JP2007083184A - 濾材及び液体濾過用フィルター濾材 - Google Patents

濾材及び液体濾過用フィルター濾材 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明の課題は、濾材の均一性、固体粒子の捕集効率、圧力損失といった性能をバランス良く発現し、液体中において、湿潤による強度低下を小さくし、濾材表面に形成される捕捉粒子からなる層(ケーキ層)の剥離性を向上させ、ロングライフ化を図った濾材、及び該濾材を用いてなる液体濾過用フィルター濾材を提供することにある。
【解決手段】剪断力を加えて幹部から離脱した繊維径1μm以下にフィブリル化したアクリル繊維(A)、剪断力を加えて繊維径2μm以上の幹部から繊維径1μm以下の枝部が発生したフィブリル化アクリル繊維(B)の両方、もしくはいずれか一方と、繊維径1μm以上の有機繊維(C)を1種類以上含有することを特徴とする濾材。
【選択図】なし

Description

本発明は、空気中の粉塵を捕集するエアフィルター、或いは液体中に含有される粒子を効率良く除去し、清浄な液体を得るための液体濾過用フィルターなどに用いられる濾材、及び該濾材を用いてなる液体濾過用フィルター濾材に関するものである。
液体用濾材の構造には大きく分けて2つある。一つは内部濾過タイプであり、これは濾材の内部で固体粒子を捕捉する構造の濾材である。もう一つは表面濾過タイプであり、これは濾材の表面で固体粒子を捕捉する構造の濾材である(例えば、特許文献1参照)。また、これら濾材はプリーツ加工(ひだ折り加工)を施すことにより、濾材の表面積を増大させ、所定の形状に成形してフィルターを作製し、他の部品と組み合わせて濾過機にセットして使用するものである。
従来、放電加工機やIC生産工程で使用されている液体濾過フィルター用の濾材としては、天然パルプと有機繊維の混抄シートにフェノール樹脂等を含浸処理したシートやポリエステル不織布等が使用されていた。しかし、これらは固体粒子の濾過効率が低く、寿命が短い等の問題点があった。また、高性能の濾材として、フッ素樹脂等の多孔質シートがあるが、高価なため、特殊用途に限定され、多量の液体を処理する濾材としては不適当であった。
これらの問題を解決する濾材の一つとして、1μm以下にフィブリル化された有機繊維5〜40質量%と、繊維径1〜5μmの極細有機繊維5〜60質量%及び繊維径5μm以上の有機繊維20〜70質量%からなり、且つ該繊維径5μm以上の有機繊維の一部または全部が繊維状有機バインダーであり、濾過密度が0.25〜0.8g/m3の表面濾過タイプの液体濾過用の濾材を提案し、上記問題を解決した(特許文献2参照)。この濾材は、フィブリル化された有機繊維が固体粒子の捕集効率を発現し、その他の有機繊維との含有量を限定することで、圧力損失を抑え、多量の液体を効率よく短時間に処理することができるようにしている。
上記濾材は、厚みが非常に薄く、堅くないために、ひだ折り加工が出来ない問題があったことから、強度や腰(堅さ)を向上させるために、薄くて表面濾過性能に優れた上記濾材層と、液体の透過性が良く、高強度で、ひだ折り加工性のよい支持体層を抄き合わせ、一体化した液体濾過用フィルター濾材を考案するに至り、現在でも有用に産業界で活用されている(特許文献3参照)。
フィブリル化繊維を用いた濾材として、あらたに、叩解度(カナディアン濾水度)を制御したリヨセル繊維を使用した濾材が提案されている(例えば、特許文献4〜5参照)。リヨセル繊維は、溶剤紡糸によって製造されているため、セルロース結晶が繊維の縦方向に配向しており、フィブリル化が容易である。また、湿式抄紙法で濾材を製造した際に、水素結合によってリヨセル繊維が結合し、濾材の湿紙強度を向上させることができるという利点があるが、液体を濾過する場合には、リヨセル繊維の膨潤により、濾材の強度が低下したり、捕捉粒子が濾材の内部に入り込み、ライフが短くなるといった問題を抱えている。
特開2000−70628号公報 特許第2633355号公報 特許第3305372号公報 特開平11−70305号公報 特開2000−153116号公報
本発明の課題は、濾材の均一性、固体粒子の捕集効率、圧力損失といった性能をバランス良く発現し、液体中において、湿潤による強度低下を小さくし、濾材表面に形成される捕捉粒子からなる層(ケーキ層)の剥離性を向上させ、ロングライフ化を図った濾材、及び該濾材を用いてなる液体濾過用フィルター濾材を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、
(1)剪断力を加えて幹部から離脱した繊維径1μm以下にフィブリル化したアクリル繊維(A)、剪断力を加えて繊維径2μm以上の幹部から繊維径1μm以下の枝部が発生したフィブリル化アクリル繊維(B)の両方、もしくはいずれか一方と、繊維径1μm以上の有機繊維(C)を1種類以上含有することを特徴とする濾材、
(2)アクリル繊維(A)及び(B)が、アクリロニトリル系ポリマーと、少なくとも1種類以上の添加剤ポリマーとから構成され、両者が相分離状態にある割繊性アクリル繊維であることを特徴とする上記(1)記載の濾材、
(3)(A)と(B)の濾材に対する総含有量が3〜70質量%、(C)の濾材に対する含有量が30〜97質量%であることを特徴とする上記(1)または(2)のいずれか記載の濾材、
(4)有機繊維(C)の一部または全てが熱融着性バインダー繊維であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれか記載の濾材、
(5)繊維径5μm以上の有機繊維を少なくとも1種類含み、且つ20〜150g/m2の坪量からなる支持体層を上記(1)〜(4)のいずれか記載の濾材と積層し、一体化されてなることを特徴とする液体濾過用フィルター濾材、
(6)支持体層の有機繊維の一部または全てが熱融着性バインダー繊維であることを特徴とする上記(5)記載の液体濾過用フィルター濾材、
(7)濾材面を上流側にセットして使用することを特徴とする上記(5)または(6)記載の液体濾過用フィルター濾材
を見出した。
