JP5613013B2 - 繊維強化樹脂シートおよびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、コンクリート製のトンネル、高架車道、橋梁、建築物などのコンクリート構造物の補修又は補強用繊維強化樹脂シート、およびその製造方法、さらにはコンクリート構造物の補修又は補強工法に関するものである。
近年、海岸又はその付近にある鉄筋コンクリート構造物が海塩粒子によって塩害を受けたり、海水と接触する鉄筋コンクリート構造物に塩分が侵入したりすることによる鉄筋の腐食、膨張によりそれらの構造物が劣化することや、酸性雨や工場の薬品等コンクリートに有害な物質により表層が脆弱化することなどによるコンクリートの劣化、あるいは、車両通行量の増大、積載量の増大、高速化等による構造物への過負荷などから、コンクリート構造物の表面部分がひび割れたり、剥落したり、また、コンクリート構造物自体が劣化してきていることが大きな問題となっている。
その劣化したコンクリートの剥落を防止する工法や、ひび割れた部分や、剥落した部分を補修する各種工法やその材料等が種々検討されている。その中で、予め表面層となる保護層とコンクリート構造物への貼着層とを有する積層体とし、これらの層間に繊維基材からなる補強層を介在させた補修又は補強用シートにおいて、繊維基材として、有機繊維や無機繊維等を不織布、織布加工したシート状物を用いたものが、施工の容易化、品質の安定化を図ることができる工法として提案されている(特許文献1参照)。
一方、その劣化したコンクリートのひび割れ部分を補修したのち、その後当該補修部位の、ひび割れ等の欠陥の進展の有無を目視観察することも、コンクリート構造物の管理上重要である。しかし、従来の一般的な補修方法では、表面が繊維基材などの被覆材で覆われているため、それらの目視観察が困難であった。
特許文献2には、コンクリート表面に、補強ネットを全光線透過率が30%以上の可視硬化型ビニルエステル樹脂により直貼りするコンクリート補強層の形成方法が提案されている(特許文献2参照)。
また、海島型の複合有機繊維のモノフィラメントが間隔を空けて網状に配されているメッシュ体と、該メッシュ体を内包するシート状の透明樹脂とを備える、コンクリート構造物の補修・補強用繊維強化樹脂シートが提案されている(特許文献3参照)。
特開2002−256707号公報 特開2007−2514号公報 特開2009−61718号公報
しかしながら、特許文献1に記載の補修・補強用シートは施工後のコンクリート表面の目視観察についての考慮はされておらず、ひび割れの発生の有無やその程度、経時変化等を観察することができない。
また、特許文献2に記載の方法は、施工現場において、補強ネット及び補強シートを固着するための可視光硬化型ビニルエステル樹脂を塗布する作業は避けられず、不安定な足場での現場における補修又は補強作業の簡略化、短縮化が要請されていた。
一方、特許文献3に記載の繊維強化樹脂シートは、コンクリート面の目視観察は可能であるが、前記繊維強化樹脂シートからピンホール状の貫通した穴を完全に無くすことは困難であると考えられる。その貫通した穴が存在すると未硬化の接着剤が漏出しやすく、施工の貼り付け作業で表面をローラー等でしごく場合に、接着剤が漏洩した表面ではその接着剤が塗り広げてられてしまうため、その接着剤の拭取りなどの、施工上の手間が発生することがあり、さらに接着剤を完全に拭き取りきれないと表面に汚れが付着しやすいので外観を重要視する施工現場等では問題となることがあった。(接着剤はスライム状に粘性を持たせてあるので自重で落ちてくることは無いが、シートを貼り付ける際にローラーでしごくので、漏出した接着剤を表面に塗り広げてしまう)
そこで、本出願人は、特願2009−68817(平成21年3月19日出願)によって、貫通穴を防ぐ方法としてバリア層を設けて、貫通を遮断したコンクリート構造物の補修又は補強用繊維強化樹脂シートを提供した。しかしながらこの繊維強化樹脂シートにおいても、貫通穴は遮断されたものの透明樹脂層に、気泡が発生することは避けられず、外観上の問題(貫通穴があるかもしれないという誤解が生じることも含む)などの課題があった。
さらに、この特願2009−68817で提供した繊維強化樹脂シートにおいて、片側にバリア層を形成した場合、バリア層及び繊維強化樹脂シートが共に透明硬化樹脂で構成しているため、いずれがバリア層側か識別が難しい。
そして、該繊維強化樹脂シートでは、バリア層側を表面側、繊維強化樹脂本体層側をコンクリート構造物側として使用するように考慮されており、メッシュ体による補強効果の発現性を考慮して、繊維強化樹脂本体層側の表面樹脂層の厚みを薄くしている。そのため、誤って、バリア層側をコンクリート構造物側に向けて貼着施工すると、表面側となった繊維強化樹脂本体層の樹脂層が耐候劣化を起したり、擦れ、引っかきなどの物理的作用によってメッシュ体を構成する繊維が露出するなどの危惧があり、外観、機械物性、耐久性における問題点の発生が懸念されていた。
これらの点から、バリア層を確実に最外表面として、容易に貼着施工できるコンクリート構造物の補修・補強用繊維強化樹脂シートが求められていた。
