JP7081911B2 - 積層フィルタ用濾材 - Google Patents

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Description

本発明は、液体中に含有される粒子を効率良く除去し、清浄な液体を得るための液体フィルタ用濾材、空気中の粉塵を捕集するエアフィルタ用濾材等のフィルタ用濾材に関するものである。
液体フィルタ用濾材の構造には大きく分けて2つある。一つは「内部濾過タイプ」であり、これは濾材の内部で固体粒子を捕捉する構造の濾材である。もう一つは「表面濾過タイプ」であり、これは濾材の表面で固体粒子を捕捉する構造の濾材である(例えば、特許文献1参照)。また、これらの濾材は、プリーツ加工を施されて濾材の表面積を増大させてから所定の形状に成形して液体フィルタが作製され、他の部品と組み合わせて濾過機にセットして使用される。
従来、放電加工機やIC生産工程で使用されている液体フィルタ用濾材や自動車用エンジンオイル、燃料等各種液体用の液体フィルタ用濾材には、天然パルプと有機繊維の混抄シートにフェノール樹脂等を含浸処理したシート、ポリエステルスパンボンド不織布等が使用されているが、濾過効率が低く、寿命が短い等の欠点があった。また、高性能の濾材としてフッ素樹脂等の多孔質シートがあるが、高価なため、特殊用途に限定され、多量の液体を処理する濾材としては不適当であった。
これらの問題を解決する濾材の一つとして、1μm以下にフィブリル化された有機繊維5~40質量%と、繊維径1~5μmの極細有機繊維5~60質量%及び繊維径5μm以上の有機繊維20~70質量%からなり、且つ該繊維径5μm以上の有機繊維の一部又は全部が繊維状有機バインダーであり、濾材密度が0.25~0.8g/cmである表面濾過タイプの液体濾過用の濾材が開示されている(例えば、特許文献2参照)。この濾材は、フィブリル化された有機繊維が固体粒子の捕集効率を発現し、その他の有機繊維との含有量を限定することで、圧力損失を抑え、多量の液体を効率良く短時間で処理することができる。
特許文献2の濾材は、厚みが非常に薄く、堅くないために、ひだ折り加工ができない問題があったことから、強度や腰(堅さ)を向上させるために、薄くて表面濾過性能に優れた濾材を濾材層とし、液体の透過性が良く、高強度で、ひだ折り加工性のよい支持体層を抄き合わせ、一体化した液体濾過用フィルタ濾材が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
近年、加工精度が高まることによって加工屑の微細化が進んでおり、清浄な濾過液を確保するためには、濾過精度のより高いフィルタ濾材が求められている。
特開2000-70628号公報 特許第2633355号公報 特許第3305372号公報
本発明の課題は、微細な粉塵や加工屑を濾過により捕捉可能な液体フィルタ用濾材やエアフィルタ用濾材を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、
(1)延伸ポリエチレンテレフタレート繊維、アクリル繊維及びフィブリル化した有機繊維並びに熱溶融性のバインダー繊維を含有してなり、延伸ポリエチレンテレフタレート繊維及びアクリル繊維の繊度が0.05~0.6dtexであり、フィブリル化した有機繊維とアクリル繊維がネットワークを形成しているフィルタ用濾材を密層とし、粗層と積層して一体化されてなる積層フィルタ用濾材、
を見出した。
フィルタ用濾材の捕集効率を高める方法としては、非常に細い繊維径のフィブリル化した有機繊維を活用することが有効である。しかし、フィブリル化した有機繊維の繊維径が細いために、湿式法でフィルタ用濾材を製造する場合には、抄紙網から繊維が脱落し易い。また、脱落せずに抄紙網上に残ったフィブリル化した有機繊維を含有するフィルタ用濾材は、密度が過剰に高まることにより、通気性、通液性が低下する傾向にあった。そこで、毛羽立ち易いアクリル繊維を併用することよって、フィブリル化した有機繊維とアクリル繊維がネットワークを形成し、抄紙網からフィブリル化した有機繊維が脱落することを抑制できる。また、延伸ポリエチレンテレフタレート繊維を併用することによって、延伸ポリエチレンテレフタレート繊維がフィブリル化した有機繊維とアクリル繊維によるネットワークの間に存在することにより、三次元のネットワークを形成し、通気性や通液性を高めることができる。さらに、熱溶融性のバインダー繊維を含有することにより、フィルタ用濾材からの繊維脱落を防止すると共に、フィルタ用濾材の強度を高めることが可能となる。
