JP5615849B2 - カスタム適合される製品用の複合材料 - Google Patents

Description

本願は、２０１０年２月２２日付で出願された米国特許出願第１２／７１０，２５２号および２００９年５月５日付で出願された米国特許出願１２／４３６，０８９号の一部継続出願であり、２００９年２月２４日付で出願された米国仮特許出願第６１／１５５，１３８号に対して米国特許法第１１９条（ｅ）に基づく優先権を主張するものである。

本発明は、カスタム成形される製品の分野に関し、特に整形外科製品に使用される複合材料の分野に関する。

製品をカスタム形状に成形して適合性を高める必要が生じることは多い。これが特に問題となるのは、保護用および筋骨格用の支持装置が使用される整形外科医療分野、スポーツ医学分野、身体保護用品、獣医用品などの分野である。これらの装置は、多様な度合いの支持と保護を提供しながら、身体に密接かつ快適に適合する必要がある。身体形状に適合する整形外科用ギプス、整形外科用矯正器、スポーツ医学で使用される支持装置、放射線治療に使用される固定および位置合わせ用装置、獣医学で使用される支持装置といった物品だけでなく、身体保護用品その他硬質の形態適合品は、すべて、構築用技術および材料の改善から恩恵を受けることができる。

整形外科用のギプスおよび矯正器は、通常、水により活性化され硬化する軟質樹脂を含浸させた帯状のガラス繊維を巻き付けることにより、身体の上から成形される。また、水により活性化される石膏および織物層を使っても成形できる。ポリカプロラクトン材料、例えばＢＳＮ Ｍｅｄｉｃａｌ製のＯｒｔｈｏｐｌａｓｔ（登録商標）も、矯正器に使用されている。このギプスおよび副子用材料は、皮膚に快適な最高温度の湯、華氏約１６０度で加熱して使用する。これらの材料を用いると、患者身体部分の形状に沿うように（ｉｎ ｓｉｔｕで）、クッション材とストッキネットの層の上からギプスまたは矯正器を成形および作製できるようになる。これらの先行材料では、１）身体周囲で成形できるよう十分な可鍛性があり、かつ、２）当該材料が患者または医療従事者に熱傷を負わせない温度まで十分加熱する時間が限られている。

ギプス、副子、矯正器、および他の製品は、複雑な形状に成形する必要のあることが多い。例えば、拇指のスパイカギプスまたは副子は、損傷した拇指の支持に必要とされることが多い。これらは、特定の利用者に合わせてカスタム成形することが難しく、複数部分に分けて成形され、副子またはギプス本体に取り付けられることが多いため、支持が弱くなってしまう。その適合性は、必ず快適なものになるとは限らないため、コンプライアンスの問題につながる。他の身体損傷では、実現が困難で高価となる比較的複雑な形状が必要とされる可能性がある。

特に矯正器は、カスタム形状に成形することが難しい。矯正器は、膝、足首、手首その他の身体部分の屈曲を可能にするため、柔軟性が必要なことが多い。それと同時に、矯正器は、強度が低下した身体部分の損傷を防ぐため硬質である必要もある。このように、先行矯正器の大半は複雑な機械的装置であり、作製が難しく、身体にカスタム適合させることはより難しい。
ギプス、副子、矯正器、および保護用品などの整形外科用製品および他製品は、従来材料による複雑形状の成形が難しいだけでなく、患者に十分適合しないことが多い。これらの製品は、通常、機械的なしくみで製造され、またはフックおよびループ、または接着剤などの接続部とともに一体装着され、または成形が不可能であるため、患者に合わせてカスタム成形することができない。このようにカスタム適合できないことが不快感につながり、当該製品のコンプライアンス、使用、および効果に影響している。
この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、以下のものがある（国際出願日以降国際段階で引用された文献及び他国に国内移行した際に引用された文献を含む）。
【先行技術文献】
【特許文献】

【特許文献１】 米国特許出願公開第２００８／０３１９３６２号明細書
【特許文献２】 米国特許出願公開第２００２／０１６１１１４号明細書
【特許文献３】 米国特許出願公開第２００７／００７７３９３号明細書
【特許文献４】 米国特許第５３６４６９３号明細書
【特許文献５】 米国特許第６８４３１９０号明細書
【特許文献６】 米国特許出願公開第２００５／０２８１９９９号明細書

本発明は、身体部分に容易にカスタム適合させ、複雑な形状に成形できるとともに、室温において非常に硬質で丈夫な独自の複合材料を提供する。この平坦なシート複合材料は、比較的薄く、種々の形状に切断し、加熱し、縫製して、複雑な３次元形状に成形できる。その完成品は、加熱すると身体上で無理なく成形でき、身体部分に精確に適合させて、これを支持することができる。

好適な実施形態は、華氏約２００度の温度で熱成形性の硬質ポリマー材料の中間層を有する複合材料を提供する。この層は、伸縮性の高い織物材料の層および／または発泡材の層に挟持される。その結果得られる複合材料では、前記中間層が可鍛性になるまで加熱された状態で、前記外層が断熱材となり、切断、縫製、および成形に対する安定性をもたらし、当該複合材料が加温され柔らかくなった状態で、当該複合材料の耐久性を高める。

また、前記織物層および発泡材層により、加熱された当該材料は高温で柔軟な状態でもミシンを容易に通過でき、プラスチック単独では得られない、縫い目に対する耐久性を獲得する。これらの織物層は伸縮性を有することができるため、前記中間層の３次元成形が可能になるとともに、当該織物の伸縮性により、加熱された柔らかい物品が冷めて硬化する間に当該物品を身体に合わせて圧縮および成形することができる。また、前記伸縮性の層は形状を記憶するというプラスチック単独からは得られない性能をもたらすため、当該物品は、再加熱時点で元の形状に戻って身体への再適合が可能となる。

好適な一実施形態では、前記織物挟持層の１つの片側または両側に、当該織物挟持層の代わりに、または当該織物挟持層に加えて、前記複合材料に断熱発泡材層を含めることもできる。この発泡材により、前記複合材料を加熱した際の扱いが容易になり、当該複合材料の熱から身体を保護し快適さをもたらす層が得られる。このように、前記複合材料の縫製時および身体に合わせた成形時、比較的低密度の発泡材が手および身体を熱から保護するため、当該熱成形性材料に適用できる温度範囲が広がる。また、前記断熱特性により前記複合材料の可鍛性の持続時間が延長されるため、身体に合わせて当該物品を縫製および成形できる時間が延びる。

本発明の好適な一実施形態に係る前記複合材料は、基本的な３次元形状に縫製した後で加熱すると、前記中間層が可鍛性になり、当該複合材料の層の伸縮性も手伝って、さらに複雑な形状に成形できる。本製品は、この基本形状で使用するよう販売できる。あるいは、本製品を平坦にプレスすると、保管および出荷時のサイズを小さくできる。その後、この完成品は、消費者が華氏１４０度を超える温度に再加熱すると伸縮性になり、これに限定されるものではないが、身体などの複雑な表面に密接に適合させた成形が可能になる。

当該材料では、前記伸縮性織物および発泡材の層が形状を記憶および保持するため、たるむことなく面に合わせて伸張させ、成形できる。これにより、身体表面への高い材料適合性が容易かつ迅速に提供可能となる。当該材料は、冷めると硬質で支持強度の高い構造を形成する。前記中間層のプラスチック材料は、厚さおよび硬度を変えて、使用目的に合った望ましい度合いの支持、保護、および屈曲性を提供することができる。

本発明の好適な一実施形態において、前記複合材料は、多くの硬質材料と異なり、加熱し、柔軟な状態にして標準的なミシンで縫製すると、一般的な伸縮性織物の衣類の縫製と同様、かさばらず伸縮性で形状が複雑な、快適で外観が優れた縫い目を作製できるという重要な特徴を有する。前記織物層および／または発泡材層により、前記加熱された複合材料は通常の伸縮性織物のように作用し、通常の態様で機械または手作業によりミシン縫製できるようになる。

前記発泡材外層の断熱特性により、加温された材料が柔軟なまま保たれる時間が延長され、過剰な熱から手を保護しながら、縫い目の長い複雑な縫製をする十分な時間ができる。当該製品は、前記縫製、成形、および製造工程が完了するまで何度でも再加熱できる。また、前記複合材料の部品を異なる態様で伸張させながら縫製および操作すると、角度を成す形状を縫製中の物品に作ることができる。そのため、これまで低温硬質材料部品の縫製で非常に困難または不可能であった３次元の製品を容易に作製できるようになる。冷却時、前記中間支持層材料は硬化し、その３次元形状によりさらに強化されて強靱で支持強度の高いものになる。前記縫い目は、硬質な部品を連続的に接合するため、リベット、接着剤、または機械的固定部材など他の連結手段に見られる一定点での負荷および疲労の集中を軽減する。

また、好適な一実施形態の織物層および発泡材層は、身体の快適さだけでなく、プリント織物または凹凸を付けた織物による美的外観ももたらす。また、前記発泡材層は緩衝作用をもたらすことから、適合・成形された最終製品では、身体を動かす際および重量がかかる際に圧力のかかる点が排除され、より快適なものとなる。さらに、前記発泡材層は前記中間ポリマー層と同じ温度で熱成形性となるため、前記成形工程中に圧力をかけて厚さを変えることにより、付加的な形状および曲線を設けることができる。これらの発泡材層の厚さ、密度、および組成を変えると、必要に応じて多様なレベルの緩衝作用が得られる。この複合材料と高温での縫製技術とを組み合わせると、望ましいユニークな特徴を多数提供することができる。

以上に述べた本発明の特徴等は、以下の好適な実施形態に関する詳細な説明と、請求項と、図面とから容易に理解されるであろう。

図１は、本発明の好適な一実施形態の複合材料から形成された整形外科用矯正器を例示した図である。 図２は、図１の複合材料の側面破断図である。 図３は、図１の複合材料の分解組立図である。 図４は、丸みを帯びた縁部を伴う前記複合材料の側面破断図である。 図５は、前記複合材料を腕に取り付けて形成した整形外科用矯正器を例示した図である。 図６は、異なる閉鎖機構を伴う前記矯正器を例示した図である。 図７は、異なる閉鎖機構を例示した図である。 図８は、重なり合った縁部を示す正面破断図である。 図９は、前記複合材料から形成した別の整形外科用矯正器を例示した図である。 図１０は、前記複合材料から形成した頚部矯正器を例示した図である。 図１１は、前記複合材料から形成した腰背部矯正器を例示した図である。 図１２は、前記複合材料から形成した副子を例示した図である。 図１３は、患者上で形成した前記副子を例示した図である。 図１４は、別の副子を例示した図である。 図１５は、患者上で形成した前記副子を例示した図である。 図１６は、脚部用副子を例示した図である。 図１７は、別の脚部用副子を例示した図である。 図１８は、使用するため準備中の副子を例示した図である。 図１９は、加熱したのち患者上で形成中の前記副子を例示した図である。 図２０は、患者の周囲で圧縮中の前記副子を例示した図である。 図２１は、患者の周囲で成形中の前記副子を例示した図である。 図２２は、前記複合材料から形成した保護用肩パッドを例示した図である。 図２３は、前記複合材料から形成した保護用レガースの構成要素を例示した図である。 図２４は、前記保護用レガースを組み立てた状態を例示した図である。 図２５は、保護用手袋の構成要素を例示した図である。 図２６は、前記保護用手袋を組み立てた状態を例示した図である。 図２７は、手の上で成形中の前記保護用手袋を例示した図である。 図２８は、前記複合材料に使用する加熱ユニットを例示した図である。 図２９は、前記加熱ユニットの破断図である。 図３０は、発熱加熱ユニットを例示した図である。 図３１は、電子レンジで使用できる加熱ユニットの側面破断図である。 図３２は、前記電子レンジで使用できる加熱ユニットを加熱した状態の側面破断図である。 図３３は、２つの構成要素を縫い合わせている状態を例示した図である。 図３４は、前記複合材料から形成した前記２つの構成要素の縫製を示す側面破断図である。 図３５は、２つの構成要素を連結する特定の縫い目を示した側面破断図である。 図３６は、前記縫い目が前記２つの構成要素の動きを可能にしている状態を例示した図である。 図３７は、前記縫い目が前記構成要素を平坦に広げられるようにしている状態を例示した図である。 図３８は、ブランクから切断された２つの構成要素を例示した図である。 図３９は、前記２つの構成要素を縫い合わせている状態を例示した図である。 図４０は、前記２つの構成要素を加熱中に縫い合わせている状態を例示した図である。 図４１は、前記構成要素を縫製して複雑な形状を形成している状態を例示した図である。 図４２は、前記構成要素を縫製してスパイカ矯正器を形成している状態を例示した図である。 図４３は、連続ループ織物（ｕｎｂｒｏｋｅｎ ｌｏｏｐ ｆａｂｒｉｃ）の外層を有する矯正器を例示した図である。 図４４は、取り付け可能な閉鎖機構を例示した図である。 図４５は、前記取り付け可能な閉鎖機構を前記矯正器上で組み立てた状態を例示した図である。 図４６は、患者上で組み立てた前記矯正器を例示した図である。 図４７は、前記取り付け可能な閉鎖機構の構成要素の拡大図である。 図４８は、前記構成要素の側面図である。 図４９は、前記構成要素の別の側面図である。 図５０は、前記取り付け可能な閉鎖機構の構成の１つを例示した図である。 図５１は、前記閉鎖機構の別の構成を例示した図である。 図５２は、前記閉鎖機構の別の構成を例示した図である。 図５３は、前記閉鎖機構の別の構成を例示した図である。 図５４は、前記閉鎖機構の別の構成を例示した図である。 図５５は、別の閉鎖機構を例示した図である。 図５６は、前記閉鎖機構の構成要素の側面破断図である。 図５７は、前記矯正器上の前記閉鎖機構の分解組立図である。 図５８は、前記矯正器を組み立てた状態を例示した図である。 図５９は、患者上の前記矯正器を例示した図である。 図６０は、別の閉鎖機構を例示した図である。 図６１は、別の閉鎖機構を例示した図である。 図６２は、前記閉鎖機構の別の構成を例示した図である。 図６３は、別の閉鎖機構を例示した図である。 図６４は、前記閉鎖機構の別の図である。 図６５は、別の閉鎖機構を例示した図である。 図６６は、別の閉鎖機構を例示した図である。 図６７は、別の閉鎖機構を例示した図である。 図６８は、連続ループ織物の部分を有する矯正器を例示した図である。 図６９は、別の閉鎖機構を例示した図である。 図７０は、前記閉鎖機構を矯正器上で組み立てた状態を例示した図である。 図７１は、腰背部矯正器上の前記取り付け可能な閉鎖機構を例示した図である。 図７２は、前記腰背部矯正器上の異なる位置にある前記取り付け可能な閉鎖機構を例示した図である。 図７３は、脚部用副子上の前記取り付け可能な閉鎖機構を例示した図である。 図７４は、前記副子上の異なる位置にある前記閉鎖機構を例示した図である。