つまり、コンクリート構造物表面の観察が可能であって、メッシュ体を内包するシート状の透明樹脂層に気泡がより少なく、かつ施工時にバリア層の特定が容易なコンクリート構造物の補強又は補修用の透明性繊維強化樹脂シートが求められていた。
そこで、本発明では、上記の問題が解決できる、コンクリート製のトンネル、高架車道、橋梁、建築物などのコンクリート構造物の補修又は補強用繊維強化樹脂シートについて鋭意検討した結果、バリア層の表面には第1離型フィルムが、繊維強化樹脂本体層の表面側には第2離型フィルムが積層されてなる連続状のシート物を、第1離型フィルム側(バリア層側)を外側にしてロール状に巻取り、繊維強化樹脂シートにいわゆる巻き癖を付与することで、上記課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明は、以下の〔1〕〜〔7〕を提供する。
〔1〕バリア層用透明硬化性樹脂組成物(A)を硬化してなる非通気性のバリア層と、補強繊維によって所定の開口部が形成されたメッシュ体に該バリア層と相溶性を有する本体用透明硬化性樹脂組成物(B)を含浸・硬化させた繊維強化樹脂本体層とを、積層一体化させてなる透明性繊維強化樹脂シートを含むコンクリート構造物の補修又は補強用繊維強化樹脂シートであって、
該バリア層の表面には第1離型フィルムが、該繊維強化樹脂本体層の表面には第2離型フィルムが積層されてなる連続状のシート状物を、該第1離型フィルム側(該バリア層側)を外側にしてロール状に巻取られてなることを特徴とするコンクリート構造物の補修又は補強用繊維強化樹脂シート。
〔2〕前記第1離型フィルム及び前記第2離型フィルムが、繊維強化樹脂シートの製造工程におけるキャリアフィルム及びカバーフィルムそれぞれ兼ねたものである前記〔1〕に記載のコンクリート構造物の補修又は補強用繊維強化樹脂シート。
〔3〕前記メッシュ体が積層布であって、海島型複合糸を、経方向、斜方向、逆斜方向の少なくとも3方向に積層し、積層した海島型複合糸同士を熱融着してなる経一層又は経二層の3軸積層布である前記〔1〕又は〔2〕に記載の繊維強化樹脂シート。
〔4〕前記バリア層用透明硬化性樹脂組成物(A)及び前記本体用透明硬化性樹脂組成物(B)が(メタ)アクリル系樹脂組成物である前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の繊維強化樹脂シート。
〔5〕メッシュ体に本体用透明硬化性樹脂組成物(B)を含浸・硬化してなるコンクリート構造物の補修又は補強用繊維強化樹脂シートの製造方法であって、該製造方法は、下記の工程(1)〜(5)を含むことを特徴とする繊維強化樹脂シートの製造方法。
(1)キャリアフィルム上にバリア層用透明硬化性樹脂組成物(A)を塗布しカバーフィルムで挟み込んで硬化した後、該カバーフィルムを剥離してバリア層を露出するバリア層形成工程。
(2)該キャリアフィルム上に形成されたバリア層上に、本体用透明硬化性樹脂組成物(B)を塗布する液層形成工程。
(3)前記本体用透明硬化性樹脂組成物(B)の液層上面からメッシュ体を前記液層中に進入させ、さらにその上面にカバーフィルムを載置して、キャリアフィルム上に形成されたバリア層との間に挟み込んだメッシュ体に本体用透明硬化性樹脂組成物(B)を含浸する含浸工程。
(4)前記本体用透明硬化性樹脂組成物(B)を硬化する硬化工程。
(5)前記工程(4)を経て硬化した繊維強化樹脂シートを、カバーフィルムを第2離型フィルム、バリア層に接するキャリアフィルムを第1離型フィルムとして、第1離型フィルム側を外側としてロール状に巻き取る巻取工程。
〔6〕前記バリア層形成工程(1)において剥離されたカバーフィルムを前記(3)の含浸工程に連続的に再利用する前記〔5〕に記載の繊維強化樹脂シートの製造方法。
〔7〕請求項1〜4のいずれかに記載の繊維強化樹脂シートを所定寸法形状に裁断し、第2離型フィルムを剥離して、コンクリート構造物に塗布された接着剤層に対峙させ、第1離型フィルムの上面を圧接することにより繊維強化樹脂シートを貼着した後、第1離型フィルムを剥離除去し、バリア層を表面に露出させることを特徴とするコンクリート構造物の補修又は補強工法。
本発明のコンクリート構造物の補修又は補強用繊維強化樹脂シートは、バリア層の表面には第1離型フィルムが、繊維強化樹脂本体層の表面側には第2離型フィルムが積層されてなる連続状のシート物を、第1離型フィルム側(バリア層側)を外側にしてロール状に巻取ることによって、繊維強化樹脂シートにいわゆる巻き癖が付与されているので、コンクリート構造物へ貼着施工する場合に、例えば1000mm角或いは400mm角などの施工方法に応じて定寸法に裁断され、繊維強化樹脂本体層側の第2離型フィルムが剥離された繊維強化樹脂シートは、バリア層に接している第1離型フィルム側を外側にして反り、繊維強化樹脂シートの4隅がコンクリート構造物側に接する状態となるので、バリア層側が外表面側であることを容易に確認できる。
そして、本発明の繊維強化樹脂シートは、確実にバリア層を外表面とすることができるので、誤ってバリア層をコンクリート構造物側、繊維強化樹脂本体層を外表面側とすることによる外観不良、補強効率の低下、耐久性の低下などの不具合を解消して、信頼性の高いコンクリート構造物の補修又は補強用繊維強化樹脂シートを有効に提供できる。
