JP2012006353A - スチレン系樹脂発泡積層体及びそれを用いた成形品 - Google Patents

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将充 原田
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Abstract

【課題】成形品の形状やその成形条件等にかかわりなく、リップ下のシワなどがない外観の良好な成形品を得ることのできるスチレン系樹脂発泡積層体と、それを用いた成形品とを提供することを課題としている。
【解決手段】スチレン系樹脂とポリフェニレンエーテル系樹脂とを含み、スチレン系樹脂とポリフェニレンエーテル系樹脂との合計100質量部に対して前記ポリフェニレンエーテル系樹脂が10〜50質量部含まれている発泡用樹脂組成物で形成された発泡シートと、ビカット軟化点が92℃以下であるスチレン系樹脂で形成されたフィルムとを積層してなることを特徴とするスチレン系樹脂発泡積層体を提供する。また、該スチレン系樹脂発泡積層体を成形して製造された成形品を提供する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、スチレン系樹脂発泡積層体及びそれを用いた成形品に関するものであり、具体的には例えば、熱成形によって、食品包装用の容器などの成形品を製造するために好適に用いられるスチレン系樹脂発泡積層体と、それを用いて製造された成形品とに関するものである。
従来、スチレン系樹脂を含む発泡シートは、熱成形などによって種々の形状に成形し成形品とすることが容易なものとして知られている(例えば、特許文献1)。また、得られた成形品は、軽量で取り扱いやすい、破損しにくい、製造コストが安いといった利点を有している。そこで、成形品の外観や印刷性を向上したり、あるいは強度を高めたりすることを目的として、上記スチレン系樹脂を含む発泡シートの少なくとも片面に、同系樹脂であるスチレン系樹脂のフィルム、特に非発泡のフィルムを積層してなるスチレン系樹脂発泡積層体が、例えば食品包装用の容器などの、成形品の原材料(原反)として広く普及している。
スチレン系樹脂発泡積層体を熱成形して成形品を製造するためには、例えば、まず長尺帯状に形成されたスチレン系樹脂発泡積層体を一定の速度で送りながらヒータで加熱して軟化させる(加熱工程)。次いでこの積層体を、成形品の形状に対応したキャビティ(凹型)とプラグ(凸型)とを用いたプレス成形などの成形法によって成形する(成形工程)。そして、成形後、不要部分を打ち抜くことによって成形品が連続的に製造される(トリミング工程)。
上記の成形工程においては、成形品の生産性を考慮して、一度の成形で複数個の成形品を同時に成形するために、例えば図3に示すような、いわゆる多数個取りの型(キャビティおよびプラグ)を使用することが一般的である。
特開平5−271456号公報
スチレン系樹脂発泡積層体を用いて、上記の製造方法によって製造される成形品の代表例としては、食品包装容器としてのカップ麺容器、丼容器など、図2(a)に示すようないわゆる深ものの容器Bが挙げられる。斯かる深ものの容器Bは、スチレン系樹脂発泡積層体におけるフィルム2が容器Bの外側、発泡シート1が容器Bの内側となるように成形して製造されたもので、カップ状ないし丼状の本体B1と、その開口の周縁から外方に延設された鍔部B2とを備えている。
ところが、上記容器Bにおいては、図2(a)中の一点鎖線の円で囲んだ、本体B1の側面における鍔部B2の直下の部分(以下「リップ下」とする)が、図2(b)に示すような多数の凹溝Gの発生によってシワになりやすい。そして、この凹溝Gの部分において印刷ノリが良好でないため、外観の良好な容器Bが得られないという問題がある。このリップ下のシワの問題は、特に上記のような深ものの容器を成形する際に頻発することから、容器の形状の影響を受けて発生することが考えられる。
また、リップ下のシワに関しては、(1)積層体を成形する際の成形条件の違いや、成形に使用する成形装置の構成、配置などの違いによって発生の頻度が異なること、(2)同じ成形装置を用いて、同じ成形条件で成形を行っても、装置の運転状況などによって発生する頻度が異なること、(3)多数個取りの型では、型上の位置によって発生する頻度が異なること、などが知られている。また、近時、環境や生体への影響が取り沙汰された環境ホルモン対策において、食品と直接に接触する発泡シートとして、低オリゴマー反と呼ばれる、スチレンオリゴマーの含有量を抑えた発泡シートが用いられるようになり、上記のシワ発生の問題がこれまでよりもさらに頻繁に発生するようになり、問題となっている。
本発明は、成形品の形状や成形条件等に影響を受けにくく、リップ下のシワなどの発生が抑制された外観の良好な食品包装用の容器などの成形品を得ることのできる、スチレン系樹脂発泡積層体を提供することを課題としている。また、本発明は、該スチレン系樹脂発泡積層体を用いて製造された、外観の良好な成形品を提供することを課題としている。
上記課題を解決するため、リップ下にシワが発生する原因について発明者らがさらに詳細に検討を行った結果、下記の状況においてシワが発生しやすいことが判明した。即ち、
