JP5614829B2 - アルミニウム合金製熱交換器 - Google Patents

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Description

本発明は、アルミニウム合金製熱交換器に関する。
エバポレータ、コンデンサ等の自動車用熱交換器には、一般に軽量性と熱伝導性が良好なアルミニウム合金の押出チューブからなる冷媒通路管が使用されており、これらの熱交換器の製造においては、例えばアルミニウム合金押出材のチューブ表面にフッ化物系フラックスを付着させ、フィン材等の部材と所定構造に組み付けた後、不活性ガス雰囲気の加熱炉内においてろう付け接合する方法が一般的に採用されている。
一般に、自動車用熱交換器の冷媒通路管用押出チューブには、冷媒流路として複数の仕切によって区画された複数の中空部を有する多穴管が使用されている。近年、環境負荷低減の観点から、自動車の燃費向上のために熱交換器の軽量化が要請され、これに伴いチューブの薄肉化が要求されているが、この要求によりさらなる断面積の減少が求められており、押出比(コンテナ断面積/押出材断面積)は数百から数千になっている。従って、冷媒通路管材としては、押出性を考慮して押出加工性の良好な純アルミニウム系の材料が使用されている。
今後は一層の軽量化が促進され、それに伴ってチューブの薄肉化もさらに進行するものと予想される。そうした場合、チューブの材料自体の高強度化が必要となる。また、近年、地球温暖化防止のため、冷媒に従来使用しているフロンに替えて自然冷媒のCOを使用する動きがある。CO冷媒は、従来のフロン冷媒よりも作動圧力が高く、このことからもチューブ材料の高強度化が必要となってくる。
チューブ材料の高強度化には、Si、Cu、Mn、Mg等の添加が有効であるが、ろう付けを行う材料中にMgが含有されていると、加熱過程で溶融したフッ化物系フラックスが材料中のMgと反応し、MgF、KMgFなどの化合物を生成し、フラックスの活性度が低下してろう付け性が著しく低下する。また、CO冷媒を使用した熱交換器の場合では、作動温度が150℃付近の高温になるため、材料中にCuが含有されていると、粒界腐食感受性が顕著に高まる。粒界腐食が発生すると早期に冷媒洩れが発生し、熱交換器のチューブとしての機能を果たすことができなくなる。
従って、高強度化の達成には、SiおよびMnの添加に依らざるを得ない。しかしながら、Mn、Siを高濃度に添加した合金は、母相中に固溶したMn、Siが変形抵抗を増大させ、例えば前記の多穴管のように押出比が数百から数千に及ぶものでは、従来の純アルミニウム系の材料に比べて押出性が極端に劣る。この場合の押出性とは、押出に必要なラム圧力や、多穴管の中空部の仕切の欠損が生じないで得られる最大の押出速度(限界押出速度)を評価の指標として、ラム圧力が高いものほどあるいは限界押出速度が低いものほど押出性が劣ることとなる。Mn、Siを高濃度に添加した合金では、従来の純アルミニウム系の材料と比べて、ラム圧力が上昇しダイスの破損や磨耗が生じ易くなるとともに、限界押出速度も低下するため、生産性が低下する。
押出合金の高強度化および押出性向上を得る手法として、高強度化のためにSi、Mnを添加し、押出性向上のために高温の均質化処理と低温のそれを組み合わせて実施することにより、母相中の溶質元素の固溶量を減少させ、変形抵抗を低下させる方法が提案されている。しかしこの場合、元々の溶質元素の添加量が多い分、高強度は狙えるが押出性の向上、特に押出速度の向上には限界があり、高強度と押出性すなわち生産性を完全に両立することは困難である。
また、自動車用熱交換器の冷媒通路管用の押出チューブは、使用中、腐食による貫通が生じた場合、冷媒漏れが発生し熱交換器としての機能を果たすことができなくなるため、従来は押出チューブの表面にあらかじめ溶射などによりZnを付着させておき、ろう付け時にZnを拡散させて、チューブ表層にZn拡散層を形成し、Zn拡散層がそれより深部に対して犠牲陽極として働き、板厚方向への腐食を抑制し貫通寿命を延ばしているが、この場合、チューブには押し出された後にZn溶射等のZn付着工程が必要となり、さらに、ろう付けに必要となるフッ化物系フラックスの塗布工程、あるいは熱交換器コアに組付けられた後にコア全体へのフラックス塗布工が必要となることから、製造コストの上昇を招いてしまう。
このような問題を解決する手段として、例えば、予めZnを付着しないアルミニウム押出材からなる冷媒通路管と、ろう材にも芯材にもZnを含有するクラッドフィンとを組付けて熱交換器を製造することが提唱されている。しかし、この場合の冷媒通路管用アルミニウム押出材は、その実施例によれば純アルミニウム系のA1050合金、あるいはAl−0.6%Cu合金であり、純アルミニウム系のA1050合金では十分な強度を確保することができず、前記の薄肉化やCO冷媒熱交換器などの高強度要求のある熱交換器には適用できない。また、Al−0.6%Cu合金の場合はA1050合金のような純アルミニウム系合金に比べれば高強度が得られるものの、Cu含有のため前記のCO冷媒熱交には高温粒界腐食性が懸念され適用できない。
