JP2024033028A - フィルタ用基材 - Google Patents

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Abstract

【解決手段】多孔質膜を熱融着により貼り合わせてフィルタ用濾材として使用するためのフィルタ用基材において、フィルタ用基材が、主体繊維として延伸ポリエステル繊維を含有し、バインダー繊維として、鞘部が結晶性の共重合ポリエステルである芯鞘型ポリエステル繊維を含有し、鞘部が結晶性の共重合ポリエステルである芯鞘型ポリエステル繊維の配合率が、フィルタ用基材に含まれる全繊維に対して5質量%以上であることを特徴とするフィルタ用基材。【効果】本発明によれば、耐薬品性に優れ、強アルカリなどの過酷な条件下で使用した際も劣化し難いフィルタ用基材を得られる。【選択図】なし

Description

本発明は、フィルタ用基材に関する。
従来から、エアフィルタ用濾材、液体フィルタ用濾材として、多孔質膜が使用されている。多孔質膜の素材としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE);ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;等が挙げられる。特に、これらの多孔質膜は高い捕集効率と低い圧力損失を達成できるため、高い捕集効率が求められるクリーンルーム用フィルタやサイクロン式掃除機用フィルタ等において、エアフィルタ用濾材として使用されている。また、高い耐薬品性を備えていることから、水酸化ナトリウム等の強アルカリなどの過酷な条件下で清浄作業が行われることがある浄水処理用フィルタ、産業廃水、工業用水等の濾過用フィルタにおいて、液体フィルタ用濾材としても広く使用されている。しかしながら、非特許文献1にあるように、多孔質膜は機械的強度が低く、寸法安定性にも問題があることから、多孔質膜単体で使用することが難しい。そのため、フィルタ用基材と多孔質膜とを複合化したフィルタ用濾材が必要とされている。しなやかさや気孔率の観点から、フィルタ用基材として不織布が使用されることが多い。以下、「フィルタ用基材」を「基材」と略記する場合があり、「フィルタ用濾材」を「濾材」と略記する場合がある。
PTFEは高い耐薬品性を備えているものの、フィルタ用基材も高い耐薬品性を備えていなければ、過酷な条件下で液体フィルタとして使用することは難しい場合がある。例えば強アルカリによる清浄作業が行われた際に、フィルタ用基材が収縮・劣化した場合、再びフィルタとして使用した際に、基材の破損や液体の流出などが発生し、液体用フィルタとして使用することが難しい場合がある。
多孔質膜と複合化させるための基材としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂またはポリエステル系樹脂からなり、目付量が40g/m~120g/m、厚みが0.3mm~0.9mm、破裂強さが199kPa~600kPa、突刺強さが8N~24N、気孔率が65%~90%である不織布が開示されている(特許文献1参照)。しかしながら、特許文献1で開示されている濾過膜エレメントでは、PTFE多孔質膜の高い耐薬品性を利用した用途は提案されているものの、PTFE多孔質膜を積層させる不織布の耐薬品性は考慮されておらず、濾過膜エレメントとして使用後の清浄作業の際に不織布が劣化して破損・収縮するなどの問題が発生する懸念があった。
特許文献2では、基材として、ポリエステル/ポリエチレンの芯鞘複合繊維からなるスパンボンド不織布が開示されている(特許文献2参照)。しかしながら、特許文献2の濾材はエアフィルタ用に使用されることのみを想定されており、液体用フィルタとして使用されることは想定していないことから、液体中で過酷な条件下で使用した際に、不織布が劣化するなどの問題が発生する懸念があった。
特開2014-240047号公報 特開平10-211409号公報
本発明は、耐薬品性に優れ、強アルカリなどの過酷な条件下で使用した際も劣化し難いフィルタ用基材を得ることを課題としている。
