JP2023149891A - 液体フィルタ用濾材及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明の課題は、濾過性能及びプリーツ加工性に優れ、圧力損失が上昇し難い液体フィルタ用濾材を提供することにある。【解決手段】平均繊維径が1.0μm超4.0μm以下の繊維で構成されるメルトブロー不織布と、繊維径が5μm以上の熱可塑性繊維からなる湿式不織布とが積層されてなり、積層されたメルトブロー不織布と湿式不織布とがエンボス融着点によって接着されてなり、層間剥離強度が40mJ以上であることを特徴とする液体フィルタ用濾材であり、積層されたメルトブロー不織布と湿式不織布とを熱エンボス加工又は超音波エンボス加工によって接着する。【選択図】なし

Description

本発明は、液体フィルタ用濾材及びその製造方法に関する。以下、「液体フィルタ用濾材」を「濾材」と略記する場合がある。
液体フィルタ用濾材は、主にプリーツ加工を施されて濾材の表面積を増大させてから所定の形状に成形して液体フィルタが作製され、他の部品と組み合わせて濾過機にセットして使用される。
濾材の製法としては、メルトブロー法、スパンボンド法、湿式抄紙法、エレクトロスピニング法、二軸延伸法等が挙げられ、それぞれの特徴を生かした用途に使用されている。液体フィルタ用濾材としては、メルトブロー法で作製した濾材が好適に使用されている。しかし、メルトブロー法で作製した濾材は、非常に低密度であり、表面に繊維の毛羽立ちがあり、擦れ等により繊維の離脱が起こり易い。また、柔軟で剛直性が低いため、プリーツ加工性も低い。メルトブロー濾材を加熱したロールにて加圧処理することにより、毛羽立ち、繊維の離脱等の問題は解決されるが、濾材密度が高まり、空隙が小さくなることから、通液量の低下や濾過寿命の低下を招くという問題があった。
そのため、柔軟で剛直性が低いメルトブロー法で作製した濾材は、スパンボンド法で作製した剛直な基材と積層して用いられている(例えば、特許文献1参照)。しかし、スパンボンド法で作製した基材は地合いが悪いために、高い水圧や油圧が濾材に加わった際に、メルトブロー濾材がスパンボンド基材の空隙に食い込み、濾過性能を低下させる問題があった。
また、メルトブロー濾材を主濾過不織布とし、繊維径が4μm以下の極細繊維と、繊維径が8μm以上、20μm未満の接着性繊維とを含んだ湿式抄紙法で作製した不織布(湿式不織布)を補助濾過不織布として、主濾過不織布と補助濾過不織布とが隣接して積層された状態で、多孔筒の周囲に配置されている筒状フィルタが、濾過寿命を長くすることや加工性良く製造できることが開示されている(例えば、特許文献2参照)。しかし、補助濾過の機能を持たせるために、補助濾過不織布が剛直度の低い繊維径が4μm以下の極細繊維を含んでいることから、プリーツ加工した場合に、折り部をシャープに加工できない問題や形状維持が困難である問題があった。
また、平均繊維径が10~1000nmの極細繊維で構成された繊維層I(実施例1:メルトブローン法によるポリプロピレン極細繊維不織布)と平均繊維径が5~100μmの熱融着性複合繊維で構成された繊維層II(実施例1:繊維径が14μmのポリエチレンテレフタレート繊維と、繊維径が16μmの鞘/芯=共重合ポリエステル/ポリエチレンテレフタレートの鞘芯型熱融着性複合繊維との混繊比率=40/60(w/w)の混繊を使用した抄紙不織布)とを含む繊維積層体で、繊維層IIの熱融着性複合繊維の溶融によって、極細繊維と熱融着複合繊維との接触点が融着し、形成された融着点によって、繊維層Iと繊維層IIとが積層一体化されてなる繊維積層体が、極細の繊維径、高比表面積、微小孔径、高空隙率といった、極細繊維が持つ本来の特性の低下を最小限に抑えつつ、極細繊維で構成された繊維層Iの力学強度や剛性が低いという欠点を補うことが可能であることから、例えば、フィルタなどの製品への加工性を格段に向上させることができること、さらに、繊維積層体は、気体及び液体の透過性が高く、耐圧性及び耐久性に優れており、高性能かつ高寿命のフィルタ濾材として好適に使用することができることが開示されている(例えば、特許文献3参照)。特許文献3では、繊維へのダメージや不織布表面の空隙が潰れることを抑制するため、融着点において、熱融着性複合繊維が圧着扁平化しないように、積層一体化する方法としては、スルーエア加工や輻射熱による熱加工等の圧力の弱い熱処理が挙げられている。しかし、このような圧力の弱い熱処理では、熱融着性複合繊維の融点又は軟化温度が高い場合に、繊維層の接着性が不十分となりやすく、プリーツ加工した場合に層間剥離の問題が発生する場合があった。また特許文献3の繊維積層体は、繊維層Iが極細繊維で構成されているため、圧力損失が上昇しやすいという問題があった。
特開2010-19151号公報 特開2001-321620号公報 国際公開第2015/046564号パンフレット
本発明の課題は、濾過性能及びプリーツ加工性に優れ、圧力損失が上昇し難い液体フィルタ用濾材を提供することにある。
上記課題は、下記発明によって解決された。