本発明のコンクリート構造物の補修又は補強用繊維強化樹脂シートの製造方法によれば、前記の本発明の補修又は補強用繊維強化樹脂シートを効率的に製造することができる。
また、本発明のコンクリート構造物の補修又は補強工法によれば、容易かつ確実にバリア層側を外表面とする補修又は補強を有効に実施できる。
(A)本発明のコンクリート構造物の補修又は補強用繊維強化樹脂シートの一例の上面図、(B)A−A線断面図である。 本発明の繊維強化樹脂シートの層構成を示す断面拡大模式図である。 (A)補強繊維の一例としての海島型複合糸を構成する芯鞘型複合繊維の説明図、(B)鞘成分を融合させた海島型複合糸の説明図である。 本発明の製造方法の一例の全工程説明図である。 (A)本発明の実施例1で得られた繊維強化樹脂シートの巻ロールの模式図、(B)巻ロールにおける繊維強化樹脂シートの層構成を示す拡大模式図である。 (A)本発明の比較例1で得られた繊維強化樹脂シートの巻ロールの模式図、(B)巻ロールにおける繊維強化樹脂シートの層構成を示す拡大模式図である。 本発明の繊維強化樹脂シートを巻ロールから巻き解し定寸法に切断後に平板上に載置した場合のバリア層の方向性を示し、(A)バリア層が外側向きの状態、(B)バリア層が内側向きの状態を表す説明図である。
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、添付図面に示された各実施形態は、本発明に係わる代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
本発明のコンクリート構造物の補修又は補強用繊維強化樹脂シートは、バリア層用透明硬化性樹脂組成物(A)を硬化してなる非通気性のバリア層と、補強繊維によって所定の開口部が形成されたメッシュ体に該バリア層と相溶性を有する本体用透明硬化性樹脂組成物(B)を含浸・硬化させた繊維強化樹脂本体層とを、積層一体化させてなる透明性繊維強化樹脂シートを含むコンクリート構造物の補修又は補強用繊維強化樹脂シートであって、該バリア層の表面には第1離型フィルムが、該繊維強化樹脂本体層の表面には第2離型フィルムが積層されてなる連続状のシート状物を、該第1離型フィルム側(該バリア層側)を外側にしてロール状に巻取られてなることを特徴とする。
ロール状の巻取りは、回転軸心に取着された所定外径の巻芯、又は縮径可能な軸心を拡径状態にした軸芯、のいずれかの外周に繊維強化樹脂シートを固定し、回転軸を所定の方向に回転して繊維強化樹脂シートを連続的に巻取るが、この際、図4の工程図において巻取機61を矢印方向つまり、時計周り方向とすることによって、図4の工程図においてキュアリアフィルム21上に形成されたバリア層101が、図5(B)に示すように外側に巻き取られる。
このように巻取ることによって、巻芯30の直径Dと、巻きテンション、透明硬化性樹脂の特性等と相俟って巻き癖が発生し、巻き戻して、所定の寸法に切断し、コンクリート構造物に接着剤により貼着する施工するのに好都合となる。
すなわち、かかる巻き癖によって、繊維強化樹脂シートは、施工後に本来的に外表面とすべきバリア層が、図7(A)に示す如く、平坦面L(コンクリート構造物表面)に載置する場合、上に凸の湾曲状となって、例えば、矩形状に裁断された繊維強化樹脂シートの4隅が先ず平坦面に接触する状態となる。
そうすると、コンクリート構造物表面に接着剤により貼り付ける際に、自由度の高い4隅や端面が、バリア層が下に凸の湾曲状を呈している図7(B)のように4隅や端面が反り返ることがないので、貼着施工が円滑にでき、施工能率が向上する。
ロール状に巻取る場合の巻直径D(巻芯の外径)は、概ね100mm〜600mmであることが、巻き癖との関係や、ロール状での取り扱いの点で好ましい。
本発明において、非通気性のバリア層は、コンクリート表面に塗布された未硬化状の接着剤が、繊維強化樹脂本体層に万一ピンホールが存在する場合に漏出するのを防止するための層である。非通気性のバリア層は、JIS Z0208に準ずる測定おいて、水蒸気透過度を10g/m2・24h以下に抑える能力を有することが好ましい。
本発明の繊維強化樹脂シートにおいて、バリア層の厚みは、50〜60μmとするのが好ましく、50〜60μmの範囲であれば、コンクリート構造物への補修又は補強工事時に塗布された接着剤が浸透膨潤するなどして漏出する現象が発生することがなく、漏出防止のバリア層としての機能を発現できる。
また、メッシュ体に該バリア層と相溶性を有する透明硬化性樹脂を含浸・硬化した繊維強化樹脂本体層をバリア層と積層一体化した繊維強化樹脂シートの厚みは、400〜500μmとするのが、コンクリート構造物表面への追随が可能な柔軟性を備え、取り扱い性、作業性、軽量性、補強効果、経済性等の点から好ましい。
また、本発明の繊維強化樹脂シートは、直径2mm以上の気泡含有数を、1個/m2以下とすれば、直径2mm以上の気泡が殆ど含まれていないので、気泡による補強物性への負の影響が殆どなく、メッシュ体によるコンクリート構造物の補修又は補強の効果を最大限に発揮させることができるので好ましい。