本発明者らは、この課題を解決するため研究を行い、以下の発明を見出した。
<1>多孔質膜を熱融着により貼り合わせてフィルタ用濾材として使用するためのフィルタ用基材において、フィルタ用基材が、主体繊維として延伸ポリエステル繊維を含有し、バインダー繊維として、鞘部が結晶性の共重合ポリエステルである芯鞘型ポリエステル繊維を含有し、鞘部が結晶性の共重合ポリエステルである芯鞘型ポリエステル繊維の配合率が、フィルタ用基材に含まれる全繊維に対して5質量%以上であることを特徴とするフィルタ用基材。
<2>多孔質膜の素材が、ポリテトラフルオロエチレンである上記<1>記載のフィルタ用基材。
本発明によれば、耐薬品性に優れ、強アルカリなどの過酷な条件下で使用した際も劣化し難いフィルタ用基材を得られる。
本発明のフィルタ用基材は、多孔質膜を熱融着により貼り合わせてフィルタ用濾材として使用するためのフィルタ用基材であり、フィルタ用基材が、主体繊維として延伸ポリエステル繊維を含有し、バインダー繊維として、鞘部が結晶性の共重合ポリエステルである芯鞘型ポリエステル繊維を含有し、鞘部が結晶性の共重合ポリエステルである芯鞘型ポリエステル繊維の配合率が、フィルタ用基材に含まれる全繊維に対して5質量%以上であることを特徴とする。
本発明のフィルタ用基材は、主体繊維として延伸ポリエステル繊維を含有する。また、本発明のフィルタ用基材がバインダー繊維を含有しているため、熱融着性バインダー繊維の融点又は軟化温度以上に温度を上げる工程をフィルタ用基材の製造工程に組み入れることで、バインダー繊維が溶融又は軟化して結着し、フィルタ用基材の機械的強度を向上させる。主体繊維は、フィルタ用基材を製造する際の乾燥工程や熱カレンダー処理工程で溶融又は軟化し難く、繊維としての形状を保ったままで、フィルタ用基材の骨格を形成する。主体繊維として延伸ポリエステル繊維を含有させることにより、熱圧処理による貼り合わせの際に厚みが下がり難く、フィルタ用基材が高密度になり難く、圧力損失が低くなるという効果が得られる。なお、一般的に、主体繊維の融点又は軟化点は、バインダー繊維の融点又は軟化点よりも高いという特徴を有する。
延伸ポリエステル繊維のポリエステルとしては、主たる繰り返し単位がアルキレンテレフタレートであるポリエステルが挙げられるが、耐熱性の高いポリエチレンテレフタレートであることが好ましい。
主体繊維の断面形状は円形が好ましい。ただし、T型、Y型、三角等の異形断面を有する繊維も、裏抜け防止や、塗布面平滑性のために、他の特性を阻害しない範囲内で含有できる。
本発明のフィルタ用基材は、バインダー繊維として、鞘部が結晶性の共重合ポリエステルである芯鞘型ポリエステル繊維を含有する。結晶性の共重合ポリエステルとしては、ジカルボン酸成分がテレフタル酸であり、ジオール成分がエチレングリコールとテトラメチレングリコールである共重合ポリエステル、ジカルボン酸成分がテレフタル酸であり、ジオール成分がエチレングリコールとテトラメチレングリコールとε-カプロラクトンである共重合ポリエステル、ジカルボン酸成分がテレフタル酸とイソフタル酸であり、ジオール成分がエチレングリコールとテトラメチレングリコールである共重合ポリエステルが好適に使用できる。フィルタ用基材が、鞘部が結晶性の共重合ポリエステルである芯鞘型ポリエステル繊維を含有することにより、フィルタ用基材の製造及びその後に熱カレンダー等による熱圧処理によって多孔質膜との貼り合わせを行った後でも、芯鞘型ポリエステル繊維の芯部が溶融せずに、繊維形状を維持することから、フィルタの引張強度を高めることができる。
本発明において、「結晶性」とは、繊維の温度を溶解状態の温度まで高めた後に、温度を下げていった場合、溶融状態では分子運動しながら絡み合っているが、温度を下げていくことで分子運動がゆっくり収まりながら、結晶化温度にて部分的に整列し、結晶化する特性を有することをいう。
