JP5599072B2 - 濾材 - Google Patents

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Description

本発明は、液体中に含有される固体粒子を効率良く除去して清浄な液体を得るための液体濾過フィルター等に用いられる濾材に関するものである。
液体濾過材の構造には、大きく分けて2つある。一つは「内部濾過タイプ」であり、これは濾材の内部で固体粒子を捕捉する構造の濾材である。もう一つは「表面濾過タイプ」であり、これは濾材の表面で固体粒子を捕捉する構造の濾材である(例えば、特許文献1参照)。また、これら濾材をプリーツ加工「ひだ折り加工」を施して濾材の表面積を増大させてから所定の形状に成形してフィルターを作製し、他の部品と組み合わせて濾過機にセットして使用するものである。
従来、放電加工機やIC生産工程で使用されている液体濾過フィルター用の濾材としては、天然パルプと有機繊維の混抄シートにフェノール樹脂等を含浸処理したシートやポリエステル不織布等が使用されていた。しかしこれらは固体粒子の濾過効率が低く、寿命が短い等の問題点があった。また、高性能の濾材としてフッ素樹脂等の多孔質シートがあるが、高価なため特殊用途に限定され、多量の液体を処理する濾材としては不適当であった。
これらの問題を解決する濾材の一つとして、1μm以下にフィブリル化された有機繊維、繊維径1〜5μmの極細有機繊維及び繊維径5μm以上の有機繊維からなり、且つ該繊維径5μm以上の有機繊維の一部または全部が繊維状有機バインダーであり、濾材密度が0.25〜0.8g/cmの「表面濾過タイプ」の液体濾過用の濾材が提案されている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2の濾材は、フィブリル化された有機繊維が固体粒子の捕集効率を発現し、その他の有機繊維との含有量を限定することで、圧力損失を抑え、多量の液体を効率良く短時間に処理することができるようにしている。
特許文献2の濾材は、厚みが非常に薄く、硬くないために、ひだ折り加工ができない問題点があったことから、本出願人らは、強度や腰(堅さ)を向上させるために、薄くて表面濾過性能に優れた上記濾材層と、液体の透過性が良く高強度でひだ折り加工性の良い支持体層を抄合わせ一体化した液体濾過用フィルター濾材が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
フィブリル化繊維を用いた濾材として、叩解度(カナディアン濾水度、CSF)を制御したリヨセル繊維を使用した濾材が提案されている(例えば、特許文献4〜6参照)。リヨセル繊維は、溶剤紡糸によって製造されているため、セルロース結晶が繊維の縦方向に配向しており、フィブリル化が容易である。また、湿式抄紙法で濾材を製造した際に、水素結合によってリヨセル繊維が結合し、濾材の強度を向上させることができるという利点がある。
しかし、非特許文献1の写真3(CSF=370ml)で明らかなように、フィブリル化したリヨセル繊維は、繊維の幹部から分岐して繋がったフィブリル繊維と、幹部から完全に離脱したフィブリル化繊維の両方が存在している。同じCSF値を示すフィブリル化状態であっても、フィブリル化の形態は同一ではないことに着目し、幹部から離脱した繊維径1μm以下のフィブリル化リヨセル繊維、繊維径2μm以上の幹部から繊維径1μm以下の枝部が発生したフィブリル化リヨセル繊維がそれぞれ単独、または2つのフィブリル化状態で含有してなる濾材によって、濾材の均一性、固体粒子の捕集効率、圧力損失といった特性を最適化する技術が開示されている(例えば、特許文献7参照)。
しかしながら、繊維径でリヨセル繊維のフィブリル化状態を調整しただけの特許文献7の技術では、微細粒子の捕集効率、圧力損失、濾材の強度といった性能において、未だ改善の余地が残っていた。