(1)平均繊維径が1.0μm超4.0μm以下の繊維で構成されるメルトブロー不織布と、繊維径が5μm以上の熱可塑性繊維からなる湿式不織布とが積層されてなり、積層されたメルトブロー不織布と湿式不織布とがエンボス融着点によって接着されてなり、層間剥離強度が40mJ以上であることを特徴とする液体フィルタ用濾材。
(2)熱可塑性繊維がバインダー繊維を含み、該バインダー繊維の含有量が、湿式不織布に含まれる全繊維に対して、20~80質量%である上記(1)記載の液体フィルタ用濾材。
(3)バインダー繊維が芯鞘型複合繊維である上記(2)記載の液体フィルタ用濾材。
(4)メルトブロー不織布の原料樹脂がポリプロピレン又はポリブチレンテレフタレートである上記(1)~(3)の何れかに記載の液体フィルタ用濾材。
(5)平均繊維径が1.0μm超4.0μm以下の繊維で構成されるメルトブロー不織布と、繊維径が5μm以上の熱可塑性繊維からなる湿式不織布とを積層し、積層されたメルトブロー不織布と湿式不織布とを熱エンボス加工又は超音波エンボス加工によって接着する液体フィルタ用濾材の製造方法。
本発明によれば、濾過性能及びプリーツ加工性に優れ、圧力損失が上昇し難い液体フィルタ用濾材が得られる。
液体フィルタ用濾材の捕集効率を高める方法としては、細い繊維で構成されるメルトブロー不織布を用いることが有効である。しかし、繊維が細すぎると、液体フィルタ用濾材の圧力損失が上昇する。本発明の液体フィルタ用濾材は、主濾過不織布であるメルトブロー不織布の平均繊維径が1.0μm超4.0μm以下であることによって、優れた濾過性能を有し、圧力損失の上昇を抑制することができる液体フィルタ用濾材が得られる。
濾過寿命を高めるためには、メルトブロー不織布が低密度であるという特徴を維持することが重要となる。本発明の液体フィルタ用濾材では、繊維径が5μm以上の熱可塑性繊維からなる湿式不織布を補助濾過不織布とすることによって、剛直度が高く、プリーツ加工性に優れた液体フィルタ用濾材が得られる。
本発明の液体フィルタ用濾材は、積層されたメルトブロー不織布と湿式不織布とがエンボス融着点によって接着されてなる。エンボス融着点では、メルトブロー不織布を構成する繊維と湿式不織布の熱可塑性繊維とが限られた面積において強力に熱接着する。そして、液体フィルタ用濾材の層間剥離強度が40mJ以上であることによって、通液性を損なうことなく、また、プリーツ加工の折り加工において、メルトブロー不織布と湿式不織布とが層間剥離しにくい液体フィルタ用濾材が得られる。エンボス融着点は、熱エンボス加工又は超音波エンボス加工によって形成される。
メルトブロー不織布の原料樹脂は、例えばポリエチレン(PE)の他、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアミド(PA)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリフッ化ビリニデン(PVdF)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリウレタン(PU)、ポリ乳酸(PLA)等が挙げられる。湿式不織布との接着性が向上し、プリーツ加工性が向上することから、これらの中でも、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレートが好ましい。また、ポリブチレンテレフタレートは、耐熱性が求められる用途にも適している。
メルトブロー不織布を構成する繊維の平均繊維径は、1.0μm超4.0μm以下であり、好ましくは1.0μm超3.0μm以下である。該平均繊維径が1.0μm以下の場合、圧力損失の上昇を抑制できずに、通液抵抗が高くなり、液体フィルタの寿命が短くなる。該平均繊維径が4.0μmを超えた場合、濾過性能が不足する。
該平均繊維径は、メルトブロー不織布の任意な5箇所を電子顕微鏡で撮影し、得られた5枚の写真について、1枚の写真当たり20本の繊維の直径を測定し、合計100本の繊維径を平均することによって求めた。
メルトブロー不織布の坪量は、好ましくは5~100g/mであり、より好ましくは10~70g/mである。該坪量が5g/m未満の場合、濾過性能が不足する場合がある。該坪量が100g/mを超えた場合、圧力損失の上昇を抑制できずに、通液抵抗が高くなり、液体フィルタの寿命が短くなる場合がある。
メルトブロー不織布の原料樹脂には、本発明の効果を損なわない範囲で、結晶核剤や艶消し剤、顔料、防カビ剤、抗菌剤、難燃剤、親水剤、光安定剤、酸化防止剤等を添加してもよい。
メルトブロー不織布は、前記ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレート等の原料樹脂を用いて、公知のメルトブロー不織布製法によって得られる。具体的には、原料樹脂を溶融し、紡糸ノズルから吐出すると共に、高温高圧ガスにさらされることにより、原料樹脂が細繊維化され、細繊維化された極細繊維を金網コンベア、多孔ドラムなどのコレクターに捕集して、堆積することによって、メルトブロー不織布を製造することができる。
