JP4120737B2 - 液体濾過用の濾過材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
一般に、液体または気体とその中に含まれる固体とを多孔質の物体である濾過材を通過させることによって分離する操作を濾過と呼ぶが、本発明は、液体とその中に含まれる固体とを分離するために使用される液体濾過用の濾過材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
濾過材の性能を評価するに際して不可欠な項目に濾過効率と濾過抵抗がある。濾過材としては、濾過効率はできるだけ高く、濾過抵抗はできるだけ低いことが望ましいが、この2つの性能は相反する性能である。即ち、濾過材を緻密な構造とすれば濾過効率を高めることができるが、そうすると必然的に濾過抵抗は大きくなる。反対に濾過抵抗を小さくするには濾過材を粗い構造とすればよいが、そうすると必然的に濾過効率は低くなってしまう。
【0003】
濾過材の構造には大きく分けて2つある。一つは「内部濾過タイプ」であり、これは濾過材の内部で固体粒子を捕捉する構造の濾過材である。もう一つは「表面濾過タイプ」であり、これは濾過材の表面で固体粒子を捕捉する構造の濾過材である。また、これら濾過材に「ひだ折り加工」を施して表面積を増大させてから所定の形状に成形し、他の部品と組み合わせて濾過機を製造する場合もある。
【0004】
従来、放電加工機やIC生産工程で使用されている液体濾過用の濾過材としては、天然パルプと有機繊維の混抄シートにフェノール樹脂等を含浸処理したシートやポリエステル不織布等が使用されていた。しかしこれらは固体の濾過効率が低く、寿命が短い等の問題点があった。また、高性能の濾過材としてフッ素樹脂等の多孔質シートがあるが、高価なため特殊用途に限定され、多量の液体を処理する濾過材としては不適当であった。
【0005】
また、上述した従来の液体濾過用の濾過材は内部濾過タイプであるために、濾過材の使用開始時においては濾過材内部に粒子が入り濾過材の空隙をある程度埋めるまでは目標の濾過効率が得られない問題点があった。また、濾過材の空隙が埋まると濾過抵抗が増大するため液の透過性が悪くなり濾過材の寿命が短くなったり、濾過材内部の粒子が濾過材から流出し機能を発揮できなくなる等の問題があった。
【0006】
これらの問題を解決する濾過材の一つとして、特開昭59−92011号ではフィブリル化されたポリアラミドフィブリル状材料を湿式抄紙法でシート化した濾過材が提案された。しかしながら、本発明者らが検討した結果では、湿式抄紙法では抄紙網からのフィブリル状のアラミド繊維の流出が多く、また抄紙網の目詰まりが起こる等の問題があることが判った。また、この濾過材は、繊維が微細であるため必然的に濾過材が非常に緻密となり、高い濾過効率は得られるものの、濾過抵抗が高いという欠点があることが判った。この欠点を解決するために濾過抵抗を下げようとして比較的太いモノフィラメントの繊維を含有させた場合には、抄紙工程での微細繊維の流出が多くなり濾過効率が低下し充分な性能は得られないという問題があることも判った。
【0007】
また、特開平3−12208号では、1μm以下にフィブリル化された有機繊維5〜40重量%と繊維径1〜5μmの極細有機繊維5〜60重量%及び繊維径5μm以上の有機繊維20〜70重量%からなり、且つ該繊維径5μm以上の有機繊維の一部又は全部が繊維状有機バインダーであり、濾過密度が0.25〜0.8g/m3 の「表面濾過タイプ」の液体濾過用の濾過材が提案された。しかしながら、この濾過材の厚みは非常に薄く、硬さがないため、ひだ折り加工が出来ない問題点があった。また湿潤強度が弱いため、放電加工機用濾過材、自動車エンジンオイル用濾過材などに使用した場合、液体の圧力により濾過材が破れてしまう問題点があった。また、湿式抄紙法でシートを形成する際にフィブリル化された有機繊維が抄紙網から流出すること、抄紙網の目詰まりを起こすこと等の問題点は依然として解決できるまでに至っていない。
【0008】