特開2000−70628号公報 特許第2633355号公報 特許第3305372号公報 特開平11−70305号公報 特開2000−153116号公報 特開2001−300225号公報 特開2004−188409号公報
「Courtaulds Fibresの製紙用途向け高強度セルロース繊維」、不織布情報、平成7年8月10日、p.22〜24
本発明の課題は、微細粒子の捕集効率、圧力損失、濾材の強度といった性能を、さらにバランス良く発現した濾材を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、
成樹脂繊維とフィブリル化したリヨセル繊維とを必須成分として含有した湿式法で製造された不織布からなり、フィブリル化したリヨセル繊維の繊維長分布ヒストグラムにおいて、0.00〜1.00mmの間に最大頻度ピークを有し、1.00mm以上の繊維長を有する繊維の割合が50%以上であり、最大頻度ピーク以外に1.50〜3.50mmの間にピークを有することを特徴とする濾材、
を見出した。
本発明の濾材は、合成樹脂繊維とフィブリル化したリヨセル繊維とを必須成分として含有した不織布からなる。フィブリル化したリヨセル繊維の繊維長分布ヒストグラムにおいて、0.00〜1.00mmの間に最大頻度ピークを有し、1.00mm以上の繊維長を有する繊維の割合が50%以上であることにより、フィブリル化したリヨセル繊維が合成樹脂短繊維と絡み合い、表面の平滑性が高く、均一性に優れるため、捕集効率、圧力損失、強度のバランスが良くよくなる。
フィブリル化したリヨセル繊維の繊維長分布ヒストグラムにおいて、最大頻度ピーク以外に1.50〜3.50mmの間にピークを有する濾材は、濾材として必要な均一性がより優れているため、捕集効率、圧力損失、強度のバランスがさらに良くなる。
0.00〜1.00mmの間に最大頻度ピークを有するフィブリル化したリヨセル繊維[1]の繊維長分布ヒストグラムの例である。 最大頻度ピーク以外に1.50〜3.50mmの間にピークを有するフィブリル化したリヨセル繊維[2]の繊維長分布ヒストグラムの例である。
以下、本発明の濾材について詳説する。
本発明の濾材は、合成樹脂短繊維とフィブリル化したリヨセル繊維とを必須成分として含有した不織布からなり、図1に示したように、フィブリル化したリヨセル繊維の繊維長分布ヒストグラムにおいて、0.00〜1.00mmの間に最大頻度ピークを有し、1.00mm以上の繊維長を有する繊維の割合が50%以上である。捕集効率を高めるという点において、繊維長分布ヒストグラムにおいて0.30〜0.70mmの間に最大頻度ピークを有し、1.00mm以上の繊維長を有する繊維の割合が55%以上であることが好ましい。1.00mm以上の繊維長を有する繊維の割合は高い方が望ましいが、75%程度あれば十分である。
本発明のフィブリル化したリヨセル繊維の繊維長及び繊維長分布ヒストグラムは、JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法No.52「紙及びパルプの繊維長 試験方法(光学的自動計測法)」に準じてKajaaniFiberLabV3.5(Metso Automation社製)を使用して測定した。
本発明における「繊維長」及び「繊維長分布」とは、上記に従って測定・算出される「長さ加重繊維長」及び「長さ加重繊維長分布」を意味する。
また、フィブリル化したリヨセル繊維の「リヨセル」とは、ISO規格及び日本のJIS規格に定める用語で「セルロース誘導体を経ずに、直接、有機溶剤に溶解させて紡糸して得られるセルロース繊維」のことであり、「溶剤紡糸セルロース繊維」とも言う。
リヨセル繊維は、通常のパルプ繊維と同様に、ビーター、PFIミル、シングルディスクリファイナー(SDR)、ダブルディスクリファイナー(DDR)、また、顔料等の分散や粉砕に使用するボールミル、ダイノミル等の叩解・分散設備でフィブリル化が可能である。これら叩解・分散設備の種類、処理条件(繊維濃度、温度、圧力、回転数、リファイナーの刃の形状、リファイナーのプレート間のギャップ、処理回数)の調整により、目的のリヨセルの繊維長及び繊維長分布を達成することが可能となる。
