JP5610734B2 - 圧延方向に板厚がテーパ状に変化するテーパ鋼板の板厚制御方法 - Google Patents
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Description
通常、平板圧延における板厚制御は、圧延荷重P,ロールギャップS及び鋼板の出側板厚hの間に成り立つ下記の(1)式で示される基本的な関係に基づいて行われる。
S=h−P/M ・・・(1)
ここで、Mはミル剛性係数である。
S*=h*−P*/M ・・・(2)
そして、(1)式で得られる鋼板の出側板厚hを、(2)式で得られる目標出側板厚h*に一致させるために下記の(3)式に従ってロールギャップSを設定制御する。
S=S*−1/M・(P−P*) ・・・(3)
(3)式は絶対値AGCと称される制御方式であり、平板圧延の板厚制御に広く用いられているが、これをテーパ鋼板の板厚制御に適用する技術として、例えば特許文献1では、上記(3)式をベースとして、目標出側板厚h*を圧延長に従って時々刻々変更していくためのロールギャップSを(4)式で与える方法が提案されている。
S=S*−1/M・(P−P*)+ΔhT ・・・(4)
ここで、ΔhTはかみ込み端を基準にして圧延長に対応した目標出側テ−パ板厚変化量である。
S=S*−KA/M・(P−P*)+η・ΔhT ・・・(5)
η=(M+Q(1−KA))/M ・・・(6)
ここで、Qは被圧延材の塑性係数(−∂P/∂h)である。
S=S*−KA/M・(P−P*)−(1−KA)/M・ΔP’+ΔhT ・(7)
(7)式中の予測圧延荷重変動量ΔP’は、
ΔP’=−Q・ΔhT ・・・(8)
で示されるが、この式による圧延荷重予測に誤差がある場合、すなわちΔP’=P−P*の関係が成り立たない場合には、出側板厚に誤差を生じるという問題がある。
ΔPi’=−Σ(Qi・Δhn) ・・・(9)
ここで、Δhnは目標出側テーパ板厚変化量ΔhTを制御のサンプリング区分でn等分したものである。
しかし、同一テ−パ形状のテーパ鋼板を繰り返し圧延するテーパ鋼板の連続成形においては、圧延長が長くなると、ロールの温度が上昇し、熱膨張等の影響によりロール径が大きくなり、出側板厚に誤差を生じる場合があった。また、制御系のプロセスコンピュータの容量等の観点から、制御のサンプリングタイムを短くすることができず、サンプリングタイムが長くなる場合には、隣接するサンプリング点であるi点とi−1点との圧延荷重差が大きくなり、目標通りのテーパ勾配を有するテーパ鋼板が得られない場合があった。
しかし、ミル剛性係数の設定値が一定であることを前提としているので、段差量が大きい場合には、設定と違って実際には出側板厚によってミル剛性係数が異なってくることに起因して板厚精度の高いテーパ鋼板が得られない場合があった。すなわち、出側板厚の薄い部分に合わせてミル剛性係数を設定すると出側板厚の厚い部分の板厚精度が悪くなり、出側板厚の厚い部分に合わせてミル剛性係数を設定すると出側板厚の薄い部分の板厚精度が悪くなった。
本発明は、このような問題を解消すべく案出されたものであり、段差量が大きい場合においても、板厚精度の高いテーパ鋼板の圧延が可能な方法を提供することを目的とする。
また、その際に隣接する制御のサンプリング点間の圧延荷重差予測値及び板厚測定値に基づいてロールギャップ設定値を補正することを特徴とする。
S0=h0−P0 C/M0 ・・・(10)
Si=S0−(1/Mi−1・Pi−1−1/M0・P0 C)−(1/Mi・Pi C−1/Mi−1・Pi−1 C)・Pi−1/Pi−1 C+Δhi ・・・(11)
Mi=f(h0+Δhi) ・・・(12)
Sm=S0−(1/Mm−1・Pm−1−1/M0・P0 C)−(1/Mm・Pm C−1/Mm−1・Pm−1 C)・Pm−1/Pm−1 C+Δhm+(hj−hj m)・α ・・・(13)
ただし、S0:基準位置におけるロールギャップ設定値
h0:基準位置の目標板厚
P0 C:基準位置の圧延荷重予測値
M0:基準位置のミル剛性係数設定値
Mi,Mi−1:制御しようとしているサンプリング点と1つ前のサンプリング点
