JP5612231B1 - Pc圧着関節工法による耐震設計法 - Google Patents

Pc圧着関節工法による耐震設計法 Download PDF

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Abstract

【課題】 現行の耐震設計基準より耐震設計レベルを大幅にアップさせ、震度6強を超える極大地震に対しても、弾性設計を基本とする新規なPC圧着関節工法によるPC構造の耐震設計法を提供することを目的とする。【解決手段】 基礎から柱と梁とで複数階構築される建物のラーメン構造とし、柱と梁は、高強度プレキャスト・プレストレストコンクリート部材とし、柱部材にアゴを設け、その上に梁を載せて圧着目地を設け、梁に配置してパネルゾーン(柱梁接合部)に貫通する2次ケーブルによって柱と梁を圧着接合して一体化とするPC構造の耐震設計法であって、柱梁の圧着接合部(圧着目地部)において、2次ケーブルとするPC鋼材の緊張力を制御し、所定の地震荷重設計値まで、フルプレストレスの接合状態になり、全ての構造部材の損傷を許容しないとする1段階目の線形弾性設計とし、前記の所定の地震荷重設計値を超える極大地震に遭遇した場合には、柱梁の圧着接合部がパーシャル・プレストレス接合の状態になり、圧着目地が口を開いて離間して回転し、圧着目地付近において所要の長さ範囲でPC鋼材とグラウトとの付着が切れた状態になり、PC鋼材の抜け出しによってPC鋼材の伸び量を増やし、地震エネルギーを吸収させると共に、PC鋼材にかかる張力がほとんど上がらずにPC鋼材が弾性範囲に保ち、主要構造部材(柱、梁、パネルゾーン)の損傷を許容しないとする2段階目の線形弾性設計とし、上記PC構造に関しては前記1段階目と2段階目の2段階に分けて非線形弾性設計とすることによって、1段階目では、構造体自体を弾性変形させ、全ての構造部材が損傷しないようにし、フルプレストレスの状態に保ち、震災後建物が健在な状態であり、建物としての機能が損なわれることなく継続的に使用することができる。2段階目では、所定の設計値を超える極大地震が起きる場合でも、目地部が口を開き一部のみ軽微な損傷で、パネルゾーン及び梁と柱を無損傷な状態に守ることができる。【選択図】図3

Description

本発明は、プレストレストコンクリート構造(以下PC構造という)の耐震設計法に関するものである。本発明においてのPC構造とは、高強度のプレキャスト・プレストレストコンクリート(PCaPC)部材同士(柱・梁)をPC鋼材でPC圧着接合して構成されたものを指すこととする。
従来の鉄筋コンクリート構造(RC構造)が安価で剛性が高く居住性に優れることにより、集合住宅や事務所等の建物に多く使用されている。
他方、プレストレストコンクリート構造(PC構造)は、予めコンクリート部材断面にプレストレスを与え、想定される荷重に対して抵抗できるようにし、大スバンの梁または大荷重を支える梁と柱を持つ建物に適用される。また、RC構造に比べて高度の復元性を有するために、地震に対して所要の健在性を保つことができる。
PC構造については、複数の技術(特許)が公知になっている。第1の公知技術としては、プレキャストコンクリート柱と、プレキャストコンクリート梁との接合部において、梁の端部に梁側面及び梁底面から突出した断面を有する接合部を設け、該接合部の梁下部及び梁の上部に、梁と柱とを結合する結合鉄筋を配設し、かつ、PC鋼材をこれらの結合鉄筋より梁断面の中立軸に近い位置に配列して梁と柱とを結合したことを特徴とする柱と梁の仕口構造である(特許文献1)
この柱と梁の仕口構造においては、結合部の梁成の上下部分に結合鉄筋を配設し、断面の中立軸に近い位置にプレストレスを導入するPC鋼材を配置したため、地震時の荷重に対し仕口上下鉄筋が大きな変形を負担し、大きな変形エネルギーを吸収する。また柱と梁の接合部の圧着機能を専ら果たすPC鋼材は鉄筋に比べ変形も小さく、地震時におけるダメージが少なく安全である、というものである。
第2の公知技術としては、プレキャストコンクリート梁を、アンボンドPC鋼材を利用してプレストレスを導入しプレキャストコンクリート柱へ圧着接合した構造において、柱の側面であって、梁の浮き上がりによる回転変形によって圧縮を受ける部位に、圧縮変形を吸収して梁の端部コンクリートの圧壊を防止する弾性体が設置されていることを特徴とする、プレキャストコンクリート梁と柱のPC圧着接合構造である(特許文献2)。
このプレキャストコンクリート梁と柱のPC圧着接合構造では、100年に1度と考えられるような大地震によっても、ラーメン躯体に損傷がなく、あるいは衝撃材を取り換えることによって損傷の修復ができるRC系建物の建築に寄与する、というものである。
また、第3の公知技術としては、プレキャストコンクリート梁を、アンボンドPC鋼材を利用してプレストレスを導入しプレキャストコンクリート柱へ圧着接合するRC系構造物の自己免震構法であって、前記プレキャストコンクリート梁の長手方向に前記アンボンドPC鋼材を貫通させ、該アンボンドPC鋼材の両端部を前記プレキャストコンクリート柱へ定着して、地震等の水平力にしたがい前記アンボンドPC鋼材の弾性伸び変形に伴う柱梁接合界面の浮き上がりを許容する構成とすることを特徴とする、RC系構造物の自己免震構法である(特許文献3)。
このRC系構造物の自己免震構法によれば、RC系構造物の固有周期を、免震装置、制震装置を使用しないで長周期化することができる、また、免震装置、制震装置、及びそれらに伴うメンテナンスをも不要とするので、コスト削減に大きく貢献すると共に居住性に非常に優れる、というものである。
更に、第4の公知技術としては、PC圧着工法により構築された耐震構造物において、梁とその両端の柱とを最小単位として構成される本体架構は、梁と柱の接合部を可回転接合部として主に鉛直荷重を負担する構成とされ、梁の材軸方向に柱まで貫通させたアンボンド型のPC鋼材にプレストレスを導入した圧着接合により構築されており、前記本体架構の側面部に梁両端の前記可回転接合部を跨ぐ長さの板材で地震時に本体架構が損傷を受ける以前に降伏してエネルギーを吸収する水平抵抗用部材が添えられ、前記可回転接合部の両側位置がPC鋼材にプレストレスを導入した圧着接合により連結されていることを特徴とする、PC圧着工法による耐震構造物である(特許文献4)。
このPC圧着工法による耐震構造物は、本体架構の柱と梁を長いアンボンド型のPC鋼材にプレストレスを導入した圧着接合し、主に鉛直荷重を負担する構成としたので、PC鋼材の歪みはその全長において平均化する。従って、大変形時にもPC鋼材の歪みは弾性限度の範囲内に納まり、構造上の安全性が高い。本体架構は、地震時の大変形に容易に追従し、地震後はPC鋼材に導入したプレスレレスの作用効果として復元動作し、残留変形は零に復帰する、というものである。
特公平07−42727号公報 特開2002−4417号公報 特開2002−4418号公報 特開2005−171643号公報
前記第1の公知技術では、地震時の荷重に対し梁の上下に配設した鉄筋が大きな変形を負担し、大きな変形エネルギーを吸収するとし、柱と梁の接合部の中立軸に近い位置に配設したプレストレスを導入するPC鋼材は鉄筋に比べて変形も小さく、地震時におけるダメージが少なく安全であるとしているが、従来のRC設計と同様に、鉄筋の塑性変形によってエネルギーを吸収するから、地震後鉄筋の残留変形が大きく修復できないという問題点を有している。