本発明の好適な実施形態を図１〜７４に例示した。本明細書で説明する実施形態は、説明目的でのみ提供するもので、本明細書の特許請求の範囲に記載された発明を必要以上に限定することを目的としたものではないことを明示的に理解すべきである。例示的実施形態は、身体部分を固定および支持するため使用される整形外科製品の観点から本発明を説明するものである。言うまでもなく、本発明は、医療用、スポーツ用、保護具用、獣医用その他のタイプの用途を含み、かつこれらに限定されない他種製品と併用することも目的としている。

以下の用語は、本明細書で次のように定義される。矯正器（ｂｒａｃｅ）は、身体の動きを補助または制限するため使用される装置である。ギプス（ｃａｓｔ）は、骨折部または骨折肢の治癒中にこれを守るよう成形した材料でできた保護用の外殻構造である。副子（ｓｐｌｉｎｔ）は、損傷した骨、関節、体肢、または脊椎を固定し、または安定させる医療用具装具（ｏｒｔｈｏｓｅｓ）は、変形または変形部を支持し、補助し、位置合わせし、防止し、または補正し、あるいは身体の可動部機能を改善するため使用される整形外科用の外付け用具である。ドウェル時間（ｄｗｅｌｌ ｔｉｍｅ）とは、製品を成形する上でその複合材料が十分な可鍛性を保つ時間と定義される。目標温度（ｔａｒｇｅｔ ｔｅｍｐｅｒａｔｕｒｅ）は、華氏約１６５度〜華氏２５０度、好ましくは華氏約２００度と定義される。本発明の目的上、可鍛性であるとは、材料が屈曲可能、４方向へ高度に伸縮可能、および圧縮可能になり身体部分および他の対象物の周囲で複雑形状を形成できるようになった、３次元形状が成形可能な状態と定義される。成形性および屈曲性が若干高まっても、上記特徴の度合いが高くない材料は、可鍛性と見なされない。本発明の目的上、ヒトの皮膚が熱傷を負うということは、華氏２００〜２２０度以上に加熱された材料が当該程度の熱伝導をもたらし、痛みを伴う不快感により手では容易に取り扱えず、加熱された当該材料が身体に当てられると痛みを伴う身体皮膚の発赤および／または水疱形成が生じることと定義される。

概要
整形外科製品の一例、例えば本発明を使用できる短い腕骨折用矯正器を図１に例示した。他種の矯正器、副子、ギプス、その他の製品を含む他種の製品もあることを明示的に理解すべきである。ここで説明する実施形態の矯正器１０には、図２〜３に示すように、内層２０と、中間支持層３０と、外層４０とが含まれる。これら３層はそれぞれ独特の機能を提供し、１枚の複合製品に重ね合わせることでユニークな優れた製品となる。これらの３層は、それぞれ詳しく後述するが、一体的に成形または積層されて１つの複合材料を形成する。閉鎖部６０は、使用前に取り付けるもので、これにより専門的な訓練を受けていない医療提供者でも矯正器を適切な形状に容易に成形して患者に固定することができる。その結果得られる矯正器は、患者にとって非常に快適なものになり、その使用に関する患者のコンプライアンスを向上させることができる。このように成形された矯正器は、上述し、また後述するこれまでのシステムと比べ、多くの付加的な利点がある。

この好適な実施形態の一体化されたシステムでは、事前に積層して、事前に成形して、またはブランクシートとして、手首、腕、膝、首、または他の身体部位を支持するなど所望の使用に係るサイズで、矯正器を提供することができる。次いで当該システムは、特定の患者に合わせて後述のように容易にカスタマイズされる。好適な一実施形態において、当該システムでは、患者の必要に応じて腫れその他の問題に対応するよう矯正器を調整することもできる。また、この調整機能により、支持する特定の身体部分に合わせて矯正器をカスタマイズすることもできる。

当該矯正器システムは、乾式加熱による加熱で数分以内に熱成形可能になる。当該矯正器システムは、華氏１６０度〜華氏２５０度の温度（目標温度）で柔軟になり成形が容易になるが、当該材料のガラス転移温度を超えた場合のように過度に流動的にならないようある程度の剛性も保つことができる。次にこのシステムは、患者に熱傷または不快感を生じることなく、患者部位の上に配置できる。比較的低密度の発泡材内層は、高密度で高温の中間プラスチック層を身体から断熱する。実際に、発泡材より高密度である皮膚は、発泡材が皮膚に熱を伝達できるより速く発泡材を冷却するため、使用される温度による熱傷から皮膚を保護する。次いで当該システムは、専門技能を必要とすることなく、後述の方法により、特定の患者に望ましい厳密な形状へと容易に成形される。

好適な実施形態のシステムは、前記矯正器システムを制御可能にする可鍛性の持続時間を提供するよう設計されている。本明細書では、これを矯正器の「ドウェル時間」と呼ぶ。これは、医師または技師が患者の身体上で矯正器を精確に成形しなければならない非常に重要な時間である。好適な本実施形態では、前記中間層の材料、当該中間層材料の密度または厚さ、当該中間層材料が可鍛性となる温度範囲、および前記内層および外層の断熱特性を選択することにより、前記ドウェル時間を制御する。また、ドウェル時間は利用者が物品の加熱温度を調整することでも調整でき、その場合、より高温にするとドウェル時間は延長される。

この好適な実施形態では、前記中間層の初期加熱温度、当該中間層の材料の選定、当該中間層の厚さと密度、および前記内層および外層の断熱特性によりドウェル時間が制御される。この好適な実施形態では、華氏約２００度〜華氏約１６０度の温度で可鍛性になる材料を硬質の前記中間層に使用する。これら材料の成形温度範囲だけでは、通常、当該材料を十分な時間可鍛性にできず、深刻な不快感または傷害を患者に与えることになってしまう。これらの材料自体は、熱源から切り離すと数秒間で冷めてしまう。前記低密度の断熱発泡材でできた内層および外層により内包することがドウェル時間を延長する重要な技術革新であり、これにより上記の手段でドウェル時間を変化させると同時に、前記内層の危険な高熱から患者を断熱することが可能になる。

当該製品用の複合材料は、放射線透過性である。そのため、当該製品を取り外さなくとも、Ｘ線その他の撮像手続きを患者に行うことができる。これにより、治癒過程の状態を確認するための時間と経費が大幅に節約できる。

前記複合材料は、材料を加熱して成形、縫製し、または可鍛性になった当該材料の形状を操作したのち、冷却して新たな形状を硬質形態で保持することにより、複雑な形状に成形できる。

また、当該複合材料は、「ブランク」形態で作製したのち、形状に沿うように（ｉｎ ｓｉｔｕで）成形して望ましい形状にし、カスタム適合させることもできる。これにより、大規模な製品在庫なしで柔軟性とカスタマイズ性を実現できる。

材料
好適な本実施形態の複合材料には、積層、成形その他の製造工程により前記中間支持層３０と組み合わせられた軟質の発泡材内層２０が含まれる。この発泡材内層２０は、皮膚に接して快適さをもたらす。また、前記中間層３０の擦過および熱から患者の皮膚を保護できるほか、防水性（非吸収性）でもある。この層は、目標温度で成形可能となるため、患者身体の細部にまで精確な適合性が得られる。この層の特定の発泡材組成は上記のように低密度で、熱を散逸させるため、加温された矯正器が身体部分の周囲に配置される初期、患者に害が及ばない。他の好適な実施形態では、前記発泡材が可鍛性でない場合もあるが、圧縮させて患者の身体部分周囲に快適かつ密接に適合させることができる。当該発泡材は、緩衝作用（クッション作用）をもたらすほか、使用の快適さとコンプライアンスを高める。この好適な実施形態における発泡材はクローズドセル構造であるが、代替態様として、防水性が望まれない場合には通気性をもたらすオープンセル構造であってもよい。また、この層は、抗菌剤、皮膚ローション剤、または他の薬剤および化学物質など治療用の化学添加剤を受容し放出する泡状製剤であってもよい。また、この層に粘弾性の形状記憶（低反発）発泡材を使って、身体に精確に適合させることもできる。

この好適な実施形態では、前記内層２０に、クローズドセル発泡材層、オープンセル発泡材層、ゲルまたは軟質ポリマーの層、断熱織物、多層構造または嵩高断熱織物層、または他の任意の緩衝性断熱層などの材料を含めることができるが、これに限定されるものではない。この層は、緩衝作用により患者に快適さをもたらすとともに、断熱特性により前記中間層の熱を保って前記材料の成形作業時間を延長し、縫製作業のための支持面を提供する。この支持面は、縫い目で糸を固定する機構を提供するほか、縫製機器を通じ、加熱された複合材料を付着させずに動かせる滑らかな表面も提供する。また、この層は、加熱されて可鍛性になった複合材料を縫製機器の基部から断熱し、複雑な縫製工程を行う上で十分長時間、可鍛性を保つ。大半の縫製機器の基部は、通常、大きく厚い金属面で、断熱されていない材料から数秒間で急速に熱を吸収する。華氏約２００度の温度まで加熱した場合、この層の滑り摩擦係数は約１以下となり、過度に力を加えなくとも、または粘着せず、金属面を滑る。

好適な実施形態のこの内層２０は、種々の架橋結合ポリエチレン（「ＰＥ」）およびエチレン酢酸ビニル（「ＥＶＡ」）発泡材などの発泡材料、または他の適切な材料から成形される。当該材料は、前記目標温度で成形が可能である。ただし、この層は、製造工程で実現されるより高温の華氏約３００度でも成形可能である。これにより、当該材料は、製造中、種々の形態に圧縮成形可能になり、縁部をヒートシールにより前記外層と封着して前記中間層を封入できるようになる。この層は、種々の薬剤または抗菌剤で処理することができる。

前記内層の内側に追加層を貼付すると、抗菌機能を提供することもできる。これらの追加層には、他の治療特性も組み込める。この層は、発泡材、織物、不織布、または他の適切な材料であってよい。

この好適な実施形態の前記中間層３０は、薄い熱成形性ポリマープラスチック材料であり、前記目標温度で柔軟になるが、室温では実質的に硬質である。この層は、身体部分に相当の支持を提供し、ポリマー材料の組成を変化させると、必要に応じて様々な度合いの柔軟性と剛性を有するよう設計することができる。また、材料の厚さ、穴開け、または切欠部により特徴を変化させることもできる。この層は、意図された治癒目的に必要な厚さ、テーパー形状の縁部、リブ、穴、ならびに望ましい剛性、強度、および柔軟性をもたらす形状を種々変更して成形できる。

好適な本実施形態の前記中間層３０は、企業が独自に開発し特定の特性を備えた熱可塑性ポリマー材料から形成される。この材料は華氏約１６５度〜華氏２００度の温度で容易に成形でき、華氏１３０度未満の温度では硬質である。また、この材料のガラス転移温度は低いことが好ましく、これにより可鍛性の状態から緩慢に硬質になる。この材料の厚さは、約０．０２５インチ〜約１２５インチ内の範囲が好ましい。この材料の硬度はショア７０Ａを超え、好ましくはＡＳＴＭ Ｄ２２４０に基づいて測定した場合ショア約６５Ｄ〜約８０Ｄの範囲内である。この材料は、高い衝撃強度に対して十分な構造的強度を有し、切り欠き伝播特性が低く、耐久性を有する。例えば、これに限定されるものではないが、好適な本実施形態の材料は、引張強度が６０００〜９０００ｐｓｉ（ＡＳＴＭ Ｄ６３８）範囲、好ましくは７５００ｐｓｉ、破断伸長率が５％（ＡＳＴＭ Ｄ６３８）、曲げ弾性係数２７０，０００〜３４０，０００ｐｓｉ、好ましくは３０８，０００ｐｓｉ（ＡＳＴＭ Ｄ５０２３）である。好適な材料の比重は、約１〜１．５グラム／ｃｍ^３（ＡＳＴＭ Ｄ７９）である。

別の好適な実施形態の中間層３０は、ポリ塩化ビニル（「ＰＶＣ」）シート、アモルファスポリエチレンテレフタレート（「ＡＰＥＴ」）、再生ポリエチレンテレフタレート（「ＲＰＥＴ」）、またはＳｉｎｔｒａ（商標）またはＫｏｍａｔｅｘ（商標）などのＰＶＣ発泡材から形成されることが好ましい。他の好適な材料としては、ポリカプロラクトンおよびカプリラクトンなどがあるが、これに限定されるものではない。また、低密度ポリエチレンまたは高密度ポリエチレン（「ＨＤＰＥ」）などの材料および同様な材料も使用することができる。華氏２５０度未満の温度で熱成形性になり室温では硬質の他の材料を使うこともできる。

好適な一実施形態において、前記外層４０は、容易に伸張する伸縮性材料から形成され、元の形状を記憶して元の形状に戻り、高強度で耐久性を有する。この材料としては、ニットナイロンスパンデックス混紡物、ニットポリエステル、スパンデックス混紡物、ナイロン織物、ポリエステル、またはニット構造により伸張する他の繊維、およびゴム引き材料（ｒｕｂｂｅｒｉｚｅｄ ｍａｔｅｒｉａｌ）などがあるが、これに限定されるものではない。スパンデックスは、伸縮性の高い合成繊維の総称である。一実施形態では、好適な材料に、ナイロンまたはポリエステルと、スパンデックスとの混紡物が含まれる。また、この実施形態の好適な材料は、華氏２００度を超える温度に加熱しても粘着性にならず、この温度に加熱した場合、表面上を容易に滑る。華氏約２００度の温度まで加熱した場合、この層の滑り摩擦係数は約１以下となり、過度に力を加えなくとも、または粘着せず、金属面を滑る。