また、非溶融性の延伸ポリエチレンテレフタレート繊維、アクリル繊維及びフィブリル化した有機繊維並びに熱溶融性のバインダー繊維を含有してなるフィルタ用濾材を密層として、粗層と積層して一体化されてなる積層フィルタ用濾材は、液体の透過性が良く、高強度で、プリーツ加工適性が良好となる。
以下、本発明のフィルタ用濾材について詳説する。本発明のフィルタ用濾材は、非溶融性の延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、アクリル繊維及びフィブリル化した有機繊維並びに熱溶融性のバインダー繊維を含有することを特徴とする。延伸PET繊維とアクリル繊維は、非フィブリル化繊維であり、「ステープル」と呼ばれる短繊維である。また、「熱溶融性」とは、フィルタ用濾材製造時の加熱処理(例えば、乾燥処理、熱カレンダー処理等)によって、熱溶融する性質である。そして、「非溶融性」とは、該加熱処理によって熱溶融しない性質である。
延伸PET繊維の繊維長は、好ましくは2~10mmであり、より好ましくは3~7mmである。繊維長が2mm未満の場合、延伸PET繊維が抄紙網から脱落する場合があり、繊維長が10mmを超えた場合は、地合いが悪化する場合がある。延伸PET繊維の繊度は、好ましくは0.05~1.0dtexであり、より好ましくは0.1~0.8dtexである。繊度が0.05dtex未満の場合、抄紙網から離脱する場合があり、繊度が1.0dtexを超えた場合は、ネットワークの空隙が大きくなり、捕集効率が低下する場合がある。
延伸PET繊維の含有量は、フィルタ用濾材に含まれる全繊維に対して、10~50質量%であることが好ましく、10~40質量%であることがより好ましく、10~30質量%であることが更に好ましい。延伸PET繊維の含有量が10質量%未満では、フィルタ用濾材の空隙が不足し、通気抵抗が高まるおそれがある。延伸PET繊維の含有量が50質量%を超えると、バインダー繊維の含有量が相対的に低くなり、強度が不十分となるおそれがある。
アクリル繊維の繊維長は、好ましくは2~10mmであり、より好ましくは3~7mmである。繊維長が2mm未満の場合、アクリル繊維が抄紙網から脱落する場合があり、繊維長が10mmを超えた場合は、地合いが悪化する場合がある。アクリル繊維の繊度は、好ましくは0.05~1.0dtexであり、より好ましくは0.1~0.8dtexである。繊度が0.05dtex未満の場合、抄紙網から離脱する場合があり、繊度が1.0dtexを超えた場合は、ネットワークの空隙が大きくなり、捕集効率が低下する場合があった。
アクリル繊維の含有量は、フィルタ用濾材に含まれる全繊維に対して、10~50質量%であることが好ましく、10~40質量%であることがより好ましく、10~30質量%であることが更に好ましい。アクリル繊維の含有量が10質量%未満では、フィブリル化した有機繊維とのネットワークを良好に形成しない場合があり、フィブリル化した有機繊維が抄紙網から脱落するおそれがある。また、アクリル繊維の含有量が50質量%を超えると、バインダー繊維の含有量が相対的に低くなり、強度が不十分となるおそれがある。
本発明において、フィブリル化した有機繊維とは、主に繊維軸と平行な方向に非常に細かく分割された部分を有する繊維状で、少なくとも一部の繊維径が1μm以下になっている繊維を指す。本発明においては、長さと巾のアスペクト比が20:1~100000:1の範囲に分布し、カナダ標準形濾水度が0ml~500mlの範囲にあることが好ましい。フィブリル化した有機繊維の含有量は、フィルタ用濾材に含まれる全繊維に対して、2~50質量%であることが好ましく、5~40質量%であることがより好ましく、5~30質量%であることが更に好ましい。フィブリル化した有機繊維の含有量が2質量%未満の場合、均一性や捕集効率が向上しない場合がある。また、フィブリル化した有機繊維の含有量が50質量%を超えると、フィルタ用濾材の空隙が不足し、フィルタの寿命が低下する場合がある。