(a)スチレン系樹脂発泡積層体におけるフィルムが薄いほどシワが発生しやすい。
(b)スチレン系樹脂発泡積層体を成形品に成形するときの成形温度が低いほどシワが発生しやすい。
(c)成形を開始した初期に型の温度が低いほどシワが発生しやすく、成形を繰り返して型の温度が上昇してくるに従ってシワは発生しにくくなる。
(d)例えば、容器の強度を維持すべく、キャビティとプラグとで積層体を挟んで成形する際の、プラグ側の移動速度を速くしたり、あるいはプラグが積層体と接触して成形を開始するタイミングを早くしたりして、容器の底部においてフィルムの肉厚を維持するように成形条件を設定すると、成形によって引き伸ばされたフィルムは、リップ下の領域が薄くなるため、前記(a)の場合と同様にリップ下でシワが発生しやすくなる。
これに対し、リップ下においてフィルムの肉厚を維持するように成形条件を設定すれば、リップ下にシワが発生することを抑制できるが、一方で、容器の底部においてフィルムが薄くなり、容器底部の強度が低下する。そして、例えば容器を印刷マンドレルに真空吸引した状態で、容器の側面に曲面印刷を行う場合などに、特に容器の底部が大きく変形したり潰れたりするといった問題を生じやすくなることから、斯かる方策は、実用的でない。
(e)図3のように多数個取りのキャビティとプラグとで積層体を成形する場合、同時に成形された多数の容器Bのうち、図中に黒矢印で示す積層体Sの流れ方向(MD方向)の最前列(図では最下列)L1の容器Bと、最後列(図では最上列)L2の容器Bに、最もシワが発生しやすい。なお、その他の列でもシワが発生することがある。
(f)個々の容器Bを見ると、図2(b)に示すように、リップ下のうち、図中白矢印で示す積層体Sの幅方向(TD方向)側の領域に、主としてシワが発生する。
これらの現象についてさらに検討したところ、このうち(a)〜(d)の現象はいずれも、加熱工程を経たフィルムが、成形工程において早期に冷えやすい条件で発生していることが判明した。即ち、フィルムが薄いほど、成形温度が低いほど、また、型の温度が低いほど、フィルムは早く冷えやすい〔(a)〜(c)〕。また、容器の底部においてフィルムの肉厚を維持するように成形条件を設定した場合には、前述のように、成形によってフィルムにおけるリップ下の領域が薄くなって、その他の領域よりも先に冷えやすくなる〔(d)〕。
また、前記(e)の現象は、下記の原因で発生するものと考えられる。即ち、多数個取りの型のうち、MD方向の最前列の型と最後列の型とは、それぞれ片側に成形されない領域があるので、成形時に、MD方向の引っ張り力に差が生じる。このため、MD方向の最前列と最後列の容器にシワが発生しやすくなる。なお、(e)の現象のうち、MD方向の最前列と最後列との間の列の容器にシワが発生する原因は、この部分に、個々の容器の成形によるTD方向への引き伸ばし力が集中することによるものと考えられる。
また、前記(f)の現象は、下記の原因で発生するものと考えられる。即ち、成形工程においては、積層体が、それまでフリーであったTD方向に、キャビティとプラグとによって挟まれて固定された状態で成形が行われる。この際、前記(d)のように容器の底部でフィルムの肉厚を維持する条件で成形を行うと、リップ下の、上記TD方向側である図2(b)に示した領域で、フィルムが最も大きく引き伸ばされることになる。ところが、前述のように早期に冷えて少し硬くなった状態のフィルムは、この引き伸ばし力に応じて十分且つ均一に伸びることができない。そして、例えば薄いラップフィルムなどを一方向に引き伸ばしたときと同じように、フィルムが、引き伸ばし方向に沿って波打つ結果としてシワが発生する。
また、前述のように低オリゴマー反を用いると、よりシワが発生しやすくなるのは、低オリゴマー反が、通常の発泡シートよりも強度的に弱く、外力(この場合は積層したフィルムがシワになろうとする力)によって窪みやすいためであると考えられる。即ち、スチレンダイマーやスチレントリマーなどのスチレンオリゴマーの含有量が抑えられて低オリゴマー反を形成するスチレン系樹脂は、汎用のスチレン系樹脂に比べて脆い性質を示す。従って、スチレンオリゴマーの含有量が抑えられたスチレン系樹脂を押し出し発泡して形成された発泡シート(低オリゴマー反)は、汎用のスチレン系樹脂を用いた通常の発泡シートよりも連続気泡率が高くなる傾向を示す。
このため、低オリゴマー反は、通常の発泡シートよりも強度的に弱く、外力によって窪みやすいものとなり、フィルムがシワになろうとする力に抗してこれを十分に防止できず、フィルムへのシワの発生にともなって簡単に窪んでしまう。従って、容器のシワが多発する結果となる。
これに対して、発明者らは、冷えても硬くなりにくいフィルム、すなわち、軟化する温度が比較的低く、加熱軟化時において比較的柔らかいフィルムを採用することを考えた。そうすれば、たとえフィルムが冷えやすい条件下で成形されても、フィルムは十分に、かつ均一に引き伸ばされるため、シワになりにくいのではないかと考えたのである。
