JP5600023B2 - 電子血圧計 - Google Patents
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Description
このタイプの血圧計で測定上問題となるのが、腕帯部の腕への装着の仕方である。腕帯部内の阻血用空気袋の位置が上腕に対して適当でない場合や、上腕に対して巻き付け強さが適当でない場合に、腕帯部の阻血用空気袋の圧迫が上腕に正しく行われず、血圧が高く測定される場合がある。近年、これを解決するために、筒状の腕帯部に腕を挿入するだけで、自動的に腕帯部の阻血用空気袋を腕の正しい位置に配置し、正しい巻き付け強さにて血圧測定を行うことができるようにした血圧計本体と腕帯部を一体とした電子血圧計が開発されている(特許文献1を参照)。
そこで、このような擬似高血圧症の発生という不都合に対応するために、血圧計本体から腕帯部が分離できて、血圧計本体の設置場所が測定者から離れていても、測定者が座位にて背を伸ばした状態で腹圧の掛からない測定をすることが可能なタイプの電子血圧計が開発されている。
腕帯部は内蔵の阻血用空気袋の内圧に相当する応力で腕を圧迫する必要がある。そのためには、阻血用空気袋が膨らみきらない状態にて、腕のラジアル方向の腕周囲の80%以上、スラスト方向は腕周囲長の40%以上の面積に接する必要がある。
腕に腕帯部を装着するだけで、測定前に腕帯部の長さを操作して、腕の太さにあわせて密着させることをせずに測定可能な血圧計の場合、腕サイズ(20〜33cm)のばらつきへの自動的な対応が必要となる。
現在、これらに対応するために、阻血用空気袋の外側に巻きつけたワイヤ−を締めることにより腕に対して自動的に阻血用空気袋を密着させる方法、または、阻血用空気袋の外側に密着用の空気袋を設置し、密着用空気袋を膨らませ阻血用空気袋を腕に密着させる方法、または、大き目の空気袋を大きく膨らませにて空気袋の密着と阻血を1つの空気袋で実現する方法がある。
上記の方法の内、1つの空気袋を大きく膨らませる方法は、構造が簡単である利点を有しているが、反面、空気袋の空気量が他の方法に較べて大きいという問題点を有している。
この問題点により、阻血用空気袋の検出する脈波が小さく、この脈波の変化を利用するオシロメトリック法が採用できず、K音信号を腕帯の下流側で検出するリバロッチ・コロトコフ法、または、血管容積変化を赤外光の吸収減衰で検出する光電容積脈波法、または、血流による血管壁の変化を超音波で検出する超音波法を採用する必要がある。
阻血用空気袋の一端部には、計測用のマイクロフォンが設けられており、このマイクロフォンが、直接K音信号を検出するようになっている。このK音信号は、阻血用空気袋により血管が圧閉された後に阻血用空気袋内を減圧することで、血管内の最高血圧より阻血用空気袋の内圧が小さくなると血管が開放されて発生し、音色を変化させながら、血管の圧閉がなくなるまで、すなわち、最高血圧時から最低血圧時まで血管に血液が流れる際に生じる音信号である。
ここで、上述したリバロッチ・コロトコフ音法を採用した電子血圧計にて血圧を測定する際に、使用者により発生するノイズの内、K音信号の周波数成分に近い成分を有するノイズは、腕帯および腕帯と本体とを接続するチュ−ブから生じる擦過音である。このノイズ対策の一つとして、阻血用空気袋にて検出される脈波とK音との同期性を利用してゲ−トを開く脈波ゲート法と呼ばれるノイズの影響を低減する手法が提案されている。この脈波ゲートを用いる手法では、阻血用空気袋のオシロ信号(阻血用空気袋の低周波成分信号)を用いて、そのオシロ信号のピークを検出することでゲート区間を設定して、そのゲート区間内に生じているK音信号を計測することにより、ゲート区間外に計測されたノイズを除去可能となるなど、確率的にノイズを低減することができる。
しかし、前記1つの阻血用空気袋で腕への阻血用空気袋の密着と阻血を行う血圧計に用いる空気容量の大きい阻血用空気袋を用いる場合、また、測定者が脈の弱い脈弱者である場合には特に、ノイズに対してオシロ信号の振幅が小さくなってしまうため、オシロ信号波形が崩れる現象がみられる。この場合、脈波ゲ−トを開く目安となるオシロ信号のピークを顕著に捉えることができない。このように、オシロ信号のピークを検出できないためにゲート区間の設定ができず、ゲート区間内のK音信号を確実に計測することができない。