フィブリル化した有機繊維としては、天然セルロース、リヨセルやレーヨン等の再生セルロース等のセルロース類が好ましく、特に再生セルロースであるリヨセルが好ましい。また、全芳香族ポリアミド等のアラミド繊維、全芳香族ポリエステル等のポリエステル系繊維、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリベンゾイミダゾール、ポリ-p-フェニレンベンゾビスチアゾール、ポリ-p-フェニレンベンゾビスオキサゾール、ポリテトラフルオロエチレン、アクリル系繊維などからなる耐熱性繊維も耐熱性を更に向上できることから好ましく、これらの中でも特にフィブリル化しやすいパラ型全芳香族ポリアミドなどのアラミド系繊維及びアクリロニトリルとアクリル酸エステルとの共重合物等のアクリル系繊維が好ましい。また、これらは、単独又は2種以上を併用しても構わない。
本発明において、フィブリル化した繊維を得るには、例えば、短繊維を適度な濃度で水などに分散させ、これをリファイナー、ビーター、ミル、摩砕装置、高速の回転刃により剪断力を与える回転刃式ホモジナイザー、高速で回転する円筒形の内刃と固定された外刃との間で剪断力を生じる二重円筒式の高速ホモジナイザー、超音波による衝撃で微細化する超音波破砕器、高圧ホモジナイザーなどに通して、刃の形状、流量、処理回数、処理速度、処理濃度などの条件を調節して微細化処理すれば良い。
本発明において、濾材の均一性、固体粒子の捕捉能、圧力損失等の性能をバランス良く発現させるためには、(A)剪断力を加えて幹部から離脱して繊維径1μm以下のフィブリル化有機繊維、及び、(B)剪断力を加えて、繊維径2μm以上の幹部から、繊維径1μm以下の枝部が発生したフィブリル化有機繊維という、2つのフィブリル化状態の有機繊維であることが好ましい。
本発明のフィルタ用濾材における熱溶融性のバインダー繊維とは、フィルタ用濾材製造時の加熱処理(例えば、乾燥処理、熱カレンダー処理等)によって、熱溶融する性質を持つ繊維である。バインダー繊維としては、芯鞘繊維(コアシェルタイプ)、並列繊維(サイドバイサイドタイプ)、放射状分割繊維などの複合繊維が挙げられる。複合繊維は、皮膜を形成しにくいので、フィルタ用濾材の空間を保持したまま、強度を向上させることができる。例えば、ポリプロピレン繊維、ポリプロピレン(芯)とポリエチレン(鞘)の組み合わせ、ポリプロピレン(芯)とエチレンビニルアルコール(鞘)の組み合わせ、ポリプロピレン(芯)と酢酸ビニルアルコール(鞘)の組み合わせ、ポリプロピレン(芯)とポリエチレン(鞘)の組み合わせ、高融点ポリエステル(芯)と低融点ポリエステル(鞘)の組み合わせ等が挙げられるが、不織布の強度を高めるという点から、特に、芯鞘型ポリエステル系バインダー繊維を使用することが好ましい。また、ポリエチレン等の低融点樹脂のみで構成される単繊維(全融タイプ)や、熱水可溶性ポリビニルアルコール系繊維のような熱水可溶性バインダー繊維は、加熱工程で皮膜を形成し易いが、特性を阻害しない範囲で使用することができる。
バインダー繊維の繊維長は1~12mmが好ましく、3~10mmがより好ましい。繊維長が1mm未満のバインダー繊維は、抄造工程で抄紙網より脱落しやすくなり、他の繊維との接着点が減少し、強度が低下する場合がある。また、繊維長が12mmを超えると、水分散性が損なわれ、地合いが不均一となり、不織布の強度が低下する場合がある。
バインダー繊維の繊維径は3~20μmであることが好ましく、5~18μmであることがより好ましい。繊維径が3μm未満では、圧力損失が高まる場合がある。一方、繊維径が20μmを超えると、他の繊維との接着点が少なくなり、強度が低下する場合がある。
なお、本発明で言う「繊維径」とは、繊維の断面が楕円形や多角形等の場合は、断面積が等しい真円の径に換算した値の繊維径を示すものとする。
