JP5619444B2 - コンクリート構造物の補修又は補強用繊維強化樹脂シート、及びその製造方法 - Google Patents
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Description
特許文献2には、コンクリート表面に、補強ネットを全光線透過率が30%以上の可視硬化型ビニルエステル樹脂により直貼りするコンクリート補強層の形成方法が提案されている(特許文献2参照)。
(1)コンクリート構造物の補修又は補強用繊維強化樹脂シートであって、該繊維強化樹脂シートは、少なくとも(i)透明樹脂からなる非通気性層、及び(ii)補強繊維によって所定の開口部が形成されたメッシュ体に該非通気性層と相溶性を有する透明硬化性樹脂を含浸・硬化した繊維強化樹脂本体層を備える、ことを特徴とするコンクリート構造物の補修又は補強用繊維強化樹脂シート、
(2)前記メッシュ体が織布、網、編布、及び積層布からなる前記(1)に記載の繊維強化樹脂シート、
(3)前記メッシュ体が積層布である前記(2)に記載の繊維強化樹脂シート、
(4)前記積層布が、海島型複合糸を、経方向、斜方向、逆斜方向の少なくとも3方向に積層し、積層した海島型複合糸同士を熱融着してなる経一層又は経二層の3軸積層布である前記(3)に記載の繊維強化樹脂シート、
(5)前記透明樹脂からなる非通気性層が繊維強化樹脂本体層の一面あるいは両面に積層されてなる前記(1)〜(4)のいずれかに記載の繊維強化樹脂シート、
(6)前記透明樹脂からなる非通気性層が(メタ)アクリル系樹脂フィルムである、前記(1)〜(5)のいずれかに記載の繊維強化樹脂シート、
(7)前記透明硬化性樹脂が(メタ)アクリル系樹脂である、前記(1)〜(6)のいずれかに記載の繊維強化樹脂シート、
(8)第1のキャリアフィルム上に透明硬化性樹脂(A)を塗布しこれを硬化する非通気層形成工程と、形成された非通気層上で補強繊維によって所定の開口部が形成されたメッシュ体と前記透明硬化性樹脂(A)に対して相溶性を有する透明硬化性樹脂(B)とを第2のキャリアフィルムとの間に挟み込んで、前記メッシュ体に前記透明硬化性樹脂(B)を含浸・硬化する工程とを備える、ことを特徴とする繊維強化樹脂シートの製造方法、
(9)第1のキャリアフィルム兼非通気層としての(メタ)アクリル系樹脂フィルム上に未硬化状の(メタ)アクリル樹脂を塗布する工程と、これを補強繊維によって所定の開口部が形成されたメッシュ体と共に第2のキャリアフィルムの間に挟み込んで、前記メッシュ体に未硬化状の(メタ)アクリル樹脂を含浸し、硬化する工程とを備える、ことを特徴とする繊維強化樹脂シートの製造方法、
(10)第2のキャリアフィルムが(メタ)アクリル系樹脂フィルムである前記(9)記載の繊維強化樹脂シートの製造方法、及び
(11)前記メッシュ体が親水化処理されている前記(8)〜(10)のいずれかに記載の繊維強化樹脂シートの製造方法、
を提供するものである。
また、本発明の繊維強化樹脂シートの製造方法によれば、本発明の繊維強化樹脂シートを、安定して効率よく製造できる方法を提供できる。
非通気性層としては、本願の第一態様の製造方法で示すように、第1のキャリアフィルム上に透明硬化性樹脂(A)を塗布し、これを硬化する非通気層形成工程により形成する形態と、第二態様の製造方法で示すように、既に成形された(メタ)アクリル系樹脂フィルムを第1のキャリアフィルムとして用い、当該(メタ)アクリル系樹脂フィルムを繊維強化樹脂本体層と接着一体化された非通気層とする形態がある。
また、非通気性層は、施工時に未硬化状の接着剤等の液体を通さないという機能の点からは、繊維強化樹脂シートに少なくとも片面に1層あればよいが、第2のキャリアフィルムをも(メタ)アクリル系樹脂フィルムとして、繊維強化樹脂本体層の両面に形成してもよい。
キャリアフィルム上への透明硬化性樹脂(A)の塗布には、一般的な塗工装置が使用でき、例えばグラビアリバース、グラビアダイレクト、三本リバース、ダイコートなどの中から選んで使用できる。