前記第2の公知技術においては、柱の側面であって、梁の浮き上がりによる回転変形によって圧縮を受ける部位に、梁の端部コンクリートの圧壊を防止する弾性体が設けられた構成であるが、柱の複数の側面に弾性体を取り付けるための切欠凹部を同一レベルに複数設けることによって、柱自体が断面欠損によって強度は著しく低下することは明らかであると共に、梁の端部を支える部材が存在しないので、繰り返しの地震力によって、柱との接合部で下方への滑りが生じて、アンボンドPC鋼材こそが容易に破断して梁と柱との圧着接合部が破損し構造物が崩壊に至る危険性が非常に大きいという問題点を有している。
前記第3の公知技術では、プレキャストコンクリート梁の長手方向にアンボンドPC鋼材を貫通させ、その両端部をプレキャストコンクリート柱へ定着して、地震等の水平力にしたがい前記アンボンドPC鋼材の弾性伸び変形に伴う柱梁接合界面の浮き上がりを許容するとしているが、この場合のアンボンドPC鋼材の定着は、「格別新規なものではなく、建築学会のPC規格に示されている手法などで実施される」との記載からして、PC鋼材の規格降伏荷重の80%であること、そして、前記第2の公知技術と同様に、梁の端部を支える部材が存在しないので、繰り返しの地震力によって、柱との接合部で下方への滑りが生じて、PC鋼材が破断して構造物が崩壊に至る危険性が非常に大きいという問題点を有している。
前記第4の従来技術においては、本体架構の側面部に梁両端の可回転接合部を跨ぐ長さの板材で地震時に本体架構が損傷を受ける以前に降伏してエネルギーを吸収する水平抵抗用部材が添えられ、前記可回転接合部の両側位置がPC鋼材にプレストレスを導入した圧着接合により連結されている。結果的に、水平抵抗用部材に集中して損傷を促し塑性変形を生じさせて、地震エネルギーを吸収し、応答を低減し衰弱効果を発揮させることとしているが、やはり従来通りの塑性設計であり、塑性変形した水平抵抗用部材は修復できないから、地震後に全部の水平抵抗用部材を取り換えなければならず、現場作業の手間が掛かると共に、著しくコスト高になるという問題点を有している。
また、第2〜第4の公知技術においての共通問題として、アンボンドPC鋼材の充填材とするグリースが、時間が経過すると離油現象が起きて防錆性能を大きく損なうため、柱と梁のPC圧着接合構造にアンボンドPC鋼材を使用することは好ましくない。
ところで、現行の耐震設計基準は震度5強程度で構造体の損傷を許容し、生命の安全性を確保した設計を行えば倒壊することも許容してきた。震度6を越える巨大地震時に、RC造やS造及びSRC造等の建物が崩壊し、または大きく変形する(層間変形角1/100以上の塑性変形)と共に損傷し、地震後残留変形が残ったままで修復できないという被害が多く発生したという報告があった。
特に、日本は地震がよく発生する国であり、何時大震災が起こっても不思議の無い国土である。そのような国土で地震時にRC造またはS造を「塑性設計」によって鉄筋と鉄骨を塑性域まで利用して設計を行って建物を建築する現設計法は、国情に相応しい設計法とは言えない。また、鉄筋コンクリート構造の基本である塑性変形によるエネルギー吸収理論に基づいて設計した建物は、パネルゾーンの塑性変形によって地震のエネルギーを吸収し、結果的にパネルゾーンがせん断破壊し地震動による損傷及び残留変形が大きく地震後の修復ができないという問題がある。要するに、従来の設計法によるRCラーメン構造においては、大地震時の破壊は、パネルゾーン(柱梁接合部)であると決まっているから、パネルゾーンのせん断破壊によって構造全体が柱先行破壊型となってしまう。
いずれにしても、従来のPC構造において、部材断面に配置されたPC鋼材の緊張導入力は、定着完了時では該PC鋼材の規格降伏荷重(Py)の80%としている。地震に対する現行の耐震設計法ではRC構造と同じように最大設計荷重時ではPC鋼材の降伏を許容している。結果として、常時荷重時にPC鋼材に保有している余力があまりないから、最大設計値時にPC鋼材が降伏して塑性変形してしまい、PC構造の優れている復元性が失われ、構築部材の変形を戻す力がなくなって地震後には残留変形が残っているため、発生したひび割れを閉じることができずにひび割れが経時に大きく進行し、構造躯体に悪影響を与えて使用寿命が大幅に減少する。また、RC構造等と同じように「塑性設計」を利用するからパネルゾーンの変形で地震エネルギーを吸収することを許容しているため、やはり大地震時にはパネルゾーン(柱梁接合部)でのせん断破壊は避けられない。さらに、耐震設計レベルを超える震度6以上の巨大地震時に、柱と梁の圧着接合部において、梁を支えるアゴがないために梁が下方へ滑り出してPC鋼材が先行破断し、構造部材の破損と共に梁のせん断破壊が発生し建物が崩壊に至る危険性がある。また、RC構造より荷重変形曲線のループの面積が小さく、構造物の塑性変形によるエネルギー消費の少ない履歴特性を示すことが問題となり大地震に対して望ましい性質ではないと言われている。
本発明者は、PC構造に関する耐震性能に係る様々な問題を解決するため、昭和62年以来、耐震性能に優れている建物を造るために長年を経て研究開発すると共に、本発明者の発想に基づく種々の実験により検証されたPC圧着関節工法を確立した。
本発明者が目指している耐震性能に優れる建物とは、大地震時に主要構造部材が、損傷しないということが大前提である。さらに大地震が終わってもその後の余震などにも健全な状態であり、かつ、建物としての機能を損なうことなく、継続的に使用できる建築物のことである。
本発明は、現行の耐震設計基準より耐震設計レベルを大幅にアップさせ、震度6強を超える極大地震に対しても、弾性設計を基本とする新規なPC圧着関節工法によるPC構造の耐震設計法(以下本設計法という)を提供することを目的とする。
上記目的を達成するための具体的手段として、本発明に係る第1の発明は、基礎から柱と梁とで複数階構築される建物のラーメン構造とし、柱と梁は、高強度プレキャスト・プレストレストコンクリート部材とし、柱部材にアゴを設け、その上に梁を載せて圧着目地を設け、梁に配置してパネルゾーン(柱梁接合部)に貫通する2次ケーブルによって柱と梁を圧着接合して一体化とするPC構造の耐震設計法であって、2次ケーブルとするPC鋼材を緊張定着させると共にグラウトを充填して付着させ、柱梁の圧着接合部(圧着目地部)において、前記2次ケーブルのPC鋼材の緊張力を制御し、所定の地震荷重設計値までは、フルプレストレスの接合状態にして、全ての構造部材の損傷を許容しないとする1段階目の線形弾性設計とし、前記所要の地震荷重設計値を超える極大地震に遭遇した場合には、柱梁の圧着接合部(圧着目地部)がパーシャル・プレストレス接合の状態になり、圧着目地が口を開いて離間して回転し、圧着目地付近において所要の長さ範囲でPC鋼材と付着させたグラウトとの付着が切れるように設計し、付着が切れたPC鋼材の抜け出しによってPC鋼材の伸び量を増やし地震エネルギーを吸収させると共に、PC鋼材にかかる張力がほとんど上がらずにPC鋼材が弾性範囲に保ち、主要構造部材(柱、梁、パネルゾーン)の損傷を許容しないとする2段階目の線形弾性設計とし、上記PC構造に関して、前記1段階目と2段階目の2段階に分けて非線形弾性設計とすることを特徴とするPC圧着関節工法による耐震設計法を提供するものである。
