JP5604692B2 - 選択的無電解めっき層の成形方法。 - Google Patents

選択的無電解めっき層の成形方法。 Download PDF

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Description

本発明は、熱可塑性樹脂を射出成形した一次成形品の表面に、選択的に無電解めっき層を成形する方法に関する。
従来から自動車等の電装部品や回路基板等について、絶縁性基体の表面の一部分に選択的に無電解めっきを行う手段が提供されている。この手段においては、絶縁性基体の表面と無電解めっきとの密着性を確保するために、無電解めっきを行なう部分について、予め絶縁性基体の表面を粗化し、いわゆるアンカー効果によって無電解めっきの密着性を確保している。この絶縁性基体の表面を粗化する手段の1つとして、液晶ポリマーからなる絶縁性基体の表層を、エッチング液によって溶解させて粗化する手段がある。(例えば特許文献1参照。)
この手段においては、粗化した絶縁性基体の表面を、回路となる部分を除いて水溶性樹脂からなるマスクで覆った後に、無電解めっきのための触媒液に浸漬して、その後マスクを温湯で溶解・除去する。するとマスクで覆われていなかった回路となる部分は、粗化されて親水性になっているため、この部分にのみ触媒が残存し、無電解めっき液に浸漬すると、この回路となる部分にのみ選択的に無電解めっき層が成形される。
また液晶ポリマーフィルムに紫外線を照射して、このフィルムの表面を改質し、この改質した表面に触媒を付与した上で、この表面全体に無電解めっきを行なう手段がある(特許文献2等参照。)。すなわち液晶ポリマーフィルムに紫外線を照射すると、フィルムの表面層の液晶ポリマーの分子に、酸素に富んだ官能基が生成される。この官能基が生成された表面に触媒を付与すると、この触媒が、官能基が生成された表面層内に入り込んで定着する。そこでこの状態において無電解めっきを行なうと、めっき金属が、表面層内に入り込んだ触媒を核として析出するため、無電解めっき層が、改質された表層内に根を張った状態に成形され、液晶ポリマーフィルムの表面との間に良好な密着性が得られる。
特開平11−145583号公報 特開2008−221488号公報
しかるに上述した特許文献1に記載の手段では、絶縁性基体の全表面を粗化した後に、回路を形成しない部分をマスクで覆い、その後に無電解めっきのための触媒を付与している。したがって第1に、マスクで覆われる回路を形成しない部分も粗化されて親水性になっているため、マスクで覆う前に、この部分に汚れが付着し易く、汚れの除去に手間が掛かる。第2に、マスクの表面にも触媒が付着し、この付着した触媒は、マスクの除去の際等に流出する。したがって金やパラジウム等の希少金属からなる触媒の省資源化を図ることが、強く望まれる。
さらに上述した特許文献1に記載の手段では、無電解めっき層を形成する絶縁性基体として、液晶ポリマーフィルムを使用している。ところで液晶ポリマーは、弾性、耐熱性、耐薬品性、及び成形時の流動性等が高く、膨張係数が低い等の優れた特性を有するが、液晶樹脂の特徴として、剛直な高分子によって構成されて、溶融状態でも分子鎖が折れ曲がり難い棒状の形状を保っている。したがって溶融時に高分子相互の絡み合いが少なく、僅かなせん断力を受けると、その方向に強く配向する異方性を有している。このため配向方向に沿って、高分子が鎖状に配列して、この方向には高い強度や剛性を示すものの、配向方向に垂直の方向には、鎖状に配列した高分子が裂けやすいという欠点を有している。
上記引用文献2に記載の液晶ポリマーフィルムは、2軸延伸して成形することによって、上下左右の互いに直交する方向に高分子鎖を配向しているため、上述した高分子が裂けやすいという問題は生じない。しかるに液晶ポリマーを金型のキャビティ内に射出成形して、例えばブロック形状あるいは3次元形状等の絶縁性基体を成形すると、高分子鎖は流動方向に配向するため、表面層にはフィブリルという流動方向に沿って高分子鎖が配向したスキン層が形成され、上述したように、このスキン層は、配向方向に垂直の方向に裂け易い。したがって液晶ポリマーを射出成形した絶縁性基体の表面に、無電解めっき層を生成した場合には、この無電解めっき層も、スキン層と共に裂け易くなるという問題がある。
