JP5096726B2 - 複合濾材 - Google Patents

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Description

本発明は、空気中の粉塵を捕集するエアフィルタ濾材に関する。特に、中性能・高性能エアフィルタ用途に関するものである。
エアフィルタ濾材としては、静電気力によりメルトブロー不織布の捕集効率を高めたエレクトレット濾材が知られている。しかし、水分付着によって、著しく捕集効率が低下してしまうため、信頼性の点から、物理的に粒子を捕捉する濾材が必要とされている。物理的に粒子を捕捉する濾材として、ガラス繊維を主体とした濾材が多く用いられている。
ガラス繊維を主体としたエアフィルタ濾材は、チョップドストランドガラス繊維及び/又はマイクロガラス繊維を混合して湿式抄紙法で抄造した後、バインダーを付与して強度を強くする方法で作られている。しかし、濾材に弾性がなく、フィルタユニットに加工する際の折り曲げ時に折り部が破損したり、衝撃が加わった際にガラス繊維が折れて脱落するという欠点がある。また、フィルタを洗浄して再使用する場合、洗浄時の衝撃で濾材が破損したり、バインダーが洗剤等が原因で溶出してしまい、濾材の強度が低下するのが現状である。さらに、使用済みの濾材を廃棄する場合、焼却しても、ガラス繊維が燃えないために、ほとんど減容しないことから、不燃ゴミ問題も深刻となっている。
これらの問題を解決するために、捕集効率を向上させる平均繊維径0.1〜1μmのマイクロガラス繊維と剛直鎖合成高分子からなる濾水値が30〜800秒のフィブリル化有機繊維とを含有する濾材が提案されている(例えば、特許文献1参照)。マイクロガラス繊維とフィブリル化有機繊維とを濾材中に混在させて、両繊維の絡み合い効果を引き出すことにより、マイクロガラス繊維単独の場合に問題となる抄紙ワイヤーからの繊維離脱の問題、フィルタ加工時の破損の問題を解決している。また、焼却減容可能な濾材となっている。しかし、近年では、フィルタ寿命を延ばすために、従来よりもさらに圧力損失の低い濾材が望まれてきているが、マイクロガラス繊維とフィブリル化有機繊維とを混在させている濾材は、密度が高くなりすぎる場合があり、圧力損失が充分に低いとは言えない。
別途、フィルタ寿命を延ばすために、捕集効率の異なる濾材を密接して重ねて、同時に折り加工を施して、フィルタを作製する方法が提案されている。しかし、濾材の厚みが厚いために、フィルタユニットに折り込める濾材面積が少なくなってしまい、結果として寿命をのばすことが困難となっている(例えば、特許文献2参照)。
高性能エアフィルタ濾材として、ポリエステル繊維にガラス繊維を混成させた不織布であって、捕集効率の異なる不織布を一体成形してなる積層濾材を用い、該積層濾材をミニプリーツ形状とした集塵フィルタが提案されている。この混成積層濾材では、ポリエステル繊維によって柔軟になることから、折り加工部の破損は減少するものの、強度向上が図られていないことから、ミニプリーツ形状に加工する際に折り部が破損したり、フィルタ洗浄で破損するという問題が残っていた(例えば、特許文献3参照)。
ところで、ビルや工場の空調及び発電所などに設置されるタービン吸気部用フィルタなど、外気を吸気するエアフィルタ濾材には、必要に応じ、撥水性が付与される。濾材に撥水性を付与する目的としては、濾材をフィルタユニットに加工する際に使用するシール剤やホットメルト等のしみ込みを防ぐことや、濾材面に水がかかったり、温度変化により結露した場合でも、そのまま濾材を利用できるようにすること等があげられる。また、海が近い場所など、塩分を多く含む粒子が存在する環境下では、捕集された塩分の潮解を防ぐために、高撥水性を有する濾材が必要とされている。
従来、ガラス繊維を主体繊維とするエアフィルタ濾材への撥水性を付与する方法としては、シリコン樹脂の使用、又は、フッ素樹脂とシリコン樹脂の併用などの方法が提案されている。しかし、この方法ではシリコン樹脂やフッ素樹脂がガラス繊維を結合させるために使用されているバインダーの接着性を阻害してしまうため、濾材の強度が低下するといった問題がある(例えば、特許文献4〜5参照)。
また、撥水性を付与する方法として、ガラス繊維を主体繊維とするエアフィルタ濾材において、ガラス繊維表面上に、一般的な紙の製造に用いられる抄紙用サイズ剤であるアルキルケテンダイマーを付着させることにより、撥水性を付与する方法が提案されている。しかし、撥水性は満足しているものの、濾材の空隙であるミクロポアを過剰に塞いでしまうことがあり、捕集効率が低下する可能性がある。また、ガラス繊維を主体としていることから、フィルタ加工する際の折り部破損、フィルタ洗浄時の衝撃による濾材破損、バインダー溶出による濾材強度低下、不燃ゴミ問題といった課題は解決できていない。(例えば、特許文献6〜7参照)。
以上のように、現在のところ、空気中の粉塵の捕集効率が良好であり、濾材からのガラス繊維の脱落がなく、フィルタ加工やフィルタ洗浄に破損しにくく、不燃ゴミ減量にも配慮した濾材は未だ得られていない。また、捕集効率や濾材の強度を維持しつつ、撥水性をもたせた濾材も得られていない。