そこで、上記課題を解消するために、本発明は、測定者が脈弱者であっても脈波ゲートを使用することができ、さらに、K音計測用のK音センサの信号からゲート区間の設定が可能であることから、脈波ゲートを利用するための専用の計測環境を必要としないため、コストも抑制できる電子血圧計を提供することを目的とする。
上記構成によれば、測定者が脈弱者であっても脈波ゲートを使用することができ、さらに、K音計測用のK音センサの信号からゲート区間の設定が可能であることから、脈波ゲートを利用するための専用の計測環境を必要としないため、コスト抑制できる。すなわち、K音検出用空気袋とK音センサを用いれば良く、K音センサから得られた信号に対して信号処理を行うことにより、腕帯およびエア−管から発生する擦過音の周波数成分と分離可能な低周波成分と、K音が含まれる高周波成分信号に分離し、低周波成分信号を用いてゲート区間を設定し高周波成分信号に対して適切なゲート区間を設けることにより、確実にK音信号を得ることができる。本発明の電子血圧計は、腕にカフを挿入するだけで計測が可能な、1つの空気袋を大きく膨らませて自動的に腕に空気袋を密着する電子血圧計である。
上記構成によれば、第1閾値と第2閾値を用いてピークポイントを確実に得ることができる。
上記構成によれば、ゲート区間の設定は、前記低周波成分信号を利用して確実に設定することができる。
好ましくは、前記K音センサは、前記K音検出用空気袋に対して、チューブにより前記血圧計本体にあるコンデンサマイクロフォンに接続されていることを特徴とする。
上記構成によれば、人体からの振動をK音検出用空気袋がK音センサに効率よく伝えるための工夫であり、これによりK音検出をより正確に行うことができる。
図1は、本発明の電子血圧計の好ましい実施形態を前側から示す斜視図であり、図2は、この電子血圧計の腕帯部の分解斜視図である。図3は、電子血圧計の腕帯部の内部構造を示す断面図である。
図1に示す電子血圧計1は、自動電子血圧計ともいい、血圧計本体10から腕帯部2を分離でき、血圧計本体10の設置場所が測定者から離れていても、測定者は座位にて背を伸ばして腹圧の掛からない状態で測定が可能なタイプの電子血圧計である。この電子血圧計1は、血圧測定方式の一例としてリバロッチ・コロトコフ法が用いられ、コロトコフ音(K音)を検出して血圧測定を行う装置である。図1に示すように、電子血圧計1は、変形可能で柔らかな材質で作られソフトな筒体の腕帯部2と、血圧計本体10を備える。腕帯部2と血圧計本体10は別体である。
図1に示すように、血圧計本体10は、ケーシング30と表示部31を有している。ケーシング30は、例えばプラスチック製の薄型の内部空間を有する部材であり、傾斜した上面部32と、前端面部33と後端面部34と、側面部35,36と、底面部42を有している。
図1に示すように、ケーシング30の上面部32には、傾斜した表示部31が配置されており、測定者が表示部31の表示内容を容易に確認できるようになっている。ケーシング30には、測定開始操作部の一例としての開始/停止ボタン37と、メモリ呼び出し・時刻・アラーム設定ボタン38と、記憶しないボタン39が設けられている。測定者が開始/停止ボタン37を押すことで、血圧測定操作の開始あるいは停止をするためのボタンである。
図1に示すように、腕帯部2は、血圧測定時に測定者の上腕Tに開口部11RからD1方向に通して開口部11Pから出した状態で圧迫するために、上腕Tを差し込むことが可能な両端部が切れた略円筒状構造(筒体)を有している。これにより、この腕帯部2は、通常の腕帯部と異なり測定者の上腕Tに対して巻き付ける必要が無く、左右のいずれの上腕Tへ通すことが可能で、測定者は容易に血圧測定ができる。
ここで、内布17としては伸縮性に富んだ物を使用し、外布16は変形するが、内布17よりの伸縮性が低く、好ましくは殆ど伸縮しない物を用いることが好ましい。外布16と内布17は、共に筒状の部材(筒体)である。これにより、腕帯部2は軽量で折り畳み可能である。つまり、人体の測定部位に当接する当接布部である内布17が伸縮性を備えているために、上腕の測定部位に通しやすい。外布16は、内布17よりも伸縮性は低いが、変形は許容する構成である。このため、折り畳むこともできることで、使いやすくコンパクトな腕帯部2を有する電子血圧計1を提供できる。