常温使用の従来の冷媒を用いる熱交換器については、Zn含有フィンの一部が溶融して冷媒通路管の表層に形成するZn拡散層は、そのZn濃度が低く、かつ冷媒通路管にCuが含有されているため、冷媒通路管表面の電位が十分に卑化せず、このため冷媒通路管の板厚方向には、冷媒通路管そのものを防食するために必要な、表層が卑で深部が貴となるような電位勾配が十分に形成されない。これはZn濃度が低く、かつCuと共存している場合は、Znによる電位卑化効果よりもCuによる電位貴化効果の方が顕著に働くためである。
また、冷媒通路管の表面に予め溶射などによりZnを付着させておく方法では、冷媒通路管表面が高濃度のZnにより覆われるため、ろう付け時にクラッドフィン材のろう材が溶融することによりクラッドフィン材との接合部に形成されるフィレット中にZnが濃縮する。このため、フィレットの電位が著しく卑化し、フィレットの優先腐食により早期にフィンが冷媒管から離脱してしまい、熱交換器としての性能を維持することができなくなるとともに、フィン材の犠牲陽極効果も得られなくなり、冷媒管が早期に腐食貫通に至ってしまう。
また、前記提案のZn溶射等を行わない方法においては、クラッドフィン材のろう材にZnが添加されているため、フィンと冷媒通路管の接合部に形成されるフィレットはZn濃度が高くなり、優先腐食が生じ同様の結果となる。また、上記の方法においては、冷媒管がAl−0.6%Cuの場合でも耐孔食性が良好であるが、これはCASS試験により耐食性を評価しているためである。CASS試験のように試験中常時試験液が噴霧され、試験材が常時高導電率の液膜で覆われる場合には、陰極防食効果がより広範囲に作用するため、フィンよりも冷媒通路管の電位を貴化することにより冷媒通路管を陰極防食することができる。
しかしながら、実際の使用環境においては、乾湿の繰返し環境になることがほとんどであることから、陰極防食効果の作用する範囲が極めて狭い範囲に限定されるため、冷媒通路管の電位をフィンよりも貴化させることによる陰極防食だけでは、冷媒通路管を防食することは困難である。特にエバポレータでは結露による凝縮水に覆われることになり、この凝縮水は前記のCASS試験液と比べて極めて低導電率であるため、常時覆われていたとしても、陰極防食効果の広い範囲に作用することができなくなり、冷媒通路管を陰極防食することは困難である。これらの環境でも冷媒通路管を防食するには、冷媒通路管自体に表層が卑で深部が貴となるような十分な電位勾配を付与させる必要がある。
特開2005−256166号公報 特開昭61−202772号公報
本発明は、アルミニウム合金製熱交換器、特に自動車用熱交換器における上記従来の問題点を解消するためになされたものであり、その目的は、アルミニウム合金押出材から構成される冷媒通路管の強度と耐食性を向上させ、かつ生産性向上と低コスト化を実現させる材料構成を特徴とするアルミニウム合金製熱交換器を提供することにある。
上記の目的を達成するための請求項1によるアルミニウム合金製熱交換器は、Mn:0.5〜1.7%(質量%、以下同じ)を含有し、Cu含有量を0.10%未満に規制し、残部Alおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金押出材を冷媒通路管とし、該冷媒通路管に、Mn:0.8〜1.7%、Zn:0.2〜3.5%を含有し、残部Alおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金芯材にAl−Si系アルミニウム合金ろう材をクラッドしたクラッドフィンを窒素ガス雰囲気ろう付けにより接合してなる熱交換器であって、ろう付け後の前記冷媒通路管の表層部に、ろう付け加熱中にクラッドフィンから蒸発し冷媒通路管表面に再付着して内部に拡散したZnの拡散層が形成されていることを特徴とする。また、請求項2によるアルミニウム合金製熱交換器は、請求項1において、前記クラッドフィン材のアルミニウム合金芯材がMn:0.8〜1.7%、Zn:2.5〜3.5%を含有し、残部Alおよび不可避的不純物からなることを特徴とする。
請求項によるアルミニウム合金製熱交換器は、請求項1または2において、前記冷媒通路管用アルミニウム合金押出材が、さらにTi:0.30%以下、Sr:0.10%以下、Zr:0.30%以下のうちの1種以上を含有することを特徴とする。
請求項によるアルミニウム合金製熱交換器は、請求項1〜3のいずれかにおいて、 前記クラッドフィンのアルミニウム合金芯材が、さらにSi:0.2〜0.6%、Fe:0.1〜0.7%、Mg:0.05〜0.3%、Cu:0.5%以下のうちの1種以上を含有することを特徴とする。
請求項によるアルミニウム合金製熱交換器は、請求項1〜4のいずれかにおいて、前記クラッドフィンのアルミニウム合金芯材が、さらにCr:0.3%以下、Zr:0.3%以下の1種または2種を含有することを特徴とする。