特開平8−323121号公報 特開2001−263089号公報 国際公開第WO03/043717号パンフレット 特開平2−41499号公報 特開平2−175997号公報 国際公開第WO02/016005号パンフレット 特開2004−154672号公報
本発明の課題は、高捕集効率で圧力損失が低く、ガラス繊維の脱落がなく、折り加工や洗浄時にも破損しにくく、焼却による減容が可能であるフィルタ用の複合濾材及び複合濾材の製造方法を提供することである。また、水分の付着や海塩粒子の潮解による濾材の性能低下を防止する高い撥水性を示す複合濾材を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、複合濾材(1)〜(3)を見出した。
(1)上流側濾材層と下流側濾材層の2層で構成された複合濾材であって、上流側濾材層と下流側濾材層の両層に示差走査熱量分析(DSC)で測定した融点が50〜170℃である熱融着性繊維を含み、少なくとも下流側濾材層が熱融着性繊維5〜80質量%、平均繊維径0.1〜1μmのマイクロガラス繊維10〜50質量%、非融着性合成繊維5〜80質量%からなり上流側濾材層が、熱融着性繊維5〜80質量%、平均繊維径0.3〜1μmのマイクロガラス繊維10〜50質量%、非熱融着性合成繊維5〜80質量%からなり、熱融着性繊維とマイクロガラス繊維または、該熱融着性繊維同士の少なくとも一部が熱融着されている複合濾材、
(2)JIS B9927に規定される撥水性が1kPa以上である上記(1)記載の複合濾材
(3)少なくとも上流側濾材層が撥水性化合物を含有している上記(2)記載の複合濾材
本発明の複合濾材は、上流側濾材層と下流側濾材層とが一体化された複合濾材である。少なくとも、下流側濾材層に平均繊維径0.1〜1μmのマイクロガラス繊維を含有させて、上流側濾材層で主に大粒径粉塵を、下流側濾材層で主に小粒径粉塵を、順次捕捉することにより、粉塵保持容量が多くなり、圧力損失も低くすることができる。
本発明の複合濾材は、両層に熱融着性繊維を含むことによって、耐折強さに富み、折り加工時や洗浄時にもガラス繊維の脱落が無く、破れたりすることがない。折り部の大きさが小さいミニプリーツ加工にも対応可能である。また、熱融着性繊維と他の繊維または、該熱融着性繊維同士の少なくとも一部が熱融着されているため、フィルタの洗浄時に使用される洗剤に熱融着部分が冒されることがなく、強度と繊維が形成したネットワーク構造を保持することができる。さらに、本発明の複合濾材は、焼却可能な熱融着性繊維を含有しており、場合によって焼却可能な非熱融着性繊維を含有していることから、使用後のフィルタは焼却によって減容することが可能であり、廃棄物の量を低減できる。
本発明の複合濾材を製造する方法では、上流側濾材層の湿紙ウェブと下流側濾材層の湿紙ウェブをコンビネーション抄紙機で製造し、2層の湿紙ウェブを積層し、積層湿紙ウェブを加圧しながら、熱融着性繊維の融点より10℃以上高い表面温度の熱ロールに密着させて上流層と下流層を一体化させる。この製造方法によれば、熱融着性繊維の融着効果によって、各層内において繊維のネットワークが形成されると共に、両層間も融着させることができ、折り加工時に層間はく離等が起こりにくい、強度の高い複合濾材を得ることができる。
本発明の複合濾材において、JIS B9927に規定される撥水性を1kPa以上とした複合濾材では、水分や塩分による濾材の性能低下を防止することができる。特に、少なくとも上流側濾材層に撥水性化合物を含有させることによって、上流側濾材層で水や塩分のフィルタへの侵入を効率的に抑制することができ、上流側濾材層と下流側濾材層の捕集効率の低下を防ぐことができる。また、濾材全体の空隙を塞ぐことなく、特に、平均繊維径0.1〜1μmのマイクロガラス繊維を含有させてなる下流側濾材層のミクロポアを塞ぐことがないため、高い捕集効率を維持することができる。
本発明の複合濾材を製造する方法において、複合濾材の抄造時の上流側濾材層の原料スラリーに撥水性化合物を内添することで、特別な後加工処理やその製造装置を必要とせずに、高い撥水性を付与することが可能となる。
本発明の複合濾材は、上流側濾材層と下流側濾材層の両層に示差走査熱量分析(以下、DSCともいう)で測定した融点が50〜170℃である熱融着性繊維を含有させる。熱融着性繊維の融点は、好ましくは60〜140℃である。融点は、JIS K7121に準じて測定することができる。融点が50℃未満の場合、複合濾材が高温にさらされた場合に軟化して強度低下を招くことがあり、好ましくない。一方、170℃を超えた場合、熱融着機能を発現させるために、高温で加熱や乾燥をさせることが必要となり、多くのエネルギーが必要となることから好ましくない。
本発明に係わる熱融着性繊維としては、単繊維のほか、芯鞘繊維(コアシェルタイプ)、並列繊維(サイドバイサイドタイプ)、放射状分割繊維などの複合繊維が挙げられる。複合繊維は、皮膜を形成しにくいので、複合濾材の空間を保持したまま、機械的強度を向上させることができる。熱融着性繊維としては、例えば、ポリプロピレン繊維、ポリプロピレン(芯)とポリエチレン(鞘)の組み合わせ、ポリプロピレン(芯)とエチレンビニルアルコール(鞘)の組み合わせ、ポリプロピレン(芯)と酢酸ビニルアルコール(鞘)の組み合わせ、ポリプロピレン(芯)とポリエチレン(鞘)の組み合わせ、高融点ポリエステル(芯)と低融点ポリエステル(鞘)の組み合わせ等が挙げられる。また、ポリエチレン等の低融点樹脂のみで構成される単繊維(全融タイプ)や、ポリビニルアルコール系のような熱水可溶性バインダーは、複合濾材の乾燥工程で皮膜を形成し易いが、特性を阻害しない範囲で使用することができる。
