JP5597912B2 - 1成分形室温硬化型シーリング材およびウレイレン基含有有機化合物の使用方法 - Google Patents

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Description

本発明は、室温で大気中の水分や酸素により硬化する硬化途中のムーブメント追従性に優れた、室温硬化性樹脂からなる1成分形室温硬化型シーリング材に関する。
ウレタン樹脂や変成シリコーン樹脂などからなるシーリング材が建築や土木の目地の防水用として広く使用されており、そのシーリング材には硬化方法の違いにより、主剤と硬化剤を混合することにより硬化させる2成分形と、空気中の湿気や酸素を利用して硬化させる1成分形とがある。このうち1成分形シーリング材、特にイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーからなる1成分形ウレタン系シーリング材が、主剤と硬化剤を混合する手間が無く、また主剤と硬化剤の計量ミスによる硬化不良もないことにより、作業性に優れ、安心して使用でき、更に硬化後低モジュラスかつ高伸びでゴム弾性物性が良好で、接着性や耐久性に優れているなどの特徴から、年々使用量が伸びている。
しかしながら、主に中高層ビル等の建築物において、金属カーテンウォールやプレキャストコンクリートパネルなどの外装部材を使用した外壁或いは金属サッシ回りなどに形成される目地があり、これらの目地は、気温や日照等の温度変化による部材の膨張や収縮、或いは各種振動や風圧などの作用によって外装部材間の変位が大きく、動き(ムーブメント)が大きなため、ワーキングジョイントと呼ばれている。
従来、このワーキングジョイントを施工の対象とするシーリング材としては、2成分形のものが全体的に硬化が進行するため、硬化途中に目地が大きく変位しても硬化物の表面や内部に亀裂等の損傷が生じないため(硬化途中のムーブメント追従性が良好なため)専ら使用されている。
これに対し、1成分形シーリング材は硬化の性質上、湿気や空気中の酸素と接触する表面から硬化するため、硬化途中にムーブメントを受けると、表面の硬化した部分と内部の未硬化部分にかかる応力の差が大きく、局部的に歪が大きくなるためと推察されるが、硬化物に亀裂、シワ、剥離等の損傷が発生し(これを硬化途中のムーブメント追従性が悪いという)、ひいては漏水事故につながるため、ワーキングジョイント用のシーリング材としては使用されてこなかった。そのため、本発明者らは、硬化過程のムーブメント追従性が良好な1成分形シーリング材を開発することに挑戦することにした。
さて、ワーキングジョイント用のシーリング材として適しているか否か、実際の中高層ビルのワーキングジョイントを使用して試験するのが最も適切ではあるが、莫大な費用と時間がかかり、仮に試験に供したシーリング材が硬化途中のムーブメント追従性が悪かった場合、漏水事故を起こすことにもなり、極めて現実的ではない。
従って、1成分形ウレタンシーリング材において、硬化過程のムーブメント追従性が良いものに改良でき、そしてこのシーリング材を実際のワーキングジョイントの動きを近似的に再現できる試験機を用い、硬化途中のムーブメント追従性を評価して結果が良好であれば、建築ワーキングジョイント用のシーリング材として使用できることになり、1成分形であるがゆえに作業性に優れ、安心して使用でき、かつ接着性や耐久性に優れた建築ワーキングジョイント用のシーリング材を提供できることとなり、今後の中高層ビル建築の外壁目地などのシーリング材として役に立つものとなる。
上述の考察に基づき、本発明者らは、過去にイソシアネート含有ウレタンプレポリマーと揺変性付与剤と硬化促進触媒を含有する、目地に少なくとも1日に1サイクルのムーブメントを与えながら硬化させる試験において、損傷のない硬化物となる性能を有する建築ワーキングジョイント用1成分形ウレタン系シーリング材組成物を提案した(特許文献1参照)。しかしながらこのワーキングジョイント用シーリング材を実際のビルの20階部分の外壁ワーキング目地に試験を兼ねて施工したところ、部分的に硬化後のシーリング材内部に亀裂が生じているのを認め、硬化過程のムーブメント追従性試験の条件が不十分で、そのため得られた1成分形ウレタン系シーリング材の硬化過程のムーブメント追従性が未だ不足し、改良が必要であることがわかった。
また、本出願人は、過去に水膨潤性ウレタンプレポリマーとポリ尿素化合物とを含有する湿気硬化型水膨潤性ポリウレタン組成物、ならびに有機イソシアネートと第1級及び/又は第2級アミノ基を有する化合物との反応生成物と、架橋性シリル基含有樹脂とを含有する硬化性組成物も提案したが、これは硬化性組成物に優れた揺変性を付与することを目的としたものである(特許文献2及び3参照)。