バインダー繊維の含有量は、フィルタ用濾材に含まれる全繊維に対して、10~50質量%であることが好ましく、15~45質量%であることがより好ましく、20~40質量%であることが更に好ましい。バインダー繊維の含有量が10質量%未満では、繊維間の接着が不十分となりやすく、強度が不十分となる場合がある。バインダー繊維の含有量が50質量%を超えると、濾過抵抗が高くなり、実用上問題が発生する場合がある。
本発明のフィルタ用濾材は、必要に応じて、延伸PET繊維、アクリル繊維、フィブリル化した有機繊維及びバインダー繊維以外の繊維を加えても良い。加えても良い繊維は、非熱溶融性の繊維であることが好ましい。具体的には、合成繊維としては、ポリエステル系、ポリオレフィン系、ポリアミド系、ポリアクリル系、ビニロン系、ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル系、ベンゾエート、ポリクラール(polychlal)、フェノール系などの繊維が挙げられる。天然繊維としては、皮膜の少ない麻パルプ、コットンリンター、リント;再生繊維としては、リヨセル繊維、レーヨン、キュプラ;半合成繊維としては、アセテート、トリアセテート、プロミックス;無機繊維としては、アルミナ繊維、アルミナ・シリカ繊維、ロックウール、ガラス繊維、マイクロガラス繊維、ジルコニア繊維、チタン酸カリウム繊維、アルミナウィスカ、ホウ酸アルミウィスカなどの繊維が挙げられる。上記の繊維の他に、植物繊維として、針葉樹パルプ、広葉樹パルプなどの木材パルプや藁パルプ、竹パルプ、ケナフパルプなどの木本類、草本類を使用することもできる。また、上記の繊維は、通液性、通気性を阻害しない範囲であれば、フィブリル化されていてもなんら差し支えない。更に古紙、損紙などから得られるパルプ繊維等も使用することができる。また、断面形状がT型、Y型、三角等の異形断面を有する繊維も含有できる。
本発明のフィルタ用濾材の坪量は特に限定しないが、8~70g/mであることが好ましく、10~60g/mがより好ましい。8g/m未満では十分な捕集効率が得られない場合がある。一方、70g/mを超えると、圧力損失が高まり、フィルタの寿命が低下する場合がある。
本発明のフィルタ用濾材をそのまま使用することもできるが、本発明のフィルタ用濾材を密層とし、密層よりも密度の小さい粗層と積層して一体化されてなる積層フィルタ用濾材が、優位に用いることができる。粗層としては、繊維径20μm以下のポリオレフィン系、ポリアミド系、ポリエステル系、アクリル系、ビニロン系、再生繊維系の非バインダー繊維の少なくとも1種類を含むことが好ましい。また、粗層の坪量は30~70g/mであることが好ましい。さらに、ポリエステル系、ポリオレフィン系、塩化ビニル-酢酸ビニル系、ポリビニルアルコール系等のバインダー繊維の少なくとも1種類を10~80質量%含有することが好ましく、表面強度が高い粗層が得られる。また、この粗層は、湿式抄紙機で製造することができるが、用途に応じて、ポリエステル、ポリアミド系、ポリオレフィン系、セルロース系等の素材からなる静電紡糸法、スパンボンド、メルトブロー、ニードルパンチ、スパンレース等の方法で製造されたシートを用いることができる。
粗層と密層を積層して一体化して得られた本発明の積層フィルタ用濾材は、圧力によってフィルタ用濾材が破れることを防止し、濾過性能に優れ、放電加工機用、エンジンオイル用、燃料用、油水分離用、油圧機器用等の液体フィルタ用濾材として好適に使用できる。この場合、密層を上流側として使用することにより、表層濾過機構を発現させることができる。また、使用する条件又は狙いとする効果によっては、粗層を上流として、内部濾過機構を発現させることもできる。
本発明のフィルタ用濾材は、液晶、バイオ、医薬、食品工業のクリーンルームやクリーンベンチ等用のエアフィルタ、空調用エアフィルタ、空気清浄機用エアフィルタ、ガスタービンや蒸気タービンの吸気側に使用される空気又は気体中の粒子捕集に適した産業用エアフィルタ等にも好適に用いることができる。