結晶性の有無を確認する方法としては、示差走査熱量計(パーキンエルマー社製、装置名:DSC8500)を用いて、昇温速度10℃/分で、0℃から芯鞘型ポリエステル繊維の鞘部の融点を超えるまで昇温した後に、連続して冷却速度10℃/分で、0℃まで冷却し、結晶化による発熱ピークの有無を確認し、発熱ピークが観察された場合、結晶性であると判断する。また、発熱ピークのピーク温度を結晶化温度とする。
融点の測定は、示差走査熱量計(パーキンエルマー社製、装置名:DSC8500)を用いて、昇温速度10℃/分で、0℃から300℃まで昇温させた際の結晶融解による吸熱ピークを観察し、そのピーク温度を融点とする。
本発明において、芯鞘型ポリエステル繊維の芯部は、主たる繰り返し単位がアルキレンテレフタレートであるポリエステルであり、耐熱性の高いポリエチレンテレフタレートであることが好ましい。
本発明において、芯鞘型ポリエステル繊維の断面形状は特に限定しないが、円形が好ましい。また、芯部と鞘部の比率は、芯/鞘体積比で30/70~70/30が好ましく、40/60~60/40がより好ましい。
本発明において、結晶性の共重合ポリエステルの融点は、好ましくは130℃以上であり、より好ましくは140℃以上であり、さらに好ましくは150℃以上である。結晶性ポリエステルの融点が高い場合、より高い接着強度が得られ、また、高い耐薬品性を持つことから、過酷な条件下で使用しても、劣化し難く、収縮し難いという効果が得られる。
本発明において、鞘部が結晶性の共重合ポリエステルである芯鞘型ポリエステル繊維の配合率は、フィルタ用基材に含まれる全繊維に対して、5質量%以上であり、10質量%以上であることがより好ましい。また、70質量%以下であることが好ましく、65質量%以下であることがより好ましく、60質量%以下であることがさらに好ましく、55質量%以下であることが特に好ましく、50質量%以下であっても良い。鞘部が結晶性の共重合ポリエステルである芯鞘型ポリエステル繊維の配合率が5質量%未満の場合、フィルタ用基材の耐薬品性を上げるという効果が充分に得られない。一方、70質量%を超えると、フィルタ用基材の表面が皮膜化しやすく、熱カレンダー処理などで多孔質膜とフィルタ用基材を貼り合わせた後、圧力損失が上がり、フィルタとして使用することが難しい場合がある。
本発明において、フィルタ用基材と多孔質膜とを熱融着により貼り合わせることによって、フィルタ用濾材となる。貼り合わせは、熱圧処理によって行うことができる。熱圧処理は、熱プレス機を用いてシートの積層加工や、熱カレンダーを用いて巻き取り同士の積層加工により行うことができる。フィルタ用基材と多孔質膜の十分な接着性を得るために、熱圧処理時の温度は100℃以上であることが好ましい。
本発明において、多孔質膜は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート;ポリウレタン;ポリイミド;ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の多孔質膜を用いることができる。耐熱性の低い多孔質膜を用いると、熱圧処理を行った際に多孔質膜が軟化し、孔が閉塞する場合があることから、耐熱性に優れたポリテトラフルオロエチレンを用いることが好ましい。
本発明のフィルタ用基材は不織布であることが好ましく、不織布は乾式法又は湿式抄紙法により製造することができる。本発明では、フィルタ用基材が湿式抄紙法によって形成された湿式不織布であることが好ましい。
湿式抄紙法では、まず、繊維を均一に水中に分散させ、その後、スクリーン(異物、塊等除去)等の工程を通り、最終の繊維濃度を0.01~0.50質量%に調整されたスラリーが抄紙機で抄き上げられ、湿紙が得られる。工程中で、分散剤、消泡剤、親水剤、帯電防止剤、高分子粘剤、離型剤、抗菌剤、殺菌剤等の薬品を添加する場合もある。
抄紙機としては、例えば、長網、円網、傾斜ワイヤー等の抄紙網が単独で設置されている抄紙機、同種又は異種の2種以上の抄紙網がオンラインで設置されているコンビネーション抄紙機等を使用することができる。また、本発明のフィルタ用基材が2層以上の多層構造の場合には、各々の抄紙機で抄き上げた湿紙を積層する抄き合わせ法や、一方の層を形成した後に、該層上に繊維を分散したスラリーを流延して積層とする方法のいずれでも良い。繊維を分散したスラリーを流延する際に、先に形成した層は湿紙状態であっても、乾燥状態であってもいずれでも良い。また、2枚以上の層を熱融着させて、多層構造の不織布とすることもできる。
