JP5324957B2 - 防水下地用目地テープ及び塗膜防水構造 - Google Patents

防水下地用目地テープ及び塗膜防水構造 Download PDF

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Description

本発明は、建築防水工事において、敷き詰めた通気緩衝シートの目地部に用いる防水下地用目地テープ、及びこの目地テープを用いた塗膜防水構造に関するものである。
建築防水工事におけるメンブレン防水工事として、塗膜防水工事、アスファルト防水工事、シート防水工事が広く実施されている。このうちの塗膜防水工事は、コンクリート等の下地面に通気緩衝シートを敷き詰めるようにして貼り付け、この上からポリウレタン等の防水材を塗布して塗膜防水層を形成するという手順で行われる。
上記通気緩衝シート同士の目地部(繋ぎ部分)には目地テープが貼り重ねられ、これにより通気緩衝シート同士の目地部を補強すると共に、塗布中の液状防水材が目地部から通気緩衝シート下側にまで侵入することを防いでいる。
目地テープとしては、(1)目の詰んだ布製のもの、(2)合成繊維あるいはガラス繊維からなる織物又は不織布の片面にホットメルト接着剤製のフィルムを積層したもの(例えば、特許文献1参照)、(3)幅40〜200mmの合成樹脂フィルムの中央部分以外の部分に所定の間隔をもって直径1〜40mmの孔を設けたもの(例えば、特許文献2参照)、或いは(4)PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム等が知られている。そして目地テープの下面に設けた粘着剤層により上記目地部に貼り付ける様になっている。
特開平4−189959号公報 特開平9−310451号公報
ところが従来の目地テープを用いた場合には次のような問題があった。以下、図7(従来の目地テープの問題点を説明するための断面図)を参照しつつ説明する。
地震等によって下地(例えばコンクリート)51が左右・上下に動くと、これに接着剤54にて貼付した通気緩衝シート52,53も追従して動くが、このとき往々にして歪むような応力が発生する。例えば図7での右側の通気緩衝シート52が右方向に動いているときに、左の通気緩衝シート53が左方向や図面奥方向に動く等、個々の通気緩衝シート52,53がばらばらに動き、歪みを生じる。この歪みによる応力は目地テープ61の縁部に集中し、この影響が真上の塗膜防水層62に及んで線状の皺を生じ、外観不良を招く(矢印Aで示す部分)。ときには亀裂を生じ、ここから漏水を起こす虞もある。
この様な問題については上記(3)の目地テープにより或る程度解決が図られている。上記の様に(3)の目地テープは、テープの中央部分(丁度、目地部55の位置に対応する部分)以外の箇所に孔を形成したものであり(例えば特許文献2の特許請求の範囲や段落[0005]参照)、該(3)の目地テープでは、防水材(塗膜防水層62)が目地テープの孔を通して通気緩衝シート52,53の上面に侵入し、塗膜防水層,目地テープ,通気緩衝シートが強固に接合一体化される。これにより目地テープ縁部上での塗膜防水層の破壊防止が図られるようになったが、大きく下地が動いたときは、目地テープにおける上記孔の位置を基点にして皺や破断を生じる虞がある。
本発明は、上記事情に着目してなされたものであり、その目的は、上記(3)の目地テープ(特許文献2記載の発明)とは異なるアプローチによって、目地テープ縁部上(図7の矢印Aで示す部分)の応力集中を回避し、下地の動きが比較的大きいときであっても、塗膜防水層62表面における皺や亀裂の発生を防止できる目地テープを提供することにある。
本発明に係る防水下地用目地テープは、長尺の基材の上側面にポリウレタンフィルムが積層され、前記基材の下側面に粘着剤層を備えた防水下地用目地テープであり、前記基材が目付15〜100g/m2の熱圧着タイプ不織布であり、前記ポリウレタンフィルムが厚さ20〜100μmであることを特徴とする。なお熱圧着タイプ不織布とは、熱圧着により繊維同士の接点で融着させた不織布である。
基材には目付15〜100g/m2の熱圧着タイプ不織布を用いているので非常に柔らかく、これに積層する上記ポリウレタンフィルムは伸縮性が良好である。従って地震等により下地(例えばコンクリート)が動いて隣同士の通気緩衝シートが歪んでも、目地テープはこれに追従し、歪みによる応力を緩和する。この結果、目地テープ縁部上の塗膜防水層部分への応力集中が抑えられ、塗膜防水層表面の皺や亀裂の発生が防止される。