前記外層は、別の実施形態において、上記の伸縮性材料と併せて別の発泡材層を含むことが好ましく、前記別の発泡材層は、好適な一実施形態において、身体部分の周囲で矯正器を形成する際に前記高温の中間層を断熱することを含め、前記内層の特徴の多くを有する。また、当該外層は矯正器に美観をもたらし、前記中間層による擦過からの保護も果たす。この外層は、硬質で可能性として面が粗く穴の開いた前記中間層に、耐久性のある快適なカバーを提供するよう意図されている。この好適な実施形態において、当該外層は、ウレタン発泡材、発泡ゴム材、またはＥＶＡ発泡材など、前記目標温度を超える温度で成形可能な発泡材から形成される。これにより、逃がし形状、リブ、凹部、または美的形状を備えるよう、また縁部を前記内層に封着するよう、前記目標温度より著しく高い温度で製造中に前記外層を熱成形することができる。このような形状は、患者に合わせた成形工程中、影響されない。この好適な実施形態において、当該外層は前記目標温度で熱成形されないが、前記中間層の形状に従って伸張する。また熱成形されないことから伸縮性の包帯またはサポーターの跡もつかず、滑らかな美観が保たれる。これらの特徴が望まれない場合は、前記目標温度で熱成形可能にすることもできる。

前記発泡材外層を剛性の発泡材で作製すると、付加的な支持を提供できるだけでなく、周囲からの保護、美観を提供し、また熱成形工程中に若干の支持を提供することもできる。この外層を、面の粗い一般的な石膏またはガラス繊維の矯正器外面と比較した場合、快適さ、外観、美観、耐久性、および使いやすさに著しい改善が得られる。また、美観または耐久性のため、この層の外側に織物、合成皮革、または他の美的カバーを積層してもよい。また、連続ループ織物（ｕｎｂｒｏｋｅｎ ｌｏｏｐ ｆａｂｒｉｃ）として知られる織物は、ベルクロ（商標）などの一般的なフック・アンド・ループ・ファスナーに適合した表面を有する。これにより、一般的なフック・ストリップ・ファスナーを使って、閉鎖部、付加的な支持、複数の矯正器、および他の装置を瞬時に連結することができる。

前記複合材料には、前記３層を貫通する穴を含めることができ、このように形成された穴１２は、種々の数および形状により、換気、成形用の形状、創傷へのアクセス、またはカテーテルへのアクセスなどを提供する。また、これらの開口部により、前記中間層は、身体部分に合わせた当該矯正器の成形中、必要に応じて拡張および収縮できるようになる。一体化した矯正器に穴を開けて、拇指、足指などの身体部分用に開口部１４を作製することもできる。さらに、穴を開けて種々の閉鎖システム装着部品を受容することも可能である。ほとんどの場合、この好適な実施形態は体肢に１回巻き付けられ、ある程度重なり合う。これは、各サイズの製品内における身体部分の多様な直径と形状に対応するためであり、一般的な石膏およびガラス繊維の矯正器には見られない特徴である。このオーバーラップ場所は、当該矯正器の外周を使用中に開閉できるようにする前記閉鎖装置が配置される位置でもある。

代替材料の実施形態
前記中間支持層にも、穴を開けることができる。これにより、当該層は身体の３次元表面に対し容易に適合できるようになる。この穴は小さく、互いに近い距離に開けられ、全体として２５％〜５０％が開いた開放構造となる。この方法により前記穴の周囲にマトリックスの枠組みが作られるため、加熱されて柔軟になった状態では、小さい穴の周囲で変形させ、小さい穴へと寄せ、または小さい穴を引き伸ばすことにより、成形がより容易になる。この穴開け法により、穴が開いていない状態なら十分には成形できない、より厚く剛性の材料も使用可能になる。プラスチックポリマーでも、穴を開けて変形させる上記の工程で連続層の場合より低温で成形可能になり、これは患者の快適さおよび安全性に重要である。厚みのあるマトリックスの枠組みは、冷却され円柱形態様に成形された状態で、大半の支持矯正器に要求されるように非常に硬質になる。また、前記穴開けで軽量化されているため、患者の快適さとコンプライアンスも増す。前記中間層に開けるこれらの穴は、換気および冷却目的で使用される換気穴とは別個のもので、換気穴は、前記全層を打ち抜いて開けなければならず、より大きく互いに引き離すよう意図される。本発明の好適な一実施形態において、前記穴開けにより前記中間層重量の２５〜６０パーセントが除去される。これらの穴は、特に前記中間層の材料がＰＶＣシート、ＡＰＥＴ、およびＲＰＥＴを含む場合、有益である。

あるいは穴を開ける代わりに、ＰＶＣ発泡材（Ｓｉｎｔｒａ（商標）またはＫｏｍａｔｅｘ（商標）を含む）などの発泡材およびＡＰＥＴを発泡させ、２０〜５０パーセントの空気または気泡とともに押出成形または金型成形してもよい。また、硬質ＥＶＡ発泡材および他の高密度発泡ポリマーなど他の発泡材を使用してもよい。各々の用途は、それぞれの場合に必要な望ましい剛性および耐久性に応じて異なる。

前記中間層３０は、付加的な剛性が望まれる領域で厚みが増し、より柔軟性が必要とされる領域で薄くなるなど、種々の表面形状を有することができる。本発明の好適な別の一実施形態では、矯正器システム全体が単一材料から形成され、前記多層矯正器について上述した態様と多くの面で同様に作用する。この材料は、より多量または少量の気泡を発泡材に導入することにより、より高密度および低密度の層を有する。この材料の中央部分は、外側部分（気泡がより多い）より高密度（気泡がより少ない、またはない）である。これは、製造工程中、発泡材が圧潰または変形される位置に発泡押出成形された材料を使用してその位置をより高密度にすることで、達成できる。次に、熱または他の手段で処理して表面を盛り上がらせ、気泡を膨張させて密度を下げ、緩衝性を高める。これは、複数層を同時に共押出成形または共成形することによっても達成され、その各層は異なる密度に発泡でき、または異なる材料組成を共押出成形に使用できる。最終的に、中央部分が剛性で外側部分は緩衝・断熱作用がある単一材料シートが得られる。当該材料のより低密度の（より発泡した）外側部分は、身体部分周囲での成形工程中に前記内側部分を断熱し、内側部分の熱による不快感から前記身体部分を保護することができる。この断熱により、中央部分が柔軟に保たれる時間が延長されるため、身体部分の周囲で矯正器を成形できるドウェル時間も十分得られる。また、治療作用および美観を付加する層を追加することもできる。

前記中間層には、熱成形性材料の層を複数含めることもできる。これら種々の材料は、剛性および熱成形性が異なるものを含んでよく、または当該中間層の特定領域だけに配置して、その特定領域の剛性または柔軟性を高めてもよい。また、前記中間層中の望ましい位置に追加材料を挿入し、必要に応じて付加的な剛性または柔軟性を提供してもよい。

製造
好適な実施形態の製造工程では、熱プレス工程を使用する。構成要素である３つの層は、成形する特定の製品に応じて、適切な金型またはダイに配置される。次に、３（若しくはそれ以上の）層を定位置に伴った金型またはダイは、対流式オーブン内に配置され、華氏３００度に加熱される。加熱された前記金型またはダイは、次いでプレス内に配置される。そのプレスが閉じられると、前記３層は金型形状へと圧縮される。当該プレスは前記３層が十分冷却されて各々の形状を保持するようになるまで、閉じた状態で保たれる。前記複合材料が十分冷却されると、前記成形された複合材料製品が前記金型から排出される。当該製品を完成させるため、穴を形成し、閉鎖機構を取り付けるなど、他の仕上げ工程が行われる場合もある。

別の製造工程でも成形工程を使用する。当該成形工程中、前記中間層３０は、前記内層２０および外層３０に挟持され、それらの層の縁部と比べて陥凹した状態にされる。この工程で、これらの層は、すべて前記目標温度より高温に加熱される。前記金型の外縁部には、前記内層４０および外層２０の発泡材のほか、任意の織物層を切断するための切断線が含まれる。また、その切断線の横で、バー（棒状部材）が前記層を強く圧縮する。それらの層の縁部は圧迫されて当該製品の縁部を密閉し、当該成形工程で全層を接合し、永続的かつ強固に閉鎖する。これにより、図４に示すように、クリーンで軟質の丸みを帯びた薄い縁部４２が当該矯正器に得られ、この縁部は耐久性があり快適で、従来の石膏およびガラス繊維矯正器の一般的な問題である皮膚の擦過を起こしにくい。

あるいは、露出した縁部に縁部テープを貼付して前記縁部を密閉することもできる。これにより、前記矯正器をブランクシートとして形成し、特定の目的に合わせてカスタム切断できるようになる。前記縁部テープは露出した縁部を密閉し、また柔らかい縁部を形成する。このテープは、柔軟な薄い織物または発泡材で、接着性の裏打ちを伴うため、当該矯正器縁部の望ましい位置に手で容易に貼付できる。

もう１つの製造工程は圧縮成形で、通常、次の工程を含む。織物層を使用する場合は、これを内層および／または外層に積層する。次に、各層からブランクおよび形状がダイカットされる。前記中間層は、前記内層および外層の内側に、それらの縁部から離間して配置される。これら３層は、前記目標温度を超える臨界成形温度まで加熱される。加熱されたこれらの層は、圧縮成形型内に配置されて圧縮され、積層状態で一定形状に切断され、縁部は圧縮バーで密閉される。前記層は、前記型により冷却されて複合材料を形成する。

本実施形態では部品を一体的に成形するため、積層が不要である。ただし、この実施形態には、一体的に積層された前記層２０、３０、および４０を含めることもできる。前記外層は、前記中間層を超えて延長し、軟質の縁部４２を形成する。この外層の縁部は、積層しても、積層および成形しても、またはヒートシールした縁部およびスポット接着剤とともに成形してもよい。

他の積層工程または製造工程も使用でき、例えば高温接着剤、縫製、または他の任意の層組み立て方法の使用が可能であることを明示的に理解すべきである。

閉鎖システム
閉鎖システム６０は、図示したように身体部分の周囲で閉じ、ある程度の圧縮を実現して当該損傷部を収容する製品を固定するため使用される。このシステムは、重複部の間に配置する両面粘着テープであっても、継ぎ目または外周に沿って貼付する粘着テープであっても、または機械的な閉鎖システムであってもよい。これらの機械的閉鎖は、フック・アンド・ループ・ファスナー、スナップ、紐、結束バンド、ラチェットおよび紐システム、スキーブーツタイプのバックルなどから成るものであってよいが、これに限定されるものではない。好適な一実施形態において、この閉鎖システムは、患者による不正開閉と調整を防止する閉鎖部を備えた矯正器を装着させるとき、主治医または技師による固定および張力調整が可能である。主治医または技師は、不正開閉を防止する前記調整可能な閉鎖部にアクセスする用具を使って、後日この閉鎖システムを再調節することができる。主治医または技師が必要と認める場合は、患者が前記矯正器を限られた量だけ緩め若しくは締める手段を有しても、予定より早く取り外すことはできないよう、前記閉鎖部を設定できる。これにより、患者は、医師の助けを借りなくとも、不快感または腫れが生じた場合に前記矯正器を緩め、当該矯正器が緩すぎる場合これを締めることが可能になる。また、当該システムは、患者が矯正器を調整し、完全に取り外せるよう、主治医または技師により設定することもできる。これにより矯正器の耐用期間は延長され、厳密な使用中に一部治癒した損傷部を保護する一時的矯正器として使用することができる。この制御可能で調整可能なシステムを使うと、主治医または技師は、すべての治癒段階に適切な選択肢を利用でき、患者の調整能力を許可し、またはロックアウトすることができる。

特に、装着機構の１つには、図５に示すように張力調整ケーブルシステム７０が含まれる。このシステム７０では、当該矯正器システム１０の対向する両側にある一連のガイド部材７２を利用している。図５に示すように、紐７４は、両側のガイド部材６２に交互に通されたのち、ロック部材７６に通される。当該紐は、当該矯正器が身体部分に適切な張力をかけ、定位置にロックされるよう、強く巻かれる。それに代わる図６の紐掛けシステムは上記と同様なしくみであるが、リール機構７８を利用して紐を機械的に締め、締めた紐をロックするもので、紐は容易にリリースし、また微調整で締めることができる。この実施形態では、固定機構６０に、ケーブルリール要素、例えば米国特許第６，２８９，５５８号、第６，２０２，９５３号、第５，９３４，５９９号（この参照によりすべて本明細書に組み込まれる）および米国特許出願公開第２００８００８３１３５号、第２００８００６６３４６号、第２００８００６６３４５号、第２００８００６６２７２号、第２００８００６０１６８号、第２００８００６０１６７号、第２００６０１５６５１７号、第２００３０２０４９３８号、および第２００２００９５７５０号（この参照によりすべて本明細書に組み込まれる）に記載されたＢＯＡ Ｔｅｃｈｎｏｌｏｇｙ Ｉｎｃ．製のケーブルリール装着システムが含まれる。前記ケーブルリール７８は、回転させると前記紐を締めることができ、垂直方向に引張ると前記紐をリリースすることができる。また、コードロック、カムコードロック（ｃａｍ ｃｏｒｄ ｌｏｃｋ）、従来の紐結び、ラチェットおよび紐システム、および他の紐掛け方法を含む他の固定機構を使用してもよい。また詳しく後述するように、同様な態様でラチェットストリップバックルなどのスキーブーツバックルを使った代替システムを、どちらかの端部に設けたフック織物と併用することもできる。これらのシステムは、患者が矯正器を調整できないよう主治医または技師が矯正器をロックアウトでき、または患者が矯正器を種々の程度まで調整できる機構を主治医または技師が矯正器に組み込める上述の特徴を有することができる。