本発明のフィルタ用基材において、不織布が多層構造である場合、各層の繊維配合が同一である多層構造であっても良く、各層の繊維配合が異なっている多層構造であっても良い。多層構造の場合、各層の坪量が下がることにより、スラリーの繊維濃度を下げることができるため、不織布の地合が良くなり、その結果、塗布面の平滑性や均一性が向上する。また、各層の地合が不均一であった場合でも、積層することで補填できる。さらに、抄紙速度を上げることができ、操業性が向上する。
抄紙網で製造された湿紙を、ヤンキードライヤー、エアードライヤー、シリンダードライヤー、サクションドラム式ドライヤー、赤外方式ドライヤー等で乾燥することにより、不織布(原紙)を得る。湿紙の乾燥の際に、ヤンキードライヤー等の熱ロールに密着させて熱圧乾燥させることによって、密着させた面の平滑性が向上する。熱圧乾燥とは、タッチロール等で熱ロールに湿紙を押しつけて乾燥させることをいう。熱ロールの表面温度は、100~180℃が好ましく、100~160℃がより好ましく、110~160℃がさらに好ましい。圧力は、好ましくは5~100kN/m、より好ましくは10~80kN/mである。
本発明において、必要に応じて、延伸ポリエステル繊維以外の主体繊維も使用できる。ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維等のポリオレフィン繊維;ポリスチレン又はこれらポリマーの変性ポリマー及びコポリマーからなる繊維;アクリル繊維;ポリアクリロニトリル繊維;ポリビニルアルコール繊維;ポリアミド繊維;ウレタン繊維;レーヨン繊維、再生セルロース繊維、溶剤紡糸セルロース繊維等のセルロース繊維;コラーゲン、アルギン酸、キチン質等を溶液にしたものを紡糸した繊維;等が挙げられる。
本発明において、主体繊維として、木材パルプを用いることもできる。木材パルプは、NBKP,LBKP,NBSP,LBSPその他いずれの種類のパルプでも限定はされない。木材パルプの繊維が細かいと、圧力損失が高くなる傾向があるため、特に限定はされないが、木材パルプの繊維径は大きいほうが好ましい。
本発明において、フィルタ用基材が延伸ポリエステル繊維以外の主体繊維を含有する場合、その配合率は、特に限定されないが、フィルタ用基材に含まれる全繊維に対して、50質量%未満であることが好ましく、40質量%未満であることがより好ましく、30質量%未満であることがさらに好ましい。延伸ポリエステル繊維以外の主体繊維は必須成分でないことから、その配合率は0質量%であっても良い。延伸ポリエステル繊維以外の主体繊維の配合率が50質量%以上である場合、フィルタ用基材から繊維が脱落しやすくなる場合があり、フィルタとして使用した際に、脱落繊維が下流に流出して悪影響を与えるという問題が発生する場合がある。
主体繊維として、フィルタ用基材が木材パルプを含有する場合、木材パルプの配合率は、特に限定されないが、フィルタ用基材に含まれる全繊維に対して、50質量%未満であることが好ましく、40質量%未満であることがより好ましく、30質量%未満であることがさらに好ましく、また、木材パルプを含有しなくてもなんら問題はない。木材パルプの配合率が50質量%以上である場合、木材パルプがフィルタ用基材の孔を塞ぐため、圧力損失が高くなるという問題が発生する場合があり、また、木材パルプが多孔質膜との接着を阻害するため、剥離強度が小さくなるという問題が発生する場合がある。
本発明において、鞘部が結晶性の共重合ポリエステルである芯鞘型ポリエステル繊維以外の熱融着性バインダー繊維を必要に応じて配合することができる。