本発明の積層フィルタ用濾材において、密層の密度は0.1~0.8g/cmであることが好ましい。密度が0.1g/cm未満の場合、密層中に粒子が詰まりやすくなり、寿命が短くなる場合がある。逆に、0.8g/cmを超えると、濾過抵抗が高くなりすぎる場合がある。粗層の密度は、密層より小さく、且つ0.05~0.6g/cmであることが好ましい。粗層の密度が0.05g/cm未満であると、積層フィルタ用濾材の強度が不十分になる場合や、プリーツ加工適性が損なわれる場合がある。逆に、0.6g/cmを超えると、濾過抵抗が高くなりすぎる場合がある。また、(積層)フィルタ用濾材全体の密度は0.1~0.6g/cmであることが好ましい。(積層)フィルタ用濾材全体の密度が0.1g/cm未満では、ピンホール等により信頼性の点で問題がある。
また、本発明の(積層)フィルタ用濾材は、熱可塑性樹脂を含有させると、剛直性が向上し好ましい。熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル系、酢酸ビニル系、エポキシ系、合成ゴム系、ウレタン系、ポリエステル系、塩化ビニリデン系、ポリビニルアルコール系、澱粉、フェノール樹脂などが挙げられ、これらを単独で又は2種類以上で使用できる。
本発明の(積層)フィルタ用濾材に熱可塑性樹脂を含有させる場合に、その含有量は、フィルタ用濾材に対して、0.01~10質量%であることが好ましい。10質量%を超えると、(積層)フィルタ用濾材の圧力損失が大きくなりすぎる場合がある。また、0.01質量%未満では、熱可塑性樹脂を含有しない(積層)フィルタ用濾材と比較して、剛直性が変わらない場合がある。
熱可塑性樹脂を積層フィルタ用濾材に含有させる状態は、密層のみ、密層及び粗層の両方、粗層のみのいずれの状態であっても良い。しかし、密層に熱可塑性樹脂を含有させると、密層の空間を塞いでしまい、固体粒子の捕捉能が小さくなり、圧力損失が大きくなることから、粗層のみに含有させることが好ましい。
熱可塑性樹脂を(積層)フィルタ用濾材に含有させる方法としては、特に限定はしないが、サイズプレス方式、タブサイズプレス方式、スプレー方式、内添方式、グラビア塗工方式などの方法が挙げられる。粗層のみに含有させるためには、スプレー方式、グラビア塗工方式を用いることが好ましい。
本発明の(積層)フィルタ用濾材には、必要に応じて、(積層)フィルタ用濾材の特性を阻害しない範囲で、架橋剤、撥水剤、分散剤、歩留り向上剤、紙力剤、染料などの添加剤を適宜配合させることができる。
本発明のフィルタ用濾材は湿式法で製造することが好ましい。湿式法では、長網、円網、傾斜ワイヤー等の抄紙網が単独で設置されている抄紙機、これらの抄紙網の中から選択される同種又は異種の2機以上がオンラインで設置されている複合式(コンビネーション)抄紙機などにより、フィルタ用濾材を製造することができる。抄紙網で製造された湿紙(ウェブ)は、ドライヤーで乾燥される。乾燥させた後、場合によって、熱可塑性樹脂を含有させ、ドライヤーで乾燥させても良い。ドライヤーとしては、エアドライヤー、ヤンキードライヤー、シリンダードライヤー、サクションドラム式ドライヤー、赤外方式ドライヤー等を使用することができる。また、乾式法で製造した粗層を用いる場合は、抄紙機で製造した密層と乾式法で製造した粗層とを抄紙機で積層しても良いし、別途カレンダー装置、熱カレンダー装置、貼り合わせ装置等の加工機を用いて積層しても良い。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は本実施例に限定されるものではない。なお、実施例中における部や百分率は断りのない限り、すべて質量によるものである。実施例1~15は参考例である。
<PET繊維1>
繊度0.1dtex、繊維長3mmの延伸PET繊維をPET繊維1とした。
<PET繊維2>
繊度0.4dtex、繊維長5mmの延伸PET繊維をPET繊維2とした。
<PET繊維3>
繊度0.6dtex、繊維長5mmの延伸PET繊維をPET繊維3とした。
<PET繊維4>
繊度1.7dtex、繊維長5mmの延伸PET繊維をPET繊維4とした。