本発明の濾材は濾材の均一性、固体粒子の捕集効率、圧力損失といった性能をバランス良く発現することができるとともに、湿潤による強度低下が小さく、液体濾過用濾材に適している。更に、濾材表面に形成される捕捉粒子からなるケーキ層の剥離性が向上するため、ロングライフ化が図れる。また、濾材と支持体層とを一体化させた本発明の液体濾過用フィルター濾材は、上記のような濾材の性能に加えて、機械的強度が向上し、加工特性も良好となる。
以下、本発明を詳説する。本発明の濾材に用いられる割繊性アクリル繊維とは、通常のパルプ繊維と同様に、ビーター、PFIミル、シングルディスクリファイナー(SDR)、ダブルディスクリファイナー(DDR)、また、顔料等の分散や粉砕に使用するボールミル、ダイノミル、ミキサー、高圧ホモジナイザー等の叩解、分散設備で割繊及びフィブリル化が可能であるアクリル繊維を言う。これらの叩解、分散設備で割繊及びフィブリル化が可能であれば、割繊性アクリル繊維を構成するポリマーに特に制限はない。すなわち、通常のアクリル繊維に用いられるアクリロニトリル系ポリマーのみから構成されても良いし、アクリロニトリル系ポリマーと添加剤ポリマーとから構成されても構わない。割繊及びフィブリル化が容易であることを考慮すれば、アクリロニトリル系ポリマーと添加剤ポリマーとから構成されたアクリル繊維の方がより好ましい。
割繊性アクリル繊維を紡糸する際、該繊維を構成するアクリロニトリル系ポリマーと添加剤ポリマーとの間でミクロ相分離が起こり、相分離のドメインサイズがミクロンからサブミクロンのオーダーである場合に、後の叩解処理により割繊またはフィブリル化が良好となる。この相分離のドメインサイズを実現するためには、紡糸する際にアクリロニトリル系ポリマーと添加剤ポリマーとが相溶はしないが適度に混和することが重要である。
アクリロニトリルの共重合成分は、通常のアクリル繊維を構成する共重合モノマーであれば特に限定されないが、例えば以下のモノマーが挙げられる。すなわち、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチルなどに代表されるアクリル酸エステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチルなどに代表されるメタクリル酸エステル類、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、アクリルアミド、スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどの不飽和単量体などである。
また、添加剤ポリマーは、特に限定されないが、アクリル樹脂系ポリマー、及びアクリル樹脂系ポリマー以外の一部のポリマーが挙げられる。アクリル樹脂系ポリマーを構成するモノマーは特に限定されないが、例えば以下のモノマーが挙げられ、このうちの1種以上を用いることができる。すなわち、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチルなどに代表されるアクリル酸エステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチルなどに代表されるメタクリル酸エステル類、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、アクリルアミド、スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フツ化ビニリデンなどの不飽和単量体などである。また、アクリル樹脂系ポリマー以外のポリマーとしては、ポリ塩化ビニル、ポリアルキレングリコール、ポリエーテル系化合物、ポリエーテルエステル系化合物、セルロースアセテート、ポリスルホン、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリエステル、ポリペプチドなどが挙げられる。また、抗菌、防臭性を付与するためにキチン、キトサン等を添加しても良い。
割繊性アクリル繊維に用いる添加剤ポリマーの軟化点もしくはガラス転移点が、濾材を製造する工程での処理温度よりも低い場合、軟化点もしくはガラス転移点以上の温度がかかることで、添加剤ポリマーの一部または全てが溶融し、濾材の強度を増す働きをする。
本発明の濾材に用いられる割繊性アクリル繊維の断面形状については特に制限はなく、円形、楕円形のみならず、偏平、三角、Y型、T型、U型、星型、ドッグボーン型など、いわゆる異形断面形状をとるもの、中空状のもの、枝別れ状のもののいずれでも良い。しかし、割繊の容易さの点から、円形もしくは楕円形のものが最も好ましい。また、割繊後の繊維の断面形状についても特に制限はなく、円形、楕円形のみならず、扁平、筋状、米字、三角などの異形断面形状をとるものが挙げられる。
割繊性アクリル繊維の特徴を最大限に発揮させ、濾材の均一性、固体粒子の捕集効率、圧力損失等の性能をバランス良く発現させるためには、最適なフィブリル化条件を見出すことが重要である。本発明の濾材では、剪断力を加えて幹部から離脱した繊維径1μm以下のフィブリル化アクリル繊維(A)、及び、剪断力を加えて、繊維径2μm以上の幹部から繊維径1μm以下の枝部が発生したフィブリル化アクリル繊維(B)の両方、もしくは、いずれか一方を含有すれば良いが、(A)と(B)の2つのフィブリル化状態のアクリル繊維を含有することが最も好ましい。
割繊性アクリル繊維は、叩解することでフィブリル化が進行し、濾材に適した素材となり得るため、最適な叩解条件の見極めが重要となる。(A)および(B)が適正に存在するフィブリル化状態を確認する方法としては、叩解した繊維を水等で十分希釈した後に乾燥させ、顕微鏡か、好ましくは電子顕微鏡で観察することが好ましい。しかし、最適な叩解条件が決定した後は、その都度観察しなくても良い。
本発明の濾材において、捕集効率、圧力損失をバランス良く発現するためには、幹部から離脱した繊維径1μm以下のフィブリル化アクリル繊維(A)は、アスペクト比(繊維長/繊維径)が10〜100000、好ましくは、100〜50000である。また、繊維径2μm以上の幹部から繊維径1μm以下の枝部が発生したフィブリル化アクリル繊維(B)において、幹部のアスペクト比は、10〜50000、好ましくは50〜30000である。また、枝部のアスペクト比は、10〜100000、好ましくは100〜50000である。これらのフィブリル化状態は、上記の顕微鏡観察によって、確認することができる。