平均繊維径が1.0μm超4.0μm以下の繊維で構成されるメルトブロー不織布を製造するためには、例えば、紡糸ノズル孔径は、0.15~0.4mmであることが好ましく、紡糸温度は、200~340℃であることが好ましく、高温高圧ガスの温度は、紡糸温度以上、(紡糸温度+60℃)以下であることが好ましく、1m幅当たりの高温高圧ガスの速度(吐出風量)は2~30m/分/mであることが好ましく、ノズル紡糸口金の表面から金網コンベアまでの距離(DCD)は3~55cmであることが好ましく、金網コンベア、多孔ドラムなどのコレクターのメッシュ幅は5~200メッシュであることが好ましい。
湿式不織布は、抄紙機を用いて主に繊維長が3~20mmの繊維を多量の水に均一に分散させた抄紙用スラリーから抄紙網上で脱水することによって製造される。そのため、繊維が均一に分散されていることから、湿式不織布の地合いは、メルトブロー不織布、スパンボンド不織布等の乾式不織布と比較して良好である。メルトブロー不織布と湿式不織布とが積層されてなる液体フィルタ用濾材では、液体フィルタ用濾材に高い水圧や油圧が加わった際に、湿式不織布に押し付けられたメルトブロー不織布が均一な地合いの湿式不織布で支えられることから、メルトブロー不織布が湿式不織布の空隙に食い込むことが抑制され、食い込みによる濾過性能の低下を抑制できる。また、湿式不織布が、繊維径が5μm以上の熱可塑性繊維からなることにより、液体フィルタ用濾材の剛直度が高まり、優れたプリーツ加工性が得られる。
剛直度を高める方法としては、湿式不織布の坪量を高くする方法がある。しかし、坪量を高くすることにより、通液性の低下を招くと共に、湿式不織布が厚くなることから、フィルタユニットに組み込める濾材面積が少なくなるという問題が発生する。そのため、本発明の湿式不織布には、坪量に係わらず、剛直度が高いことが求められる。湿式不織布の剛直度を高めるためには、湿式不織布を構成する熱可塑性繊維の選定と組み合わせが重要となる。
湿式不織布を構成する熱可塑性繊維が太い場合、湿式不織布の剛直度を高めることができる。本発明では、湿式不織布を構成する熱可塑性繊維の繊維径は5μm以上であり、より好ましくは7μm以上であり、さらに好ましくは10μm以上である。熱可塑性繊維の繊維径が5μm未満の場合、通液性が低下し、湿式不織布の剛直度が不足し、プリーツ加工性が低下する。
湿式不織布を構成する熱可塑性繊維の繊維径は、湿式不織布製造前に、湿式不織布を構成する熱可塑性繊維(材質、繊度、繊維長等がほぼ同一の繊維ごと、すなわち、購入単位ごと)に、電子顕微鏡で1000倍の写真撮影を行い、3枚の写真の中でピントが合っている繊維30本の繊維径を計測して平均することによって求めた。
「繊維径が5μm以上の熱可塑性繊維からなる湿式不織布」とは、湿式不織布を構成するすべての熱可塑性繊維の繊維径が5μm以上であることを言う。湿式不織布を構成する熱可塑性繊維としては、主体繊維及びバインダー繊維が挙げられる。
主体繊維とは、熱可塑性繊維であるが、湿式不織布製造時の加熱処理(例えば、乾燥処理、熱カレンダー処理等)によって、溶融又は軟化し難い性質を有し、加熱処理後でも繊維形状を保つ繊維である。
主体繊維としては、ポリエステル系、ポリオレフィン系、ポリアミド系、ポリアクリル系、ビニロン系、ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリフェニレンサルファイド、ベンゾエート、ポリクラール(polychlal)などの熱可塑性繊維が挙げられる。特に、メルトブロー不織布との接着性を高めるためには、ポリオレフィン系繊維又はポリエステル系繊維が好ましい。上記の熱可塑性繊維の他に、天然繊維としては、皮膜の少ない麻パルプ、コットンリンター、リント、針葉樹パルプ、広葉樹パルプなどの木材パルプや藁パルプ、竹パルプ、ケナフパルプなどの木本類、草本類;再生繊維としては、リヨセル繊維、レーヨン、キュプラ;半合成繊維としては、アセテート、トリアセテート、プロミックス;無機繊維としては、アルミナ繊維、アルミナ・シリカ繊維、ロックウール、ガラス繊維、マイクロガラス繊維、ジルコニア繊維、チタン酸カリウム繊維、アルミナウィスカ、ホウ酸アルミウィスカなどの繊維を含んでいても良い。
主体繊維の繊維径は、5μm以上であり、より好ましくは5~30μmであり、さらに好ましくは7~25μmである。主体繊維の繊維径が5μm未満の場合、湿式不織布の剛直度が低く、プリーツ加工性が得られず、また、圧力損失の上昇を抑制できずに、通液抵抗が高くなる。一方、主体繊維の繊維径が30μmを超えると、湿式不織布の空隙が過大となり、濾材に高い水圧等が加わった際に、湿式不織布の空隙にメルトブロー不織布が食い込み、濾過性能が低下する場合がある。
主体繊維の繊維長は、好ましくは3~20mmであり、より好ましくは3~15mmである。主体繊維の繊維長が3mm未満の場合、主体繊維が抄紙網から脱落する場合があり、主体繊維の繊維長が20mmを超えた場合は、地合いが悪化する場合がある。