フィブリル化したリヨセル繊維の繊維長分布ヒストグラムにおいて、図2に示したように、上記の最大頻度ピーク以外に、1.50〜3.50mmの間にピークを有、1.75〜3.25mmの間にピークを有することがより好ましく、2.00〜3.00mmの間にピークを有することがさらに好ましい。この範囲にピークを有することにより、濾材の捕集効率と強度が両立できるため好ましい。該ピークの繊維長が1.50mmより短い場合、濾材強度不足により破れが起こることがある。また3.50mmを超えると濾材の捕集効率が向上しない場合がある。
フィブリル化したリヨセル繊維の変法濾水度は、0〜250mLであることがより好ましく、0〜160mLであることがさらに好ましい。変法濾水度が250mLより多いと、濾材の捕集効率が低下することがある。
本発明における変法濾水度とは、ふるい板として線径0.14mm、目開き0.18mmの80メッシュ金網を用い、試料濃度0.1%にした以外はJIS P8121に準拠して測定した値のことである。
リヨセル繊維の場合、微細化が進むに従って、繊維長が短くなっていき、特に試料濃度が薄いと、繊維同士の絡みが少なくなり、繊維ネットワークが形成されにくくなるため、溶剤紡糸セルロース繊維自体がふるい板の穴をすり抜けてしまう。つまり、微細化した溶剤紡糸セルロースの場合は、JIS P8121の測定方法では正確な濾水度が計測できない。より詳細に説明すると、リヨセル繊維は微細化処理によって繊維の長軸に平行に細かく分割されやすく、分割後の繊維1本1本における繊維径の均一性が高いため、平均繊維長が短くなるほど、繊維同士が絡みにくくなり、繊維ネットワークを形成しにくくなると考えられる。そこで、本発明では、リヨセル繊維の正確な濾水度を測定するために、ふるい板として線径0.14mm、目開き0.18mmの80メッシュ金網を用い、試料濃度0.1%にした以外はJIS P8121に準拠して測定する変法濾水度を用いた。
フィブリル化したリヨセル繊維の長さ加重平均繊維長は、0.20〜2.00mmであることが好ましく、0.40〜1.80mmがより好ましく、0.50〜1.50mmがさらに好ましい。長さ加重平均繊維長が0.20mm未満だと、繊維脱落、絡み不足により抄紙ワイヤーから繊維が離脱する場合がある。2.00mmより長いと、繊維同士が撚れてダマになり、濾材の均一性が低下する場合がある。
本発明の濾材において、合成樹脂短繊維とフィブリル化したリヨセル繊維との含有質量比率は、98/2〜20/80が好ましく、95/5〜30/70がより好ましく、90/10〜40/60がさらに好ましい。フィブリル化したリヨセル繊維の含有比率が2質量%未満の場合、均一性や捕集効率が向上しない場合がある。また、フィブリル化したリヨセル繊維の含有比率が80質量%を超えると、耐水性が不足し、濾材が剥離する場合がある。
本発明において、合成樹脂短繊維を構成する樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂、ポリビニルケトン系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ジエン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、フラン系樹脂、尿素系樹脂、アニリン系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、アルキド樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂等が挙げられる。このうち、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂を使用すると、濾材の破損抑制効果が高く、均一性に優れた濾材を得ることができ、好ましい。