本発明の濾材において、フィブリル化したアクリル繊維の配合比率は特に限定されないが、(A)および(B)の濾材に対する含有量が3〜70質量%、(C)の含有量が30〜97質量%であることが好ましい。(A)および(B)の含有量が3質量%未満では、フィブリル化したアクリル繊維が濾材に均一に分布できないことから捕集効率を高めることができないことがある。一方、70質量%を超えると捕集効率は十分得られるものの、圧力損失、通気抵抗、通液抵抗が高くなりすぎる場合があり、濾材の寿命が短くなることがある。
本発明の濾材において、繊維径が1μm以上の有機繊維(C)とは、皮膜形成能の少ない木材パルプ、麻パルプ、コットンリンター、リント、リヨセル繊維が、再生繊維として、レーヨン、キュプラが、半合成繊維として、アセテート、トリアセテート、プロミックスが、合成繊維として、ポリオレフィン系、ポリアミド系、ポリアクリル系、ビニロン系、ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル系、ナイロン系、ベンゾエート、ポリクラール、フェノール系などの繊維が挙げられる。上記の繊維の他に、植物繊維として、藁パルプ、竹パルプ、ケナフパルプなどの木本類、草本類を含むものとする。これらの繊維はフィブリル化されていても通気性、通液性を阻害しない範囲であれば使用することができる。更に、古紙、損紙などから得られるパルプ繊維等も含まれる。また、断面形状がT型、Y型、三角等の異形断面を有する繊維も通気性、通液性確保のために含有できる。
本発明の濾材は、フィブリル化アクリル繊維(A)及び(B)と、繊維径1μm以上の有機繊維(C)を1種類以上含有しており、該アクリル繊維が繊維径1μm以上の有機繊維に程良く絡み合い、良好な三次元ネットワークを形成することにより、緻密さによる捕集性能を保持しつつ、適当な空間によって通気性、通液性を確保している。更に好ましくは、繊維径の異なる2種類以上の有機繊維(C)を含有することにより、ネットワークにさらなる空間が生まれ、通気性、通液性が向上し、圧力損失が低く、捕集効率が高い高性能な濾材となる。
本発明の濾材において、有機繊維(C)の一部または全てに熱融着性バインダー繊維を用いることができる。濾材の製造工程において、該バインダー繊維の溶融温度以上に濾材の温度を上げることにより、濾材の機械的強度が向上する。例えば、濾材を湿式抄造法で製造し、その後の乾燥工程で、熱融着性バインダー繊維を溶融させることができる。
本発明の濾材に係わる熱融着性バインダー繊維としては、単繊維のほか、芯鞘繊維(コアシェルタイプ)、並列繊維(サイドバイサイドタイプ)、放射状分割繊維などの複合繊維が挙げられる。複合繊維は、皮膜を形成しにくいので、濾材の空間を保持したまま、機械的強度を向上させることができる。熱融着性バインダー繊維としては、例えば、ポリプロピレンの短繊維、ポリプロピレン(芯)とポリエチレン(鞘)の組み合わせ、ポリプロピレン(芯)とエチレンビニルアルコール(鞘)の組み合わせ、高融点ポリエステル(芯)と低融点ポリエステル(鞘)の組み合わせが挙げられる。また、ポリエチレン等の低融点樹脂のみで構成される単繊維(全融タイプ)や、ポリビニルアルコール系のような熱水可溶性バインダーは、濾材の乾燥工程で皮膜を形成し易いが、特性を阻害しない範囲で使用することができる。
本発明の濾材は、支持体層と一体化して、液体濾過用フィルターとして用いることができる。該支持体層としては、繊維径5μm以上の有機繊維を少なくとも1種類以上含み、且つ20〜150g/m2の坪量からなることが好ましい。該有機繊維としては、ポリオレフィン系、ポリアミド系、ポリエステル系、アクリル系、ビニロン系、再生繊維系の繊維を用いることができる。更に、該有機繊維の一部または全てに、ポリエステル系、ポリオレフィン系、塩化ビニル酢酸ビニル系、ビニロン系等の熱融着性バインダー繊維を用いることにより、強度が高い支持体層が得られる。また、該支持体層は湿式抄造法により得られたものに限らず、用途に応じてポリエステル、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、コットン、レーヨン等の素材からなるスパンボンド、メルトブロー、ニードルパンチ、スパンレース等の方法で製造されたシートを用いることが出来る。
濾材と支持体層を積層し、一体化して得られた本発明の液体濾過用フィルター濾材は、濾材のみでは得られなかった強度や腰(堅さ)が得られ、プリーツ加工性が向上し、放電加工機用、エンジンオイル用、燃料用、油水分離用、油圧機器用等の液体濾過用フィルター濾材に好適となる。この場合、濾材層を上流側として使用することにより、表面濾過機構を発現でき、好ましい。しかし、対象となる液体中の粒子径が大きい場合など、使用状況によっては、支持体層を上流側とする方が好ましい場合がある。
本発明の液体濾過用フィルター濾材は、吸水性の低いアクリル繊維を含有しているため、セルロース系の繊維を含有する濾材と比較すると、湿潤強度の低下が小さく、耐水性は良好である。そのため、必ずしも耐水化処理は必要としない。しかしながら、高圧力下など、過酷な条件で使用する場合や、ロングライフ化のため、より多くの濾液を処理する場合に、濾材表面に形成される固体粒子からなるケーキ層を剥離しやすくするために、合成樹脂系バインダーを含有させても良く、機械的強度や耐水性を向上させることができる。合成樹脂系バインダーとしては、例えば、アクリル系、酢酸ビニル系、エポキシ系、合成ゴム系、ウレタン系、ポリエステル系、塩化ビニリデン系などのラテックス、ポリビニルアルコール、フェノール樹脂などが挙げられ、これらを単独または2種類以上を併用でき、必要に応じて架橋剤等も併用できる。
本発明の液体濾過用フィルター濾材に含有させる合成樹脂系バインダーの量としては、該フィルター濾材に対して0.01〜10質量%が適当である。10質量%を超えると、フィルター濾材の圧力損失が大きくなることがある。また、0.01質量%未満では、合成樹脂系バインダーを含有しない液体濾過用フィルター濾材と比較して、機械的強度や耐水性の向上が顕著でないことがある。