また、ポリウレタン樹脂と、疎水性コロイド状シリカと、脂肪族ポリイソシアネートとモノアミン等の付加物とを含有する揺変性ポリウレタン樹脂組成物、あるいはポリウレタン樹脂主成分に、添加剤として光硬化性物質とヒンダードアミン系光安定剤とを配合した高耐候性ポリウレタン系1液型湿気硬化性組成物において、ポリ尿素化合物からなる揺変性付与剤を配合することも開示されているが、これらはいずれも揺変性付与効果に関するものであり、硬化過程におけるムーブメント追従性については言及されていない(特許文献4及び5参照)。
また、2成分形ポリサルファイド系シーリング材において、基剤成分としてポリサルファイドポリエーテルポリマーと特定のポリエーテルポリオールとの特定量の混合物に、硬化剤成分としてポリイソシアネートやその変性ウレタンプレポリマーを特定量使用し、ポリサルファイド系シーリング材の欠点である、動的追従性を改良することが開示されている(特許文献6参照)。しかし。これらは2成分形のものであり、1成分形のものに関する言及がされていない。
また、架橋性シリル基を含有しうるゴム系有機重合体と、特定のシランカップリング剤と、テトラアルコキシシランを含有する変性シリコーン系シーリング材組成物も提案され、深部硬化性がよく高層ビル等のシールに適していることが開示されている(特許文献7参照)。しかし、これは硬化途中のムーブメント追従性と揺変性付与が不十分である。
したがって、硬化途中のムーブメント追従性が良好な1成分形のシーリング材は未だにないのが実情である。
特開2005−314683号公報 特開平10−140001号公報 特開2002−332404号公報 特開昭64−24851号公報 特開2002−179753号公報 特開2002−275451号公報 特開2003−277725号公報
本発明は、上記従来公知技術の問題点に鑑み、硬化後低モジュラス、高伸びでゴム弾性物性が良好で、作業性、接着性、耐久性が良好であるとともに、硬化途中のムーブメント追従性に特に優れたワーキングジョイント用の1成分形室温硬化型シーリング材を提供することを目的とする。
前記目的を達成するために研究した結果、室温硬化性樹脂を硬化成分として含有する1成分形室温硬化型シーリング材に、ウレイレン基含有有機化合物を配合することにより、前記シーリング材に極めて優れた硬化過程のムーブメント追従性を与えることができることを見出して本発明に到達した。
すなわち本発明は、
(1)室温硬化性樹脂(A)と、ウレイレン基含有有機化合物(B)とを含有する1成分形室温硬化型シーリング材であって、該シーリング材が、ワーキングジョイント用であることを特徴とする。
この構成をとることにより、本発明のシーリング材は、ワーキングジョイントの目地に対して施工したときに損傷のない硬化シーリング目地を形成する効果を奏するものである。
そして本発明において、
(2)前記ワーキングジョイントが、ビル外壁目地であるとき、
あるいは、(3)前記ワーキングジョイントが、笠木目地であるとき、
さらに、
(4)前記ワーキングジョイントが、金属製部材で形成されているワーキングジョイントであるとき、
また、
(5)前記ワーキングジョイントの目地の変位量が、該目地の幅寸法に対して5%以上であるとき、
特に、
(6)前記ワーキングジョイントの目地の幅が20mm以上で、かつ該目地の幅の変位量が1mm以上であるとき、
に本発明の効果を最大限に発揮できる。
そして本発明において、
(7)前記ウレイレン基含有有機化合物(B)としては、有機イソシアネートとアミン化合物との反応生成物であることが好ましい。
さらに、
(8)前記有機イソシアネートとアミン化合物との反応生成物としては、液状有機媒体中に分散された分散体であることが好ましい。
また、
(9)前記室温硬化性樹脂(A)としては、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーが好ましく、
そして、
(10)イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを使用した場合には、さらに、オキサゾリジン化合物を配合することが好ましい。
また、
(11)前記室温硬化性樹脂(A)としては、架橋性シリル基含有有機重合体、
あるいは、
(12)ポリサルファイド系樹脂が好ましいものとして挙げられる。
また、本発明においては、
(13)さらに、ヒンダードアミン系光安定剤および/またはヒンダードフェノール系酸化防止剤を配合することが好ましく、
また、
(14)さらに、有機酸系化合物表面処理炭酸カルシウムを配合することが好ましい。
そして、
(15)本発明の1成分形室温硬化型シーリング材のチクソトロピック指数が、4.5〜8.0であることが好ましい。