本発明の別の実施形態では、ユニークな紐掛けシステムを提供する。図７に示したこの紐掛けシステムでは、ギプス、矯正器、または他の任意の製品の縁部に沿って縁取り８０を提供する。この縁取り８０には、これに沿って縦方向に離間して開けられた一連の穴８２が含まれる。この縁取りは、フック・アンド・ループ・ファスナーで固定し、当該製品に縫い付け、接着剤で貼り付け、または当該製品に取り付けることができる。この縁取りの底部には、当該製品の外周に沿って延在するフック・アンド・ループ・ストラップが含まれる。あるいは、ストラップおよびバックルまたは知られている他の任意の取り付け機構などの代替機構を使用してもよい。

前記穴８２の対向しあう部分には、針または千枚通し８８を使ってモノフィラメントライン８６が挿通される。この糸８６の端部は、前記フック・アンド・ループ・ストラップに隣接した当該製品端部で終端する。前記糸の端部が引張られると当該糸が締まり、当該製品の縁部が互いに引き寄せられる。当該製品が身体部分または他の対象物の周囲で締まった状態で、前記糸８６は当該製品に巻き付けられ、前記フック・アンド・ループ・ストラップで固定される。コードロックまたは他のしくみを使用しても、前記糸を固定することができる。本発明では、モノフィラメントラインの代わりにケーブル、紐、または他のしくみを使用してもよい。

好適な一実施形態に係る矯正器システム１０の固定機構５０では、当該矯正器システムの縁部が重なり合えるようにしている。このオーバーラップは、外周の約２５パーセント（２５％）以下となる。このオーバーラップ部分に、上述した閉鎖システムが取り付けられる。これにより、当該矯正器システムの調整機能が高まり、損傷した身体部分への可圧縮性が増減される。この一体化された矯正器システム１０は、種々の身体部分および身体部分サイズに適合するよう、種々のサイズで提供できる。図８に示すように、この好適な実施形態に係る一体化された矯正器システムでは、前記調整可能なオーバーラップにより、当該矯正器の縁部２２がそれと対向しあう縁部２４と重なり合えるようにして、特定患者の特定の身体部分に当該矯正器をカスタム適合させる能力をさらに提供する。当該矯正器は、前記固定機構５０で前記オーバーラップの程度を増減させて調整することにより、患者の身体部分により適切に適合できる。

応用例
矯正器
上述のユニークな矯正器機能を組み合わせると、軽量ながら構造的に硬質な矯正器を提供でき、専門的な訓練または技能を必要とすることなく、当該矯正器を現場で患者に合わせて容易にカスタム成形することができる。その結果得られる矯正器は患者に適合するもので、使用時、必要に応じて適合性を高めるための調整も可能である。その調整機能により、軟部組織の損傷も低減される。当該矯正器は乾式加熱で成形可能なため、多くの熱源が利用できる。当該矯正器の成形工程中、患者は、加熱された矯正器に起因する損傷または不快感から保護される。当該矯正器は防水性で耐久性があるため、必要に応じて再使用および再成形できる。使用する材料は大部分ポリマーで、放射線透過性が高い。そのため、一般に放射線透過性ではないガラス繊維および石膏のものと比べると、当該矯正器は、取り外さなくとも身体部分をＸ線検査できる。前記中間層の構築に再生ポリマーを使用できる妥当な可能性があることから、飲料容器産業に影響を及ぼす可能性もある。

この好適な実施形態の一体化された矯正器システムは、比較的平坦な形状で、または全体として特定の身体部分用の形状、例えば手首、足首、膝、または他の身体部分の形状のほか、一般的なサイズ、例えば大、中、小サイズで提供できる。また、当該矯正器は、場合により試験的サイズとして事前成形して身体部分にほぼ適合させ、または必要に応じてより複雑な構造にできる。次いで当該システムを加熱してカスタム成形すると、支持すべき特定の身体部分に適合させることができる。上記のように、前記調整可能なオーバーラップも、このカスタム適合に寄与する。このように、当該一体化された矯正器システムは、快適かつ硬質な態様で身体部分に適合する。

本発明の好適な実施形態の例のうち、矯正器のタイプで使用されるものを図１、５、６、および９〜１１に示した。これらの身体領域は特に敏感で外形形状も個人差が大きいため、この用途は特に有利である。また使用される材料に耐久性があることから体重がかかっても疲労しにくく亀裂を生じにくいため、この用途は有利である。さらに、腫れを起こす傾向があるこの領域では、張力調整能力が大きな利点となる。

前記一体化された矯正器システム１０は、現在一般に使用されている水で活性化される材料と異なり、乾式熱源を利用して熱成形できる。前記一般的材料の欠点の１つは、身体部分と損傷に伴う創傷とが、矯正器工程中に湿潤されてしまうことが多い点である。それらの材料では、通常、矯正器成形後に湿った状態が何時間も続くため、皮膚に不快感を生じ、皮膚を擦過し、滅菌が最も望ましいときに微生物を繁殖させてしまう傾向がある。本発明のこれら好適な実施形態例は、前記矯正器工程中に継続して乾燥した状態にあり、快適な乾式加熱を単時間身体部分に与えるのみである。治癒は乾燥した環境で開始するため、微生物が繁殖しにくく、感染も起こりにくい。この乾燥した環境で矯正器内部に抗菌剤処理を導入すると、より効果を高めることができる。

また、前記矯正器システムは患者身体上で構築されず事前作製されるため、広範囲な訓練を必要とすることなく、身体部分に合わせて成形および固定できる。事前作製されるこれらの矯正器は、必要な作業の大半が製造工場で行われるため、時間当たりのコストが高い病院および診療所で費やされる時間を短縮するという大きな利点がある。この矯正器システムは防水性で軽量かつ快適でもあるため、当該システムの使用に関する患者のコンプライアンスを高める。使用されるポリマープラスチックはガラス繊維または石膏よりはるかに耐久性があり、疲労および亀裂を生じにくい。これを当該矯正器の張力・サイズ調整能力または再成形能力と組み合わせると、治癒過程の全期間にわたり、通常の矯正器であれば通院を繰り返して１〜３回交換するところを、単一の矯正器で済ませられるようになる。

前記矯正器は、加温して柔らかく柔軟になった状態で、身体に近い形状に成形して損傷部を最適に安定させなければならない。身体と矯正器との間に空隙がある緩く適合した矯正器では、望ましくない動きが生じる。完璧に成形した矯正器は身体細部にまで接し、過度にきつくない状態で安定化を提供でき、多くの場合、圧迫せず身体に接する。これが最も快適な構成であり、必要な支持を提供しながら締め付けず、血流を妨げず、また刺激を与えない。この望ましい効果を実現するには、前記矯正器を身体に合わせて成形する独特の方法を導入しなければならない。図８に示したように、前記矯正器の側縁部２２、２４が重なり合って形成される開口部により外周が調整できるため、この矯正器は、加温して柔らかくした状態で、長期着用に快適なレベルを超える圧縮力を円周方向にかけることにより、最適に成形される。その後当該矯正器が冷めて硬化したら前記圧縮力を解いて、閉鎖部を調整して快適さおよび安定を提供する望ましい度合いで当該矯正器を閉鎖できる。

ギプス
好適な実施形態のギプスは、上述の矯正器と同様である。主な違いがあるとすれば、それは前記中間支持層がより硬質の材料で形成されることである。これは単に、より厚い材料を提供し、またはデュロメータ硬度および引張強度がより高い材料を選択することにより達成できる。ギプスは、まず当該ギプスをその目標温度に加熱し、身体部分の周囲に当て、身体周囲で可鍛性材料を適切な形状に圧縮することにより装着する。次いで紐掛けシステムを引いて強く締め、適切な張力をかけて当該ギプスを固定する。前記ギプスにかかる張力は、腫れ、痒みその他の問題の増減に合わせて調整できる。前記複合材料からなるギプスは防水性であるため、患者は当該を装着したまま、ギプス周囲を保護せずに入浴し、またはシャワーを浴びることができ、場合により水泳も可能である。このギプスは、前記紐掛けシステムの張力を緩めるだけで容易に取り外せるため、ギプスカッターは不要である。

副子
好適な一実施形態において、前記システムは、これまでのシステムよりはるかに優れた一体的な副子システムを提供する。本発明の好適な一実施形態のシステムのうち副子として使用されるものを図１２〜１７に示した。このシステムは手首用の副子として例示しているが、足用副子、頚部用副子、脚部用副子、腕部用副子などを含み、かつこれらに限定されない任意タイプの副子にも使用できることを明示的に理解すべきである。本実施形態の副子システム９０には、が含まれる。図２に示したように、快適さを与えるクッション材内層２０と、中間支持層３０と、耐久性のあるクッション材外層４０とが含まれる。これら３層はそれぞれ独特の機能を提供し、１枚の副子に重ね合わせることでユニークな優れた副子となる。これらの３層は、それぞれ詳しく後述するが、一体的に成形または積層されて１つの副子を形成する。その結果得られる副子は、患者にとって非常に快適なものになり、その使用に関する患者のコンプライアンスを向上させることができる。このように成形された副子は、上述し、また後述するこれまでのシステムと比べ、多くの付加的な利点がある。ただし、本明細書で説明するこれら３層以外の追加層を使用してもよいことを明示的に理解すべきである。

この好適な実施形態の副子システムでは、事前に積層して、事前に成形して、またはブランクシートとして、手首、腕、膝、首、または他の身体部位を支持するなど所望の使用に係るサイズで、当該副子を提供することができる。次いで当該システムは、特定の患者に合わせて後述のように容易にカスタマイズされる。好適な一実施形態において、当該システムでは、患者の必要に応じて腫れその他の問題に対応するよう副子を調整することもできる。また、この調整機能により、支持する特定の身体部分に合わせて副子をカスタマイズすることもできる。

当該副子システムは、好ましくは乾式加熱による加熱で（高温水も使用できるが）数分以内に熱成形可能になる。この好適な実施形態の副子システムは、華氏１６０度〜華氏２５０度の温度（目標温度）で柔軟になり成形が容易になるが、当該材料のガラス転移温度を超えた場合のように過度に流動的にならないようある程度の剛性も保つことができる。他の材料については、他の目標温度範囲を使用してもよい。次にこのシステムは、患者に熱傷または不快感を生じることなく、患者部位の上に配置できる。比較的低密度の発泡材内層は、高密度で高温の中間プラスチック層を身体から断熱する。実際に、発泡材より高密度である皮膚は、発泡材が皮膚に熱を伝達できるより速く発泡材を冷却するため、使用される温度による熱傷から皮膚を保護する。次に、好ましくは乾式加熱した本システムは、専門技能を必要とすることなく、後述の方法により、特定の患者に望ましい厳密な形状へと容易に成形される。

使用
種々の副子の例を図１２〜１７に示す。図１２の前記副子９０は、腕または手首の副子に使用するためＬ字状の上部９２を伴った平坦なカスタム形状を有する。この副子を加熱および成形すると（以下より詳しく説明するように）、前記Ｌ字状の上部９２は、図１３に示すように、患者の手首および拇指を快適に支持するよう成形された状態になる。

手首または腕の損傷を支持する副木の別の例を図１４、１５に示す。このブランク副子９４には、比較的大きな上部９６とそれに設けられた開口部９８とが含まれる。この副子は、加熱したのち、患者の拇指が前記開口部９８を貫通するよう患者に合わせてカスタム成形するものである。

好適な実施形態に係る副子の別の例を図１６に例示する。この副子１００は、脚部損傷用の副子として使用することを目的としている。当該副子にはスリット１０２が含まれ、このスリット１０２は当該副子下部の両側に形成されて当該副子の成形工程中にヒンジとして作用するため、当該副子の下部が枢動して当該副子に足部分またはブーツ部分を生じる。

別の副子を図１７に示す。この副子１０４は、その外面４０に連続ループ織物（ｕｎｂｒｏｋｅｎ ｌｏｏｐ ｆａｂｒｉｃ）を有する。これにより、連続ループ織物の部分１０６を使って、２若しくはそれ以上の副子部分を望ましい構成で互いに合着させることができる。これにより、必要に応じてすばやく容易な方法で複雑な形状を作製できる。

副子への応用
前記副子は、加温して柔らかく柔軟になった状態で、身体に近い形状に成形して損傷部を最適に安定させなければならない。身体と副子との間に空隙がある緩く適合した副子では、望ましくない動きが生じる。完璧に成形した副子は身体細部にまで接し、過度にきつくない状態で安定化を提供でき、多くの場合、圧迫せず身体に接する。これが最も快適な構成であり、必要な支持を提供しながら締め付けず、血流を妨げず、また刺激を与えない。この望ましい効果を実現するには、前記副子を身体に合わせて成形する独特の方法を導入しなければならない。当該副子は、加温して柔らかくした状態で、長期着用に快適なレベルを超える圧縮力を円周方向にかけることにより、最適に成形される。その圧縮力に応じて、当該副子１０は成形される。その後当該副子が冷めて硬化したら前記圧縮力を緩め、快適さおよび安定を提供する望ましい張力が当該副子に生じるようにできる。

前記好適な圧縮方法では、図１８〜２０に示すように、加温し柔らかくして身体上に配置した副子に伸縮性のバンド１１２をすばやく巻き付ける。この伸縮性のバンドは織物材料であってもゴム引き（ｒｕｂｂｅｒｉｚｅｄ）材料であってもよく、特定の副子タイプに適した幅、厚さ、および弾性で、当該副子全体に十分に巻き付けられる長さのものである。圧縮圧力は、前記バンドを巻き付けながら単に引っ張ることで変更できる。この工程により、前記副子の全部分が確実に身体に合わせて成形され、空隙が生じることはない。この工程は、圧縮圧力を外傷部にかける際、一般的に行われているが、加温して柔軟な状態にした副子を一時的に成形するため冷却中のみ圧縮圧力をかけたのち、その力を解くという意味では、独自の工程であることを明示的に理解すべきである。

図１８、１９に示すように、好適な一実施形態では、フックファスナーのストリップ１１０が副子１０８の下端に固定され、または表面４０全体に、連続ループ織物を含めることができる。次いで前記伸縮性のバンド１１２を前記要素１１０に固定し、初期位置に固定できる。当然のことながら、この伸縮性のバンドは前記フック固定要素と係合する。これにより、前記副子を身体に固定し複数の副子要素を合着させる多数の選択肢を一体化することができる。また、複雑な構成が形成可能になる。