さらに、上記特開平3−12208号による濾過材のひだ折り加工適性と湿潤紙力を向上させるため、薄くて表面濾過性能に優れた上記濾過材と、液体の透過性が良く高強度でひだ折り加工性のよい支持体層を抄合わせ一体化することが提案された(特開平6−126112号、特開平4−313313号)。しかし、これらは加工適性の向上、濾過材としての強度向上などの効果はあるが、フィブリル化された有機繊維の抄紙網からの流出、抄紙網の目詰まりの問題点は依然改善されていないことが判った。
【0009】
さらに、フィブリル化した有機繊維を用いる上記特開平3−12208号による濾過材は、フィブリル化した有機繊維同士の自己接着性が弱いために、強度保持、繊維の脱落防止を目的としてアクリル系エマルジョンや合成ゴムラテックス等のバインダーを併用していた。これらのバインダーを含浸、サイズプレス、内添等により配合すると、濾過材の使用時に濾過材からバインダー成分が処理水中に溶出してしまい、放電加工などの加工適性を悪化させる原因となる。また、バインダーを用いるとフィブリル化した有機繊維を被覆してしまうので濾過効率は低下し、逆に濾過抵抗は大きくなってしまう。よって濾過材の性能は著しく低下する。さらに、上記の濾過材は表面濾過タイプのものであるからケーキ濾過となり、このため濾過抵抗はどうしても高くなる。そこでこの問題点を解消するために、1μm以下にフィブリル化された有機繊維の配合率は40重量%以下に限定されてしまい、従ってこれ以上の濾過効率は望めなかった。
【0010】
さらに、フィブリル化する有機繊維として主に使用されている芳香族ポリアミドはフィブリル化に際して大きなエネルギーや大きな衝撃が必要なために、通常製紙工程では使用することのないホモジナイザーを用いなければならないという大きな問題点を有していた。ホモジナイザーは製紙工程で使用されるビーターやリファイナーに比べ効率が悪く、繊維自体高価であることも加わって、得られるフィブリル化繊維が非常に高価なものとなる。
【0011】
2層構造を有する濾過材は他にも、密度勾配をつけた2層構成の濾過材が特開昭61−268321号、特開昭61−268325号、特開昭61−275495号に例示されているが、これらは2層の濾過材を種々に組み合わせることにより濾過効率と濾過抵抗のバランスをとったものである。このため、後に詳述するような、繊維自体の特性により優れた濾過性能を得ようとする本発明の技術思想とは基本的に異なるものである。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上述したような従来の問題点を解決することを課題とする。具体的には、濾過抵抗と濾過効率のバランスに優れ、エマルジョンやラテックス等のバインダーを配合しなくても繊維の脱落がなく、湿潤強度も強く、ひだ折り加工性が良く、製造が容易で安価な濾過材を提供することを課題とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前述の公知文献に記載されているようなフィブリル化有機繊維を使用した従来の濾過材が有している問題点を解決するために、濾過材に用いられる繊維の種類とその叩解処理、濾過材の構造の検討を重ねたところ、良好な濾過適性が得られることを見出し、本発明を完成するにいたった。
【0014】
即ち本発明の液体濾過用の濾過材は、繊維状物質を主材として構成された複数の層を一体積層化してなる液体濾過用の濾過材において、フリーネス400mlC.S.F.以下に叩解されフィブリル化されたリヨセル繊維を40〜90重量%含む坪量(乾燥坪量、以下同じ)5〜50g/m2 の濾過層、及び前記リヨセル繊維を5〜30重量%、熱融着性バインダー繊維を10重量%以上含む坪量15〜150g/m2 の準濾過層とが一体積層化されていることを特徴とするものである。
【0015】
【発明実施の形態】
