以下、図面を参照して、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」と称する)につき詳細に説明する。なお、各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。また、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
[実施形態1]
<画像形成装置の構成>
以下、図1〜図4を参照して、本実施形態1に係る画像形成装置の構成につき説明する。なお、図1〜図4は、それぞれ、実施形態1に係る画像形成装置の構成を示す図である。
画像形成装置1は、電子写真記録プロセスを用いて、現像剤によって現像剤像を形成する装置である。ここでは、画像形成装置1としてタンデム型の直接転写方式のカラープリンタを想定して説明する。以下、画像形成装置1を「プリンタ1」と称する。また、ここでは、「画像形成」を「印刷」と称する場合がある。
以下、図1及び図2を参照して、プリンタ1の機構系の構成につき説明する。
図1は、プリンタ1の全体の構成を示している。図1に示すように、プリンタ1は、内部に、用紙P(図2参照)やOHPシート等の記録媒体が搬送される搬送路6と、搬送路6に沿って記録媒体を搬送するための複数の搬送ローラ31とを有している。なお、ここでは、記録媒体として用紙Pを想定して説明する。
搬送路6の主要経路は、略S字状に形成されており、プリンタ1の内部の下方側に設けられた用紙カセット41とプリンタ1の天板の上に設けられたスタッカ42とを接続している。
用紙カセット41は、記録媒体としての用紙P(図2参照)を収容する収容庫である。用紙カセット41は、プリンタ1に対して搭載(装着及び取り外し)が自在な構成となっている。
スタッカ42は、印刷済みの用紙Pを集積する集積部である。なお、「印刷済み」とは、後記する定着装置20によって用紙Pへの現像剤像の定着処理が行われた状態を意味している。
搬送路6は、一部が転写ベルト32によって構成されている。転写ベルト32は、用紙Pを搬送するための搬送手段である。転写ベルト32は、ドライブローラ33a及び従動ローラ33bによって、走行自在に張架されている。転写ベルト32は、ドライブローラ33aが回転することにより、矢印方向に向けて走行する。このとき、従動ローラ33bは、転写ベルト32の走行に連れ回されて回転する。
プリンタ1は、従動ローラ33bの周囲に、転写ベルトクリーニングブレード36及び廃棄現像剤タンク37を有している。
転写ベルトクリーニングブレード36は、転写ベルト32の表面に付着した現像剤を除去するためのクリーニング部材である。転写ベルトクリーニングブレード36は、転写ベルト32を介して従動ローラ33bと対向するように、設けられている。転写ベルトクリーニングブレード36は、転写ベルト32が転写ベルトクリーニングブレード36と当接した状態で走行することにより、転写ベルト32の表面に付着した現像剤を転写ベルト32から掻き落とす。
廃棄現像剤タンク37は、転写ベルトクリーニングブレード36によって掻き落とされた現像剤を収容する収容部である。
プリンタ1は、転写ベルト32の上に、現像装置10を有している。また、プリンタ1は、転写ベルト32の内周に、転写部材としての転写ローラ34を有している。さらに、プリンタ1は、転写ベルト32の下流側に、定着装置20を有している。なお、ここでは、「下流」は、用紙Pの搬送方向を基準にしている。
現像装置10は、内部に設けられた感光体ドラム11(図2参照)の表面に、現像剤像を形成する装置である。現像装置10は、プリンタ1に対して搭載(装着及び取り外し)が自在な構成となっている。現像装置10の詳細な構成については、後記する。
なお、図1に示す例では、プリンタ1は、ブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、及び、シアン(C)の各色に対応して、4つの現像装置10を有している。4つの現像装置10は、転写ベルト32の上に、転写ベルト32の走行方向に沿って、並べて配置されている。4つの現像装置10は、内部に収容される現像剤の色が異なる以外は、同じ構成となっている。以下、ブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、及び、シアン(C)の各色に対応する構成要素を区別する場合に、各構成要素に与えられた符号の末尾に、英文字「K」、「Y」、「M」、「C」を付して説明する。
転写ローラ34は、現像装置10の感光体ドラム11(図2参照)の表面に形成された現像剤像を、用紙Pに転写するための転写部材である。転写ローラ34は、転写ベルト32を介して現像装置10の感光体ドラム11と対向するように、設けられている。プリンタ1は、現像装置10が感光体ドラム11の表面に現像剤像を形成すると、転写ローラ34が転写ベルト32及び用紙Pを介して現像剤像を引き寄せる。これにより、プリンタ1は、現像剤像を感光体ドラム11から用紙Pに転写する。
なお、図1に示す例では、プリンタ1は、4つの現像装置10K,10Y,10M,10Cを有している。そのため、プリンタ1は、4つの現像装置10K,10Y,10M,10Cに対応して4つの転写ローラ34K,34Y,34M,34Cを有している。
定着装置20は、現像装置10の感光体ドラム11(図2参照)上に形成され、転写ローラ34によって感光体ドラム11から用紙Pに転写された現像剤像を、用紙Pに定着させる装置である。定着装置20は、用紙Pを加熱及び加圧して、現像剤像を溶融させることにより、現像剤像を用紙Pに定着させる。定着装置20は、加熱ローラ21、ヒータ22、加圧ローラ23、及び、サーミスタ24を備えている。
加熱ローラ21は、用紙Pを加熱するための部材である。加熱ローラ21は、例えば、アルミニウムによって構成された中空円筒状の芯金の表面を、シリコンゴムによって構成された耐熱弾性層で被覆し、さらに、耐熱弾性層をPFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)チューブで被覆することによって、形成される。
ヒータ22は、加熱ローラ21を加熱するための加熱手段である。ヒータ22は、例えば、ハロゲンランプによって構成されており、加熱ローラ21の芯金の内部に配置される。
加圧ローラ23は、用紙Pを加圧するための部材である。加圧ローラ23は、例えば、アルミニウムによって構成された円筒状の芯金の表面を、シリコンゴムによって構成された耐熱弾性層で被覆し、さらに、耐熱弾性層をPFAチューブで被覆することによって、形成される。加圧ローラ23は、搬送路6を介して加熱ローラ21と対向するように、設けられている。加圧ローラ23は、加熱ローラ21との間に、用紙Pを圧接する圧接部が形成される。
サーミスタ24は、加熱ローラ21の表面温度を測定する測定手段である。サーミスタ24は、加熱ローラ21の近傍に、加熱ローラ21と非接触な状態で配置されている。
本実施形態1では、プリンタ1は、ローラ方式の定着装置20を用いている。しかしながら、プリンタ1は、ベルトを使用したベルト方式、又は、フィルムを使用したフィルム方式、発光エネルギーを利用するフラッシュ方式等の定着装置20を用いることもできる。
なお、ローラ方式又はベルト方式の定着装置20は、オイル供給ローラや、オイル補給シート、オイルタンク等のオイル補給機構を備えたオイル補給定着方式の構成にすることもできる。この場合に、定着装置20は、加熱ローラやベルト等にオイルを補給し、積極的にホットオフセット現象が発生するのを防止することができる。また、オイルは、特定の材料に限定する必要はないが、好ましくは、シリコンオイルや鉱物オイル等のうち、比較的粘度の低いものがよい。
さらに、定着装置20は、オイルレス定着方式の構成にすることもできる。この場合に、定着装置20は、オイルを補給することなく、ホットオフセット現象が発生するのを防止することができる。