そこで、種々のフィルムについて検討した結果、ビカット軟化点が92℃以下であるスチレン系樹脂から形成されたフィルムを採用すれば、上記の目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明のスチレン系樹脂発泡積層体は、スチレン系樹脂とポリフェニレンエーテル系樹脂とを含む発泡用樹脂組成物で形成された発泡シートと、ビカット軟化点が92℃以下であるスチレン系樹脂で形成されたフィルムとを積層してなることを特徴とする。また、発泡用樹脂組成物には、スチレン系樹脂とポリフェニレンエーテル系樹脂との合計100質量部に対して前記ポリフェニレンエーテル系樹脂が10〜50質量部含有されていることを特徴とする。
また、本発明の成形品は、上記スチレン系樹脂発泡積層体を成形して製造されたことを特徴とする。
以上のように、本発明のスチレン系樹脂発泡積層体によれば、ポリフェニレンエーテル系樹脂とを含む発泡用樹脂組成物で形成された発泡シートとビカット軟化点が特定の範囲にあるスチレン系樹脂にて形成されたフィルムとが積層されてなることから、成形品の形状やその成形条件等に影響を受けにくく、リップ下のシワなどの発生が抑制された外観の良好な成形品を得ることができる。
また、本発明の成形品は、上記積層体を用いることで製造されるため、外観の良好なものとなる。
スチレン系樹脂発泡積層体の、実施形態の一例を拡大した断面図。 スチレン系樹脂発泡積層体を成形して製造された成形品の一例としての、丼容器の断面形状を示す断面図(a)、及び、上記成形品において従来、発生していたリップ下のシワの状態を示す斜視図(b)。 スチレン系樹脂発泡積層体から、多数個取りの型を用いて成形品を成形する工程を説明する概略図。
以下に、本発明のスチレン系樹脂発泡積層体の一実施形態について説明する。
〔スチレン系樹脂発泡積層体〕
本実施形態のスチレン系樹脂発泡積層体は、図1に示すように、スチレン系樹脂とポリフェニレンエーテル系樹脂とを含む発泡用樹脂組成物で形成された発泡シート1と、ビカット軟化点が92℃以下であるスチレン系樹脂で形成されたフィルム2とを積層したものである。
<発泡シート>
前記発泡シートは、スチレン系樹脂とポリフェニレンエーテル系樹脂とを含む発泡用樹脂組成物で形成されたものである。また、前記発泡用樹脂組成物においては、スチレン系樹脂とポリフェニレンエーテル系樹脂との合計100質量部に対して前記ポリフェニレンエーテル系樹脂の量が10〜50質量部である。
前記発泡用樹脂組成物に含まれている前記スチレン系樹脂は、分子中にスチレン骨格を有するスチレン系単量体が重合してなるものである。
前記スチレン系単量体としては、例えばスチレン、α‐メチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、α,4‐ジメチルスチレン、パラメチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレンなどが挙げられる。
前記スチレン系樹脂としては、前記スチレン系単量体の1種の単独重合体、又は前記スチレン系単量体の複数種の共重合体などが挙げられる。また、前記スチレン系単量体と、他のビニルモノマーとの共重合体などが挙げられる。
他のビニルモノマーとしては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、無水マレイン酸、アクリルアミドなどが挙げられる。
なお、スチレン系樹脂としては、ポリフェニレンエーテル系樹脂との相溶性の観点からポリスチレン樹脂(スチレン単独重合体)が好ましい。
前記ポリフェニレンエーテル系樹脂は、次の一般式(1)で表されるものである。
Figure 2012006353
式(1)中、R1及びR2は、炭素数1〜4のアルキル基又はハロゲン原子を示し、nは重合度を表す正の整数である。また、重合度nは、通常10〜5000の範囲内である。
一般式(1)で表される化合物としては、ポリ(2,6−ジメチルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2,6−ジエチルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2,6−ジクロルフェニレン−1,4−エーテル)等が例示される。
前記発泡用樹脂組成物は、耐熱性の付与に有効となるポリフェニレンエーテル系樹脂を含有している。前記ポリフェニレンエーテル系樹脂を含有することにより、発泡シートが耐熱性に優れたものになり得る。
前記発泡用樹脂組成物においては、スチレン系樹脂とポリフェニレンエーテル系樹脂との合計100質量部に対して、10質量部以上50質量部以下となる割合で前記ポリフェニレンエーテル系樹脂が含有されている。
前記フェニレンエーテル系樹脂がスチレン系樹脂とポリフェニレンエーテル系樹脂との合計100質量部に対して、10質量部以上含有されているため、ポリフェニレンエーテル系樹脂の添加効果が確実に発揮される。また、50質量部を超えて含有されていても、ポリフェニレンエーテル系樹脂の添加効果がそれ以上上がりにくい。
また、一般的には、前記ポリフェニレンエーテル系樹脂がスチレン系樹脂に比べて高価であることから、上記範囲を超えてポリフェニレンエーテル系樹脂を含有すると材料コストが比較的高いものになり得る。
前記スチレン系樹脂のビカット軟化温度は、JIS K7206(B法、50℃/h)に基づく測定では、通常、102℃程度であるが、前記ポリフェニレンエーテル系樹脂を含有させた発泡用樹脂組成物では、ビカット軟化温度を110〜155℃の範囲に設定することができ、該ポリフェニレンエーテル系樹脂を含んだ発泡用樹脂組成物により、得られる発泡シートや該発泡シートを2次加工した成形品などの耐熱性が優れたものになり得る。