本発明において、補強繊維によって所定の開口部が形成されたメッシュ体としては、織布、網、編布、および積層布からなる1種又は2種以上の組み合わせから選択でき、積層布が好ましく用いることができる。
積層布は、組布とも称されるもので、経方向、斜方向、逆斜方向の少なくとも3方向に積層した3軸のものを一般的に使用できる。積層布は、メッシュ体としての低コスト性を有しているので、経済的なメリットもある。積層布の製造は、例えば特開平11−20059号公報に記載の方法により製造できる。
開口部は開口率が30%以上であることが好ましく、開口率が30%未満では、コンクリート表面層の観察もし難い。
メッシュ体は、補強繊維を、経方向、斜方向、逆斜方向の少なくとも3方向に積層し、積層した海島型複合糸同士を熱融着してなる経一層又は経二層の3軸積層布とすることができる。
図1(A)は、本発明のコンクリート構造物の補修又は補強用繊維強化樹脂シートの一例の上面図であり、メッシュ体10は透明樹脂層を介して見えている状態を示している。同図に示すメッシュ体は、補強繊維1を構成糸として、下経糸層11上に、斜交層13及び逆斜交層14、上経糸層12を積層し、各層の交点を加熱により熱融着したものである。
メッシュ体10を形成した後、さらに加熱加圧してメッシュ体10全体を薄肉化してもよい。これによりメッシュ体10の柔軟性や可撓性をさらに向上させることができる。その際の加熱温度は、海部を構成する熱可塑性樹脂の融点近傍がよい。加圧はローラー押圧などの方法で行うことができる。
メッシュ体に用いられる補強繊維は、繊維強度、伸度等の物性が、メッシュ体の構成糸として補強効果を有するものであれば、ビニロン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリオレフィン繊維、芳香族ポリアミド繊維等その種類を問わない。
なかでも、メッシュ体は、(a)ポリオレフィン系樹脂からなる芯成分と(b)該芯成分の融点よりも20℃以上低い融点を有するポリオレフィン系樹脂からなる鞘成分と、からなる芯鞘型複合繊維の鞘成分を融合させた海島型複合糸を用い、該複合糸の交点を熱融着してなるメッシュ体、特に3軸積層布とすることが好適である。
本発明の海島型複合糸に使用できるポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン、プロピレン、ブテン−1等のα−オレフィンの2元共重合体、又は3元共重合体等が挙げられる。
芯成分と鞘成分の好適な組み合わせとしては、例えば、芯成分としてアイソタクチックポリプロピレン(mp=163℃)、鞘成分として直鎖状低密度ポリエチレン(mp=110℃)を用いる組み合わせが挙げられる。
かかる、海島型複合糸は、例えばスピンドロー方式により、定法の複合紡糸設備、芯鞘型複合紡糸ノズルを用い、所定の鞘/芯断面比となるように紡糸し、直結する延伸装置に導いて、飽和水蒸気圧下で延伸し、延伸と共に鞘成分で複数数の繊維間を融合して得ることができる。また、特開2003−326609号公報に記載の方法により製造することができる。
海島型複合糸において、島部と海部との質量比は20:80〜80:20であることが好ましい。島部及び海部の合計質量に対する島部の質量比が20質量%未満であると、メッシュ体による補強効果が小さくなる傾向があり、80質量%を超えると熱接着強度が低下する傾向がある。同様の観点から、島部と海部との質量比は40:60〜70:30であることがより好ましい。
海島型複合糸の繊度は100〜5000dtexが好ましい。100dtex未満であると、目的とする物性が得られ難くなる傾向があり、5000dtexを超えると柔軟性や追随性が損なわれ易くなる傾向がある。500〜3000dtexの繊度がより好ましい。
図3は、海島型複合糸の一実施形態を示す説明図である。
図3の実施形態は、単一の芯部(島部)3及びこれの外周面を覆う鞘部5aから構成される芯鞘型複合単繊維9を複数本集束して芯鞘型複合単繊維束15(図3A)を延伸しつつ鞘部5aを溶融し、鞘部5a同士を融合して複数の島部3を内包する海部5を形成した形態(図3B)を備える海島型複合糸である。
バリア層用透明硬化性樹脂組成物(A)及び本体用透明硬化性樹脂組成物(B)としては、バリア層用透明硬化性樹脂組成物(A)と本体用透明硬化性樹脂組成物(B)が相溶性(硬化後の接着性を含む)を有し、機械的物性において繊維強化樹脂シートの構成材料としての機能を有する透明性樹脂から選択される。この種の樹脂組成物として、(メタ)アクリル系樹脂又はビニルエステル系樹脂を主成分とするものが好ましい。
本発明のコンクリート構造物の補修又は補強用繊維強化樹脂シートの製造方法は、下記の工程(1)〜(5)を含むことを特徴とする。
(1)キャリアフィルム上にバリア層用透明硬化性樹脂組成物(A)を塗布しカバーフィルムで挟み込んで硬化した後、該カバーフィルムを剥離してバリア層を露出するバリア層形成工程、
(2)該キャリアフィルム上に形成されたバリア層上に、本体用透明硬化性樹脂組成物(B)を塗布する液層形成工程、
(3)前記本体用透明硬化性樹脂組成物(B)の液層上面からメッシュ体を前記液層中に進入させ、さらにその上面にカバーフィルムを載置して、キャリアフィルム上に形成されたバリア層との間に挟み込んだメッシュ体に本体用透明硬化性樹脂組成物(B)を含浸する含浸工程、