合成樹脂短繊維は、単一の樹脂からなる繊維(単繊維)であっても良いし、2種以上の樹脂からなる繊維(複合繊維)であっても良い。また、本発明の濾材に含まれる合成樹脂短繊維は、1種でも良いし、2種類以上を組み合わせて使用しても良い。
合成樹脂短繊維として、バインダーとして機能する熱融着性短繊維を使用しても良い。熱融着性短繊維は、芯鞘型、偏芯型、サイドバイサイド型、海島型、オレンジ型、多重バイメタル型の複合繊維、あるいは未延伸単繊維等が挙げられるが、濾材の強度を高めるという点から、特に、芯鞘型ポリエステル系バインダー繊維を使用することが好ましい。
合成樹脂短繊維の繊度は、0.007〜4.4dtexが好ましく、0.02〜3.3dtexがより好ましく、0.04〜2.2dtexがさらに好ましい。合成樹脂短繊維の繊度が4.4dtexを超えた場合、濾材の均一性が確保できなくなる場合がある。また、合成樹脂短繊維の繊度が0.007dtex未満の場合、繊維の安定製造が困難になる。
合成樹脂短繊維の繊維長としては、1mm以上15mm以下が好ましく、1mm以上10mm以下がより好ましく、1mm以上7mm以下がさらに好ましい。繊維長が15mmを超えた場合、地合不良となる場合がある。一方、繊維長が1mm未満の場合には、濾材の機械的強度が低くなる場合がある。
本発明の濾材は、一般紙や湿式不織布を製造するための抄紙機、例えば、長網抄紙機、円網抄紙機、傾斜ワイヤー式抄紙機が単独、またはこれらの抄紙機が同種または異種の2機以上がオンラインで設置されているコンビネーション抄紙機等により製造される。抄紙機で製造された湿紙は、エアードライヤー、ヤンキードライヤー、シリンダードライヤー、サクションドラム式ドライヤー、赤外方式ドライヤー等のドライヤーで乾燥させる。
本発明の濾材を濾材層として、支持体層と一体化して、複合濾材として優位に用いることもできる。該支持体層としては、繊維径5μm以上の有機繊維で、ポリオレフィン系、ポリアミド系、ポリエステル系、アクリル系、ビニロン系、再生繊維系の繊維の少なくとも1種類を含み、且つ20〜150g/mの坪量からなる支持体層を用いることが好ましい。さらにこれにポリエステル系、ポリオレフィン系、塩化ビニル系、酢酸ビニル系、ビニロン系等の繊維状有機バインダーの少なくとも1種類を1〜70質量%含有することにより、強度が高い支持体層が得られる。また、この支持体層は湿式抄紙機で得られたものに限らず、用途に応じてポリエステル、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、コットン、レーヨン等の素材からなるスパンボンド、メルトブロー、ニードルパンチ、スパンレース等の乾式法で製造されたシートを用いることができる。複合濾材は、コンビネーション抄紙機を使用した抄き合わせ法によって製造することができる。一方の層を形成した後に、該層上に繊維を分散したスラリーを流延する方法で製造することもできる。また、乾式法で製造した支持体層を用いる場合は、抄紙機で製造した濾材層と支持体層とを抄紙機で積層しても良いし、別途加工機を用いて積層しても良い。
濾材と支持体層を積層し一体化して得られた複合濾材は、濾材のみでは得られなかった腰(堅さ)、耐水性、プリーツ加工性が得られ、放電加工機用、エンジンオイル用、燃料用、油水分離用、油圧機器用等の液体濾過用フィルター用濾材として好適となる。この場合、濾材層を上流側として使用することにより、表層濾過機構を発現でき、好ましい。しかし、対象となる液体中の粒子径が大きい場合等は、支持体層を上流とすることが好ましい場合がある。
本発明の濾材の目付けは、5〜100g/mが好ましく、7〜80g/mがより好ましく、10〜50g/mがさらに好ましい。100g/mを超えると、圧力損失が高くなりすぎたり、厚みが過剰となり、複合濾材とした場合には、複合化の効果が得られ難くなり、5g/m未満であると、均一性を得ることが難しくなり、複合濾材化後の表面に大きなバラつきが発生しやすくなる場合がある。なお、目付けはJIS P8124(紙及び板紙−坪量測定法)に規定された方法に基づく坪量を意味する。