次に、前記伸縮性のバンド１１２は、図１９、２０に示すように前記副子の周囲全体に巻き付けられ、前記加温された中間層２０が図２０、２１のように身体に適合する。次いで、前記副子が冷めて硬質の支持構造を形成したのち、当該伸縮性のバンドが取り外される。

上述のユニークな副子機能を組み合わせると、軽量ながら構造的に硬質な副子を提供でき、専門的な訓練または技能を必要とすることなく、当該副子を現場で患者に合わせて容易にカスタム成形することができる。当該副子は乾式加熱で成形可能なため、多くの熱源が利用できる。当該副子の成形工程中、患者は、加熱された副子に起因する損傷または不快感から保護される。当該副子は防水性で耐久性があるため、必要に応じて再使用、再成形、および洗浄できる。使用する材料は大部分ポリマーで、放射線透過性が高い。そのため、一般に放射線透過性ではないガラス繊維および石膏のものと比べて、取り外さなくとも身体部分をＸ線検査できる。前記構成要素の一部または全部に再生ポリマーを使用できる妥当な可能性があることから、環境問題に関しても有利である。

この好適な実施形態の一体化された副子システムは、比較的平坦な形状で、または全体として特定の身体部分用の形状、例えば手首、足首、膝、または他の身体部分の形状のほか、一般的なサイズ、例えば大、中、小サイズで提供できる。また、当該副子は、場合により試験的サイズとして事前成形して身体部分にほぼ適合させ、または必要に応じてより複雑な構造にできる。次いで当該システムを加熱してカスタム成形すると、支持すべき特定の身体部分に適合させることができる。

前記一体化された副子システム１０は、現在一般に使用されている水で活性化される材料と異なり、乾式熱源を利用して熱成形できる。前記一般的材料の欠点の１つは、身体部分と損傷に伴う創傷とが、副子工程中に湿潤されてしまうことが多い点である。それらの材料では、通常、副子成形後に湿った状態が何時間も続くため、皮膚に不快感を生じ、皮膚を擦過し、滅菌が最も望ましいときに微生物を繁殖させてしまう傾向がある。本発明のこれら好適な実施形態例は、前記副子工程中に継続して乾燥した状態にあり、快適な乾式加熱を単時間身体部分に与えるのみである。治癒は乾燥した環境で開始するため、微生物が繁殖しにくく、感染も起こりにくい。この乾燥した環境で副子内部に抗菌剤処理を導入すると、より効果を高めることができる。

また、前記副子システムは患者身体上で構築されず事前作製されるため、広範囲な訓練を必要とすることなく、身体部分に合わせて成形および固定できる。事前作製されるこれらの副子は、必要な作業の大半が製造工場で行われるため、時間当たりのコストが高い病院および診療所で費やされる時間を短縮するという大きな利点がある。この副子システムは防水性で軽量かつ快適でもあるため、当該システムの使用に関する患者のコンプライアンスを高める。使用されるポリマープラスチックはガラス繊維または石膏よりはるかに耐久性があり、疲労および亀裂を生じにくい。

副子の使用
使用時、前記一体化された副子システム１０は、個人、整形外科専門従事者、医師、技師、第一対応者その他の団体に、キットとして提供される。その際、支持すべき身体部分に適したキットタイプおよびサイズが選択される。以下で説明するように、前記副子１０には、当該副子が十分柔らかくなり成形可能になるまで乾式熱源が適用される。この加熱温度は、１６０Ｆ〜３００Ｆの範囲（目標温度）にすべきであり、２００Ｆが好ましい。この好適な実施形態では、前記副子の温度が望ましい温度、例えば２００Ｆに約５〜１０分間保たれる。前記乾式熱源は、オーブン、電子レンジ、または後述するようにヒートバッグ、内部加熱機構、または発熱熱源であってよい。

十分に加熱された前記副子は約５〜１０分間柔軟な状態になるため、前記熱源から取り外し、これに伸縮性の包帯を固定する。

続けて、図１８〜２１に示したように前記副子を直接身体部分に当てる。前記内層４０を構成するより低密度のポリマー発泡材が熱を散逸させるため、患者は熱からの痛みも不快感も感じない。この好適な実施形態において、前記副子は約３〜１０分間柔軟になる。そのため、前記副子を身体部分に合わせて成形する時間は十分できる。伸縮性の包帯１１２を利用した圧迫で、図１８〜２１に示すように、副子全体を身体部分に合わせて成形する。この伸縮性の包帯９０により、当該副子１０全体にわたり圧力が均一にかけられる。この伸縮性の包帯９０は、伸縮性のバンドであっても伸縮性の圧迫包帯であってもよく、ナイロンまたはトリコットのニット、ゴム、ウレタン、スパンデックス、または他の任意の適切な材料から形成されたものであってよい。

また、前記成形工程中には損傷を軽減でき、また損傷部への位置合わせが可能である。前記副子のドウェル時間は、前記成形および適合を行う上で十分なはずである。

前記加熱された柔軟な熱成形性層と均一な圧力との組み合わせにより、前記副子は身体部分に沿って成形される。その形状と支持の大半を提供するのは前記中間層である。また、前記内層を熱成形性材料で形成すると、身体部分に適合する形状になる。この好適な実施形態において、当該外層は熱成形されないが、前記中間層の形状に従って伸張する。熱成形されないことから伸縮性の包帯の跡もつかず、滑らかな美観が保たれる。これらの特徴が望まれない場合は、この層を前記目標温度で熱成形可能にすることもできる。

獣医用途
前記複合材料は、動物、特にウマ用の用途にも実用性がある。馬その他の家畜および野生動物といった大型動物の場合、当該動物が動けなくなるような支持を提供することは困難である。上述した複合材料は軽量で強度が高く、体肢にカスタム適合できるため、当該動物を不要に刺激することなくギプス・副子・矯正器を容易にカスタム成形できる。また、複雑な形状にもその形状に沿うように（ｉｎ ｓｉｔｕで）成形できる（以下で詳述する）ため、当該動物を別の場所へ移す必要がない。また、必要に応じて、より小型の動物にはサイズの拡大縮小も可能である。

保護具
好適な一実施形態において、前記システムは、これまでのシステムよりはるかに優れたカスタム成形可能な保護具を提供する。その保護具は、レガース、リストガードなどの運動用品、軍用および警察用の保護具、作業場用の保護具、およびカスタム成形した保護具が望まれる他の任意用途などに使用できる。

本発明の好適な一実施形態に係る複合材料の用途の一例は、図２２に示すようなショルダーガード１２０である。このショルダーガードには、（以降で詳述する工程により）切断され、加熱されたのち、縫い合わされる複数の部品が含まれる。組み立てられた前記部品は、次に加熱され、利用者の身体にカスタム適合されて肩部を保護する。

前記複合材料の別の使用例はレガースで、多くのスポーツ活動、ならびに警察および軍事目的で使用され、個人の脛と膝が損傷しないよう保護する。図２３、２４に示すように、複数の部品１２８、１３０、１３２が前記複合材料から形成されたのち加熱され縫い合わされて、外形が薄く身体に密接に適合する製品となり、これをのちに加熱すると身体に合わせて精確に成形できる。膝当ておよびフットガードは、複数部品のダーツ加工および高温縫製により組み込まれる。

図２５〜２７は、運動競技、警察、または軍隊で使用される保護手袋を示したもので、これは前記好適な実施形態に係る複合材料を高温にして縫い合わせ作製した複数部分からなる複雑な内部構造を有する。これらの図では、高温で柔軟な状態にある湾曲した小さな縁部部品を、標準的なミシン縫製方法を使ってどのように縫い合わせられるか示している。これは、硬質なプラスチック単独では不可能である。完成した手袋は、華氏２００度に加熱して手にはめることができる。次に、その着用者が、最も一般に使用される望ましい状態、例えばホッケースティック、盾、またはバトンを把持した状態に手と指を屈曲させ、手袋が冷めるまでその形状を保持することにより、カスタム適合され支持強度の高い３次元製品が得られる。この場合も、当該工程は、標準的な材料および方法での実施は困難である。乗馬用具、産業および建設用の着用品、高齢者用保護製品、その他多くの用途など、他種の保護具も作製可能である。

この好適な実施形態の保護具システムでは、事前に積層して、事前に成形して、またはブランクシートとして、手首、腕、膝、首、または他の身体部位を保護するなど所望の使用に係るサイズで、当該保護具を提供することができる。次いで当該システムは、特定の利用者に合わせて後述のように容易にカスタマイズされる。また、好適な一実施形態に係る当該システムでは、利用者が必要に応じて保護具を調整できる。さらに、この調整機能により、支持する特定の身体部分に合わせて保護具をカスタマイズすることもできる。

当該保護具システムは、好ましくは乾式加熱による加熱で（高温水も使用できるが）数分以内に熱成形可能になる。この好適な実施形態の保護具システムは、華氏１６０度〜華氏２５０度の温度（目標温度）で柔軟になり成形が容易になるが、当該材料のガラス転移温度を超えた場合のように過度に流動的にならないようある程度の剛性も保つことができる。他の材料については、他の目標温度範囲を使用してもよい。次にこのシステムは、利用者に熱傷または不快感を生じることなく、身体部位の上に配置できる。比較的低密度の発泡材内層は、高密度で高温の中間プラスチック層を身体から断熱する。実際に、発泡材より高密度である皮膚は、発泡材が皮膚に熱を伝達できるより速く発泡材を冷却するため、使用される温度による熱傷から皮膚を保護する。次に、好ましくは乾式加熱した本システムは、専門技能を必要とすることなく、後述の方法により、特定の利用者に望ましい厳密な形状へと容易に成形される。

加熱システム
本発明は、好適な一実施形態において、身体部分に合わせて前記システムを成形するため、上記のように前記副子を前記目標温度に加熱する熱源も提供する。その熱源の好適な実施形態の１つには、図２８、２９に示すように、保管および移動が容易な加熱パウチ１５０が含まれる。この加熱パウチには、外側の断熱層１５２と、シート態様の対向しあう加熱要素１２７４と、前記加熱要素および断熱材を収容するライナーバッグ（内袋）１５６とが含まれ、当該ライナーバッグは、外側が耐久性で内側は離型性であることが好ましい。前記ヒーター要素は、電熱ワイヤー、加熱箔、または電気的に作動する他の設計で作製できる。前記ヒーターバッグ１５０は容易に開けて中に前記副子を入れることができ、前記加熱工程中は閉じておく。このバッグは、フックおよびループ、ファスナー、またはバックルなどの閉鎖システムにより閉じられ、熱を保持する。前記ヒーター要素は、１１０〜２４０ＶＡＣ標準プラグで電気コンセント、１２Ｖ変圧器、１２Ｖ ＤＣ電池、または自動車電源に接続され、サーモスタットまたは熱制御装置により前記目標温度を正確に保つ。前記加熱パウチには、前記矯正器システムの温度を監視する温度プローブを任意選択で含めてもよい。

使用時、前記一体化された副子システム１０は、前記ケース内の前記対向しあう電気ヒーター要素間に配置される。前記ケースが作動すると、前記ヒーター要素は前記副子１０を加熱する。前記副子が前記目標温度に加熱されて十分柔らかくなったら、これを取り出し、身体部分の周囲で成形する。

この熱源ケースは移動が容易で、病院、診療所、研修室、あるいは場合により怪我を治療する現場で使用することができる。特殊なオーブンまたは化学反応は不要である。

本発明の好適な一実施形態に係る別の熱源では、前記一体化された副子に内蔵された内部加熱機構を使用する。これは、前記中間層の片側または両側に設けた電熱網であってよい。この網は電源に接続されて、前記中間層を前記目標温度に加熱する。前記副子の成形が完了した時点で電流を止めると、当該副子は急速に冷める。加熱装置が前記副子に内蔵されることで、外部加熱装置は不要になる。

本発明の好適な一実施形態に係る別の熱源では、図３０に示す発熱源１６０を利用する。熱を生じる化学反応は、炭素と空気、苛性アルカリ溶液と水、空気電池などいくつかある。２若しくはそれ以上の要素が互いにばく露すると、その結果生じる化学反応で熱が生じ、その熱が放出される。一般的には、炭素と空気のパケットが寒冷気候用のポケットカイロとして使用されており、また苛性アルカリ溶液と水の容器が軍隊の「ｍｅａｌｓ ｒｅａｄｙ ｔｏ ｅａｔ」（携行食）を加熱するため使用されている。同様なシステムを使用すると、前記副子を挿入する空間が十分あるプラスチックパウチまたはビニール袋に前記加熱化学物質を導入して、前記好適な実施形態の副子を前記目標温度に加熱することができる。前記化学反応を生じさせたら、前記副子を加熱して取り出し、適用する。このようなシステムの利点は、多くの場合、衛生兵または医師が電源にアクセスできない場所で負傷が起こることによる。この方法は、自給式に前記副子を加熱し、上述の方法で損傷部に適用するための迅速で単純な方法を提供する。

他の加熱手段としては、対流式オーブン、オーブントースター、輻射ランプ熱源、赤外ヒーター、および電子レンジなどがある。対流による気流を利用した熱風炉を使用してもよい。湿式加熱、例えばこれまでの熱成形性副子で使用されるものを使用してもよい。このタイプの加熱では、副子がその目標温度に達するまで、高温水の容器に当該副子を浸漬させる必要がある。

本発明に基づいて使用する別のタイプの加熱システムでは、電子レンジを利用する。通常、電子レンジでは、特定温度での均一な加熱は起こらない。図３１、３２に示す加熱システム１７０は電子レンジを使って使用するものとして説明しているが、高温水および他の熱源に浸漬させるなど他の熱源を使用することもできる。この好適な実施形態では、加熱システム１０に、第１の収納体１７２が含まれる。この収納体１７２は、開口部１７４とともに、ジップロックバッグに使用されて防水密閉部を形成するスライダーなどの密閉機構１７６を有する。あるいは、当該収納体は、内部で密閉された他の構成要素により製造時に密閉されてもよい。この好適な実施形態において、前記収納体１７２は袋、例えば薄いポリプロピレンまたは他の同様な材料で作製されたビニール袋である。この収納体１７２は、加熱して成形される対象物を収容できるサイズである。