上記第1の発明において、前記1段階目の所定の地震荷重設計値は、震度6弱に相当する地震とし、前記2段階目の極大地震は、震度6強以上発生する地震とすること;前記柱梁の圧着接合部(圧着目地部)において、2次ケーブルとするPC鋼材の緊張力は、該PC鋼材の規格降伏荷重の40〜60%とすること;前記の基礎と柱の柱脚との間に圧着目地を設け、基礎から柱脚に貫通して柱に配設される2次PC鋼材によって基礎と柱を圧着接合して一体化される柱脚部において、前記の1段階目の所定の地震荷重設計値まで、フルプレストレスの接合状態になり、全ての構造部材の損傷を許容しないとし、前記の2段階目の所定の地震荷重設計値を超える極大地震遭遇した場合には、圧着目地部が口を開き離間してパーシャル・プレストレスの状態になり、PC鋼材を弾性範囲に保ちながら圧着目地部が口を開くことによって、地震エネルギーを吸収し、柱の損傷を許容しないとすること;前記の基礎と柱の間に、前記柱脚とする台座ブロックを設置すること;前記柱脚部の圧着目地部において、2次PC鋼材の緊張力は、該PC鋼材の規格降伏荷重の40〜60%とすること;および前記PC構造は、免震工法と組合せたPC免震構造を含むこと、を含むものである。
本発明に係る第2の発明は、前記PC圧着関節工法による耐震設計法によって構築された建造物を提供するものである。
本発明に係るPC圧着関節工法による耐震設計法によれば、次のような優れた効果を奏する。
1.所定の設計値まで、全ての構造部材が損傷しない。
前記1段階目と前記2段階目の2段階に分けて非線形弾性設計、即ち、1段階目では、所定の地震荷重設計値を震度6弱の地震に対する弾性設計とし、2段階目では、所定の地震荷重設計値を超える極大地震を震度6強以上の地震に対する弾性設計とすることによって、従来設計法で構築されたRCやSRC構造は、震度6弱でも塑性変形が発生して損傷破壊され、地震後の修復は殆ど不能となることに対して、本設計法では、まず、1段階目とする弾性設計による所定の設計値に対して、抵抗する力(プレストレス力及び部材角度変化に対して抵抗する柱・梁のPC締付力)を柱、梁コンクリート部材内に内部エネルギーとして付与しておくことによって、構造体自体を弾性変形させ、PC柱の復元力で変形を小さく抑制し、部材内に蓄積した内部エネルギーによって地震エネルギーを吸収し、フルプレストレスの状態を保つので、震災後建物が健在な状態であり、建物としての機能が損なわれることなく継続的に使用することができる。
2.所定の設計値を超えても、パネルゾーンでの損傷破壊を無くす。
2段階目とする弾性設計に係る所定の設計値を超える極大地震に遭遇した場合でも、柱梁の圧着接合部(圧着目地部)が口を開き(回転し)パーシャル・プレストレスの領域に入るように設計する。このパーシャル・プレストレスの領域では、圧着目地部が口を開いて目地離間して回転を起こすことによって、パネルゾーンに掛かる応力増加が小さくなりパネルゾーンの損傷破壊はない。実験より、所定の地震荷重設計値まで圧着目地にフルプレストレスの状態で変形をさせるとパネルゾーンの上下には小さなひび割れが発生する。それ以上(設計値以上)に変形量を増すと今度は、アゴ上にある柱と梁の圧着目地部分がパーシャル・プレストレスとして、口を開いて(離間して)回転し、パネルゾーンの上下の小さなひび割れは逆に閉じて行くことが確認されたのである。これによって、パネルゾーンにひび割れを生じさせないのである。従来のRC構造では、大地震時でパネルゾーンの塑性変形によって地震のエネルギーを吸収し、結果的にパネルゾーンがせん断破壊し構造物が崩壊に至ることになり、所謂柱先行破壊型となる。それに比べ本設計法によるPC構造の柱梁圧着接合部は、所定の地震荷重設計値まで圧着目地が離間しないが、設計値以上の極大地震時には、圧着目地が離間することによってパネルゾーンはせん断破壊しないようにし、結果として、主要構造部材(柱、梁、パネルゾーン)を損傷することなく、圧着目地部が口を開くことで建物構造を守ることができる。地震が過ぎ去ると、PC鋼材の弾性復元力で開いた口が閉じて離間した目地が元の状態に戻り、構造物に残留変形が生じることなく健全な状態であり、圧着目地部が仮に軽微な損傷を受けたとしても補修して継続的に使用することができる。
3.極大地震の入力値を下げる。
所定の設計値以上の極大地震に遭遇した場合では、柱と梁の接合部が口を開き回転を起こし、圧着目地部付近において所要の長さ範囲でPC鋼材とグラウトとの付着が切れた状態になり、PC鋼材が抜け出して伸び量を増やすことにより、地震エネルギーを吸収させると共に、PC鋼材が負担する張力が上がらずにPC鋼材の弾性範囲に保つことができ、それによって入力値を小さくすることができる。つまり、所定の設計値以上の極大地震に遭遇した場合にPC鋼材の弾性変形直線はやや水平に寝てくるので、入力値を下げることができるのである。また、圧着接合部において、2次ケーブルとするPC鋼材の緊張力は、該PC鋼材の規格降伏荷重(Py)に対して50%程度(40〜60%Py)に制御することにより、所定設計値以上の極大地震が起きる場合でも、PC鋼材に十分に余力を持たせて最後まで弾性範囲にあるから、バネのように働き、地震による建物変形に抵抗する力になり、PC鋼材の弾性抵抗力によるプレストレスの復元力が変形した建物を元の状態に戻そうとする力になる。要するに、プレストレスによる制震効果が得られる。
4.柱脚部での柱損傷を無くす。
さらに、所定の設計値以上の極大地震に遭遇した場合では、柱脚下の圧着目地部が口を開き、パーシャル・プレストレスの状態になり、PC鋼材を弾性範囲に保ちながら圧着目地部が口を開くことによって、地震エネルギーを吸収し、建物全体を支える最も重要な柱脚部での柱損傷破壊を無くすことができる。そして、柱脚部の圧着目地部において、2次PC鋼材は、最後まで塑性変形することなく弾性範囲に保ち続けているから、地震後、PC復元力によって口が再び閉じて目地が元に状態に戻るから、建物が継続的に再利用することができる。
5.免震および制震効果とコスト削減の建造物が得られる。
本設計法によるPC構造と免震工法とを組み合わせたPC免震構造は、弾性設計で上部構造が非線形弾性域内に納めてPC復元力特性をもつ構造になり、耐震、免震に加え、制震効果が得られるのである。プレストレスが導入されていることにより、地震による変形後には建物を元の状態に戻そうとする復元力となって制震効果が発揮される。また、RC構造に比べて上部構造の柱と梁の断面を20%程度小さくでき、スリム化によるコスト削減に寄与できる。更に、免震構造の場合には、アイソレーターの配置に関係して、面圧を大きくする必要があるため支持スパンを大きくする必要がある。このとき、上部構造が本設計法によるラーメン構造であれば支持スパンを大きくすることができるし、長期荷重におけるひび割れの心配もないのである。
また、導入されたプレストレスの復元力によって地震時の揺れを格段に小さく抑えることができ、地震後、建物が元の状態に戻るから、地震による繰り返しの揺れや変形を抑制するので優れた制震効果が得られる。要するに、免震効果とプレストレスによる制震効果とが得られるのである。
6.スラブのひび割れ防止効果が得られる。
従来のRC構造等において、常時発生する風荷重や中小地震荷重による揺れや振動を受け、コンクリートスラブにひび割れがよく発生すると共に過度なたわみ変形が生じることが多く、建造物の使用性と耐久性に大きな支障をきたすことになっている。これに対しては、本設計法によるPC構造のPC復元力によって、剛性を大幅に向上させて常時に発生する揺れや振動を格段に小さく抑えることができ、スラブのひび割れ防止効果を奏する。また、プレキャスト梁部材に配設された1次ケーブル及び2次ケーブルをスパンの中央断面で偏心させて配線することによって梁に上向きキャンバーを形成してあるので、使用時荷重によるたわみ変形が相殺されて使用時に障害となる変形が生ずることはない