本発明の濾材の厚みは、10〜500μmが好ましく、20〜400μmがより好ましく、30〜300μmがさらに好ましい。500μmを超えると、濾材だけでフィルターの大半を占めることになり、複合化による効果を得られ難くなり、10μm未満であると、濾材の強度が低くなりすぎて、複合化の際に濾材が破損する恐れがある。なお、厚みはJIS B7502に規定された方法により測定した値、つまり、5N荷重時の外側マイクロメーターにより測定された値を意味する。
本発明の濾材において、濾材の密度は、0.1〜0.8g/cmであることが好ましい。密度が0.1g/cm未満の場合、濾材層中に粒子が詰まりやすくなり、寿命が短くなる場合がある。逆に、0.8g/cmを超えると、圧力損失が大きくなる場合がある。
支持体層は、複合濾材の濾過効率を損なうことなく、機械的強度を向上させている。支持体層の密度は、0.05〜0.50g/cmであることが好ましい。支持体層の密度が0.05g/cm未満であると、複合濾材の機械的強度、加工性が低下する場合があり、0.50g/cmを超えると、濾過抵抗が高くなる場合がある。また、濾材全体の密度は、0.1〜0.6g/cmであることが好ましい。濾材全体の密度が0.1g/cm未満の場合は、濾材の厚みが厚くなるため、ユニットに組み込める濾材の面積が小さくなってしまい、結果としてフィルターのライフが短くなってしまう場合がある。
本発明の濾材には、必要に応じて濾材の特性を阻害しない範囲で、架橋剤、撥水剤、分散剤、歩留り向上剤、紙力剤、染料等の添加剤を適宜配合することができる。また、濾材及び複合濾材には、機械的強度、耐水性を付与するために熱可塑性樹脂を含有させることができる。熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル系、酢酸ビニル系、エポキシ系、合成ゴム系、ウレタン系、ポリエステル系、塩化ビニル系、塩化ビニリデン系等のラテックス、ポリビニルアルコール、澱粉、フェノール樹脂等が挙げられ、これらを単独または2種類以上を併用できる。
濾材及び複合濾材に含有せしめる熱可塑性樹脂の量としては、濾材に対して0.01〜10質量%が適当である。10質量%を超えると、濾材の圧力損失が大きくなる。また、0.01質量%未満では、熱可塑性樹脂を含有しない濾材及び複合濾材と比較して、機械的強度や耐水性が向上しない。
濾材及び複合濾材へ熱可塑性樹脂を含有させる状態は、濾材層のみ、濾材層及び支持体層の両方、支持体層のみのいずれの状態であっても良い。しかし、濾材層に熱可塑性樹脂を含有させると、濾材層の空間をふさいでしまい、固体粒子の捕捉能が小さくなり、圧力損失が大きくなることから、支持体層のみに含有させることが好ましい。
熱可塑性樹脂を濾材及び複合フィルターに含有させる方法としては、特に限定はしないが、サイズプレス方式、タブサイズプレス方式、スプレー方式、内添方式、グラビア塗工方式等の方法が挙げられる。支持体層のみに含有させるためには、スプレー方式、グラビア塗工方式を用いることが好ましい。熱可塑性樹脂を含有させた後に、エアードライヤー、ヤンキードライヤー、シリンダードライヤー、サクションドラム式ドライヤー、赤外方式ドライヤー等で乾燥する。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は本実施例に限定されるものではない。なお、実施例中における部や百分率は断りのない限り、すべて質量によるものである。
<フィブリル化したリヨセル繊維の物性値>
下記の例に用いたフィブリル化したリヨセル繊維について、
(1)1.00mm以上の繊維長を有する繊維の割合:「1.00mm以上の繊維割合」
(2)繊維長分布ヒストグラムにおける最大頻度ピークの繊維長:「最大頻度ピークの繊維長」
(3)最大頻度ピーク以外のピークの繊維長:「第2ピークの繊維長」