開口部は開口率が30%以上であることが好ましく、開口率が30%未満では、透明硬化性樹脂がメッシュ体に侵入しにくく補強効果が期待できず、またコンクリート表面層の観察もし難い。
積層布は、組布とも称されるもので、経方向、斜方向、逆斜方向の少なくとも3方向に積層した3軸のものを一般的に使用できる。積層布は、メッシュ体としての低コスト性を有しているので、経済的なメリットもある。積層布の製造は、例えば特開平11−20059号公報に記載の方法により製造できる。
図1(A)は、本発明のコンクリート構造物の補修又は補強用繊維強化樹脂シートの一例の上面図であり、メッシュ体10は透明樹脂層を介して見えている状態を示している。同図に示すメッシュ体は、補強繊維1を構成糸として、下経糸層11上に、斜交層13及び逆斜交層14、上経糸層12を積層し、各層の交点を加熱により熱融着したものである。
メッシュ体10を形成した後、さらに加熱加圧してメッシュ体10全体を薄肉化してもよい。これによりメッシュ体10の柔軟性や可撓性を更に向上させることができる。その際の加熱温度は、海部を構成する熱可塑性樹脂の融点近傍がよい。加圧はローラ押圧などの方法で行うことができる。
なかでも、メッシュ体は、(a)ポリオレフィン系樹脂からなる芯成分と(b)該芯成分の融点よりも20℃以上低い融点を有するポリオレフィン系樹脂からなる鞘成分と、からなる鞘芯型複合繊維の鞘成分を融合させた海島型複合糸を用い、該複合糸の交点を熱融着してなるメッシュ体、特に3軸積層布とすることが好適である。
本発明の海島型複合糸に使用できるポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン、プロピレン、ブテン−1等のα−オレフィンの2元共重合体、又は3元共重合体等が挙げられる。
芯成分と鞘成分の好適な組み合わせとしては、例えば、芯成分としてアイソタクチックポリプロピレン(mp=163℃)、鞘成分として直鎖状低密度ポリエチレン(mp=110℃)を用いる組み合わせが挙げられる。
かかる、海島型複合糸は、例えばスピンドロー方式により、定法の複合紡糸設備、芯鞘型複合紡糸ノズルを用い、所定の鞘/芯断面比となるように紡糸し、直結する延伸装置に導いて、飽和水蒸気圧下で延伸し、延伸と共に鞘成分で複数数の繊維間を融合して得ることができる。また、特開2003−326609号公報に記載の方法により製造することができる。
海島型複合糸の繊度は100〜5000dtexが好ましい。100dtex未満であると、目的とする物性が得られ難くなる傾向があり、5000dtexを超えると柔軟性や追随性が損なわれ易くなる傾向がある。500〜3000dtexの繊度がより好ましい。
図4の実施形態は、単一の芯部(島部)3及びこれの外周面を覆う鞘部5aから構成される芯鞘構造を有する樹脂単繊維9を複数本集束して樹脂単繊維束15を準備する工程(図4の(a))と、樹脂単繊維束15を延伸しつつ鞘部5aを溶融し、鞘部5a同士を融合して複数の島部3を内包する海部5を形成させる工程(図4の(b))とを備える。なお、この工程は、後述するメッシュ体10の製造工程に先立って行ってもよく、メッシュ体10の製造工程における加熱処理によって行ってもよい。
さらに、硬化性樹脂組成物(A)及び/又は硬化性樹脂組成物(B)には粘着剤成分を含有してもよい。粘着剤成分(例えば粘着性付与剤)を含むことによって、施工時にコンクリート構造物側の接着剤層と接着し易くなって、施工がはかどるなどの効果が期待できる。また、保護フィルムとの粘着により、繊維強化樹脂シートを有効に保護できる。
硬化性樹脂組成物は、所望の透明性が得られる範囲内で、紫外線吸収剤、酸化防止剤などを更に含有していてもよい。硬化性樹脂組成物の粘度は100〜50000c Pであることが好ましく、800〜1000c Pであることがより好ましい。
硬化性樹脂組成物の粘度が低いと液垂れが発生し易くなる傾向があり、硬化性樹脂組成物の粘度が高いと含浸不良となって、形成される透明樹脂層内に気泡が発生し易くなる傾向がある。