そこで本発明による選択的無電解めっき層の形成方法の第1の目的は、絶縁性基体の表面であって、マスクで覆う部分に汚れを付着し難くして、汚れの除去の手間を軽減することにある。また第2の目的は、マスクの表面に触媒が付着しないようにして、希少金属からなる触媒の省資源化を図ることにある。さらに第3の目的は、液晶ポリマーを射出成形して絶縁性基体を成形する場合に、表面層に、流動方向に沿って高分子鎖が配向したスキン層が形成されないようにすることにある。
本発明の特徴は、熱可塑性樹脂を射出成形した絶縁性基体の疎水性の表面を、無電解めっきすべき部分を除いてマスクで覆った後に紫外線を照射し、その後にマスクを除去することによって、マスクで覆われなかった無電解めっきすべき部分のみについて、表面を改質することにある。すなわち射出成形した絶縁性基体の表面は疎水性であるため、紫外線を照射して改質する前は、汚れ等が付着し難い。したがってマスクで覆う部分について、汚れを除去するための手間を省くことが可能となる。
またマスクを除去した後に触媒を付与するため、マスクに触媒が付着するという問題とは無縁になる。さらにマスクで覆われていた部分は、紫外線が妨げられて改質されないため、疎水性を維持している。したがって触媒は、この疎水性を維持している部分には付着し難く、表面が改質された無電解めっき層を生成する部分にのみ強固に定着する。これにより触媒は、必要かつ十分である部分についてのみ使用されるので、希少金属の省資源化を図ることができる。
なお本発明は、加水分解樹脂を射出成形してマスクを成形することによって、絶縁性基体が3次元形状であっても、無電解めっき層を形成する部分を除いて、容易かつ精密にマスクで覆うことができる。また後工程において、アルカリ水溶液に浸すことによって、マスクを容易に除去することができる。さらに紫外線の照射によって絶縁性基体の表面を改質し、これにより無電解めっき層との密着性を確保することにより、化学エッチングによって絶縁性基体の表面を粗化する場合に比べて、絶縁性基体の表面粗さの程度を抑えることができる。したがって絶縁性基体の疲労強度の低下を抑えることができると共に、無電解めっき層の表面を滑らかにすることが可能となる。
すなわち本発明による選択的無電解めっき層の成形方法は、熱可塑性樹脂を射出成形して、表面が疎水性の絶縁性基体である一次成形品を成形する第1の工程と、この一次成形品の表面をめっきすべき部分を除いて覆うように、紫外線を吸収または遮断する機能を有する、加水分解性樹脂からなるマスクを射出成形して、二次成形品を成形する第2の工程とを備えている。また上記二次成形品の全表面に有酸素雰囲気の下で紫外線を照射して、上記マスクで覆われていない上記一次成形品の露出部分を選択的に表面改質する第3の工程と、このマスクをアルカリ水溶液で除去する第4の工程とを備えている。さらに上記マスクを除去した一次成形品を、無電解めっきのための触媒液に浸漬して、上記表面改質された露出部分に選択的に触媒を付与する第5の工程と、この触媒を付与した露出部分に選択的に無電解めっき層を成形する第6の工程とを備えている。
ところで上記第2の工程において、加水分解性樹脂に替えて、水溶性樹脂からなるマスクを射出成形して二次成形品を成形してもよい。かかる場合には、上記第4の工程において、アルカリ水溶液に替えて、温湯によってマスクを除去することができる。
ここで上記加水分解性樹脂は、加水分解性のポリグリコール酸系の樹脂またはポリ乳酸系樹脂であることが望ましい。また上記水溶性樹脂は、水溶性のポリビニールアルコール系樹脂であることが望ましい。さらに上記熱可塑性樹脂は、液晶ポリマーであって、配向性を制御するためのフィラーを10〜50重量%含有するものであることが望ましい。
上記紫外線は、その波長が180〜400nmであって、その照射強度が、1〜500mw/cmであることが望ましい。さらに上記マスクは、少なくとも0.1mmの厚さを有することが望ましい。