第２の収納体１８０は、前記第１の収納体１７２内に挿入される。この第２の収納体も、密閉機構１８６を伴った開口部１８４を有する。この第２の収納体は、前記第１の収納体に類似したもの、例えばポリプロピレンまたは他の材料から形成されたビニール袋であってよい。どちらの収納体も防水性にすべきで、華氏２２０度を超える温度に耐えられるようにすべきである。

また、前記加熱システム１０は、スポンジ、紙、または不織層などの吸収性材料１８８も収納し、この吸収性材料１８８は、前記第１の収納体２０の内側かつ前記第２の収納体１８０の外側に挿入される。これらのシート１８８は、使用前に水で湿潤される。当該シートは、事前に湿らせてもよく、または利用者が前記収納体１７２から取り出して湿らせ、前記第１の収納体に再挿入してもよい。あるいは、前記吸収性材料なしで水のみ提供してもよい。

好適な一実施形態では、前記第１の収納体１７２と、前記吸収性材料１８８と、前記第２の収納体１８０とが接合されて、単一の一体型ユニットを形成する。前記材料は、前記２つの収納体間で接合される。

前記加熱システム１７０は、利用者が供給する対象物用の加熱システムとして、または製造元が供給する対象物周囲のパッケージングとして提供できる。いずれの場合も、加熱および成形される前記対象物１０は、前記第２の収納体１８０内に挿入され、その内部で密閉機構１８６により密閉される。前記シート１８８は、事前に、またはこの時点で湿潤され、前記密閉された第２の収納体１８０外側にある前記第１の収納体１７２内に挿入される。前記第１の収納体１７２は、前記密閉機構１７６により密閉される。

次に、組み立てられた収納体は、一般的な電子レンジなどの熱源内に配置される。成形する対象物が一般的な電子レンジ容量より大きい場合は、より大きな電子レンジが必要になることもある。次いで電子レンジは、高作動範囲でオンにされる。加熱時間の長さは、電子レンジの性能、前記対象物のサイズ、および収納体その他の要因に応じて異なるが、電子レンジは、前記吸収性シート１０中の水が蒸気に変わるまで作動される。その蒸気により、前記収納体内の温度が確実に華氏約２１２度になる。これが比較的短時間であることと、前記収納体が比較的柔軟であることにより、前記蒸気の過熱が最小限に抑えられ、温度は華氏２１２度より大幅に上昇しないはずである。

前記収納体が華氏約２１２度になることから、前記第２の収納体内の前記対象物も華氏約２１２度になる。この工程中、前記対象物は、前記第２の収納体１８０により乾燥した状態で保たれる。前記対象物を前記温度で確実に加熱するため十分な時間前記温度範囲で保ったのち、前記加熱システム１７０は、前記電子レンジまたは熱源から取り出される。

前記対象物がその製造元により前記収納体に内設される場合、当該製造元は、前記収納体を加熱する時間および温度範囲について説明書を提供することができる。

あるいは、利用者が最適な時間および温度範囲を実験的に調べてもよい。

前記対象物が完全に加熱された時点で、前記第１の収納体の密閉が解除され、前記第２の収納体が取り出せるようになる。続けて前記第２の収納体の密閉を解除して、前記対象物が取り出せるようになる。次いで前記対象物は、適切な形状に成形され、または別の対象物に合わせてカスタム適合される。

電子レンジ以外の熱源も使用できることは明示的に理解すべきである。例えば、前記加熱システムを沸騰水の容器に挿入して同様な工程を実施してもよい。発熱性の熱源など、他の熱源を使用することもできる。

前記加熱システムには、他の実施形態を含めることもできる。例えば、上記の二重収納体システムに代えて単一の収納体を使用してもよい。前記対象物は、湿らせた吸収性層とともに前記単一収納体に挿入され、上記のように加熱される。前記収納体内で加熱された前記吸収性層から蒸気が生じ、前記対象物を華氏約２１２度に加熱する。この実施形態において、前記対象物は湿潤される。

複雑な成形
上述の複合材料には、複雑な形状の製品を作製する特定の実用性がある。通常、複雑な製品は別個の構成要素を合着させて一体形成される。あるいは、必ずしも実現可能ではない複雑な成形または製造が必要になる。別個の構成要素を合着させる工程は、可能であれば縫製によることが好ましい。縫製は、単一の平坦なシートを複雑な３次元形状に成形するため使用されることが多い。平坦なシートにスリットを形成し、これを縫い合わせと、各種形状のほかヒンジを備えた製品を成形できる。ただし、プラスチックでできた構成要素同士の場合、特にそのプラスチックが硬質で高強度の場合は、縫製用の針が貫通しずらいため、縫製により合着させるのは困難または不可能であることが多い。また、縫製ではプラスチックに穴が生じ、製品の断裂につながってしまう。

図３３に示すように、曲線的な縁部を有する２つの硬質材料を縫い合わせることは困難または不可能である。曲線的な２つの縁部は、互いに密着しない。硬質材料を３次元形状に変形させて当該縁部同士を接合するために必要な力は、大半の縫製作業では実現不可能である。そのため、２つの硬質材料の縫製はこれまでほとんど行われておらず、形状が極度に曲線的な非常に硬質の材料には不可能である。

この問題は、前記好適な実施形態により解決された。使用時には、前記複合材料１０を切断、成形、縫製、あるいは操作して複雑な３次元形状にすることができる。前記複合材料は、前記中間層３０が可鍛性になるまで加熱される。前記外層（織物、緩衝性断熱材料、またはこれら２材料の組み合わせ、あるいは類似材料）は、周囲の加熱温度で可鍛性になり、可鍛性の前記中間層３０の安定性を保ち、当該中間層３０が必要以上に引き伸ばされるのを防ぐ。また、当該外層は前記中間層に強度をもたらして、成形、縫製、または切断時の断裂を防ぐ。この伸縮性外層は、前記可鍛性層に構造をもたらし、加熱時に非意図的な変形を防ぐ。また縫製面も提供し、これによりミシン通過が容易になって、前記材料から形成された構成要素が強固に一体接合される。さらに、前記中間層を断熱し、当該が縫製機器の大きな金属面と接触して必要以上に急速冷却されないようにする。この外層は、最高華氏２２０度温度に加熱された状態で、低摩擦係数を有する。本願の目的上、低摩擦係数を有するという特徴は、非粘着性（ｎｏｎ− ｓｔｉｃｋｙまたはｎｏｎ−ｔａｃｋｙ）であると表現される。

上記の複合材料では熱成形性の中間材料を、発泡材の断熱層および伸縮性の織物外層とともに使用するが、異なる材料の組み合わせを使用する他の実施形態も本発明に含まれることを明示的に理解すべきである。例えば、前記複合材料では、発泡材断熱層を省略し、伸縮性材料を前記中間層に直接接触させて使用してもよい。また、前記伸縮性織物を前記複合材料の実施形態から省略してもよい。

ここで注意すべき重要な点は、織物および発泡材の層で覆われていない加温したポリマープラスチック層の縫製を試みる際、上記の複合材料層が著しい利点をもたらすことである。前記外層は、溶融ポリマープラスチックと異なり、低摩擦係数を有するため、当該複合材料は、通常であれば溶融ポリマーの粘着面に粘着するミシン表面を滑り抜ける。ポリマープラスチック層を縫合すると、その材料に穴が開いて脆弱になり、張力による断裂が生じるおそれがある。図２に示した好適な実施形態に係る伸縮性織物材料４０には小さく強靱な繊維が含まれ、この伸縮性織物材料４０が貼付された前記複合材料が加熱および成形される際、当該複合材料に強度をもたらすだけでなく、滑らかで低摩擦の縫製面ももたらす。縫製針は、前記小さく強靱な繊維間を貫通しても損傷を残さないため、前記中間層が加熱され、強度が低下した可鍛状態で穴が開けられても、強固な縫い目が得られる。また、これら小さく強靱な繊維は前記中間層と結合して一体化するため、当該中間層が冷めて硬質になった際、それに開いた穴から引き裂きが生じるのを防ぐ。実際、前記可鍛性の中間層は、当該材料が冷めて硬質状態になった時点で糸と結合する。

可鍛性になる温度まで加熱された前記複合材料は、容易に成形および縫製できるようになる。この複合材料は、室温でも切断できるが、高温ではより容易に切断できる。高温では、それらのパターン形状を複雑な３次元形状に縫い合わせることが可能である。当該複合材料を縫製したら、接合した構成要素を再加熱し、身体に当てて引き伸ばすことにより、付加的な成形ができる。縫い目に加圧して平坦にすることもできる。

前記複合材料の縫製工程の一例を図３４に例示する。図３４では、前記複合材料１０の隣接しあう２つの構成要素１９０、１９２を破断図で示している。これら２つの構成要素は、前記中間ポリマー層が比較的柔らかく可鍛性になる温度に加熱される。この加熱された材料は、前記織物層４０および前記断熱層２０により、縫製面に付着することなくこれを滑り抜けることができる。ミシンは、好ましくは図３４および３５に示すようにジグザグ縫いで、継ぎ目に沿って前記２つの構成要素を縫合する。この継ぎ目では、前記構成要素１９０および１９２を重複させ、単線または複線の一般的な直線縫いまたは縫製製品で一般に見られるより複雑な他の縫い方で縫製してもよい。図３５は、別の有用な縫合技術を示したものである。この場合、２層の前記複合材料１９０および１９２を向かい合わせに配置し、片側では当該層を貫通し、もう片側では何も貫通しないジグザグ縫いで縫製できる。縫い目が完成した時点で、接合した当該構成要素を再加熱し、図３６のように縫い目を部分的に開いたのち、図３７のように完全に開く。この工程は、特に、図４２の手首・拇指矯正器に示したように、これに限定されるものではないが、複数の縫い目で複雑な形状に接合する場合、有益である。縫製工程２１０では、図３５〜３７に示した態様の縫い目で前記２層を接合する。これらの層は、向かい合わせに縫製されたのち、加熱して開かれ、図３７のような平坦な縫い目を形成する。この縫い目は、拇指用の穴が小さくミシンで縫える領域が限られることを考慮すると、これ以外の方法では完成させることが極めて難しい。

本質的に、前記中間層が可鍛性になる温度まで加熱された前記複合材料は、伸縮性織物と同様に扱えるようになり、望ましい形状および適合性の高い身体カバーが成形可能になる。次いで室温に冷却されると、前記中間層の剛性と、曲げられた表面が構造的強度をもたらす３次元形態とにより、結果的に得られる形状は極めて硬質の構造となる。これにより、広範囲の応用を有するユニークな複合材料が得られる。

最終的な成形製品は、繰り返し再加熱して複雑な形状へと変形させ、接合し、縫製し、および成形することにより、身体などの複雑な面に適合させることができる。高温のプラスチック材料単独では、伸張するだけで元の形状に戻らない傾向があり、加熱すると、身体に合わせた縫製および装着中または取り扱い中、皮膚に熱傷を生じてしまう。また極めて粘着性になり、操作が難しくなる。前記ユニークな複合材料１０は、加熱すると、非常に複雑な形状への伸張、圧縮、および屈曲が可能になる。前記伸縮性織物層４０は、加熱された複合材料を複雑な形状で安定させるとともに強い引張り力をもたらすことで、適合性の高い形態を生じる。また、前記中間層は各種ポリマー混合物から形成できるため、種々の剛性が達成可能である。さらに、前記中間層の厚さを変えても種々の剛性を提供できる。

本発明の複合材料には、医療、特に整形外科への応用で特定の用途がある。例えば、スパイカ矯正器は、拇指および手首の損傷を治療するため使用されることが多い。拇指および手首のスパイカ矯正器は、拇指および手首を固定しながら他の指が自由に動けるようにする上で使用されるタイプの整形外科用支持装置である。この矯正器は、損傷した拇指（不安定な靱帯、捻挫、筋挫傷、および小さい骨の破損または亀裂）、ゲームキーパー拇指、スキーヤー拇指、変形性関節症、ド・ケルバン症候群、拇指捻挫、術後使用、手・拇指のギプス取り外し後に支持を提供するため使用される。

スパイカ矯正器は、患者に適切に適合させることが難しく、通常、種々の材料を組み立てることにより、ｉｎ ｓｕｔａでカスタム作製される。この用途に事前作製された製品も一部使用されているが、比較的一般的ではない。図４２に示すように、スパイカ矯正器は複雑な形状をしており、これは拇指、手首、および腕を互いに適切な位置関係に支持および保持しなければならず、外周を調整できなければならず、また動きを防ぐよう非常に密接に適合しなければならないためである。この目的のためｉｎ ｓｕｔａで作製された矯正器は、身体上で複雑な部品組み立てを必要とし、通常、ガラス繊維成形材料またはポリカプロラクトンシートを手作業で切断し、身体上で成形して組み立てたものから作製される。定位置に接着または固定するものでは、伸縮性のバンドおよびフック・アンド・ループ閉鎖部が標準的である。この用途の矯正器は決して縫製されず、多大な知識、練習、および時間（約３０分間）を構築に必要とする。このタイプの事前作製された矯正器は、通常、異なる複数の柔らかい織物、伸縮性の織物、非伸縮性の織物、またはストラップで縫製され、場合により軟質の発泡材または織物の積層体を含む。次に、補強用のリブ、事前形成された硬質支持体、または可鍛性の硬質支持体が、縫製された物品に挿入される。身体への適合に必要とされる３次元形状に硬質材料を縫製することは難しいため、前記縫製は、常に、硬質の支持材料ではなく柔らかい材料に対して行われる。軟質織物が硬質材料に縫い付けられる場合もあるが、これは、複雑な硬質材料ピースを３次元形状に縫い合わせることとは大きく異なる。上記のどちらの場合も、軟質・硬質材料、伸縮性・非伸縮性材料、およびストラップ材料を複雑に組み合わせて面倒な手段で複数の部品から接合したものが得られ、装着するには望ましくない製品となってしまっている。