本発明のPC圧着関節工法によるPC構造の耐震設計法が適用される代表的なPC建造物の配線形状を含んだ一部を断面で示す側面図である。 本設計法の基本原理となる(a)釣竿理論と(b)関節理論とを示す説明図である。 本設計法にエネルギー吸収の概念図である。 本設計法におけるPC圧着接合の状態を示す説明図である。 本設計法におけるPC鋼材の付着状態と付着切れとを示すもので、(a)付着しているPC鋼材に緊張力が導入されている状態で、(b)付着が切れてPC鋼材に伸びが発生している状態を示す説明図である。 本設計法におけるPC鋼材の付着が切れた時の荷重と伸びの関係を示す概念図である。 本設計法における構築部材である(a)梁と、(b)、(c)柱とに導入されたプレストレス力(内力)による制震効果を示す模式図である。 本設計法に係る建造物として、実物大1/3スケールで耐震実験体として使用した十字型骨組で、(a)全体を示す側面図、(b)柱の拡大断面図、(c)梁の拡大断面図である。 同耐震実験の結果と、従来構造の実験結果とを示した表である。 本設計法によるPC構造物と従来のRC構造物との地震時における、構造物に入力する応力と揺れ幅および残留変形量を示した概念図である。
本発明に係るPC圧着関節工法による耐震設計法を図示の実施の形態に基づいて詳しく説明する。PC圧着関節工法の基本構成は、図1に示すように、基礎1、柱2、梁3からなるラーメン構造とし、構築部材の柱2と梁3は、高強度プレキャスト・プレストレストコンクリート部材とする。基礎1と最下階の柱2との間に、柱脚とする台座ブロック14を設置しその下に圧着目地6を設け、基礎1から台座ブロック14に貫通して柱に配設される2次PC鋼材13によって基礎1と台座ブロック14及び柱2を圧着接合して一体化される柱脚部15が形成され、ようするに、台座ブロック14が柱の柱脚として柱脚部15に配置される。柱3にはアゴ4を設け、該アゴ4の上に、1次ケーブルとして配設したPC鋼材5でプレストレスを導入された梁3を載せて圧着目地6を設け、2次ケーブルとして配設したPC鋼材7によって圧着接合する。1次ケーブルのPC鋼材5は、長期荷重に対して配置するものであり、緊張力は従来通りに緊張定着完了時では該PC鋼材の規格降伏荷重の80%までとする。また、プレストレスの与え方は、プレテンション方式とポステンション方式(梁端緊張定着するタイプ)のいずれとしてもよい。梁部材3に配設された1次ケーブル5及び2次ケーブル7の一部をスパンの中央断面で偏心させて配線とする。
なお、プレキャスト柱の施工を安全かつ容易に行うために台座ブロックを用いることが好ましいが、図示に限ることなく設けなくてもよい。
2次ケーブルのPC鋼材7は、柱・梁を圧着接合して一体化するために用い、緊張力を従来のPC構造の設計値よりも低く設計し、圧着接合部においての緊張力はPC鋼材7の規格降伏荷重に対して50±10%程度にする。また、柱2にも複数の緊張用の2次PC鋼材13を配設する。パネルゾーン(柱と梁の接合部)において、スパン方向の大梁と長手方向の桁梁及び柱部材ともプレストレスを与えるとすることによって、パネルゾーンはXYZ全ての方向から3次元的にプレストレス力を受けることになる。なお、PC鋼材7、13は、いずれも予め配設してあるシース8内を挿通して配設され、緊張定着後グラウトを充填してボンドタイプとする。さらに、梁3の上面には各階毎にスラブ9が打設される。これによって関節機構をもつラーメン構造が構成される。
ラーメン構造において、地震力による最大応力がパネルゾーン(柱梁接合部)周辺の梁端と柱面及び最下階の柱脚部に発生するから、本設計法は、パネルゾーン、柱脚部、それら周辺の圧着目地部6及び2次PC鋼材7、13の緊張力を主な設計対象とする。
本設計法の基礎としたPC圧着関節工法は、本発明者が創造した釣竿理論と関節理論との2つ理論に基づいて確立されたものである。そのPC圧着関節工法が耐震性能に優れているのは、この2つの理論から説明できる。
[釣竿理論]
図2(a)に示すように、実際の釣りの仕掛けにおいて、大きな魚やゴミ、または石に釣り針に引っかけてしまった場合に、無理やり引っ張ると高価な釣竿10が折れたり、または道糸11が切れたりしてしまう。釣竿10、道糸11が傷つくことのないようにするため、先端に釣り針がついたハリス部分12だけを弱くして、そのハリス部分12が切れるようにしておくことで釣竿10と道糸11に損傷を与えないようにしてある。ラーメン構造で言えば、釣竿10は柱2に相当し、道糸11が梁3に相当する。そしてハリス部分12をアゴ4の上に載った梁3の端部のジョイント部分(圧着目地部6)と考え、弱いハリス部分12から先に損傷して順番に壊れていくという理論である。
[関節理論]
図2(b)に示すように、柱・梁の接合部について、これが人間の関節と同じような働きになると考える。人間の関節は、骨と骨とが関節部分で、回転できるように繋がっている。接続面は柔らかい軟骨部分があり、骨相互は周りの強くて弾力性に富んだ筋肉によって接続されている。このような構造となっているために、転んだり、何かにぶつかった時に衝撃を和らげたり吸収するのである。PC圧着関節工法において、アゴ4の上に載った梁3のジョイント部分(圧着目地部6)が関節にあたり、PC鋼材7が上記骨と骨とを繋ぐ人間の弾性筋肉に相当すると考えるのが関節理論である。
前記の構造耐震性能に関わる問題を解決するため、本設計法はPC鋼材の特質を利用したプレストレストコンクリート構造による弾性設計で大地震に対処することを基本とする考え方である。
この2つの理論を構築部材である柱2と梁3との圧着目地部6に応用すれば、PC構造に非常に優れた耐震性能を持たせることができ、さらに経済的な設計が可能となる。
従来のRC造やS造及びSRC造では、震度6弱程度の地震で建物が大きく変形して(層間変形角約1/100)部材が損傷し、または崩壊して修復できなかったのである。
本設計法では、同じ震度6弱程度の地震に対しては、予め付与されたプレストレスによるコンクリート部材内に蓄積されている内部エネルギーで対抗する力とし、その構造物自体を弾性変形させて、層間変形角が、RC構造に比べ(おおよそ1/150まで)かなり小さくなり、フルプレストレスの状態に保ち、震災後その建物が健全な状態であるような弾性設計を基本とする。上記の大地震以上の極大地震に対しては、構造体自体は弾性設計ではあるが、圧着目地部6に部分的なパーシャル・プレストレス効果で対応とする。要するに、極大地震においても、建物を損傷させないことは重要な設計条件である。これは本設計法の特長である。
なお、パーシャル・プレストレス効果とは、地震入力によって、圧着目地部が一旦口を開くが地震が過ぎ去ると、PC復元力によって口は再び閉じることという。
層間変形角については、PC部材内に蓄積した内部エネルギーと柱のPC復元力(制震効果)及び柱・梁締付効果によって、PC構造の変形に抵抗し小さく抑制しているため、同レベル地震荷重を受けても従来のRC造やSRC造の建造物より変形が小さく抑制されるのである。例えば、震度6弱程度の地震の場合には、RC造やSRC造では、層間変形角約1/100以上の塑性変形が発生するが、本設計法によるPC構造では、層間変形角がおおよそ1/150まで止まり、RC造に比べ変形量がかなり小さくなる。ただし、層間変形角の値は、構造形式だけでなく建物の規模や形状、高さ及び地盤等様々な条件によって変わるため、本設計法では、あくまでも設計の参考値として示す。