(4)長さ加重平均繊維長:「平均繊維長」
(5)ふるい板として線径0.14mm、目開き0.18mmの80メッシュ金網を用い、試料濃度0.1%にした以外はJIS P8121に準拠して測定した濾水度:「濾水度」
として、表1に示す。
実施例1
繊度0.3dtex、繊維長3mmの配向結晶化させたポリエチレンテレフタレート(PET)系短繊維45部、繊度2.2dtex、繊維長5mmの熱融着性バインダー繊維(芯鞘タイプ、ポリエステル系繊維)30部、フィブリル化していないリヨセル単繊維(繊維径12μm、繊維長6mm、コートルズ社製)を、ダブルディスクリファイナーを用いて処理して得られたフィブリル化したリヨセル繊維A25部を一緒に混合し、パルパーの水中で離解させ、アジテーターによる撹拌のもと、均一な抄造用スラリー(1%濃度)を調製した。この抄造用スラリーを円網抄紙機による湿式法を用いて抄き上げ、130℃のシリンダードライヤーによって、熱融着性バインダー繊維を接着させて不織布強度を発現させ、坪量20g/mの濾材を作製した。
実施例2
実施例1のリヨセル繊維Aの代わりにリヨセル繊維Bを配合した以外は実施例1と同様の方法で濾材を作製した。
実施例3
実施例1のリヨセル繊維Aの代わりにリヨセル繊維Cを配合した以外は実施例1と同様の方法で濾材を作製した。
実施例4(参考例)
実施例1のリヨセル繊維Aの代わりにリヨセル繊維Dを配合した以外は実施例1と同様の方法で濾材を作製した。
実施例5
実施例1のリヨセル繊維Aの代わりにリヨセル繊維Eを配合した以外は実施例1と同様の方法で濾材を作製した。
実施例6
実施例1のリヨセル繊維Aの代わりにリヨセル繊維Fを配合した以外は実施例1と同様の方法で濾材を作製した。
実施例7
実施例1のリヨセル繊維Aの代わりにリヨセル繊維Gを配合した以外は実施例1と同様の方法で濾材を作製した。
実施例8
実施例1のリヨセル繊維Aの代わりにリヨセル繊維Hを配合した以外は実施例1と同様の方法で濾材を作製した。
実施例9(参考例)
実施例1のリヨセル繊維Aの代わりにリヨセル繊維Iを配合した以外は実施例1と同様の方法で濾材を作製した。
実施例10
繊度0.1dtex、繊維長3mmの配向結晶化させたPET系短繊維60部、繊度2.2dtex、繊維長5mmの熱融着性バインダー繊維(芯鞘タイプ、ポリエステル系繊維)30部、フィブリル化していないリヨセル単繊維(繊維径12μm、繊維長6mm、コートルズ社製)を、ダブルディスクリファイナーを用いて処理して得られたフィブリル化したリヨセル繊維B10部を一緒に混合し、パルパーの水中で離解させ、アジテーターによる撹拌のもと、均一な抄造用スラリー(1%濃度)を調製した。この抄造用スラリーを円網抄紙機による湿式法を用いて抄き上げ、130℃のシリンダードライヤーによって、熱融着性バインダー繊維を接着させて不織布強度を発現させ、坪量30g/mの濾材を作製した。
実施例11(参考例)
繊度0.3dtex、繊維長3mmの配向結晶化させたPET系短繊維10部、繊度2.2dtex、繊維長5mmの熱融着性バインダー繊維(芯鞘タイプ、ポリエステル系繊維)30部、フィブリル化していないリヨセル単繊維(繊維径12μm、繊維長6mm、コートルズ社製)を、ダブルディスクリファイナーを用いて処理して得られたフィブリル化したリヨセル繊維I60部を一緒に混合し、パルパーの水中で離解させ、アジテーターによる撹拌のもと、均一な抄造用スラリー(1%濃度)を調製した。この抄造用スラリーを円網抄紙機による湿式法を用いて抄き上げ、130℃のシリンダードライヤーによって、熱融着性バインダー繊維を接着させて不織布強度を発現させ、坪量10g/mの濾材を作製した。
実施例12