なお、図1に示す例では、搬送路6は、定着装置20の下流で、用紙Pをスタッカ42に搬送するための排出経路6aと、両面印刷時に用紙Pを反転させて現像装置10Kの手前の位置に戻すための反転経路6bとに分岐している。また、反転経路6bは、さらに、用紙Pを反転用空間6cに一時的に繰り出すための一時繰出経路6baと、用紙Pを反転用空間6cから現像装置10Kの手前の位置に戻すための戻し経路6bbとに分岐している。なお、「反転用空間6c」は、用紙Pを反転させるために設けられた空間である。反転用空間6cは、転写ベルト32と用紙カセット41との間に、設けられている。「戻し経路6bb」は、その反転用空間6cの上方に、設けられている。用紙Pは、一旦、反転用空間6cに搬送された後に、戻し経路6bbに搬送されることによって、反転された状態となる。
排出経路6aと反転経路6bとの分岐箇所には、可動式の用紙走行ガイド35aが設けられている。プリンタ1は、用紙走行ガイド35aの向きを切り替えることによって、用紙Pの走行経路を排出経路6a及び反転経路6bのいずれか一方に切り替える。また、反転経路6bの一時繰出経路6baと戻し経路6bbとの分岐箇所には、可動式の用紙走行ガイド35bが設けられている。プリンタ1は、両面印刷時に、反転経路6bが開放されるように、用紙走行ガイド35aの向きを上方向に向けるとともに、反転経路6bの一時繰出経路6baが開放されるように、用紙走行ガイド35bの向きを下方向に向けた状態で、用紙Pを搬送して、用紙Pを反転用空間6cに一旦搬送する。この後、プリンタ1は、反転経路6bの一時繰出経路6baと戻し経路6bbとが連結されるように、用紙走行ガイド35bの向きを上方向に向けた状態で、用紙Pを搬送して、用紙Pを反転用空間6cから現像装置10Kの手前の位置に戻す。
なお、プリンタ1は、現像装置10の感光体ドラム11(図2参照)の周囲に、露光装置13を有している。露光装置13は、上位装置2(図3参照)から送信される印刷データに基づいて、感光体ドラム11の表面に静電潜像を形成する潜像形成手段である。露光装置13は、印刷データに基づいて、一様に帯電された感光体ドラム11の表面に、光を部分的に照射する。これによって、露光装置13は、感光体ドラム11の表面に静電潜像を形成する。ここでは、露光装置13としてLEDヘッドを想定して説明する。以下、露光装置13を「LEDヘッド13」と称する場合もある。
なお、図1に示す例では、プリンタ1は、4つの現像装置10K,10Y,10M,10Cを有している。そのため、プリンタ1は、4つの現像装置10K,10Y,10M,10Cに対応して4つのLEDヘッド13K,13Y,13M,13Cを有している。
以下、図2を参照して、現像装置10の詳細な構成につき説明する。なお、ここでは、現像剤として、以下の特性のトナーTNを用いるものとして、説明する。以下、現像剤を「トナーTN」と称する。トナーTNは、粉砕法により得られた平均粒子径が「5.8(μm)」程度の樹脂粒子となっている。トナーTNは、結着樹脂としてポリエステル樹脂を用い、内部添加剤として帯電制御剤、離型剤、及び、着色剤を用い、外部添加剤としてシリカを用いている。トナーTNは、一般的な「1010(Ω・cm)」以上の体積抵抗率を有する絶縁性の現像剤となっている。ここでは、プリンタ1は、マイナス帯電のトナーTNを用いて、反転現像を行うものとする。
図2は、現像装置10の構成を示している。図2に示すように、現像装置10は、感光体ドラム11を有している。感光体ドラム11は、表面に、静電潜像及び現像剤像が形成される像担持体である。感光体ドラム11は、中空円筒状の導電性支持体の表面を、光導電層で被覆することによって、形成される。導電性支持体は、例えば、アルミニウム等の金属材によって構成されている。光導電層は、電荷発生層と電荷輸送層とが順次積層された有機系感光体によって構成されている。感光体ドラム11は、駆動用の図示せぬギヤを備えており、ギヤを介して伝達されるモータ78(図3参照)からの回転駆動力によって回転する。なお、図示例では、感光体ドラム11の回転方向は、時計周り方向となっている。
その感光体ドラム11の周囲には、帯電ローラ12、LEDヘッド13、現像ローラ14、転写ローラ34、及び、クリーニングブレード17が設けられている。さらに、現像ローラ14の周囲には、供給ローラ15及び層形成ブレード16が設けられている。
帯電ローラ12は、感光体ドラム11の表面を一様に帯電させるための帯電部材である。帯電ローラ12は、例えば、金属シャフトの表面を、半導電性エピクロロヒドリンゴム層で被覆した構成となっている。帯電ローラ12は、帯電電圧電源61によって、例えば、−1200〜0(V)の電圧が印加されて、マイナスに帯電する。以下、帯電ローラ12に印加する電圧を他の電圧と区別する場合に、「帯電電圧」と称する。帯電ローラ12は、感光体ドラム11と当接しており、感光体ドラム11との摩擦力により、感光体ドラム11の回転に連れ回されて回転する。なお、図示例では、帯電ローラ12の回転方向は、反時計周り方向となっている。
LEDヘッド13は、前記した通り、感光体ドラム11の表面に静電潜像を形成する潜像形成手段である。LEDヘッド13は、帯電ローラ12と現像ローラ14との間で、感光体ドラム11と対向するように、配置されている。LEDヘッド13は、上位装置2から送信される印刷データに基づいて、帯電ローラ12によって一様に帯電された感光体ドラム11の表面に、光を部分的に照射する。これによって、LEDヘッド13は、感光体ドラム11の表面に静電潜像を形成する。なお、プリンタ1は、LEDヘッド13の代わりに、レーザ光源等を用いる構成にすることもできる。
現像ローラ14は、表面に、現像剤を担持する現像剤担持体である。現像ローラ14は、感光体ドラム11に現像剤を供給するために現像剤を担持する。現像ローラ14は、例えば、金属シャフトの表面を、半導電性ウレタンゴム層で被覆した構成となっている。現像ローラ14は、現像電圧電源62によって、例えば、−450〜0(V)の電圧が印加されて、マイナスに帯電する。以下、現像ローラ14に印加する電圧を他の電圧と区別する場合に、「現像電圧」と称する。現像ローラ14は、感光体ドラム11と当接している。現像ローラ14は、駆動用の図示せぬギヤを備えており、ギヤを介して伝達されるモータ78(図3参照)からの回転駆動力によって回転する。これにより、現像ローラ14は、トナーTNを現像ローラ14と感光体ドラム11との間の当接部(以下、「現像部」と称する)に搬送し、トナーTNを感光体ドラム11の表面に形成された静電潜像に付着させて、静電潜像をトナー像として現像(可視像化)する。なお、現像ローラ14は、現像ローラ14と感光体ドラム11との間の当接部の進行方向が互いに同じ向きになるように、現像ローラ14と逆方向(図示例では、反時計周り方向)に回転する。現像ローラ14は、感光体ドラム11との相対速度や向きをかえて使用することもできる。
転写ローラ34は、前記した通り、感光体ドラム11の表面に形成された現像剤像を、用紙Pに転写するための転写部材である。転写ローラ34は、金属シャフトの表面を、半導電性ウレタンスポンジ層で被覆した構成となっている。転写ローラ34は、転写電圧電源65によって、例えば、+3000(V)の電圧が印加されて、プラスに帯電する。以下、転写ローラ34に印加する電圧を他の電圧と区別する場合に、「転写電圧」と称する。転写ローラ34は、感光体ドラム11と当接している。転写ローラ34は、駆動用の図示せぬギヤを備えており、ギヤを介して伝達されるモータ78(図3参照)からの回転駆動力によって回転する。これにより、転写ローラ34は、用紙Pを搬送しながら、感光体ドラム11上のトナー像を引き寄せて、トナー像を感光体ドラム11から用紙Pに転写する。なお、図示例では、転写ローラ34の回転方向は、反時計周り方向となっている。
クリーニングブレード17は、トナー像の用紙Pへの転写後に、感光体ドラム11の表面に付着している現像剤を回収するための現像剤回収部材である。クリーニングブレード17は、感光体ドラム11と当接するように、配置されている。クリーニングブレード17は、感光体ドラム11がクリーニングブレード17と当接した状態で回転することにより、感光体ドラム11の表面に付着したトナーTNを感光体ドラム11から掻き落とす。クリーニングブレード17は、ウレタンゴムによって構成されている。