本発明において「リヨセル繊維」という用語は、1989年3月15日に、「人造繊維の標準化のための国際事務局(BISFA)」が採択した定義を意味する。BISFAは、「有機溶剤紡糸法により得られたセルロース繊維」の定義並びに前記「有機溶剤」がセルロースを溶解する有機化学物質と水との混合物を本質的に意味し、かつ前記「溶剤紡糸」がセルロースを前記溶剤に溶解して溶液となし、この溶液を紡糸してセルロース誘導体を形成することなく繊維を生成することという解釈をつけ属名「リヨセル」を採択した。従ってリヨセルは、例えばセルロース誘導体の形成後、これを分解してセルロースを再生するビスコース法等による再生セルロース繊維とは明確に区別される。本発明においては、「リヨセル繊維」は上記定義と同じ意味で用い、「溶剤紡糸されたセルロース繊維」と同意味で用いる。
【0016】
リヨセル繊維は、例えば米国特許第4246221号明細書に記載されている方法により製造することができる。この方法においては、セルロースをまず有機溶媒と水との混合物、例えばN−メチルモルホリンのような第4級アミン−オキシドの水溶液に溶解する。次いで、このセルロース溶液を適当なダイを通して水性浴中に押出し、生成するフィラメントを水洗して有機溶媒を除去した後、乾燥することによってリヨセル繊維を得ることができる。
【0017】
本発明では、水に懸濁したリヨセル繊維をリファイナーもしくはビーター等の装置を使用してフリーネス400mlC.S.F以下に叩解してフィブリル化することが必要である。リヨセル繊維のフリーネスは、400mlC.S.Fを超すと十分な濾過効率が得られなくなる。濾過効率を考えた場合フリーネスが小さい(叩解が進んだ)ほうが好ましいが(極端な場合はフリーネス0mlC.S.F)、叩解を進めるためにはエネルギーと時間を必要としコストアップになるので、実生産にあたっては性能とコストのバランスを考えることが好ましい。
【0018】
リヨセル繊維は、従来の濾過材に用いられているような芳香族ポリアラミド繊維等に比べ繊維自体が安価であるし、ホモジナイザーを用いずとも、湿式抄紙設備に使用しているビーターやリファイナー等の既存の叩解設備でフィブリル化が可能なため、フィブリル化処理にかかるコストも低くできる利点がある。
【0019】
また本発明者らが検討した結果では、リヨセル繊維は結晶化度が高いためフィブリル化した繊維が短繊維化しにくい特徴があることが判った。さらに、フィブリル化したリヨセル繊維のほとんどはもとの繊維から離脱することなく、くっついている。このため、フィブリル化されたリヨセル繊維は抄紙時に抄紙網上から流出することはなく、また目詰まりを発生させることもないという利点も有している。
【0020】
またフィブリル化されたリヨセル繊維の断面は円形に近く、扁平状の断面を有する他のセルロース繊維と全く異なった形状を有している。このことは、高い濾過性能を実現させながら、濾過材の重要な性能の一つである濾過抵抗を低減することに大きく寄与することとなる。
【0021】
また、リヨセル繊維はセルロース繊維の一種類であるため、湿式抄紙法でのシート化時には水素結合により繊維同士が結合する性質を有している。このため製造工程において、ドライヤーで加熱するまでの湿紙強度が強く、紙切れ等のトラブルを起こし難く生産性に優れている。水素結合を生じない有機繊維、例えば従来使用されている芳香族ポリアミド繊維では、湿紙強度がないため、繊維の配合、製造法に工夫が必要であった。
【0022】
リヨセル繊維を用いることにより濾過材の低濾過抵抗、高濾過効率を可能にできるもう一つの理由として、液体中の固体粒子を内部濾過と表面濾過の両方の作用を備えた濾過タイプ(以下「半表面濾過」タイプという)で捕捉するできることが挙げられる。つまり、本発明では濾過材がある程度の空隙をもち、処理液のスムーズな通過を可能にしつつ、フィブリル化したリヨセル繊維により目的とする粒子を捕捉できるような構成を容易に達成できる。前述した通り、リヨセル繊維はフィブリル化してもそのほとんどがフィブリル化した元の繊維に付着している。このためフィブリル化した繊維がすべて離脱して短繊維化し繊維間の空隙を埋めてしまう状態に比べてシート化した場合に空隙が多くできる。この空隙を処理液が通過する際、フィブリル化したリヨセル繊維に粒子が捕捉され、内部濾過がなされる。濾過層で捕捉しきれなかった粒子についても準濾過層のフィブリル化したリヨセル繊維により内部濾過による捕捉が可能となる。このため低い濾過抵抗で高い濾過効率が得られることとなる。