請求項によるアルミニウム合金製熱交換器は、請求項1〜5のいずれかにおいて、前記クラッドフィンのアルミニウム合金芯材が、さらにTi:0.3%以下を含有することを特徴とする。
請求項によるアルミニウム合金製熱交換器は、請求項1〜6のいずれかにおいて、前記クラッドフィンのアルミニウム合金芯材が、さらにIn:0.001〜0.10%を含有することを特徴とする。
請求項によるアルミニウム合金製熱交換器は、請求項1〜7のいずれかにおいて、 前記冷媒通路管用アルミニウム合金押出材は、請求項1または3に記載の組成を有するアルミニウム合金の鋳塊に400〜650℃の温度で4時間以上保持する均質化熱処理を施した後、熱間押出加工することにより製造されたものであることを特徴とする。
請求項によるアルミニウム合金製熱交換器は、請求項1〜7のいずれかにおいて、前記冷媒通路管用アルミニウム合金押出材は、請求項1または3に記載の組成を有するアルミニウム合金の鋳塊に570〜650℃の温度で2時間以上保持する第1段熱処理と、その後400〜550℃の温度に降温して3時間以上保持する第2段熱処理からなる均質化熱処理を施した後、熱間押出加工することにより製造されたものであることを特徴とする。
請求項10によるアルミニウム合金製熱交換器は、請求項1〜7のいずれかにおいて、前記冷媒通路管用アルミニウム合金押出材は、請求項1または3に記載の組成を有するアルミニウム合金の鋳塊に570〜650℃の温度で2時間以上保持する第1段熱処理と、その後一旦常温まで降温した後、400〜550℃の温度で3時間以上保持する第2段熱処理からなる均質化熱処理を施した後、熱間押出加工することにより製造されたものであることを特徴とする。
本発明によれば、アルミニウム合金製熱交換器において、アルミニウム合金押出材から構成される冷媒通路管の強度および耐食性を改善し、かつ生産性向上と低コスト化を実現できる材料構成を特徴とするアルミニウム合金製熱交換器が提供される。当該アルミニウム合金製熱交換器は良好な耐食性を有しており、特に、自動車用熱交換器として厳しい腐食環境に曝されても良好な耐久性を発揮することができる。
本発明のアルミニウム合金製熱交換器の冷媒通路管用アルミニウム合金押出材の合金成分の意義および限定理由について説明する。
Mn:
冷媒通路管用アルミニウム合金押出材中のMnは、熱交換器をろう付け加熱接合した後に母相中に固溶し、従来、自動車熱交換器用アルミニウム押出多穴管として使用される純アルミニウム系材料と比べて高強度化が可能になる。Mnの好ましい含有量は0.5〜1.7%の範囲であり、0.5%未満では高強度化の効果は小さく、1.7%を超えて含有すると押出性が低下する。Mnのさらに好ましい含有範囲は0.6%〜1.5%である。
Mnの添加は、同じ量のSi、CuあるいはMgを添加した場合と比べて、押出性、特に限界押出速度の低下が著しく小さく、高強度と、押出性すなわち生産性を両立させることができる添加成分である。同じ強度になるようにSi、CuあるいはMgを添加した場合で比較しても、Mn添加の場合が最も限界押出速度の低下が小さい。
Ti、Sr、Zr:
Tiを添加した場合、冷媒通路管中にTiの高濃度の領域と低濃度の領域を形成し、これらの領域が管の肉厚方向に交互に層状に分布し、Tiが低濃度の領域は高濃度の領域に比べて優先的に腐食するために、腐食形態が層状になり肉厚方向への腐食の進行が抑制される。これにより耐孔食性および耐粒界腐食性が向上する。さらに、Tiの含有により常温及び高温での強度が向上する。Tiの好ましい含有量は0.30%以下の範囲であり、0.30%を超えると、鋳造時に巨大晶出物が生成し、健全な冷媒通路管の製造が困難となる。
Srを添加した場合、冷媒通路管とクラッドフィン材とのろう付け時、Al−Si合金液相ろうが冷却して凝固する際、晶出する共晶組織が微細化され分散する。これにより、材料表面のアノードサイトとなる共晶組織が分散されるため、腐食が均一に分散し面状の腐食形態になり耐食性が向上する。Srの好ましい含有量は0.10%以下の範囲であり、0.10%を超えると、Al−Si−Sr系化合物が晶出し共晶組織が微細化しない。
Zrを添加した場合、ろう付け加熱により冷媒通路管用アルミニウム合金が再結晶するが、その際、再結晶粒が粗大化する。これによって、母材の粒界密度を低下させることができ、冷媒通路管とクラッドフィン材とのろう付け時、Al−Si合金液相ろうが、母材の結晶粒界に浸透するのを抑制でき、粒界での優先的腐食の発生を抑制することができる。Zrの好ましい含有量は0.30%以下の範囲であり、0.30%を超えると、鋳造時に巨大晶出物が生成し、健全な冷媒通路管の製造が困難となる。なお、Ti、Sr、Zrを複合添加した場合は、その効果も複合的に得られる。
Cu:
本発明の冷媒通路管用アルミニウム合金においては、Cuを0.10%未満に制限するのが好ましい。Cuを0.10%未満に制限することにより、熱交換器をろう付け加熱接合した後の使用時において、特に高温使用時における粒界腐食を抑制することが可能になる。Cu量が0.10%以上では、特にCO冷媒サイクルなどでの使用においては、作動温度が150℃付近の高温になり粒界へのCu等の析出が顕著に生じて粒界腐食が生じる。Cu量が0.10%未満の場合には粒界腐食が生じることはない。また、Cuの添加は著しく押出性を低下させるため、この点からも添加量は制限する必要がある。Cuのより好ましい含有範囲は0.05%以下であり、さらに好ましい含有範囲は0.03%以下である。
さらに、一般的にZnを添加すると電位は卑化し、反対にCuを添加すると電位は貴化することが知られているが、発明者らは、ZnとCuが共存する場合について、特にZn含有量が少ない場合にはCuによる電位貴化効果の方が顕著に作用することを見出した。本発明において、ろう付け後にフィンから蒸発したZnの冷媒通路管表面への付着、拡散により形成されたZn拡散層の表層Zn濃度は、従来のZn溶射等により冷媒通路管表面に付着させた場合に形成されるZn拡散層の表層Zn濃度に比べて低い。このため、もし冷媒通路管にCuが0.1%を超えて含有されている場合、前記フィンから蒸発したZnにより形成されたZn拡散層による電位卑化効果を、含有Cuの電位貴化効果が相殺してしまい、Zn拡散層が存在するにもかかわらず、冷媒通路管表層の電位が卑化せず、冷媒通路管の板厚方向に対して表層が卑で深部が貴になる電位勾配を形成することができない。これでは冷媒通路管自体で表層を犠牲陽極にして深部を防食し、貫通寿命を向上させることができない。
つぎに、クラッドフィンの芯材を構成するアルミニウム合金の合金成分の意義および限定理由について説明する。
Zn:
本発明において、Znを含有するフィンを押出冷媒通路管に組み付けてろう付けすると、ろう付け中にフィン表面からZnが蒸発し冷媒通路管表面に付着し、さらに付着したZnは冷媒通路管の板厚方向に拡散し、表層に濃度勾配をもつZn拡散層が形成される。このZn拡散層が冷媒通路管の表層電位を卑化し、板厚方向に対して表層が卑で深部が貴となる電位勾配を形成する。この結果、冷媒通路管は表層が犠牲陽極となって深部は陰極防食され、腐食による貫通を抑制することができる。フィンから蒸発し冷媒通路管に付着するZn量は、組み合わせるフィンの形状により影響を受ける。冷媒通路管表面からフィン表面までの距離が短い場合は、長い場合と比べてより多くのZnが付着する。このことから、効率よくZnを冷媒通路管に付着させるには、コルゲート形状のフィンを使用することがより望ましい。コルゲート形状のフィンを使用する場合、そのフィンピッチ及びフィン高さにより、冷媒通路管に付着するZn量は異なる。
Znの好ましい含有量は0.2〜3.5%の範囲であり、Zn量が0.2%未満では、可能な限りフィンピッチを小さくしたり、フィン高さを低くしても冷媒通路管表面に付着するZn量はわずかであり、冷媒通路管表層の十分な電位卑化効果が期待できない。一方、フィンのZn量が3.5%を超えると、通常熱交換器として使用されるフィン形状であれば、冷媒通路管に付着するZn量は十分なものになるが、フィン自体の電位も著しく卑化しフィンの自己耐食性が低下するとともに、フィンと冷媒通路管との電位差が大きくなり、常時高導電率の液体に曝されるような使用環境においては、アノードとなるフィンが早期に腐食消耗してしまう。より好ましいZn含有範囲は0.4%〜2.5%である。
Mn、Si、Fe、Mg、Cu:
Mnはフィン材の強度を向上させる。Mnの好ましい含有量は0.8〜1.7%の範囲であり、0.8%未満ではその効果が小さく、1.7%を超えると、鋳造時に巨大晶出物が生成し健全なフィン材の製造が困難となる。
Siはフィン材の強度を向上させる。Siの好ましい含有量は0.2〜0.6%の範囲であり、0.2%未満ではその効果が小さく、0.6%を超えるとフィン材の融点が低下し、ろう付け加熱時に局部溶融が生じ易くなる。
Feはフィン材の強度を向上させる。Feの好ましい含有量は0.1〜0.7%の範囲であり、0.1%未満ではその効果が小さく、0.7%を超えるとAl−Fe系の貴な化合物の量が増えるため、フィン材の自己耐食性が低下する。
Mgはフィン材の強度を向上させる。Mgの好ましい含有量は0.05〜0.3%の範囲であり、0.05%未満ではその効果が小さく、0.3%を超えて含有すると、フッ化物系フラックスを用いて不活性ガス雰囲気中で加熱ろう付けする場合、ろう付け時にMgがフッ化物系フラックスと反応してMgのフッ化物が生成し、ろう付け性を低下するとともに、ろう付け部の外観が悪くなる。Mgのさらに好ましい含有範囲は0.05〜0.15%である。
Cuはフィン材の強度を向上させる。Cuの好ましい含有量は0.5%以下の範囲であり、0.5%を超えて含有すると、フィン材の電位が貴になり、冷媒通路管の耐食性を阻害する。またフィン材の自己耐食性も低下する。
Cr、Zr、Ti:
CrおよびZrは、ろう付け後の結晶粒径を粗大にさせ、ろう付け加熱途中におけるフィンの座屈を低減させる効果がある。CrおよびZrの好ましい含有量はいずれも0.3%以下の範囲であり、0.3%を超えて含有すると、鋳造時に巨大晶出物が生成し、健全なフィン材の製造が困難となる。
Ti添加により、Tiが高濃度の領域と低濃度の領域を形成し、これらの領域が材料の肉厚方向に交互に層状に分布し、Tiが低濃度の領域は高濃度の領域に比べて優先的に腐食するために、腐食形態が層状になり肉厚方向への腐食の進行が抑制される。これにより耐孔食性および耐粒界腐食性が向上する。さらに、Ti添加により常温及び高温での強度が向上する。Tiの好ましい含有量は0.3%以下の範囲であり、0.3%を超えて含有すると、鋳造時に巨大晶出物が生成し、健全なフィン材の製造が困難となる。
In、Sn:
In、Snは、微量の添加によってフィン材の電位を卑にし、冷媒通路管に対する犠牲陽極効果を発揮し、冷媒通路管の孔食の発生を防止する。InおよびSnの好ましい含有量はいずれも0.001〜0.10%の範囲であり、0.001%未満ではその効果が小さく、0.10%を超えるとフィン材の自己耐食性が低下する。上記フィン材の芯材にクラッドするAl−Si系アルミニウム合金ろう材として、公知のものを適用することができるが、ろう材にZnを含有すると腐食が顕著となるから、ろう材中のZn量は0.5%未満とするのが望ましい。さらに好ましいろう材中のZn量は0.3%未満である。
本発明の冷媒通路管用アルミニウム合金押出材の製造方法について説明する。
上記の組成を有する冷媒通路管用アルミニウム合金を溶解、通常の半連続鋳造により造塊し、得られた鋳塊を、400〜650℃の温度で4時間以上保持する均質化処理を施した後、熱間押出加工する。この均質化処理により、鋳造凝固時に形成される粗大な晶出物を分解あるいは粒状化させ、鋳造時に生じた偏析層などの不均一な組織を均質化させることができる。熱間押出時に、粗大な晶出物が残存していたり、鋳造時に形成される偏析層などの不均一組織が残存していると、それらが押出時の抵抗になり押出性を低下させたり、押出後の製品の表面粗度の低下を招く。
このような問題の発生を抑制するためには前記の条件による均質化処理が必要となる。均質化処理温度が400℃未満では上記の反応は進み難い。均質化処理温度は高温であればあるほうがこのような反応は速くなるが、高すぎると溶解する可能性があるため上限を650℃とする。430〜620℃の温度で均質化処理を行うのがさらに好ましい。また、処理時間は長い方が反応が進むため、好ましくは10時間以上処理を行うのがよい。しかし24時間を超えて処理を行っても、それ以上の効果は得られ難く、逆に不経済となるため、好ましい処理時間は10〜24時間である。
鋳塊の均質化処理として、高温の均質化処理と低温の均質化処理を組み合わせて実施してもよい。これにより、その後の熱間押出性のさらなる向上及びアルミカスの発生を低減させることが可能となる。アルミカスとは押出時にダイス内に堆積したアルミニウム片がある程度の大きさになった時にダイスから排出され、押出された冷媒通路管の表面に付着する欠陥のことをいう。
高温の第1段熱処理は、570〜650℃で2時間以上保持する処理であり、これにより、鋳造凝固時に形成される粗大な晶出物の分解あるいは粒状化だけでなく、積極的に再固溶させることができる。処理温度が570℃未満では再固溶が進み難い。均質化処理温度は高温であればあるほうがこのような反応は速くなるが、高過ぎると溶解する可能性があるため上限を650℃とする。さらに好ましい第1段熱処理の温度は580〜620℃の範囲である。また、処理時間は長い方が反応が進むため、好ましくは5時間以上処理を行うのがよい。しかし24時間を超えて処理を行っても、それ以上の効果は得られ難く逆に不経済となるため、好ましい処理時間は5〜24時間である。
高温の第1段熱処理を行った後、これよりも低温で第2段熱処理を行うと、母相中に固溶しているMnを析出させ、Mnの固溶度を低下させることができるため、その後の熱間押出での変形抵抗を低下させ、押出性を向上させることが可能となる。第2段熱処理の好ましい温度範囲は400〜550℃である。400℃未満では析出量が少なく、結果的に変形抵抗を低下させる効果が不十分である。また、550℃以上では析出が生じ難く、この場合も結果的に変形抵抗を低下させる効果が不十分である。処理時間は3時間以上とする。3時間未満では、このような析出が十分に生じないため、結果的に変形抵抗を低下させる効果が不十分である。また、処理時間は長い方が反応が進むため効果はあるが、24時間を超えて処理を行ってもそれ以上の効果は得られ難く逆に不経済となる。好ましい処理時間は5〜15時間である。
なお、本発明における上記の二段均質化処理は、第1段熱処理により十分に均質固溶したMnを、その後に行う第2段熱処理により析出させるものであり、これら二段階の均質化処理を連続的に行うかどうかは特に限定されない。すなわち、第2段熱処理は第1段熱処理後に連続して行ってもよいし、あるいは第1段熱処理後、一旦鋳塊を常温まで冷却した後に再加熱して第2段熱処理を行ってもよい。