外布16、阻血用空気袋14を収容するように当接布部である内布17の外側に接合され、外布16は、変形可能であるが伸縮性が非常に低いかほとんど無い布部材である例えば伸びにくい生地(201BE)を採用でき、引張強度は、JIS L1096−A法で測定した値として、タテが1445N/inで、ヨコが827N/inである。外布16としては、例えば、ポリエステル100%の生地を用いることができる。
また、図3に示すように、外側部材である外布16の上腕を通す方向D1に沿った幅Sから、阻血用空気袋14の上腕を通す方向D1に沿った幅Wを引いた値は、好ましくは4cm以下である。このように、(幅S−幅W)の値を4cm以下に設定するのは、阻血用空気袋14は、外布16に対して止めておらず、外布16の寸法に余裕を持たせて、阻血用空気袋14の膨張と収縮に対応できるようにするためである。もしも、(幅S−幅W)の値が4cmを超えると、阻血用空気袋の外側への膨らみが規制されず、細い腕の場合に十分な阻血が行えず好ましくはない。
図4は、外布16の内側に配置された骨部材150の形状例を示し、図5は、骨部材150を有する腕帯部2を示す側面図である。
図4に示すように外布16の内面16Nには、骨部材150が例えば接着剤により固定されている。この骨部材150は、金属製品あるいはプラスチック成型品であり、外布16の長手方向16Sに沿って配置されており、骨部材150は、複数本の骨150Hを有している。各骨150Hは、外布16の短手方向16Tに平行になるように同じ間隔をおいて配列されている。各骨150Hは、断面円形状あるいは断面矩形形状であるが、断面形状や本数は特に限定されない。
図8は、阻血用空気袋14を形成するためのシート例を示している。
まず、阻血用空気袋14の構造を説明すると、図8に示すシートSWは、ほぼ長方形状の例えば透明のプラスチックシートであり、一例としてポリウレタンシートにより形成されている。このシートSWは、フィルタ付き接続管220、4つの折れ線部分(折り曲げ部分の一例)222、接合部分223,224を有している。
図2に示すように、阻血用空気袋14は空気をいれて膨張させたときに均等に4つの部分に分かれて膨らむように、折れ線部分222(阻血用空気袋を高周波融着電極で挟んで肉厚の薄い部分を作る)を有し、クッション材240とK音検出用空気袋500は、複数の折れ線部分222の間に配置されている。
図9に示すように、K音検出用空気袋500の材質は、例えば阻血用空気袋14と同じ材質のものを使用でき、K音検出用空気袋500は長方形状を有している。K音検出用空気袋500の4つの辺部分501,502,503,504は、例えば融着により密閉されており、空気収容部509を有する。辺部分501には、チューブ4Pの一端部506が挿入して固定されている。チューブ4Pの他端部507は、K音センサ600に接続されている。チューブ4Pは、チューブ4Rとメカニカルフィルタ700と配管路63を介して、ポンプ44,45に接続されている。
このように、阻血用空気袋14とポンプ44,45は、チューブ4により接続されているが、2つのK音検出用空気袋500とK音センサ600とポンプ44,45は、チューブ4とは別のチューブ4Pにより接続されている。また、阻血用空気袋14とK音検出用空気袋500の間にはバッキングが付けられている。これは、人体からの振動をK音検出用空気袋500がK音センサ600に効率よく伝えるための工夫であり、これによりK音検出をより正確に行うことができる。
図10に示すように、コロトコフ音(K音)検出システム50は、腕帯部2の2つのK音検出用空気袋500と、1つのK音センサ600と、メカニカルフィルタ700を有している。2つのK音検出用空気袋500は、チューブ4Pを介して1つのK音センサ600に接続されており、K音検出用空気袋500内の空気の圧力変動は、K音検出用空気袋500からチューブ4Pを通じてK音センサ600に伝わるようになっている。K音センサ600は、チューブ4Rを介してメカニカルフィルタ700に接続されている。このメカニカルフィルタ700は、圧力センサ64と、ポンプ44,45と、排気バルブ46、制御バルブ47に対して、配管部63を介して接続されている。