熱融着性繊維を含有させて、該熱融着性繊維の溶融温度以上に温度を上げる工程を組み入れることで、複合濾材がフィルタ加工される際の折り曲げに対する機械的強度が向上する。また、熱融着性繊維がネットワークを形成することにより、折り曲げに対する強度を発現するばかりでなく、複合濾材を構成する他の繊維とも均一なネットワークを構成することができ、強度を有しながら捕集効率が高い複合濾材となる。
熱融着性繊維の含有量は、両層共に5〜80質量%であり、より好ましくは10〜70質量%、さらに好ましくは20〜60質量%である。熱融着性繊維の含有量が5質量%より少ないと、複合濾材のはく離強さ、耐折強さが不足し、折り加工時に層間はく離が生じたり、折り部に膨れが生じて、構造圧損を高めてしまったり、亀裂が生じたりすることがある。また、80質量%を超えてしまうと、複合濾材が緻密になって圧力損失が高まり、フィルタ寿命が短くなる場合がある。
熱融着性繊維の繊維径は特に限定されないが、3〜25μmであることが好ましく、より好ましくは5〜20μmである。繊維径が3μm未満では複合濾材の圧力損失が高くなり、フィルタの寿命が短くなる傾向がある。また、繊維径が25μmを超えると、複合濾材の圧力損失は低くなるものの、ネットワークの空隙が大きくなるために、抄造時に抄紙ワイヤーから複合濾材を構成する他の繊維(例えば、マイクロガラス繊維)の抜けが多くなり、捕集効率が低下してしまうことがある。また、融着する比表面積が少なくなり、複合濾材の耐折強さやはく離強さ等の強度が向上しにくくなることがある。
耐折強さを高めるためには、熱融着性繊維の繊維長を2〜15mmにすることが好ましく、より好ましくは3〜10mmである。繊維長が2mm未満の場合、熱融着性繊維の単独繊維に交差する繊維の本数が少ないことから、フィルタユニット製造時のプリーツ加工等の折り加工における衝撃で、融着している繊維交点が外れたり、繊維が脱落したりする可能性がある。一方、15mmを超えた場合、抄造前の繊維分散性が悪く、結果として地合の悪い濾材となり、マイクロガラス繊維の歩留まりを悪化させてしまう場合がある。
本発明に係わるマイクロガラス繊維は、捕集効率を決定づける繊維の一つである。下流側濾材層では、平均繊維径0.1〜1μmのマイクロガラス繊維を使用することが必須である。平均繊維径が1μmを超える場合、捕集効率を向上させる効果が少なくなる。また、平均繊維径が0.1μm未満の場合、湿式抄紙の際、ワイヤーからのマイクロガラス繊維の流出が多く、非常に歩留まりが悪くなる。
平均繊維径0.1〜1μmのマイクロガラス繊維の下流側濾材層に対する配合比率は、目的とする捕集効率になるように、配合率を変更できる。その配合率は10〜50質量%であり、好ましくは15〜40質量%である。
上流側濾材層では、高性能エアフィルタ濾材として用いる場合、平均繊維径0.3〜1μmのマイクロガラス繊維を使用する。平均繊維径が1μmを超える場合、捕集効率を向上させる効果が少なくなることがある。また、平均繊維径が0.3μm未満の場合、濾材層の空隙が小さくなり、表面濾過機構となり、フィルタ寿命が短くなってしまうことがある。高性能エアフィルタ濾材の場合、上流側濾材層では、平均繊維径0.3〜1μmのマイクロガラス繊維を10〜50質量%配合し、より好ましくは、10〜40質量%配合していることが好ましい。
今後ますます問題視されつつある環境問題に対して不燃ゴミを減量するために、複合濾材の上流側濾材層及び下流側濾材層中に配合するマイクロガラス繊維の配合比率は50質量%以下が好ましく、より好ましくは40質量%以下である。50質量%を超えた場合、ガラス繊維は不燃性であるため、焼却減容の効果が少ない。
マイクロガラス繊維の素材は、一般的なボロシリケート系の他に、よりシリカの純度の高い石英ガラスも使用できる。一般的なボロシリケート系の場合、半導体産業などで使用された場合、微量の酸やアルカリとの接触によって、ガラス繊維表面が侵食され、微量の金属(B、Naなど)が発生することが問題視されている。酸化硼素含有量が極めて少ないマイクロガラス繊維を使用した場合には、半導体製造工程での酸やアルカリによる劣化の問題もないことから、クリーンルーム用フィルタにも適用することができる。
熱融着性繊維とマイクロガラス繊維のみで構成しても本発明の複合濾材は得られるが、熱融着性を持たない非熱融着性繊維を、上流側濾材層及び/又は下流側濾材層に配合することにより、マイクロガラス繊維と熱融着性繊維のネットワークをさらに均一にすることができる。抄紙機の繊維分散工程において、全繊維がパルパーの攪拌装置で水に分散されることにより、各繊維がランダムに配置され、その後の抄紙ワイヤー部で脱水されてウェブを形成する。ウェブを形成する段階で非熱融着性繊維が熱融着性繊維同士又は熱融着性繊維とマイクロガラス繊維との間に配置されることにより、これらの繊維と空隙を形成しつつ、程良く絡み合い、良好な三次元ネットワークを形成する。ゆえに、均一な地合となり、捕集性能を保持しつつ、適当な空間保持によって通気性を確保することができ、適正な圧力損失を得ることができる。上流側濾材層に非熱融着性繊維を配合する場合、その配合量は5〜80質量%である。下流側濾材層に非熱融着性繊維を配合する場合、その配合量は5〜80質量%である