また、層間変形角と震度との表現の仕方に正確な(厳密な)取り決めが無いため、本設計法における層間変形角は、目安としての設計値であり、表示している値は、「大凡」または、「大体において」或いは、「略」、「約」という意味で示す値とする。
以上の理論に基づいた本設計法では下記の要件を満たすように設計する。
・柱破壊先行型にはしない。
・大梁破壊先行型にはしない。
・地震力によって構造物が大変形時にも大梁は落下しない。
・大梁を柱のアゴ上において下方に滑らないで回転ができるようにする。
・圧着接合部において、その圧着力は、震度6弱、層間変形角1/150程度まではフルプレストレスの状態とする。
・震度6強を超える層間変形角1/150〜1/100の極大地震時に、圧着目地部がパーシャル・プレストレスの状態にして、アゴ上にある柱と梁の構造目地部分が口を開いて(離間して)回転しエネルギーを吸収する。
パネルゾーン(柱梁接合部)の破壊制御について、柱と梁がアゴ上で口を開くことによってパネルゾーンは損傷を受けないようにする。また、パネルゾーンに3次元的に軸圧縮を付加しているのでプレストレスによる復元力特性を有しているため、地震後の残留変形は全く生じない。従来の設計法によるRC構造およびPC構造のパネルゾーンが破壊することでエネルギーを吸収することと全く違う設計思想である。
数多くの実験より確認されたことであるが、本設計法による柱・梁接合部において、所定の地震荷重設計値まで(実験では層間変形角1/100)フルプレストレスの状態で変形をさせるとパネルゾーンの上下には小さなひび割れが発生する。それ以上(設計値以上)に変形量を増すと今度は、アゴ上にある柱と梁の圧着目地部分がパーシャル・プレストレスとして、口を開いて(離間して)回転し、パネルゾーンの上下の小さなひび割れは逆に閉じて行くことが検証されたのである。これによって、パネルゾーンにひび割れを生じさせないのである。従来のRC構造では、大地震時(震度6弱以上)でパネルゾーンの塑性変形によって地震のエネルギーを吸収し、結果的にパネルゾーンがせん断破壊し構造物が崩壊に至ることになり、所謂柱先行破壊型となる。それに比べ本設計法によるPC構造の柱梁圧着接合部は、所定の地震荷重設計値まで圧着目地が離間しないが、設計値以上の極大地震時には、圧着目地が離間することによってパネルゾーンはせん断破壊することはない。最終形は、回転により圧着目地部6が軽微な損傷を受けるが、アゴ4上の大梁3は、2次ケーブルとして配線・緊張させたPC鋼線(鋼材)7によって連結されており、大梁3はアゴ4上にあるためにアゴ4から落下することはない。パネルゾーンを貫通する2次ケーブルの緊張力は、圧着接合部においてPC鋼材7の規格降伏荷重に対して50%程度にしてその引張能力に余裕(余力)を持たせることで、変形後の復元力を維持させることができる。これは実験によって本設計法による優れた耐震性能が検証されたのである。
本設計法による圧着接合部の回転について、大梁に配置してパネルゾーンに貫通するPC鋼材量とそのPC鋼材7に適切な張力を与えておくことによって、梁3と柱2の接合状態を制御することとする。圧着接合部において、PC鋼材7の緊張力は該PC鋼材7の規格降伏荷重(Py)の40〜60%の範囲とし、50%程度とすることが好ましい。常時荷重および中小地震時には、回転が起こらない剛節状態を保ち、PC構造が保有する弾性応力によって対応・制御する。震度6弱(層間変形角1/150)までは、フルプレストレスの状態になるように設計し、それ以上の極大地震に遭遇した場合にのみ、柱2と梁3の接合部が初めてパーシャル・プレストレス接合状態になり回転を起こし、圧着目地部6の離間を始めるのである。この状態になってもPC鋼材7には十分な余力があり、弾性範囲内にあるからPC鋼材7が破断(塑性変形)するようなことはない。そして、地震が過ぎ去ると、PC復元力によって口が再び閉じて回転した圧着接合部(圧着目地部)が元の状態に戻るのである。また、この圧着目地部6の離間が発生した時、シース8内のグラウトに付着していたPC鋼材7が一部において抜け出し、付着が切れた状態になる。この付着切れでPC鋼線の抜け出しによってPC鋼線の伸びを増やし、エネルギーを吸収させるというダンパー効果が得られる。これによって極大地震時の入力値を下げて上がらないようにし、ダンパー効果を生んだ構造物に入ってきた地震による破壊荷重のエネルギーを吸収させて入力荷重を小さく押えることができる。
また本設計法では、震度6弱に相当する地震(層間変形角が1/150まで)を所定の地震荷重設計値とし、構築部材と目地部分がフルプレストレスの状態になるように設計し、それ以上の極大地震については、少なくとも層間変形角1/150〜1/100まで(震度6強以上)の地震が発生する時に、構築部材はフルプレストレスの状態に、目地部分はパーシャル・プレストレスの状態になるように設計する。
本設計法におけるエネルギー吸収概念を示した図3に基づき詳しく説明する。
図における0A直線はPC鋼材7の弾性変形直線であり、部材の荷重変形関係においても線形となり、A点はPC鋼材7の弾性変形限度値Peとする。PC鋼材7に生じる張力が弾性変形限度値Peを超えると、張力がほとんど上らずに間もなくPC鋼材7が破断することになる。△0ABの面積はPC鋼材7が吸収したエネルギーであり、従来のPC構造はこのようなエネルギー消費履歴特性になっている。高い入力値の割に変形量が少ないという点が問題になり、また弾性変形限度値を超えると、PC鋼材7の伸びが少ないためにすぐにPC鋼材7が破断する危険性がある。
本設計法は、PC鋼材7を降伏させないように弾性設計を基本とする。設計値P1は、震度6弱の地震(層間変形角1/150まで)を入力値とし、ここまでは圧着目地部6に口(隙間)が開かず架構全体がフルプレストレスの状態になるように第1段階目の0C線の線形弾性設計とする。次に、震度6強以上、層間変形角1/150以上の極大地震に遭遇した場合には、圧着接合面付近において所要の長さ範囲でPC鋼材7が、シース8内のグラウトと付着切れで抜け出してPC鋼材7の伸び量(目地離間変形量)を増やし、矢印aで示したように入力荷重を下げ、圧着目地部6に口を開かせ、離間による回転を起こさせたパーシャル・プレストレス接合になるようにするのであり、これが第2段階目のCF線のような線形弾性設計とする。
結果としては、図示したように部材の荷重変形関係においては、第1段階目の0C線と第2段階目のCF線の線形弾性設計とによって、0CF線のような非線形弾性直線状になり設計値のC点を境にしてCF直線の勾配が横軸方向(水平方向)に倒れて(寝て)くる。エネルギー消費面積としては、△CAD=□BDFEになるが、入力値としてはC点からあまり上がらないから、破断する危険性は全くない。これは、設計値以上の地震に対して、付着切れによるPC鋼材7の抜け出しで伸び量を増やし、梁3が柱2のアゴ4上において回転する事によって地震エネルギーを吸収して入力値を下げて、主要構造部材(柱3、梁3、パネルゾーン)に損傷を与えないようにし、そして、PC鋼材7は余力(規格降伏荷重Pyの50%程度であるから)を十分に有しているので、鋼材は最後まで塑性変形することなく弾性範囲に保ち、復元力を保ち続け、残存エネルギーで地震後に開いた口が閉じて離間した目地が元の状態に戻り、原点復帰できることが重要な設計ポイントである。