図11に示す電子血圧計1の回路ブロックを説明する。電子血圧計1の回路ブロックを示している。電子血圧計1の回路ブロックの破線で示すように、血圧計本体10は、図10に示すコロトコフ音(K音)検出システム50と、加圧システム51と、排気システム52と、圧力検出システム53と、電源システム54と、音声システム55と、制御システム56を有する。
図11の制御システム56は、K音センサ600から入力された空気圧力変動信号から、K音信号と、このK音信号の発生ポイントと、消滅ポイントを検出する。このように、電子血圧計1では、腕帯部2内をポンプ44,45で加圧した後、微速度で排気して減圧しつつ圧力センサ64を用いて腕帯部2の阻血用空気袋14内の圧力を検出すると同時に、K音センサ600を用いてK音信号を検出して、このK音信号の発生ポイントと消滅ポイントを検出することで、最高血圧値と最低血圧値を算出して、算出した最高血圧値と最低血圧値を表示部31に表示できる。制御部としての制御システム56は、加圧して血管内の血流を止めた後に減圧し、再び血流が流れる時の最初のK音信号が検出された時点の圧力を最高血圧値に設定し、更に減圧を続けて血管の管路断面積が十分に拡がり、さらに、阻血用空気袋の圧力が最低血圧以下になると血管の圧閉が消失するとK音信号が検出されなくなったら、最後のK音信号が検出された時点の圧力を最低血圧値に設定する。また、制御システム56は、最高血圧値と最低血圧値から得られる血管脈動またはK音信号の出現間隔から脈拍数を演算する。
図13(A)は、K音検出用空気袋(小カフ)500の生信号DS1を示し、図13(B)は、生信号DS1を周波数分離して得られるK音検出用空気袋500の低周波成分信号(0.2〜1Hz)DS2を示し、 図13(C)は、生信号DS1を周波数分離して得られるK音検出用空気袋500の高周波成分信号(40〜80Hz)DS3を示す。
図14は、測定者が脈弱者である場合に、阻血用空気袋(大カフ)の低周波成分信号DS0とK音検出用空気袋500の高周波成分信号DS3の例を示す。図15は、K音検出用空気袋500の生信号DS1からゲート区間GT内のK音検出用空気袋500の高周波成分信号を抽出する手順を示す。
図17は、比較のために示す例であり、阻血用空気袋の低周波成分であるオシロ信号DS0と、K音検出用空気袋500の高周波成分信号DS3であるK音信号と、高周波成分信号に設定されたゲート区間GTの例を示す図である。
まず、図13を参照して、K音検出用空気袋500の生信号DS1の周波数分離について説明する。
図10と図11に示すK音センサ600は、K音検出用空気袋500内の空気の圧力変動を電気信号に変えて、制御システム56に対して空気圧力変動信号として図13(A)に示すK音検出用空気袋500の生信号DS1を供給する。
制御システム56は、図13(A)に示すK音検出用空気袋500の生信号DS1を、図13(B)に示すK音検出用空気袋500の低周波成分(0.2〜1Hz)DS2と、図13(C)に示すK音検出用空気袋500の高周波成分信号(40〜80Hz)DS3に、周波数分離する。
そこで、測定者が脈の弱い脈弱者である場合でもK音信号を得ることができるようにするために、阻血用空気袋14の低周波成分信号DS0は用いずに、K音検出用空気袋500とコンデンサマイク600を用いてK音検出用空気袋500の生信号DS1を利用する。図15と図16を参照して、K音検出用空気袋500の生信号DS1から、ゲート区間GT内のK音検出用空気袋500の高周波成分信号DS3を抽出する処理を説明する。
図15のステップS0において阻血用空気袋14内の減圧を開始すると、ステップS1では、K音センサ600は図13(A)に示すK音検出用空気袋500の生信号DS1の計測を開始して制御システム56に供給する。ステップS2では、図11の制御システム56は、デジタルフィルタを用いて、K音検出用空気袋500の生信号DS1を、図13(B)に示すK音検出用空気袋500の低周波成分信号DS2と、図13(C)に示すK音信号であるK音検出用空気袋500の高周波成分信号DS3に、周波数分離する。