電離放射線硬化性樹脂としては、電離放射線によって架橋ないし重合反応を起こして硬化するプレポリマー(又はオリゴマー)、単量体、或いは両者を混合したものを用いる。かかるプレポリマーとしては、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート化合物、不飽和ポリエステル、エポキシ化合物等が用いられる。また、単量体としては、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート化合物、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレートなどの脂環式エポキシド類、ビスフェノールAジグリシジルエーテルなどグリシジルエーテル類、4−ヒドロキシブチルビニルエーテルなどビニルエーテル類、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタンなどオキセタン類等が用いられる。なお、ここで(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタアクリレートを意味する表記である。また、電離放射線としては、電子線等の粒子線、或いは紫外線、可視光線、X線等の電磁波が用いられる。特に、紫外線或いは可視光線で硬化させる場合には、通常、ベンゾフェノン、アセトフェノン、芳香族ヨウドニウム、メタロセン化合物等を光反応開始剤として添加する。
図6は、本発明の製造方法の第二態様の工程説明模式図である。図6の実施形態に係る製造方法は、キャリアフィルム41として(メタ)アクリル系樹脂フィルムを用い、当該フィルム上に重合性モノマーを含む透明硬化性樹脂液状組成物20"をタンク60から供給して(メタ)アクリル樹脂を塗布し、続いてメッシュ体10が導入され、含浸ロール52にてメッシュ体10を案内しつつ、透明硬化性樹脂(B)20"を含浸し、次いでこれらを第2のキャリアフィルム42で挟み込み、その後、対向配置された1対のスクイズロール53a,53bを用いて加圧することにより、メッシュ体10に透明硬化性樹脂(B)20"をさらに含浸させる。
芯成分にアイソタクチックポリプロピレン(mp=163℃)、鞘成分にメタロセン触媒による直鎖状低密度ポリエチレン(mp=110℃)を使用し、定法の複合紡糸設備、芯鞘型複合紡糸ノズル(240ホール)を用い、鞘/芯断面比が35/65となるように260℃で紡糸し、直結する延伸装置に導いて、0.42MPa、145℃の飽和水蒸気圧下で、延伸倍率13倍で延伸を行い、延伸と共に鞘成分で繊維間を融合したトータル繊度1,850dtex、フィラメント数240本の、芯のポリプロピレンを島成分、鞘の直鎖状低密度ポリエチレンを海成分とする海島型複合糸を得た(スピンドロー方式)。
この海島型複合糸の引張強度は、6.5cN/dtex、伸度は、15%、ヤング率は、92.0cN/dtex、140℃で測定した熱収縮率は、6.8%であった。
得られた海島型複合糸を、積層布製造装置に配置し、経方向、斜方向及び逆方向の3方向に、経糸、斜交糸及び逆斜交糸を10mmピッチで積層し、次いで表面温度150℃の加熱ローラで接触加熱して複合糸の海部樹脂を溶融し各層の複合糸が接着した3軸のメッシュ体を得た。目合いは10mm、単位面積当たりの質量は65g/m2であった。
得られた3軸積層布の連続メッシュ体を連続したメッシュ状物1をコロナ放電処理装置(春日電機社製、機種名:発振器AGI−023、電極アルミ製6山)に通して、電圧、処理速度等を変更して、メッシュ体の改質度合いを濡れ指数45mN/mに調製した。なお、表面改質度(濡れ指数)の評価方法は、JIS K6768による濡れ性試験方法を用いた。
ウレタンアクリレートとメタクリル酸エステルとの混合液100質量部(粘度1000cP、25℃)に有機過酸化物を2質量部添加して、透明樹脂からなる非通気性層を形成するための液状組成物を調製した。