鞘部が結晶性の共重合ポリエステルである芯鞘型ポリエステル繊維以外の熱融着性バインダー繊維としては、単繊維の他、芯鞘繊維(コアシェルタイプ)、並列繊維(サイドバイサイドタイプ)などの複合繊維が挙げられる。単繊維としては、ポリエチレン、未延伸ポリエステル等の繊維を挙げることができる。複合繊維は、フィルタ用基材表面に皮膜が形成されない状態で、機械的強度を向上させることができる。芯鞘繊維としては、例えばポリプロピレン(芯)と、ポリエチレン(鞘)の組み合わせ、ポリプロピレン(芯)とエチレンビニルアルコール(鞘)の組み合わせ、高融点ポリエステル(芯)と低融点ポリエステル(鞘、結晶性の共重合ポリエステル以外のポリエステル)の組み合わせが挙げられる。また、ポリエチレン等の低融点樹脂のみで構成される全融タイプの単繊維は、乾燥工程で皮膜を形成しやすく、厚みが小さくなりやすいことから、圧力損失が高くなることがあるが、特性を阻害しない範囲であれば使用することができる。本検討においては、芯部分があることから、熱融着による貼り合わせの際に厚みが下がり難い芯鞘繊維が、鞘部が、結晶性の共重合ポリエステルである芯鞘型ポリエステル繊維以外の熱融着性バインダー繊維としても好ましい。
本発明において、バインダー繊維として、湿熱接着性バインダー繊維を用いることもできる。湿熱接着性バインダー繊維としては、ポリビニルアルコール(PVA)系繊維のような熱水可溶性の繊維を使用することができる。湿熱接着性バインダー繊維は、常温の水ではほとんど溶解しないで、繊維形態を保っているが、湿式抄紙法のドライヤー面で加熱されると、容易に溶解し始め、その瞬間にタッチロールのような加圧設備で加圧し、その後の脱水乾燥を経ることによって、再凝固し、バインダー効果が得られる。
この湿熱接着性バインダー繊維の接着力に及ぼす影響は、水中軟化点から考えることができる。水中軟化点は、湿式抄紙法において、湿紙がドライヤーにより熱を受け、湿熱接着性バインダーが溶解し始めて接着機能を示す温度を大体示している。水中軟化点の低い湿熱接着性バインダーを使用するほど、接着の前提条件である湿熱接着性バインダー繊維の溶解が容易となり、接着効果が大きくなる。しかし、水中軟化点があまりに低くなりすぎると、ドライヤーへの付着が起こりやすいという問題が生じる。湿熱接着性バインダーが溶解するためには、その水中軟化点以上に湿紙の温度が高くなる必要があり、従って乾燥温度が高いほど接着効果が大きく、強度は向上する。湿紙の温度が湿熱接着性バインダー繊維の水中軟化点以下では、湿熱接着性バインダーの溶解が起こらず、従って、バインダー効果はまったく失われる。ヤンキードライヤーの場合、ドライヤーのスチーム温度は130~160℃程度で、これに接触している湿紙の温度は60~90℃と考えられるから、十分なバインダー効果を得るためには、湿熱接着性バインダー繊維の水中軟化点が65~85℃であることが好ましい。ただし、湿熱接着性バインダー繊維は皮膜を形成することで、フィルタ用基材の孔を塞ぎ、また水分の無い状態で熱圧処理を行っても多孔質膜との接着には寄与しないことから、配合率は特に限定されないが、湿熱接着性バインダー繊維を用いる場合には、フィルタ用基材に含まれる全繊維に対して、20質量%未満であることが好ましい。また、また、湿熱接着性バインダー繊維を含有しなくてもなんら問題はない。
鞘部が、結晶性の共重合ポリエステルである芯鞘型ポリエステル繊維を含め、バインダー繊維の配合率は、フィルタ用基材に含まれる全繊維に対して、10~90質量%であることが好ましく、25~80質量%であることがより好ましく、30~70質量%であることがさらに好ましい。バインダー繊維の配合率が10質量%未満である場合、主体繊維を止める成分が足りず、脱落繊維が多くなるという問題が発生する場合がある。一方、バインダー繊維の配合率が90質量%超である場合、厚みが小さく、密度が高いフィルタ用基材となることから、熱圧処理の際に厚みが下がることで圧力損失が上がり、フィルタとして適さないという問題が発生する場合がある。