好適な一実施形態の複合材料を使うと、単一の複合材料を縫い合わせてスパイカ矯正器を作製でき、乱れがなく滑らかなその縫い目により当該矯正器の基本形状が形成される。加温された柔軟で耐久性のある複合材料には、単純または複雑な閉鎖機構、例えばフック・アンド・ループ、紐掛けシステム、または他の手段を直接縫製できる。その完成品は伸縮性および柔軟性があるため、加熱すると直ちに成形して患者に直接カスタム適合させることが可能である。その結果、薄く、支持強度が高く、完全に適合し、防水性、非吸収性、放射線透過性、軽量で、柔らかく色彩豊かな織物に覆われた著しく着用可能な物品が得られる。ｉｎ ｓｕｔａ製品と比べると、医療従事者に必要な労力、知識、および時間ははるかに少ない。また、事前作製される矯正器と比べると、カスタム適合に優れ、かさばらず、単純で、より快適に装着できる。好適な一実施形態の複合材料製品を加熱し適用する上で必要な時間は約５分間で、事前作製される他の製品の場合とほとんど変わらない。

図３８に示したように、拇指手首矯正器２００の構成要素は、前記複合材料１０でできた２枚のブランクシートから切断され、曲線および開口部２０２を伴う。これらの平坦なシート複合材料部品は、ダイカットしても、はさみ、コンピュータ制御のブレード、レーザー、ウォータージェットその他の製造手段で切断してもよい。前記部品は、前記中間層が可鍛性になる温度に加熱される。例えば前記複合材料については、熱プレス、オーブン、加熱ランプ、または他の加熱手段を使って、華氏１８０〜２００度の温度で３０秒間〜３分間加熱できる。当該材料は、この温度で十分な時間可鍛性を保つため、標準的なミシンで前記部品を縫い合わせることができる。隣接するピースの縁部同士を接合するには、ジグザグ縫いを使用できる。ジグザグ縫いは、部品同士を縁部に沿って向かい合わせに縫製する場合にも使用でき、その場合は縫合済みの部品がまだ暖かいうちに開かれ、平坦な縫い目が形成される。この方法は、特に図４２の拇指手首スパイカで示したように急激に湾曲した小さな縁部同士を縫合する場合、有益であり、この縫製を硬質シートで行うことは通常不可能である。必要に応じ、前記材料を再加熱してさらに縫製、合着、および成形の工程を行うこともできる。ここで注意すべき重要な点は、加熱したポリマープラスチックシート単独では、その粘着性でミシンとの摩擦および付着が生じてミシンの押さえおよび送り機器を通過できないため、本段落で説明する工程が実施できず、またミシン目によりポリマーが脆弱化することである。織物および発泡材が積層された前記外層は、前記内層を安定させ、摩擦を軽減し、縫製後の耐久性をもたらす。

図４２に示す完成後の矯正器を加熱し、患者周囲で成形して冷却すると、患者の関節を支持する硬質形状で患者にカスタム適合させることが可能である。必要であれば、当該矯正器を再加熱して患者への快適な適合性を実現できる。

図２２は、前記好適な実施形態を使って作製された別の製品を示したものである。この保護用肩パッドでは、平坦な複合材料から切断した３つの部品を使い、その３部品を加熱して柔らかくし、当該部品の隣接し合う縁部をジグザグ縫いで縫い合わせている。その結果、全体として肩状に成形された製品が得られるが、これを華氏２００度に再加熱して肩に当てると、圧力のかかる点または緩い領域を生じることなく伸張して完全に身体に適合する。この物品を硬質シートで公知技術により縫製することは困難または不可能である。また、これを身体に合わせて断熱発泡材層なしで成形することも、不快感による問題がある。前記伸縮性織物の外層および熱成形性の内層を前記ポリマー中間層に積層することにより、強い圧力をかけることなく容易な成形が可能になる。また、暖かいうちに単純な伸縮性の包帯を巻くと、前記部分が身体に合わせて正確に成形される。

本発明の好適な一実施形態に係る前記複合材料の別の使用例はレガースで、多くのスポーツ活動、ならびに警察および軍事目的で使用され、個人の脛と膝が損傷しないよう保護する。図２３に示すように、前記複合材料の複数の部品が切断され、加熱され、縫い合わされて、外形が薄く身体に密接に適合する製品となり、これをのちに加熱すると身体に合わせて精確に成形できる。膝当ておよびフットガードは、複数部品のダーツ加工および高温縫製により組み込まれる。

取り付け可能な閉鎖システム
この好適な実施形態の前記閉鎖システム２５０は、多様な製品上の望ましい点に取り付けられる。この説明的な実施形態で使用される製品は側縁部２２、２４を有する矯正器１０であり（他のいかなる整形外科製品、例えばギプスも、整形外科用以外の製品も使用できるが）、これは同時係属出願第１２／０１３，４４９号（この参照により本明細書に組み込まれる）で開示されたギプスなどである。本好適な実施形態の矯正器の外層には、図４３に示すように、Ｖｅｌｃｒｏ ＵＳＡ，Ｉｎｃ．製のベルクロ（登録商標）など連続ループ織物（ｕｎｂｒｏｋｅｎ ｌｏｏｐ ｆａｂｒｉｃ）の層２６０が含まれる。この外層は、図４３の好適な一実施形態で示すように、すべて連続ループ織物２６０で形成することができる。

この連続ループ織物層２６０は、当該ギプスに接着剤で接合し、成形し、縫製し、または取り付けてよい。あるいは、前記外層４０の一部としてこの織物層を接合してもよい。この連続ループ織物層を当該製品に固定し、またはこれを当該製品上に形成する他の方法も使用できる。

図４４に例示するように、前記取り付け可能な固定機構には、フック要素を伴うストリップ２７０が含まれ、固定機構２８０の底面に固定された連続ループ織物に係合および固着する。この実施形態では、固定機構２８０に、ケーブルリール要素、例えば米国特許第６，２８９，５５８号、第６，２０２，９５３号、第５，９３４，５９９号（この参照によりすべて本明細書に組み込まれる）および米国特許出願公開第２００８００８３１３５号、第２００８００６６３４６号、第２００８００６６３４５号、第２００８００６６２７２号、第２００８００６０１６８号、第２００８００６０１６７号、第２００６０１５６５１７号、第２００３０２０４９３８号、および第２００２００９５７５０号（この参照によりすべて本明細書に組み込まれる）に記載されたＢＯＡ Ｔｅｃｈｎｏｌｏｇｙ Ｉｎｃ．製のケーブルリール装着システムが含まれる。前記ケーブルリール２８０は、回転させると前記紐を締めることができ、垂直方向に引張ると前記紐をリリースすることができる。また、コードロック、カムコードロック、従来の紐結び、ラチェットおよび紐システム、および他の紐掛け方法を含む他の固定機構を使用してもよい。また詳しく後述するように、同様な態様でラチェットストリップバックルなどのスキーブーツバックルを使った代替システムを、どちらかの端部に設けたフック織物と併用することもできる。

図４４に例示するように、フック固定ストリップを伴った一連の細長いストリップ２７４も、この好適な実施形態で使用される。これらの部分２７４は、前記ギプスまたは他の製品の縁部に沿って間隔を置いて選択された位置で取り付けられ、当該縁部にわたり延長する。これらの部分は、当該製品上の前記連続ループ織物２６０と係合し、その上で固定される。次に、ループ面２７６を有するこれらストリップ２７４の端部が二重に畳まれ、当該ストリップ２７４裏のフック面に係合して、以下より詳しく説明するように、細長く柔軟な部材２９０を固定するループを形成する。

次に、図４５に示すように、当該ギプス上で前記フック係合ストリップ２７０を前記連続ループ層２６０と係合させて、前記ケーブルリール２８０などの固定機構が適切な位置に取り付けられる。また、前記ガイドストリップ２７４は、当該ストリップ上の前記フック部材での係合により、前記連続ループ層４０の望ましい位置に取り付けられる。次いで柔軟な細長い部材、例えばケーブルまたは紐２９０を前記ループ２７６に通し、前記ケーブルリールの周囲に回す。次に、前記ケーブルリールを回転させて前記紐２９０を引っ張り、前記ギプスの縁部同士を引き寄せる。用語「紐」には、ケーブル、ライン、その他本発明との併用に適した任意の細長く柔軟な部材も含まれることを明示的に理解すべきである。フック・アンド・ループ・ファスナーは剪断応力に極めて強い傾向があるため、前記ループ２７６のフックおよびループと、前記織物層２６０と、ストリップ２７０および２７４のフック係合部材とにかかる剪断応力により、前記フックおよびループを互いに強固に係合する力がもたらされる。

また、本明細書で説明した連続ループ織物層は、それに対応するフック要素であってもよく、上述したフック要素は前記連続ループ織物層で置き換えてもよいことを明示的に理解すべきである。

これにより組み立てられた製品は、図４６の例などのように身体部分上に配置される。身体部分の上から当該支持体１０を掛け、前記ケーブルリール２８０を回転させて、前記ループ２７６に通した前記紐２９０を締め、この支持体が身体部分上の定位置に固定されるまで、身体部分の周囲で重なり合った縁部を締める。または、閉鎖システムを定位置に伴わない矯正器またはギプスを身体部分に当てたのち、必要に応じた状態で（ｉｎ ｓｉｔｕで）閉鎖システムを設置することができる。

図４７〜４９に示すように、前記固定ストリップ２７４は、前記ケーブルまたは紐２９０用のガイドを容易に形成することができる。この固定ストリップ２７４には、当該固定ストリップのフックに係合する連続ループを有した端部が含まれる。この端部が二重に畳まれて前記フックと係合し、前記紐２９０を誘導するループまたはガイド２７６を形成する。

前記取り付け可能な紐掛けシステムは、任意数の方法で構成して個々のニーズに対処することができる。例えば図５０に示すように、前記取り付け可能な紐掛けシステムには、前記フックストリップ２７０上の前記固定機構２８０と併せて、対向しあう位置に並行して取り付けられた５つのガイド固定フックストリップ２７４が含まれる。図５１に示す別の構成では、３つのガイド固定ストリップ２７４を前記固定機構２８０とともに使用している。図５２に示す構成では、離間された２つのガイド固定ストリップ２７４を、前記固定機構２８０と反対側の位置で使用している。

また、前記取り付け可能な紐掛けシステムは角度を付けた向きで構成でき、これは複雑な形状の製品で必要とされる可能性がある。その例を図５３および５４に示す。前記ガイドストリップ２７４の前記ガイド２７６に前記紐２９０が及ぼす張力により、前記連続ループ面に係合したフックは角度に関係なく引っ張られ、前記製品に前記ストリップを固定し、必要に応じて当該製品を閉鎖する。このように前記ガイド２７６の向きには柔軟性があるため、閉鎖部を種々の角度で引っ張ることが可能になり、いくつかの閉鎖作業がすべて一度に実現できる。

代替実施形態
代替実施形態を図５５〜５９に例示した。この実施形態の取り付け可能なシステムでは、フック部材を背面側に備えた材料からなる２つのストリップ３００、３０２を使用している。前記固定機構２８０は、接着剤、縫製、または他の任意の態様により、前記ストリップの１つ３００に固定される。前記ストリップ３００、３０２の内縁部には、２本のリボン３０４、３０６、例えばナイロンウェビング、織物、または他の任意の材料が取り付けられる。これらのリボン３０４、３０６は、前記ストリップ３００、３０２の縁部に沿って開口部を形成するため、図５８に示すように任意の望ましい紐掛けパターンで、縫製針または千枚通しを使って前記紐を当該リボンの開口部３０８に挿入して、前記縁部に前記紐２９０を挿通することができる。図５５では、前記針およびケーブルにより、前記リボン３０４、３０６の長手方向に沿って離間された穴３０８が形成され、前記紐の出入りにより紐掛けパターンが形成可能になっている。図５６の断面図では、前記ストリップ３０２に固定された前記リボン３０６内を前記紐２９０が貫通する態様を示している。

次いで図５７、５８に示すように、各前記ストリップ３００、３０２底面の前記フックを、当該製品１０の前記連続ループ織物２６０に係合させることにより、事前に組み立てられた取り付け機構を当該製品の望ましい位置に単純に取り付けることができる。この組み立てが完成した製品および取り付け機構は、緩い状態で定位置に置き、前記固定機構２８０で前記紐２９０を締めて固定することができる。図５８に示すように、前記紐２９０にかかる張力は、当該製品を身体に固定するだけでなく、前記ストリップ３００、３０２の前記フックを当該製品上の前記ループ２６０に固定する。その後、前記取り付け機構３０２の片側を前記連続ループ面から離すと、当該装置の容易な着脱を実現できる。

前記取り付けシステムの別の実施形態を図６０に例示した。この実施形態は、上記の実施形態と同様なもので、底面にフック要素を有する２つの平行なストリップ３１０、３１２を使用している。ただし、この実施形態では、プラスチック（または金属）のガイド３１４を前記ストリップ３１０、３１２の縁部に沿って取り付け使用している。これらのガイド３１４は、接着剤、縫製、または他の任意の態様で前記ストリップに取り付けられる。前記固定機構２８０も、上記のように前記ストリップの１つに固定される。次いで紐が前記ガイド３１４に巻装され、当該製品上の前記ループに前記ストリップ上の前記フック要素が係合することにより、前記ストリップ３１０、３１２が当該製品に固定される。

前記取り付けシステムの別の実施形態を図６１、６２に例示する。このシステムは上記のシステムと同様なもので、裏面にフック要素を有する２つの平行なストリップ３２０、３２２を使い、固定機構６０が前記ストリップの１つの上に固定されている。ただし、この実施形態では、前記ストリップ３２０、３２２の縁部に沿って離間されたウェビングで形成されたガイド３２４を使用している。これらのウェビングガイドは、縫製、接着剤、または他の任意の固定態様で前記ストリップに固定される。前記紐２９０は、図示した紐掛けパターンでこれらのガイドに挿通される。前記ストリップ３２０、３２２は、前記ストリップ上の前記フック要素を当該製品上の前記ループ２６０に係合させることにより、当該製品の対向しあう縁部に固定される。当該製品が身体に固定されるに伴い前記紐により生じる張力により、前記フックも前記ループに固定される。

