JP6036446B2 - テーパ鋼板の製造方法 - Google Patents

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本発明は、鋼板長手方向に板厚が連続的に変化するテーパ部を有するテーパ鋼板の製造方法に関する。
テーパ鋼板は、鋼板長手方向で板厚の異なる鋼板の総称であり、1つ以上の平行部とテーパ部を有し、鋼構造物の重量低減や、溶接箇所の削減を可能とした高機能鋼板であり、造船材や橋梁材に多く使用されている。このようなテーパ鋼板のテーパ部では鋼板長手方向に板厚が連続的に変化するので、通常の平板で用いられる各パスでの板厚実績を用いた次パスでのロールギャップの補正は難しい。
一般に、平板圧延における板厚制御は、圧延荷重P、ロールギャップS及び鋼板の出側板厚hの間に成り立つ下記の(1)式で示される基本的な関係に基づいて圧延が行われる。
S=h−P/K ・・・(1)
ここで、Kはミル定数である。
(1)式は圧延中の状態で常に成り立つ式であるが、鋼板のかみ込み前の予測計算においても、目標出側板厚hを得るために(1)式と同様の(2)式を用いて予測圧延荷重Pに基づいてロールギャップSを設定することができる。
=h−P/K ・・・(2)
そして、(1)式で得られる鋼板の出側板厚hを、(2)式で得られる目標出側板厚hに一致させるために下記の(3)式に従ってロールギャップSを設定できる。
S=S−1/K・(P−P) ・・・(3)
(3)式は一般に絶対値AGCと呼ばれる制御方式を表しており、絶対値AGC制御は平板圧延の板厚制御に広く用いられているが、これをテーパ鋼板の板厚制御に適用する技術として、例えば特許文献1では、上記(3)式をベースとして、目標出側板厚hを圧延長に従って時々刻々変更していくためのロールギャップSを(4)式で与える方法が提案されている。
S=S−1/K・(P−P)+Δh (4)
ここで、Δhはかみ込み端を基準にして圧延長に対応した目標出側テーパ板厚変化量である。
特許文献2には、長手方向に連続的に板厚が変化するテーパ部を2以上有するテーパ鋼板を圧延する際の圧下スケジュールを作成するテーパ鋼板の圧下スケジュール作成方法であって、テーパ鋼板の目標形状の中から1つのテーパ部を含む代表テーパ部を選択し、該代表テーパ部について、厚板材料から目標形状に圧延するまでの各ステップの圧下スケジュールを体積一定則に従って作成し、作成した代表テーパ部の圧下スケジュールに基づいて、他のテーパ部の圧下スケジュールを作成し、テーパ鋼板全体の圧下スケジュールを作成する方法が開示されている。
特開昭51−97565号公報 特開平10−263639号公報
テーパ鋼板の圧延において、テーパパスの噛込み端の荷重を基準荷重とし、その点における圧延機の縦伸び(ミル定数(t/mm))を採用し、各長手方向位置での荷重誤差による板厚誤差を絶対値AGC制御(シリンダー制御)することで板厚精度を確保してきた。
しかし、実際のミル定数は荷重域で異なり、高荷重域ほどミル定数は大きくなる傾向がある(図2)ため、噛放し側の板厚精度が確保しにくい(図3)という問題がある。
即ち、上記した特許文献では、ミル定数は一定であることを前提としているので、テーパ鋼板の段差量が小さい場合は殆ど問題がないが、段差量が大きい場合には、出側板厚に合わせてミル定数を設定すると入側板厚の板厚精度が悪くなり、入側板厚に合わせてミル定数を設定すると出側板厚の板厚精度が悪くなるという問題がある。即ち、圧延機入側と出側の荷重差が大きい場合は荷重域によるミル定数の違いが板厚誤差を生じさせることとなる。
また、長さ精度に関しては、長さ方向のロール先進率予測により、ロールギャップ変更位置を算出して、制御しているが、測長精度や先進率精度の問題から誤差が生じるという問題がある。
本発明は、上記した問題点を解決して板厚精度や板長精度に優れたテーパ鋼板の製造方法を提供することを目的とする。