本発明において、非熱融着性繊維としては、繊維径1〜20μmの有機繊維を好適に用いることができる。非熱融着性繊維としては、具体的には、皮膜の少ない麻パルプ、コットンリンター、リント、また、再生繊維としては、リヨセル繊維、レーヨン、キュプラが、半合成繊維としては、アセテート、トリアセテート、プロミックスが、合成繊維としては、ポリオレフィン系、ポリアミド系、ポリアクリル系、ビニロン系、ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル系、ナイロン系、ポリオレフィン系、ベンゾエート、ポリクラール、フェノール系などの繊維が挙げられる。上記の繊維の他に、植物繊維として、針葉樹パルプ、広葉樹パルプなどの木材パルプや藁パルプ、竹パルプ、ケナフパルプなどの木本類、草本類が挙げられる。これらの繊維は、通液性、通気性を阻害しない範囲であれば、フィブリル化されていてもなんら差し支えない。さらに、古紙、損紙などから得られるパルプ繊維等が挙げられる本発明において、非熱融着性繊維としては、非熱融着性合成繊維を使用する。また、断面形状がT型、Y型、三角等の異形断面を有する繊維も通気性、通液性確保のために含有できる。また、本発明の複合濾材に含有される非熱融着性繊維には、複合濾材へ新たな機能を付加するといった側面もある。例えば、高強度ポリビニルアルコール繊維などの剛性の高い繊維を非熱融着性繊維の一部として使用することにより、複合濾材全体の剛性が増し、よりプリーツ加工性に優れた複合濾材となる。また、難燃性繊維を使用することにより、難燃剤の付与といった後加工をすることなく、難燃性を持った複合濾材となる。
本発明の複合濾材の厚みは特に限定しないが、100〜800μmであることが好ましく、より好ましくは200〜500μmである。100μm未満では複合濾材の堅さが不足し、良好なプリーツ加工が出来ない場合がある。一方、800μmを超えると、プリーツ加工は可能ではあるが、フィルタユニット内の折られた複合濾材同士の空隙が少なくなり、構造圧力損失が高まり、結果として寿命が短いフィルタとなることがある。本発明の複合濾材の坪量は特に限定しないが、フィルタに加工する際の強度や必要な濾材面積を考慮すると、20〜150g/mが好ましく、より好ましくは、50〜120g/mである。
上流側濾材層の坪量は10〜120g/mが好ましく、より好ましくは、20〜100g/mである。また、下流側濾材層の坪量は5〜80g/mが好ましく、より好ましくは、10〜50g/mである。また、上流側濾材層の厚みは100〜600μmが好ましく、より好ましくは100〜400μmである。また、下流側濾材層の厚みは20〜300μmが好ましく、より好ましくは、30〜200g/mである。
本発明の複合濾材は、JIS P8115のMIT試験機による耐折強さが1.0以上であることが好ましい。本発明の複合濾材は、折り加工(プリーツ加工)する際に、濾材に折り機の刃を押しつけて折り目を付けたり、凹凸のロール間を通過させて折り目を付けた後に、機械又は手で折りたたみ加工される。耐折強さが1.0未満の場合、濾材に亀裂が発生したり、フィルタ完成後の風圧により破れることがある。また、フィルタを洗浄して再使用する場合、洗浄時の衝撃で濾材が破損する場合がある。
本発明の複合濾材は、一般紙や湿式不織布を製造するための抄紙機、例えば、長網抄紙機、円網抄紙機、傾斜ワイヤー式抄紙機等、これらの抄紙機が同種または異種の2機以上がオンラインで設置されているコンビネーション抄紙機などにより製造される。その際、積層方法は各々の抄紙機で抄きあげた湿紙ウェブを積層する抄き合わせや、一方の湿紙ウェブを形成したあとに、この湿紙ウェブの上に繊維を分散した原料スラリーを流して複合濾材を形成する方法でも良い。また、乾燥したウェブの上に、繊維を分散した原料スラリーを流して複合濾材を形成する方法でも良い。
これらの抄紙機で抄造された湿紙ウェブは、加熱乾燥され、湿紙ウェブに含有される熱融着性繊維により、複合濾材が形成される。加熱乾燥の手段としては、シリンダードライヤー、エアドライヤー、サクションドラム式ドライヤー、赤外方式ドライヤーなどの方式を用いることができるが、熱融着性繊維を効率よく融着させ、より高い強度が得られる方式として、シリンダードライヤーによる加熱方式が好ましい。本発明の製造方法としては、上流側濾材層、下流側濾材層、それぞれを湿式抄造して湿紙ウェブを得た後、未乾燥状態において、該湿紙ウェブを加圧しながら、熱融着性繊維の融点+10℃以上の熱ロールに密着させ、熱融着性繊維の溶融成分を溶融させた後、自然冷却により固化することにより、一体化する。シリンダードライヤーによる加熱方法としては、熱ロールにタッチロールで加圧しながら、片面のみ接触させても良いし、フェルトに抱かれたシリンダードライヤー群の間に複合濾材を通過させて表裏を順次、熱ロールに接触させても良い。