ここで上記「熱可塑性樹脂」には、例えば芳香族系液晶ポリマー、ポリスルホン、ポリエーテルポリスルホン、ポリアリールスルホン、ポリエーテルイミド、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂、ポリアミド、変性ポリフェニレンオキサイド樹脂、ノルボルネン樹脂が該当する。これらの樹脂を射出成形したものの表面は、いずれも疎水性を有する。「紫外線を吸収または遮断する機能を有する」とは、マスク自体が有色等であって紫外線の透過を妨げる場合の他、マスクに、酸化チタン、複合酸化物系顔料あるいはボロンナイトライド等の紫外線を吸収または遮断する成分を混合した場合を含む。
「加水分解性樹脂」とは、アルカリ水溶液で加水分解する性質を有する樹脂を意味し、例えばポリグリコール酸系樹脂、またはポリ乳酸の単体、ポリ乳酸と脂肪族ポリエステルとの混合体、若しくは共重合体等のポリ乳酸系樹脂が該当する。ここで「脂肪族ポリエステル」とは、例えば、ポリヒドロキシカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、脂肪族多価塩基酸とからなる脂肪族ポリエステル、ヒドロキシカルボン酸や脂肪族多価アルコールから選ばれた複数種のモノマー成分と、脂肪族多価塩基酸から選ばれる複数種のモノマー成分とからなるランダム共重合体やブロック共重合体などが該当する。「有酸素雰囲気」としたのは、紫外線の照射によってオゾンを発生させ、これにより液晶ポリマー等の熱可塑性樹脂の表面改質を行ない易くするためであり、大気雰囲気であってもよい。「選択的に」とは、部分的に、すなわち一部において、という意味である。
「表面改質」とは、液晶ポリマー等の熱可塑性樹脂に、有酸素雰囲気において紫外線を照射すると、雰囲気中の酸素がオゾン化し、このオゾンの作用によって熱可塑性樹脂の表層の分子の化学結合が切断されて、生成された活性化酸素原子が、切断された表層の分子と結合して、酸素に富んだ官能基が生成されることを意味する。なお、この表面改質された表層に無電解めっきのための触媒を付与すると、この触媒が表面改質された層内に入り込み、上述した官能基と反応して表面改質された層内に定着する。その後無電解めっきを行なうと、表面改質された層内に定着した触媒を核としてめっき金属が析出し、この表面改質された層内に微細なめっき金属が根を張ったような状態になって、無電解めっき層を熱可塑性樹脂の表面に強固に接合するアンカー効果を発揮する。
「水溶性樹脂」とは、水で分解する性質を有する樹脂を意味し、例えばポリビニルアルコール系樹脂が該当する。「液晶ポリマー」とは、溶液状態または溶融状態で液晶性を示すポリマーを意味するが、本発明においては、溶融状態で液晶性を示すサーモトロピック型の液晶ポリマーを意味している。具体的には、全芳香族ポリエステル、芳香族−脂肪族ポリエステル、芳香族ポリアゾメチ、あるいは芳香族ポリエステル−カーボネ−ト等が該当する。
「配向性を制御する」とは、高分子鎖が流動方向に沿って配向することを妨げることを意味する。すなわち上述したように液晶ポリマーを射出成形すると、表面層にはフィブリルという流動方向に沿って高分子鎖が配向したスキン層が形成されるため、フィラーを含有させることによって、表面層において高分子鎖が一方向に配向することを妨げることを意味する。「フィラー」とは、射出成形時に液晶ポリマーに混入する充填材を意味し、例えばガラス繊維、タルク、マイカ、ピロリン酸カルシウム、及び酸化亜鉛ウイスカが該当する。またその形状は問わない。例えば繊維状、粒状、粉末状、鱗片状、あるいはテトラポットのように複数の脚が外側に突出しているものが該当する。「フィラーを10〜50重量%含有」としたのは、10重量%未満では、表面層において高分子鎖が一方向に配向することを妨げるのには不足するからであり、50重量%を超えると流動性が低下して、一次成形品の射出成形が困難となるからである。
「紫外線は、その波長が180〜400nm」としたのは、波長が180nm未満では、表面改質層の厚さが薄くなって、無電解めっき層の密着性が不足するからであり、400nmを超えても、波長が400nmの場合に比べて、それ以上の無電解めっき層の密着性が期待できないからである。また「その照射強度が1〜500mw/cm」としたのは、照射強度が1mw/cm未満では、表面改質に長時間を要して生産性が低下するからである。また照射強度が500mw/cmを超えると、表面だけでなく内部にまで改質が及ぶ可能性があり、一次成形品の疲労強度が低下する恐れがあるからである。「マスクは、少なくとも0.1mmの厚さを有する」としたのは、0.1mm未満の厚さでは、紫外線を有効に吸収あるいは遮断することが困難になるからである。