更に下地が大きく動いたときには、上記熱圧着タイプ不織布の目付が低いので、上記応力によって該熱圧着タイプ不織布が材料破壊をおこし、この部分で目地テープが層方向に分離する。或いは一部の繊維が材料破壊を受けて切断され一部の繊維が繋がった状態であっても、目地テープの上層側と下層側で異なる動きが可能となる。すると、塗膜防水層は目地テープの幅全体(後述の図3に示すCの範囲全体)で応力を受けることができる。つまり従来の目地テープでは、塗膜防水層が目地テープの縁に沿って線状に応力を受けるが(図7にて矢印Aで示す箇所)、本発明ではこれと異なって、或る程度幅のある面(図3に示すC)で塗膜防水層が応力を受けることになる。線状に集中して応力を受ける場合と違って面で応力を受ける場合は、塗膜防水層自身の伸縮性によって応力を吸収できる。従って皺や亀裂を生じ難い。
なお上記目地テープの上層側は塗膜防水層と一体となる。この上層側におけるポリウレタンフィルムは伸縮性が良好で、材料破壊した熱圧着タイプ不織布の部分は極めて柔らかであるので、塗膜防水層の動きに追従して伸縮する。
ところで、目地テープを施工する際、作業者は該目地テープを長手方向に引き加減で力を加え、この状態で通気緩衝シートの目地部に貼り付けるという操作を行うが、このとき目地テープが仮にウレタンフィルムのみで構成されていると、貼付の際に伸びてしまい操作し辛い。また伸びた状態で貼り付けてしまうと、収縮方向の残留応力によって皺等の原因となる。
この点について、本発明では熱圧着タイプ不織布(基材)を積層しているので、目地テープ全体が比較的確りとしており、上記の様に伸びて操作し辛いということがない。
熱圧着タイプ不織布の目付は上記の通り15〜100g/m2である。15g/m2より小さいと、柔らかくなりすぎて、上記目地テープを貼付する際の良好な作業性を確保できない。一方100g/m2超であると、十分な柔らかさを発揮できなくなる上、目地テープ全体が分厚くなり、通気緩衝シート同士の目地部に目地テープを貼付したときに、該目地テープの境目で段が生じる。この上に塗膜防水層を形成した場合、地震等で下地が動いたときに、上記段の箇所における塗膜防水層に応力が集中するようになり、皺や亀裂を生じる虞がある。従って上記の通りの目付とした。好ましくは30g/m2以上、70g/m2以下である。
目地テープの上に塗布する塗膜防水層の素材としてはポリウレタン系樹脂を用いるのが一般的であるが、本発明の目地テープではこれと接する側(上側)にポリウレタンフィルムが配置されているので、ポリウレタン系塗膜防水層との親和性が良く、塗膜防水層と目地テープが良好な一体性を示す。
目地テープへの要求特性の一つとして、通気緩衝シート同士の目地部の隙間を塞いで、防水材(塗膜防水層の硬化前材料)が下地に至らない様にすることが挙げられるが、本発明の目地テープにおいては上記ポリウレタンフィルムにより防水材を遮蔽することができる。ただしポリウレタンフィルムが薄過ぎると、ピンホールを生じる懸念があり、上記遮蔽機能が損なわれる。そこで上記の様に厚さ20μm以上とした。好ましくは30μm以上、より好ましくは40μm以上である。
一方、ポリウレタンフィルムが厚過ぎると、これに比例して目地テープ全体が分厚くなり、目地テープの境目で段になることから、上記の様に、下地が動いたときに、上記段の部分に応力が集中するようになって塗膜防水層に皺や亀裂を生じる懸念がある。このためポリウレタンフィルムの厚さを100μm以下とする。好ましくは80μm以下、より好ましくは60μm以下である。
本発明の目地テープにおいては、その長手方向の伸度が40%以下であり、幅方向の5%伸長時の応力が30N/5cm以下であることが好ましい。
上述の様に目地テープを貼付施工する際、目地テープが良く伸びると施工し難いが、長手方向の伸度が40%以下であると殆ど伸びず、貼付に際しての作業性が良い。
他方、目地テープの幅方向の5%伸長時の応力が上記の通り30N/5cm以下であるので、多少下地が動いてもしなやかに追従する。よって目地テープ縁部上の塗膜防水層に応力集中が起こらず、皺や亀裂を生じる虞が殆どない。なお貼付作業は長手方向に目地テープを引っ張りつつ行うものであるから、幅方向については、多少伸びても施工の作業性を損なわない。