本発明によるアルミニウム合金製熱交換器は、上記の組成を有するアルミニウム合金からなる冷媒通路管およびフィン材を組み合わせ、常法に従って、ろう付けにより製造することができ、その製造方法は特に限定されない。また、冷媒通路管合金の均質化処理における加熱方法や加熱炉の構造等についても特に限定されない。さらに、冷媒通路管用アルミニウム合金押出材の押出形状は、その用途、例えば熱交換器の形状等に応じて選定される。押出に際しては、材料の押出性が良好であるので、ホロー形状の多孔ダイを用いて良好に押出することも可能である。アルミニウム合金押出材からなる媒通路管は熱交換器用部品として使用するに際し、他部材(例えばフィン材やヘッダ材)と組み付けて、窒素雰囲気ろう付けにより接合する。なお、ろう付け時の加熱温度、時間については特に限定されない
以下、本発明の実施例を比較例と対比して説明し、本発明の効果を実証する。これらの実施例は本発明の一実施態様を示すものであり、本発明はこれに限定されない。
実施例1、比較例1
冷媒通路管用として、発明材として表1に示す組成を有するアルミニウム合金A〜Lのビレット、および、比較材として表2に示す組成を有するアルミニウム合金M〜Tのビレットを鋳造した。なお、アルミニウム合金Tは従来合金として一般的に広く使用されているものである。これらのビレットを用いて、以下の試験1、2、3を実施した。
(試験1)
発明材および比較材について、ビレットを600℃で10hの均質化処理後、多穴管に熱間押出加工した。その際、押出時の限界押出速度比(アルミニウム合金Tの限界押出速度との比率)を調査した。その結果を表3および表4に示す。限界押出速度比が1.0を超えるものは押出性良好、1.0以下のものは押出性不良と評価する。
(試験2)
試験1で熱間押出加工した多穴管について、ろう付け加熱を実施した。加熱条件は窒素ガス雰囲気中で平均50℃/minの昇温速度にて600℃まで加熱し、3分保持後に室温まで降温した。その後、常温にて引張試験を実施した。その結果を表3および表4に示す。引張強さがアルミニウム合金Tを超えるものは良好とし、アルミニウム合金T以下のものは不良と評価する。
(試験3)
発明材CおよびDのビレットについて、表5および表6に示す条件で均質化処理を行い、同様にして多穴管に熱間押出加工し、押出時の限界押出速度比(アルミニウム合金Tの限界押出速度との比率)を調査した。昇温速度は50℃/h、第1段熱処理から第2段熱処理を連続で行う場合の降温速度は25℃/h、第2段熱処理終了後の降温速度は炉出放冷とした。結果を表5および表6に示す。限界押出速度比が1.0を超えるものは押出性良好、1.0以下のものは押出性不良と評価する。
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表3、表4に示すように、発明材A〜Lは限界押出速度比および強度の両方において優れた結果が得られたが、本発明の条件を外れた組成を有する比較材M〜Tにおいては、限界押出速度比、強度のいずれかにおいて劣っていた。
表5、表6に示すように、本発明の組成を有する発明材CおよびDのビレットについて、表5に従って本発明の条件で均質化処理を行ったものは、優れた限界押出速度比が得られたが、本発明の条件を外れた条件で均質化処理を行ったものは、限界押出速度比が劣っていた。
実施例2、比較例2
フィン材用として、発明材として表7に示す組成を有するアルミニウム合金の芯材とろう材(記号a〜l)、比較材として表8に示す組成を有するアルミニウム合金の芯材とろう材(記号m〜y)のスラブを鋳造した。これらのスラブについて、所定の均質化処理、熱間圧延および冷間圧延を行い、ろう材が芯材の両面に10%のクラッド率でクラッドされた0.1mm厚さのクラッドフィン材に仕上げた後、表9および表10に示す寸法にコルゲート加工を施し、表9および表10に示すように冷媒通路管(合金記号を示す)と組み合わせて熱交換器コアをろう付けにより作製した。
冷媒通路管は、表9〜10に示す冷媒通路管用アルミニウム合金のビレットを600℃で10時間保持する均質化処理した後、熱間押出加工して作製されたものである。熱交換器コアのろう付け加熱条件は、窒素ガス雰囲気中で平均50℃/minの昇温速度にて600℃まで加熱し、3分保持後に室温まで降温する条件で行った。作製した熱交換器コアを用いて、以下の試験4、試験5、試験6を実施した。
熱交換器コア作製状況を表9および表10に示す。不具合なく作製できたものは不具合なしとし、不具合が生じたものは不具合の状況を記載した。
(試験4)
熱交換器コアについて、高温使用を模擬して150℃で120時間熱処理を施した後に、ISO11846 method Bに規定される方法にて粒界腐食試験を実施した。その結果を表9および表10に示す。冷媒通路管に粒界腐食が発生しなかったものは粒界腐食なしとし、粒界腐食が発生したものは発生程度を記載した。
(試験5)