【0023】
濾過が進むにつれて粒子は表面に堆積し、最終的には表面濾過となる。かくして本発明の濾過材は上記した半表面濾過特性により、従来の内面濾過タイプあるいは表面濾過タイプの濾過材に比べて低い濾過抵抗での濾過が可能となる。また、準濾過層においても内部濾過がなされるため、高い濾過効率が達成できるわけである。
【0024】
所定のフリーネスに叩解されフィブリル化されたリヨセル繊維の濾過層への配合率は、40〜90重量%とすることが必要である。40重量%未満ではフリーネスが400mlC.S.F以下でも十分な濾過効率が得られず、90重量%を超すと濾過抵抗が大きくなり、また濾過層の強度保持が難しくなるため実用に適さなくなるからである。
【0025】
濾過層に使用されるフィブリル化したリヨセル繊維以外の繊維状物質としては、無機あるいは有機の繊維が使用できる。無機繊維としては、ガラス繊維、金属繊維、ロックウール繊維等の繊維が、有機繊維としては、ポリアミド系繊維、ポリエステル系繊維、ポリアクリロニトリル系繊維、ポリエチレン系繊維、ポリプロピレン系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、フェノール系繊維、ポリプロピレン系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、レーヨン等の再生セルロース繊維、等の繊維が挙げられる。また木材パルプ等の天然セルロース繊維や叩解処理していないリヨセル繊維も有機繊維として使用できる。これらの繊維は単独あるいは複数混合して使用することができる。無機繊維と有機繊維を比較した場合、焼却処理が容易であるという観点からは、有機繊維を使用する方が好ましい。
さらに、濾過層の機能を阻害しない範囲で、着色剤、各種粉体、消泡剤、離型剤等の副資材を併用してもよい。
【0026】
フィブリル化したリヨセル繊維以外の繊維状物質としての有機繊維および無機繊維は、繊維長1〜10mmで、繊維太さ0.1〜5デニール(d)のものが好ましく使用できる。繊維長が1mm未満では強度が弱くなり、10mmを超すとシート化する場合に地合よくシート化することが困難になるからである。また繊維太さがが0.1d未満では濾過抵抗を高め、5dを越すと濾過効率に悪影響を与える傾向が大きくなる。
【0027】
所定のフリーネスに叩解されフィブリル化されたリヨセル繊維の準濾過層への配合率は、5〜30重量%とすることが必要である。5重量%未満では準濾過層としての所望の濾過効率が得られず、30重量%を超えると濾過抵抗が大きくなり準濾過層として実用に適さなくなるとともに、捕捉された粒子により準濾過層の空隙が埋められるため濾過材の寿命が短くなるからである。また準濾過層には熱融着性バインダー繊維を10重量%以上含ませることも必要である。準濾過層は濾過層よりフィブリル化したリヨセル繊維の配合率が低いため、熱融着性バインダー繊維を配合しないと湿潤強度が不足するからである。
【0028】
準濾過層におけるフィブリル化したリヨセル繊維およびバインダー繊維以外の繊維状物質としては、濾過層に使用される前述したごとき繊維状物質が同様に使用できる。
【0029】
準濾過層に配合される熱融着性バインダー繊維は、抄紙時の乾燥工程で溶融するため繊維間の接着がなされ、その結果湿潤強度が高まり、ひだ折り加工性も向上する。またバインダー繊維は、溶融しても繊維状の形態を保持していることが必要である。繊維形態を保持できない程度まで溶融すると他の繊維に対して皮膜を形成する結果、濾過抵抗が高まることになる。かような観点から、準濾過層に使用する熱融着性バインダー繊維としては、皮膜形成し難い複合接着性繊維、即ち、繊維内部が高融点で、外皮が低融点ポリマーで構成される「芯鞘構造」の繊維が好ましい。かような構造の複合接着性繊維にはポリエステル系、ポリオレフィン系、塩ビ酢酸ビニル系等があるがいずれも使用できる。
【0030】
なお、低融点の繊維のみで構成される全融タイプのバインダー繊維や、ポリビニルアルコール系のような熱水で溶融するバインダー繊維も、濾過材の乾燥工程で皮膜を形成しやすく、濾過抵抗が大きくなるという不利な点はあるが、本発明の目的を阻害しない範囲で使用することができる。