上記のようにポリフェニレンエーテル系樹脂を発泡用樹脂組成物にブレンドすることにより、単に成形品に耐熱性を付与することができるばかりでなく、優れた靱性を付与することができる。また、シワなどの発生が抑制された成形品を得ることができる。
従って、ポリフェニレンエーテル系樹脂を含んだ発泡用樹脂組成物を用いて発泡トレーなどを形成することにより、急激な変形が加えられても割れたりすることのない発泡トレーが形成され得る。
ただし、ポリフェニレンエーテル系樹脂は、特有の臭いを有していることから、特に臭気を嫌う用途などにおいては消臭のための成分を発泡用樹脂組成物に含有させることが好ましい。
この消臭成分としては、ゼオライト系やリン酸ジルコニウム系の無機物粒子が挙げられる。
なお、一般に、スチレン系樹脂を用いてなる成形品などに耐熱性が求められる場合には、スチレンホモポリマーよりもビカット軟化温度の高いスチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−マレイミド共重合体、ポリパラメチルスチレン樹脂などのコポリマーをスチレンホモポリマー以外に採用することが行われている。
一方で、上記のようにポリフェニレンエーテル系樹脂をブレンドする方法は、単に製品に耐熱性を付与することができるばかりでなく、優れた靱性を付与することができる点においても優れている。
また、前記発泡用樹脂組成物には、発泡シートの耐衝撃性などを向上するために、例えば、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン−非共役ジエン三元共重合体などのジエン系のゴム状重合体を添加したゴム変性スチレン系樹脂、いわゆるハイインパクトポリスチレンを配合してもよい。
前記発泡シートは、従来公知の一般的な方法で製造することができる。即ち、上記発泡用樹脂組成物を、発泡剤などとともに押出機に供給して溶融混練する。そして、溶融混練された組成物を、発泡に最も適する温度に調節されたダイから直接に、シート状に押し出して発泡させるか、または一旦、円筒状に押し出して発泡させた後、所定のラインで切開することにより、長尺帯状の発泡シートが製造される。
前記発泡剤としては、分解型発泡剤、気体または揮発性の発泡剤があげられる。
前記分解型発泡剤としては、例えば炭酸アンモニウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム、カルシウムアジド、ナトリウムアジド、ホウ水素ナトリウム等の無機系分解性発泡剤、アゾジカルボンアミド、アゾビススルホルムアミド、アゾビスイソブチロニトリルおよびジアゾアミノベンゼン等のアゾ化合物、N,N’−ジニトロソペンタンメチレンテロラミンおよびN,N’−ジメチル−N,N’−ジニトロソテレフタルアミド等のニトロソ化合物、ベンゼンスルホニルヒドラジド等が挙げられる。
気体の発泡剤としては、窒素、炭酸ガス、プロパン、n−ブタン、i−ブタン、メチルエーテル等が挙げられる。なお、ここで気体とは常温(25℃)、常圧(1気圧)で気体であるものである。
揮発性の発泡剤としては、エーテル、石油エーテル、アセトン、ペンタン、イソペンタン、へキサン、イソヘキサン、ヘプタン、イソヘプタン、ベンゼン、トルエン等が挙げられる。また、揮発性の発泡剤としては、水も使用できる。
前記発泡剤は、1種が単独で、又は2種以上が組み合わされて用いられ得る。なお、分解温度、発生ガス量および分解速度を調節するために公知の発泡助剤をさらに採用してもよい。
前記発泡剤としては、n−ブタン、i−ブタン等のブタン類が好ましく、又は、これらの混合物(混合ブタン)が好ましい。また、混合ブタンにプロパンを加えた混合発泡剤も好ましい。混合ブタンにプロパンを加えた混合発泡剤を用いることにより、発泡シートの気泡を細かくしたり、発泡シートの熟成期間を短くしたりできるという利点がある。
また、気泡サイズを約40μm以下にすべく、窒素、炭酸ガス、若しくは水を単独で使用するか、又はこれらの2種以上を併用することが好ましい。窒素等は、空気から直接分離できるので安価であるという利点がある。
前記発泡シートを製造する際の押出発泡においては、発泡剤以外の添加剤を用いてもよい。
該添加剤としては、例えば気泡調節剤が挙げられ、具体的には例えば、タルク、シリカ等の無機粉未、多価カルボン酸等の酸性塩、多価カルボン酸と炭酸ナトリウムまたは重炭酸ナトリウムとの反応混合物等が挙げられる。
なお、気泡調節剤の量が多すぎると気泡膜が熱に弱くなり、後述するようにフィルムを押出積層する際などに気泡膜が破れて連続気泡率が高くなることがある。このような気泡膜の破れを防ぐためには、発泡剤として窒素、炭酸ガスを用いることが好ましい。
さらに、発泡用樹脂組成物には、必要に応じて、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤、滑剤、難燃剤、帯電防止剤等を添加してもよい。