(4)前記本体用透明硬化性樹脂組成物(B)を硬化する硬化工程、及び
(5)前記工程(4)を経て硬化した繊維強化樹脂シートを、カバーフィルムを第2離型フィルム、バリア層に接するキャリアフィルムを第1離型フィルムとして、第1離型フィルム側を外側としてロール状に巻き取る巻取工程。
キャリアフィルム上へのバリア層用透明硬化性樹脂組成物(A)又は硬化形成されたバリア層上への本体用透明硬化性樹脂組成物(B)の塗布には、一般的な塗工装置が使用でき、例えばグラビアリバース、グラビアダイレクト、三本リバース、ダイコートなどの中から選んで使用できる。
図4は、本発明の製造方法の一例を示す工程説明図である。図4に係る製造方法においては、キャリアフィルム21上にバリア層用透明硬化性樹脂組成物(A)20aを塗布し、カバーフィルム22で挟み込んで硬化してバリア層101を形成した後、カバーフィルム22を剥離してバリア層を露出するバリア層形成工程(1)を経て、当該バリア層上にポンプ43からノズル48を経て本体用透明硬化性樹脂組成物(B)20bを供給している。
バリア層形成工程(1)は、先ず、キャリアフィルム21上に、所定厚みのバリア層を形成するための重合性モノマーを含むバリア層用透明硬化性樹脂組成物(A)〔本態様ではバリア層用透明硬化性樹脂組成物(A)と本体用透明硬化性樹脂組成物(B)を同一としている。〕20aを調合槽40aで調合してリザーブタンク40に投入しポンプ41により、ノズル42からキャリアフィルム21上に塗布して液層20a'を形成し、その上面にカバーフィルム22を載置し、第1スクイズローラー52で所定の塗布厚みに調整し、加熱炉70に挿通して、硬化した後カバーフィルム22を剥離してバリア層用透明硬化性樹脂組成物(A)からなるバリア層101を形成する。
次いでバリア層101の上に所定厚みの繊維強化樹脂本体層(102)を形成するための本体用透明硬化性樹脂組成物(B)20bを供給(塗布)して液層(樹脂プール)20b'を形成し、該液層20b'上面からメッシュ体10を進入させ、含浸ローラー55で含浸・脱泡、及び厚み調整をし、さらにその上面に前記のバリア層形成工程(1)で剥離されたカバーフィルム22を載置して、スクイズローラー56でバリア層との間に挟み込まれたメッシュ体10に本体用透明硬化性樹脂組成物(B)の液層20b'を含浸する。
次いで、カバーフィルム22とキャリアフィルム21との間に挟み込まれたメッシュ体10に含浸された本体用透明硬化性樹脂組成物(B)の液層20b'を、硬化炉71での硬化、及び要すれば熱処理炉72での熱処理を経て巻き取られる。この巻取りに際して、前述のごとくバリア層が外側になるようにして連続的に巻取る。
なお、この実施態様では、カバーフィルム22は、バリア層の形成工程においてバリア層の硬化後にローラー53aの部分で剥離し、ガイドローラー53b〜53cを経て第2スクイズローラー56の部分で再度、カバーフィルム22として再利用している。なお、ガイドローラー53b〜53c間には、テンションローラー(図示省略)を設けて、カバーフィルム22の張力を調整し、キャリアフィルム21側との速度バランスを調整している。
また、メッシュ体10には、予め予備含浸用透明硬化性樹脂組成物(C)を含浸(以下、この工程を「予備含浸工程」ということがある。)した上で、該予備含浸されたメッシュ体10を本体用透明硬化性樹脂組成物(B)の液層20b'の上面に導くと、含浸不良による気泡の発生をより少なくできる。かかる予備含浸用透明硬化性樹脂組成物(C)としては、本体用透明硬化性樹脂組成物(B)と相溶性を有し、粘度50〜15000cPの組成ものから選択されるのが好ましい。
予備含浸用透明硬化性樹脂組成物(C)は、例えば、スチレンモノマーなどの溶剤(粘度50cP以下、25℃)とビニルエステルや不飽和ポリエステルなどの熱硬化性樹脂(粘度100〜6000cP、25℃)を混合した組成であって、本体用透明硬化性樹脂組成物(B)(ウレタンアクリレート)に相溶するものを用いることができる。予備含浸用透明硬化性樹脂組成物(C)の粘度が低ければ低いほど脱気効果が高いので、本体用透明硬化性樹脂組成物(B)を加温し粘度を下げて利用しても良い。ただし、熱硬化性樹脂は、硬化反応が起きないような温度にする必要がある。本体用透明硬化性樹脂組成物(B)の液層20b'中に、予備含浸されたメッシュ体10aを進入させる含浸工程(3)に送るまでに、メッシュ体10aは予備含浸用透明硬化性樹脂組成物(C)で濡れていることが重要なので、溶剤を使用した際は揮発する前に速やかに含浸工程(3)に送る必要がある。
キャリアフィルム21、及びカバーフィルム22としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系フィルムを用いることができる。なお、図4では、カバーフィルムは、バリア層の形成に用いたカバーフィルム22を硬化後に剥離し、これを第2スクイズローラー56の部位から再度導入して、含浸、硬化工程以降で使用している。これらのキャリアフィルム21及びカバーフィルム22は、第1離型フィルム21及び第2離型フィルム22としてそのまま用いてもよい。離型フィルムは、繊維強化樹脂シートが製造された後、検査、保管、輸送、切断などの作業及び施工等において繊維強化樹脂シートの表面を保護するもので、施工完了後には除去されるものである。