本発明では、熱可塑性樹脂を射出成形した絶縁性基体の疎水性の表面を、紫外線を照射する前に、無電解めっきすべき部分を除いてマスクで覆うため、マスクで覆う部分に汚れ等が付着し難い。したがってマスクで覆う部分について、汚れを除去するための手間を省くことが可能となる。またマスクを除去した後に触媒を付与するため、マスクに触媒が付着すという問題とは無縁になる。さらにマスクで覆われていた部分は、紫外線が妨げられて改質されないため、疎水性を維持している。したがって触媒は、この疎水性を維持している部分には付着し難く、表面が改質された無電解めっき層を生成する部分にのみ強固に定着する。これにより触媒は、必要かつ十分である部分についてのみ使用されるので、希少金属の省資源化を図ることができる。
本発明では、射出成形により加水分解樹脂からなるマスクを成形することによって、絶縁性基体が3次元形状であっても、無電解めっき層を形成する部分を除いて、容易かつ精密にマスクで覆うことができる。また後工程において、アルカリ水溶液に浸すことによって、マスクを容易に除去することができる。さらに紫外線の照射によって絶縁性基体の表面を改質し、これにより無電解めっき層との密着性を確保することにより、化学エッチングによって絶縁性基体の表面を粗化する場合に比べて、絶縁性基体の表面粗さの程度を抑えることができる。したがって絶縁性基体の疲労強度の低下を抑えることができると共に、無電解めっき層の表面を滑らかにすることが可能となる。
本発明では、水溶性樹脂からなるマスクを射出成形して二次成形品を成形することによって、後工程において温湯に浸す等だけで、容易にマスクを除去することができる。一次成形品を構成する熱可塑性樹脂として、液晶ポリマーに配向性を制御するフィラーを10〜50重量%含有したものを使用することによって、表面層に、流動方向に沿って高分子鎖が配向したスキン層が形成されないようにしつつ、液晶ポリマー特有の性質である高剛性、高強度、耐熱性、高流動性、低い熱膨張率、及び高周波特性等を発揮させることができる。
選択的無電解めっき層の成形方法を示す工程図である。
図1(A)〜図1(H)に示す工程図を参照しつつ、本発明による選択的無電解めっき層の成形方法を説明する。さて図1(A)に示すように、第1の工程として、フィラーを含有する芳香族系液晶ポリマー(例えばポリプラスチック株式会社の製品「ベクトラ#C820」)を射出成形して、ブロック状の一次成形品1を成形する。なおフィラーは、ピロリン酸カルシウムであって、その含有率は、50重量%である。また金型内における流動性を向上させるために、ポリエチレングリコール等の流動性促進剤を添加してもよい。次に図1(B)に示すように、アルカリ水溶液によって一次成形品1の脱脂を行ない、その後水洗して乾燥させる。
図1(C)に示すように、第2の工程として一次成形品1の表面を、無電解めっきをすべき部分11を除いて、ポリグリコール酸系樹脂(例えば株式会社クレハの製品「#KSK−04」)によって覆うようにマスク2を射出成形して、二次成形品3を形成する。なおマスク2の厚さは少なくとも0.1mm以上とするが、0.3〜1.0mmが望ましい。またマスク2による紫外線の吸収または遮断を促進するために、酸化チタン、複合酸化物系顔料、あるいはボロンナイトライド等を添加してもよい。
次に図1(D)に示すように第3の工程として、二次成形品3の表面全体に、大気雰囲気で紫外線4を照射して、マスク2で覆われていない無電解めっきすべき部分11に、表面改質層12を成形する。なお紫外線4の照射は、例えば江東電気株式会社製の紫外線照射装置を用いて行い、紫外線の波長を、主波長:253.7nm、副波長:184.9nmとし、紫外線の強度を25mw/cm2、照射距離を30mmとして、5分間照射する。
図1(E)に示すように第4の工程として、二次成形品3をアルアカリ水溶液に浸漬して、マスク2を溶解して除去する。なおアルアカリ水溶液は、例えば10重量%の水酸化ナトリウム水溶液を使用し、50℃の液温において二次成形品3を30分間浸漬する。