この液状組成物を、第1のキャリアフィルムとしてのポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ25μm)上に塗付し、塗布厚み0.2mmに調整した。
次いで、加熱炉内にて70℃で10分間加熱し、さらに110℃で10分間加熱によりモノマーを重合させ、その上にメッシュ体と、非通気性層を形成するための液状組成物と同一の液状組成物(透明硬化性樹脂)を供給し、第2のキャリアフィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ25μm))の間に挟みこみ、加圧ローラを用いて線圧20N/cmで加圧して、メッシュ体に液状組成物を含浸させた。
その後、加熱炉内にて70℃で10分間加熱し、次いで110℃で10分間加熱によりモノマーを重合させ繊維強化樹脂シートを得た。
得られた繊維強化樹脂シートは、非通気性層の厚みが50μm、繊維強化樹脂本体層の厚みが350μmで、全体厚みが400μm、単位質量450g/m2で、図2(A)に断面模式図として示すものであり、保護層としての第2のキャリアフィルムを除去した状態では、気泡25が存在するが、非通気層101の存在により、繊維強化樹脂シートにおいては未貫通気泡であることが確認された。
第1及び第2のキャリアフィルム兼非通気層としてアクリルフィルム(三菱レイヨン(株)製:HBL002、厚さ50μm)を用いた他は実施例1と同じ透明硬化性樹脂及びメッシュ体を用い、実施例1と同様にして繊維強化樹脂シートを作製した。
得られた繊維強化樹脂シートは、非通気性層の厚みが上下層合計で100μm、繊維強化樹脂本体層の厚みが350μmで全体厚みが450μm、単位質量500g/m2で、図2(B)に断面模式図として示すものであり、一体化した非通気性層としてのアクリルフィルム層23,23の間に繊維強化樹脂本体層102が形成されており、気泡25が存在するが、両面にアクリルフィルムからなる非通気層があるので、繊維強化樹脂シートにおいては、当該気泡が貫通気泡として作用することがないことが確認された。
実施例2において、第2のキャリアフィルムをポリエチレンテレフタレート
の25μmとした他は、実施例2と同様にして、片面のみにアクリルフィルムからなる透明な非通気性層を有する繊維強化樹脂シートを得た。
得られた繊維強化樹脂シートは、非通気性層の厚みが50μm、繊維強化樹脂本体層の厚みが350μmで全体厚みが400μm、単位質量450g/m2で、図2(C)に断面模式図として示すものであり、一体化した非通気性層としてのアクリルフィルム層23の上面に繊維強化樹脂本体層102が形成されており、気泡25が存在するが、片面にアクリルフィルムからなる非通気層があるので、繊維強化樹脂シートにおいては、当該気泡が貫通気泡として作用することはないことが確認された。
ウレタンアクリレートとメタクリル酸エステルとの混合液100質量部(粘度1000cP、25℃)に光硬化開始剤を4質量部添加して、透明樹脂からなる非通気性層を形成するための紫外線硬化性液状組成物(C)を調製した。
この液状組成物を、第1のキャリアフィルムとしてのポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ50μm)上に塗付し、さらにその上面に第2キャリアフィルム(厚さ25μm)にて挟み込み、全体のフィルム厚さを125μmに調整した。
次いで、紫外線硬化炉内にてブラックライトで両面を1分間照射(照射エネルギー300mJ/cm2)して光硬化させた後、さらに100℃で10分間熱硬化を行い、第2キャリアフィルムを剥がして、第1キャリアフィルムに支持された厚さ50μmの非通気層のフィルムを得た。
次いで、図6に示す工程に準じて、第1のキャリアフィルムとその上層に形成された前記非通気性層を連続的に供給し、前記の紫外線硬化性液状組成物(C)とメッシュ体とを供給し、第2のキャリアフィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ25μm))の間に挟みこみ、全体のフィルム厚さが400μmとなるように加圧ローラにて調整し、メッシュ体に液状組成物を含浸させた。