さらに、本体用透明硬化性樹脂組成物(B)〔予備含浸工程を含む場合は、予備含浸用透明硬化性樹脂組成物(C)も含む。〕には粘着剤成分を含有してもよい。粘着剤成分(例えば粘着性付与剤)を含むことによって、施工時にコンクリート構造物側の接着剤層と接着し易くなって、施工がはかどるなどの効果が期待できる。
また、保護フィルムとの粘着により、繊維強化樹脂シートを有効に保護できる。
バリア層用透明硬化性樹脂組成物(A)20a、本体用透明硬化性樹脂組成物(B)20b、及び予備含浸工程を含む場合の予備含浸用透明硬化性樹脂組成物(C)を構成する透明硬化性樹脂は、例えば(メタ)アクリル系樹脂と、アクリル基又はメタクリル基を有する重合性モノマーを含有する組成のものを用いることができる。前記重合性モノマーとしては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリル酸エステルがある。
前記透明硬化性樹脂組成物(A)〜(C)は、所望の透明性が得られる範囲内で、紫外線吸収剤、酸化防止剤などをさらに含有していてもよい。前述した予備含浸用透明硬化性樹脂組成物(C)以外の本体用透明硬化性樹脂組成物(B)及びバリア層用透明硬化性樹脂組成物(A)の粘度は50〜15000cPであることが好ましく、800〜1000cPであることがより好ましい。
バリア層用透明硬化性樹脂組成物(A)及び本体用透明硬化性樹脂組成物(B)の粘度が低いと液垂れが発生し易くなる傾向があり、硬化性樹脂組成物の粘度が高いと含浸不良となって、形成される透明樹脂層内に気泡が発生し易くなる傾向がある。
前記透明硬化性樹脂組成物(A)〜(C)は、放射線硬化タイプであってもよく、この場合は、塗布後に放射線を照射して硬化させることができる。
放射線硬化性樹脂としては、放射線によって架橋ないし重合反応を起こして硬化するプレポリマー(又はオリゴマー)、単量体、或いは両者を混合したものを用いる。かかるプレポリマーとしては、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート化合物、不飽和ポリエステル、エポキシ化合物等が用いられる。また、単量体としては、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート化合物、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレートなどの脂環式エポキシド類、ビスフェノールAジグリシジルエーテルなどグリシジルエーテル類、4−ヒドロキシブチルビニルエーテルなどビニルエーテル類、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタンなどオキセタン類等が用いられる。なお、ここで(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタアクリレートを意味する表記である。また、放射線としては、電子線等の粒子線、或いは紫外線、可視光線、X線等の電磁波が用いられる。特に、紫外線或いは可視光線で硬化させる場合には、通常、ベンゾフェノン、アセトフェノン、芳香族ヨウドニウム、メタロセン化合物等を光反応開始剤として添加する。
メッシュ体10は、繊維強化樹脂シートを形成する際に接触する各樹脂との接着性をよくするために、必要に応じて表面の濡れ性を調整することが好ましい。表面の濡れ性は、前記各樹脂に応じて適宜調整すればよいが、概ね、濡れ指数として55〜75mN/mの範囲に調整することが好ましい。特に、メッシュ体10を構成するモノフィラメントの海部5がポリオレフィンからなる場合、表面活性が低いためにモノフィラメントと透明硬化樹脂20との接着性が低下して、繊維強化樹脂シート100による補強効果が小さくなる傾向や、保護フィルム21若しくは22を剥がした際に透明樹脂20の一部が保護フィルム側に剥離してしまい易くなる傾向があることから、親水化処理により表面濡れ性が調整されたメッシュ体10を用いることが効果的である。親水化処理としては、コロナ放電処理、プラズマ処理などが挙げられる。
本発明の製造方法により得られた繊維強化樹脂シートの断面拡大図を図2に示す。同図においてメッシュ体の構成繊維がバリア層101側にも埋設した状態になっているが、これは一旦硬化したバリア層101の表面が、未硬化状の本体用透明硬化性樹脂組成物(B)との接触によって相互の相溶性により膨潤するので、メッシュ体10が含浸ローラー55、第2スクイズローラー56等による作用を受けて、バリア層側にもその一部が埋設される。バリア層とのかかる界面状態は、繊維強化樹脂シートとして、界面剥離が発生し難いので好ましい。なお、同図において、第1離型フィルム21及び第2離型22は、製造時にはキャリアフィルム21及びカバーフィルム22も兼ねたものであり、繊維強化樹脂シートとしての施工時又は施工後には剥離される。
以下、本発明を実施例及び比較例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(メッシュ体の準備)