供給ローラ15は、現像ローラ14にトナーTNを供給するための現像剤供給体である。供給ローラ15は、金属シャフトの表面を、発泡した半導電性シリコンゴム層で被覆した構成となっている。供給ローラ15は、現像ローラ14に対して、押し込まれた状態で配置されている。供給ローラ15は、供給電圧電源63によって、現像ローラ14と略同一の値の電圧が印加されて、マイナスに帯電する。以下、供給ローラ15に印加する電圧を他の電圧と区別する場合に、「供給電圧」と称する。供給ローラ15は、駆動用の図示せぬギヤを備えており、ギヤを介して伝達されるモータ78(図3参照)からの回転駆動力によって回転する。このとき、供給ローラ15は、供給ローラ15と現像ローラ14との間の当接部(以下、「供給領域」と称する)の進行方向が互いに逆向きになるように、現像ローラ14と同方向に回転する。
層形成ブレード16は、現像ローラ14の表面に付着したトナーTNの層厚を一定に調整して、トナーTNの薄層(以下、「トナー層」と称する)を現像ローラ14上に形成する薄層形成器である。層形成ブレード16は、金属材によって構成されており、先端が湾曲した形状となっている。層形成ブレード16は、層形成電圧電源64によって、現像ローラ14と略同一の値の電圧が印加されて、マイナスに帯電する。以下、層形成ブレード16に印加する電圧を他の電圧と区別する場合に、「層形成電圧」と称する。
係る構成において、図1に示す例では、感光体ドラム11は、時計周り方向に回転し、帯電ローラ12、現像ローラ14、供給ローラ15、及び、転写ローラ34は、反時計周り方向に回転する。
なお、図2に示すように、現像装置10は、電流測定部51を有している。
電流測定部51は、高圧電源62(現像電圧電源62)と現像ローラ14との間の導電経路で、現像ローラ14から高圧電源62の方向に流れる電流I1(以下、「現像ローラ14の導電経路で流れる電流I1」と称する)の値を測定する電流測定手段である。
また、図2に示すように、プリンタ1は、高圧電源61〜65を有している。なお、図2に示す例では、高圧電源61〜65は、それぞれが独立した構成要素となっているが、共通の構成要素として統合することも可能である。以下、高圧電源61〜65を総称する場合に、「高圧電源77(図3及び図4参照)」と称する。
高圧電源61は、感光体ドラム11を帯電させるための高電圧を帯電ローラ12に印加する電源である。以下、高圧電源61を他の高圧電源62,63,64,65と区別する場合に、「帯電電圧電源61」と称する。
高圧電源62は、トナーTNを現像ローラ14から感光体ドラム11まで移動させるための高電圧を現像ローラ14に印加する電源である。以下、高圧電源62を他の高圧電源61,63,64,65と区別する場合に、「現像電圧電源62」と称する。
高圧電源63は、トナーTNを帯電させるための高電圧を供給ローラ15に印加する電源である。以下、高圧電源63を他の高圧電源61,62,64,65と区別する場合に、「供給電圧電源63」と称する。
高圧電源64は、トナー層を現像ローラ14上に形成するための高電圧を層形成ブレード16に印加する電源である。層形成ブレード16は、電圧が印加されることによって、層形成ブレード16を通過できるトナーTNの帯電量を選択したり、電圧をトナーTNにかけてトナーTNの摩擦帯電を促したりすることができる。高圧電源64は、このような作用を得るために、高電圧を層形成ブレード16に印加する。以下、高圧電源64を他の高圧電源61,62,63,65と区別する場合に、「層形成電圧電源64」と称する。
高圧電源65は、トナー像を感光体ドラム11から用紙Pに転写させるための高電圧を転写ローラ34に印加する電源である。以下、高圧電源65を他の高圧電源61,62,63,64と区別する場合に、「転写電圧電源65」と称する。
以下、図3〜図5を参照して、プリンタ1の制御系の構成につき説明する。
図3は、プリンタ1の制御系の構成を示している。図3に示すように、プリンタ1は、プリンタ1に対して、印刷データ及び制御コマンドを送信する上位装置2と接続されている。接続は、例えば、USB(Universal Sirial Bus)等のケーブルやLAN(Local Area Network)等のネットワークによって、行われる。
プリンタ1は、印刷制御部71、主記憶部72、高圧電源制御部73、露光制御部74、モータ制御部75、環境測定部76、電流測定部51、高圧電源61〜65、LEDヘッド13、及び、モータ78を有している。
印刷制御部71は、プリンタ1の全体の動作を制御して、印刷を実行する機能手段である。印刷制御部71は、CPUや、インタフェース等によって構成されている。印刷制御部71は、電流測定部51、主記憶部72、高圧電源制御部73、露光制御部74、モータ制御部75、及び、環境測定部76に接続されている。
なお、印刷制御部71は、電圧条件決定部71aとしても機能する。電圧条件決定部71aは、供給ローラ15及び層形成ブレード16に印加する電圧を出力補正条件とし、その出力補正条件を決定する出力補正条件決定部である。
主記憶部72は、制御条件を記憶する記憶手段である。主記憶部72は、ROMや、RAM等によって構成されている。主記憶部72は、制御条件として、例えば、現像ローラ14の周速S(m/s)、及び、現像ローラ14の軸方向の長さL(m)を記録している。なお、「周速S」は、「回転速度×軸径」によって算出される。
高圧電源制御部73は、帯電ローラ12、現像ローラ14、供給ローラ15、層形成ブレード16、及び、転写ローラ34(図2参照)への印加電圧を制御する機能手段である。
露光制御部74は、LEDヘッド13の動作を制御する機能手段である。
モータ制御部75は、感光体ドラム11等を駆動するモータ78の動作を制御する機能手段である。
環境測定部76は、プリンタ1の使用環境の温度及び湿度を測定する測定手段である。
モータ78は、感光体ドラム11等を駆動する駆動源である。
図4は、プリンタ1の高圧電源周りの構成を示している。図4に示すように、プリンタ1は、高圧電源周りの構成として、高圧電源制御部73を有している。高圧電源制御部73は、帯電電圧制御部81、現像電圧制御部82、供給電圧制御部83、層規制電圧制御部84、及び、転写電圧制御部85として機能する。
帯電電圧制御部81は、帯電電圧電源61から帯電ローラ12への印加電圧を制御する機能手段である。
現像電圧制御部82は、現像電圧電源62から現像ローラ14への印加電圧を制御する機能手段である。
供給電圧制御部83は、供給電圧電源63から供給ローラ15への印加電圧を制御する機能手段である。
層規制電圧制御部84は、層形成電圧電源64から層形成ブレード16への印加電圧を制御する機能手段である。
転写電圧制御部85は、転写電圧電源65から転写ローラ34への印加電圧を制御する機能手段である。
図5は、電流測定部51の詳細な構成を示している。
図5に示すように、電流測定部51は、基準抵抗器R0、差動増幅回路91、反転増幅回路92、及び、A/D(アナログ/デジタル)変換部93を備えている。なお、差動増幅回路91は、比較器91a、及び、抵抗器R1,R2,R4,R6を備えている。また、反転増幅回路92は、比較器92a、及び、抵抗器R3,R5,R7を備えている。
基準抵抗器R0は、図2に示す現像電圧電源62と現像ローラ14との間の導電経路の途中に接続される。基準抵抗器R0の抵抗値は、例えば、10(kΩ)となっている。
基準抵抗器R0と現像ローラ14との間の接続端には、抵抗器R1の一端が接続されている。その抵抗器R1の他端は、比較器91aの反転入力端(−)に接続されている。また、基準抵抗器R0と現像電圧電源62との間の接続端には、抵抗器R2の一端が接続されている。その抵抗器R2の他端は、比較器91aの非反転入力端(+)に接続されている。抵抗器R1及び抵抗器R2の抵抗値は、それぞれ、例えば、100(kΩ)となっている。
抵抗器R1の他端と比較器91aの反転入力端との間には、抵抗器R4の一端が接続されている。その抵抗器R4の他端は、比較器91aの出力端に接続されている。抵抗器R4の抵抗値は、例えば、200(kΩ)となっている。
抵抗器R2の他端と比較器91aの非反転入力端との間には、抵抗器R6の一端が接続されている。その抵抗器R6の他端は、接地されている。抵抗器R6の抵抗値は、例えば、200(kΩ)となっている。
比較器91aの出力端には、抵抗器R3の一端が接続されている。その抵抗器R3の他端は、比較器92aの反転入力端(−)と接続されている。抵抗器R3の抵抗値は、例えば、10(kΩ)となっている。