【0031】
準濾過層での熱融着性バインダー繊維は10重量%以上配合することが必要であり、場合によってはフィブリル化したリヨセル繊維以外の繊維状物質の全部を熱融着性バインダー繊維とすることもできる。しかしながら、バインダー繊維を多量に配合しすぎると、濾過抵抗が大きくなる傾向があり、また抄紙時の乾燥工程でバインダー繊維の溶融物がドライヤーを汚すこともあるため、準濾過層でのバインダー繊維の配合は85重量%以下にすることが好ましい。
【0032】
なお、濾過層の湿潤強度を向上させるために、濾過層にも熱融着性バインダー繊維を配合してもよい。この場合の濾過層へのバインダー繊維の配合量は、濾過層の機能を阻害しない範囲で適宜選択することができる。
【0033】
本発明の濾過材を製造するに際しては、所定のフリーネスに叩解してフィブリル化したリヨセル繊維に、これ以外の繊維状物質や副資材を所定量混合して常法に従ってスラリーを調製し、濾過層用スラリーと準濾過層用スラリーを得る。これらのスラリーを用いて濾過層と準濾過層をそれぞれ別個に湿式抄紙した後、これら2層を湿紙の状態で一体的に抄き合わせ、常法により乾燥する。抄紙機としては抄き合わせができる装置であればいかなる装置でも使用できるが、代表的な例として、円網−円網の組み合わせ、円網−短網の組み合わせ、短網−短網の組み合わせが挙げられる。例えば2槽式の円網抄紙機の第1槽目で濾過層を形成し、第2槽目で準濾過層を形成して両者を抄き合わせ、常法に従い乾燥する。
【0034】
濾過層および準濾過層の坪量は、濾過材の用途により適宜設定するが、濾過層の坪量は5〜50g/m2 、準濾過層の坪量は15〜150g/m2 の範囲とすることが必要である。濾過層の坪量が5g/m2 未満、準濾過層の坪量が15g/m2 未満では必要とする強度や濾過性能が得られなくなるからである。また、濾過層の坪量が50g/m2 、準濾過層の坪量が150g/m2 を超すと濾過効率と濾過抵抗のバランスが悪くなるからである。
【0035】
本発明の濾過材は、バインダーを含浸、サイズプレス、スプレー含浸、内添などで添加する必要がなく、その結果、バインダー添加による濾過抵抗の増大やバインダー成分の溶出といった弊害を解消できるものであるが、濾過材としての強度をより一層高めたい場合には、濾過材の性能に問題ない程度の量のバインダーを添加してもよい。この場合のバインダーとしては、アクリル系、酢酸ビニル系、塩化ビニリデン系、合成ゴム系等のエマルジョンやラテックス、さらにはPVA、澱粉、フェノール樹脂、エポキシ樹脂などを単独、又は2種以上を併用できる。
【0036】
本発明の液体濾過用の濾過材が低い濾過抵抗で高い濾過効率が得られる理由は、400mlC.S.F以下に叩解してフィブリル化したリヨセル繊維を濾過層に所定量配合することにより、層内に空隙を持たせることができ、この空隙を通過する処理液の粒子をフィブリル化したリヨセル繊維で効果的に捕捉することができるためである。また準濾過層にもフィブリル化したリヨセル繊維を配合することで、準濾過層の空隙の間を埋めない程度で処理液中の粒子を捕捉できるためである。つまり本発明の濾過材は完全な表面濾過ではなく、処理液をある程度通過させて粒子を捕捉するという半表面濾過により低い濾過抵抗と高い濾過効率を可能としている。さらに準濾過層に熱融着性バインダー繊維を配合し強度を持たすことによりひだ折り適性、湿潤強度を得ることができる。
【0037】
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明する。
[実施例1〜8]
リヨセル繊維(1.7d×4mm、商品名「コートルズリヨセル」、コートルズ社製造)をビーターで叩解したフィブリル化リヨセル繊維と、その他の有機繊維として1.5d×5mmのポリエチレンテレフタレート(PET)繊維(商品名「TA04N」、帝人(株)製造)と、芯鞘構造のバインダー繊維(1.5d×5mm、商品名「TJ04N」、帝人(株)製造)を表1に示す繊維配合になるように混合してスラリーを調製し、湿式抄紙により濾過層と準濾過層を作製した。これらを湿紙の状態で抄き合わせて一体化させた後、プレスを行い、乾燥して濾過材を作製した。各実施例のリヨセル繊維のフリーネス(mlC.S.F)、リヨセル繊維の割合(重量%)、PET繊維の割合(重量%)、バインダー繊維の割合(重量%)、坪量(g/m2 )、濾過材の作製手段(“円−円”は2槽式円網抄紙機を意味する)を表1に示した。また濾過材としての評価結果も表1に示した。