本設計法において、所定設計値(震度6弱、層間変形角1/150まで)を超える極大地震に対しては、圧着目地部6に口を開かせ離間させて回転を生起させ、局部的(圧着目地部)にパーシャル・プレストレス状態にするが、この状態は、少なくとも層間変形角が1/100までとすることができる。さらに、建物の規模や階高形状および構造部材の配置条件等によって、層間変形角を1/50までとすることができる。また、PC鋼材7に充分な余力を持たせる設計としているため、PC鋼材7が最後まで弾性範囲内にあり、地震後弾性復元力によって建物自体が元の状態に戻る構造性能をもつようにしたのである。つまり、PC鋼材7の緊張配設は余力をもったプレストレスで、コンクリート内に内部エネルギーとして蓄積されたものとして見なし、地震エネルギーを吸収させるのである。結果として、所定設計値以上の地震が起きても、圧着目地部6が口を開くことで建物構造を守ることができ、地震後において圧着目地部6が仮に軽微な損傷を受けたとしても補修が容易に行えるから、建物全体は健全で継続使用が可能となる。以後、設計値以上の極大地震や余震が発生しても、優れた耐震性能を保有しているから、上記と同じような状態が繰り返されることになる。よって、従来の震度5強程度で構造体の損傷(塑性変形)を許容する耐震設計法とは全く異なるものである。
PC圧着接合の状態を示す図4を用いて、パーシャル・プレストレス接合について説明する。柱2と梁3とのPC圧着接合において、図の右側にフルプレストレス接合の状態を、左側にパーシャル接合の状態を示す。本設計法において、柱2に配置される2次PC鋼材13と梁3に配置される2次ケーブルとするPC鋼材7は、柱2および梁3内に配設したシース内でグラウトされたボンドタイプとする。そして、所定設計値(震度6弱、層間変形角1/150)までは、柱梁圧着接合面において、フルプレストレス接合とし、所定設計値以上(例えば、震度6強以上、層間変形角1/150〜1/100)に対しては、PC鋼材7がグラウトと付着切れで抜け出し、伸び量が増えることで圧着目地部6の口が開き、アゴ4に乗った梁3の端部が回転するように、パーシャル・プレストレス接合状態として設計する。
次いで、PC鋼材の付着切れのイメージとして図5と図6を用いて説明する。
2次ケーブルであるPC鋼材7には、定着具とアンカーヘッドを介して緊張力をプレストレス力としてコンクリートに導入する。緊張定着完了後、配線シース内にグラウトを充填して硬化させ、それ以後PC鋼材7はシース内のグラウトとの完全付着を介してコンクリート内部に応力を伝播することになる。PC鋼材7の伸びは、導入された緊張力PによってPC鋼材7には既にΔLの伸び(図示せず)が発生している。なお、部材(柱、梁)に導入されたプレストレス力はPと逆方向の圧縮力になり部材断面に作用しているが、図示を省略する。緊張定着後、PC鋼材7がグラウトと完全付着になっている目地状態が図5(a)に示すようになる。そして、極大地震が発生すると、図5(b)に示すように、地震発生前にグラウトと付着していたc位置部分のPC鋼材7は、極大地震時に構造目地の口が開き、圧着目地6付近において所要の長さ範囲(c位置部分)でPC鋼材7とグラウトの付着が切れる。この時点でPC鋼材7はΔL1の伸びが発生することになり、PC鋼材7の張力もP+ΔP1となる。要するに、PC鋼材7の伸び量ΔL1は、純粋のPC鋼材7の弾性変形量による伸び量(ΔLeとする)とグラウトの付着が切れてPC鋼材7が抜け出してくる際の伸び量(ΔLnとする)との合計値(ΔL1=ΔLe+ΔLn)となる。これによって圧着目地部6の変形が大きくなり口が開き離間して回転になる。
付着が切れた荷重と変形関係の概念として図6に示すように弾性履歴の勾配は横軸方向にねてくる。PC鋼材7の伸び量を増すことによって地震エネルギーを吸収し地震入力値を低下させることができる。なお、基本概念として説明するため、付着が切れるまでのPC鋼材7の伸び量がコンクリート部材の変形に関連するが、通常は微小であるから無視する。付着力は付着強度(σa)とPC鋼材の表面積(A)に比例する(F=σa・A)。要するに、付着力がグラウトの強度とPCケーブルの周長(断面形状と本数に関連する)及び付着長さに比例するから、この条件を適切に調整すれば予め最大付着力の大きさを設計値に合せて、所定値で付着が切れるように設計することができる。
本設計法においては、図6に示すように、所定地震レベル(震度6弱、層間変形角1/150)の設計値Pまでは、圧着目地部6がフルプレストレスの状態とし、PC鋼材7とグラウトを完全付着として設計し、設計値以上の極大地震に遭遇した場合、PC鋼材7とグラウトとの付着が切れるように設計し、PC鋼材7が抜け出してPC鋼材7の伸びを増やすことによって、エネルギーを吸収させることとする。この時に圧着目地部6は口が開き離間して回転し、局部的にパーシャル・プレストレスの状態になる。その結果は、荷重と伸びの履歴特性として設計値P点から勾配が横軸方向に倒れてくるから、構造部材に入った入力荷重はPeまで上がらず僅かに増えてP+ΔP1となり、このPC鋼材の抜け出し効果によって地震入力荷重を矢印aで示したように小さくすることができる。そして地震が過ぎ去ると抜け出した鋼材が弾性復元力によって元に戻る。これは本設計法の特長である。なお、本設計法は、所定の設計値までは、線形弾性設計とし、それを超える極大地震時に遭遇する場合を考慮して、非線形弾性設計とするが、これは、構造部材のみに対する設計方法であるが、2次ケーブルであるPC鋼材7は、全段階に亘って線形弾性範囲を保つように弾性設計とする。
本設計法によるPC構造物は耐震構造物のみならず制震構造物でもある。その理由については図7を参照して説明する。
1.プレストレストコンクリートは、構造物が将来受ける外力に対して抵抗する力をコンクリート部材内部に導入しているコンクリートである。
2.プレストレスコンクリートは、その部材を製造する段階で外力に対する防御体制を内包し内部エネルギーが蓄積されているコンクリートである。ここでいう内部エネルギーとは、コンクリート部材に予め導入されているプレストレスト力によるエネルギーである。
プレストレス力は、予め部材内部に存在している内力であり、常に部材の変形方向と反対に作用しているから、PC鋼材を弾性範囲内にあるように設計しているからバネのように働き、地震などによって建物が変形しようとしたときに抵抗する力になり、振り子のように変形した建物を元に戻そうとしている。これをプレストレスによる復元力といい、変形時に元の状態に戻そうとする力になる。この効果をプレストレスによる制震効果と称する。この制震効果は、PC構造だけに得られるものである。
図7(a)に示す梁3について、配置されているPC鋼材7に張力が導入されたため、外力Pに対抗する内力Psが既に内蔵されており、外力Pによるたわみ変形を無くすように持ち上げようとしている。
図7(b)に示す柱2について、梁3と同じようにPC鋼材7に張力が導入されているため、水平外力Pによる顛倒モーメントMpに対して、内力Psによる抵抗モーメントMpsが生じて柱の回転変形を無くし、元の状態を保持するようにしている。また、地震による繰り返し水平力Pを受ける場合は、内力Psによる復元力が働き変形を押え、地震後に柱2を元の状態に戻すという制震効果がある。
本設計法によれば、事前にPC鋼材7に余力を持たせてプレストレスを与えることによって部材・構造物の安全性をチェックする事ができ、制震性能を備えたPC構造にすることができる。