本発明の要旨は以下の通りである。
[1] 鋼板長さ方向に連続的に板厚が変化するテーパ部を有するテーパ鋼板を複数のパスで圧延するパススケジュールにおいて、各圧延パスで圧延長さ方向に鋼板を多分割し、各圧延パスの各分割点毎にミル定数を決定することを特徴とするテーパ鋼板の製造方法。
[2] 上記[1]記載のテーパ鋼板の製造方法において、さらに、圧延噛込み端側平行部予測長さを、前パスの噛離し端側平行部実績長さを用いて補正することを特徴とするテーパ鋼板の製造方法。
本発明は、テーパ鋼板の圧延におけるミル定数の設定を多点化したので、板厚精度が向上した。また、前パスの長さ実績を次パスに反映させることで長さ精度向上の効果が得られた。
熱間圧延機の板厚制御系統を説明する図である。 ミル定数の傾向を説明する図である。 テーパ部板厚の予測と実績の関係を説明する図である。 本発明のテーパ部分割方法を説明する図である。 従来のテーパ部分割方法を説明する図である。 平行部の圧延方法を説明する図である。 平行部長さの補正方法を説明する図である。 テーパ鋼板の形状を示す一例である。 ミル定数の分割設定方法を説明する図である。 狙い厚精度を説明する図である。
1.可逆式熱間圧延機の構成
はじめに、本発明の1実施形態である熱間圧延機の板厚制御系統を図1を用いて説明する。可逆式熱間圧延機1は、鋼板21を圧延する上下1対のワークロール3と上下1対のバックアップロール2とを備え、鋼板21を複数パス熱間圧延を繰り返して目的の形状に圧延する。
可逆式熱間圧延機1は、制御系として、ロードセル6、パルスジェネレータ7、油圧シリンダ4、サーボ弁12、マグネスケール5、AGC制御盤8、コントローラ9を備える。
プロセスコンピュータ10はパススケジュールの演算を行い、各パスにおける板厚変更量、先進率、予測荷重、初期圧下位置、ミル定数を算出し、算出結果をコントローラ9に入力する。ロードセル6はワークロール3の圧延荷重Pを検出し、検出された圧延荷重Pを示す信号はAGC制御盤8を介してコントローラ9に送信される。パルスジェネレータ7はワークロール3の回転数Wを検出し、検出された回転数Wを示す信号はコントローラ9に送信される。マグネスケール5はバックアップロール2のロール開度Sを検出し、検出されたロール開度Sを示す信号はAGC制御盤8を介してコントローラ9に送信される。
コントローラ9はロードセル6、パルスジェネレータ7からの情報、プロセスコンピュータ10からのパススケジュール演算結果に基づいてAGC制御盤8、サーボアンプ11を介してサーボ弁12の開度を制御する。油圧シリンダ4は、サーボ弁12の開度に応じて昇降し、ワークロール3のロールギャップを調整する。
2.パススケジュールにおけるテーパ部多分割とミル定数の多点化について
一般に、テーパ鋼板の圧延においては、鋼板長手方向各位置での板厚を目標値に制御することが必要であり、その実現のためにはワークロールのギャップ制御の前提となる圧延長さの正確な予測が重要である。このときの圧延長さLは、下記(5)、(6)式を用いて予測し、予測した各圧延長さに応じてロールギャップを設定し、目標とした板厚を精度よく与える。
L=(1+f)×ΣN×Δt×π×R・・・・・(5)
なお、式中fは先進率、Nはサンプリング周期毎のワークロール回転数[1/s]、Rはワークロール径[mm]、Δtはサンプリング周期[s]を表す。
f=0.25×r =0.25×(H−h)/H・・・・・(6)
なお、式中rは圧下率、Hは鋼板の入側板厚[mm]、hは鋼板の出側板厚[mm]を表す。
鋼板長手方向位置Lは、ワークロール回転数Nに(1+先進率f)を乗じた式で表されるが、テーパ鋼板の圧延工程では、鋼板の入側板厚Hと出側板厚hとが逐次変化するために、式(6)から明らかなように、先進率fも逐次変化する。従って、鋼板の圧延長手方向位置Lを算出する際には、式(6)に基づいて先進率fも逐次変更する必要がある。