本発明の液体濾過用フィルター濾材に合成樹脂系バインダーを含有させる場合、濾材層のみ、濾材層及び支持体層の両方、支持体層のみのいずれに含有させても良い。濾材層に合成樹脂系バインダーを含有させた場合、濾材層の微細な空間を塞いでしまい、固体粒子の捕捉能が低下し、圧力損失が高くなる恐れがある反面、濾材層の強度やフィルター加工性が向上するといった利点もある。そのため、使用用途に応じて、適宜、選択すれば良い。
合成樹脂系バインダーを液体濾過用フィルター濾材に含有させる方法は、特に限定されないが、サイズプレス方式、タブサイズプレス方式、スプレー方式、内添方式、グラビア塗工方式、サチュレータ方式などの方法が挙げられる。
本発明の液体濾過用フィルター濾材には、必要に応じて、濾材の特性を阻害しない範囲で、架橋剤、撥水剤、分散剤、歩留り向上剤、紙力剤、染料などの添加剤を適宜配合することができる。
本発明の濾材および液体濾過用フィルター濾材は、例えば、長網抄紙機、円網抄紙機、傾斜ワイヤー式抄紙機などの一般紙や湿式不織布を製造するための抄紙機単独で、或いは、同種または異種の2機以上の抄紙機がオンラインで設置されているコンビネーション抄紙機などにより製造される。その際に、積層方法としては、各々の抄紙機で抄きあげた湿紙を積層する抄き合わせや、一方のシートを形成した後、該シート上に繊維を分散したスラリーを流し、2層構造のシートを形成する方法や、同一の抄紙機ヘッドに順次異なるスラリーを重ねて流し、2層構造のシートを形成する方法などが挙げられる。これらの抄紙機で形成された湿紙は、ドライヤーで乾燥され、濾材および液体濾過用フィルター濾材となる。その後、必要に応じ、合成樹脂系バインダーなどを含有させ、ドライヤーで乾燥させる。該ドライヤーとしては、エアードライヤー、シリンダードライヤー、サクションドラム式ドライヤー、赤外方式ドライヤーなどが用いられる。また、乾式法で製造したスパンボンド等のシートを支持体層として用いる場合は、該支持体層上に濾材層を抄紙機で形成し、積層しても良いし、予め抄紙機で製造した濾材層と該支持体層どうしを別途加工機を用いて積層しても良い。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は本実施例に限定されるものではない。
フィブリル化していない割繊性アクリル繊維(繊度1.2dtex、繊維長6mm、アクリル/セルロースアセテートの複合繊維、三菱レイヨン社製)をダブルディスクリファイナーを用いて40回繰り返し処理し、幹部から離脱した繊維径0.9μmのフィブリル化アクリル繊維を調製した。
上記フィブリル化アクリル繊維を15質量%、有機繊維(繊維径7μm、繊維長5mmのポリエステル繊維、帝人社製)を40質量%、熱融着性バインダー繊維(繊維径14μm、繊維長5mm、芯鞘タイプのポリエステル繊維、ユニチカ社製)を45質量%の比率で水に分散混合し、乾燥重量20g/m2になるように分散液を採取した。そして、標準角形手抄き抄紙機を用いて抄紙した後、表面温度130℃のシリンダードライヤーで乾燥して、実施例1の濾材を作製した。
フィブリル化していない割繊性アクリル繊維(繊度1.2dtex、繊維長6mm、アクリル/セルロースアセテートの複合繊維、三菱レイヨン社製)をシングルディスクリファイナーを用いて30回繰り返し処理し、繊維径6μmの幹部から繊維径1μm以下の枝部が発生したフィブリル化アクリル繊維を調製した。
上記フィブリル化アクリル繊維を15質量%、有機繊維(繊維径7μm、繊維長5mmのポリエステル繊維、帝人社製)を40質量%、熱融着性バインダー繊維(繊維径14μm、繊維長5mm、芯鞘タイプのポリエステル繊維、ユニチカ社製)を45質量%の比率で水に分散混合し、乾燥重量20g/m2になるように分散液を採取した。そして、標準角形手抄き抄紙機を用いて抄紙した後、表面温度130℃のシリンダードライヤーで乾燥して、実施例2の濾材を作製した。
フィブリル化していない割繊性アクリル繊維(繊度1.2dtex、繊維長6mm、アクリル/セルロースアセテートの複合繊維、三菱レイヨン社製)をPFIミルを用いて10000回転処理し、幹部から離脱した繊維径1μm以下のフィブリル化アクリル繊維と、繊維径5μmの幹部から繊維径1μm以下の枝部が発生したフィブリル化アクリル繊維の混合繊維を調製した。
上記フィブリル化アクリル繊維を15質量%、有機繊維(繊維径7μm、繊維長5mmのポリエステル繊維、帝人社製)を40質量%、熱融着性バインダー繊維(繊維径14μm、繊維長5mm、芯鞘タイプのポリエステル繊維、ユニチカ社製)を45質量%の比率で水に分散混合し、乾燥重量20g/m2になるように分散液を採取した。そして、標準角形手抄き抄紙機を用いて抄紙した後、表面温度130℃のシリンダードライヤーで乾燥して、実施例3の濾材を作製した。
フィブリル化していない割繊性アクリル繊維(繊度3.3dtex、繊維長3mm、アクリル/ガラス転移点90℃のメタクリル樹脂の複合繊維、三菱レイヨン社製)をPFIミルを用いて10000回転処理し、幹部から離脱した繊維径1μm以下のフィブリル化アクリル繊維と、繊維径5μmの幹部から繊維径1μm以下の枝部が発生したフィブリル化アクリル繊維の混合繊維を調製した。
上記フィブリル化アクリル繊維を15質量%、有機繊維(繊維径7μm、繊維長5mmのポリエステル繊維、帝人社製)を40質量%、熱融着性バインダー繊維(繊維径14μm、繊維長5mm、芯鞘タイプのポリエステル繊維、ユニチカ社製)を45質量%の比率で水に分散混合し、乾燥重量20g/m2になるように分散液を採取した。そして、標準角形手抄き抄紙機を用いて抄紙した後、表面温度130℃のシリンダードライヤーで乾燥して、実施例4の濾材を作製した。
実施例3で調製したフィブリル化アクリル繊維を2質量%、有機繊維(繊維径7μm、繊維長5mmのポリエステル繊維、帝人社製)を53質量%、熱融着性バインダー繊維(繊維径14μm、繊維長5mm、芯鞘タイプのポリエステル繊維、ユニチカ社製)を45質量%の比率で水に分散混合し、乾燥重量20g/m2になるように分散液を採取した。そして、標準角形手抄き抄紙機を用いて抄紙した後、表面温度130℃のシリンダードライヤーで乾燥して、実施例5の濾材を作製した。