ついで図1(F)に示すように第5の工程として、マスク2が除去された一次成形品1を、無電解めっきのための触媒液に浸漬して、このマスクで覆われなかった露出部分、すなわち表面改質層12に、触媒5を付与する。すなわちマスク2で覆われていた部分は、紫外線4の照射が妨げられており、芳香族系液晶ポリマーからなる一次成形品1の本来の疎水性を維持しているため、触媒5は付着し難く、事後の水洗等で、容易に除去できる。一方表面改質された表面改質層12においては、触媒5のパラジウム等の金属が、紫外線4の照射によってこの表面改質層内に成形された官能基と反応して、この表面改質層内に定着する。
触媒5の付与は、公知の手段を使用すればよく、例えばマスク2を除去した一次成形品1を、水酸化ナトリウムの水溶液で脱脂し、中和液にて中和した後に水洗する。次に塩化パラジウム、及び塩化第一錫を加えた塩酸溶液に、室温で2〜5分間浸漬した後に水洗し、
パラジウム塩を表面改質層12に吸着させる。次に5〜10重量%の硫酸水溶液に浸漬して、パラジウム塩を活性化して、金属パラジウムを表面改質層12内に生成して定着させる。
図1(G)に示すように第6の工程として、金属パラジウムを表面改質層12内に定着させた一次成形品1を、無電解銅めっき液に浸漬して、この金属パラジウムを核として銅を析出させて、無電解銅めっき層6を成形する。なお無電解銅めっきは、公知の手段を使用すればよく、例えば奥野製薬工業株式会社製のめっき剤「#OPC−750」を溶解した無電解銅めっき液を室温25℃に保持して、このめっき液に一次成形品1を10分間浸漬する。
次いで図1(H)に示すように、無電解銅めっき層6を成形した一次成形品1を、熱処理して、酸化や腐食を防止するために、この無電解銅めっき層の表面に不動態の薄膜61を形成する。この熱処理は、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気において、200℃にて60分間加熱する。なお大気雰囲気の下で、熱処理してもよい。
なお熱処理の替わりに、無電解銅めっき層6に重ねて、ニッケル等の他の金属の無電解めっきを、公知の手段を用いて行うこともできる。また無電解銅めっき層6に重ねて、電解めっきを、公知の手段を用いて行うこともできる。
第1の工程として、フィラー入りの芳香族系液晶ポリマーとして、ポリプラスチック株式会社の製品「ベクトラ#C820」を使用し、一次成形品を射出成形した。脱脂、水洗及び乾燥させた後に、第2の工程として、一次成形品を射出成形用の型内にセットして、この型内のキャビティ内に、加水分解性ポリグリコール酸系樹脂からなるマスクを射出成形して、二次成形品を成形した。なお加水分解性ポリグリコール酸系樹脂としては、株式会社クレハの製品「#KSK−04」を使用し、このマスクによってめっき層が形成されるべき部分を除いて一次成形品を覆った。
第3の工程として、二次成形品の表全体に、有酸素雰囲気下で紫外線を照射して、マスク覆われていない一次成形品の露出部分の表面改質を行なった。紫外線の波長は、主波長を253.7nm、副波長を184.9nmとして、照射強度を25mw/cm、照射距離を30mmにセットして、5分間照射した。なお紫外線照射装置は、江東電気株式会社の製品を使用した。第4の工程として二次成形品を、50℃の水酸化ナトリウムの10重量%溶液に30分間浸漬して、マスクを溶解・除去した。
次に第5の工程として、マスクを除去した一次成形品を、無電解めっき用の触媒液に浸漬して、一次成形品の表面改質を行なった部分に触媒を付与した。なおこの触媒の付与は、アルカリ脱脂、コンディショニング、プレディップ、キャタライズ、及びアクセレーター等からなる公知の手順で行った。第6の工程として、触媒を付与した一次成形品を水洗して、表面改質を行なった部分以外に付着した触媒を除去した上で、この一次成形品を無電解銅めっき液に浸漬して、触媒が定着した表面改質層の表面に無電解銅めっき層6を成形した。なお無電解銅めっきは、奥野製薬工業株式会社製のめっき剤「#OPC−750」を溶解した無電解銅めっき液を室温25℃に保持して、このめっき液に一次成形品を10分間浸漬して行った。最後に、無電解銅めっき層6を成形した一次成形品を、窒素ガスの雰囲気の下で200℃にて60分間、熱処理した。
以上の方法で成形した選択的無電解めっき層の厚みは、0.5μmであり、そのピール強度は、0.7kN/mであった。また無電解めっき層は、滑らかな表面を呈していた。