また、本発明は、
(16)室温硬化性樹脂(A)を硬化成分として含有する1成分形室温硬化型シーリング材に、ウレイレン基含有有機化合物(B)を存在させることにより、該シーリング材をワーキングジョイントに対して施工した場合に損傷のない硬化シーリング目地を形成することを特徴とするウレイレン基含有有機化合物(B)の使用方法でもある。
上述の構成をとることにより、作業性に優れ、大気中の水分(湿気)や酸素により硬化して、低モジュラスで高伸びといった諸物性に優れたゴム状弾性体となり、接着性、耐久性なども良好であるとともに、特に硬化途中のムーブメント追従性に優れているため、硬化途中に変位をする建築ワーキングジョイント用に適した1成分形室温硬化型シーリング材、並びにウレイレン基含有有機化合物の硬化途中のムーブメント追従性改良剤としての使用方法を提供することが可能となった。
なお、本発明において、建築ワーキングジョイントには、土木構築用に設けられた動きの大きな目地も包含するものである。
以下に、本発明を詳しく説明する。先ず本発明の1成分形室温硬化型シーリング材において硬化成分として使用する室温硬化性樹脂(A)について説明する。室温硬化性樹脂(A)は、室温で大気中の水分(湿気)や酸素などにより硬化する樹脂であり、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー、架橋性シリル基含有有機重合体、ポリサルファイド樹脂などが挙げられ、これらの室温硬化性樹脂(A)からなるシーリング材は、1成分形湿気硬化型あるいは1成分形酸素硬化型などの1成分系室温硬化型として使用できるが、施工作業や硬化性などの作業性が良好で、硬化後のゴム弾性物性や、耐水性、耐候性等の耐久性に優れている点で、1成分形湿気硬化型シーリング材が好ましい。
前記イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーは、活性水素含有化合物と、有機イソシアネート化合物とを、活性水素(基)に対してイソシアネート基過剰の条件で反応させて得られるものであり、分子中に含有されるイソシアネート基が室温で湿気と反応し、尿素結合を形成して、架橋、硬化することにより、このウレタンプレポリマーからなるシーリング材は、1成分形湿気硬化型として使用できる。
具体的には、活性水素含有化合物と有機イソシアネート化合物とを、イソシアネート基/活性水素(基)のモル比が1.2〜10/1.0、好ましくは1.4〜2.0/1.0となる範囲で同時あるいは逐次に反応させて、ウレタンプレポリマー中にイソシアネート基が残存するようにして製造することができる。モル比が1.2/1.0を下回ると、得られるウレタンプレポリマーの架橋点が少なくなりすぎ、得られるシーリング材の硬化後の伸びや引張強度などのゴム弾性物性が低下し、接着性が乏しいものとなり、モル比が10/1.0を超えると、湿気等の水分と反応したときに炭酸ガスの発生量が多くなり発泡の原因となるため好ましくない。
また、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーのイソシアネート基含有量は0.3〜15.0質量%が好ましく、特に0.5〜5.0質量%が好ましい。イソシアネート基含有量が0.3質量%未満の場合は、前記同様の理由で、ゴム弾性物性が低下し、十分な接着性が得られない。イソシアネート基含有量が15.0質量%を超える場合も、前記同様の理由で、炭酸ガスによる発泡が生じ好ましくない。
反応製造方法としては、ガラス製やステンレス製などの反応容器に活性水素含有化合物と有機イソシアネート化合物とを仕込み、後述する反応触媒や有機溶剤の存在下、あるいは不存在下に、50〜120℃で攪拌しながら反応させる方法が挙げられる。この際、イソシアネート基が湿気と反応すると、得られるウレタンプレポリマーが増粘するため、窒素ガス置換、窒素ガス気流下などの湿気を遮断した状態で反応を行うことが好ましい。
反応触媒としては、亜鉛、錫、鉛、ジルコニウム、ビスマス、コバルト、マンガン、鉄等の金属と、オクテン酸、ナフテン酸等の有機酸との金属塩;ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート等の有機金属と有機酸との塩;トリエチレンジアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン等の有機アミンやその塩等の公知のウレタン化触媒が挙げられる。
前記有機イソシアネート化合物としては、具体的には、有機ポリイソシアネートと、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーの変性用として場合により用いる有機モノイソシアネートが挙げられ、さらに有機ポリイソシアネートとしては、イソシアネート基が芳香族炭化水素と結合している芳香族系有機ポリイソシアネートや、イソシアネート基が脂肪族炭化水素と結合している脂肪族系ポリイソシアネートなどが挙げられる。