主体繊維の繊度は、0.1~6.0デシテックスが好ましく、より好ましくは0.6~3.3デシテックスである。主体繊維の繊度が0.1デシテックス未満である場合、抄紙性が悪く、地合が悪くなる傾向があり、コストアップにもなる。一方、主体繊維の繊度が6.0デシテックス超である場合、抄紙の際の繊維分散が悪くなり、フィルタ用基材の地合が不均一となる場合がある。主体繊維の繊維長は2~20mmが好ましく、より好ましくは3~10mmである。主体繊維の繊維長が2mm未満である場合、フィルタ用基材の強度が不十分となる場合がある。一方、主体繊維の繊維長が20mmを超えると、繊維同士が絡まることで、地合が不均一となる場合がある。
バインダー繊維の繊度は、0.1~6.0デシテックスが好ましく、より好ましくは0.2~3.3デシテックスである。バインダー繊維の繊度が0.1デシテックス未満である場合、薄く、密度が高いフィルタ用基材となりやすく、圧力損失が高くなりすぎる場合がある。一方、バインダー繊維の繊度が6.0デシテックス超である場合、フィルタ用基材の地合が悪くなる場合がある。バインダー繊維の繊維長は2~20mmが好ましく、より好ましくは3~10mmである。バインダー繊維の繊維長が2mm未満である場合、フィルタ用基材の強度が不十分となる場合がある。一方、バインダー繊維の繊維長が20mmを超えると、繊維同士が絡まることで、地合が不均一となる場合がある。
また、湿熱接着性バインダー繊維の繊度は、特に限定されないが、0.3~5.0デシテックスであることが好ましく、より好ましくは0.4~3.0デシテックスである。繊度が0.3デシテックス未満である場合、フィルタ用基材から脱落する場合がある。一方、5.0デシテックスを超えた場合、十分な強度が得難いことがある。繊維長は、地合、分散性の観点を考慮すると、3~6mmが好ましい。
また、本発明に用いられるその他の繊維としては、木綿パルプ、ワラパルプ、竹パルプ、エスパルトパルプ、バガスパルプ、麻パルプが挙げられる。ガラス繊維や炭素繊維等の無機繊維を用いることもできるが、熱融着による貼り合わせの際に砕け、フィルタ用基材の強度が著しく下がることがあるため、含有しないほうが好ましい。
本発明のフィルタ用基材は、特に限定されないが、坪量が30g/m~180g/mの範囲であることが好ましく、40g/m~160g/mであることがより好ましい。坪量が30g/mよりも小さくなると、基材の強度が弱く、フィルタとして使用している最中に破損する場合がある。180g/mよりも大きい場合、圧力損失が高くなり、フィルタとして使用するには適さない場合がある。
本発明のフィルタ用基材は、特に限定されないが、密度が0.1~0.5g/cmの範囲であることが好ましい。該密度は、湿式抄紙の際の抄紙条件の調整、繊維の種類、繊維の配合率、坪量や厚みの調整で適宜調整することができる。密度が0.1g/cmよりも小さくなると、熱圧処理の際に脱落繊維が発生してトラブルとなる場合がある。密度が0.5g/cmを超えると、圧力損失が高くなるため、フィルタ用基材として適さない場合がある。
本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。以下、実施例に記載される部及び比率は質量を基準とする。
≪主体繊維≫
<延伸PET繊維1>
ポリエチレンテレフタレートからなる、繊度1.7デシテックス、繊維長5mmの延伸ポリエステル繊維を延伸PET繊維1とした。
<延伸PET繊維2>
ポリエチレンテレフタレートからなる、繊度0.6デシテックス、繊維長5mmの延伸ポリエステル繊維を延伸PET繊維2とした。
<木材パルプ>
・NBKPチヌーク(濾水度680mlCSF)
≪バインダー繊維≫
<芯鞘PET繊維1>
芯部がポリエチレンテレフタレート(融点:260℃)であり、ジカルボン酸成分がテレフタル酸であり、ジオール成分がエチレングリコールとテトラメチレングリコールであり、融点が180℃であり、結晶化温度が126℃である結晶性の共重合ポリエステルを鞘部とする、繊度1.2デシテックス、繊維長5mmの芯鞘型ポリエステル繊維(ユニチカ社製キャスベン(登録商標)8080)を、芯鞘PET繊維1とした。
<芯鞘PET繊維2>
芯部がポリエチレンテレフタレート(融点:260℃)であり、ジカルボン酸成分がテレフタル酸とイソフタル酸であり、ジオール成分がエチレングリコールとジエチレングリコールであり、軟化温度が75℃である非結晶性の共重合ポリエステルを鞘部とする、繊度2.2デシテックス、繊維長5mmの芯鞘型ポリエステル繊維(帝人社製TJ04CN(登録商標))を、芯鞘PET繊維2とした。
