JP5608620B2 - 樹脂成形品の製造方法、及び、樹脂成形品 - Google Patents
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そして、食品用トレーなどの樹脂成形品を製造するのに際しては、原反ロールから前記発泡シートを繰り出してシート幅方向両端部をクランプと呼ばれる部材で把持しつつ加熱ゾーンと成形ゾーンとを有する熱成形機中を通過させて製品形状を形成させた後で該製品形状形成部分の外周に沿って電熱線で切断(ニクロムカット)したり、製品形状形成部分をトムソン刃型で打ち抜いたりするような工程が実施されている。
そのため、従来の樹脂成形品は、熱成形時における二次発泡の挙動が十分安定しない状態で製造されているために確実に良品を得ることが難しく、歩留りの向上を図ることが困難な状況となっている。
従来、樹脂成形品の形成に利用される発泡シートは、坪量が200g/m2前後のものが主流であるが、近年、石油資源の消費量削減といった環境面や材料費の削減といった製造コスト面から坪量が100g/m2前後の軽量な発泡シートを樹脂成形品の形成に利用する場面が増えてきている。
このような軽量な発泡シートを熱成形する際には、二次発泡における発泡の挙動や熱収縮の挙動が樹脂成形品の出来栄えに特に影響を与えやすいため樹脂成形品の歩留りの向上を図ることが特に困難な状況になっている。
本実施形態に係る樹脂成形品の製造方法においては、ポリスチレン系樹脂組成物を押出発泡させてなる発泡シートが用いられ、特に、前記押出発泡においてイソブタン、又は、イソブタンとノルマルブタンとの混合ブタンが発泡剤として用いられている発泡シートが用いられることが重要である。
また、本実施形態に係る樹脂成形品の製造方法においては、前記発泡シートを二次発泡させて熱成形が実施され、特に、前記二次発泡前における前記イソブタンの含有量が1.5質量%以上3.0質量%以下で、前記ノルマルブタンの含有量が1.0質量%以下となる発泡シートを用いて前記熱成形が実施されることが重要である。
本実施形態においては、前記押出発泡によって長尺帯状に形成され、0.9mm以上2.0mm以下の厚みを有し、70g/m2以上150g/m2以下の坪量を有する発泡シートが用いられる。
なお、本実施形態において上記のような特性を有する発泡シートを用いるのは、厚みが厚い発泡シートを用いて樹脂成形品を製造する場合などには比較的安定した品質のものが得られやすいのに対して厚みが薄い発泡シートや、坪量が小さな発泡シートにおいては、残存している発泡剤の量による二次発泡の挙動が当該発泡シートを用いて製造する樹脂成形品の強度などの特性や外観に影響を与えやすいためである。
従って、本発明の効果をより顕著なものとし得る点においては、発泡シートの厚みは1mm以上1.5mm以下であることが好ましく、坪量は80g/m2以上120g/m2以下であることが好ましい。
通常、熱成形においては、発泡シートの押出方向と直交する方向に相当するシート幅方向の両端部がクランプによって把持されることになるため、この方向において発泡シートにある程度の分子配向が生じていたとしてもクランプによって熱収縮が規制されることになる。
一方で、押出方向には規制が加えられ難いため、特に、この方向に分子配向を生じさせていない発泡シートを用いることが好ましく、本実施形態においては、押出方向が長手方向となる幅5cmの短冊状試料を切り出して当該短冊状試料を110℃に加熱した際に、前記押出方向において生じる収縮力の最大値(最大収縮荷重)が3.0N以下となる発泡シートを用いる。なお、最大収縮荷重は、通常、0N/5cm以上の値となり、0.5N/5cm以上の値となる発泡シートが好適である。
前記気泡調整剤としては、上記の内の一種だけを単独で用いても良く、二種以上を所望の割合で混合して用いてもよい。
前記混合ブタンを採用する場合には、イソブタンとノルマルブタンとの混合割合を、例えば、95:5〜50:50(イソブタン:ノルマルブタン)の範囲内のいずれかとすることが好ましい。
この発泡剤の残存量は、ポリスチレン系樹脂組成物に含有させる発泡剤の量のみならず、押出時の樹脂温度や、押出後の冷却条件によって調整することができる。
また、この押出発泡におけるポリスチレン系樹脂組成物の吐出量、引取速度、及び、冷却条件等を調整することで、前記最大収縮荷重についても調整が可能である。
具体的には、発泡シート中の発泡剤残存量は、以下のようにして測定することができる。