芳香族系ポリイソシアネートとしては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、あるいはこれらの混合物等のジフェニルメタンジイソシアネート類(MDI類);2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネートあるいはこれらの混合物等のトルエンジイソシアネート類(TDI類);この他フェニレンジイソシアネート、ジフェニルジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ジフェニルエーテルジイソシアネートなどが挙げられる。
脂肪族系のポリイソシアネートとしては、キシリレンジイソシアネート等の芳香脂肪族ポリイソシアネート;プロピレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート;シクロヘキサンジイソシアネート、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート等の脂環族ポリイソシアネートなどが挙げられる。
また、これらジイソシアネートのカルボジイミド変性体、ビウレット変性体、アロファネート変性体、二量体、三量体、または、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDIまたはポリメリックMDI)なども挙げられ、これらは単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち、硬化後のゴム弾性や耐候性に優れている点で、芳香族系ポリイソシアネートの中ではMDI類、TDI類が好ましく、芳香脂肪族ポリイソシアネートの中ではキシリレンジイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネートの中ではヘキサメチレンジイソシアネート、脂環族ポリイソシアネートの中ではイソホロンジイソシアネートが、それぞれ好ましい。
また、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーの変性用として、場合により用いる有機モノイソシアネートとしては、n−ブチルモノイソシアネート、n−ヘキシルモノイソシアネート、n−オクタデシルモノイソシアネート等の脂肪族系モノイソシアネートが挙げられる。
前記活性水素含有化合物としては、高分子ポリオールや高分子ポリアミンの他、場合により使用する鎖延長剤としての、低分子ポリオール、低分子アミノアルコール、低分子ポリアミン、或いはイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーの変性用として用いる高分子や低分子のモノオールなどが挙げられる。
高分子ポリオールとしては、ポリエステル系ポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオキシアルキレン系ポリオール、炭化水素系ポリオール、動植物系ポリオール、これらのコポリオール、またはこれらの2種以上の混合物などが挙げられる。
高分子ポリオールのゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算の数平均分子量は、1,000〜100,000、さらに1,000〜30,000、特に1,000〜20,000が好ましい。数平均分子量が1,000未満では、得られるシーリング材の硬化後の伸びなどのゴム弾性物性が悪化し、100,000を超えると、得られるイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーの粘度が高くなり過ぎ、作業性が悪化するため好ましくない。
ポリエステル系ポリオールとしては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、へキサヒドロオルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、トリメリット酸等のポリカルボン酸;これら酸のメチルやエチル等のアルキルエステル;またはこれら酸の酸無水物などの1種以上と、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−シクロへキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイドあるいはプロピレンオキサイド付加物、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の低分子ポリオール類;ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、キシリレンジアミン、イソホロンジアミン等の低分子ポリアミン類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等の低分子アミノアルコール類の1種以上との縮合反応で得られる、ポリエステルポリオールまたはポリエステルアミドポリオールが挙げられる。