ステップS3では、制御システム56は、図13(B)に示すK音検出用空気袋500の低周波成分信号DS2が、以下の条件1と条件2を満たすまで低周波成分信号DS2の計測を繰り返す。この条件1は、低周波成分信号DS2が、図16(B)に示すように閾値Aを越える(A>0)ことである。また、この条件2は、条件1を満たした後に、図16(B)に示すように低周波成分信号DS2の信号が閾値B以下(B<0)になることである。
これにより、本発明の実施形態では、図17に示す比較例のように、阻血用空気袋14の低周波成分信号(オシロ信号)DS0のピーク800を検出して、このピーク800を中心としてゲート区間850をオープンにして、K音信号であるK音検出用空気袋500の高周波成分信号DS3を用いるのである。このため、測定者が脈の弱い脈弱者である場合に阻血用空気袋14の低周波成分信号DS0が弱い場合であっても、阻血用空気袋14の低周波成分信号(オシロ信号)DS0のピーク800を用いる必要がない。
図12(A)に示すように、阻血用空気袋14の内面部分の下流側には、3つの小空気袋500を配置でき、図12(B)に示すように、阻血用空気袋14の内面部分の下流側には、4つのK音検出用空気袋500を配置することもできる。
複数のK音検出用空気袋500は、腕帯部2の下流側に配置されているので、仮に測定者が腕帯部2を上腕に通す際に、正しい位置でなく上腕に対して回転した位置に装着しても、いずれかのK音検出用空気袋500が動脈に密着させることができるので、K音信号を適切に検知できる。
大カフと呼ばれる阻血用空気袋14は、小カフと呼ばれるK音検出用空気袋500に比べて空気容量が大きいので、微小な空気圧力の変化を微小な信号の変化として顕著に捉えることができない。また、排気バルブや制御バルブノイズが阻血用空気袋14からの信号に混入してしまう。
これに対して、阻血用空気袋14よりも空気容量の小さいK音検出用空気袋500を阻血用空気袋14に配置して、K音検出用空気袋500内の空気圧力の変化を微小な信号の変化として顕著に捉えることができる。また、排気バルブや制御バルブからのノイズは、メカニカルフィルタ700により減衰することができる。このため、K音検出用空気袋500とK音センサ600を用いることで、阻血用空気袋14からの信号は用いずにK音検出用空気袋500からの信号だけを用いてK音検出用空気袋500からSN比の良好な高周波成分信号DS3を得ることができ、この高周波成分信号DS3に対して適切にゲート区間GTを掛けて、K音信号900を得ることができる。
このピークポイントは、低周波成分信号が、予め定めた第1閾値を越えて、第1閾値よりも小さい予め定めた第2閾値以下となり、第2閾値を下回った時点から遡って得られる最初のピーク値である。これにより、第1閾値と第2閾値を用いてピークポイントを確実に得ることができる。
また、前記ゲート区間の設定として、前記低周波成分信号が第1閾値を越えた時点から、第2閾値を下回った時点までを利用する。これにより、ゲート区間の設定は、前記低周波成分信号を利用して確実に設定することができる。
阻血用空気袋は、膨張時に均等に4分割して膨らませるために、袋の膨張時のシワを発生させるために阻血用空気袋につけた肉を薄くする部分を複数設けてあり、この部分は折り畳むために複数の折り曲げ部分としても作用し、K音検出用空気袋は、複数の折り曲げ部分の間に配置されているので、阻血用空気袋を含む腕帯部は、K音検出用空気袋の配置に影響を受けずに折り曲げ部分において確実に折り畳むことができ、コンパクトに収納できる。
外側部材の内側には、骨部材が設けられているので、阻血用空気袋に空気が供給された時に、腕帯部の外側部材が外側に膨れる現象を防止することができ、正確な血圧測定が行える。
K音センサは、K音検出用空気袋に対して、チューブにより血圧計本体にあるコンデンサマイクロフォンに接続されていることを特徴とする。これにより、K音センサとコンデンサマイクロフォンはチューブを用いて確実に接続できる。
また、阻血用空気袋とK音検出用空気袋の間には、好ましくはバッキングが付けられている。これは、人体からの振動をK音検出用空気袋がK音センサに効率よく伝えるための工夫であり、これによりK音検出をより正確に行うことができる。