発泡シートから切り出した試料10〜20mgを20mLバイアル瓶に入れて精秤し、密閉してオートサンプラー付ガスクロマトグラフ(Perkin−Elmer社製 ガスクロマトグラフ 「Clarus500」、同社製HSオートサンプラー「TurboMatrix HS40)にセットし、160℃で20min加熱後、上部の空間の気体をとってMHE(Multiple Headspace Extraction)法にて定量分析を実施し発泡剤残存量を測定することができる。
なお、ここでいうMHE法とは、気固平衡にある気相ガスの放出を同じ試料瓶から2回測定して得られたピーク面積の減衰を利用する定量方法である。
また、具体的な測定条件は、下記のような条件とすることができる。
カラム:J&W社製DB−1(1.0μm×0.25mmφ×60m)、カラム温度:初期温度50℃で6min保持後、40℃/minの速度で昇温、270℃で1min保持、入口温度:200℃、検出温度:250℃、レンジ:20、ベントガス:30mL/min(He)、追加ガス:5mL/min(He)、ガス圧力:初期圧力18psiで10min保持後、0.5psi/minで19.5psiまで昇圧。
オートサンプラー条件:加熱温度160℃、加熱時間20min、加圧ガス圧25psi、加圧時間1min、ニードル温度160℃、トランスファーライン温度180℃、試料導入時間0.08min。
幅50(mm)×長さ150(mm)の短冊状試料を、長手方向が押出方向となるように発泡シートから切り出し、(株)オリエンテック製の引張試験機(テンシロン万能試験機「UCT−10T」)に付帯の恒温槽をセットし、該恒温槽内で前記引張試験機の上下のチャックが上下方向に100mm離れた状態となるように配置して前記恒温槽内を110℃に加熱し、前記チャックに前記短冊状試料の長手方向両端部をすばやく挟み込んで引張試験機のロードセルが検知した最大の引張応力を最大収縮荷重として測定することができる。
なお、上記のような発泡剤の残存が良好な樹脂成形品を歩留り良く得る上で重要なのは、前記イソブタンの残存量が、前記範囲(1.5〜3.0質量%)を超える量となっている場合には、イソブタンの可塑効果が過度に作用することにより、発泡シートを熱成形して得られる成形品に表面荒れが発生するおそれを有するためである。
また、前記範囲に満たない量となっている場合には、熱成型時に必要な二次発泡性を確保することが難しくなるためである。
本実施形態の製造方法によれば、フードパックや納豆容器などの樹脂成形品について上記のような不良が発生することを抑制することができ、歩留り向上を図ることができる。
即ち、このようにして製造される樹脂成形品は、品質の整ったものが容易に得られるという効果を奏する。
坪量約105g/m2、厚み約1.2mm、幅1040mmの発泡シートが巻回されてなる4種類の原反ロールを用いて納豆容器を作製した。
この4つの原反ロールを構成している発泡シートの諸特性を調べたところ下記表1に示す通りであった。
このことからも本発明によれば、特に問題の生じやすい坪量の小さな発泡シートを用いた場合であっても、樹脂成形品の製造における歩留り向上を図り得ることがわかる。
厚み1.13mmで坪量が115g/m2の原反ロールを用いて、図1(概略平面図)に示すような納豆容器を作製した。
具体的には、9.8cm×9.8cmの正方形の蓋部10と、8.2cm×8.2cmの開口を有する深さ2.5cmの収容凹部21が中央部に形成された平面視における外形が9.8cm×9.8cmの容器本体部20とが幅0.5cm(長さ9.8cm)の連設部30を介して連設されてなる納豆容器1を作製した。
また、蓋部10と容器本体部20とを重ね合わせた際の位置ズレは、0.4mmであった。
具体的には、試料を20ml専用ガラスバイアルに精秤密封し、パーキンスエルマー社製ヘッドスペースサンプラー「TurboMatrixHS40」にセットし、160℃で20分間加熱後、パーキンスエルマー社製ガスクロマトグラフ「Clarus500GC」(検出器:FID)を用いてMHE法にて定量した。
ヘッドスペースサンプラーにおける測定条件は、ニードル温度160℃、試料導入時間0.08分、トランスファーライン温度180℃とした。ガスクロマトグラフにおける測定条件は、カラムをJ&W社製DB−1(0.25mmφ×60m、膜厚1μm、カラム温度:50℃で6分間、40℃/分で250℃まで昇温、250℃で1分30秒間)、キャリアガスをヘリウム(導入条件:18psiで10分間、0.5psi/分で24psiまで増量)、注入口温度を200℃、検出器温度を310℃、レンジ=20、Att=1とした。