また、低分子ポリオール類、低分子ポリアミン類、低分子アミノアルコール類を開始剤として、ε-カプロラクトン、γ−バレロラクトン等の環状エステル(ラクトン)モノマーの開環重合で得られるラクトン系ポリエステルポリオールも挙げられる。
ポリカーボネートポリオールとしては、前述のポリエステルポリオールの合成に用いられる低分子ポリオール類とホスゲンとの脱塩酸反応、あるいは前記低分子ポリオール類とジエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート等とのエステル交換反応で得られるものが挙げられる。
ポリオキシアルキレン系ポリオールとしては、前述のポリエステルポリオールの合成に用いられるものと同様の低分子ポリオール類、低分子ポリアミン類、低分子アミノアルコール類、ポリカルボン酸の他、ソルビトール、マンニトール、ショ糖(スクロース)、グルコース等の糖類系低分子多価アルコール類、ビスフェノールA、ビスフェノールF等の低分子多価フェノール類の一種以上を開始剤として、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン等の環状エーテル化合物の1種以上を開環付加重合あるいは共重合(以下、「重合あるいは共重合」を(共)重合という。)させた、ポリオキシエチレン系ポリオール、ポリオキシプロピレン系ポリオール、ポリオキシブチレン系ポリオール、ポリオキシテトラメチレン系ポリオール、ポリ−(オキシエチレン)−(オキシプロピレン)−ランダムあるいはブロック共重合系ポリオール、さらに、前述のポリエステルポリオールやポリカーボネートポリオールを開始剤としたポリエステルエーテルポリオール、ポリカーボネートエーテルポリオールなどが挙げられる。また、これらの各種ポリオールと有機イソシアネートとを、イソシアネート基に対し水酸基過剰で反応させて、分子末端を水酸基としたポリオールも挙げられる。
ポリオキシアルキレン系ポリオールのアルコール性水酸基の数は、1分子当たり平均して2個以上、さらに2〜4個、特に2〜3個であることが好ましい。
さらに、ポリオキシアルキレン系ポリオールは、その製造時に、水素化セシウム、セシウムメトキシド、セシウムエトキシド等のセシウムアルコキシド、水酸化セシウムなどのセシウム系化合物、ジエチル亜鉛、塩化鉄、金属ポルフィリン、ホスファゼニウム化合物、複合金属シアン化錯体など、なかでも亜鉛ヘキサシアノコバルテートのグライム錯体やジグライム錯体等の複合金属シアン化錯体を触媒として使用して得られる、総不飽和度が0.1meq/g以下、さらに0.07meq/g以下、特に0.04meq/g以下のものが、また分子量分布〔ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比=Mw/Mn〕が1.6以下、特に1.0〜1.3の狭いものが、得られるイソシアネネート基含有ウレタンプレポリマーの粘度を低下でき、かつ得られるシーリング材の硬化後のゴム弾性物性が良好となる点で好ましい。
また、ウレタンプレポリマーの変性用として、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール等の低分子モノアルコール類を開始剤として、前記プロピレンオキシド等の環状エーテル化合物を開環付加(共)重合させたポリオキシプロピレン系モノオール等のポリオキシアルキレン系モノオールなどを場合により使用することもできる。
なお、前記ポリオキシアルキレン系ポリオールあるいはポリオキシアルキレン系モノオールなどの「系」とは、分子1モル中の水酸基を除いた部分の50質量%以上、さらに80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上がポリオキシアルキレンで構成されていれば、残りの部分がエステル、ウレタン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリ(メタ)アクリレート、ポリオレフィンなどで変性されていてもよいことを意味するが、水酸基を除いた分子の95質量%以上がポリオキシアルキレンから成るものが最も好ましい。