更に本発明においては、前記基材と前記ポリウレタンフィルムの接着強度が4.9N/cm以下であることが好ましい。
この様に接着強度が低いと、下地が大きく動いて大きく歪んだときは、基材とポリウレタンフィルムの間で剥がれる。つまり上述の様に本発明では、基材である熱圧着タイプ不織布の材料破壊により目地テープが上層側と下層側に分かれるが、基材とポリウレタンフィルムの接着強度を低くすることによっても目地テープを層方向で剥離させることができる。
熱圧着タイプ不織布(基材)としては、目地テープの貼付作業の観点から或る程度の強度を発揮できるものとしなければならず、そうすると、これを材料破壊に至らせる下地の動きの程度は比較的大きなものとなる。
上記接着強度が低いものであれば、下地の動きの程度が比較的小さいときにも目地テープを層方向で分離でき、この分離によって、上述と同様に、塗膜防水層が目地テープの幅全体(後述の図3に示すC)で応力を受けることができ、塗膜防水層自身の伸縮性によって応力を吸収することができる。従って皺や亀裂を生じ難い。上記接合強度としてより好ましくは2.0N/cm以下である。
一方、接合強度が低すぎると、目地テープの施工の際に基材とポリウレタンフィルムが剥離して作業性を損なうので、これを避ける観点から0.2N/cm以上であることが好ましい。
本発明においては、前記基材と前記ポリウレタンフィルムがポリウレタン系接着剤を介して接合されたものであることが好ましい。ポリウレタン系接着剤を用いれば、基材に対してポリウレタンフィルムを良好に接着することができるからである。
また本発明に係る塗膜防水構造は、屋外コンクリート下地面の上に複数の防水施工用通気緩衝シートが並べて敷設され、隣り合った前記通気緩衝シート同士の目地部に前記防水下地用目地テープが貼付され、この上に塗膜防水層が施工されたことを特徴とする。
上記目地テープを用いた塗膜防水構造であれば、地震等により建築物が揺れても、上述の様に目地テープが通気緩衝シートの動きに対して良好な追従性を示し、更に大きく動いたときには層状に分離して塗膜防水層に線状の応力集中が生じることを避け得る。従って防水施工面に皺や亀裂を生じる虞が殆どない。
本発明に係る目地テープ、及びこれを用いた塗膜防水構造によれば、地震等により下地が動いて歪んでも、これに伴う通気緩衝シートの動きに目地テープが追従し、目地テープ縁部上の塗膜防水層への応力集中を回避できる。更に下地の動きが比較的大きいときであっても、目地テープが層状に分かれ、目地テープ縁部上の塗膜防水層への応力集中を回避できる。その結果、塗膜防水層表面の皺や亀裂の発生を防止できる。なお本発明に係る目地テープは、屋外コンクリート下地面上の通気緩衝シート同士の目地部に使用する場合のみならず、屋外において下地が動くことが想定される場合、例えば廃棄物処分場用シート同士の目地部や立体駐車場床面上の金属板同士の目地部等、他用途にも使用することができ、この上に形成される塗膜防水層への応力集中を回避することができる。
本発明の実施形態1に係る目地テープを表す断面図である。 実施形態1の目地テープを用いて施工した塗膜防水構造を表す断面図である。 図2に示す塗膜防水構造において、下地が大きく動いたときを説明するための断面図である。 目地テープ貼付後の様子(塗膜防水層を塗布する前の様子)を表す概略平面図である。 ポリウレタンフィルムの製造方法の一例を表す概略図である。 目地テープを製造する方法の一例を表す概略図である。 従来の目地テープの問題点を説明するための断面図である。
<実施形態>
図1は本発明の一実施形態に係る防水下地用目地テープ10を表す断面図である。図2はこの目地テープ10を用いて施工した様子を表す断面図である。
図1に示すように、目地テープ10は、熱圧着タイプ不織布(基材)11の上側面に、ポリウレタン系接着剤17によりポリウレタンフィルム14が接着され、熱圧着タイプ不織布11の下側面に粘着剤層16が設けられたものである。尚この粘着剤層16には離型シート15が積層されており、適宜これを剥離して使用するようになっている。
以下に、防水下地用目地テープ10における各層の詳細、目地テープの製造方法、塗膜防水施工方法についてそれぞれ述べる。