抵抗器R3の他端と比較器92aの反転入力端との間には、抵抗器R5の一端が接続されている。その抵抗器R5の他端は、比較器92aの出力端に接続されている。抵抗器R5の抵抗値は、例えば、100(kΩ)となっている。
比較器92aの非反転入力端との間には、抵抗器R7の一端が接続されている。その抵抗器R7の他端は、接地されている。抵抗器R7の抵抗値は、例えば、100(kΩ)となっている。
電流測定部51は、基準抵抗器R0の両端の電圧を差動増幅回路91によって差動増幅し、さらに、差動増幅回路91の出力電圧を反転増幅回路92によって反転増幅する。そして、電流測定部51は、反転増幅回路92の出力電圧をA/D変換部93によってデジタル変換して、現像電圧制御部82(図4参照)に出力する。図5に示される例では、例えば、1(μA)の電流が現像ローラ14の導電経路で流れた場合に、基準抵抗器R0の両端の電圧が10(mV)となる。電流測定部51は、その基準抵抗器R0の両端にかかる電圧を差動増幅回路91によって2倍に増幅し、さらに、反転増幅回路92によって10倍に増幅する。その結果、反転増幅回路92の出力電圧は、200(mV)となる。
<画像形成装置の動作>
係る構成において、プリンタ1は、現像ローラ14上に形成されるトナー層の層厚を適切に制御しながら、印刷処理を行う。
以下、図1を参照して、プリンタ1の動作につき説明する。
プリンタ1は、上位装置2から印刷データを受信すると、印刷処理を行う。このとき、プリンタ1は、帯電ローラ12が感光体ドラム11の表面を一様に帯電するとともに、LEDヘッド13が印刷データに基づいて発光して、帯電された感光体ドラム11の表面を部分的に露光する。これにより、プリンタ1は、感光体ドラム11の表面に静電潜像を形成する。
また、このとき、プリンタ1は、供給ローラ15がトナーTNを現像ローラ14に供給するとともに、層形成ブレード16が現像ローラ14の表面に付着したトナーTNの層厚を一定に調整する。これにより、プリンタ1は、摩擦帯電されたトナー層を現像ローラ14上に形成する。
そして、現像ローラ14上に形成されたトナー層は、現像ローラ14の回転に伴って、現像部(現像ローラ14と感光体ドラム11との間の当接部)に到達すると、感光体ドラム11と接触する。このとき、トナーTNは、静電効果によって、現像ローラ14から感光体ドラム11の表面に形成された静電潜像上に移動する。これによって、プリンタ1は、感光体ドラム11の表面に形成された静電潜像をトナー像として現像(可視像化)する。
この後、プリンタ1は、搬送ローラ31及び転写ベルト32によって用紙Pを搬送しながら、転写ローラ34によってトナー像を感光体ドラム11から用紙Pに転写する。そして、プリンタ1は、定着装置20によって用紙Pを加熱及び加圧して、トナー像を溶融させて、トナー像を用紙Pに定着させる。
<汚れの発生を抑制するための構成>
ところで、特許文献1に開示された画像形成装置は、現像に関する各部材(具体的には、感光体ドラム11や、現像ローラ14、供給ローラ15、層形成ブレード16等)の物性値に変動があると、現像ローラ14の表面に付着するトナーTNの過剰帯電や現像ローラ14上に形成されるトナー層の層厚の増大を十分に抑制することができず、その結果、現像に関する各部材の物性値の変動に起因して、汚れが発生する場合がある、という課題があった。
そこで、プリンタ1は、このような汚れの発生を抑制するために、現像ローラ14の周速をS(m/s)とし、現像ローラ14の軸方向の長さをL(m)とする場合に、現像部(現像ローラ14と感光体ドラム11との間の当接部)で流れる電流Iが、「0 < I < 4.5×10−4×(S×L)」の関係を満たす構成となっている。
この「0 < I < 4.5×10−4×(S×L)」という関係は、現像に関する各部材の物性値に変動があっても、現像ローラ14の表面に付着するトナーTNの過剰帯電や現像ローラ14上に形成されるトナー層の層厚の増大を抑制することができるように、以下の実験データに基づいて、導出された関係である。
以下、実験の詳細について、説明する。実験は、プリンタ1を用いて、現像ローラ14に印加する電圧の値を変化させて、印刷濃度「0%duty」の印刷処理(すなわち、まったく印刷せずに、用紙Pの搬送のみを実行する通紙処理)を行い、その際に、用紙Pの表面に付着する汚れの有無を評価することによって、行った。
帯電ローラ12、現像ローラ14、供給ローラ15、層形成ブレード16、及び、転写ローラ34の印加電圧値は、それぞれ、例えば、以下の範囲で設定される。
・帯電ローラ12 :−1200〜0(V)。
・現像ローラ14 : −450〜0(V)。
・供給ローラ15 :現像ローラ14と同電圧。
・層形成ブレード16:現像ローラ14と同電圧。
・転写ローラ34 :+3000(V)。
なお、実験では、プリンタ1は、現像部(現像ローラ14と感光体ドラム11との間の当接部)で流れる電流Iが現像ローラ14の導電経路で流れる電流I1(現像ローラ14から現像電圧電源62の方向に流れる電流I1)と等価な値の電流(すなわち、「I=I1」)として測定できるように、現像ローラ14、供給ローラ15、及び、層形成ブレード16の電位が略同電位に設定されていた。
具体的には、帯電ローラ12、現像ローラ14、供給ローラ15、層形成ブレード16、及び、転写ローラ34の印加電圧値は、それぞれ、例えば、以下の値に設定されていた。なお、電圧値の許容範囲は、電圧の絶対値が1000(V)を超過する場合に、±10(V)に設定し、電圧の絶対値が1000(V)以下の場合に、±5(V)に設定した(以下、同様)。
・帯電ローラ12 :−1200±10(V)。
・現像ローラ14 : −190±5(V)。
・供給ローラ15 : −190±5(V)。
・層形成ブレード16: −190±5(V)。
・転写ローラ34 :+3000±10(V)。
なお、実験時のプリンタ1の使用環境は、温度が20℃で、湿度が40%であった。
また、実験は、プリンタ1の印刷速度を変更して、3通り行われた。その実験では、プリンタ1の印刷速度を、それぞれ、「0.02(m/s)」、「0.12(m/s)」、及び、「0.20(m/s)」に設定した。
実験では、以上の設定において、プリンタ1は、坪量「80(g/m2)」のA4サイズの標準紙(例えば、沖データ社製のOKIエクセレントホワイト紙)を縦方向(4辺のうち、短い2辺が前端及び後端になる方向)に搬送して、「0%duty」で通紙処理を行った。
なお、「duty」は、印刷濃度を示している。「duty」は、用紙Pの印刷可能範囲に対して、全面ベタ印刷する場合(すなわち、面積率100%で印刷する場合)に、値が100%となる。「0%duty」は、まったく印刷せずに、用紙Pの搬送のみを実行する場合の印刷濃度となる。したがって、実験では、上位装置2は、「0%duty」の印刷データを、プリンタ1に送信している。
プリンタ1は、マイナス帯電のトナーTNを用いて反転現像を行う場合に、帯電ローラ12によって感光体ドラム11の表面をマイナスに帯電させる。
そして、プリンタ1は、印刷データに基づいて、LEDヘッド13によって感光体ドラム11の表面の印字部を露光して、印字部の電荷を中和する。すなわち、プリンタ1は、感光体ドラム11の表面の印字部を露光部とし、その印字部の電位を、おおむねゼロとし、一方、感光体ドラム11の非印字部を非露光部とし、その非印字部の電位を、帯電ローラ12によって帯電されたマイナスの電位のままとする。ただし、実験では、印刷データが「0%duty」の印刷を指示する内容となっているため、LEDヘッド13は、実際には、発光しない。
プリンタ1は、トナーTNがマイナスに帯電されている場合で、かつ、マイナスの電圧が印加された現像ローラ14のマイナスの電位と現像ローラ14上に形成されたトナー層のマイナスの電位との和が感光体ドラム11のマイナスの電位よりも大きくなる場合に、感光体ドラム11側から現像ローラ14側に向かう電界が形成される。
すると、マイナスに帯電しているトナーTNは、形成された電界からクーロン力を受けて、現像ローラ14から感光体ドラム11に移動する。このとき、トナーTNが過剰帯電したり、現像ローラ14上に形成されたトナー層の層厚が増大して規定された厚さを超えたりすると、汚れが発生する。