マスクとして、ポリ乳酸樹脂(三井化学株式会社の製品「LACEA#H−100J/F−19」)を使用した以外は、上述した実施例1と同じ工程によって、無電解銅めっき層を成形した。この無電解銅めっき層の厚みは、0.5μmであり、そのピール強度は、0.7kN/mであった。また無電解めっき層は、滑らかな表面を呈していた。
マスクとして、ポリビニールアルコール系樹脂(日本合成化学工業株式会社の製品「エコマティ#AX−2000SN」)を使用し、また70℃の温湯に40分間浸漬して、このマスクを溶解・除去する以外は、上述した実施例1と同じ工程によって、無電解銅めっき層を成形した。この無電解銅めっき層の厚みは、0.5μmであり、そのピール強度は、0.7kN/mであった。また無電解めっき層は、滑らかな表面を呈していた。
無電解めっき層の形成において、マスクで覆う部分の汚れ除去の手間が軽減できる共に、希少金属からなる触媒の省資源化を図ることができ、かつ強固な密着性が得られるため、電装機器や電子機器等に関する産業に広く利用可能である。
1 一次成形品
11 回路となるべき部分
12 表面改質層
2 マスク
3 二次成形品
4 紫外線
5 触媒
6 無電解銅めっき層(無電解めっき層)
61 不動態の薄膜

Claims (7)

  1. 熱可塑性樹脂を射出成形して、表面が疎水性の一次成形品を成形する第1の工程と、
    上記一次成形品の表面をめっきすべき部分を除いて覆うように、紫外線を吸収または遮断する機能を有する、加水分解性樹脂のマスクを射出成形して二次成形品を成形する第2の工程と、
    上記二次成形品の全表面に有酸素雰囲気の下で紫外線を照射して、上記マスクで覆われていない上記一次成形品の露出部分を選択的に表面改質する第3の工程と、
    上記マスクをアルカリ水溶液で除去する第4の工程と、
    上記マスクを除去した一次成形品を無電解めっきのための触媒液に浸漬して、上記表面改質された露出部分に選択的に触媒を付与する第5の工程と、
    上記触媒を付与した露出部分に選択的に無電解めっき層を成形する第6の工程とを備える
    ことを特徴とする選択的無電解めっき層の成形方法。
  2. 熱可塑性樹脂を射出成形して、表面が疎水性の一次成形品を成形する第1の工程と、
    上記一次成形品の表面をめっきすべき部分を除いて覆うように、紫外線を吸収または遮断する機能を有する、水溶性樹脂からなるマスクを射出成形して二次成形品を成形する第2の工程と、
    上記二次成形品の全表面に有酸素雰囲気の下で紫外線を照射して、上記マスクで覆われていない上記一次成形品の露出部分を選択的に表面改質する第3の工程と、
    上記マスクを温湯で除去する第4の工程と、
    上記マスクを除去した一次成形品を無電解めっきのための触媒液に浸漬して、上記表面改質された露出部分に選択的に触媒を付与する第5の工程と、
    上記触媒を付与した露出部分に選択的に無電解めっき層を成形する第6の工程とを備える
    ことを特徴とする選択的無電解めっき層の成形方法。
  3. 前記加水分解性樹脂は、ポリグリコール酸系樹脂またはポリ乳酸系樹脂である
    ことを特徴とする請求項1に記載の選択的無電解めっき層の成形方法。
  4. 前記水溶性樹脂は、ポリビニールアルコール系樹脂である
    ことを特徴とする請求項2に記載の選択的無電解めっき層の成形方法。
  5. 前記熱可塑性樹脂は、液晶ポリマーであって、配向性を制御するためのフィラーを10〜50重量%含有する
    ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の選択的無電解めっき層の成形方法。
  6. 前記紫外線は、その波長が180〜400nmであって、その照射強度が1〜500mw/cmである
    ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の選択的無電解めっき層の成形方法。
  7. 前記マスクは、少なくとも0.1mmの厚さを有する
    ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の選択的無電解めっき層の成形方法。
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