本発明の複合濾材は、JIS B9927に規定される撥水性が1kPa以上であることが好ましく、より好ましくは5kPa以上である。MIL−STD−282に規定されるHEPA濾材の撥水性は508mmHO(4.98kPa)以上とされているが、全てのHEPA濾材が準拠しているわけではない。しかしながら、必要十分な値として、MIL規格を参考にしたJIS B9927に規定される方法で撥水性を測定した場合、5kPa以上の値があれば十分な撥水性を持った濾材と言える。
本発明の複合濾材において、撥水性を1kPa以上とするには、少なくとも上流側濾材層に撥水性化合物を含有させる。撥水性化合物の含有量は、上流側濾材層を構成する繊維に対して、0.01〜10質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜5質量%である。撥水性化合物の含有量が0.01質量%未満であると、撥水性が1kPa以上得られない場合があり、10質量%以上であると、撥水効果が過剰であり経済的に好ましくないばかりでなく、濾材のミクロポアを過剰に塞いでしまう事により捕集効率が低下する可能性がある。本発明の複合濾材において、複合濾材を使用する環境(温度・湿度等)があまり厳しくなかったり、通風する空気が高湿になる可能性が低い場合などは、上流側濾材層のみに撥水性化合物を含有させれば良いが、下流層側濾材層にも撥水性化合物を含有させることも可能である。
本発明の複合濾材において、撥水性化合物としては、例えば、シリコン系、フッ素系が用いられ、内添法で付与する場合は、ロジン系、強化ロジン系、アルキルケテンダイマー系、アルケニル無水コハク酸系などの製紙用サイズ剤を好適に用いることができる。
本発明の複合濾材の製造方法において、撥水性の付与方法としては、濾材を抄造する前の原料スラリー中に撥水性化合物を添加する内添法と、抄紙後湿紙の状態又は乾燥後に含浸又は塗工によって撥水性化合物を付与し、乾燥させる外添法が挙げられる。本発明の複合濾材は、どちらの方法でも用いることができる。外添法において、含浸又は塗工方式は特に限定はしないが、サイズプレス方式、タブサイズプレス方式、スプレー方式、内添方式、グラビア塗工方式などの方法が挙げられる。
撥水性化合物の付与方法において、外添法は、含浸又は塗工から乾燥までの工程及びそれに伴う製造設備が必要であること、場合によっては抄紙乾燥して得られた濾材の性能を低下させる可能性がある。したがって、内添法が好ましい。また、フィルタの使用環境があまり厳しくなかったり、通風する空気が高湿になる可能性が低い場合などは、上流側濾材層のみに撥水性を付与すれば良く、2層から構成される本発明の複合濾材においては内添法が適している。また、外添法において、上流側濾材層のみに撥水性を付与するには、塗工工程において、上流側濾材層面側から撥水性化合物を供給すればよく、スプレー方式やグラビア塗工方式を用いることが好ましい。
本発明の複合濾材には、必要に応じて複合濾材の特性を阻害しない範囲で、架橋剤、分散剤、歩留り向上剤、紙力剤、難燃剤、染料、樹脂などの添加剤を適宜配合することができる。これらの添加剤を付与する方法としては、撥水性化合物を付与するのと同様に、内添法や外添法を適宜選択して用いることができる。例えば、難燃剤を付与することによって、難燃性を持った複合濾材となる。本発明に用いられる難燃剤としては、安全面、環境面からノンハロゲン系難燃剤が好ましく、無機リン系、有機リン系、金属水酸化物などが挙げられる。
また、機械的強度、耐水性を付与するために熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂を含有させることができる。このような樹脂としては、例えば、アクリル系、酢酸ビニル系、エポキシ系、合成ゴム系、ウレタン系、ポリエステル系、塩化ビニリデン系などのラテックス、ポリビニルアルコール、澱粉、フェノール樹脂などが挙げられ、これらは単独または2種類以上を併用することができる。複合濾材に含有せしめる熱可塑性樹脂の量としては、複合濾材に対して0.01〜10質量%が適当である。10質量%を超えると複合濾材の圧力損失が大きくなる。また、0.01質量%未満では、熱可塑性樹脂を含有しない複合濾材と比較して、機械的強度や耐水性が向上しない場合がある。
また、さらにフィルタ寿命を延ばすために、必要に応じて3層構造以上の複合濾材にするために、スパンボンド、ケミカルボンド、メルトブロー等の乾式法で製造した不織布と抄紙機で製造した本発明の二層構造の複合濾材とを、抄紙機で積層しても良いし、別途加工機を用いて積層しても良い。その場合、本発明の複合濾材の上流側濾材層面に、乾式法で製造した不織布を積層することが好ましい。
以下、本発明を実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は本実施例に限定されるものではない。まず、熱融着性繊維の融点の測定方法と濾材の評価方法を示す。
熱融着性繊維の融点の測定方法
<熱融着性繊維の融点(単位:℃)>
熱融着性繊維の融点は、PERKIN ELMER社製示差走査熱分析装置DSC7を用いて測定した。測定は、25〜300℃まで、毎分10℃の昇温条件で測定した。
濾材の評価方法