前記発泡用樹脂組成物で形成された発泡シートは、厚みが0.5〜4.0mmであり、密度が0.070〜0.210g/cm3であることが好ましい。発泡シートの厚みが0.5mm以上であるか、又は密度が0.210g/cm3以下であることにより、成形品の断熱性や剛性等がより十分なものになり得るという利点がある。一方、密度が0.070g/cm3以上であるか、又は厚みが4.0mm以下であることにより、ビカット軟化点が92℃以下の柔らかいフィルムと組み合わせることで、リップ下にシワがより生じやにくくなり得るという利点がある。また、積層体の成形性がより良好なものになり得る。
発泡シートは、成形品の断熱性や剛性などを考慮すると、厚みが1.0mm以上であることがより好ましい。また、上記と同様の理由により、密度が0.167g/cm3以下であることがより好ましい。一方、リップ下のシワをさらに生じにくくすることや、積層体の成形性を向上する点を考慮すると、発泡シートの厚みが3.0mm以下であることがより好ましい。また、上記と同様の理由により、密度が0.083g/cm3以上であることがより好ましい。
また、スチレン系樹脂発泡積層体を食品包装用の容器などに成形する場合は、厚生省が最終的に微量のスチレンオリゴマーによる健康被害のおそれを否定して問題は結着したものの、食品と直接に接触する発泡シートとして、スチレンオリゴマーの含有量を抑えた低オリゴマー反を採用することが好ましい。また、成形品にシワが発生しにくくなるという点でも、低オリゴマー反を採用することが好ましい。具体的には、低オリゴマー反としては、スチレンオリゴマー、すなわちスチレンダイマー、スチレントリマーの合計の含有量が2000ppm以下であるものが好ましく、1600ppm以下であるものがより好ましく、1100ppm以下であるものがさらに好ましい。
前記低オリゴマー反を製造するためには、その原料であるスチレン系樹脂として、スチレンオリゴマーの含有量の少ない樹脂を使用すればよい。低オリゴマー性のスチレン系樹脂は、例えばスチレン系樹脂を、通常の塊状重合でなく、懸濁重合によって合成することで得られる。
<フィルム>
フィルムは、前述の通り、ビカット軟化点が92℃以下であるスチレン系樹脂によって形成されたものである。
スチレン系樹脂のビカット軟化点は、リップ下のシワの発生をより確実に防止することを考慮すると、89℃以下であることがより好ましい。また、フィルム自体の耐熱性を維持し、フィルム側がオーバーヒートすることを抑制するという点で、82℃以上であることが好ましい。
スチレン系樹脂のビカット軟化点が82℃以上であることにより、フィルムの引張強度や曲げ強度の低下が抑制され得るという利点がある。そして、前述したような容器の側面における曲面印刷を行う際などに、容器が大きく変形したり潰れたりするといった問題の発生が生じにくくなり得るという利点がある。
スチレン系樹脂のビカット軟化点を下げるためには、一般に、流動パラフィンを添加することが行われる。
前記フィルムを形成するスチレン系樹脂としては、発泡シートで例示したものと同様のスチレン系樹脂が使用可能であり、ビカット軟化点が92℃以下となるスチレン系樹脂を選択して使用すればよい。但し、容器の剛性などを考慮すると、フィルムを形成するスチレン系樹脂としては、ビカット軟化点が92℃以下となる前述したハイインパクトポリスチレンの中から選択したものが好ましい。
また、前記フィルムを形成するスチレン系樹脂のビカット軟化点VST1と、発泡シートを形成する発泡用樹脂組成物のビカット軟化点VST2との差ΔVST=VST2−VST1は、28〜66℃であることが好ましく、28〜32℃であることがより好ましい。
前記差ΔVSTが28℃以上であることにより、フィルムを形成するスチレン系樹脂のビカット軟化点VST1を低くしたことによる、リップ下のシワの発生を防止する効果がより発揮され得るという利点がある。一方、差ΔVSTが66℃以下であることにより、発泡シートとフィルムとのビカット軟化点の差が開きすぎることが抑えられ、例えば、発泡シートを成形する適正な成形温度で、フィルムがオーバーヒートしてケロイド状になるような現象が抑制され得るという利点がある。また、フィルムの適正な成形温度で、発泡シートが十分に軟化せず二次発泡倍率が低くなり成形品の強度が弱くなるような現象の発生が抑制され得るという利点がある。
なお、前述したキャビティとプラグとを用いたプレス成形などの成形装置においては、フィルム側(キャビティ側)と発泡シート側(プラグ側)とで別々に温度調整できる。しかしながら、ビカット軟化点に差がありすぎると調整が難しくなるという点においても、ビカット軟化点の差が66℃以下であることが好ましい。
前記ビカット軟化点は、日本工業規格JIS K7206−1991「熱可塑性プラスチックのビカット軟化温度試験方法」に規定された方法(B法、50℃/h)に則って測定された値である。
フィルムを形成するスチレン系樹脂の、その他の特性は特に限定されないが、100℃における動的貯蔵弾性率E′は、3.0×108Pa以下であることが好ましい。動的貯蔵弾性率E′が3.0×108Pa以下であることにより、ビカット軟化点が比較的高くなることによってリップ下にシワが入りやすくなることが抑制され得るという利点がある。
前記動的粘弾性率E′は、日本工業規格JIS K7198−1991「プラスチックの非共振強制振動法による動的粘弾性の温度依存性に関する試験方法」に規定されたA法(引張振動法)に則って測定された値である。