【0038】
[比較例1〜13]
表2に示す繊維配合により、実施例と同様にして濾過材を作製した。各比較例のリヨセル繊維のフリーネス(mlC.S.F)、リヨセル繊維の割合(重量%)、PET繊維の割合(重量%)、バインダー繊維の割合(重量%)、坪量(g/m2 )、濾過材の作製手段、および濾過材としての評価結果も表2に示した。
【0039】
[比較例14]
実施例5で得られた濾過材に、バインダーとしてアニオン性アクリルエマルジョン(商品名「プライマールHA−16」、日本アクリル社製造)をサイズプレスで10g/m2 含浸しのち乾燥して、バインダー含浸濾過材を作製した。この濾過材としての評価結果を表2に示した。
【0040】
上記実施例及び比較例で作製した濾過材の評価における濾過時間(濾過効率)、差圧(濾過抵抗)、湿潤引張強度、ひだ折り適性、及び総合評価は以下の方法で評価した。濾過試験には、実際に抄紙網放電加工時に発生したスラッジを濃度90ppmになるように水に希釈したものを試験用液体とし、各試験条件が同じになるように試験にはすべて同じ試験用液体を使用した。
【0041】
[濾過時間の測定]
濾過材を水で湿潤した後、試験用液体を一定流量(72ml/分)、一定圧力(流入側:2kg/cm2 )、濾過面積40cm2 で通過させ、得られる濾液が透明になるまでの時間(分)を測定した。透明の判断は目視によって行った。
【0042】
[差圧の測定]
上記濾過時間測定の条件により試験した時、試験用液体が濾過材に流入する圧力は一定(2kg/cm2 )に保たれているため、濾過材より濾液が流出する圧力を測定して、濾過開始10分後と40分後の流入側圧と流出側圧の差(差圧)を求めた。
【0043】
[湿潤引張強度の測定]
JIS−8135、JIS−8113に準じて測定を行った。
【0044】
[ひだ折り適性の評価]
濾過材サンプルをひだ折り加工し、加工適性の最も優れたものを5点、最も悪いものを1点とし、5点法で評価した。3点以上が実用的に使用可能なことを示す。
【0045】
[総合評価]
濾過材としては、上記の性能をすべて満足する必要があり、最も優れた性能を示したものを5点、最も劣る性質を示したものを1点とし、5点法で評価した。3点以上が実用的に使用可能なことを示す。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
実施例1〜6に見られる通り、本発明の液体濾過用濾過材は低い濾過抵抗で高い濾過効率が得られる。これは半表面濾過の効果により表面濾過層と準濾過層で効率よく粒子を捕捉しているためである。濾過材内部を粒子で埋めることはないため40分後の差圧も通常より小さくすることができ、濾過材寿命を長くすることが可能である。また、準濾過層は強度保持に優れ、ひだ折り適性、使用中の破れを防止する湿潤引張強度を良好にしている。
【0049】
実施例1から、フィブリル化したリヨセル繊維の配合率を濾過層で40重量%、準濾過層で5重量%、坪量を濾過層が5g/m2 、準濾過層が15g/m2 とした場合でも、濾過抵抗と濾過効率のバランスに優れることがわかる。この条件では、高い濾過効率は得られないものの、同じ濾過効率の濾材に比較し濾過抵抗を低くすることができる。
【0050】
実施例2から、フィブリル化したリヨセル繊維の配合率を高め、フリーネスを下げ(叩解を進める)、坪量を増やすことにより濾過効率を高めることが出来るのがわかる。またこの時、他の濾材と比較し高い捕集効率が得られ、濾過抵抗は低くすることができる。
【0051】