[1]ポリウレタンフィルム14
ポリウレタンフィルム14は厚さが20〜100μmである。
ポリウレタンフィルム14としては、ポリウレタンエステル、ポリウレタンエーテル、ポリウレタンポリカーボネイトが挙げられる。
これらうち、ポリウレタンエステルが好ましい。ポリウレタンエステルのフィルムは、ポリエステル系ポリオール成分とイソシアネート成分、及び必要に応じて低分子鎖伸長剤を添加し、反応させることにより得られる。
塗膜防水層62のポリウレタンとしては、一般にポリウレタンエーテルが用いられている。目地テープの最上層であるポリウレタンフィルム14の材料として、仮にポリウレタンエーテルを用いると、塗膜防水層62のポリウレタン材料と同系統になるために、防水材(塗膜防水層)を塗布するとき、防水材に含有される溶剤によって上記ポリウレタンフィルム14が溶ける虞がある。これ故、塗膜防水層62のポリウレタン材料と、目地テープ10のポリウレタンフィルム14の材料を異ならせるのが良い。
[2]熱圧着タイプ不織布11
熱圧着タイプ不織布11の目付は15〜100g/m2である。この不織布11の繊維としては短繊維、長繊維のいずれであっても良いが、長繊維の方が不織布としたときの強度として高いものが得られるので、より好ましい。
熱圧着タイプ不織布11の素材としては、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、ポリプロピレン系繊維が挙げられる。またトウ開繊によるポリエステルスパンボンドやポリビニルアルコールスパンボンドを好ましく用いることができる。熱接着性を強化する目的で多成分系の複合繊維を用いても良く、例えばPETを芯としてポリエチレン(以下、PEと言うことがある)を鞘とした芯鞘構造の複合繊維や、PETを芯として低融点ポリエステルを鞘とした芯鞘構造の複合繊維(以下、CO−PETと言うことがある)、或いはポリプロピレン(以下、PPと言うことがある)を芯としてPEを鞘とした芯鞘構造の複合繊維等が挙げられる。より好ましいものはポリエステル系スパンボンドである。
[3]接着剤17
接着剤17としては、ポリウレタンエステル、ポリウレタンエーテル、ポリウレタンポリカーボネイトが挙げられる。
そして上記ポリウレタンフィルム14がポリウレタンエステルの場合に、ポリウレタン系接着剤17の主成分がポリウレタンエーテルであることが好ましい。なお「主成分」とは全質量の50%超を占める成分を言う。
上記と同様に、仮に接着剤17にポリウレタンフィルム14の材料と同じくポリウレタンエステルを用いると、接着に際してポリウレタンフィルム14が溶ける虞があることから、両者を異ならせて、上記の如く接着剤17の主成分をポリウレタンエーテルとすることが好ましい。
[4]粘着剤層16
粘着剤層16としてはいずれの種類の粘着剤を用いても良い。一般的に用いられている粘着剤としてはアクリル系、ポリエチレン系、ポリプロピレン系、ポリアミド系、酢酸ビニルエチレン系(以下EVA系)、ポリエステル系等がある。いずれの場合も、粘着剤層16の表面に離型フィルム15を重ねておき、使用に際し、適宜離型フィルム15を剥離して用いる。
[5]目地テープ10の製造方法
図5はポリウレタンフィルム14の製造方法の一例を表す概略図である。図6はこのポリウレタンフィルム14を用いて目地テープ10を製造する方法の一例を表す概略図である。なお製造工程は図の右から左に進んでいる。
まず溶剤に一液型ウレタン樹脂、顔料及び滑剤を加えて混合する(ポリウレタン樹脂液34)。図5に示すように、容器に入れたポリウレタン樹脂液34にグラビアロール31を浸してその表面にポリウレタン樹脂液34を付着させ、グラビアロール31に対向するバックアップロール32との間に離型紙35を通しつつ、上記グラビアロール31上のポリウレタン樹脂を離型紙35上に転写する。これを70〜130℃で乾燥させる(図示せず)。こうして離型紙35上にポリウレタンフィルム14を形成する。尚この離型紙−ポリウレタンフィルムをロール状に巻き取って(PUフィルムロール36)、保管すると良い。
次に、溶剤に二液型ウレタン樹脂、架橋剤及び促進剤を加えて混合した接着剤液37を準備する。図6に示すように、容器に入れた接着剤液37にグラビアロール38を浸してその表面に接着剤液37を付着させる。