主体繊維の含有量は、湿式不織布を構成する全繊維に対して、20~80質量%であることが好ましく、30~70質量%であることがより好ましく、40~60質量%であることがさらに好ましい。主体繊維の含有量が20質量%未満では、湿式不織布の空隙が不足し、圧力損失の上昇を抑制し難くなり、通液抵抗が高まる場合がある。主体繊維の含有量が80質量%を超えると、バインダー繊維の含有量が相対的に低くなり、メルトブロー不織布と湿式不織布との接着性が低下し、層間剥離強度が低下する場合がある。
湿式不織布の引張強度及び剛直度を高めるために、湿式不織布の熱可塑性繊維がバインダー繊維を含むことが好ましい。バインダー繊維同士の交点又はバインダー繊維と主体繊維との交点を接着することによって、湿式不織布の引張強度及び剛直度を高めることができる。本発明において、バインダー繊維とは、湿式不織布製造時の加熱処理(例えば、乾燥処理、熱カレンダー処理等)によって、溶融又は軟化する性質を持つ繊維である。
メルトブロー不織布と湿式不織布との接着性を向上させるためにも、湿式不織布がバインダー繊維を含むことが好ましい。熱エンボス加工又は超音波エンボス加工によって、バインダー繊維は溶融又は軟化し、メルトブロー不織布を構成する繊維と強固に接着するため、液体フィルタ用濾材の層間剥離強度が向上する。
バインダー繊維としては、芯鞘(コアシェル)型、並列(サイドバイサイド)型、放射状分割型などの複合繊維;単繊維が挙げられる。複合繊維は、皮膜を形成しにくいので、湿式不織布の空間を保持したまま、強度を向上させることができる。芯鞘型複合繊維の組み合わせ例としては、ポリプロピレン(芯)とポリエチレン(鞘)の組み合わせ、ポリプロピレン(芯)とエチレンビニルアルコール(鞘)の組み合わせ、ポリプロピレン(芯)と酢酸ビニルアルコール(鞘)の組み合わせ、ポリエステル(芯)とポリエチレン(鞘)の組み合わせ、高融点ポリエステル(芯)と低融点ポリエステル(鞘)の組み合わせ等が挙げられる。単繊維の例としては、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、未延伸ポリエステル繊維等が挙げられる。不織布の引張強度及び剛直度を高めるという点と、層間剥離強度を向上させる点から、バインダー繊維は、芯鞘型複合繊維が好ましく、特に、高融点ポリエステル(芯)と低融点ポリエステル(鞘)の組み合わせのポリエステル系芯鞘型複合繊維を使用することが好ましい。また、ポリエチレン繊維等の低融点樹脂のみで構成される全融タイプの単繊維や、熱水可溶性ポリビニルアルコール系繊維のような熱水可溶性バインダー繊維は、加熱工程で皮膜を形成し易いが、特性を阻害しない範囲で使用することができる。
バインダー繊維の繊維長は、好ましくは3~12mmであり、より好ましくは3~10mmである。バインダー繊維の繊維長が3mm未満の場合、抄紙工程で抄紙網より脱落しやすくなり、他の繊維との接着点が減少し、剛直度が低下する場合がある。また、バインダー繊維の繊維長が12mmを超えると、水分散性が損なわれ、地合いが不均一となり、液体フィルタ用濾材として用いた場合に、高い水圧等が加わった際に、メルトブロー不織布が地合いの悪い部分に食い込み、濾過性能が低下する場合がある。
バインダー繊維の繊維径は、5μm以上であり、より好ましくは5~20μmであり、さらに好ましくは7~18μmである。バインダー繊維の繊維径が5μm未満では、圧力損失の上昇を抑制できずに、通液抵抗が高まる。一方、バインダー繊維の繊維径が20μmを超えると、他の繊維との接着点が少なくなり、剛直度が低下する場合がある。
バインダー繊維の含有量は、湿式不織布に含まれる全繊維に対して、20~80質量%であることが好ましく、30~70質量%であることがより好ましく、40~60質量%であることが更に好ましい。バインダー繊維の含有量が20質量%未満では、繊維間の接着が不十分となりやすく、剛直度が不十分となる場合や、メルトブロー不織布を構成する繊維との接着が不十分となりやすく、層間剥離強度が不十分となるおそれがある。バインダー繊維の含有量が80質量%を超えると、圧力損失の上昇を抑制し難くなり、通液抵抗が高くなり、実用上問題が発生する場合がある。
また、湿式不織布に配合する繊維の断面形状は、円形(真円、楕円等)以外にT型、Y型、三角等の異形断面を有する繊維も含有できる。
本発明の湿式不織布の坪量は、特に限定しないが、5~100g/mであることが好ましく、10~70g/mがより好ましい。該坪量が5g/m未満では、十分な剛直度が得られない場合がある。一方、該坪量が100g/mを超えると、圧力損失の上昇を抑制し難くなり、通液抵抗が高まり、液体フィルタの寿命が低下する場合がある。
本発明の湿式不織布は、湿式法(抄紙法)で製造された不織布である。湿式法では、長網、円網、傾斜ワイヤー等の抄紙網が単独で設置されている抄紙機、これらの抄紙網の中から選択される同種又は異種の2機以上がオンラインで設置されている複合式(コンビネーション)抄紙機などにより、湿式不織布を製造することができる。抄紙網で製造された湿紙(ウェブ)は、ドライヤーで乾燥される。乾燥させた後、場合によって、熱可塑性樹脂を含有させ、ドライヤーで乾燥させても良い。ドライヤーとしては、エアドライヤー、ヤンキードライヤー、シリンダードライヤー、サクションドラム式ドライヤー、赤外方式ドライヤー等を使用することができる。