ただし、プリンタ1は、汚れが発生しないための条件として、感光体ドラム11の表面上の電位をVopc、現像ローラ14の電位をVdv、及び、トナー層の電位をVtonerとし、以下の式1を満たす場合に、汚れが生じることはない。
|Vopc| > |Vdv+Vtoner| ……(式1)
なお、Vdv及びVtonerの和とVopcとの差分を「δV」とすると、式1から以下の式2が得られる。
δV=|Vdv+Vtoner|−|Vopc| < 0 ……(式2)
したがって、差分δVは、「δV < 0」の関係となっている。
ここで、図6を参照して、電流密度J(A/m2)と差分δVとの関係について考察する。なお、図6は、横軸を電流密度J(A/m2)とし、縦軸を差分δVとして、通紙処理を行った場合の評価結果を図形出力したデータを示している。
ここで、電流密度J(A/m2)は、現像部(現像ローラ14と感光体ドラム11との間の当接部)で流れる電流I(A)を、「現像部の面積」で割った値である。なお、現像部の面積は、現像ローラ14と感光体ドラム11とが線接触していると見なした場合に、現像ローラ14は、横方向に「L」の長さで接触しながら、1秒間に縦方向に「S×1」の距離を進むため、1秒間あたりの接触面積が「(S×1×L)」として算出される。したがって、電流密度Jは、以下の式3によって、その相当値を得ることができる。
J=I/(S×1×L)=I/(S×L) ……(式3)
ここで、図6に示す評価結果データに対して最小二乗法を用いて線形近似を行うと、近似直線1を表す式として以下の近似式1が得られる。
δV=−4.0×105×J+180 ……(近似式1)
さらに、ここで、「式2」及び「近似式1」の2式を用いると、以下の式4が得られる。
−4.0×105×J+180 < 0 ……(式4)
この式4を変形すると、以下の電流密度Jに関する式5が得られる。
J < −180/−4.0×105
J < 4.5×10−4 ……(式5)
さらに、「式3(J=I/(S×L))」及び「式5」の2式を用いると、以下の式6が得られる。
I/(S×L) < 4.5×10−4
I < 4.5×10−4×(S×L) ……(式6)
なお、電流Iは、マイナス帯電のトナーTNを現像ローラ14から感光体ドラム11に移動させるために、「0(V)」よりも高く設定される。そのため、電流Iに関する式として、以下の式6bが得られる。
0 < I < 4.5×10−4×(S×L) ……(式6b)
プリンタ1の印刷制御部71は、汚れの発生を抑制するために、電流Iがこの式6bの関係を満たすように、現像に関する各部材への印加電圧を制御する必要がある。なお、本実施形態1では、電流Iは、電流I1と等価な値になる。
ここで、図7を参照して、現像ローラ14上に形成されたトナー層の層厚について考察する。なお、図7は、横軸を電流密度J(A/m2)とし、縦軸を現像ローラ14上に形成されたトナー層を構成するトナーTNの単位面積あたりの重量(以下、「付着量」と称する)M(mg/cm2)として、通紙処理を行った場合の評価結果を図形出力したデータを示している。
図7に示す評価結果データは、領域R1では、目立った汚れが発生しないものの、付着量Mが増加することを示している。そのため、現像部(現像ローラ14と感光体ドラム11との間の当接部)で、現像ローラ14から感光体ドラム11に移動するトナーTNの量が多くなる可能性がある。そこで、図7に示す評価結果データに対して最小二乗法を用いて線形近似を行うと、付着量Mがほとんど変化しない近似直線2を表す式として、以下の近似式2が得られ、また、付着量Mが大きく変化する近似直線3を表す式として、以下の近似式3が得られる。
M=0.43 ……(近似式2)
M=1.3×103×J+0.36 ……(近似式3)
さらに、近似式2及び近似式3の2式を用いると、以下の式7が得られる。
0.43=1.3×103×J+0.36
J=5.38×10−5 ……(式7)
したがって、図7を参照すると、電流密度Jが「5.38×10−5」(A/m2)よりも低い場合に、トナー層を構成するトナーTNの単位面積あたりの付着量Mの増加が発生しないことが分かる。よって、プリンタ1は、以下の式8の関係を満たしている場合に、付着量Mの増加が発生しなくなる。
J < 5.38×10−5 ……(式8)
ここで、「式3(J=I/(S×L))」及び「式8」の2式を用いると、以下の式9が得られる。
I < 5.38×10−5×(S×L) ……(式9)
ここで、図8を参照して、現像部の電位差によって発生する電流Iの値について考察する。なお、図8は、横軸を現像部の電位差(V)とし、縦軸を電流密度J(A/m2)として、通紙処理を行った場合の評価結果を図形出力したデータを示している。
電流測定部51は、現像部の電位差が0(V)である場合であっても、電流Iと等価な値の電流として電流I1を測定する。これは、トナーTNが感光体ドラム11と現像ローラ14との間で摩擦され、その摩擦によって電流Ifが発生するからである。なお、摩擦によって流れる電流は、電位差を付けなくても流れる。そのため、このとき測定される電流Iは、電位差で生じる電流を「ΔI」とする場合に、「I=If+ΔI」となる。その結果、このとき測定される電流I1は、「I>If」となり、電流Ifよりも大きくなる。そのため、この場合に、電流測定部51によって測定される電流I1と等価な値の電流である電流Iは、以下の式10のようになる。
If < I ……(式10)
なお、電流Ifは、「0(V)」よりも高くなる。そのため、電流Ifに関する式として、以下の式10bが得られる。
0 < If < I ……(式10b)
ここで、「式6b(0 < I < 4.5×10−4×(S×L))」と「式10b」とを用いると、汚れの発生を抑制するための条件として、以下の式11が得られる。
0 < If < I < 4.5×10−4×(S×L) ……(式11)
プリンタ1は、連続印刷を行う場合に、このようにして得られた式11の条件に基づいて、図9に示すような制御を行う。これによって、プリンタ1は、汚れの発生を抑制することができる。
なお、図9は、実施形態1に係る画像形成装置の動作を示すフローチャートである。
プリンタ1は、上位装置2から印刷データを受信すると、印刷処理を開始する。このとき、まず、印刷制御部71は、定着装置20(図1参照)への電圧印加の開始を高圧電源制御部73(図3参照)に指示する。これに応答して、高圧電源制御部73が、高圧電源77に、定着装置20への電圧印加を開始させる。
次に、印刷制御部71は、環境測定部76に使用環境の温度及び湿度の測定を行わせる。環境測定部76は、図示せぬ環境センサによってプリンタ1の使用環境の温度及び湿度を測定し、環境測定値を主記憶部72に記憶させる。これによって、プリンタ1は、環境設定を行う(S105)。
続いて、印刷制御部71の電圧条件決定部71aは、環境測定部76によって測定された環境測定値に応じて、主記憶部72に初期値として予め登録された現像ローラ14への印加電圧値に対する補正値を決定する。
ここでは、主記憶部72は、帯電ローラ12、現像ローラ14、供給ローラ15、層形成ブレード16、及び、転写ローラ34の印加電圧値の初期値として、それぞれ、以下の値が予め設定されているものとして説明する。
・帯電ローラ12 :−1200±10(V)。
・現像ローラ14 : −190±5(V)。
・供給ローラ15 : −190±5(V)。
・層形成ブレード16: −190±5(V)。
・転写ローラ34 :+3000±10(V)。
なお、補正値の決定は、電圧条件決定部71aが、使用環境の温度及び湿度に対応して現像ローラ14に印加する印加電圧値を規定するテーブルデータ(以下、「印加電圧テーブルデータ」と称する)を保持しており、その印加電圧テーブルを参照することによって、環境測定部76によって測定された使用環境の温度及び湿度に基づいて、行われる。
印刷制御部71は、電圧条件決定部71aによって現像ローラ14への印加電圧値に対する補正値が決定されると、現像ローラ14への印加電圧値に対して補正値を加算して、補正後の現像ローラ14への印加電圧値を算出し、さらに、補正後の現像ローラ14への印加電圧値と同一の電圧値を、補正後の供給ローラ15への印加電圧値及び補正後の層形成ブレード16への印加電圧値とし、これら3つの補正後の印加電圧値を主記憶部72に設定登録する(S110)。