濾材層を形成するために、繊度0.3dtex、繊維長3mmの配向結晶化させたPET系短繊維45部、繊度2.2dtex、繊維長5mmの熱融着性バインダー繊維(芯鞘タイプ、ポリエステル系繊維)30部、フィブリル化していないリヨセル単繊維(繊維径12μm、繊維長6mm、コートルズ社製)を、ダブルディスクリファイナーを用いて処理して得られたフィブリル化したリヨセル繊維A25部を一緒に混合し、パルパーの水中で離解させ、アジテーターによる撹拌のもと、均一な抄造用スラリー(1%濃度)を調製し、撹拌装置を有するストックタンクに貯蔵した。
次いで、支持体層を形成するために、繊度0.6dtex、繊維長5mmの配向結晶化させたPET系短繊維50部、繊度2.2dtex、繊維長5mmの熱融着性バインダー繊維(芯鞘タイプ、ポリエステル系繊維)を50部を一緒に混合し、パルパーの水中で離解させ、アジテーターによる撹拌のもと、均一な抄造用スラリー(1%濃度)を調製し、濾材層用のスラリーとは別に、撹拌装置を有するストックタンクに貯蔵した。傾斜ワイヤー抄紙機と円網抄紙機とのコンビネーションマシンを用いて、支持体層を傾斜ワイヤー抄紙機、濾材層を円網抄紙機で、乾燥質量で支持体層50g/m、濾材層20g/mの抄き合わせ湿紙を形成した後、支持体層側が130℃のヤンキードライヤーに接触するように熱圧乾燥し、坪量70g/m抄き合わせの複合濾材を得た。
実施例13
濾材層を形成するために、繊度0.3dtex、繊維長3mmの配向結晶化させたPET系短繊維45部、繊度2.2dtex、繊維長5mmの熱融着性バインダー繊維(芯鞘タイプ、ポリエステル繊維)30部、フィブリル化していないリヨセル単繊維(繊維径12μm、繊維長6mm、コートルズ社製)を、ダブルディスクリファイナーを用いて処理して得られたフィブリル化したリヨセル繊維B25部を一緒に混合し、パルパーの水中で離解させ、アジテーターによる撹拌のもと、均一な抄造用スラリー(1%濃度)を調製し、撹拌装置を有するストックタンクに貯蔵した。
次いで、支持体層を形成するために、繊度0.6dtex、繊維長5mmの配向結晶化させたPET系短繊維50部、繊度2.2dtex、繊維長5mmの熱融着性バインダー繊維(芯鞘タイプ、ポリエステル系繊維)を50部を一緒に混合し、パルパーの水中で離解させ、アジテーターによる撹拌のもと、均一な抄造用スラリー(1%濃度)を調製し、濾材層用のスラリーとは別に、撹拌装置を有するストックタンクに貯蔵した。傾斜ワイヤー抄紙機と円網抄紙機とのコンビネーションマシンを用いて、支持体層を傾斜ワイヤー抄紙機、濾材層を円網抄紙機で、乾燥質量で支持体層50g/m、濾材層20g/mの抄き合わせ湿紙を形成した後、支持体層側が130℃のヤンキードライヤーに接触するように熱圧乾燥し、坪量70g/m抄き合わせの複合濾材を得た。
(比較例1)
実施例1のリヨセル繊維Aの代わりにリヨセル繊維Jを配合した以外は実施例1と同様の方法で濾材を作製した。
(比較例2)
実施例1のリヨセル繊維Aの代わりにリヨセル繊維Kを配合した以外は実施例1と同様の方法で濾材を作製した。
(比較例3)
実施例1のリヨセル繊維Aの代わりにリヨセル繊維Lを配合した以外は実施例1と同様の方法で濾材を作製した。
<評価>
実施例及び比較例で得られた濾材及び複合濾材について、下記の評価を行い、圧力損失、粒子捕集効率、強度の評価結果を表2に示した。
[圧力損失](単位:Pa)
JIS B9908に準じて、面風速5.3cm/秒の条件で測定した。圧力損失は低いほど好ましく、150Pa未満であれば「◎」、150Pa以上200Pa未満であれば「○」、200Pa以上250Pa未満であれば「△」、250Pa以上を「×」とした。
[捕集効率](単位:%)
JIS B9908に準じて、面風速5.3cm/秒の条件で測定した。測定対象粒子は、大気塵を使用して、粒子径0.25〜0.35μmの粒子についての捕集効率をパーティクルカウンター(商品名「KC−11」、リオン社製)を使用して測定した。捕集効率は高いほど好ましく、50%以上であれば「◎」、40%以上50%未満であれば「○」、30%以上40%未満であれば「△」、30%未満であれば「×」とした。
[強度]