実施例2と3、比較例1を比較すると、リヨセル繊維の叩解を進めた方が、濾過効率を高めることができ、逆に濾過抵抗が高くなることがわかる。また、リヨセル繊維の叩解度を調節することによっても、必要とされる濾過材性能をバランスよく調節できることがわかる。さらにまた、リヨセル繊維の叩解度を400mlを超えて450mlにすると濾過材性能が発揮されないことがわかる。
【0052】
実施例4と5、比較例9を比較すると、準濾過層へ配合するリヨセル繊維の叩解度を変えることにより、濾過抵抗、濾過効率のバランスを変えることができることがわかる。この時リヨセル繊維の叩解度が400mlを超えた450ml(比較例1)では性能が発揮されないことがわかる。
【0053】
実施例6は2槽式円網抄紙機を用いた例であり、実機にての抄造が可能であることが確認された。
【0054】
実施例7と8、比較例6により、準濾過層へのバインダー繊維の配合率は、ひだ折り適性、湿潤紙力を考えると10重量%以上必要であることがわかる。バインダー繊維が10重量%以上あれば、実機にての抄造が可能であることが確認された(実施例7と8)。また、バインダー繊維の添加はひだ折り適性、湿潤紙力を向上させる。なお、バインダー繊維の配合により濾過効率と濾過抵抗が上がる傾向にあるが、その度合いは少なく、バインダー繊維の影響はほとんどないことがわかる。
【0055】
比較例2と13より、フィブリル化したリヨセル繊維の濾過層への配合率が40〜90重量%の範囲を外れると、濾過効率と濾過抵抗のバランスが悪くなることがわかる。つまり、リヨセル繊維を40重量%未満で配合した場合(比較例2)、他の繊維配合条件を濾過効率が良くなるように調節しても、十分な濾過効率は得られず、濾過抵抗が高くなってしまう。また90重量%を超えて配合した場合(比較例13)、他の繊維配合条件を濾過抵抗が低くなるように調節しても、濾過効率の割に高い濾過抵抗となる。
【0056】
比較例10により、フィブリル化したリヨセル繊維の準濾過層への配合率を30重量%を超えて40重量%とすると、他の繊維配合条件を濾過抵抗が小さくなるように調節しても、濾過効率の割に濾過抵抗が高くなり、濾過材としての性能が劣ることがわかる。
【0057】
比較例3より、準濾過層へフィブリル化したリヨセル繊維を配合しないと、濾過抵抗と濾過効率のバランスが悪くなり、濾過材としての性能が悪くなることがわかる。
【0058】
比較例4、5、8より、準濾過層のみ(比較例4)、濾過層のみ(比較例5)、濾過層と準濾過層とを区別せずに混合して1層としたもの(比較例8)では、濾過抵抗、濾過効率のバランスが悪く、濾過材としての性能が劣ることがわかる。
【0059】
比較例11により、濾過層の坪量を50g/m2 を超えて60g/m2 とすると、他の繊維配合条件を濾過抵抗が低くなるように調節しても、捕集効率の割に濾過抵抗が高くなり、濾過材としての性能が落ちることがわかる。
【0060】
比較例7と12より、準濾過層の坪量が15〜150g/m2 の範囲を外れると、濾過抵抗と濾過効率のバランスが悪くなり、濾過材の性能が劣ることがわかる。
【0061】
比較例14は、アクリルエマルジョンを濾過材に含浸させたものであるため、濾過効率は低下し、濾過抵抗も大きくなることがわかる。
【0062】
【発明の効果】
以上の説明からわかるように、本発明の液体濾過用濾過材によれば、低い濾過抵抗で高い濾過効率が得られ、濾過材としての寿命も長く、従来の濾過材に比べ製造も容易であるという優れた効果が奏せられる。
Claims (2)
- 繊維状物質を主材として構成された複数の層を一体積層化してなる液体濾過用の濾過材において、フリーネス400mlC.S.F.以下に叩解されフィブリル化されたリヨセル繊維を40〜90重量%含む坪量5〜50g/m2 の濾過層、及び前記リヨセル繊維を5〜30重量%と熱融着性バインダー繊維を10重量%以上含む坪量15〜150g/m2 の準濾過層とが一体積層化されていることを特徴とする液体濾過用の濾過材。
- 前記濾過層及び準濾過層に含まれる前記リヨセル繊維以外の繊維状物質が、繊維長1〜10mmで、繊維太さ0.1〜5デニールの繊維であることを特徴とする請求項1記載の液体濾過用の濾過材。
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