芯成分にアイソタクチックポリプロピレン(mp=163℃)、鞘成分にメタロセン触媒による直鎖状低密度ポリエチレン(mp=110℃)を使用し、延伸と共に鞘成分で繊維間を融合したトータル繊度1,850dtex、フィラメント数240本の海島型複合糸を得た(スピンドロー方式)。この海島型複合糸の引張強度は、6.5cN/dtex、伸度は、15%、ヤング率は、92.0cN/dtex、140℃で測定した熱収縮率は、6.8%であった。
得られた海島型複合糸を、積層布製造装置に配置し、経方向、斜方向及び逆方向の3方向に、経糸、斜交糸及び逆斜交糸を10mmピッチで積層し、次いで表面温度150℃の加熱ローラーで接触加熱して複合糸の海部樹脂を溶融し各層の複合糸が接着した3軸のメッシュ体を得た。目合いは10mm、単位面積当たりの質量は65g/m2であった。
(バリア層の形成)
ウレタンアクリレートとメタクリル酸エステルとの混合液100質量部(粘度1000cP、25℃)に光硬化開始剤を4質量部添加して、透明樹脂からなる非通気性のバリア層を形成するための紫外線硬化性液状組成物(A)を調製した。
この液状組成物を、キャリアフィルムとしてのポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ50μm)上に塗付し、さらにその上面をカバーアフィルム(厚さ25μm)にて挟み込み、両フィルムを含む全体の厚さを125μmに調整した。
次いで、紫外線硬化炉内にてブラックライトで両面を1分間照射(照射エネルギー300mJ/cm2)して光硬化させた後、さらに100℃で10分間熱硬化を行い、カバーフィルムを剥がして、キャリアフィルムに支持された厚さ50μmの非通気性のバリア層を形成した。
(バリア層と繊維強化樹脂本体層との積層一体化)
次いで、図4に示す工程に準じて、キャリアフィルム21とその上層に形成された前記非通気性のバリア層101を連続的に供給し、前記の紫外線硬化性液状組成物(A)を本体用硬化性樹脂組成物(B)として供給して液層20b'を形成し、塗布ローラー55により所定厚みとされた塗布液層20b'の上面にメッシュ体10を供給し、含浸ローラー55で液状樹脂組成物(A)を含浸した後、前に剥離されたカバーフィルム22(ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ25μm))の間に挟み込み、両フィルムを含む全体の厚さが400μmとなるようにスクイズローラー56にて調整し、メッシュ体に液状組成物(A)を含浸させた。
その後、図4の硬化炉71としての紫外線硬化炉内にてブラックライトで両面を5分間光硬化させた後、熱処理炉72にて100℃で10分間加熱により熱硬化を行って繊維強化樹脂シートを得た。
実施例1
得られた繊維強化樹脂シート100を、ローラー式の引取機60を介して引取り、外径Dが140、220、300、400、及び500mmの巻芯30を準備し、トルク制御式巻取機によって、第1離型フィルム21及びバリア層101を外側にして巻き取った(図5(A)、(B)参照)。
次に巻芯直径Dの異なる巻物から1000mm角と400mm角に切り取り、バリア層101が外側になるようにして繊維強化樹脂本体側102(反バリア層側)の第2離型(PET)フィルム22を剥がし、図7に示すように平板Lに載置した場合の、角状サンプルの4隅の浮きの状態を観察した。いずれの巻直径のサンプルも図7(A)に示すように湾曲し、平板L上では、4隅の浮きは観察されなかった。結果を表1に示す。
各サンプルにつき、バリア層側を上面として、繊維強化樹脂本体層102側にエポキシ系接着剤(日米レジン製:XL−1902)を塗布してコンクリート片に貼り付けたところ、どれも問題なく貼り付けることができることが確認された。
比較例1
実施例1の巻き方向をバリア層が内側になるように巻取機の回転方向及び巻き軸の位置を図6(A)のようになるように調整して、実施例1と同じく異なる直径Dの巻芯30を用いて各30m巻取った。実施例1と同様に巻物から1000mm角と400mm角に切り取り、バリア層が外側になるよう本体層102側の第2離型(PET)フィルム22を剥がし、図7に示すように平板Lに載置した場合の、角状サンプルの、4隅の浮きの状態を観察した。いずれの巻直径のサンプルも図7(B)に示すように下側(平板側)に凸に湾曲し、平板L上では、4隅は完全に浮き上がった(反り返り)状態であった。結果を表1に示す。
実施例1同様にエポキシ系接着剤(XL−1902:日米レジン製)を塗布してコンクリート片に貼り付けたところ、どれも貼った直後に4隅が浮いてしまい、きれいに貼ることができなかった。
Figure 0005613013
本発明のコンクリート構造物の補修又は補強用繊維強化樹脂シートは、第1離型フィルム側(バリア層側)を外側にしてロール状に巻取ることによって、繊維強化樹脂シートにいわゆる巻き癖が付与されるので、施工時に、所定の大きさに裁断された繊維強化樹脂シートの4隅がコンクリート構造物側に接する状態となり、バリア層側が外表面側であることを容易に確認でき、能率的なコンクリート構造物の補修又は補強工事が可能な繊維強化樹脂シートとして利用できる。