熱交換器コアの冷媒通路管表面のZn濃度、Zn拡散深さおよび表面と深部の電位およびそれらの電位差、並びにフィン材の電位および冷媒通路管表面とフィン材の電位差を測定した。冷媒通路管表面のZn濃度、Zn拡散深さは、コアの断面を樹脂埋めし、肉厚方向にEPMA線分析した結果から求めた。Zn拡散深さは、Zn濃度が0.01%となった深さとした。電位は、冷媒通路管表面とフィン材はろう付け後そのままの表面を、冷媒通路管深部は表面から150μmの深さまで面削し、Zn拡散の及んでいない部位を測定した。測定は、酢酸でpH3に調製した5%NaCl水溶液中に24時間浸漬して行い、10時間以降の安定した測定値の平均を採用した。なお、参照電極は飽和カロメル電極を用いた。その結果を表11および表12に示す。
(試験6)
熱交換器コアについて、ASTM−G85−Annex A3に規定されるSWAAT試験と、以下に示すCCT試験をそれぞれ1000h実施した。CCT試験は酢酸でpH3に調整した5%食塩水を試験液とし、雰囲気温度35℃で2時間噴霧した後、雰囲気温度60℃で4時間乾燥させ、その後に95%RH以上の相対湿度で雰囲気温度50℃で2時間湿潤するサイクルを繰り返した。試験後の冷媒通路管の最大腐食深さ、フィンの剥がれ状況、およびフィンの腐食状況を表13および表14に示す。冷媒通路管の最大腐食深さは、0.05mm以下を◎、0.05mmを超え0.10mm以下を○、0.10mmを超え0.20mm以下を△、0.20mmを超えるものを×と評価した。フィンの剥がれについては、剥がれなしを○、剥がれ有りを×とした。また、フィンの腐食については、ほとんど無しを◎、軽微を○、中程度を△、顕著を×と評価した。
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表9に示すように、本発明に従う熱交換器コア1〜24は、コア作製時の不具合はなく、粒界腐食も認められなかった。これに対して、表10に示すように、本発明の条件を外れた条件で作製された熱交換器コアにおいては、コア27、28、30、32〜34にコア作製時に不具合が生じ、コア40〜47(Cuを含有する冷媒通路管を使用)に顕著に粒界腐食が発生した。
表11に示すように、本発明に従う熱交換器コア1〜24は、冷媒通路管表層部に十分なZn拡散層が形成されており、このため冷媒通路管表面が深部に対して卑な電位となり、冷媒通路管表面と深部で十分な電位差が得られていた。またフィン材の電位も冷媒通路管表面に対して卑になっていた。
これに対して、表12に示すように、本発明の条件を外れた条件で作製された熱交換器コア25〜47においては、冷媒通路管表層部に十分なZn拡散層が形成されていない場合があり、その場合は冷媒通路管表面と深部で十分な電位差が得られなかった。また十分なZn拡散層形成されていても、冷媒通路管にCuを含有したコア40〜47では、Znの電位卑化効果が相殺され、冷媒通路管表面が深部に対して同等な電位となっていた。さらに、フィン材の電位も冷媒通路管表面に対して貴であったり、あるいは著しく卑であったりしていた。
SWAAT試験においては、表13に示すように、本発明に従う熱交換器コア1〜24は、いずれも冷媒通路管表面と深部で十分な電位差が得られていたため、最大腐食深さは浅く優れた耐食性を示した。また、SWAAT試験ではフィンの犠牲陽極効果が得られるため、冷媒通路管表面とフィン材との電位差によりフィン材の腐食消耗に差が生じるが、本発明の熱交換器コア1〜24の場合、いずれも適正な電位差となりフィン材の腐食はほとんど無しか、あるいは軽微であった。さらに、腐食によるフィンの剥がれは生じていなかった。
これに対して、表14に示すように、本発明の条件を外れた条件で作製された熱交換器コア25〜47においては、コア25、31、38〜40、43、46、47では冷媒通路管表面と深部で十分な電位差が得られていなかったか、あるいはフィン材の方が冷媒通路管表面より電位が貴になっており、冷媒通路管の最大腐食深さが深かった。フィン材については冷媒通路管表面よりも著しく電位が卑であったもの(コア35、36、40、41、44〜46)と、芯材のZn量、Fe量、Cu量、In量およびSn量が多く自己耐食性が劣るもの(コア26、29、31、35、36)、並びにろう材にZnを含有するもの(コア37,46)が腐食が顕著であった。さらに、Zn溶射を施した冷媒通路管を使用したもの(コア39、47)と、ろう材にZnを含有するフィン材を使用したもの(コア37、46)では腐食によるフィンの剥がれが生じていた。
CCT試験においては、乾燥過程が入ることにより実環境に近い評価となるが、逆にフィンの犠牲陽極効果が得られ難い。このような評価方法にもかかわらず、表13に示すように、本発明に従う熱交換器コア1〜24は、冷媒通路管表面と深部で十分な電位差が得られているため、冷媒通路管の最大腐食深さは浅く、SWAAT試験と同様に優れた耐食性を示した。フィン材の腐食についてもほとんどないか、あるいは軽微であった。さらに、腐食によるフィンの剥がれも生じていなかった。