しかしながら、図5に示すように、各パスにおいてテーパ部を仮想的に均等分割した場合、マスフロー一定の原則から圧延前の分割点の位置と圧延後の分割点の位置とは厳密には一致しない。即ち、図5(a)はテーパパス開始直前の圧延パス(i)であり、テーパ部を均等にn等分しn番目の分割点をPaとする。図5(b)はテーパ圧延開始1パス目を表す圧延パス(i+1)で、本パスにおいてもテーパ部を均等にn等分し、薄部からn番目の分割点をPbとすると、Pb点はiパスで薄部からn番目の分割点であったPa点とは異なることとなる。同じく図5(c)は圧延パス(i+2)であり、本パスにおいてもテーパ部を均等にn等分すると薄部からn番目の分割点Pcの位置は圧延パス(i+1)でPbであった位置とは異なることとなる。従って、先進率算出で用いる出側板厚に誤差を生じ、結果として鋼板長手方向の板厚精度に誤差を生じる。
そこで、鋼板長手方向を分割するときに、各パスでの分割部の鋼板長手方向側断面積が等しくなるように分割すると、マスフロー一定の原則から圧延前の位置と圧延後の位置が一致し、先進率算出における誤差がなくなる。このことを、図4を用いてさらに詳しく説明する。
図4(a)はテーパ圧延開始直前の圧延パス(i)でテーパ対象部分を鋼板長手方向に側断面積を均等にn等分した例で、厚部板厚をH(i)、薄部板厚をh(i)、薄部からn番目の分割点Paの板厚をh(i,n)、側断面積をS(i,n)とする。本段階はテーパ圧延開始直前の圧延パス(i)であるので、板厚H(i)、h(i)、h(i,n)は同じ値であり、鋼板長手方向に均等にn分割することによって、側断面積S(i,n)を有するn個の分割部が作成される。また、各分割部における板長さをL(i,n)、テーパ部全長さをL(i)とする。
図4(b)は圧延パス(i+1)で、テーパ圧延開始1パス目であり、厚部板厚はH(i+1)、薄部板厚はh(i+1)、薄部からn番目の分割点Pbの板厚はh(i+1,n)、側断面積はS(i+1,n)、各分割部の板長さはL(i+1,n)、テーパ部全長さはL(i+1)となる。なお、ここで、n個の分割部の側断面積がパス間で等しくなるように分割しているので、側断面積S(i+1,n)は、側断面積S(i,n)と同じ面積となるので、図4(b)のPb点は、図4(a)のPa点と一致する。
図4(c)は圧延パス(i+2)で、テーパ圧延開始2パス目を表す。図4(b)と同様に、ここで、n個の分割部の側断面積がパス間で等しくなるように分割しているので、側断面積S(i+2,n)は、側断面積S(i,n)と同じ面積となるので、図4(c)の薄部からn番目の分割点Pc点は図4(a)のPa点、図4(b)のPb点と一致する。
各分割点の鋼板長手方向位置は各圧延パスで一致するので、先進率算出に用いられる出側板厚に誤差が生じず、従って、式(6)で求められる先進率の精度が向上し、式(5)から求まる鋼板長手方向位置Lの予測精度が向上する。なお、各分割点における圧延荷重Pは、P=W×ld×Qp×Kf を用いて算出できる。なお、Pは圧延荷重、Wは板幅、ldは接触弧長、Qpは圧下力関数、Kfは変形抵抗を表す。
そして、図3の鋼板長手方向位置における板厚、圧延荷重の予測値からミル定数の変化範囲を線形補間によって算定し(図2)、上記した各圧延パスのn分割点に割り振ることによって、各分割点でのロールギャップ補正量が算出され、実績と予測の板厚偏差をゼロに近づけるように圧下位置をAGC制御することによって、テーパ部における板厚精度を向上することができる。
3.テーパ部開始位置の圧延長手方向位置ずれ防止について
テーパ鋼板のテーパ部開始位置はパススケジュールの各パス入側予測長から算出している。しかし、圧延予測長には実貫重量誤差や板厚/板幅変動に起因する誤差を含んでいるためテーパ部開始位置がずれて予定した板厚を形成できない場合等がある。