<未延伸PET繊維1>
ジカルボン酸成分としてイソフタル酸を含むポリエチレンテレフタレートからなる、繊度1.2デシテックス、繊維長5mmの未延伸ポリエステル繊維(融点:260℃)(帝人社製TA07N)を未延伸PET繊維1とした。
<湿熱PVA繊維1>
ポリビニルアルコール系樹脂からなる、繊度0.44デシテックス、繊維長3mmの湿熱接着性バインダー繊維(クラレ社製、VPB041)を、湿熱PVA繊維1とした。
〔フィルタ用基材の製造〕
実施例1~12、比較例1~5
表1記載の繊維配合になるように、各繊維を水に投入して、縦型パルパーで10分間混合分散してスラリーを調成した後、湿紙を傾斜ワイヤー/円網方式で製造した湿紙を抄き合わせ法により積層して、表面温度130℃のヤンキードライヤーで乾燥し、抄紙速度20m/minで、湿式不織布であるフィルタ用基材を得た。傾斜ワイヤーと円網の繊維配合と目標坪量は同じである。
(フィルタ用基材と多孔質膜との貼り合わせ)
実施例1~12及び比較例1~5のフィルタ用基材とPTFE多孔質膜を積層し、120℃の熱ロールにより熱圧処理を行い、熱融着による貼り合わせを行って、フィルタ用濾材を得た。
(評価方法)
実施例及び比較例で作製したフィルタ用基材及びフィルタ用濾材は、下記の方法で評価を行った。
1)耐薬品性
実施例及び比較例で得られたフィルタ用基材から、巻き取りの流れ方向250mm、幅方向50mmの試料を20枚切り取り、JIS P 8113:2006に準じて、卓上型材料試験機(装置名:STA-1150、(株)オリエンテック製)を用いて、引張強度を測定し、10枚分の平均値(初期値)を得た。残りの10枚の試料を、10質量%の水酸化ナトリウム溶液中に、温度80℃にて1週間浸漬した。水洗・乾燥後、引張強度を測定し、10枚分の平均値(浸漬後)を得た。平均値(浸漬後)/平均値(初期値)×100を引張強度の残存率(%)とし、耐アルカリ性の指標とした。
○:引張強度の残存率が80%以上であった。
×:引張強度の残存率が80%未満であった。
2)圧力損失
フィルタ用濾材の圧力損失の測定は、JIS B 9908-2:2019に従って行い、以下の評価を行った。なお、熱融着による貼り合わせの際に、フィルタ用基材が高密度となると、圧力損失が高くなる。
○:圧力損失は、多孔質膜単体に対して200%未満であった。
△:圧力損失は、多孔質膜単体に対して200%~300%であった。
×:圧力損失は、多孔質膜単体に対して300%超であった。
上記評価結果を表1に示す。
実施例1~12のフィルタ用基材は高い耐薬品性を示し、また、実施例1~12のフィルタ用濾材は、低い圧力損失を示した。
これに対し、鞘部が結晶性の共重合ポリエステルである芯鞘型ポリエステル繊維の配合率が5%未満である比較例1では、十分な耐薬品性が得られなかった。
また、鞘部が結晶性の共重合ポリエステルである芯鞘型ポリエステル繊維を含有していない比較例2~4では、十分な耐薬品性が得られなかった。
主体繊維として、延伸ポリエステル繊維を含有していない比較例5では、圧力損失が高くなった。
本発明のフィルタ用基材は、過酷な環境下でも使用が可能なフィルタ用基材として好適に使用できる。

Claims (2)

  1. 多孔質膜を熱融着により貼り合わせてフィルタ用濾材として使用するためのフィルタ用基材において、フィルタ用基材が、主体繊維として延伸ポリエステル繊維を含有し、バインダー繊維として、鞘部が結晶性の共重合ポリエステルである芯鞘型ポリエステル繊維を含有し、鞘部が結晶性の共重合ポリエステルである芯鞘型ポリエステル繊維の配合率が、フィルタ用基材に含まれる全繊維に対して5質量%以上であることを特徴とするフィルタ用基材。
  2. 多孔質膜の素材が、ポリテトラフルオロエチレンである請求項1記載のフィルタ用基材。
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