<圧力損失(単位:Pa)>
JIS B9908に準じて、面風速5.3cm/秒の条件で測定した。
<粒子捕集効率(単位:%)>
JIS B9908に準じて面風速5.3cm/秒の条件で測定した。測定対象粒子は、大気塵を使用して、粒子径0.3〜0.5μmの粒子についての捕集効率をパーティクルカウンター(商品名「KC−11」、リオン社製)を使用して測定した。
<耐折強さ>
濾材から幅15mm、長さ110mmの試験片を各10枚採取した。各試験片について、JISのP8115に規定される方法にて、MIT試験機を使用し、500g荷重で耐折回数を測定した。下記数式1より、得られた耐折回数の値から耐折強さを算出し、それぞれの濾材について、試験片10枚の平均値を比較した。
(数1)
FE=log10N (1)
FE:耐折強さ
N:耐折回数
<撥水性>
濾材から約100×100mm角の試験片3枚を採取し、JIS B9927に準じて、撥水性測定装置を用い、撥水性を測定し、その最小値を比較した。
<粉塵保持量A(単位:g/m)>
濾材を用いて濾材面積(30m)になるようにフィルタを作製した。粉塵保持量測定器にて、粉塵:JIS15種、風量:56m/分、粉塵濃度:70mg/mの条件でフィルタ圧力損失が300Paになるまでの粉塵投入量を測定し、濾材の1mあたりの粉塵保持量を算出した。
<粉塵保持量B(単位:g/m)>
濾材を用いて濾材面積(30m)になるようにフィルタを作製した。粉塵保持量測定器にて、粉塵:JIS15種、風量:70m/分、粉塵濃度:70mg/mの条件でフィルタ圧力損失が1000Paになるまでの粉塵投入量を測定し、濾材の1mあたりの粉塵保持量を算出した。
<焼却後の灰分>
焼却後の灰分(%)は、濾材を900℃の電気炉で2時間加熱焼却させる前後の重量から下記式より算出した。
灰分=(焼却後の濾材の重量/焼却前の濾材の重量)×100
<繊維>
実施例及び比較例で使用した繊維を表1に示した。
Figure 0005096726
実施例1(参考例)
2mの分散タンクに水を投入後、繊維M1、繊維N1を各々50:50の比率で配合し、分散濃度0.2%で5分間分散して上流側濾材層用繊維分散液を調製した。
次いで別の2mの分散タンクに水を投入後、繊維M1、繊維N1、繊維G1を各々50:20:30の比率で配合し、分散濃度0.2%で5分間分散して下流側濾材層用繊維分散液を調製した。
長網抄紙機と円網抄紙機がオンラインで設置されているコンビネーション抄紙機を用いて、上流側濾材層を長網抄紙機で乾燥重量40g/mになるようにウェブを形成し、下流側濾材層を円網抄紙機で乾燥重量20g/mになるようにウェブを形成して両ウェブを乾燥させる前に抄き合わせた後に、表面温度130℃のシリンダードライヤーでタッチロールを400N/cmの圧力で加圧しながら乾燥及び一体化し、複合濾材1を得た。
実施例2
上流側濾材層と下流側濾材層の繊維配合を表2に示した配合に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、上流側濾材層用繊維分散液及び下流側濾材層繊維分散液を得た。
長網抄紙機と円網抄紙機がオンラインで設置されているコンビネーション抄紙機を用いて、上流側濾材層を長網抄紙機で乾燥重量40g/mになるようにウェブを形成し、下流側濾材層を円網抄紙機で乾燥重量40g/mになるようにウェブを形成して両ウェブを乾燥させる前に抄き合わせた後に、表面温度130℃のシリンダードライヤーでタッチロールを400N/cmの圧力で加圧しながら乾燥及び一体化し、複合濾材2を得た。
実施例3〜14
上流側濾材層と下流側濾材層の繊維配合を表2に示した配合に変更した以外は、実施例2と同様の方法で、複合濾材3〜14を得た。実施例3、5〜7、9〜12、14は参考例である。
実施例15
上流側濾材層と下流側濾材層の繊維配合を表2に示した配合に変更した以外は、実施例2と同様の方法で、複合濾材15を得た。
実施例16
上流側濾材層と下流側濾材層の繊維配合を表2に示した配合に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、上流側濾材層用繊維分散液及び下流側濾材層繊維分散液を得た。
長網抄紙機と円網抄紙機がオンラインで設置されているコンビネーション抄紙機を用いて、上流側濾材層を長網抄紙機で乾燥重量40g/mになるようにウェブを形成し、下流側濾材層を円網抄紙機で乾燥重量40g/mになるようにウェブを形成して両ウェブを乾燥させる前に抄き合わせた後に、表面温度160℃のシリンダードライヤーでタッチロールを400N/cmの圧力で加圧しながら乾燥及び一体化し、複合濾材16を得た。
実施例17
上流側濾材層と下流側濾材層の繊維配合を表2に示した配合に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、上流側濾材層用繊維分散液及び下流側濾材層繊維分散液を得た。
長網抄紙機と円網抄紙機がオンラインで設置されているコンビネーション抄紙機を用いて、上流側濾材層を長網抄紙機で乾燥重量30g/mになるようにウェブを形成し、下流側濾材層を円網抄紙機で乾燥重量70g/mになるようにウェブを形成して両ウェブを乾燥させる前に抄き合わせた後に、表面温度130℃のシリンダードライヤーでタッチロールを400N/cmの圧力で加圧しながら乾燥及び一体化し、複合濾材17を得た。