<アクリル繊維1>
繊度0.1dtex、繊維長3mmのアクリル繊維をアクリル繊維1とした。
<アクリル繊維2>
繊度0.4dtex、繊維長5mmのアクリル繊維をアクリル繊維2とした。
<アクリル繊維3>
繊度0.6dtex、繊維長5mmのアクリル繊維をアクリル繊維3とした。
<バインダー繊維>
繊維径1.7dtex、繊維長5mmの、芯部がPET(融点253℃)、鞘部がポリエチレンテレフタレート-イソフタレート共重合体(軟化点75℃)のポリエステル系芯鞘型熱融着繊維をバインダー繊維とした。
<FB繊維1>
フィブリル化していないリヨセル単繊維(1.7dtex×4mm、コートルズ社製)を、ダブルディスクリファイナーを用いて60回繰り返し処理して得た、フィブリル化リヨセル繊維をFB繊維1とした。
<FB繊維2>
繊維径10μm、繊維長3mmのパラ系全芳香族ポリアミド繊維を、ダブルディスクリファイナーを用いて60回処理して得た、フィブリル化パラ系全芳香族ポリアミド繊維をFB繊維2とした。
(実施例1~15及び比較例1~4)
2mの分散タンクに水を投入後、表1に示す比率で配合し、分散濃度0.2質量%で5分間分散して、アジテーターによる撹拌のもと、均一な抄造用スラリー(0.2%濃度)を調製した。この抄造用スラリーを円網抄紙機による湿式法を用いて抄き上げ、130℃のシリンダードライヤーによって、バインダー繊維を接着させて不織布強度を発現させ、坪量20g/mのフィルタ用濾材を作製した。
(実施例16及び17)
2mの分散タンクに水を投入後、密層、粗層別々に表2に示す比率で配合し、分散濃度0.2質量%で5分間分散して、アジテーターによる撹拌のもと、均一な抄造用スラリー(0.2%濃度)を調製した。傾斜/円網複合式抄紙機を用いて、粗層を傾斜ワイヤー上で乾燥質量40g/mになるようにウェブを形成し、密層を円網ワイヤー上で乾燥質量20g/mになるようにウェブを形成して、両ウェブを乾燥させる前に積層させた後に、表面温度130℃のシリンダードライヤーでタッチロールを400N/cmの圧力で加圧しながら乾燥及び一体化し、実施例16及び17の積層フィルタ用濾材を得た。
(実施例18)
2mの分散タンクに水を投入後、密層を表2に示す比率で配合し、分散濃度0.2質量%で5分間分散して、アジテーターによる撹拌のもと、均一な抄造用スラリー(0.2%濃度)を調製した。円網抄紙機を用いて、乾燥質量20g/mになるようにウェブを形成し、表面温度130℃のシリンダードライヤーでタッチロールを400N/cmの圧力で加圧しながら乾燥して密層を得た。密層と、粗層としてスパンボンド法で作製したPET不織布(繊維径15μm、坪量が40g/m)とをエンボス加工により積層一体化し、実施例18の積層フィルタ濾材を得た。
実施例及び比較例で得られたフィルタ用濾材及び積層フィルタ用濾材に対して以下の評価を行い、結果を表1、表2に示した。
<評価>
実施例及び比較例で得られたフィルタ用濾材及び積層フィルタ用濾材について、下記の評価を行い、圧力損失、粒子捕集効率、強度の評価結果を表1及び表2に示した。
Figure 0007081911000001
Figure 0007081911000002
[圧力損失](単位:Pa)
JIS B9908に準じて、面風速5.3cm/秒の条件で測定した。圧力損失は低いほど好ましく、150Pa未満であれば「◎」、150Pa以上200Pa未満であれば「○」、200Pa以上250Pa未満であれば「△」、250Pa以上を「×」とした。
[捕集効率](単位:%)
JIS B9908に準じて、面風速5.3cm/秒の条件で測定した。測定対象粒子は、大気塵を使用して、粒子径0.25~0.35μmの粒子についての捕集効率をパーティクルカウンター(商品名「KC-11」、リオン社製)を使用して測定し、下記数式1より、捕集効率を算出した。
η=(1-C2/C1)×100 (数式1)
η:捕集効率(%)
C1:濾材上流側の粒子濃度
C2:濾材下流側の粒子濃度
捕集効率は高いほど好ましく、50%以上であれば「◎」、40%以上50%未満であれば「○」、30%以上40%未満であれば「△」、30%未満であれば「×」とした。