前記フィルムは、前記スチレン系樹脂を用いて、従来公知の一般的な方法により製造できる。即ち、例えば、スチレン系樹脂を押出機に供給して溶融混練したのち、ダイからフィルム状に押出成形することにより、長尺帯状のフィルムを製造することができる。
前記フィルムの厚みは、特に限定されないが、10〜500μmであることが好ましい。前記フィルムの厚みが10μm以上であることにより、当該フィルムを積層したことによる、成形品の外観や印刷性の向上、強度を高める効果がより十分なものになり得るという利点がある。また、フィルムの厚みが500μm以下であっても、当該フィルムが、前述のようにビカット軟化点92℃以下という比較的柔らかいものであることにも起因して、リップ下にシワが生じにくい。また、厚みが500μm以下であることにより、積層体の成形性がより優れたものになり得るという利点がある。
なお、成形品の外観や印刷性を向上したり、強度を高めたりすることを考慮すると、フィルムの厚みは、50μm以上であることがより好ましい。また、リップ下のシワをさらに生じにくくすることや、積層体の成形性を向上することを考慮すると、フィルムの厚みは、200μm以下であることがより好ましい。
<スチレン系樹脂発泡積層体の製造方法>
前記発泡シートと前記フィルムとを積層して、スチレン系樹脂発泡積層体を製造する方法としては、従来公知の種々の積層方法を採用することが可能である。但し、該積層方法のうち、両層間に接着剤層を介して積層する積層方法は、層数が増える分、コスト高になるだけでなく、積層体の成形性などが低下し得る。従って、積層方法としては、発泡シートとフィルムとを直接に積層する方法が好ましい。
発泡シートとフィルムとを直接に積層する方法としては、例えば両者を、熱ロールとニップロールとの間を通して熱接着する方法や、若しくは前述のようにダイからフィルム状に押し出された直後の高温のフィルムを、発泡シートの表面に直接に積層して熱接着する方法などを採用することができる。なかでも、後者の方法が、生産性に優れる上、発泡シートにあまり圧力をかけずにフィルムを熱接着できるため、特に前述のごとき窪みやすい低オリゴマー反を使用する場合に好適である。
かくして得られたスチレン系樹脂発泡積層体は、前述したフィルムの特性ゆえに、成形品の形状やその成形条件等が変わっても、リップ下のシワなどがない外観の良好な成形品を製造できるものとなる。
〔成形品〕
前記スチレン系樹脂発泡積層体から成形品を製造する成形方法としては、先に説明した、キャビティ(凹型)とプラグ(凸型)とを用いたプレス成形法が好適に採用される。また、その他にも、例えば真空成形法、圧空成形法、真空/圧空成形法、熱板成形法などや、これらの応用としての各種成形法などが採用できる。
製造された成形品は、その形状にかかわらず、前述のようにリップ下のシワなどが生じにくい外観の良好な、印刷特性に優れたものである。また、特に発泡シートとして低オリゴマー反を用いた積層体から製造される成形品は、スチレンダイマーやスチレントリマーなどのスチレンオリゴマーが溶出するおそれの少ないものである。従って、上記の成形品は、例えばカップ麺容器や丼容器などの、深ものの食品包装用の容器などに好適に用いられる。
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例、比較例で発泡シートおよびフィルムに使用したスチレン系樹脂のビカット軟化点は、前述のようにJIS K7206−1991に規定された方法(B法、50℃/h)に則って測定した。
また、フィルムを形成するスチレン系樹脂の動的粘弾性率E′は、前述のようにJIS K7198−1991に規定されたA法(引張振動法)に則って、下記の方法で測定した。
(動的粘弾性率E′の測定)
試験装置としては、JIS K7198に準拠した、レオメトリック・サイエンティフィック・エフ・イー社製の粘弾性アナライザーRSA−IIを用い、上記のようにA法(引張振動法)で測定を行った。
測定サンプルは、下記のようにして作製した。即ち、まずスチレン系樹脂のペレットを、200℃で厚み約0.4mmの板状にプレス成形し、残留応力を取り除くために70℃で約3時間、加熱処理した。次に、この板状体を、幅3mm×長さ30mmの短冊状に切削した。そして、板状体の厚み、幅および長さの正確な数値を測定して測定サンプルとした。測定条件は、測定温度範囲:40〜130℃(昇温速度4℃/分)、振動の周波数:1Hz、ひずみ量0.1%とした。
発泡シートの厚みは、発泡シートのTD方向に沿って、一辺が1cm角のサンプルを10個、切り取り、それぞれの厚みをダイヤルゲージを用いて実測した結果の平均値で表した。また、坪量と密度とは、各サンプルの厚みと質量とから算出した結果の平均値で表した。フィルムの厚みは、積層体のTD方向に沿って、一辺が1cm角のサンプルを10個、切り取り、それを、カミソリを用いてカットした断面の顕微鏡写真から測定した結果の平均値で表した。
<材質試験>
発泡シートにおける、スチレンダイマーおよびスチレントリマーの合計の含有量は、下記の材質試験によって測定した。