上記ロール状に巻かれた離型紙−ポリウレタンフィルム(PUフィルムロール36)を解きつつ、グラビアロール38とバックアップロール39の間に通して、ポリウレタンフィルム14表面(離型紙35とは反対側)に上記ロール38上の接着剤液37を転写し、100℃で乾燥する(図示せず)。この乾燥させた接着剤17に熱圧着タイプ不織布11を重ねて貼り合わせ、80℃に加熱したロール41,42でプレス圧着する。これを離型紙35ごとポリウレタンフィルム14−熱圧着タイプ不織布11積層体を巻き取る(PU−NWロール43)。
PU−NWロール43を巻き取った状態のまま60℃雰囲気に24時間放置して熟成させる。熟成後、離型紙35を取り除き、不織布−ポリウレタンフィルム積層体(熱圧着タイプ不織布11に接着剤17でポリウレタンフィルム14を貼ったもの)を得る(図示せず)。
次いで、この不織布−ポリウレタンフィルム積層体における熱圧着タイプ不織布11側に粘着剤を塗布し(粘着剤層16)、目地テープ10を得る(図1)。尚この粘着剤層16側に離型シート15を重ね合わせ、粘着剤層16を保護する。
[6]塗膜防水施工方法
塗膜防水施工方法について図2を参照しつつ説明する。
施工にあたっては、まず下地(コンクリート等)51の表面に接着剤54を塗布する。なお下地の素材によっては予め下地面にプライマーを塗布し、この上に接着剤54を塗布する様にしても良い。そうして通気緩衝シート52,53を下地面に敷き詰めるようにして貼り付ける。次いで隣り合った通気緩衝シート52,53同士の目地部55の上に、目地テープ10を貼り重ねる。この貼付にあたり離型シート15を剥がし、目地テープ10のポリウレタンフィルム14側を表側(上側)にして、即ち粘着剤層16側を通気緩衝シート52,53に接着させるようにして貼り付ける。
図4は目地テープ貼付後の様子(防水材を塗布する前の様子)を表す概略平面図である。図に示すように、通気緩衝シート50(通気緩衝シート52,53等)の目地部55に目地テープ10を貼り付け、この上に塗布する防水材が目地部55の隙間から下側に侵入しないようにする。
その後、通気緩衝シート52,53及び目地テープ10の上からポリウレタン等の防水材を塗布する(図2)。防水材が硬化すれば(塗膜防水層62)、施工が完了する(塗膜防水構造)。
<下地が動いた場合について>
次に、地震等により下地(コンクリート等)が動いた場合について説明する。なお図2が下地51の動きが比較的小さいときの様子を表しており、図3が下地の動きが比較的大きいときの様子を表している。
下地51の動きが比較的小さい場合は(図2)、これによる通気緩衝シート52,53の動きも小さく、これらの動きの方向がバラバラであっても、目地テープ10がしなやかに動きに追従し、応力を緩和する。従って目地テープ縁部上の塗膜防水層62に応力が集中することがなく、よって皺等が生じない。
下地51の動きが比較的大きい場合には(図3)、通気緩衝シート52,53も大きく動き、目地テープ10に大きな応力が加わることとなる。すると、熱圧着タイプ不織布11が材料破壊を起こすか(図3(a)、矢印B)、或いは接着剤17において剥離が生じる(図3(b)、矢印B’)。または熱圧着タイプ不織布11の材料破壊、及び接着剤17での剥離の両方が起こる。こうして熱圧着タイプ不織布11の部分や接着剤17の部分で、目地テープ10が層状に分離した状態となる。
目地テープ10の上側層(ポリウレタンフィルム14、或いはこれと熱圧着タイプ不織布11の材料破壊した上部分)は塗膜防水層62と一体となり、上記分離した範囲、即ち目地テープ10の幅全体(図3に示すCの範囲全体)で、通気緩衝シートの動きによる応力を受けることができる。この様に大きな範囲で応力を受けることが可能となるので、塗膜防水層62は自身の伸縮性によって十分に応力を吸収できる。従って表面に皺や亀裂を生じない。
なお目地テープ10の上側層のポリウレタンフィルム14は伸縮性が良好で、熱圧着タイプ不織布11の材料破壊した上部分は非常に柔らかいので、塗膜防水層62の伸縮を損なうことはない。
<実験例>
以下、実験例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
《測定方法》
まず下記実験例における各種値の測定方法について述べる。サンプル方向に関しては機械方向(製造流れ方向)をMD方向、機械方向と直交する方向をCD方向と称する。なお目地テープの長手方向がMD方向、幅方向がCD方向となる。