[強度]
実施例及び比較例のフィルタ用濾材及び積層フィルタ用濾材を、50mm幅の短冊状に切り揃えた。試験片を卓上型材料試験機(商品名:STA-1150、(株)オリエンテック製)に据え付けた40mmφの固定枠に装着し、先端に丸み(曲率1.6)をつけた直径1.0mmの金属針((株)オリエンテック製)を試料面に対して直角に50mm/分の一定速度で貫通するまで降ろした。この時の最大荷重(g)を計測し、これを突刺強度とした。1試料について5ヶ所以上突刺強度を測定し、全測定値の中で最も小さい突刺強度について、100g以上であれば「◎◎」、50g以上100g未満であれば「◎」、40g以上50g未満であれば「○」、30g以上40g未満であれば「△」、30g未満であれば「×」で表した。
[プリーツ加工適性]
積層フィルタ用濾材をマシンの流れ方向(MD)30cm、横方向20cmに裁断し、流れ方向を横切るように5cm毎に山折、谷折を繰り返し、畳んだ濾材の上に、直径5cm、長さ30cm、重さ3kgの円柱状金属ロールをゆっくり転がして折り目をつけ蛇腹状とする。折り目が明確で歪みがなく、折り目を押しても変形しなければ良好とする。プリーツ加工適性は、実施例16~18で得られた積層フィルタ用濾材について評価した。
実施例1~15と比較例1~4との比較から、実施例1~15で得られたフィルタ用濾材は、非溶融性の延伸ポリエチレンテレフタレート繊維、アクリル繊維及びフィブリル化した有機繊維並びに熱溶融性のバインダー繊維を含有しているため、均一性に優れ、捕集効率、圧力損失のバランスが良好であり、強度も良好な結果が得られた。
これに対し、比較例1で得られたフィルタ用濾材では、フィブリル化した有機繊維を含有していないため、捕集効率が低い結果となった。また、比較例2で得られたフィルタ用濾材は、延伸PET繊維を含有していないため、圧力損失が実施例よりも大きい結果となった。さらに、比較例3で得られたフィルタ用濾材は、アクリル繊維を含有していないため、フィブリル化した有機繊維の抄紙網からの離脱が多く、捕集効率が低い結果となった。また、比較例4で得られたフィルタ用濾材は、熱溶融性のバインダー繊維を含有していないため、強度が低い結果となった。
実施例16及び実施例17は、密層と粗層を積層して一体化した積層フィルタ用濾材であり、各々の密層は実施例1及び実施例7のフィルタ用濾材と同繊維配合である。実施例16及び17の積層フィルタ用濾材は、圧力損失、捕集効率、強度共に良好であった。また、実施例16及び実施例17の積層フィルタ用濾材は、密層と粗層を一体化しているため、プリーツ加工適性テストでは、折り目が明確で歪みがなく、折り目を押しても変形せず、プリーツ加工適性が優れていた。実施例18は、密層が実施例1のフィルタ用濾材と同繊維配合であり、粗層としてスパンボンド法で作製したPET不織布(繊維径15μm、坪量が40g/m)をエンボス加工により密層と積層一体化した積層フィルタ用濾材であり、圧力損失、捕集効率、強度、プリーツ加工適性共に良好であった。
本発明の(積層)フィルタ用濾材は、金属の型彫、切断加工などに使用されている放電加工機の加工液中に含まれる加工屑や、IC生産における基板のウエハの切断、研磨、エッチングなどの工程で使用される超純水中に含まれる加工屑を効率良く除去し清浄な液体を得るための液体フィルタ、自動車用エンジンオイル、燃料等用の液体フィルタ等に好適に用いることができる。また、空気中の粉塵を捕集するエアフィルタにも好適に使用することができる。

Claims (1)

  1. 延伸ポリエチレンテレフタレート繊維、アクリル繊維及びフィブリル化した有機繊維並びに熱溶融性のバインダー繊維を含有してなり、延伸ポリエチレンテレフタレート繊維及びアクリル繊維の繊度が0.05~0.6dtexであり、フィブリル化した有機繊維とアクリル繊維がネットワークを形成しているフィルタ用濾材を密層とし、粗層と積層して一体化されてなる積層フィルタ用濾材。
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