なお、通常の使用環境(例えば、温度が「20℃」でかつ湿度が「40%」となる使用環境)では、印加電圧テーブルデータ上の電圧補正値は、「0(V)」として規定されている。そのため、通常の使用環境では、このとき設定される補正後の各部材14,15,16への印加電圧値は、主記憶部72に予め登録された初期値(例えば、「−190(V)」)と同じ値となる。
次に、印刷制御部71は、所望の回転速度でのモータ78の回転開始をモータ制御部75に指示するとともに、主記憶部72からS110で設定登録された3つの補正後の印加電圧値を読み出して、電圧印加の開始を高圧電源制御部73に指示する。これに応答して、モータ制御部75が、モータ78の回転を開始させるとともに、高圧電源制御部73が、主記憶部72から読み出されたS110で設定登録された3つの補正後の印加電圧値に基づいて、高圧電源77に、各部材14,15,16への電圧印加を開始させる(S115)。なお、このとき、帯電ローラ12には、主記憶部72に予め登録された初期値の電圧(例えば、「−1200(V)」)が印加される。
そして、印刷制御部71は、電流測定部51によって、現像部で流れる電流Iと等価な値の電流として、電流I1の値を測定する(S120)。
なお、プリンタ1は、好ましくは、たとえ電流I(ここでは、電流Iと等価な値の電流I1)を測定するときの電圧印加状態と図6〜図8に示す評価結果データを得たときの電圧印加状態とが異なる場合であっても、電流Iを測定するときの現像部の電位差と図6〜図8に示す評価結果データを得たときの現像部の電位差とが、等価になるようにするとよい。
この点について、以下に詳述する。
現像部で流れる電流Iは、オームの法則により、I=(V/R)として定義される。ここで、Vは電位差であるため、たとえ電流Iを測定するときの電圧印加状態と図6〜図8に示す評価結果データを得たときの電圧印加状態とが異なる場合であっても成立する。
例えば、仮に、以下の第1のケース及び第2のケースを想定するものとする。
(第1のケース)
・現像ローラ14の印加電圧Vdv :−300(V)。
・感光体ドラム11の電位Vopc :−450(V)。
・現像部の電位差(Vdv−Vopc): 150(V)。
(第2のケース)
・現像ローラ14の印加電圧Vdv :−200(V)。
・感光体ドラム11の電位Vopc :−350(V)。
・現像部の電位差(Vdv−Vopc): 150(V)。
第1のケースでは、現像ローラ14の印加電圧Vdvが「−300(V)」となっており、また、感光体ドラム11の電位Vopcが「−450(V)」となっている。そのため、第1のケースでは、現像部の電位差(Vdv−Vopc)が「150(V)」となる。
一方、第2のケースでは、現像ローラ14の印加電圧Vdvが「−200(V)」となっており、また、感光体ドラム11の電位Vopcが「−350(V)」となっている。そのため、第2のケースでは、第1のケースと同様に、現像部の電位差(Vdv−Vopc)が「150(V)」となる。
したがって、第1のケース及び第2のケースでは、現像部の電位差(Vdv−Vopc)が、ともに、「150(V)」となっており、等価な状態となっている。
プリンタ1は、好ましくは、電流Iを測定するときの現像部の電位差と図6〜図8に示す評価結果データを得たときの現像部の電位差とが、等価になるようにするとよい。
印刷制御部71は、電流測定部51によって電流Iと等価な値の電流として電流I1の値が測定されると、主記憶部72から現像ローラ14の周速S及び現像ローラ14の軸方向の長さLの値を読み出し、電流測定部51によって測定された電流I1の値を「I1=I」と見なし、この電流Iの値を参照して、「式3(J=I/(S×L))」に基づいて、電流密度J(相当値)を算出し、算出された電流密度J(相当値)が式5によって規定された「4.5×10−4」(A/m2)未満であるか否かを判定する(S125)。
S125の判定で、算出された電流密度J(相当値)が「4.5×10−4」(A/m2)以上である場合(“No”の場合)に、印刷制御部71は、帯電電圧制御部81(図4参照)に対して印加中の帯電電圧の電圧値を降下させる指示を出力する(S130)。これに応答して、帯電電圧制御部81は、帯電電圧電源61から帯電ローラ12に印加中の帯電電圧の電圧値を降下させる。この後、処理は、S115に戻る。その結果、印刷制御部71は、S115で、帯電電圧電源61の電圧を降下させた状態でモータ78を回転させて、S120で、再度、電流測定部51によって、現像部で流れる電流Iと等価な値の電流として、電流I1の値を測定させる。
一方、算出された電流密度J(相当値)が「4.5×10−4」(A/m2)未満である場合(“Yes”の場合)に、印刷制御部71は、環境測定部76によって測定された環境測定値に応じて補正された、補正後の供給ローラ15への印加電圧値の電圧及び補正後の層形成ブレード16への印加電圧値の電圧を、それぞれ、供給ローラ15及び層形成ブレード16に印加する。
このとき、印刷制御部71の電圧条件決定部71aは、環境測定部76によって測定される現在の環境測定値に応じて、S110で主記憶部72に設定登録された供給ローラ15の印加電圧値及び層形成ブレード16の印加電圧値に対する各補正値を決定する。印刷制御部71は、電圧条件決定部71aによって供給ローラ15の印加電圧値及び層形成ブレード16の印加電圧値に対する補正値が決定されると、供給ローラ15の印加電圧値及び層形成ブレード16の印加電圧値に対して各補正値を加算して、補正後の供給ローラ15への印加電圧値及び補正後の層形成ブレード16への印加電圧値を算出し、これら補正後の印加電圧値を主記憶部72に設定登録する(S135)。
なお、通常の使用環境(例えば、温度が「20℃」でかつ湿度が「40%」となる使用環境)では、印加電圧テーブルデータ上の電圧補正値は、「0(V)」として規定されている。そのため、通常の使用環境では、このとき設定される補正後の各部材14,15,16への印加電圧値は、主記憶部72に予め登録された初期値と同じ値となる。
この後、印刷制御部71が、供給ローラ15及び層形成ブレード16への印加電圧値が主記憶部72に設定登録された補正後の印加電圧値となるように、高圧電源制御部73に対して、電圧の補正指示を出力する。これに応答して、印刷制御部71が、供給ローラ15及び層形成ブレード16への印加電圧値を変化させる。
したがって、プリンタ1は、電流測定時に、所定の電圧を各部材12,14,15,16に印加し、その後も、現像に関する各部材に電圧を印加し続けて、電流密度J(相当値)が閾値「4.5×10−4」(A/m2)を下回った場合に、各部材15,16への印加電圧値を変化させて、印刷を開始する。
この後、プリンタ1は、一連の印刷動作を行った後に(S140)、処理を終了する。プリンタ1は、以上の制御を行うことにより、現像に関する各部材の物性値の変動があっても、印刷時に汚れが発生せず、良好な画像が得られる。
本発明において、電流Iの値(ここでは、電流測定部51によって、電流Iと等価な値の電流として測定される電流I1の値)に基づいて、環境測定値により得られる現像ローラ14、供給ローラ15、層形成ブレード16へ印加する電圧の値を同時に変化させるフィードバック制御を行ってもよい。特に、帯電ローラ12の印加電圧は、一般的に、帯電ローラ12の印加電圧の絶対値が現像ローラ14、供給ローラ15、及び、層形成ブレード16の印加電圧の絶対値に比べて大きいため、制御範囲が大きくなる。そのため、帯電ローラ12の印加電圧は、フィードバック制御することが好ましい。
なお、電流Iの値の測定は、印刷ジョブ毎に実施することは好ましくない。なぜなら、電流Iの値の測定の際に、現像ローラ14上に形成されたトナー層のトナーTNは、層形成ブレード16、感光体ドラム11、及び、供給ローラ15と摩擦され続けるため、負荷がかかり、劣化してしまうからである。さらに、単位時間あたりの印刷枚数のスループットが低下する問題もあるからである。
したがって、電流Iの値の測定は、長期間(例えば、6時間以上)使用されずに放置された場合や、電源が投入された直後の場合、前回の電流Iの測定からの印刷枚数が100枚を超えた場合、及び、トナーカートリッジを交換した場合等に実施するのが好ましい。