実施例18〜20
上流側濾材層と下流側濾材層の繊維配合を表2に示した配合に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、上流側濾材層用繊維分散液及び下流側濾材層繊維分散液を得た。
長網抄紙機と円網抄紙機がオンラインで設置されているコンビネーション抄紙機を用いて、上流側濾材層を長網抄紙機で乾燥重量30g/mになるようにウェブを形成し、下流側濾材層を円網抄紙機で乾燥重量70g/mになるようにウェブを形成して両ウェブを乾燥させる前に抄き合わせた後に、表面温度130℃のシリンダードライヤーでタッチロールを400N/cmの圧力で加圧しながら乾燥及び一体化し、複合濾材18〜20を得た。実施例20は参考例である。
Figure 0005096726
(比較例1)
2mの分散タンクに水を投入後、繊維G1、繊維G6を各々20:80の比率で配合し、分散濃度0.2%で5分間分散して濾材用繊維分散液を調製した。長網抄紙機で乾燥重量65g/mになるように湿紙ウェブを形成した。この湿紙ウェブを乾燥させる前に、アクリル系ラテックス(商品名:ボンコートSFC54、大日本インキ化学工業社製)を固形で5g/m付与し、熱風温度130℃のエアドライヤーで乾燥し、乾燥質量70g/mの比較濾材1を得た。
(比較例2)
2mの分散タンクに水を投入後、繊維G1、繊維G2、繊維G6を各々20:20:60の比率で配合し、分散濃度0.2%で5分間分散して濾材用繊維分散液を調製した。長網抄紙機で乾燥重量70g/mになるように湿紙ウェブを形成した。この湿紙ウェブを乾燥させる前に、アクリル系ラテックス(商品名:ボンコートSFC54、大日本インキ化学工業社製)を固形で5g/m付与し、熱風温度130℃のエアドライヤーで乾燥し、乾燥質量75g/mの比較濾材2を得た。
(比較例3)
上流側濾材層と下流側濾材層の繊維配合を表3に示した配合に変更した以外は、実施例2と同様の方法で、比較複合濾材3を得た。比較複合濾材3は、上流側濾材層と下流側濾材層の両方が熱融着性繊維を含まない。
(比較例4)
上流側濾材層と下流側濾材層の繊維配合を表3に示した配合に変更した以外は、実施例2と同様の方法で、比較複合濾材4を得た。比較複合濾材4は、下流側濾材層のガラス繊維の平均繊維径が3μmである。
Figure 0005096726
複合濾材1〜20、比較濾材1〜2、及び比較複合濾材3〜4の評価結果を表4に示す。
Figure 0005096726
本発明の複合濾材1は、中性能エアフィルタに使用できるレベルの二層構造の複合濾材である。単層構造である比較濾材1と比べて、粉塵保持量Aが多く、フィルタの長寿命化に適していることがわかる。複合濾材1は、熱融着性繊維を配合していることから、耐折強さが高く、フィルタ加工時や加工後の風圧でも破れ等の問題がなかった。
本発明の複合濾材2〜20は、高性能エアフィルタやHEPAフィルタに使用できるレベルの二層構造の複合濾材である。単層構造である比較濾材2と比べて、圧力損失が低く、粉塵保持量Bが多く、フィルタの長寿命化に適していることがわかる。また、下流層側濾材層に平均繊維径0.1〜1μmのマイクロガラス繊維を含有していない比較複合濾材4と比べて、本発明の複合濾材2〜20は、捕集効率が高かった。比較複合濾材4はHEPAフィルタとして使用できるレベルの捕集効率を達成していなかった。
本発明の複合濾材2〜20は、熱融着性繊維を配合していることから、耐折強さが高く、フィルタ加工時や加工後の風圧でも破れ等の問題がなかった。これに対し、比較複合濾材3は、二層構造であるが、上流側濾材層と下流側濾材層の両方に熱融着性繊維を含まないため、強度が足りず、フィルタユニットに加工することができなかった。
複合濾材5は、上流側濾材層の熱融着性繊維の含有量が5質量%未満である。また、複合濾材10は、下流側濾材層の熱融着性繊維の含有量が5質量%未満である。複合濾材5と複合濾材10は、フィルタ作製時のプリーツ加工において、膨れが発生している箇所があった。
複合濾材15及び16は、複合濾材2とは異なった熱融着性繊維を使用している。比較濾材2と比較して、粉塵保持量も多く、フィルタの長寿命化に適していることがわかる。また、耐折強さも1.0以上であり、プリーツ加工時や加工後の風圧でも破れ等の問題がなかった。
複合濾材4は、上流層側濾材層及び下流側濾材層の両方において、熱融着性繊維の含有量が5質量%であるため、複合濾材2及び複合濾材3よりも耐折強さが低くなったが、耐折強さは1.0以上を確保しており、プリーツ加工時や加工後の風圧でも破れ等の問題がなかった。
実施例21〜27
複合濾材1、2、3、4、15、16、20に、それぞれフッ素系撥水剤を固形で0.2g/mサイズプレス装置で付与して乾燥させ、複合濾材21〜27を得た。実施例21、23、27は参考例である。
実施例28
複合濾材2の上流側濾材層から、スプレー塗工方式で、フッ素系撥水剤を固形で0.2g/m付与して乾燥させ、複合濾材28を得た。
実施例29(参考例)
上流側濾材層繊維分散液の調製時に、アルキルケテンダイマー系サイズ剤(商品名:AD1602、星光PMC社製)を対繊維1質量%添加したこと以外は、実施例1と同様にして、複合濾材29を得た。