また、湿式不織布に熱可塑性樹脂を含有させることによって、湿式不織布の剛直度を向上させることができる。熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル系、酢酸ビニル系、エポキシ系、合成ゴム系、ウレタン系、ポリエステル系、塩化ビニリデン系、ポリビニルアルコール系、澱粉、フェノール樹脂などが挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、単独で使用しても良いし、2種類以上で使用することもできる。熱可塑性樹脂は必須成分ではなく、繊維のみで十分な剛直度が得られる場合は、熱可塑性樹脂は不要である。
湿式不織布に熱可塑性樹脂を含有させる場合に、その含有量は、湿式不織布に対して、0.01~10質量%であることが好ましい。熱可塑性樹脂の含有量が10質量%を超えると、湿式不織布の通液抵抗が大きくなり過ぎる場合がある。また、熱可塑性樹脂の含有量が0.01質量%未満では、熱可塑性樹脂を含有しない湿式不織布と比較して、剛直度が変わらない場合がある。
熱可塑性樹脂を湿式不織布に含有させる方法としては、特に限定はしないが、サイズプレス方式、タブサイズプレス方式、スプレー方式、内添方式、グラビア塗工方式などの方法が挙げられる。
本発明においては、積層されたメルトブロー不織布と湿式不織布とがエンボス融着点によって接着されていて、メルトブロー不織布を構成する繊維と湿式不織布の熱可塑性繊維とが部分的に融着されていることが重要である。本発明においては、メルトブロー不織布と湿式不織布を重ね合わせて積層し、加熱されたエンボスロール間あるいは加熱されたエンボスロールとフラットロールの間に挟み込んで加圧し、エンボスロールの凸部によって押さえられた部分が溶融し接着される加熱エンボス加工、又は、超音波をあてた状態でエンボスロールにより加圧する超音波エンボス加工が適用される。エンボス率(エンボスロールの凸部によって押さえられて形成されたエンボス融着点の面積が全面積に占める割合)は3~50%が好ましく、より好ましくは5~20%である。エンボス率が3%より少ない場合には、層間剥離強度が不十分となるおそれがある。また、エンボス率が50%よりも多い場合には、デッドスペースが大きくなり過ぎて、通液時の圧力損失の増大を招くおそれがある。エンボス融着点の形状は特に限定されず、矩形、丸型、楕円型、ライン状等何れも適用可能であり、配列も特に限定されるものではないが、接着状態の均一性を保つため、一つのエンボス融着点に最も近接したエンボス融着点との距離は30mm以下であることが好ましい。
本発明においては、液体フィルタ用濾材の層間剥離強度が40mJ以上であり、70mJ以上であることがより好ましい。該層間剥離強度が40mJ未満では、プリーツ加工性が低下する。なお、該層間剥離強度の上限値には特に制限はないが、通液時の圧力損失が大きくなり過ぎないエンボス率とするためには、200mJ以下であることが好ましく、150mJ以下であることがより好ましい。
ここで、層間剥離強度とは、JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法No.18-2:2000「紙及び板紙-内部結合強さ試験方法-第2部:インターナルボンドテスタ法」に準拠し、紙及び板紙の内部結合強さを評価する試験機にて測定された数値である。
層間剥離強度の測定に用いる装置として、例えば、熊谷理機工業社製インターナルボンドテスタを使用することができる。試験方法は、液体フィルタ用濾材の縦方向及び横方向について25.4mm角の試験片の両面に粘着テープを貼った試料を、装置の試料設置面に貼り、装置に貼りつけた試料の反対側にL字金具を貼り付け、L字金具をハンマーで衝撃を与え、試料とL字金具が共に剥離した際の強度を計測する。ここで、液体フィルタ用濾材の縦方向とは、メルトブロー不織布/湿式不織布接着時の流れ方向を意味し、液体フィルタ用濾材の横方向とは、メルトブロー不織布/湿式不織布接着時の幅方向を意味する。内部結合強さの測定は、縦方向及び横方向について各10点の測定を行い、それらの平均値を求め、層間剥離強度とした。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は本実施例に限定されるものではない。なお、実施例中における部や百分率は断りのない限り、すべて質量によるものである。
<メルトブロー不織布1>
メルトブロー不織布製造装置を用い、紡糸ノズル孔径0.25mm、ピッチ0.8mmで配置されたメルトブロー用のノズルダイを温度280℃に加熱し、ポリブチレンテレフタレート樹脂(メルトフローレート(MFR):270g/10分、測定樹脂温度:275℃)をダイに供給し、ノズルからポリブチレンテレフタレート繊維を吐出し、ノズルの両側から吹き出す加熱エアー(300℃、8m/分/m)と伴に吐出し、DCD(紡糸口金の表面から金網コンベアまでの距離):110mmで移動する金網コンベアに吹き付けて、坪量:20g/m、平均繊維径:2.3μmのメルトブロー不織布1を得た。