以上の通り、実施形態1に係るプリンタ1によれば、現像剤担持体である現像ローラ14の周速をS(m/s)とし、現像ローラ14の軸方向の長さをL(m)とした場合に、現像部で流れる電流I1が「0 < If < I < 4.5×10−4×(S×L)」の関係(式10b及び式11参照)を満たす値に設定されることにより、現像に関する各部材(具体的には、感光体ドラム11や、現像ローラ14、供給ローラ15、層形成ブレード16等)の物性値に変動があっても、感光体ドラム11の非露光部へのトナーTNの付着を防止し、もって、汚れの発生を抑制することができる。その結果、プリンタ1によれば、印刷時に、汚れのない良好な画像を得ることができる。しかも、プリンタ1によれば、電圧印加手段62,63,64が現像ローラ14と供給ローラ15と層形成ブレード16とに印加する電圧の値を略同一にすることによって、電流測定部51が電流I1を電流Iと等価な電流として測定することができる。
なお、「I < 4.5×10−4×(S×L)」という関係は、トナーTNの特性によって変化する可能性がある。例えば、トナーTNが例えば「106Ω・cm」程度の体積抵抗率しか有していない導電性の現像剤であれば、電流が流れ易くなるため、係数「4.5×104」の値が小さくなる。しかしながら、トナーTNが一般的な「1010(Ω・cm)」以上の体積抵抗率を有する絶縁性の現像剤であれば、この関係を満たす。
また、「If < I」という関係は、電流Ifが摩擦によって必ず生じるため、トナーTNの特性を変えても成立する。
[実施形態2]
画像形成装置は、画像品質の更なる向上のために、供給ローラ15から現像ローラ14へのトナーTNの供給量の調整や、トナー層を形成する際にトナーTNの帯電量を増加させることが望まれる。そのため、本実施形態2では、プリンタ1Bとして、現像ローラ14と供給ローラ15との間、及び、現像ローラ14と層形成ブレード16との間に、電位差を設けた構成とする。
以下、図10を参照して、本実施形態2に係るプリンタ1Bの構成につき説明する。図10は、実施形態2に係る画像形成装置の構成を示す図である。
図10に示すように、本実施形態2に係るプリンタ1Bは、現像ローラ14の導電経路で流れる電流I1を測定する電流測定部51に加え、電流測定部52,53を有する構成となっている。
電流測定部52は、供給電圧電源63と供給ローラ15との間の導電経路で、供給ローラ15から供給電圧電源63の方向に流れる電流I2(以下、「供給ローラ15の導電経路で流れる電流I2」と称する)の値を測定する電流測定部である。
電流測定部53は、層形成電圧電源64と層形成ブレード16との間の導電経路で、層形成ブレード16から層形成電圧電源64の方向に流れる電流I3(以下、「層形成ブレード16の導電経路で流れる電流I3」と称する)の値を測定する電流測定部である。
以下、電流測定部51,52,53を区別する場合に、それぞれを、「第1電流測定部51」、「第2電流測定部52」、及び、「第3電流測定部53」と称する。第2電流測定部52及び第3電流測定部53の構成は、図5に示す第1電流測定部51の構成と同一である。プリンタ1Bのその他の構成は、図1に示すプリンタ1の構成と同一である。
図11は、実施形態2に係る画像形成装置の制御系の構成を示すブロック図である。
図11に示すように、第2電流測定部52及び第3電流測定部53は、それぞれ、印刷制御部71に接続されている。
<汚れの発生を抑制するための構成>
プリンタ1Bは、現像に関する各部材の物性値の変動に起因する汚れの発生を抑制するために、現像ローラ14の周速をS(m/s)とし、現像ローラ14の軸方向の長さをL(m)とする場合に、電流I1、I2,I3が、「(I1+I2+I3) < 4.5×10−4×(S×L)」の関係を満たす構成となっている。
この「(I1+I2+I3) < 4.5×10−4×(S×L)」という関係は、現像に関する各部材の物性値に変動があっても、現像ローラ14の表面に付着するトナーTNの過剰帯電や現像ローラ14上に形成されるトナー層の層厚の増大を抑制することができるように、以下の理論に基づいて、導出された関係である。
一般的なマイナス帯電のトナーTNを用いたプリンタ1Bは、感光体ドラム11の非印字部の表面電位をVopc、現像ローラ14に印加する電圧をVdv、供給ローラ15に印加する電圧をVsp、及び、層形成ブレード16に印加する電圧をVb1とする場合に、以下の式12、式13、及び、式14の関係を満たしている。
Vopc < Vdv ……(式12)
Vsp < Vdv ……(式13)
Vb1 < Vdv ……(式14)
そのため、第1電流測定部51によって測定される電流を「I1」とし、第2電流測定部52によって測定される電流を「I2」とし、第3電流測定部53によって測定される電流を「I3」とすると、現像部(現像ローラ14と感光体ドラム11との間の当接部)で流れる電流Iは、第1電流測定部51によって測定される電流I1と第2電流測定部52によって測定される電流I2、及び、第3電流測定部53によって測定される電流I3の和となる。したがって、現像部で流れる電流Iは、以下の式15で表すことができる。
I=I1+I2+I3 ……(式15)
ここで、「式6b(0 < I < 4.5×10−4×(S×L))」及び「式15」の2式を用いると、以下の式16が得られる。
I1+I2+I3 < 4.5×10−4×(S×L) ……(式16)
この式16を変形すると、以下の式17が得られる。
(I1+I2+I3)/(S×L) < 4.5×10−4 ……(式17)
ここで、電流密度をJ2とすると、電流密度J2は、「式3(J=I/(S×L))」の関係から、以下の式18によって、その相当値を得ることができる。
J2=(I1+I2+I3)/(S×L) ……(式18)
そして、「式17」及び「式18」の2式を用いると、以下の式19が得られる。
J2 < 4.5×10−4 ……(式19)
プリンタ1Bは、連続印刷を行う場合に、このようにして得られた式19の条件に基づいて、図12に示すような制御を行う。これによって、プリンタ1Bは、汚れの発生を抑制することができる。
なお、図12は、実施形態2に係る画像形成装置の動作を示すフローチャートである。
プリンタ1Bは、上位装置2から印刷データを受信すると、印刷処理を開始する。このとき、まず、印刷制御部71は、定着装置20(図1参照)への電圧印加の開始を高圧電源制御部73(図3参照)に指示する。これに応答して、高圧電源制御部73が、高圧電源77に、定着装置20への電圧印加を開始させる。
次に、印刷制御部71は、環境測定部76に使用環境の温度及び湿度の測定を行わせる。環境測定部76は、環境センサによってプリンタ1Bの使用環境の温度及び湿度を測定し、環境測定値を主記憶部72に記憶させる。これによって、プリンタ1Bは、環境設定を行う(S105)。
続いて、印刷制御部71の電圧条件決定部71aは、環境測定部76によって測定された環境測定値に応じて、主記憶部72に初期値として予め登録された、現像ローラ14への印加電圧値、供給ローラ15への印加電圧値、及び、層形成ブレード16への印加電圧値のそれぞれに対する補正値を決定する。
ここでは、主記憶部72は、帯電ローラ12、現像ローラ14、供給ローラ15、層形成ブレード16、及び、転写ローラ34の印加電圧値の初期値として、それぞれ、以下の値が予め設定されているものとして説明する。
・帯電ローラ12 :−1200±10(V)。
・現像ローラ14 : −190±5(V)。
・供給ローラ15 : −320±5(V)。
・層形成ブレード16: −320±5(V)。
・転写ローラ34 :+3000±10(V)。
なお、補正値の決定は、電圧条件決定部71aが、印加電圧テーブルデータとして、使用環境の温度及び湿度に対応して、現像ローラ14、供給ローラ15、及び、層形成ブレード16のそれぞれに印加する印加電圧値を規定するテーブルデータを保持しており、その印加電圧テーブルを参照することによって、環境測定部76によって測定された使用環境の温度及び湿度に基づいて、行われる。