その後、図6の加熱炉70に替えて、紫外線硬化炉(図示省略)内にてブラックライトで両面を5分間光硬化させた後、加熱炉(図示省略)100℃で10分間加熱により熱硬化を行って繊維強化樹脂シートを得た。
得られた繊維強化樹脂シートは、非通気性層の厚みが50μm、繊維強化樹脂本体層の厚みが350μmで全体厚みが400μm、単位質量450g/m2で、実施例1の図2(A)に断面模式図として示すものとほぼ同一であり、保護層としての第1及び第2のキャリアフィルムを除去した状態では、貫通した気泡25が存在しないことが確認された。
実施例1と同一の液状組成物を用い、この液状組成物を、第1のキャリアフィルムとしてのポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ25μm)上に塗付し、さらにその上面に第2キャリアフィルム(厚さ25μm)にて挟み込み、塗布厚み0.2mmに調整した。
次いで、加熱炉内にて70℃で10分間加熱し、さらに110℃で10分間加熱によりモノマーを重合させ、いったん第2キャリアフィルムを剥がし、第2キャリアフィルムは次工程後に再度使用可能な状態で迂回させる一方、その重合体(非通気性層)上に、メッシュ体と、非通気性層の前記液状組成物と同一の液状組成物(透明硬化性樹脂)を供給し、これを、前記の迂回させた第2のキャリアフィルムの間に挟みこみ、加圧ローラを用いて線圧20N/cmで加圧して、メッシュ体に液状組成物を含浸させた。
その後、加熱炉内にて70℃で10分間加熱し、次いで110℃で10分間加熱によりモノマーを重合させ繊維強化樹脂シートを得た。
得られた繊維強化樹脂シートは、非通気性層の厚みが50μm、繊維強化樹脂本体層の厚みが350μmで、全体厚みが400μm、単位質量450g/m2で、実施例1と同様、図2(A)に断面模式図として示すものであり、保護層としての第2のキャリアフィルムを除去した状態では、気泡25が存在するが、非通気層101の存在により、繊維強化樹脂シートにおいては未貫通気泡であることが確認された。なお、本実施例5は、第一態様の製造方法の変形例であり、非通気層形成工程においても透明硬化性樹脂を第2のキャリアフィルムに挟み、厚みを一定として硬化する場合の実施例である。
実施例1と同一のメッシュ体及び同一の透明硬化性樹脂(液状組成物)を用い、この液状組成物を、図6の工程説明図において、第1のキャリアフィルムとしてのポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ25μm)上に塗付し、これをメッシュ体とともに第1のキャリアフィルム及び第2のキャリアフィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム)の間に挟みこみ、加圧ローラを用いて加圧して、メッシュ体に液状組成物を含浸させた。
その後、加熱炉内にて70℃で10分間加熱し、次いで110℃で10分間加熱によりモノマーを重合させて、繊維強化樹脂シートを得た。
得られた繊維強化樹脂シートには、図2(D)に示すように、繊維強化樹脂シートとして保護フィルム21、22を剥がした状態では貫通気泡26を形成する気泡が生じていた。
この気泡が発生する原因は、生産性等を考慮して、キャリアフィルムで挟みこんだ後、加熱硬化しており、この時に、含浸工程で脱気出来なかった海島型複合糸の交点に含まれる空気が、膨張し気泡が成長し貫通穴を発生させていることが推定された。
得られた実施例及び比較例の繊維強化樹脂シートについて、表面状態、透明樹脂層(海島型複合糸同士の間の部分)の剛軟性(柔軟性・追従性)、強力及び伸び率を以下の方法で評価した。評価結果を表1にまとめて示す。
・剛軟性
測定寸法が幅5cm×長さ25cmある試料を用いて、JIS L 1096に規定される、8.19.1のB法(スライド法)に準じて測定した。
・強力、伸び率