実施例3で調製したフィブリル化アクリル繊維を3質量%、有機繊維(繊維径7μm、繊維長5mmのポリエステル繊維、帝人社製)を52質量%、熱融着性バインダー繊維(繊維径14μm、繊維長5mm、芯鞘タイプのポリエステル繊維、ユニチカ社製)を45質量%の比率で水に分散混合し、乾燥重量20g/m2になるように分散液を採取した。そして、標準角形手抄き抄紙機を用いて抄紙した後、表面温度130℃のシリンダードライヤーで乾燥して、実施例6の濾材を作製した。
実施例3で調製したフィブリル化アクリル繊維を50質量%、有機繊維(繊維径7μm、繊維長5mmのポリエステル繊維、帝人社製)を5質量%、熱融着性バインダー繊維(繊維径14μm、繊維長5mm、芯鞘タイプのポリエステル繊維、ユニチカ社製)を45質量%の比率で水に分散混合し、乾燥重量20g/m2になるように分散液を採取した。そして、標準角形手抄き抄紙機を用いて抄紙した後、表面温度130℃のシリンダードライヤーで乾燥して、実施例7の濾材を作製した。
実施例4で調製したフィブリル化アクリル繊維を70質量%、有機繊維(繊維径7μm、繊維長5mmのポリエステル繊維、帝人社製)を10質量%、熱融着性バインダー繊維(繊維径14μm、繊維長5mm、芯鞘タイプのポリエステル繊維、ユニチカ社製)を20質量%の比率で水に分散混合し、乾燥重量20g/m2になるように分散液を採取した。そして、標準角形手抄き抄紙機を用いて抄紙した後、表面温度130℃のシリンダードライヤーで乾燥して、実施例8の濾材を作製した。
実施例4で調製したフィブリル化アクリル繊維を75質量%、有機繊維(繊維径7μm、繊維長5mmのポリエステル繊維、帝人社製)を5質量%、熱融着性バインダー繊維(繊維径14μm、繊維長5mm、芯鞘タイプのポリエステル繊維、ユニチカ社製)を20質量%の比率で水に分散混合し、乾燥重量20g/m2になるように分散液を採取した。そして、標準角形手抄き抄紙機を用いて抄紙した後、表面温度130℃のシリンダードライヤーで乾燥して、実施例9の濾材を作製した。
実施例4で調製したフィブリル化アクリル繊維を70質量%、有機繊維(繊維径7μm、繊維長5mmのポリエステル繊維、帝人社製)を30質量%の比率で水に分散混合し、乾燥重量20g/m2になるように分散液を採取した。そして、標準角形手抄き抄紙機を用いて抄紙した後、表面温度130℃のシリンダードライヤーで乾燥して、実施例10の濾材を作製した。
(比較例1)
フィブリル化していない割繊性アクリル繊維(繊度1.2dtex、繊維長6mm、アクリル/セルロースアセテートの複合繊維、三菱レイヨン社製)を15質量%、有機繊維(繊維径7μm、繊維長5mmのポリエステル繊維、帝人社製)を40質量%、熱融着性バインダー繊維(繊維径14μm、繊維長5mm、芯鞘タイプのポリエステル繊維、ユニチカ社製)を45質量%の比率で水に分散混合し、乾燥重量20g/m2になるように分散液を採取した。そして、標準角形手抄き抄紙機を用いて抄紙した後、表面温度130℃のシリンダードライヤーで乾燥して比較例1の濾材を作製した。
(比較例2)
フィブリル化していない割繊性アクリル繊維(繊度1.2dtex、繊維長6mm、アクリル/セルロースアセテートの複合繊維、三菱レイヨン社製)を顔料等の分散装置であるボールミル(ペイントコンディショナー)に直径2mmのビーズを水と共に投入し、11時間処理した。その結果、割繊性アクリル繊維は過度に叩解され、更に繊維長方向にも寸断され、フィブリル化ではなく、むしろ粒子状というほど細かく砕かれていた。該割繊性アクリル繊維処理品を15質量%、有機繊維(繊維径7μm、繊維長5mmのポリエステル繊維、帝人社製)を40質量%、熱融着性バインダー繊維(繊維径14μm、繊維長5mm、芯鞘タイプのポリエステル繊維、ユニチカ社製)を45質量%の比率で水に分散混合し、乾燥重量20g/m2になるように分散液を採取した。そして、標準角形手抄き抄紙機を用いて抄紙した後、表面温度130℃のシリンダードライヤーで乾燥して比較例2の濾材を作製した。
上記実施例1〜10及び比較例1〜2で作製した濾材について、圧力損失、捕集効率、引張強度を以下の方法で評価した。結果を表1に示す。
<圧力損失>
JIS B9908に準じて、風速5.3cm/秒で通気させ、濾材の上流側と下流側の静圧差を測定し、下記数式1より、圧力損失を算出した。
(数1)
ΔP=SP1−SP2 (1)
ΔP:圧力損失(Pa)
SP1:上流側静圧(Pa)
SP2:下流側静圧(Pa)
<捕集効率>
JIS B9908に準じて、DOPエアロゾル(フタル酸ジオクチル、粒径0.3〜0.5μm)粒子を発生させ、この粒子を含有する空気を風速5.3cm/秒で通気させ、濾材の上流側と下流側の空気の粒子濃度(単位時間、単位流量当たりの粒子数)をパーティクルカウンター(KC−11、リオン社製)で測定し、下記数式2より、捕集効率を算出した。
(数2)
η=(1−C2/C1)×100 (2)
η:捕集効率(%)
C1:濾材上流側の粒子濃度
C2:濾材下流側の粒子濃度
<引張強度>
JIS P8113に準じて、濾材の抄紙流れ方向(MD)及び抄紙巾方向(CD)について、それぞれ幅15mm、長さ250mmの試験片を10枚づつ採取した。そして、テンシロン測定機(HTM−100、オリエンテック社製)を用いて、破断までの最大荷重を測定し、その平均値を求め、下記数式3より、引張強度を算出した。
(数3)
S=F/w (3)
S:引張強度(N/m)
F:破断までの最大荷重(N)
w:試験片の幅(m)
Figure 2007083184
表1の結果より、割繊性アクリル繊維を最適にフィブリル化した繊維を使用した実施例1〜10の濾材は、圧力損失、捕集効率のバランスが良く、エアフィルターや液体フィルター用の濾材に適していることが分かる。また、フィブリル化繊維同士及び他の繊維との絡み合いにより、引張強度も高いことを確認した。更に、ガラス転移点が90℃のメタクリル樹脂を含有した割繊性アクリル繊維を使用すると、濾材を抄紙乾燥する工程において、表面温度130℃のシリンダードライヤーの接触により、メタクリル樹脂が溶融し、更に、引張強度が高くなる。
