5倍以上(すなわちα3×5<α2)とすることで、耐圧向上を図りつつ、p型半導体領域P2の不純物濃度をある程度確保することができるため、p型半導体領域P2での空乏層の拡がりを的確に抑制することができるようになる。
ここで、n型基板領域N1の不純物濃度α3は、n型基板領域N1のうち、p型半導体領域P1,P2,P3,P4,P5およびn型半導体領域N2,N3,N4,N5からある程度離間して不純物濃度がほぼ一定となっている領域の不純物濃度に対応している。n型基板領域N1の不純物濃度α3は、p型半導体領域P1,P2,P3,P4,P5およびn型半導体領域N2,N3,N4,N5を形成する前の段階の半導体基板1Wの不純物濃度とほぼ同じである。
なお、p型不純物とn型不純物が混在したp型半導体領域についての不純物濃度を言うときには、実際に含まれているp型不純物の濃度から実際に含まれているn型不純物の濃度を差し引いた実効的なp型不純物濃度を意味する。また、p型不純物とn型不純物が混在したn型半導体領域についての不純物濃度を言うときには、実際に含まれているn型不純物の濃度から実際に含まれているp型不純物の濃度を差し引いた実効的なn型不純物濃度を意味する。
また、本実施の形態では、製造工程で、低不純物濃度のp型半導体領域P3と高不純物濃度のp型半導体領域P5とを、あえて作り分けている。このため、p型半導体領域P5の表面濃度を、p型半導体領域P5を形成しなかった場合のp型半導体領域P3の仮想的な表面濃度の50倍以上で5000倍以下とすることが好ましい。これにより、耐圧向上効果と転流失敗の抑制(防止)効果とを的確に得ることができる。
ここで、「p型半導体領域P5の表面濃度」とは、半導体基板1の裏面(第2主面)におけるp型半導体領域P5の不純物濃度に対応しており、具体的には、p型半導体領域P5のうち、半導体基板1の裏面近傍の領域(半導体基板1の裏面からの深さが概ね0〜2μmの範囲内の領域)における不純物濃度に対応する。一方、「p型半導体領域P5を形成しなかった場合のp型半導体領域P3の仮想的な表面濃度」とは、p型半導体領域P5の形成を省略した場合(この場合、p型半導体領域P5に相当する領域もp型半導体領域P3の一部となり、後述の図25のような構造となる)において、p型半導体領域P3のうち、半導体基板1の裏面近傍の領域(半導体基板1の裏面からの深さが概ね0〜2μmの範囲内の領域)における不純物濃度に対応する。このため、「p型半導体領域P5を形成しなかった場合のp型半導体領域P3の仮想的な表面濃度」は、p型半導体領域P5の形成を省略すること以外は半導体装置CP1と同様の製造工程で半導体装置を製造し、その半導体装置の半導体基板1の裏面近傍の領域におけるp型半導体領域P3の不純物濃度を測定すれば、得ることができる。また、p型半導体領域p3,P5を形成した半導体装置において、半導体基板1の裏面からの深さ方向におけるp型半導体領域P5,P3の不純物濃度分布を測定し、この濃度分布に基づいて、「p型半導体領域P5を形成しなかった場合のp型半導体領域P3の仮想的な表面濃度」をシミュレーションで決定できる場合もある。
図24は、本実施の形態の第1の変形例の半導体装置CP1aの断面図であり、図25は、本実施の形態の第2の変形例の半導体装置CP1bの断面図であり、図26は、本実施の形態の第3の変形例の半導体装置CP1cの断面図であり、図27は、本実施の形態の第4の変形例の半導体装置CP1dの断面図であり、上記図14や図2に対応する断面が示されている。
図24に示される第1の変形例の半導体装置CP1aは、上記図14や図2に示される半導体装置CP1においてp型半導体領域P3の形成を省略した場合に対応している。従って、半導体装置CP1でp型半導体領域P3となっている領域は、第1の変形例の半導体装置CP1aではn型基板領域N1の一部となっている。また、図25に示される第2の変形例の半導体装置CP1bは、上記図14や図2に示される半導体装置CP1においてp型半導体領域P5の形成を省略した場合に対応している。従って、半導体装置CP1でp型半導体領域P5となっている領域は、第2の変形例の半導体装置CP1bではp型半導体領域P3の一部となっている。また、図26に示される第3の変形例の半導体装置CP1cは、上記図14や図2に示される半導体装置CP1においてp型半導体領域P2の形成を省略した場合に対応している。従って、半導体装置CP1でp型半導体領域P2となっている領域は、第3の変形例の半導体装置CP1cではn型基板領域N1の一部となっている。また、図27に示される第4の変形例の半導体装置CP1dは、上記図14や図2に示される半導体装置CP1においてp型半導体領域P4の形成を省略した場合に対応している。従って、半導体装置CP1でp型半導体領域P4となっている領域は、第4の変形例の半導体装置CP1dではp型半導体領域P2の一部となっている。ここで、図24の第1の変形例の半導体装置CP1aの場合はp型半導体領域P5の不純物濃度を、図25の第2の変形例の半導体装置CP1bの場合はp型半導体領域P3の不純物濃度を、図26の第3の変形例の半導体装置CP1cの場合はp型半導体領域P4の不純物濃度を、図27の第4の変形例の半導体装置CP1dの場合はp型半導体領域P2の不純物濃度を、耐圧および転流失敗抑制のバランスを考慮して調整する必要がある。
図24〜図27に示される第1〜第4の変形例の半導体装置CP1a,CP1b,CP1c,CP1dにおいても、上記第1の比較例の半導体装置CP101に比べると、耐圧向上効果と転流失敗の抑制効果とを得ることができる。このため、図24〜図27に示される第1〜第4の変形例の半導体装置CP1a,CP1b,CP1c,CP1dも有効である。
但し、耐圧向上効果と転流失敗の抑制効果とをできるだけ高めるためには、上記図14や図2に示される半導体装置CP1のように、電極E1側のp型半導体領域をp型半導体領域P2とp型半導体領域P4とで構成し、かつ、裏面電極BE側のp型半導体領域をp型半導体領域P3とp型半導体領域P5とで構成することが、極めて有効である。このため、耐圧向上と転流失敗の抑制との両立には、図24〜図27に示される第1〜第4の変形例の半導体装置CP1a,CP1b,CP1c,CP1dよりも上記図14や図2に示される半導体装置CP1の方が優れている。
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。