また、本発明の繊維強化樹脂シートは、確実にバリア層を外表面とすることができるので、誤ってバリア層をコンクリート構造物側、繊維強化樹脂本体層を外表面側とすることによる外観不良、補強効率の低下、耐久性の低下などの不具合を解消できる、信頼性の高いコンクリート構造物の補修又は補強用繊維強化樹脂シートを有効に利用できる。
本発明のコンクリート構造物の補修又は補強用繊維強化樹脂シートの製造方法は、前記の本発明の補修又は補強用繊維強化樹脂シートを効率的に製造する方法として利用できる。
さらに、本発明のコンクリート構造物の補修又は補強工法は、容易かつ確実にバリア層側を外表面とすることができる補修又は補強工法として有効に利用できる。
1 補強繊維(海島型複合糸)
3 芯部(島部)
5a 鞘部
5 海部
9 芯鞘型複合単繊維
10 メッシュ体
10a 予備含浸メッシュ体
11 下経糸(層)
12 上経糸(層)
13 斜交糸(層)
14 逆斜交糸(層)
15 芯鞘型複合単繊維束
20a バリア層用透明硬化性樹脂組成物(A)
20b 本体用透明硬化性樹脂組成物(B)
20a' バリア層用透明硬化性樹脂組成物(A)の液層
20b' 本体用透明硬化性樹脂組成物(B)の液層
21 キャリアフィルム(第1離型フィルム)
22 カバーフィルム(第2離型フィルム)
30 巻芯
40 リザーブタンク
40a 調合槽
41、43 ポンプ(樹脂組成物供給ポンプ)
42、48 ノズル
50、54 塗布ローラー
51、52 第1スクイズローラー
53a、53b、53c ガイドローラー
55 含浸ローラー
56 第2スクイズローラー
60 引取機
61 巻取機
70、71 硬化炉
72 熱処理炉
100 繊維強化樹脂シート
101 バリア層
102 繊維強化樹脂本体層
D 巻芯直径
L 平板

Claims (7)

  1. バリア層用透明硬化性樹脂組成物(A)を硬化してなる非通気性のバリア層と、
    補強繊維によって所定の開口部が形成されたメッシュ体に該バリア層と相溶性を有する本体用透明硬化性樹脂組成物(B)を含浸・硬化させた繊維強化樹脂本体層とを、
    積層一体化させてなる透明性繊維強化樹脂シートを含むコンクリート構造物の補修又は補強用繊維強化樹脂シートであって、
    該バリア層の表面には第1離型フィルムが、該繊維強化樹脂本体層の表面には第2離型フィルムが積層されてなる連続状のシート状物を、該第1離型フィルム側(該バリア層側)を外側にしてロール状に巻取られてなることを特徴とするコンクリート構造物の補修又は補強用繊維強化樹脂シート。
  2. 前記第1離型フィルム及び前記第2離型フィルムが、繊維強化樹脂シートの製造工程におけるキャリアフィルム及びカバーフィルムそれぞれ兼ねたものである請求項1に記載のコンクリート構造物の補修又は補強用繊維強化樹脂シート。
  3. 前記メッシュ体が積層布であって、海島型複合糸を、経方向、斜方向、逆斜方向の少なくとも3方向に積層し、積層した海島型複合糸同士を熱融着してなる経一層又は経二層の3軸積層布である請求項1又は2に記載の繊維強化樹脂シート。
  4. 前記バリア層用透明硬化性樹脂組成物(A)及び前記本体用透明硬化性樹脂組成物(B)が(メタ)アクリル系樹脂組成物である請求項1〜3のいずれかに記載の繊維強化樹脂シート。
  5. メッシュ体に本体用透明硬化性樹脂組成物(B)を含浸・硬化してなるコンクリート構造物の補修又は補強用繊維強化樹脂シートであって、該製造方法は、下記の工程(1)〜(5)を含むことを特徴とする繊維強化樹脂シートの製造方法。
    (1)キャリアフィルム上にバリア層用透明硬化性樹脂組成物(A)を塗布しカバーフィルムで挟み込んで硬化した後、該カバーフィルムを剥離してバリア層を露出するバリア層形成工程。
    (2)該キャリアフィルム上に形成されたバリア層上に、本体用透明硬化性樹脂組成物(B)を塗布する液層形成工程。
    (3)前記本体用透明硬化性樹脂組成物(B)の液層上面からメッシュ体を前記液層中に進入させ、さらにその上面にカバーフィルムを載置して、キャリアフィルム上に形成されたバリア層との間に挟み込んだメッシュ体に本体用透明硬化性樹脂組成物(B)を含浸する含浸工程。
    (4)前記本体用透明硬化性樹脂組成物(B)を硬化する硬化工程。
    (5)前記工程(4)を経て硬化した繊維強化樹脂シートを、カバーフィルムを第2離型フィルム、バリア層に接するキャリアフィルムを第1離型フィルムとして、第1離型フィルム側を外側としてロール状に巻き取る巻取工程。
  6. 前記バリア層形成工程(1)において剥離されたカバーフィルムを前記(3)の含浸工程に連続的に再利用する請求項5に記載の繊維強化樹脂シートの製造方法。
  7. 請求項1〜4のいずれかに記載の繊維強化樹脂シートを所定寸法形状に裁断し、第2離型フィルムを剥離して、コンクリート構造物に塗布された接着剤層に対峙させ、第1離型フィルムの上面を圧接することにより繊維強化樹脂シートを貼着した後、第1離型フィルムを剥離除去し、バリア層を表面に露出させることを特徴とするコンクリート構造物の補修又は補強工法。
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