実用上、使用可能なレベルではあるが、実施例5の濾材は捕集効率が低く、実施例9の濾材は圧力損失が高いため、フィブリル化アクリル繊維の含有量は3〜70質量%、繊維径1μm以上の有機繊維の含有量は30〜97質量%が好ましい。また、実施例8の濾材は、実施例10の濾材より、引張強度が高く、熱融着性バインダー繊維を含有することにより、強度の向上が図れた。
比較例1の濾材はフィブリル化していない割繊性アクリル繊維を使用しているため、捕集効率が極めて低い。比較例2の濾材は、割繊性アクリル繊維を叩解処理したものの、過度に叩解されているため、粒子状となってしまったアクリル繊維が、抄造時に抄紙網から抜け落ち、有効に繊維間のネットワークを形成できないことから捕集効率が低かった。
実施例3で調製したフィブリル化アクリル繊維15質量%、有機繊維(繊維径7μm、繊維長5mmのポリエステル繊維、帝人社製)を40質量%、熱融着性バインダー繊維(繊維径14μm、繊維長5mm、芯鞘タイプのポリエステル繊維、ユニチカ社製)を45質量%の比率で水に分散混合し、濾材層用スラリーを調製した。別途、有機繊維(繊維径7μm、繊維長5mmのポリエステル繊維、帝人社製)を50質量%、熱融着性バインダー繊維(繊維径14μm、繊維長10mm、芯鞘タイプのポリエステル繊維、ユニチカ社製)を50質量%の比率で水に分散混合し、支持体層用スラリーを調製した。該濾材層用スラリーを乾燥重量20g/m2になるように、また、該支持体層用スラリーを乾燥重量10g/m2になるように採取し、標準角形手抄き抄紙機を用いて抄き合わせにより積層した後、表面温度130℃のシリンダードライヤーで乾燥させ、濾材層と支持体層とからなる実施例11の液体濾過用フィルター濾材を作製した。
実施例3で調製したフィブリル化アクリル繊維15質量%、有機繊維(繊維径7μm、繊維長5mmのポリエステル繊維、帝人社製)を40質量%、熱融着性バインダー繊維(繊維径14μm、繊維長5mm、芯鞘タイプのポリエステル繊維、ユニチカ社製)を45質量%の比率で水に分散混合し、濾材層用スラリーを調製した。別途、有機繊維(繊維径7μm、繊維長5mmのポリエステル繊維、帝人社製)を50質量%、熱融着性バインダー繊維(繊維径14μm、繊維長10mm、芯鞘タイプのポリエステル繊維、ユニチカ社製)を50質量%の比率で水に分散混合し、支持体層用スラリーを調製した。該濾材層用スラリーを乾燥重量20g/m2になるように、また、該支持体層用スラリーを乾燥重量20g/m2になるように採取し、標準角形手抄き抄紙機を用いて抄き合わせにより積層した後、表面温度130℃のシリンダードライヤーで乾燥させ、濾材層と支持体層とからなる実施例12の液体濾過用フィルター濾材を作製した。
実施例3で調製したフィブリル化アクリル繊維15質量%、有機繊維(繊維径7μm、繊維長5mmのポリエステル繊維、帝人社製)を40質量%、熱融着性バインダー繊維(繊維径14μm、繊維長5mm、芯鞘タイプのポリエステル繊維、ユニチカ社製)を45質量%の比率で水に分散混合し、濾材層用スラリーを調製した。別途、有機繊維(繊維径7μm、繊維長5mmのポリエステル繊維、帝人社製)を50質量%、熱融着性バインダー繊維(繊維径14μm、繊維長10mm、芯鞘タイプのポリエステル繊維、ユニチカ社製)を50質量%の比率で水に分散混合し、支持体層用スラリーを調製した。該濾材層用スラリーを乾燥重量20g/m2になるように、また、該支持体層用スラリーを乾燥重量50g/m2になるように採取し、標準角形手抄き抄紙機を用いて抄き合わせにより積層した後、表面温度130℃のシリンダードライヤーで乾燥させ、濾材層と支持体層とからなる実施例13の液体濾過用フィルター濾材を作製した。
実施例3で調製したフィブリル化アクリル繊維15質量%、有機繊維(繊維径7μm、繊維長5mmのポリエステル繊維、帝人社製)を40質量%、熱融着性バインダー繊維(繊維径14μm、繊維長5mm、芯鞘タイプのポリエステル繊維、ユニチカ社製)を45質量%の比率で水に分散混合し、濾材層用スラリーを調製した。別途、有機繊維(繊維径7μm、繊維長5mmのポリエステル繊維、帝人社製)を50質量%、熱融着性バインダー繊維(繊維径14μm、繊維長10mm、芯鞘タイプのポリエステル繊維、ユニチカ社製)を50質量%の比率で水に分散混合し、支持体層用スラリーを調製した。該濾材層用スラリーを乾燥重量20g/m2になるように、また、該支持体層用スラリーを乾燥重量150g/m2になるように採取し、標準角形手抄き抄紙機を用いて抄き合わせにより積層した後、表面温度130℃のシリンダードライヤーで乾燥させ、濾材層と支持体層とからなる実施例14の液体濾過用フィルター濾材を作製した。
実施例3で調製したフィブリル化アクリル繊維15質量%、有機繊維(繊維径7μm、繊維長5mmのポリエステル繊維、帝人社製)を40質量%、熱融着性バインダー繊維(繊維径14μm、繊維長5mm、芯鞘タイプのポリエステル繊維、ユニチカ社製)を45質量%の比率で水に分散混合し、濾材層用スラリーを調製した。別途、有機繊維(繊維径7μm、繊維長5mmのポリエステル繊維、帝人社製)を50質量%、熱融着性バインダー繊維(繊維径14μm、繊維長10mm、芯鞘タイプのポリエステル繊維、ユニチカ社製)を50質量%の比率で水に分散混合し、支持体層用スラリーを調製した。該濾材層用スラリーを乾燥重量20g/m2になるように、また、該支持体層用スラリーを乾燥重量160g/m2になるように採取し、標準角形手抄き抄紙機を用いて抄き合わせにより積層した後、表面温度130℃のシリンダードライヤーで乾燥させ、濾材層と支持体層とからなる実施例15の液体濾過用フィルター濾材を作製した。
実施例4で調製したフィブリル化アクリル繊維15質量%、有機繊維(繊維径7μm、繊維長5mmのポリエステル繊維、帝人社製)を40質量%、熱融着性バインダー繊維(繊維径14μm、繊維長5mm、芯鞘タイプのポリエステル繊維、ユニチカ社製)を45質量%の比率で水に分散混合し、濾材層用スラリーを調製した。別途、有機繊維(繊維径7μm、繊維長5mmのポリエステル繊維、帝人社製)を50質量%、熱融着性バインダー繊維(繊維径14μm、繊維長10mm、芯鞘タイプのポリエステル繊維、ユニチカ社製)を50質量%の比率で水に分散混合し、支持体層用スラリーを調製した。該濾材層用スラリーを乾燥重量20g/m2になるように、また、該支持体層用スラリーを乾燥重量50g/m2になるように採取し、標準角形手抄き抄紙機を用いて抄き合わせにより積層した後、表面温度130℃のシリンダードライヤーで乾燥させ、濾材層と支持体層とからなる実施例16の液体濾過用フィルター濾材を作製した。