柱脚部において、上記の制震効果を利用し、所定の設計値以上の極大地震に遭遇した場合では、柱脚下の圧着目地部6が口を開き、パーシャル・プレストレスの状態になり、PC鋼材13を弾性範囲に保ちながら圧着目地部が口を開くように設計することによって、地震エネルギーを吸収し、建物全体を支える最も重要な柱脚部での柱損傷破壊を無くす。そして、PC鋼材13の鋼材量とその鋼材に付与する緊張力を適正に調整して始終弾性範囲に保つようにし、地震後PC復元力によって口が再び閉じて目地が元の状態(フルプレストレスの接合状態)に戻るから、建物が継続的に再利用することができる。なお、PC鋼材13に十分に余力を持たせるため、その緊張力は、該PC鋼材の規格降伏荷重の40〜60%の範囲とし、50%程度とすることが好ましい。また、圧着目地部付近においてPC鋼材とグラウトとの付着が切れた状態になり、PC鋼材が抜け出して伸び量を増やすことにより、地震エネルギーを吸収させると共に、PC鋼材が負担する張力が上がらずにPC鋼材の弾性範囲内に保ち、極大地震の入力値を下げることができるのである。
さらに、図示は省略するが柱脚の損傷防止に効果的な方法として、圧着目地側の接合面を曲面にし、設計値以上の極大地震時には、目地部が口を開き柱本体が回転することにより、柱本体のひび割れ発生や破損などを防ぐことができる。
本設計法の設計耐震性能を地震規模によって、耐震レベルの設計目標として部材の各部位の状態と、比較例として従来のRCやSRC造の部材変形を纏めたものを下記表に示す。
Figure 0005612231
震度6強以上の地震に遭遇した場合は、現設計法で構築されるRC造等の建物は殆ど存在しない。
つまり、RC造、SRC造等は、震度6弱程度の地震時には大梁部分の鉄筋を降伏させさらにコンクリートを圧壊してエネルギー吸収させるような設計であって、建造物が部分的にまたは全体が倒壊するのに対して、本設計法に係るPC圧着関節工法による耐震設計の場合は、釣竿理論と関節理論とにより、柱にはアゴを形成し、構築部材に導入するプレストレスは、パネルゾーンに貫通するPC鋼材量とそのPC鋼材に付与する緊張力を適正に調整したものであり、震度6強以上の極大地震に遭遇しても、アゴ部分の目地モルタルの上縁、下縁部分が離間を起こすのみで、大梁がアゴの上で回転を起こすことで、地震エネルギーを吸収するように設計しているのである。これにより非常に優れた耐震構造物を設計し構築することができる。なお、上記の優れた耐震性能を持つように設計する方法であるから、本設計法における地震の大きさは、従来設計法より1ランク上に想定したものであり、耐震レベルを大幅にアップさせた耐震設計法である。
特に、本設計法によるPC部材の変形は、柱・梁部材に予め付与されたプレストレス力によって、内部エネルギーとして働き、PC制震効果で変形を抑制し、地震の大きさ(震度)が同じであって、同レベルの地震を受けても従来のRC造やSRC造の構造より変形が小さくなるのである。
さらに、本設計法を用いた柱梁接合部の耐震性能に関する実験検証を行った。試験体形状および配筋状況を図8(a)、(b)、(c)と、その試験結果と従来構造の試験結果を併せて図9に示す。試験体は想定建物の実物大1/3スケールとしてもので、階高、スパン中央で切り出した十字形骨組である。柱・梁をプレキャスト部材とし、PC鋼より線(ケーブル)を梁に貫通させて柱・梁を圧着接合した。
層間変形角関係においては、PC鋼より線定着導入力と同じレベルに引張力が作用する時点で圧着接合部(関節部)の離間により剛性が低下し、その後、荷重の増加とともに徐々に剛性が低下し、R=1/66rad以後耐力の増加は僅かであった。R=1/25radで加力を終了したが、急激な耐力低下を生じない性状であった。このようにPC鋼より線定着導入力を規格降伏荷重の50%程度に抑えたことにより、圧着接合部(関節部)の離間からの2次勾配が従来のPC構造(アゴ無)よりも長い逆S字型原点指向型の復元力特性を示した。残留層間変形は極めて小さく、R=1/50red時までは1/1000rad程度であり、復元性は非常に高い傾向を示した。同グラフに示すように、RC構造は本設計法によるPC構造に比較すると、かなり低いレベルの入力地震動で降伏し、崩壊へと進んでしまう。
実験結果より、以下のような知見を得た。
1.部材変形角が大きくなる程、圧着目地部の口の開きは大きくなるが、梁と柱およびパネルゾーンにはひび割れはほとんど発生しない。
2.部材変形角が大きくなると「アゴ」に乗った「大梁端部」が回転するが、これらは2次ケーブルのPC鋼材7で柱2を通して隣の梁3と繋がっており、大梁3が落下する危険はない。
3.梁端の関節回転によって部材変形角が大きくなっても、部材(大梁と柱)の損傷は見られない。
以上により、本設計法では、震度6弱に相当する地震(層間変形角が1/150まで)を所定の地震荷重設計値とし、部材と圧着目地部6がフルプレストレスの状態になるように設計し、それ以上の震度6強以上の極大地震(層間変形角を1/150〜1/100まで)が発生する時に、部材はフルプレストレスの状態にし、目地部分はパーシャル・プレストレスの状態になるように設計することができる。さらに、震度7に相当する極大地震(層間変形角を1/100〜1/50まで)に対しても、目地部のみ一部軽微な損傷で、パネルゾーン及び柱2と梁3を健全な状態に保つように設計することができる。
要するに、構築部材である柱2と梁3とを圧着関節接合するために用いられる2次ケーブルのPC鋼材7に導入される緊張力は規格降伏荷重の50%程度とすることによって、巨大地震時に構築部材(骨組)を無損傷状態に保つことが可能となる。PC圧着関節工法の研究は系統的に進められており、1/50red程度の層間変形角に達するまで、残留塑性変形は殆ど生ぜず、復元力特性は安定していることが確かめられている。
次に、RC構造物と本設計法によるPC構造物の損傷の比較について図10を用いて説明する。
図10は、地震時に両構造物に入力する応力と残留変形量を示す概念図である。
RC構造物では、ある程度の応力までは弾性変形をして、それ以後は塑性変形することによってエネルギー吸収することとしているため、残留変形が大きくなるだけでなく、現実に、阪神淡路大震災の阪神高速道路3号神戸線の橋脚倒壊事故から明らかに分かったことであるが、地震時の揺れは、共鳴して増幅されて構造物の荷重は倍加する。当然、その時の塑性変形は進行し更に変形は倍加して倒壊に至るのである。
本設計法によるPC構造では、PC鋼材が大きな応力まで弾性変形内の挙動を示し、常に原点に復帰しようとしている。地震時のエネルギー吸収も構造体自体に蓄積されている内部エネルギーという内在する機能によって、PC鋼材の弾性変形内の伸びで対応し、揺れ幅は、PCの制震効果によってRC構造に比べてかなり小さい。設計値以上の極大地震時に、目地部の口を開くようにしてアゴの上で回転し、部分的にパーシャル・プレストレスの状態にし、圧着目地部付近のPC鋼材に付着を切った伸びによってエネルギーを吸収させるというダンパー効果を発揮させる。地震が終息した後に、PC鋼材が弾性体として元の状態に戻り、PC構造の復元力によって圧着目地部の口が閉じて構造物が元の状態に復帰するという特性を示す。