別の実施形態では、上記の実施形態で説明したケーブルリールの代わりにケーブルロック３４０を使用してもよい。前記紐２９０は、張力がかかるよう手作業で引っ張られ、前記ケーブルロック３４０内のカム機構により固定される。前記ケーブルロックは、縫製、接着剤、成形、または他の任意の固定方法により、図６３、６４に示すように前記固定ストリップ２７０に取り付けられ、または図６４、６５に示すように前記ストリップの１つに取り付けられる。前記ガイド固定ストリップ２７４は、上述のように、前記紐２９０をガイド２７６および前記ケーブルロック３４０に挿通して使用できる。前記ストリップ２７０、２７４は、当該ストリップ２７０、２７４上の前記フック要素を当該製品上の前記ループ２６０に係合させて構成でき、また当該製品に固定できる。次いで当該製品を身体上に配置し、十分な張力で当該製品が定位置に固定されて前記ストリップ上の前記フックが当該製品上の前記ループに完全に係合するまで、前記ケーブルロック３４０に通した前記紐２９０を引く。張力のかかった前記紐は、リリースされるときまで前記ケーブルロック３４０のカムにより固定される。

前記ケーブルロック機構３４０の代替実施形態を図６６〜６７に例示する。この実施形態では、図６４に示したように、対向しあうストリップ３２０、３２２およびプラスチックガイド３２４とともに前記ケーブルロック機構３４０を使用しており、前記平行なストリップ３００、３０２およびリボン３０４、３０６により、紐を前記リボンに挿通して上記のようにガイドが形成され、ハトメ３５４を伴った平行なストリップ３５０、３５２により、紐をハトメに挿通してガイドが形成される。

別の代替実施形態を図６８に例示した。図２６に示したように、連続ループ織物の部分４２は必要とされる位置に戦略的に配置されており、部分４２は前記矯正器の前記縁部２２、２４に固定される。次いで、連続ループを伴うこれらの部分４２の上に前記ストリップ２７０、２７４を容易に設置し、取り付けることができる。

前記取り付け可能な閉鎖システムの別の実施形態を図６９、７０に例示する。この実施形態では、ラチェットバックル機構３５０を使用している。複数のフック要素を底面に有するストリップ３５６には、離間された一連の歯３５４を有するストラップ３５２が取り付けられている。ラチェットバックル３５８は、やはり複数のフック要素を底面に有するストリップ３６０に取り付けられている。前記フック要素と前記連続ループ織物２６０との係合により、前記ラチェットバックル３５８を伴う前記ストリップ３６０は、当該矯正器の縁部２４に取り付けられ、前記ストラップ３５２を伴う前記ストリップ３５６は、反対側の縁部２２に取り付けられている。当該矯正器は、患者の身体に取り付けられ、前記ストラップ３５２のラチェットの歯止め位置を前記バックル３５８で調整することにより締められる。前記矯正器および前記ストラップを締めると、前記フックは、当該矯正器の前記ループにさらに強固に係合する。本明細書の特許請求の範囲に記載された発明では、他の変形形態および実施形態を使用しても、リールおよびロック以外の固定機構と、本明細書で説明したもの以外のガイドとを提供できる。また、前記取り付けシステムの他の構成も、本発明に含まれる。本明細書で説明した実施形態は、本発明を説明するため単に記述目的で提供したものであり、本発明の範囲を限定することを目的としたものではない。

前記取り付け機構使用の他の例を図７１〜７２に示す。その一例では、図７１、７２に示すように、腰背部矯正器３７０に前記取り付け機構を使用している。この腰背部矯正器３７０は、対向しあう縁部付近の少なくとも一部に固定された連続ループ織物２６０を含む。前記取り付け可能な固定システムは、フック要素を底面に備えた対向しあうストリップ３００、３０２と、これらストリップ３００、３０２の縁部に固定されたリボンで形成されたガイド３０４、３０６と、固定機構６０とを有し、まず当該矯正器３７０の対向しあう縁部付近に取り付けられる。次いで、図７２に示すように当該矯正器を比較的小柄な個人に適合するようサイズ変更できるが、これは前記紐２９０にかかる張力をリリースし、前記ストリップ３００、３０２を当該矯正器から取り外し、当該矯正器３７０の一部を切削し、当該矯正器の長手方向に沿った別の位置に前記ストリップ３０２を再位置決めして、当該矯正器を効果的に小型化することにより行う。この再位置決め可能な閉鎖システムは取り外しが容易であり、矯正器をカスタム適合し、サイズに合わせて切断し、または特別構成したのち、必要に応じて異なる位置に再配置できるため、当該矯正器のような製品のカスタム構成が可能である。また、この閉鎖システムは、片側の部分３００または３０２を前記連続ループ部分３７０から剥がして再度取り付けることにより、着脱が容易である。

本発明の別の使用実施形態を図７３、７４に例示する。この例では、前記取り付け可能な固定システムが脚足部矯正器３８０に取り付けられる。この固定システムは、前記ストリップ２７０上の前記フック要素と当該矯正器上の連続ループ２６０との係合により当該矯正器３８０の上部に取り付けられた固定機構２８０と、当該矯正器３８０の上部に沿って離間されたガイド固定ストリップ２７４とを有する。前記紐２９０は、脚の周囲で当該矯正器の上部を固定するよう張力がかけられる一方、足の部分は、不快感を生じないよう比較的張力がかけられず、または第２の取り付け可能な固定システムを下部に加えることもできる。図７４は、この固定システムを再構成して当該矯正器の足部分にも張力がかかるようにした態様を例示したものである。

このユニークなシステムでは、最低限の製造能力で製品をｉｎ ｓｉｔｕにて作製できる。その製品を望ましい形状に成形したのち、前記取り付け機構を望ましい位置で固定すると、完全に機能的な製品を提供することができる。このシステムは、同時係属特許出願第１２／０１３，４４９号および第１２／１８１，２７２号で開示された整形外科製品に特定の実用性を有する。これらの製品では、絶縁発泡材と、連続ループ織物などの織物とによる熱成形性内層被覆材を含んだ独特の製品を使用している。この複合材料を用いると、製品を加熱し、加熱した製品を身体部分の周りに配置し、圧力を加えて製品をカスタム成形することにより、身体部分に合わせて製品を形成およびカスタム成形することができる。本発明の前記取り付け機構は、形状に沿うように（ｉｎ ｓｉｔｕで）前記固定システム取り付けを可能にし、製品を付加的にカスタマイズできるようにすることで、さらに別の実用性を提供する。

本発明の一実施形態では、ブランクシートとして、または連続ループ織物面を有する一部成形された製品として、整形外科製品が提供される。前記ブランクは切断され、大まかに成形されて、支持すべき身体部分の周囲に適合する。次いで、上記のように前記ガイドまたは他の固定部材を、前記製品の前記連続ループに固定することにより、前記固定システムが当該製品に取り付けられる。前記閉鎖装置、例えばケーブルリール、ケーブルロック、バックル、または他の装置を取り付けることもでき、これは前記装置上の前記フックを当該製品上の前記ループに係合させて行う。次に、紐、ストラップ、または他の張力調整装置を前記固定システムに通し、上記のように装置を固定する。そして、上記のように装置を締めて固定することにより、前記装置が身体部分の周囲で締められる。

上述のユニークなギプス機能を組み合わせると、整形外科製品用の取り付けシステムを提供でき、専門的な訓練または技能を必要とすることなく、現場で患者に合わせた容易なカスタム成形が可能になる。その結果得られる製品は患者に適合するもので、使用時、必要に応じて適合性を高めるための調整も可能である。その調整機能により、軟部組織の損傷も低減される。

この好適な実施形態の取り付け可能な固定システムは、整形外科製品用に、比較的平坦な形状で、または全体として特定の身体部分用の形状、例えば手首、足首、膝、または他の身体部分の形状のほか、一般的なサイズ、例えば大、中、小サイズで提供できる。上記のように、前記調整可能なオーバーラップも、このカスタム適合に寄与する。

本発明は、形状に沿って（ｉｎ ｓｉｔｕで）容易に作製でき、組み立てることができるカスタム適合製品を作製および使用するためのユニークな製品およびプロセスを提供する。前記複合材料は、カスタマイズにより強固で快適な適合製品を提供できるユニークな製品を提供する。この複合材料は、複雑な形状への成形が容易に行える。以上説明した実施形態は、説明を目的としたものであり、本発明の範囲を限定するよう意図されたものではないことを明示的に理解すべきである。

Claims (15)

1. 身体部位を支持する整形外科製品であって、
   複合材料であって、
   前記身体部位に面して配置され、所定の周囲長を有する内層と、
   前記身体部位から離れる方向に配置され、所定の周囲長を有する外層であって、当該外層の周囲長は、前記内層の周囲長に近似しているものである、前記外層と、
   前記内層および前記外層の前記周囲長と略同じ周囲長を有し、前記内層と前記外層との間に挟持される中間層であって、標的温度範囲内において略熱成形性であり、華氏１３０度の最低成形可能温度より低い温度では略剛性であるポリマー層を有するものである、前記中間層と
   を含むものである、前記複合材料と、
   相互に隣接した位置に配置されるように構成された、前記複合材料の少なくとも２つの、曲線を有する縁部と、
   前記中間層が前記最低成形可能温度より高い温度にあるときに、前記複合材料の前記少なくとも２つの、曲線を有する縁部を直接結合させて、前記身体部位の対応する部分に適合する三次元構造を形成する手段と
   を有する整形外科製品。
2. 請求項１記載の整形外科製品において、前記直接結合させる手段は、前記少なくとも２つの、曲線を有する縁部に近接する少なくとも複数の前記中間層を縫合する１若しくはそれ以上の縫合部分を有するものである整形外科製品。
3. 請求項１記載の整形外科製品において、前記三次元構造は、少なくとも２つの独立した構成要素を含み、当該構成要素の各々は、前記複合材料で形成され、且つ前記少なくとも２つの、曲線を有する縁部うちの１つを形成する縁部を有するものである整形外科製品。
4. 請求項１記載の整形外科製品において、前記三次元構造は、前記複合材料内部を貫通して形成され、前記少なくとも２つの、曲線を有する縁部を画成する開口部を含むものである整形外科製品。
5. 請求項１記載の整形外科製品において、さらに、
   当該整形外科製品が前記身体部位に配置されたとき、相互に隣接した位置に配置されるように構成された、前記三次元構造の少なくとも２つの閉鎖自在な縁部であって、前記曲線を有する縁部とは独立したものである、前記少なくとも２つの閉鎖自在な縁部と、
   前記少なくとも２つの閉鎖自在な縁部を直接結合することなく、選択的に閉鎖する手段と
   を有するものである整形外科製品。
6. 請求項５記載の整形外科製品において、前記選択的に閉鎖する手段は、
   前記三次元構造に固定された少なくとも１つの連続ループ（ｕｎｂｒｏｋｅｎ ｌｏｏｐ）部分と、
   前記連続ループ部分と係合する複数のフック要素を有する第１の取り付け部材と、
   前記第１の取り付け部材に固定された固定機構と、
   前記連続ループ部分と係合する複数のフック要素を有する第２の取り付け部材と、
   前記第２の取り付け部材の各々に固定されたガイド要素と、
   前記ガイド要素の各々に挿通され、前記固定機構と係合する細長く柔軟な部材と
   を有する整形外科製品。
7. 請求項６記載の整形外科製品において、前記固定機構は、ケーブルリール機構、紐ロック機構、ラチェットバックル（ｒａｔｃｈｅｔ ｂｕｃｋｌｅ）機構のうちの１若しくはそれ以上のセットの中から選択されるものである整形外科製品。
8. 請求項６記載の整形外科製品において、前記ガイド要素は、連続ループを前記第２の取り付け部材に固定させ、前記第２の取り付け部材の前記複数のフック要素と係合してガイドループを形成する材料部分を含むものである整形外科製品。
9. 請求項６記載の整形外科製品において、さらに、
   前記第１の取り付け部材に固定されたガイド要素を有するものである整形外科製品。
10. 請求項６記載の整形外科製品において、前記手段は、
    前記第１の取り付け部材の縁部に取り付けられ、当該第１の取り付け部材の縁部に沿ってガイド要素を形成する第１のリボンと、
    前記第２の取り付け部材の縁部に取り付けられ、当該第２の取り付け部材の縁部に沿ってガイド要素を形成する第２のリボンとを含み、当該手段は、針または千枚通しを使って前記細長く柔軟な部材を前記ガイド要素の各々に縫い通し、前記固定機構と係合させることにより形成されるものである整形外科製品。
11. 請求項６記載の整形外科製品において、前記細長く柔軟な部材は、
    前記ガイド要素および前記固定された固定機構を通じて延在するケーブル、および前記ガイド要素を通じて延在し、前記固定機構に固定される紐からなるセットの中から選択されるものである整形外科製品。
12. 請求項１〜１１のいずれか１つに記載の整形外科製品において、前記内層及び前記外層の各々は、前記中間層の前記ポリマー層より低い密度を有する発泡体層を有し、当該発泡体層は、前記標的温度範囲内において、非粘着性であり、且つ前記ポリマー層の摩擦係数よりも低い摩擦係数を有するものである整形外科製品。
13. 請求項１〜１２のいずれか１つに記載の整形外科製品において、前記ポリマー層は、ショア６５Ｄ〜８０Ｄ範囲の硬度（ＡＳＴＭ Ｄ２２４０に準拠）と、６０００〜９０００ ｐｓｉ範囲の引張強度（ＡＳＴＭ Ｄ６３８に準拠）と、５％の破断伸長率（ＡＳＴＭ Ｄ６３８に準拠）と、２７０，０００〜３４０，０００ ｐｓｉの曲げ弾性係数（ＡＳＴＭ Ｄ５０２３に準拠）とを有するものである整形外科製品。
14. 請求項１〜１３のいずれか１つに記載の整形外科製品において、前記標的温度範囲は、華氏約１６０度〜華氏約２２０度の温度である整形外科製品。
15. 請求項１〜１４のいずれか１つに記載の整形外科製品において、前記三次元構造は、ギプス、矯正器、および副子からなるセットの中から選択されるものである整形外科製品。

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