[1]目付(単位面積当りの質量)
JIS−L1906に準拠する。具体的にはMD方向に20cm、CD方向に25cm角の試験片を、CD方向に5箇所採取し、それぞれの重量を測定してこれらの平均値を算出した後、1m2当たりの重量に換算して目付(g/m2)とする。
[2]厚さ
JIS−L1906に準拠する。具体的にはCD方向の試験片全幅1m当たり、10箇所において加圧条件を1.96kPa(20gf/cm2)として測定し、これらの平均値を算出して厚さとする。
なおポリウレタンフィルム14の厚みの測定方法は、次の通りである。まず目地テープの任意部位20箇所から試験片をサンプリングする。次いでこの試験片を、切断面が垂直となるようにカットし、このカット面が観察できるように蒸着して、走査型電子顕微鏡により任意の倍率で撮影する。この撮影された写真において、ポリウレタンフィルムの部分についてノギスで厚さを測定し、上記撮影にあたっての写真倍率を換算してフィルム厚さを求める。得られた20箇所のフィルム厚さ(上記20箇所の試験片におけるそれぞれのフィルム厚さ)を平均し、ポリウレタンフィルムの厚さとする。なおノギスで測定するにあたり、フィルムが下層の熱圧着タイプ不織布(基材)に入り込んでいる場合には、そのフィルム部分を端として測定する。また上記カットする際に断面部の形状が変化する懸念がある場合には、この形状変化を抑止するため、急速冷凍装置を使用して目地テープを冷凍した後、カットする。
[3]破断強度、伸度
サンプルを5cm×20cmの短冊状にMD及びCD方向別に打ち抜き、試験片とする。この試験片について、JIS L1906 5.3.1に準じ、テンシロン引張試験機を用いて破断時にかかる張力と伸度を、MD、CD方向各5回ずつ測定した。
[4]5%伸長時の応力
上記「[3]破断強度、伸度」の測定の際に、MD及びCD方向についてそれぞれ5%伸張した時の応力を測定し、これを5%伸重時の応力(N/5cm)とした。
[5]接着強度
サンプルを3cm×10cmの短冊状にMD及びCD方向別に各々5つ打ち抜き、このフィルム側にホットメルト接着テープ(サン化成株式会社製 MELCOテープBW−II)を120℃で熱圧着させ、これを試験片とする。試験片を長さ方向に3cm剥離し、その両端(フィルム−ホットメルト接着テープ側の端と、不織布側の端)を上記ショッパー抗張力試験機のつかみに挟んで該試験機により引張速度200mm/分で引っ張り、このときの最大荷重を読み取る。これを幅1cm当たりに換算し、接着強度(kg/cm(N/cm))とする。
[6]テープ接着性
屋外のコンクリート下地面に接着剤を塗布し、この上に通気緩衝シート(表面(上面)層がポリウレタンフィルム製である)を貼り付け、上記通気緩衝シートを付き合わせた目地部分にサンプルの目地テープを貼り付ける。30分間放置後、上記目地テープが剥がれずに接合しているかどうかを目視にて確認する。評価基準は下記の如くである。
○:シート同士を問題なく接合。
△:一部皺が発生しているが、シート同士の接合は問題ない。
×:風等の影響で一部テープ剥がれが発生。
[7]テープ施工性
屋外のコンクリート下地面に接着剤を塗布し、この上に通気緩衝シート(表面(上面)層がポリウレタンフィルム製である)を貼り付ける。上記通気緩衝シートを付き合わせた目地部分にサンプルの目地テープを貼り付けることとし、この際の作業性を確認する。この評価基準は下記の通りである。
○:施工時、目地テープを貼りなおすことなく効率よく作業できる。
×:施工時、目地テープの貼りなおしが必要であり、作業効率が悪い。
[8]施工後防水ウレタン亀裂
2枚の通気緩衝シートを付き合わせた目地部分にサンプルの目地テープを貼り付け、この上に超速硬化ウレタン防水材をスプレー吹き付けして塗膜防水積層体とする。1時間後に、この塗膜防水積層体に対し、上記付き合わせた通気緩衝シートをずらす様に水平方向の応力(大凡50N/5cm)を加え、表面のウレタン防水層に亀裂が入るかどうかを目視にて観察する。
《実験No.1〜4,7,8[PBT−SB使用タイプ]》