以上により、本設計法では、大梁に配置してパネルゾーンに貫通する2次ケーブルのPC鋼材量とその鋼材に付与する緊張力を適正に調整し、梁と柱の接合状態を制御することによって、震度6弱に相当する地震(層間変形角が1/150まで)を所定の地震荷重設計値とし、予め付与されたプレストレスによるコンクリート部材内に蓄積されている内部エネルギーで対抗する力とし、部材と目地部分がフルプレストレスの状態になるように設計し、従来設計法で構築されたRCやSRC構造が大きく塑性変形し(層間変形角1/100以上)部材が損傷破壊され、地震後の修復は殆ど不可能となるのに対して、本設計法では全ての構造部材が損傷しない。それ以上の震度6強以上の極大地震(層間変形角1/150〜1/100まで)が発生する時に、部材はフルプレストレスの状態、目地部分はパーシャル・プレストレスの状態になるように設計するができる。さらに、震度7に相当する極大地震(層間変形角1/100〜1/50まで)が起きる場合でも、本設計法によるPC構造物は、目地部のみ一部が軽微な損傷で、パネルゾーン及び梁と柱を無損傷な状態に守ることができる。
また、本設計法と免震工法との組み合わせによるPC免震構造は、上部構造をS造とする場合に比べ、剛性が高くて振動を小さく抑制することができる。上部構造をRCやSRC造とする場合に比べ、PC構造自身に復元力による制震効果が得られるため、制震ダンパーが免震装置との併用は不要となり、コストを大幅に削減することができる。
以上、本設計法の概念と基本設計条件について説明したが、本設計法の趣旨を逸脱しない範囲で建物の諸設計条件によって合理的に変更することが可能である。例えば、層間変形角の設計値は、地震の大きさ(震度)によって目安とする大凡の値である。設計実施の際には、建物の規模や形状、高さ及び地盤の状況などを設計条件に合わせて、合理的に調整して定めることが望ましい。また変形の設計値として、層間変形角のかわりに部材変形角や回転角(梁端と柱面がなす角度)を用いることもできる。その場合は、それらの値は、本設計法の設計主旨に従って適宜に設定すればよい。
また、本設計法で使用する高強度コンクリート強度は、Fc=40N/mm以上とし、50N/mm以上とすることが好ましい。
さらに、PC鋼材は従来と同様とし、各部材のPC詳細設計についての記述は省略するが、従来の設計と同様に行うことができる。
なお、概念やイメージについての図示は、設計思想や基本概念を示すものとしてモデル化したものであり、簡略的な表現としている。
本発明に係るPC圧着関節工法による耐震設計法は、基礎から柱と梁とで複数階構築される建物のラーメン構造とし、柱と梁は、高強度プレキャスト・プレストレストコンクリート部材とし、柱部材にアゴを設け、その上に梁を載せて圧着目地を設け、梁に配置してパネルゾーン(柱梁接合部)に貫通する2次ケーブルによって柱と梁を圧着接合して一体化とするPC構造の耐震設計法であって、柱梁の圧着接合部(圧着目地部)において、2次ケーブルとするPC鋼材の緊張力を制御し、所定の地震荷重設計値まで、フルプレストレスの接合状態になり、全ての構造部材の損傷を許容しないとする1段階目の線形弾性設計とし、前記の所定の地震荷重設計値を超える極大地震に遭遇した場合には、柱梁の圧着接合部がパーシャル・プレストレス接合の状態になり、圧着目地が口を開いて離間して回転し、圧着目地付近において所要の長さ範囲でPC鋼材とグラウトとの付着が切れた状態になり、PC鋼材の抜け出しによってPC鋼材の伸び量を増やし、地震エネルギーを吸収させると共に、PC鋼材にかかる張力がほとんど上がらずにPC鋼材が弾性範囲に保ち、主要構造部材(柱、梁、パネルゾーン)の損傷を許容しないとする2段階目の線形弾性設計とし、上記PC構造に関しては前記1段階目と2段階目の2段階に分けて非線形弾性設計とすることによって、1段階目では、構造体自体を弾性変形させ、全ての構造部材が損傷しないようにし、フルプレストレスの状態に保ち、震災後建物が健在な状態であり、建物としての機能が損なわれることなく継続的に使用することができる。2段階目では、所定の設計値を超える極大地震が起きる場合でも、目地部が口を開き一部のみ軽微な損傷で、パネルゾーン及び梁と柱を無損傷な状態に守ることができるので、広くPC構造の建造物に適用できる。
1 基礎
2 柱
3 梁
4 アゴ
5 1次ケーブルのPC鋼材
6 圧着目地
7 2次ケーブルのPC鋼材
8 シース
9 スラブ
10 釣竿
11 道糸
12 ハリス
13 2次PC鋼材
14 台座ブロック
15 柱脚部

Claims (8)

  1. 基礎から柱と梁とで複数階構築される建物のラーメン構造とし、柱と梁は、高強度プレキャスト・プレストレストコンクリート部材とし、柱部材にアゴを設け、その上に梁を載せて圧着目地を設け、梁に配置してパネルゾーン(柱梁接合部)に貫通する2次ケーブルによって柱と梁を圧着接合して一体化とするPC構造の耐震設計法であって、
    2次ケーブルとするPC鋼材を緊張定着させると共にグラウトを充填して付着させ、柱梁の圧着接合部(圧着目地部)において、前記2次ケーブルのPC鋼材の緊張力を制御し、所定の地震荷重設計値までは、フルプレストレスの接合状態にして、全ての構造部材の損傷を許容しないとする1段階目の線形弾性設計とし、
    前記所定の地震荷重設計値を超える極大地震に遭遇した場合には、柱梁の圧着接合部(圧着目地部)がパーシャル・プレストレス接合の状態になり、圧着目地が口を開いて離間して回転し、圧着目地付近において所要の長さ範囲でPC鋼材と付着させたグラウトとの付着が切れるように設計し、付着が切れたPC鋼材の抜け出しによってPC鋼材の伸び量を増やし地震エネルギーを吸収させると共に、PC鋼材にかかる張力がほとんど上がらずにPC鋼材が弾性範囲を保ち、主要構造部材(柱、梁、パネルゾーン)の損傷を許容しないとする2段階目の線形弾性設計とし、
    上記PC構造に関して、前記1段階目と2段階目の2段階に分けて非線形弾性設計とすること
    を特徴とするPC圧着関節工法による耐震設計法。
  2. 前記1段階目の地震荷重設計値は、震度6弱までに相当する地震とし、前記2段階目の極大地震は、震度6強以上発生する地震とすること
    を特徴とする請求項1に記載のPC圧着関節工法による耐震設計法。
  3. 前記柱梁の圧着接合部(圧着目地部)において、2次ケーブルとするPC鋼材の緊張力は、該PC鋼材の規格降伏荷重の40〜60%とすること
    を特徴とする請求項1乃至請求項2に記載のPC圧着関節工法による耐震設計法。
  4. 前記の基礎と柱の柱脚との間に圧着目地を設け、基礎から柱脚に貫通して柱に配設される2次PC鋼材によって基礎と柱を圧着接合して一体化される柱脚部において、前記の1段階目の所定の地震荷重設計値まで、フルプレストレスの接合状態になり、全ての構造部材の損傷を許容しないとし、前記の2段階目の所定の地震荷重設計値を超える極大地震遭遇した場合には、圧着目地部が口を開き離間してパーシャル・プレストレスの状態になり、PC鋼材を弾性範囲に保ちながら圧着目地部が口を開くことによって、地震エネルギーを吸収し、柱の損傷を許容しないとすること
    を特徴とする請求項1乃至請求項3に記載のPC圧着関節工法による耐震設計法。
  5. 前記の基礎と柱の間に、前記柱脚とする台座ブロックを設置すること
    を特徴とする請求項4に記載のPC圧着関節工法による耐震設計法。
  6. 前記柱脚部の圧着目地部において、2次PC鋼材の緊張力は、該PC鋼材の規格降伏荷重の40〜60%とすること
    を特徴とする請求項4乃至請求項5に記載のPC圧着関節工法による耐震設計法。
  7. 前記PC構造は、免震工法と組合せたPC免震構造を含むこと
    を特徴とする請求項1乃至6に記載のPC圧着関節工法による耐震設計法。
  8. 前記請求項1乃至7のいずれかに基づいて構築されたPC圧着関節工法による耐震建造物。
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