上記実施例13で得られた液体濾過用フィルター濾材の質量に対して、その含有量が3%になるように、タブサイズプレスにて、該フィルター濾材にウレタン系合成樹脂バインダーを含浸し、130℃のエアードライヤーで乾燥させ、実施例17の液体濾過用フィルター濾材を作製した。
実施例3で調製したフィブリル化アクリル繊維を15質量%、有機繊維(繊維径7μm、繊維長5mmのポリエステル繊維、帝人社製)を40質量%、熱融着性バインダー繊維(繊維径14μm、繊維長5mm、芯鞘タイプのポリエステル繊維、ユニチカ社製)を45質量%の比率で水に分散混合し、乾燥重量20g/m2になるように分散液を採取した。そして、標準角形手抄き抄紙機を用いて抄紙した後、別途、支持体層として用意した坪量50g/m2のポリエステルスパンボンド不織布(商品名:バルコンポHP6050G、東洋紡績社製)と貼り合わせにより積層し、表面温度130℃のシリンダードライヤーで乾燥させ、濾材層と支持体層とからなる液体濾過用フィルター濾材を作製した。
該液体濾過用フィルター濾材の質量に対して、その含有量が3%になるように、タブサイズプレスにて、該液体濾過用フィルター濾材にウレタン系合成樹脂バインダーを含浸し、130℃のエアードライヤーで乾燥させ、実施例18の液体濾過用フィルター濾材を作製した。
(比較例3)
フィブリル化していない割繊性アクリル繊維(繊度1.2dtex、繊維長6mm、アクリル/セルロースアセテートの複合繊維、三菱レイヨン社製)を15質量%、有機繊維(繊維径7μm、繊維長5mmのポリエステル繊維、帝人社製)を40質量%、熱融着性バインダー繊維(繊維径14μm、繊維長5mm、芯鞘タイプのポリエステル繊維、ユニチカ社製)を45質量%の比率で水に分散混合し、濾材層用スラリーを調製した。別途、有機繊維(繊維径7μm、繊維長5mmのポリエステル繊維、帝人社製)を50質量%、熱融着性バインダー繊維(繊維径14μm、繊維長10mm、芯鞘タイプのポリエステル繊維、ユニチカ社製)を50質量%の比率で水に分散混合し、支持体層用スラリーを調製した。該濾材層用スラリーを乾燥重量20g/m2になるように、また、該支持体層用スラリーを乾燥重量50g/m2になるように採取し、標準角形手抄き抄紙機を用いて抄き合わせにより積層した後、表面温度130℃のシリンダードライヤーで乾燥させ、濾材層と支持体層とからなる比較例3の液体濾過用フィルター濾材を作製した。
(比較例4)
フィブリル化していない割繊性アクリル繊維(繊度1.2dtex、繊維長6mm、アクリル/セルロースアセテートの複合繊維、三菱レイヨン社製)を顔料等の分散装置であるボールミル(ペイントコンディショナー)に直径2mmのビーズを水と共に投入し、11時間処理した。その結果、割繊性アクリル繊維は過度に叩解され、更に繊維長方向にも寸断され、フィブリル化ではなく、むしろ粒子状というほど細かく砕かれていた。該割繊性アクリル繊維処理品を15質量%、有機繊維(繊維径7μm、繊維長5mmのポリエステル繊維、帝人社製)を40質量%、熱融着性バインダー繊維(繊維径14μm、繊維長5mm、芯鞘タイプのポリエステル繊維、ユニチカ社製)を45質量%の比率で水に分散混合し、濾材層用スラリーを調製した。別途、有機繊維(繊維径7μm、繊維長5mmのポリエステル繊維、帝人社製)を50質量%、熱融着性バインダー繊維(繊維径14μm、繊維長10mm、芯鞘タイプのポリエステル繊維、ユニチカ社製)を50質量%の比率で水に分散混合し、支持体層用スラリーを調製した。該濾材層用スラリーを乾燥重量20g/m2になるように、また、該支持体層用スラリーを乾燥重量50g/m2になるように採取し、標準角形手抄き抄紙機を用いて抄き合わせにより積層した後、表面温度130℃のシリンダードライヤーで乾燥させ、濾材層と支持体層とからなる比較例4の液体濾過用フィルター濾材を作製した。
(比較例5)
フィブリル化したセルロース繊維(商品名:セリッシュ、ダイセル化学工業社製)を15質量%、有機繊維(繊維径7μm、繊維長5mmのポリエステル繊維、帝人社製)を40質量%、熱融着性バインダー繊維(繊維径14μm、繊維長5mm、芯鞘タイプのポリエステル繊維、ユニチカ社製)を45質量%の比率で水に分散混合し、濾材層用スラリーを調製した。別途、有機繊維(繊維径7μm、繊維長5mmのポリエステル繊維、帝人社製)を50質量%、熱融着性バインダー繊維(繊維径14μm、繊維長10mm、芯鞘タイプのポリエステル繊維、ユニチカ社製)を50質量%の比率で水に分散混合し、支持体層用スラリーを調製した。該濾材層用スラリーを乾燥重量20g/m2になるように、また、該支持体層用スラリーを乾燥重量50g/m2になるように採取し、標準角形手抄き抄紙機を用いて抄き合わせにより積層した後、表面温度130℃のシリンダードライヤーで乾燥させ、濾材層と支持体層とからなる比較例5の液体濾過用フィルター濾材を作製した。
上記実施例11〜18及び比較例3〜5で作製した液体濾過用フィルター濾材について、以下の評価を行った。結果を表2に示す。
<(常態)引張強度>
上記実施例1〜10及び比較例1〜2で作製した濾材について行った引張強度の評価と同様の方法で実施した。
<湿潤引張強度>
JIS P8135及びJIS P8113に準じて、フィルター濾材の抄紙流れ方向(MD)及び抄紙巾方向(CD)について、それぞれ幅15mm、長さ250mmの試験片を10枚づつ採取した。そして、20℃の純水に1時間浸漬した後、テンシロン測定機(HTM−100、オリエンテック社製)を用いて、破断までの最大荷重を測定し、その平均値を求め、下記数式4より、湿潤引張強度を算出した。
(数4)
Sw=X/w (4)
Sw:湿潤引張強度(N/m)
X:湿潤試験片の破断までの最大荷重(N)
w:試験片の幅(m)
<プリーツ加工性>
各フィルター濾材ををひだ状に加工し、その加工性や仕上がりから、通常に使用できるレベルのものを△とし、それより良いものを○、非常に良いものを◎とし、加工できなかったり、破れたりしたものを×とした。