<メルトブロー不織布2>
メルトブロー不織布製造装置を用い、紡糸ノズル孔径0.2mm、ピッチ0.8mmで配置されたメルトブロー用のノズルダイを温度240℃に加熱し、ポリプロピレン樹脂(MFR:1200g/10分、測定樹脂温度:230℃)をダイに供給し、ノズルからポリプロピレン繊維を吐出し、ノズルの両側から吹き出す加熱エアー(260℃、8m/分/m)と伴に吐出し、DCD:150mmで移動する金網コンベアに吹き付けて、坪量:20g/m、平均繊維径:2.2μmのメルトブロー不織布2を得た。
<メルトブロー不織布3>
メルトブロー不織布製造装置を用い、紡糸ノズル孔径0.25mm、ピッチ0.8mmで配置されたメルトブロー用のノズルダイを温度300℃に加熱し、予備乾燥したポリエチレンテレフタレート樹脂(MFR:270g/10分、測定樹脂温度:275℃)をダイに供給し、ノズルからポリエチレンテレフタレート繊維を吐出し、ノズルの両側から吹き出す加熱エアー(300℃、8m/分/m)と伴に吐出し、DCD:110mmで移動する金網コンベアに吹き付けて、坪量:20g/m、平均繊維径:2.5μmのメルトブロー不織布3を得た。
<メルトフロー不織布4>
メルトブロー不織布製造装置を用い、紡糸ノズル孔径0.40mm、ピッチ0.8mmで配置されたメルトブロー用のノズルダイを温度340℃に加熱し、予備乾燥したポリフェニレンサルファイド樹脂(MFR:1.6g/10分、測定樹脂温度:315℃)をダイに供給し、ノズルからポリフェニレンサルファイド繊維を吐出し、ノズルの両側から吹き出す加熱エアー(340℃、8m/分/m)と伴に吐出し、DCD:110mmで移動する金網コンベアに吹き付けて、坪量:20g/m、平均繊維径:3.0μmのメルトブロー不織布4を得た。
<メルトブロー不織布5>
メルトブロー不織布製造装置を用い、紡糸ノズル孔径0.2mm、ピッチ0.8mmで配置されたメルトブロー用のノズルダイを温度250℃に加熱し、ポリプロピレン樹脂(MFR:1500g/10分、測定樹脂温度:230℃)をダイに供給し、ノズルからポリプロピレン繊維を吐出し、ノズルの両側から吹き出す加熱エアー(260℃、10m/分/m)と伴に吐出し、DCD:180mmで移動する金網コンベアに吹き付けて、坪量:20g/m、平均繊維径:0.9μmのメルトブロー不織布5を得た。
<主体繊維1>
繊維径5.2μm、繊維長5mmの延伸ポリエステル繊維を主体繊維1とした。
<主体繊維2>
繊維径7.4μm、繊維長5mmの延伸ポリエステル繊維を主体繊維2とした。
<主体繊維3>
繊維径14.3μm、繊維長5mmのビニロン繊維を主体繊維3とした。
<主体繊維4>
繊維径24.7μm、繊維長10mmの延伸ポリエステル繊維を主体繊維4とした。
<主体繊維5>
海島型繊維として、ポリ-L-乳酸からなる海成分中に、ポリプロピレンからなる島成分が25個存在する、複合紡糸法により製造した繊維(繊度:1.65dtex、繊維長:3mm)を用意した。次いで、この海島型繊維を、温度80℃、10%の水酸化ナトリウム水溶液中に30分間浸漬し、海島型繊維の海成分であるポリ-L-乳酸を抽出除去して、ポリプロピレン繊維(繊維径:1.8μm、繊維長3mm)を主体繊維5とした。
<主体繊維6>
繊維径10.4μm、繊維長10mmのポリフェニレンサルファイド繊維を主体繊維6とした。
<バインダー繊維1>
繊維径14.3μm、繊維長5mmの、芯成分がポリエステル(融点253℃)、鞘部がポリエチレンテレフタレート-イソフタレート共重合体(軟化点75℃)からなる芯鞘型複合繊維をバインダー繊維1とした。
<バインダー繊維2>
繊維径11.8μm、繊維長10mmの芯成分がポリプロピレン(融点:158℃)からなり、鞘成分(接着成分)が高密度ポリエチレン(融点:131℃)からなる芯鞘型複合繊維をバインダー繊維2とした。
<バインダー繊維3>
繊維径10.1μm、繊維長、5mmの未延伸ポリエステル繊維(融点:260℃)をバインダー繊維3とした。
<バインダー繊維4>
繊維径14.7μm、繊維長、10mmの未延伸ポリフェニレンサルファイド繊維(融点:285℃)をバインダー繊維4とした。
(湿式不織布の作製)
2mの分散タンクに水を投入後、表1に示す比率で主体繊維とバインダー繊維を投入し、分散濃度0.2質量%で5分間分散して、アジテーターによる撹拌のもと、均一な抄紙用繊維スラリー(0.2%濃度)を調製した。円網抄紙機を用いてスラリーを多量の水で希釈と分散を行い、円網ワイヤー上で乾燥質量20g/mになるようにウェブを形成して、表面温度130℃のシリンダードライヤーでタッチロールを400N/cmの圧力で加圧しながら乾燥して湿式不織布1~10を得た。
(液体フィルタ用濾材の作製)
メルトブロー不織布(MB)と湿式不織布(WL)を、表2に示す組み合わせで、湿式不織布/メルトブロー不織布/湿式不織布になるように3層重ね合わせた後に、エンボス率10%の千鳥配列型エンボスロールを用い、熱エンボス加工により部分的に融着してエンボス融着点によって湿式不織布とメルトブロー不織布とを接着し、実施例1~3の液体フィルタ用濾材を作製した。