図6を用いてさらに詳しく述べると、図6(a)は前パス(i−1)パスの状態で、圧延噛み放し端側である平行部が次パス(iパス)では噛み込み端側となり、次パス(iパス)での平行部予測長さより実績長さが長い場合である。図6(b)は次パス(iパス)での圧延を示すもので、平行部の実績長さがパススケジュール上の予測長さより長いので、
パススケジュール通り圧延を実施するとテーパ部を形成し始めるロールギャップ変更開始点は、A点となるので、テーパ圧延開始位置が早くなり予定しない過大な圧延荷重が掛かることとなる。
このように、テーパ部の圧延では、パススケジュールに従って、ロールギャップがロールギャップ変更開始予定点から変更終了予定点まで自動的に変更されるので、ロールギャップ変更開始点がずれると、テーパ部の板厚誤差が生じ、また過大荷重により、設備仕様を超える圧延荷重が発生するケースがある。
そこで、本発明では、前パスでの噛み放し端側の平行部長さL1、L3の実績を検出し(図7(b))、この実績長さを用いて噛み込み端側の平行部長さを補正(図7(a))することでテーパ開始位置の圧延長手方向位置ずれを防止するようにした。これによって、圧延長予測と実績の差によって生じるテーパパターンの位置ずれを次パスに持ち越すことなく、圧延長手方向の板厚精度を高くするとともに圧延中の急激な荷重変動の発生を抑制することができる。
なお、本説明では図8に示すようなテーパ部の両端部に平行部のあるテーパ鋼板について説明したが、製品においてテーパ部のみで両端部に平行部がないテーパ鋼板や、片側のみに平行部があるテーパ鋼板の場合も圧延工程においては、テーパ部の両端に平行部を設けて圧延し、製品に仕上げる段階で平行部を切落とせばよいので、本発明の圧延方法では製品で平行部のないテーパ鋼板も含まれる。
本発明の実施例を説明する。
図8に示した形状のテーパ鋼板を従来法と本発明法の両方で製造し比較を行った。
試験したテーパ鋼板の寸法は、薄部(h)11〜25mm/厚部(H)13〜30mm×幅(W)2000〜5000mm×薄部平行部長さ(L3)1000〜15000mm/テーパ部長さ(L2)500〜2000mm/厚部平行部長さ(L1)1000〜15000mmである。
テーパ部の圧延方法を図9に示す。圧延は、厚部で鋼板を噛込み、テーパ圧延を行って、薄部で噛放すパスである。厚部から薄部に至るテーパ部を16分割した。本発明では、厚部及び薄部で想定されるミル定数の間を直線近似して16分割し各分割点に割り振って荷重予測を行った。一方、従来法では厚部で想定されたミル定数を薄部まで一定とした。
圧延結果を図10に示す。薄部における狙い厚の精度は従来法ではσ=72.1μm、本発明法ではσ=63.3μmとなり、本発明法は優れた結果が得られた。
また、厚部平行部長さ(L1)の精度(σ)は、従来法ではσ=134.2mm、本発明法ではσ=111.6mmとなり、本発明法の長さ精度は優れていることがわかる。
1 可逆式熱間圧延機
2 バックアップロール
3 ワークロール
4 油圧シリンダ
5 マグネスケール
6 ロードセル
7 パルスジェネレータ
8 AGC制御盤
9 コントローラ
10 プロセスコンピュータ
11 サーボアンプ
12 サーボ弁
21 鋼板
P 圧延荷重
S ロール開度
ΔS ロールギャップ補正量
W ワークロール回転数

Claims (1)

  1. 鋼板長さ方向に連続的に板厚が変化するテーパ部を有するテーパ鋼板を複数のパスで圧延するパススケジュールにおいて、各圧延パスで圧延長さ方向に鋼板を多分割し、各圧延パスの各分割点毎にミル定数を決定し、
    さらに、圧延噛込み端側平行部予測長さを、前パスの噛離し端側平行部実績長さを用いて補正することを特徴とするテーパ鋼板の製造方法。
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