印刷制御部71は、電圧条件決定部71aによって現像ローラ14、供給ローラ15、及び、層形成ブレード16のそれぞれの印加電圧値に対する補正値が決定されると、現像ローラ14、供給ローラ15、及び、層形成ブレード16のそれぞれの印加電圧値に対して各補正値を加算して、補正後の現像ローラ14への印加電圧値、補正後の供給ローラ15への印加電圧値、及び、補正後の層形成ブレード16への印加電圧値を算出し、これら3つの補正後の印加電圧値を主記憶部72に設定登録する(S111)。
なお、通常の使用環境(例えば、温度が「20℃」でかつ湿度が「40%」となる使用環境)では、印加電圧テーブルデータ上の電圧補正値は、「0(V)」として規定されている。そのため、通常の使用環境では、このとき設定される補正後の各部材14,15,16への印加電圧値は、主記憶部72に予め登録された初期値と同じ値となる。
次に、印刷制御部71は、所望の回転速度でのモータ78の回転開始をモータ制御部75に指示するとともに、主記憶部72からS111で設定登録された3つの補正後の印加電圧値を読み出して、電圧印加の開始を高圧電源制御部73に指示する。これに応答して、モータ制御部75が、モータ78の回転を開始させるとともに、高圧電源制御部73が、主記憶部72から読み出されたS111で設定登録された3つの補正後の印加電圧値に基づいて、高圧電源77に、各部材14,15,16への電圧印加を開始させる(S116)。なお、このとき、帯電ローラ12には、主記憶部72に予め登録された初期値の電圧(例えば、「−1200(V)」)が印加される。
そして、印刷制御部71は、第1電流測定部51、第2電流測定部52、及び、第3電流測定部53によって現像ローラ14、供給ローラ15、及び、層形成ブレード16の各導電経路で流れる電流I1,I2,I3を測定する(S121)。
印刷制御部71は、第1電流測定部51、第2電流測定部52、及び、第3電流測定部53によって電流I1,I2,I3の各値が測定されると、主記憶部72から現像ローラ14の周速S及び現像ローラ14の軸方向の長さLの値を読み出し、電流測定部51,52,53によって測定された電流I1,I2,I3の各値を参照して、「式18(J2=(I1+I2+I3)/(S×L))」に基づいて、電流密度J2(相当値)を算出し、算出された電流密度J2が式19によって規定された「4.5×10−4」(A/m2)未満であるか否かを判定する(S126)。
S126の判定で、算出された電流密度J2(相当値)が「4.5×10−4」(A/m2)以上である場合(“No”の場合)に、印刷制御部71は、帯電電圧制御部81(図4参照)に対して印加中の帯電電圧の電圧値を降下させる指示を出力する(S130)。これに応答して、帯電電圧制御部81は、帯電電圧電源61から帯電ローラ12に印加中の帯電電圧の電圧値を降下させる。この後、処理は、S116に戻る。その結果、印刷制御部71は、S116で、帯電電圧電源61の電圧を降下させた状態でモータ78を回転させて、S121で、再度、電流測定部51,52,53によって電流I1,I2,I3を測定させる。
一方、算出された電流密度J2(相当値)が「4.5×10−4」(A/m2)未満である場合(“Yes”の場合)に、印刷制御部71は、環境測定部76によって測定された環境測定値に応じて補正された、補正後の供給ローラ15への印加電圧値の電圧及び補正後の層形成ブレード16への印加電圧値の電圧を、それぞれ、供給ローラ15及び層形成ブレード16に印加する。
このとき、印刷制御部71の電圧条件決定部71aは、環境測定部76によって測定される現在の環境測定値に応じて、S111で主記憶部72に設定登録された供給ローラ15の印加電圧値及び層形成ブレード16の印加電圧値に対する各補正値を決定する。印刷制御部71は、電圧条件決定部71aによって供給ローラ15の印加電圧値及び層形成ブレード16の印加電圧値に対する各補正値が決定されると、現像ローラ14、供給ローラ15の印加電圧値及び層形成ブレード16の印加電圧値に対して各補正値を加算して、補正後の供給ローラ15への印加電圧値及び補正後の層形成ブレード16への印加電圧値を算出し、これら補正後の印加電圧値を主記憶部72に設定登録する(S136)。
なお、通常の使用環境(例えば、温度が「20℃」でかつ湿度が「40%」となる使用環境)では、印加電圧テーブルデータ上の電圧補正値は、「0(V)」として規定されている。そのため、通常の使用環境では、このとき設定される補正後の各部材14,15,16への印加電圧値は、主記憶部72に予め登録された初期値と同じ値となる。
この後、印刷制御部71が、供給ローラ15及び層形成ブレード16への印加電圧値が主記憶部72に設定登録された補正後の印加電圧値となるように、高圧電源制御部73に対して、電圧の補正指示を出力する。これに応答して、印刷制御部71が、供給ローラ15及び層形成ブレード16への印加電圧値を変化させる。
したがって、プリンタ1Bは、電流測定時に、所定の電圧を各部材12,14,15,16に印加し、その後も、現像に関する各部材に電圧を印加し続けて、電流密度J2(相当値)が閾値「4.5×10−4」(A/m2)を下回った場合に、各部材15,16への印加電圧値を変化させて、印刷を開始する。
この後、プリンタ1Bは、一連の印刷動作を行った後に(S140)、処理を終了する。プリンタ1Bは、以上の制御を行うことにより、現像に関する各部材の物性値の変動があっても、印刷時に汚れが発生せず、良好な画像が得られる。
プリンタ1Bは、現像ローラ14と供給ローラ15との間の電位差、及び、現像ローラ14と層形成ブレード16との間の電位差が変化しないように、これらの電位差を固定して、第1電流測定部51によって測定される電流I1の値から、環境測定値により得られる現像ローラ14、供給ローラ15、及び、層形成ブレード16への印加電圧を同時に変化させるフィードバック制御を行ってもよい。例えば、プリンタ1Bは、現像ローラ14、供給ローラ15、及び、層形成ブレード16への当初の印加電圧が、それぞれ、「−200(V)」、「−300(V)」、及び、「−300(V)」である場合に、これらを、「−300(V)」、「−400(V)」、及び、「−400(V)」のように変化させるフィードバック制御を行ってもよい。特に、帯電ローラ12の印加電圧は、実施形態1と同様に、フィードバック制御することが好ましい。
なお、実施形態1と同様に、電流Iの値の測定は、印刷ジョブ毎に実施することは好ましくない。なぜなら、電流Iの値の測定の際に、現像ローラ14上に形成されたトナー層のトナーTNは、層形成ブレード16、感光体ドラム11、及び、供給ローラ15と摩擦され続けるため、負荷がかかり、劣化してしまうからである。さらに、単位時間あたりの印刷枚数のスループットが低下する問題もあるからである。
したがって、電流Iの値の測定は、長期間(例えば、6時間以上)使用されずに放置された場合や、電源が投入された直後の場合、前回の電流Iの測定からの印刷枚数が100枚を超えた場合、及び、トナーカートリッジを交換した場合等に実施するのが好ましい。
以上の通り、実施形態2に係るプリンタ1Bによれば、現像部で流れる電流Iを、第1電流測定部51、第2電流測定部52、及び、第3電流測定部53によって、「I=(I1+I2+I3)」として測定することができる。そのため、プリンタ1Bによれば、現像剤担持体である現像ローラ14の周速をS(m/s)とし、現像ローラ14の軸方向の長さをL(m)とした場合に、電流I1と電流I2と電流I3とが「0 < If < (I1+I2+I3) < 4.5×10−4×(S×L)」の関係(式10b及び式17参照)を満たす値に設定されることにより、現像に関する各部材(具体的には、感光体ドラム11や、現像ローラ14、供給ローラ15、層形成ブレード16等)の物性値に変動があっても、感光体ドラム11の非露光部へのトナーTNの付着を防止し、もって、汚れの発生を抑制することができる。その結果、プリンタ1Bによれば、印刷時に、汚れのない良好な画像を得ることができる。
本発明は、前記した実施形態に限定されることなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更や変形を行うことができる。
例えば、本発明は、プリンタに限らず、ファクシミリ装置、複写機、MFP等の電子写真記録プロセスを用いる画像形成装置に用いることができる。