厚み1.23mmで坪量が105g/m2の原反ロールを用いて9.6cm×9.6cmの正方形の蓋部と、8.2cm×8.2cmの開口を有し、深さ2.8cmの収容凹部が中央部に形成された平面視における外形が9.6cm×9.6cmの容器本体部とが幅0.6cmの連設部を介して連設されてなる納豆容器を作製した。
製造例1と同様に評価を行ったところ、この製造例で用いた原反ロールについて測定した押出方向における最大収縮荷重(at 110℃)は、1.12N/5cmであった。
また、蓋部と容器本体部を重ね合わせた際の位置ズレは0.2mmであった。
厚み1.13mmで坪量が105g/m2の原反ロールを用いて9.7cm×9.7cmの正方形の蓋部と、8.2cm×8.2cmの開口を有し深さ2.8cmの収容凹部が中央部に形成された平面視における外形が9.7cm×9.7cmの容器本体部とが幅0.6cmの連設部を介して連設されてなる納豆容器を作製した。
製造例1と同様に評価を行ったところ、この製造例で用いた原反ロールについて測定した押出方向における最大収縮荷重(at 110℃)は、2.19N/5cmであった。
また、蓋部と容器本体部を重ね合わせた際の位置ズレは0.6mmであった。
厚み1.29mmで坪量が105g/m2の原反ロールを用いて9.7cm×9.7cmの正方形の蓋部と、8.2cm×8.2cmの開口を有し深さ2.7cmの収容凹部が中央部に形成された平面視における外形が9.7cm×9.7cmの容器本体部とが幅0.5cmの連設部を介して連設されてなる納豆容器を作製した。
製造例1と同様に評価を行ったところ、この製造例で用いた原反ロールについて測定した押出方向における最大収縮荷重(at 110℃)は、2.12N/5cmであった。
また、蓋部と容器本体部を重ね合わせた際の位置ズレは0.5mmであった。
Claims (2)
- ポリスチレン系樹脂組成物を押出発泡させてなるポリスチレン系樹脂発泡シートを二次発泡させて熱成形する樹脂成形品の製造方法であって、
前記樹脂成形品が容器本体部と蓋部とを有する蓋付容器で、該蓋付容器が、前記容器本体部と前記蓋部とが連続している状態で作製され、前記蓋部で前記容器本体部の開口部を閉塞させるべく前記容器本体部との境界部分で前記蓋部が折り返されて用いられるものであり、
前記ポリスチレン系樹脂発泡シートとして、
前記押出発泡においてイソブタン、又は、イソブタンとノルマルブタンとの混合ブタンが発泡剤として用いられており、厚みが0.9mm以上2.0mm以下で、坪量が70g/m2以上150g/m2以下であり、110℃に加熱した際の押出方向における最大収縮荷重が3.0N/5cm幅以下となるポリスチレン系樹脂発泡シートを用い、
且つ、少なくとも前記二次発泡前における前記イソブタンの含有量が1.5質量%以上3.0質量%以下で、前記ノルマルブタンの含有量が1.0質量%以下となるポリスチレン系樹脂発泡シートを用いて前記熱成形を実施することを特徴とする樹脂成形品の製造方法。 - ポリスチレン系樹脂組成物を押出発泡させてなるポリスチレン系樹脂発泡シートが二次発泡されて熱成形された樹脂成形品であって、
容器本体部と蓋部とを有する蓋付容器で、前記容器本体部と前記蓋部とが連続している状態で作製され、前記蓋部で前記容器本体部の開口部を閉塞させるべく前記容器本体部との境界部分で前記蓋部が折り返されて用いられるものであり、
前記ポリスチレン系樹脂発泡シートとして、
前記押出発泡においてイソブタン、又は、イソブタンとノルマルブタンとの混合ブタンが発泡剤として用いられており、厚みが0.9mm以上2.0mm以下で、坪量が70g/m2以上150g/m2以下であり、110℃に加熱した際の押出方向における最大収縮荷重が3.0N/5cm幅以下となるポリスチレン系樹脂発泡シートが用いられ、
且つ、少なくとも前記二次発泡前における前記イソブタンの含有量が1.5質量%以上3.0質量%以下で、前記ノルマルブタンの含有量が1.0質量%以下となるポリスチレン系樹脂発泡シートが用いられて前記熱成形が実施されたものであることを特徴とする樹脂成形品。
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