実施例30(参考例)
上流側濾材層繊維分散液の調製時に、アルキルケテンダイマー系サイズ剤(商品名:AD1602、星光PMC社製)を対繊維1質量%添加し、下流側濾材層繊維分散液の調製時に、アルキルケテンダイマー系サイズ剤(商品名:AD1602、星光PMC社製)を対繊維1質量%添加した以外は、実施例1と同様にして、複合濾材30を得た。
実施例31
上流側濾材層繊維分散液の調製時に、アルキルケテンダイマー系サイズ剤(商品名:AD1602、星光PMC社製)を対繊維1質量%添加したこと以外は、実施例2と同様にして、複合濾材31を得た。
実施例32
上流層用繊維分散液のアルキルケテンダイマー系サイズ剤(商品名:AD1602、星光PMC社製)の添加量を対繊維0.2質量%に変えた以外は、実施例31と同様にして、複合濾材32を得た。
実施例33
上流層用繊維分散液のアルキルケテンダイマー系サイズ剤(商品名:AD1602、星光PMC社製)の添加量を対繊維10質量%に変えた以外は、実施例31と同様にして、複合濾材33を得た。
(比較例5)
市販のガラス繊維製中性能エアフィルタ(単層濾材使用品、濾材面積:30m)を比較濾材5として用いた。
(比較例6)
ガラス繊維からなる濾材を使用した市販のガスタービン吸気用高性能エアフィルタ(濾材面積:30m)を比較濾材6として用いた。
複合濾材21〜33、比較濾材5〜6の評価結果を表5に示す。
Figure 0005096726
撥水性化合物を付与した本発明の複合濾材21〜33は、付与していない複合濾材と比較して、高い撥水性を示し、撥水性を要求される用途に適していることが確認された。複合濾材21、29、30と比較濾材5を比べると、捕集効率、粉塵保持容A量ともに、本発明の複合濾材21、29、30の方が高く、中性能フィルタとして十分な値であった。複合濾材22〜28、31〜33と比較濾材6を比べると、捕集効率、粉塵保持容量Bともに、本発明の複合濾材22〜28、31〜33の方が高く、高性能フィルタとして十分な値であった。
複合濾材1、2、3、4、15、16、20に対して、撥水性化合物を付与した複合濾材21〜27は、撥水性が向上した。複合濾材2に対してサイズプレスで撥水性化合物を付与した複合濾材22は、複合濾材2よりも捕集効率が若干低下しているが、複合濾材2に対してスプレー塗工方式で上流側濾材層に撥水性化合物を付与した複合濾材28は、複合濾材2と比較して、捕集効率が低下していないことが確認された。
複合濾材29は、複合濾材1の上流側濾材層に内添法で撥水性化合物を付与している。サイズプレスで撥水性化合物を付与した複合濾材21と比較すると、余分なプレス工程を経ていないために、圧力損失が低く、捕集効率が高かった。複合濾材30は、複合濾材1において、上流側濾材層と下流側濾材層の両方に撥水性化合物を内添法で付与しているため、非常に高い撥水性を示している。また、複合濾材1と比較すると、捕集効率はやや低いものの、比較例1の市販の中性能フィルタと比較すると、捕集効率、粉塵保持容量Aとも十分な値であり、高い撥水性を要求される用途には非常に適している。
複合濾材31は、複合濾材2の上流側濾材層に内添法で撥水性化合物を付与している。複合濾材32及び33も同様に複合濾材2の上流側濾材層に内添法で撥水性化合物を付与しているが、その量が複合濾材31と異なっている。複合濾材2にサイズプレスで撥水性化合物を付与した複合濾材22と比較すると、余分なプレス工程を経ていないために、複合濾材31〜33の圧力損失はわずかに低かった。複合濾材32は、複合濾材31と比較して、撥水性化合物の含有量が少ないため、撥水性が若干低下した。複合濾材33は、複合濾材31と比較して、撥水性化合物の含有量が多いため、撥水性が非常に高く、捕集効率の低下が確認された。
本発明の複合濾材は、半導体、液晶、バイオ、医薬、食品工業のクリーンルームやクリーンベンチ等用のエアフィルタ、空調用エアフィルタ、空気清浄機用エアフィルタ、ガスタービンや蒸気タービンの吸気側に使用される空気又は気体中の粒子捕集に適した産業用エアフィルタ等に用いることができる。また、液体濾過用フィルタとしても使用可能である。

Claims (3)

  1. 上流側濾材層と下流側濾材層の2層で構成された複合濾材であって、上流側濾材層と下流側濾材層の両層に示差走査熱量分析(DSC)で測定した融点が50〜170℃である熱融着性繊維を含み、少なくとも下流側濾材層が熱融着性繊維5〜80質量%、平均繊維径0.1〜1μmのマイクロガラス繊維10〜50質量%、非融着性合成繊維5〜80質量%からなり上流側濾材層が、熱融着性繊維5〜80質量%、平均繊維径0.3〜1μmのマイクロガラス繊維10〜50質量%、非熱融着性合成繊維5〜80質量%からなり、熱融着性繊維とマイクロガラス繊維または、該熱融着性繊維同士の少なくとも一部が熱融着されている複合濾材。
  2. JIS B9927に規定される撥水性が1kPa以上である請求項1記載の複合濾材。
  3. 少なくとも上流側濾材層が撥水性化合物を含有している請求項2記載の複合濾材。
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