上述した本発明の実施形態では、K音検出用空気袋の高周波成分信号DS3に対して設定されるゲート区間は、低周波成分信号のピークポイントを中心としてゲート区間を開いて、前記ゲート区間内の前記高周波成分信号を抽出するようになっている。
しかし、例えば脈拍は測定者毎に異なるが、予め測定者の脈拍を求めて、この脈拍に応じて、ゲート区間を設定するようにしても良い。具体的には、基本的なゲート区間を600msecとし、脈拍数が180回/分(3回/秒)の場合は600msec×1/3=200msec、60回/分(1回/秒)の場合はゲート区間を600msec×1/1=600のように、脈波数に応じて可変とすることも可能である。また、ピークを捉えるのではなく、閾値を適切に設けることにより、閾値Aを超える時点から閾値Bを越える時点までの区間においてゲート区間を設定することも可能である。
図16(B)の閾値A、及び閾値Bは脈弱者の結果から3(×10−2)mmHgと定めているが、この値に限らない。また、上述のようにゲート区間の設定に閾値を利用することも考えられ、用途に合わせて閾値を設定するのが望ましい。
さらに、低周波成分信号として0.2〜1Hzの信号を抽出しているが、0.1〜10Hzの信号でゲート区間を設けることが可能であることを確認している。周波数成分として低い値を用いることによりSNが良くなるため、0.2〜1Hzの信号を用いるのが望ましい。高周波成分としては40〜80Hzを利用しているが、K音計測に適した周波数帯域であればこちらに限定されない。
また、K音センサの一例としてコンデンサマイクロフォンを挙げているが、K音が計測可能なセンサとして圧電マイクロフォン、ダイナミックマイクロフォン、バウンダリーマイクロフォンなどが利用できる。また、ゲート区間を設定するのみであれば、K音が測定できるセンサに限定されず、ストレインゲージ、光センサなどが挙げられる。
図示した電子血圧計の例では、腕帯部は、変形可能で血圧測定をしない時には折り畳むことができる構造であるが、本発明の電子血圧計としては、折り畳むことができる外布に代えて、例えばプラスチック製のハードな筐体を用いて、この筐体内に阻血用空気袋を配置した構造を採用することもできる。
上述した本発明の実施形態では、測定しない時には、折り畳まれた腕帯部2は、測定をしない時には、血圧計本体10の上面に対して、固定手段を用いて着脱可能に固定するようにしても良い。腕帯部2の固定方式としては、例えば、腕帯部と血圧計本体とは、マグネットと金属板とを用いて磁気的な吸引力で着脱可能に固定したり、オス型部材を有するテープ部材と、このオス型部材に対して着脱可能に機械的に取り付けることができるメス型部材を有するテープ部材を貼り付けることで、着脱可能に固定することもできる。
Claims (2)
- 上腕に通して加圧可能な筒状で、空気を供給することで前記上腕を加圧可能な阻血用空気袋と、前記阻血用空気袋の内側であって前記阻血用空気袋の一端部側に配置され、前記阻血用空気袋の空気容量よりも小さい空気容量を有する複数のK音検出用空気袋とを有する腕帯部と、
前記阻血用空気袋内に空気を供給し、昇圧から微速度で排気して減圧するまで前記阻血用空気袋内の空気の圧力変動を検知する圧力センサと
前記阻血用空気袋が前記上腕を加圧して動脈の血管内の血流を止めた後に減圧し、再び血流が流れる時に生じる前記K音検出用空気袋内のK音信号を検知するK音センサと、
前記圧力センサと前記K音センサから得られる信号の相関が低い場合には、前記上腕が前記腕帯部に対して逆挿入されたと判定する制御部と
を有する電子血圧計であって、
前記阻血用空気袋は、折り畳むために複数の折り線部分を有し、前記K音検出用空気袋は、前記複数の折り線部分の間に配置され、
前記K音センサは、前記K音検出用空気袋に対して、チューブにより前記血圧計本体にあるコンデンサマイクロフォンに接続されている
ことを特徴とする電子血圧計。 - 前記阻血用空気袋と前記K音検出用空気袋の間にはバッキングが付けられていることを特徴とする請求項1に記載の電子血圧計。
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