測定寸法が幅25mm×長さ250mmの試料を用い、つかみ間隔を約150mmとして、JIS R 3420 7.2の引張強さの測定法に準じて引張り試験を行い、破断時の荷重から強力を算出した。なお引張り試験は、軸方向(構成原糸配置方向)について行った。なお、軸方向の引張り試験は、海島型複合糸(モノフィラメント)が3本含まれる試料を用いて行った。
・施工試験
繊維強化樹脂シートをコンクリート表面に未硬化状のエポキシ樹脂系接着剤(日米レジン(株)社製、商品名XL−1902)を介して貼り付け、脱泡作業を行いシート表面からの接着剤の流出の有無を調査した。
3 芯部(島部)
5a 鞘部
5 海部
10 メッシュ体
11 下経糸(層)
12 上経糸(層)
13 斜交糸(層)
14 逆斜交糸(層)
20 透明樹脂層
20',20"(未硬化状)透明樹脂層
21,22 保護フィルム
23 アクリルフィルム
25 気泡
26 貫通気泡
100 繊維強化樹脂シート
101 非通気性層
102 繊維強化樹脂本体層
Claims (11)
- コンクリート構造物の補修又は補強用繊維強化樹脂シートであって、該繊維強化樹脂シートは、少なくとも(i)透明樹脂からなる非通気性層と、(ii)補強繊維によって所定の開口部が形成されたメッシュ体に該非通気性層と相溶性を有する透明硬化性樹脂を含浸・硬化した繊維強化樹脂本体層とを、備え、
該透明樹脂からなる非通気性層は、
(a)キャリアフィルム上に透明硬化性樹脂を塗布し硬化する非通気性層形成工程により形成された固体の非通気性層であり、該非通気性層上でメッシュ体と透明硬化性樹脂をキャリアフィルムとの間で挟み込んで、透明硬化性樹脂を含浸・硬化して形成された該繊維強化樹脂本体層と一体的に接着された層、又は
(b)キャリアフィルム兼非通気性層としての(メタ)アクリル系樹脂フィルムからなり、該繊維強化樹脂本体層と一体的に接着された層であり、かつ
(c)コンクリート構造物の補修又は補強のための施工時に接着剤が浸透漏出するのを防止する層である、
ことを特徴とするコンクリート構造物の補修又は補強用繊維強化樹脂シート。 - 前記メッシュ体が織布、網、編布、及び積層布からなる請求項1に記載の繊維強化樹脂シート。
- 前記メッシュ体が積層布である請求項2に記載の繊維強化樹脂シート。
- 前記積層布が、海島型複合糸を、経方向、斜方向、逆斜方向の少なくとも3方向に積層し、積層した海島型複合糸同士を熱融着してなる経一層又は経二層の3軸積層布である請求項3に記載の繊維強化樹脂シート。
- 前記透明樹脂からなる非通気性層が繊維強化樹脂本体層の両面に積層されてなる請求項1〜4のいずれかに記載の繊維強化樹脂シート。
- 前記透明樹脂からなる非通気性層が(メタ)アクリル系樹脂フィルムである、請求項1〜5のいずれかに記載の繊維強化樹脂シート。
- 前記透明硬化性樹脂が(メタ)アクリル系樹脂である、請求項1〜6のいずれかに記載の繊維強化樹脂シート。
- 第1のキャリアフィルム上に透明硬化性樹脂(A)を塗布しこれを硬化する非通気層形成工程と、形成された非通気層上で補強繊維によって所定の開口部が形成されたメッシュ体と前記透明硬化性樹脂(A)に対して相溶性を有する透明硬化性樹脂(B)とを第2のキャリアフィルムとの間に挟み込んで、前記メッシュ体に前記透明硬化性樹脂(B)を含浸・硬化する工程とを備える、ことを特徴とする繊維強化樹脂シートの製造方法。
- 第1のキャリアフィルム兼非通気性層としての(メタ)アクリル系樹脂フィルム上に未硬化状の(メタ)アクリル樹脂を塗布する工程と、これを補強繊維によって所定の開口部が形成されたメッシュ体と共に第2のキャリアフィルムの間に挟み込んで、前記メッシュ体に未硬化状の(メタ)アクリル樹脂を含浸し、硬化する工程とを備える、ことを特徴とする繊維強化樹脂シートの製造方法。
- 第2のキャリアフィルムが(メタ)アクリル系樹脂フィルムである請求項9に記載の繊維強化樹脂シートの製造方法。
- 前記メッシュ体が親水化処理されている請求項8〜10のいずれかに記載の繊維強化樹脂シートの製造方法。
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