のミル剛性係数設定値
Si:制御しようとしているサンプリング点のロールギャップ設定値
Pi C,Pi−1 C:制御しようとしているサンプリング点と1つ前のサンプリング点の圧延荷重予測値
Pi−1:制御しようとしているサンプリング点の1つ前のサンプリング点の圧延荷重測定値
Δhi:制御しようとしているサンプリング点の基準位置に対する目標出側板厚差
f:出側板厚の関数
m点:繰り返しの1サイクルの終わりのサンプリング点、
j点:繰り返しの1サイクルにおける任意のサンプリング点
Sm:m点のロールギャップ設定値
Pm C,Pm−1 C:m点と1つ前のサンプリング点であるm−1点の圧延荷重予測値
Pm−1:m−1点の圧延荷重測定値
Δhm:m点の基準位置に対する目標出側板厚差
hj,hj m:j点における目標出側板厚と出側板厚測定値
α:板厚測定値に基づいたロールギャップ設定値補正における補正係数
Mm,Mm−1:m点と1つ前のサンプリング点であるm−1点のミル剛性係数設定値
3:圧下装置 4:圧下位置検出器
5:圧延荷重計 6:パルス発生器
7:板厚計 8:被圧延材
9:圧延条件入力器 10:目標板厚差設定器
11:圧延荷重予測器 12:ミル剛性係数設定器
13:ロールギャップ設定器 14:ロールギャップ位置制御系
その結果、ミル剛性係数の設定値を出側板厚の関数で表し、サンプリング点毎にミル剛性係数の設定値を変化させることにより、出側板厚に応じたミル剛性係数の変化が考慮され、段差量が大きい場合においても、出側板厚の変化する全テ−パ領域にわたって出側板厚の誤差が少なくなることを見出した。
以下に、本発明の実施の形態について、制御式に基づいて詳しく説明する。
S0=h0−P0 C/M0 ・・・(10)
そして、同一テーパ形状のテーパ鋼板の繰り返し圧延における1サイクル内で、制御の各サンプリング点のロールギャップSiを(11)式で補正する。
Si=S0−(1/Mi−1・Pi−1−1/M0・P0 C)−(1/Mi・Pi C−1/Mi−1・Pi−1 C)・Pi−1/Pi−1 C+Δhi ・・・(11)
ここで、Pi C,Pi−1 Cはそれぞれ制御しようとしているサンプリング点と1つ前のサンプリング点の圧延荷重予測値、Pi−1は制御しようとしているサンプリング点の1つ前のサンプリング点の圧延荷重測定値、Δhiは制御しようとしているサンプリング点の基準位置に対する目標出側板厚差である。また、Mi,Mi−1はそれぞれ制御しようとしているサンプリング点と1つ前のサンプリング点のミル剛性係数設定値であり、(12)式で表される。
Mi=f(h0+Δhi) ・・・(12)
(11)式における第1項,第2項及び第4項であるS0−(1/Mi−1・Pi−1−1/M0・P0 C)+Δhiは制御しようとしているサンプリング点の1つ前のサンプリング点の圧延荷重測定値に対応したロールギャップであり、第3項である(1/Mi・Pi C−1/Mi−1・Pi−1 C)・Pi−1/Pi−1 Cは隣接する制御のサンプリング点であるi点とi−1点との圧延荷重差予測値に基づいたロールギャップ設定値の補正量である。
Sm=S0−(1/Mm−1・Pm−1−1/M0・P0 C)−(1/Mm・Pm C−1/Mm−1・Pm−1 C)・Pm−1/Pm−1 C+Δhm+(hj−hj m)・α ・・・(13)
ここで、m点は繰り返しの1サイクルの終わりのサンプリング点、j点は繰り返しの1サイクルにおける任意のサンプリング点を示す。Pm C,Pm−1 Cはそれぞれ制御しようとしているサンプリング点であるm点と1つ前のサンプリング点であるm−1点の圧延荷重予測値、Pm−1はm−1点の圧延荷重測定値、Δhmはm点の基準位置に対する目標出側板厚差、hj,hj mはそれぞれj点における目標出側板厚と出側板厚測定値,αは板厚測定値に基づいたロールギャップ設定値補正における補正係数である。また、Mm,Mm−1はm点と1つ前のサンプリング点であるm−1点のミル剛性係数設定値である。
ロ−ルギャップ設定器13は、基準位置である先端の目標板厚h0、ミル剛性係数M0、圧延荷重予測器11から入力された基準位置の圧延荷重予測値P0 Cに基づき、前述の(10)式を用いて基準位置におけるロ−ルギャップS0を算出し、これをロールギャップ位置制御系14に入力する。