これに対して、表14に示すように、本発明の条件を外れた条件で作製された熱交換器コア25〜47においては、冷媒通路管の表面と深部の電位差が不十分であったもの(コア25、38、40〜44、46)の冷媒通路管の最大腐食深さが深かった。フィンの犠牲陽極効果が得られにくいものの、冷媒通路管の電位に対して著しく貴なフィン材を使用した場合(コア31、39、47)では、冷媒通路管の腐食深さが深くなる傾向がみられた。フィン材の腐食に関してはSWAAT試験の結果と同じ傾向であった。また、フィン剥がれに関しても、SWAAT試験の結果と同様であった。
なお、表14に示す本発明の条件を外れた条件で作製された熱交換器コア25〜47のうち、コア27、28、30、32〜34は良好な耐食性評価を示したが、これらのコアは、表10に示すように熱交換器コア作製時に不具合が生じたものであった。

Claims (10)

  1. Mn:0.5〜1.7%(質量%、以下同じ)を含有し、Cu含有量を0.10%未満に規制し、残部Alおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金押出材を冷媒通路管とし、該冷媒通路管に、Mn:0.8〜1.7%、Zn:0.2〜3.5%を含有し、残部Alおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金芯材にAl−Si系アルミニウム合金ろう材をクラッドしたクラッドフィンを窒素ガス雰囲気ろう付けにより接合してなる熱交換器であって、ろう付け後の前記冷媒通路管の表層部に、ろう付け加熱中にクラッドフィンから蒸発し冷媒通路管表面に再付着して内部に拡散したZnの拡散層が形成されていることを特徴とするアルミニウム合金製熱交換器。
  2. 前記クラッドフィン材のアルミニウム合金芯材がMn:0.8〜1.7%、Zn:2.5〜3.5%を含有し、残部Alおよび不可避的不純物からなることを特徴とする請求項1記載のアルミニウム合金製熱交換器。
  3. 前記冷媒通路管用アルミニウム合金押出材が、さらにTi:0.30%以下、Sr:0.10%以下、Zr:0.30%以下のうちの1種以上を含有することを特徴とする請求項1または2記載のアルミニウム合金製熱交換器。
  4. 前記クラッドフィンのアルミニウム合金芯材が、さらにSi:0.2〜0.6%、Fe:0.1〜0.7%、Mg:0.05〜0.3%、Cu:0.5%以下のうちの1種以上を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のアルミニウム合金製熱交換器。
  5. 前記クラッドフィンのアルミニウム合金芯材が、さらにCr:0.3%以下、Zr:0.3%以下の1種または2種を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のアルミニウム合金製熱交換器。
  6. 前記クラッドフィンのアルミニウム合金芯材が、さらにTi:0.3%以下を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のアルミニウム合金製熱交換器。
  7. 前記クラッドフィンのアルミニウム合金芯材が、さらにIn:0.001〜0.10%を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のアルミニウム合金製熱交換器。
  8. 前記冷媒通路管用アルミニウム合金押出材は、請求項1または3に記載の組成を有するアルミニウム合金の鋳塊に400〜650℃の温度で4時間以上保持する均質化熱処理を施した後、熱間押出加工することにより製造されたものであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のアルミニウム合金製熱交換器。
  9. 前記冷媒通路管用アルミニウム合金押出材は、請求項1または3に記載の組成を有するアルミニウム合金の鋳塊に570〜650℃の温度で2時間以上保持する第1段熱処理と、その後400〜550℃の温度に降温して3時間以上保持する第2段熱処理からなる均質化熱処理を施した後、熱間押出加工することにより製造されたものであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のアルミニウム合金製熱交換器。
  10. 前記冷媒通路管用アルミニウム合金押出材は、請求項1または3に記載の組成を有するアルミニウム合金の鋳塊に570〜650℃の温度で2時間以上保持する第1段熱処理と、その後一旦常温まで降温した後、400〜550℃の温度で3時間以上保持する第2段熱処理からなる均質化熱処理を施した後、熱間押出加工することにより製造されたものであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のアルミニウム合金製熱交換器。
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