<濾過性能試験>
JIS第8種粉体を0.05%濃度になるように水に希釈したものを試験液として用い、以下の項目について測定した。
<初期濾過効率>
フィルター濾材を水で湿潤した後、試験液100mlを濾過面積14cm2、差圧△P=320mmHgで濾過し、濾過前後の試験液の粒子径3〜10μmの粒子数を液中微粒子計数器(KL−01、リオン社製)で測定し、下記数式5より、濾過効率を算出し、初期濾過効率とした。
(数5)
FE=(1−L2/L1)×100 (5)
FE:濾過効率(%)
L1:濾過前の試験液の粒子数
L2:濾過後の試験液の粒子数
<初期濾過速度>
上記濾過効率測定時の濾過時間から濾過速度を求め、初期濾過速度とした。
<ライフ(寿命)試験>
試験液を10回繰り返し濾過した後、上記と同様の方法で濾過効率、濾過速度を測定した。
Figure 2007083184
表2の結果より、実施例11〜18の液体濾過用フィルター濾材は、最適にフィブリル化した割繊性アクリル繊維を濾材層に含有することにより、初期の濾過効率が良く、10回濾過後の濾過速度も比較的早い(濾過抵抗が小さい)ため、ライフが長くなり、液体濾過に適した濾材となっている。また、セルロース繊維と比較すると、吸水性の低いアクリル/セルロースアセテートまたはアクリル/メタクリル樹脂の割繊性複合繊維を使用しているため、セルロース繊維を使用した比較例5のフィルター濾材より湿潤強度が高くなっている(湿潤強度の低下は小さい)。
濾材層に支持体層を積層することにより、引張強度は向上し、プリーツ加工性は良好となる。しかしながら、支持体層の坪量が低すぎると、フィルター濾材の堅さが足りなくなり、逆に、支持体層の坪量が高すぎると、厚みが厚くなるため、フィルターユニットに加工すると、ユニット当たりの濾材面積が減少し、結果的にライフが短くなる。このため、支持体層の坪量は20〜150g/m2が好ましい。
セルロースアセテートを含有した割繊性アクリル繊維を使用した実施例11〜15のフィルター濾材は、そのセルロースアセテート成分により、若干湿潤強度は低下するものの、実用上問題のないレベルである。実施例16の濾材は、セルロースアセテート成分の代わりに、ガラス転移点が90℃のメタクリル樹脂を含有した割繊性アクリル繊維を使用することにより、フィルター濾材を抄紙乾燥する工程において、表面温度130℃のシリンダードライヤーの接触で、メタクリル樹脂が溶融し、湿潤強度が高くなる。また、ウレタン系合成樹脂バインダーを含有させることでも(実施例17〜18)、湿潤強度は高くなり、加えて、濾材全体が堅くなるために、プリーツ加工性も向上する。
比較例3〜4のフィルター濾材は、実施例11〜18のフィルター濾材に比べると、初期の濾過速度はかなり早いものの、10回濾過後の濾過速度は実施例11〜18のフィルター濾材よりも遅く、且つ濾過効率も低い。実施例11〜18のフィルター濾材は、フィブリル化したアクリル繊維を含有しているために、濾材表面に液体中の粒子が堆積し、粒子の層(ケーキ層)を形成した表面濾過を行っている。対して、比較例3〜4のフィルター濾材は、フィブリル化したアクリル繊維を含有していない(比較例3)、或いは、割繊性アクリル繊維が粒子状になり、抄紙時に抜け落ちた(比較例4)ことにより、濾材層が微細なネットワークを形成していないため、液体中の粒子が濾材内部に入り込み、内部濾過を行っている。そのため、比較例3〜4のフィルター濾材は、濾過効率が低く、ライフも短い。また、比較例5のフィルター濾材は、濾過性能は良好であるが、濾材層にセルロース繊維を含有しているため、濾材層に割繊性アクリル繊維を含有している実施例13のフィルター濾材と比較すると、湿潤強度が低い。更に、濾材層表面が膨潤し、液体中の粒子が濾材層に入り込むため、実施例11〜18のフィルター濾材に比較すると、ケーキ層の剥離性が悪かった。ケーキ層の剥離性とライフには相関があり、ケーキ層の剥離性の悪化は、ライフが短くなることを表している。実施例11〜18のフィルター濾材は、吸水性の低いアクリル/セルロースアセテートまたはアクリル/メタクリル樹脂で構成される割繊性アクリル繊維を使用しているため、濾材層が膨潤することなく、ケーキ層の剥離性は良好であり、ロングライフとなる。
本発明の濾材は空気中の粉塵を捕集するエアフィルター、或いは、液体中に含有される粒子を効率良く除去し、清浄な液体を得るための液体濾過用フィルターなどに用いられ、該濾材を用いてなる液体濾過用フィルター濾材は、放電加工機用フィルターやオイルフィルターなどの液体濾過用フィルターとして活用できる。

Claims (7)

  1. 剪断力を加えて幹部から離脱した繊維径1μm以下にフィブリル化したアクリル繊維(A)、剪断力を加えて繊維径2μm以上の幹部から繊維径1μm以下の枝部が発生したフィブリル化アクリル繊維(B)の両方、もしくはいずれか一方と、繊維径1μm以上の有機繊維(C)を1種類以上含有することを特徴とする濾材。
  2. アクリル繊維(A)及び(B)が、アクリロニトリル系ポリマーと、少なくとも1種類以上の添加剤ポリマーとから構成され、両者が相分離状態にある割繊性アクリル繊維であることを特徴とする請求項1記載の濾材。
  3. (A)と(B)の濾材に対する総含有量が3〜70質量%、(C)の濾材に対する含有量が30〜97質量%であることを特徴とする請求項1または2のいずれか記載の濾材。
  4. 有機繊維(C)の一部または全てが熱融着性バインダー繊維であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の濾材。
  5. 繊維径5μm以上の有機繊維を少なくとも1種類含み、且つ20〜150g/m2の坪量からなる支持体層を請求項1〜4のいずれか記載の濾材と積層し、一体化されてなることを特徴とする液体濾過用フィルター濾材。
  6. 支持体層の有機繊維の一部または全てが熱融着性バインダー繊維であることを特徴とする請求項5記載の液体濾過用フィルター濾材。
  7. 濾材面を上流側にセットして使用することを特徴とする請求項5または6記載の液体濾過用フィルター濾材。
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