発泡シートの試料0.2gをメチルエチルケトン10mlに溶解し、メタノール40ml中に滴下して再沈殿させた。次に、上記再沈殿液をNo.5ろ紙でろ過しながら、内部標準液(エイコサン0.2g/メチルエチルケトン100ml)1mlを入れた50mlのメスフラスコに注入してメスアップして試料溶液を作製した。
次に、この試料溶液を用いて、下記の条件でガスクロマトグラフィーを行った。そして得られたクロマトグラムのうちスチレンダイマーのピーク3本、およびスチレントリマーのピーク5本のピーク面積と、内部標準物質であるエイコサンの相対感度とを同一として定量を行った。なお、スチレンダイマーおよびスチレントリマーのピーク位置の確認は、関東化学社製の標準物質(スチレンダイマー、スチレントリマー)を用いて行った。
(測定条件)
装置:島津製作所製GC17A
カラム:DB−1(0.1μm×30m、0.25mmφ)
オーブン温度:40℃×1分間−昇温速度50℃/分−150℃×1分間−昇温速度5℃/分−250℃×3分間−昇温速度50℃/分−320℃×8分間
注入口温度:240℃
検出器(FID)温度:260℃
キャリアガス:ヘリウム
キャリアガス圧力:80psi
スプリットレス:1分間(後1/20スプリット)
「実施例1」
(発泡シート)
発泡シートとしては、ビカット軟化点が104℃であるスチレン系樹脂(ポリスチレン 商品名「G0002」PSジャパン社製)70質量部と、ポリフェニレンエーテル系樹脂(PPE)とスチレン系樹脂(PS)との混合樹脂(商品名「ノリルEFN4230」 サビック社製 PPE/PS=70/30)30質量部とを混合した発泡用樹脂組成物を押出発泡したのち、一定の熟成期間をおいた、厚み2.00mm、密度0.120g/cm3、坪量240g/m2、スチレンダイマーおよびスチレントリマーの合計の含有量1100ppmの、長尺帯状の発泡シートを用いた。発泡シートを形成する発泡用樹脂組成物のビカット軟化点は120℃であった。
(スチレン系樹脂発泡積層体の製造)
ビカット軟化点が91℃で、かつ100℃における動的貯蔵弾性率E′が2.15×108Paであるスチレン系樹脂を押出機に供給し、押出機に接続したTダイからフィルム状に押出成形した。そして、押出成形した直後の高温のフィルムを、発泡シートの片面に直接に、かつ連続的に積層し、熱接着して長尺帯状のスチレン系樹脂発泡積層体を製造した。製造した積層体におけるフィルムの厚みは133μmであった。また、前述した発泡シートとフィルムのビカット軟化点の差ΔVSTは29℃であった。
(成形品の製造試験)
スチレン系樹脂発泡積層体を用いて、図2(a)に示す断面形状を有し、かつ開口部の内径が140mm、底部の内径が100mm、深さが80mmである、成形品としての丼容器を製造した。
詳しくは、上記丼容器の外形に対応する凹部を6×6=36個、備えたキャビティ(凹型)と、丼容器の内形に対応する凸部を同数、備えたプラグ(凸型)とを有するプレス成形装置に、スチレン系樹脂発泡積層体を連続的に供給しながら丼容器の製造を行った。
成形の条件は、1ショット(=36個)の成形サイクル5.0秒、上側(キャビティ側)のヒータの設定温度380℃、下側(プラグ側)のヒータの設定温度280℃、キャビティの設定温度60℃、プラグの設定温度100℃とした。また、成形のタイミングは、キャビティとプラグとがほぼ同時に積層体と接触して成形を開始するように設定した。そして、プレス成形装置の運転を開始した直後である1ショット目の36個の丼容器と、成形を繰り返して型が十分に温まったと思われる30ショット目の36個の丼容器について、それぞれ外観を観察した。そうしたところ、いずれの丼容器もリップ下のシワなどが見られない、外観の良好なものであることが確認された。
次に、成形直後の上記72個の丼容器を、それぞれ印刷マンドレルに真空吸引した状態で、側面に曲面印刷を行ったところ、いずれの丼容器も大きく変形したり潰れたりすることなく、良好な印刷を行うことができた。
「実施例2」
フィルムの原料として、ビカット軟化点が89℃で、かつ100℃における動的貯蔵弾性率E′が1.16×108Paであるスチレン系樹脂を使用した点以外は、実施例1と同様にしてスチレン系樹脂発泡積層体を製造した。フィルムの厚みは133μm、ΔVSTは31℃であった。
そして、製造したスチレン系樹脂発泡積層体を用いて、実施例1と同条件で成形品の製造試験を行ったところ、1ショット目の36個の丼容器、および30ショット目の36個の丼容器のいずれも、リップ下のシワなどが見られない、外観の良好なものであることが確認された。
また、成形直後の上記72個の丼容器を、それぞれ印刷マンドレルに真空吸引した状態で、側面に曲面印刷を行ったところ、いずれの丼容器も大きく変形したり潰れたりすることなく、良好な印刷を行うことができた。
「比較例1」
フィルムの原料として、ビカット軟化点が93℃で、かつ100℃における動的貯蔵弾性率E′が3.52×108Paであるスチレン系樹脂を使用した点以外は、実施例1と同様にしてスチレン系樹脂発泡積層体を製造した。フィルムの厚みは133μm、ΔVSTは27℃であった。
そして、製造したスチレン系樹脂発泡積層体を用いて、実施例1と同条件で成形品の製造試験を行ったところ、1ショット目の36個の丼容器、および30ショット目の36個の丼容器のいずれにおいても、MD方向の最後列の容器の、TD方向のリップ下にシワが発生していることが確認された。