メルトブロー不織布(MB)と湿式不織布(WL)を、表2に示す組み合わせで、湿式不織布/メルトブロー不織布/湿式不織布になるように3層重ね合わせた後に、エンボス率7%の千鳥配列型エンボスロールを用い、超音波エンボス加工により部分的に融着してエンボス融着点によって湿式不織布とメルトブロー不織布とを接着し、実施例4~10及び比較例1~3の液体フィルタ用濾材を作製した。
メルトブロー不織布(MB)と湿式不織布(WL)を、表2に示す組み合わせで、湿式不織布/メルトブロー不織布/湿式不織布になるように3層重ね合わせた後に、143℃のスルーエア熱処理機で熱接着加工して一体化させ、比較例4の液体フィルタ用濾材を作製した。
<評価>
実施例及び比較例で得られた液体フィルタ用濾材について、下記の測定(坪量、厚さ、層間剥離強度)及び評価(圧力損失、捕集効率、液体濾過効率、液体濾過速度、プリーツ加工性)を行い、結果を表2に示した。
[坪量](単位:g/m
坪量は、JIS P8124:2011(紙及び板紙-坪量測定法)に規定された方法に基づき測定した。
[厚さ](単位:μm)
厚さは、JIS P8118:2014(紙及び板紙-厚さ試験方法)に規定された方法に基づき測定した。
[層間剥離強度](単位:mJ)
JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法No.18-2:2000「紙及び板紙-内部結合強さ試験方法-第2部:インターナルボンドテスタ法」に準拠し、熊谷理機工業社製インターナルボンドテスタを用い、液体フィルタ用濾材の縦方向(MD)及び横方向(CD)の内部結合強さの測定を行った。サンプルは、25.4mm角の試験片の両面に粘着テープを貼った試料を、装置の試料設置面に貼り、装置に貼りつけた試料の反対側にL字金具を貼り付け、L字金具をハンマーで衝撃を与え、試料とL字金具が共に剥離した際の強度を計測する。内部結合強さの測定は、縦方向及び横方向について各10点の測定を行い、それらの平均値を求め、層間剥離強度とした。
[圧力損失](単位:Pa)
JIS B9908:2011 形式1に準じて、面風速5.3cm/秒の条件で測定した。圧力損失は低いほど好ましく、50Pa未満であれば「◎」、50Pa以上100Pa未満であれば「○」、100Pa以上200Pa未満であれば「△」、200Pa以上を「×」とした。
[捕集効率](単位:%)
JIS B9908:2011 形式1に準じて、面風速5.3cm/秒の条件で測定した。測定対象粒子は、大気塵を使用して、粒子径0.3~0.5μmの粒子についての捕集効率をパーティクルカウンター(商品名「KC-11」、リオン社製)を使用して測定し、下記数式1より、捕集効率を算出した。
(数式1)
η1=(1-C2/C1)×100
η1:捕集効率(%)
C1:濾材上流側の粒子濃度
C2:濾材下流側の粒子濃度
捕集効率は高いほど好ましく、50%以上であれば「○」、30%以上50%未満であれば「△」、30%未満であれば「×」とした。
液体濾過効率及び液体濾過速度の測定にはJIS第8種粉体を0.05%濃度になるように純水に希釈し分散したものを試験用液体として用い、以下の方法で測定した。
[液体濾過効率](単位:%)
液体濾過効率は、液体フィルタ用濾材を純水で湿潤した後、減圧濾過装置を用いて、濾過面積14cmの濾過用ホルダーに液体フィルタ用濾材をセットし、試験用液体100mlを濾過用ホルダーに注いだ後に試験用液体を差圧△P=200mmHgで減圧濾過し、試験用液体を完全に濾過した後、同じホルダーに試験用液体100ml注ぎ、同条件で減圧濾過する。合計10回の減圧濾過を繰り返し、10回目の濾過前後の試験用液体の3~10μm粒子数をリオン社製の液中微粒子計数器(KL-01)で測定し、下記数式2より、液体濾過効率を算出した。
(数式2)
η2=(1-C2/C1)×100
η2:液体濾過効率(%)
C1:濾材上流側の粒子濃度
C2:濾材下流側の粒子濃度
液体濾過効率は高いほど好ましく、70%以上であれば「◎」、50%以上70%未満であれば「○」、30%以上50%未満であれば「△」、30%未満であれば「×」とした。
[液体濾過速度](単位:cc/cm/分)
液体濾過速度:上記液体濾過効率試験の10回目の濾過時間から液体濾過速度を得た。液体濾過速度は、値が大きいほど、濾材の目詰まりが少なく、濾過に要する時間が短いことを意味し、良好な濾材となる。
液体濾過速度は高いほど好ましく、15cc/cm/分以上であれば「◎」、10cc/cm/分以上15cc/cm/分未満であれば「○」、5cc/cm/分以上10cc/cm/分未満であれば「△」、5cc/cm/分未満であれば「×」とした。
[プリーツ加工性1]
液体フィルタ用濾材を抄紙工程の流れ方向(縦方向、MD)30cm、横方向(CD)20cmに裁断し、流れ方向を横切るように5cm毎に山折、谷折を繰り返し、畳んだ濾材の上に、直径5cm、長さ30cm、重さ3kgの円柱状金属ロールをゆっくり転がして折り目をつけ、蛇腹状とする。折り目が明確で歪みがなく、折り目を押しても変形しなければ良好「○」とし、若干変形したが使用上問題ないレベルのものを「△」とし、変形や破損等のし、使用上問題があり不可を「×」とした。また、非常に硬く、「○」よりも優れているものを「◎」とした。