図1に示した制御系を用いて、図2の形状を繰り返し圧延し、テ−パ鋼板を連続成形した。圧延素材として、板厚1.6mm,板幅250mmのコイル状の普通鋼鋼板を用い、目標とするテーパ形状を薄肉部板厚0.9mm,厚肉部板厚1.5mm,薄肉部長さ100mm,テーパ部長さ400mm,厚肉部長さ200mmの形状とし、全長1100mmのテーパ鋼板を繰り返し800枚圧延した。なお、圧延荷重式としては、Hillの式を用い、板厚測定値に基づいたロ−ルギャップ設定値補正における補正係数αを0.7として圧延を行った。また、板厚制御におけるサンプリングタイムについては、圧延長20mm間隔で制御を行うようにした。
従来法では、出側板厚によってミル剛性係数が異なってくることが考慮されていないため、平均偏差22μm、最大偏差43μmであったが、本発明法では平均偏差11μm、最大偏差21μmと改善されている。
Claims (3)
- 予測圧延荷重と圧延荷重,ロールギャップ及び鋼板の出側板厚の間に成り立つ関係式に基づいてロールギャップを設定し板厚制御を行う制御系を用い、目標出側板厚を圧延長に従ってテーパ状に変更することにより出側板厚を圧延方向に連続的に変化させるテーパ鋼板の板厚制御方法において、ミル剛性係数の設定値を出側板厚の関数で表すことを特徴とする圧延方向に板厚がテーパ状に変化するテーパ鋼板の板厚制御方法。
- 隣接する制御のサンプリング点間の圧延荷重差予測値及び板厚測定値に基づいてロールギャップ設定値を補正することを特徴とする請求項1に記載の圧延方向に板厚がテーパ状に変化するテーパ鋼板の板厚制御方法。
- 同一テーパ形状のテーパ鋼板の繰り返し圧延における1サイクル内で予測圧延荷重と圧延荷重,ロールギャップ及び鋼板の出側板厚の間に成り立つ関係式として下記(10)、(11)式を用い、サイクル間で予測圧延荷重と圧延荷重,ロールギャップ及び鋼板の出側板厚の間に成り立つ関係式として下記(13)式を用いるとともに、下記(12)式を用いてミル剛性係数の設定値を出側板厚の関数で表す請求項1又は2に記載の圧延方向に板厚がテーパ状に変化するテーパ鋼板の板厚制御方法。
S0=h0−P0 C/M0 ・・・(10)
Si=S0−(1/Mi−1・Pi−1−1/M0・P0 C)−(1/Mi・Pi C−1/Mi−1・Pi−1 C)・Pi−1/Pi−1 C+Δhi ・・・(11)
Mi=f(h0+Δhi) ・・・(12)
Sm=S0−(1/Mm−1・Pm−1−1/M0・P0 C)−(1/Mm・Pm C−1/Mm−1・Pm−1 C)・Pm−1/Pm−1 C+Δhm+(hj−hj m)・α ・・・(13)
ただし、S0:基準位置におけるロールギャップ設定値
h0:基準位置の目標板厚
P0 C:基準位置の圧延荷重予測値
M0:基準位置のミル剛性係数設定値
Mi,Mi−1:制御しようとしているサンプリング点と1つ前のサンプリング点のミル剛性係数設定値
Si:制御しようとしているサンプリング点のロールギャップ設定値
Pi C,Pi−1 C:制御しようとしているサンプリング点と1つ前のサンプリング点の圧延荷重予測値
Pi−1:制御しようとしているサンプリング点の1つ前のサンプリング点の圧延荷重測定値
Δhi:制御しようとしているサンプリング点の基準位置に対する目標出側板厚差
f:出側板厚の関数
m点:繰り返しの1サイクルの終わりのサンプリング点、
j点:繰り返しの1サイクルにおける任意のサンプリング点
Sm:m点のロールギャップ設定値
Pm C,Pm−1 C:m点と1つ前のサンプリング点であるm−1点の圧延荷重予測値
Pm−1:m−1点の圧延荷重測定値
Δhm:m点の基準位置に対する目標出側板厚差
hj,hj m:j点における目標出側板厚と出側板厚測定値
α:板厚測定値に基づいたロールギャップ設定値補正における補正係数
Mm,Mm−1:m点と1つ前のサンプリング点であるm−1点のミル剛性係数設定値
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