そこで、プレス成形する際の、プラグ側の移動速度を遅くし、かつプラグが積層体と接触して成形を開始するタイミングを遅くして、リップ下においてフィルムの肉厚を維持するように成形条件を設定しなおして、同様に成形品の製造試験を行った。そうすると、1ショット目の36個の丼容器、および30ショット目の36個の丼容器のいずれにもリップ下のシワは発生しなくなった。しかし、成形直後の上記72個の丼容器を、それぞれ印刷マンドレルに真空吸引した状態で、側面に曲面印刷を行ったところ、いずれの丼容器も、特にその底部が大きく変形したり潰れたりして、良好な印刷を行うことができなかった。
以上の結果を表1にまとめた。
Figure 2012006353
(参考例)
以下に、スチレン系樹脂とポリフェニレンエーテル(PPE)系樹脂とを含有させた発泡用樹脂組成物で形成した発泡シートと、スチレン系樹脂で形成した発泡シートとにおいて割れ難さを評価した事例を示す。
(シート1)
スチレン系樹脂(DIC社製GPPS[スチレンホモポリマー]商品名「XC−515」)70質量%、及び、ポリフェニレンエーテル系樹脂(PPE)とスチレン系樹脂(PS)との混合樹脂(サビック社製 商品名「ノリルEFN4230」 PPE/PS=70/30)30質量%からなる樹脂成分100質量部に対して、消臭成分として東亜合成社製のリン酸ジルコニウム系消臭剤(商品名「ケスモンNS−10」)を0.5質量部含有する樹脂組成物を押出し発泡して、厚み2.0mm、目付け180g/m2の発泡シートを作製した。
(シート2)
GPPS、PPE、及び、消臭成分を含む樹脂組成物に代えてアクリル系モノマーとスチレンモノマーとの共重合体を押出し発泡してシート1と同じ厚みで同じ目付けの発泡シートを作製した。
(シート3)
GPPS、PPE、及び、消臭成分を含む樹脂組成物に代えてGPPSのみを押出し発泡してシート1と同じ厚みで同じ目付けの発泡シートを作製した。
(耐熱性評価:示差走査熱量測定)
上記シートから6.5±0.5mgのサンプルを採取し、JIS K7121に基づいて示差走査熱量測定を実施した(使用装置:エスアイアイ・ナノテクノロジー社製、示差走査熱量計装置、型名「DSC6220」)。
その結果、シート1、2のサンプルにおいては、JIS K7121 9.3(1)に記載の「中間点ガラス転移温度(Tmg)」が120℃付近に観察され、シート3のサンプルでは、106℃に観察された。
(靱性評価:ダイナタップ衝撃試験)
上記シート1〜3から、100×100mmのテストピースを採取して、該テストピースに対して、ASTM D3763に基づくダイナタップ衝撃試験を実施した(使用装置:General Research Corp.社製、ダイナタップ衝撃試験装置、型名「GRC8250」)。
その結果、シート2のテストピースについては、最大点変位3.2mm、最大荷重29Nという結果となり、シート3のテストピースについては、最大点変位4.0mm、最大荷重36Nという結果となった。
一方でシート1のテストピースについては、最大点変位4.4mm、最大荷重42Nという結果となった。
このことからもシート1は、PPE系樹脂が含有されることによって変位と荷重が大きな割れ難い状態となっていることがわかる。
1:発泡シート
2:フィルム

Claims (6)

  1. スチレン系樹脂とポリフェニレンエーテル系樹脂とを含み、スチレン系樹脂とポリフェニレンエーテル系樹脂との合計100質量部に対して前記ポリフェニレンエーテル系樹脂が10〜50質量部含まれている発泡用樹脂組成物で形成された発泡シートと、ビカット軟化点が92℃以下であるスチレン系樹脂で形成されたフィルムとを積層してなることを特徴とするスチレン系樹脂発泡積層体。
  2. 前記フィルムを形成するスチレン系樹脂のビカット軟化点が89℃以下である請求項1記載のスチレン系樹脂発泡積層体。
  3. 前記フィルムを形成するスチレン系樹脂のビカット軟化点VST1と、前記発泡シートを形成する前記発泡用樹脂組成物のビカット軟化点VST2との差ΔVST=VST2−VST1が28〜66℃である請求項1又は2記載のスチレン系樹脂発泡積層体。
  4. 前記発泡シートの厚みが0.5〜4.0mmであり且つ密度が0.070〜0.210g/cm3である請求項1〜3のいずれか1項に記載のスチレン系樹脂発泡積層体。
  5. 前記発泡シートにおける、スチレンダイマーおよびスチレントリマーの合計の含有量が2000ppm以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載のスチレン系樹脂発泡積層体。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のスチレン系樹脂発泡積層体を成形して製造されたことを特徴とする成形品。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2017177407A (ja) * 2016-03-29 2017-10-05 積水化成品工業株式会社 熱成型用多層シート、及び容器

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