実施例及び比較例の濾材及び複合濾材を、50mm幅の短冊状に切り揃えた。試験片を卓上型材料試験機(商品名:STA−1150、(株)オリエンテック製)に据え付けた40mmφの固定枠に装着し、先端に丸み(曲率1.6)をつけた直径1.0mmの金属針((株)オリエンテック製)を試料面に対して直角に50mm/分の一定速度で貫通するまで降ろした。この時の最大荷重(g)を計測し、これを突刺強度とした。1試料について5ヶ所以上突刺強度を測定し、全測定値の中で最も小さい突刺強度について、100g以上であれば「◎◎」、50g以上100g未満であれば「◎」、40g以上50g未満であれば「○」、30g以上40g未満であれば「△」、30g未満であれば「×」で表した。
[プリーツ加工適性]
濾材及び複合濾材をマシンの流れ方向(MD)30cm、横方向20cmに裁断し、流れ方向を横切るように5cm毎に山折、谷折を繰り返し、畳んだ濾材の上に、直径5cm、長さ30cm、重さ3kgの円柱状金属ロールをゆっくり転がして折り目をつけ蛇腹状とする。折り目が明確で歪みがなく、折り目を押しても変形しなければ良好とする。プリーツ加工適性は、実施例1、3、12及び13で得られた濾材及び複合濾材について、評価した。
実施例1〜11と比較例1〜3との比較から、実施例1〜11で得られた濾材は、合成樹脂短繊維とフィブリル化したリヨセル繊維とを含有する不織布からなり、フィブリル化したリヨセル繊維の繊維長分布ヒストグラムにおいて、0.00〜1.00mmの間に最大頻度ピークを有し、1.00mm以上の繊維長を有する繊維の割合が50%以上であるため、表面の平滑性が高く、均一性に優れ、捕集効率、圧力損失のバランスが良好な結果が得られた。
これに対し、比較例1で得られた濾材では、フィブリル化したリヨセル繊維の繊維長分布ヒストグラムにおける最大頻度ピークが0.00〜1.00mmの間から外れているため、捕集効率が実施例より低い結果となった。また、比較例2で得られた濾材は、1.00mm以上の繊長を有する繊維の割合が50%より少ないため、強度も低く、圧力損失が実施例より大きい結果となった。さらに、比較例3で得られた濾材は、最大頻度ピークが0.00〜1.00mmの間から大きく外れているため、捕集効率が実施例より一層低い結果となった。
実施例1〜9の比較から、フィブリル化したリヨセル繊維の繊維長分布ヒストグラムにおいて、最大頻度ピーク以外に1.50〜3.50mmの間にピークを有する場合、強度も高く、また、捕集効率も良好であった。最大頻度ピーク以外のピークの繊維長が1.50mmより短い実施例4(参考例)では、強度が若干低下する傾向が見られた。また、最大頻度ピーク以外のピークの繊維長が3.50mmより長い実施例9(参考例)では、捕集効率が若干悪化する傾向が見られた。
実施例12及び実施例13は、実施例1、実施例3の濾材と支持体層を積層して一体化した複合濾材であり、圧力損失、捕集効率、強度共に満足していた。また、実施例12及び実施例13の複合濾材は、支持体層と一体化しているため、プリーツ加工適性評価では、折り目が明確で歪みがなく、折り目を押しても変形せず、プリーツ加工適性が優れていた。
本発明の濾材は、液体濾過フィルター用の濾材に好適に使用できる。

Claims (2)

  1. 合成樹脂繊維とフィブリル化したリヨセル繊維とを必須成分として含有した湿式法で製造された不織布からなり、フィブリル化したリヨセル繊維の繊維長分布ヒストグラムにおいて、0.00〜1.00mmの間に最大頻度ピークを有し、1.00mm以上の繊維長を有する繊維の割合が50%以上であり、最大頻度ピーク以外に1.50〜3.50mmの間にピークを有することを特徴とする濾材。
  2. フィブリル化したリヨセル繊維の繊維長分布ヒストグラムにおいて、0.30〜0.70mmの間に最大頻度ピークを有し、1.00mm以上の繊維長を有する繊維の割合が55%以上である請求項1記載の濾材。
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