[プリーツ加工性2]
[プリーツ加工性1]と同様の方法で蛇腹状とした液体フィルタ用濾材を100個作製し、山折り部と谷折り部の状態を確認した。作製した液体フィルタ用濾材100個中、折り部においてメルトブロー不織布と湿式不織布との層間剥離が発生した液体フィルタ用濾材が0個だったものを良好「○」、層間剥離が発生した液体フィルタ用濾材が1個以上で10個以下だったものを使用上問題がないレベル「△」、層間剥離が発生した液体フィルタ用濾材が10個より多いものを使用上問題があり不可「×」とした。
実施例及び比較例の液体フィルタ用濾材は、メルトブロー不織布と湿式不織布とを積層してなる液体フィルタ用濾材である。比較例1及び2と実施例1~10との比較から、繊維径1.8μm(繊維径5μm未満)の主体繊維(熱可塑性繊維)を含む湿式不織布を用いた比較例1の液体フィルタ用濾材は、繊維径5μm以上の熱可塑性繊維からなる湿式不織布を用いた実施例1~10の液体フィルタ用濾材と比較して、圧力損失が高い場合が多く、剛直度が不足しているためにプリーツ加工性が悪く使用不可レベルであり、液体濾過速度も小さかった。繊維径1.8μm(繊維径5μm未満)の主体繊維(熱可塑性繊維)を含む湿式不織布を用いた比較例2の液体フィルタ用濾材は、繊維径5μm以上の繊維からなる湿式不織布を用いた実施例1~10の液体フィルタ用濾材と比較して、剛直度が不足しているためにプリーツ加工性が悪く、使用不可レベルであった。
比較例3の液体フィルタ用濾材は、メルトブロー不織布を構成する繊維の平均繊維径が1.0μm未満であるため、圧力損失と液体濾過速度の評価が劣っていた。
メルトブロー不織布と湿式不織とをスルーエア熱処理機により熱接着させて製造された比較例4の液体フィルタ用濾材は、層間剥離強度が40mJ未満であることから、プリーツ加工において、層間剥離の発生が多く、捕集効率と液体濾過効率の評価が劣っていた。
湿式不織布のバインダー繊維の含有量が、湿式不織布に含まれる全繊維に対して、20質量%以上である実施例1の液体フィルタ用濾材は、湿式不織布のバインダー繊維の含有量が、湿式不織布に含まれる全繊維に対して、20質量%未満である実施例2の液体フィルタ用濾材よりも、層間剥離強度が強く、プリーツ加工性に優れていた。一方、湿式不織布のバインダー繊維の含有量が、湿式不織布に含まれる全繊維に対して、80質量%以下である実施例4の液体フィルタ用濾材は、湿式不織布のバインダー繊維の含有量が、湿式不織布に含まれる全繊維に対して、80質量%超である実施例5の液体フィルタ用濾材よりも、圧力損失や液体濾過速度の評価が優れていた。
実施例6と7との比較から、湿式不織布のバインダー繊維が芯鞘型複合繊維である実施例6の液体フィルタ用濾材は、湿式不織布のバインダー繊維が未延伸ポリエステル繊維である実施例7の液体フィルタ用濾材と比較して、層間剥離強度が強く、プリーツ加工性に優れていた。
実施例6及び8と実施例9及び10との比較から、メルトブロー不織布の原料樹脂がポリプロピレン又はポリブチレンテレフタレート繊維である実施例6及び8の液体フィルタ用濾材は、該原料樹脂がポリエチレンテレフタレート又はポリフェニレンサルファイドである実施例9及び実施例10と比較して、層間剥離強度が強く、プリーツ加工性に優れていた。
本発明の液体フィルタ用濾材は、金属の型彫、切断加工などに使用されている放電加工機の加工液中に含まれる加工屑や、IC生産における基板のウエハの切断、研磨、エッチングなどの工程で使用される超純水中に含まれる加工屑を効率良く除去し清浄な液体を得るための液体フィルタ、自動車用エンジンオイル、燃料等用の液体フィルタ等に好適に用いることができる。

Claims (5)

  1. 平均繊維径が1.0μm超4.0μm以下の繊維で構成されるメルトブロー不織布と、繊維径が5μm以上の熱可塑性繊維からなる湿式不織布とが積層されてなり、積層されたメルトブロー不織布と湿式不織布とがエンボス融着点によって接着されてなり、層間剥離強度が40mJ以上であることを特徴とする液体フィルタ用濾材。
  2. 熱可塑性繊維がバインダー繊維を含み、該バインダー繊維の含有量が、湿式不織布に含まれる全繊維に対して、20~80質量%である請求項1に記載の液体フィルタ用濾材。
  3. バインダー繊維が芯鞘型複合繊維である請求項2に記載の液体フィルタ用濾材。
  4. メルトブロー不織布の原料樹脂がポリプロピレン又はポリブチレンテレフタレートである請求項1~3の何れかに記載の液体フィルタ用濾材。
  5. 平均繊維径が1.0μm超4.0μm以下の繊維で構成されるメルトブロー不織布と、繊維径が5μm以上の熱可塑性繊維からなる湿式不織布とを積層し、積層されたメルトブロー不織布と湿式不織布とを熱エンボス加工又は超音波エンボス加工によって接着する液体フィルタ用濾材の製造方法。
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