テレフタル酸(以下、TPAと称することがある)100部、エチレングリコ−ル(以下、下EGと称することがある)40部、ネオペンチルグリコール(以下、NPGと称することがある)15部を少量の触媒と仕込み、常法にてエステル交換−重合後ペレタイズして、融点178℃、固有粘度0.780の芳香族共重合ポリエステルA(以下、COPES−Aと称することがある)を得た。他方、TPA100部、1・4ブタンジオール(以下、BGと称することがある)70部を少量の触媒と仕込み、常法にてエステル交換−重合後ペレタイズして、融点230℃、固有粘度1.205のポリブチレンテレフタレート−A(以下、PBT−Aと称することがある)を得た。
COPES−Aを7部、PBT−Aを93部、ロータリー式真空乾燥機に投入して、混合乾燥(水分率0.002重量%まで乾燥)し、紡糸に供した。紡糸温度250℃にて、オリフィス径φ0.20mmのノズルより、単孔吐出量0.7g/分で紡糸し、ノズル下50mmより20℃の空気を風速0.5m/秒にて吹き付けて冷却しつつ、ノズル下0.8mの点に設置したエジェクターで糸速4100m/分の速度で吸引させつつ引取り、ノズル下1.5m点で、50m/分の速度で移動している引取ネット面へ繊維束を開繊させつつ振り落とし積層した。ネット面に積層したウエッブを直ちに仮押さえローラーでプレス圧縮して引取ローラーに巻き取った。次いで、この巻き取った不織布を4mmピッチのドットエンボスローラーを用いて、210℃で線圧50kN/mにてエンボス加工し、スパンボンド不織布(熱圧着タイプ不織布11)を得た。
一方、ポリウレタンフィルム14の原材料として、溶剤に一液型ウレタン樹脂(エステル系ポリウレタン)、顔料及び滑剤を加えて混合したポリウレタン樹脂液を用い、接着剤17の原材料として、溶剤に二液型ウレタン樹脂(エーテル系ポリウレタン)、架橋剤及び促進剤を加えて混合した接着剤液を用い、熱圧着タイプ不織布11として上記の様にして得たスパンボンド不織布を用い、そして粘着剤(粘着剤層16)としてアクリル系粘着剤を用い、前記「[5]目地テープ10の製造方法」で述べた方法により実験No.1〜4,7,8の目地テープ10を得た。
なおポリウレタンフィルム14の厚さ、熱圧着タイプ不織布11の目付、並びに目地テープ10全体の厚さ、目付、5%伸長時の応力、破断強度、伸度、接着強力を表1,2に示す。また目地テープ10の性能評価であるテープ接着性、テープ施工性、施工後の防水ウレタン亀裂の結果についても表1,2に併せて示す。
《実験No.5[PET−SB使用タイプ]》
上記「COPES−Aを7部、PBT−Aを93部」に換えて固有粘度0.63のPETを100部用い、紡糸温度を260℃とし、これら以外は上記実験No.1と同様にしてスパンボンド不織布(熱圧着タイプ不織布11)を得た。更に実験No.1と同様にして目地テープ10を得た。なお上記と同様に各種値及び評価結果を表1に示す。
《実験No.6[PET/PE−SB使用タイプ]》
熱圧着タイプ不織布の繊維として、芯鞘質量比50:50の2成分繊維(芯:ポリエチレンテレフタレート(融点260℃)/鞘:ポリエチレン(融点130℃))を用いることとし、この芯鞘繊維が吐出されるように紡糸条件を変更した以外は、上記実験No.1と同様にしてスパンボンド不織布(熱圧着タイプ不織布11)を得た。更に実験No.1と同様にして実験No.6の目地テープを得た。なお上記と同様に各種値及び評価結果を表1に示す。
《実験No.9》
熱圧着タイプ不織布の繊維として、芯鞘質量比50:50の2成分繊維(芯:ポリエチレンテレフタレート(融点260℃)/鞘:ポリカプロラクタム(ナイロン6、融点225℃))を用いることとし、この芯鞘繊維が吐出されるように紡糸条件を変更した以外は、上記実験No.1と同様にしてスパンボンド不織布(熱圧着タイプ不織布11)を得た。次いでこのスパンボンド不織布の一方面にアクリル系粘着剤を塗布し、実験No.9の目地テープとした。なお上記と同様に各種値及び評価結果を表2に示す。但し、実験No.9は上記の通り粘着剤層を除くとスパンボンド不織布の単層であるので、接着強度の試験に関しては、目地テープの両面に上記ホットメルト接着テープを熱圧着させて試験片とし、この試験片を長さ方向に剥離してショッパー抗張力試験機で試験することとした。即ちスパンボンド不織布を層状に分離(材料破壊により分離)させた場合の強度を測定した。
《実験No.10》
ガラスクロスの下側面にアクリル系粘着剤を塗布し、実験No.10の目地テープとした。なお上記と同様に各種値及び評価結果を表2に示す。但し接着強度の試験に関し、実験No.10は粘着剤層を除くとガラスクロス単層であることから、上記実験No.9の場合と同様にして、ガラスクロスを層状に分離(材料破壊により分離)させた場合の強度を測定した。
《実験No.11[PETフィルム]》
厚さ50μmのPETフィルムの下側面にアクリル系粘着剤を塗布し、実験No.11の目地テープとした。なお上記と同様に各種値及び評価結果を表2に示す。但し接着強度の試験に関し、実験No.11は粘着剤層を除くとPETフィルム単層であることから省略した。
《実験No.12[孔あきタイプ]》
長尺のPETフィルム(厚さ100μm、幅95mm)の上側面に、ウレタン樹脂を20μm塗布し、下側面にアクリル系粘着剤を塗布したテープ状物とし、このテープの中央部分(中央線を中心に幅25mmの範囲)以外の箇所の内側半分は10mmピッチで直径4mmの孔を、外側半分は5mmピッチで直径4mmの孔を形成したものを、実験No.12の目地テープとした。なお上記と同様に各種値及び評価結果を表2に示す。但し、孔あきタイプであるため物性値の評価が困難である。従って評価困難なものについては省略した。
表2から分かるように、粘着剤層を除き不織布のみで構成された実験No.9、ガラスクロスのみで構成された実験No.10、PETフィルムのみで構成された実験No.11、PETフィルムとウレタンフィルムを積層して孔を設けた実験No.12は、いずれも、施工後防水ウレタン亀裂の試験の結果、亀裂を生じるものであった。
一方、表1から分かるように実験No.1〜7では、施工後防水ウレタン亀裂試験において防水層に亀裂を生じなかった。実験No.1〜7の目地テープはいずれも柔らかいので、動きに追従して撓んだり伸縮したりでき、また破断強度や接着強度が比較的低いので、大きく動いたときには目地テープ自身が層状に分かれ、よって防水層に亀裂を生じなかったと考えられる。一方で実験No.1〜7は、目地テープを施工する際の施工性及び接着性も良好であった。ポリウレタンフィルムに適度な厚みがあり、熱圧着タイプ不織布の目付も十分であって、破断強度についても極端に低いわけではなく、施工時の引っ張りに十分に耐え得るからであると考えられる。
実験No.8(表2参照)は上記実験No.1〜7と同じくポリウレタンフィルム−接着剤層−熱圧着タイプ不織布−粘着剤層と積層された構成であるが、実験No.8では、施工後防水ウレタン亀裂試験の結果、亀裂を生じるものであった。これは、目地テープ全体として厚い(ポリウレタンフィルムの厚さが厚く、熱圧着タイプ不織布の目付も多い)ために、目地テープを貼付したときに段を形成し、この段の部分に応力が集中したこと、加えて、幅方向(CD方向)の5%伸長時応力が高いことから、しなやかさや伸縮性に乏しく、動きに追従し難かったことによると考えられる。
10 目地テープ
11 熱圧着タイプ不織布
14 ポリウレタンフィルム
15 離型シート
16 粘着剤層
17 接着剤
50,52,53 通気緩衝シート
51 下地(例えばコンクリート)
54 接着剤
55 目地部
62 塗膜防水層

Claims (4)

  1. 長尺の基材の上側面にポリウレタンフィルムが積層され、前記基材の下側面に粘着剤層を備えた防水下地用目地テープであり、
    前記基材が、目付15〜100g/mの熱圧着タイプ不織布であり、
    前記ポリウレタンフィルムが厚さ20〜100μmであり、
    前記基材と前記ポリウレタンフィルムの接着強度が4.9N/cm以下であることを特徴とする防水下地用目地テープ。
  2. 前記目地テープは、その長手方向の伸度が40%以下であり、幅方向の5%伸長時の応力が30N/5cm以下である請求項1に記載の防水下地用目地テープ。
  3. 前記基材と前記ポリウレタンフィルムがポリウレタン系接着剤を介して接合されたものである請求項1又は2に記載の防水下地用目地テープ。
  4. 屋外コンクリート下地面の上に複数の防水施工用通気緩衝シートが並べて敷設され、隣り合った前記通気緩衝シート同士の目地部に請求項1〜のいずれか1項に記載された防水下地用目地テープが貼付され、この上に塗膜防水層が施工されたことを特徴とする塗膜防水構造。
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