炭化水素系ポリオールとしては、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール等のポリオレフィンポリオール;水添ポリブタジエンポリオール、水添ポリイソプレンポリオール等のポリアルキレンポリオール;塩素化ポリプロピレンポリオール、塩素化ポリエチレンポリオール等のハロゲン化ポリアルキレンポリオールなどが挙げられる。
ポリ(メタ)アクリレート系ポリオールとしては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基を含有する(メタ)アクリレート単量体類と他の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体とを、ラジカル重合開始剤の存在下あるいは不存在下に共重合したものなどが挙げられる。
動植物系ポリオールとしては、ヒマシ油系ジオールなどが挙げられる。
鎖延長剤としては、前記のポリエステル系ポリオールの合成に用いられる低分子のポリオール類、ポリアミン類、アミノアルコール類の他、前述のポリオキシアルキレン系ポリオールで、数平均分子量が1000未満の低分子量のもの、またはこれらの2種以上の混合物が例示される。
前記の活性水素含有化合物として挙げた化合物は1種または2種以上を組み合わせて使用することができるが、これらのうち、得られるシーリング材のゴム弾性物性や接着性が良好な点で、高分子ポリオールが好ましく、さらにポリオキシアルキレン系ポリオールが好ましく、ポリオキシプロピレン系ポリオールが最も好ましい。
本発明において、室温硬化性樹脂(A)として、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを選択した場合、ウレタンプレポリマー中のイソシアネート基含有量が大きなとき、得られる1成分形室温硬化型シーリング材を、夏場などの高温、多湿の状態で施工したとき、硬化途中に発生する炭酸ガスにより発泡を生じ、外観の悪化、接着性の低下などの不具合を生じる場合があるが、これを防止する手段として、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーに、さらにオキサゾリジン化合物を配合するのが好ましい方法として挙げられる。
前記オキサゾリジン化合物は、酸素原子と窒素原子を含む飽和5員環の複素環であるオキサゾリジン環を分子内に1個以上、好ましくは2〜6個有する化合物であり、大気中の水分(湿気)と反応し加水分解を受け、オキサゾリジン環が2級アミノ基とアルコール性水酸基を生成(再生)することにより、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーの潜在性硬化剤として機能するものである。イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーのイソシアネート基が湿気と反応すると、尿素結合が生成して硬化するが、この際炭酸ガスも発生し、硬化物の中に炭酸ガスによる気泡が生じ外観の悪化、硬化物の破断、接着性の低下などの不具合を生じるが、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーとオキサゾリジン化合物とを混合したものを湿気に暴露した場合は、湿気とイソシアネート基が反応する前にオキサゾリジン化合物のオキサゾリジン環が湿気により加水分解を受け、2級アミノ基とアルコール性水酸基を再生し、これらの活性水素がイソシアネート基と反応して炭酸ガスを発生することなく硬化することにより、これからなる1成分形室温硬化型シーリング材の炭酸ガスによる発泡を防止できるものである。
また、前述したイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーの合成において、有機イソシアネート原料として脂肪族系有機ポリイソシアネートを用いた場合、水分だけの反応だと硬化速度が極端に遅延してしまうが、オキサゾリジン化合物を用いることにより、これと水分との反応により再生する2級アミノ基と脂肪族系有機ポリイソシアネート由来のイソシアネート基との反応は、水分との反応より反応速度が大きなため硬化速度を速められ、後述する硬化促進触媒の使用量を低減することができるという効果をも有する。
オキサゾリジン化合物としては、具体的には、水酸基およびオキサゾリジン環を有する化合物の水酸基と、有機イソシアネート化合物のイソシアネート基や有機カルボン酸化合物のカルボキシル基とを反応させて得られる、ウレタン結合含有オキサゾリジン化合物やエステル基含有オキサゾリジン化合物あるいはまた、オキサゾリジンシリルエーテル、カーボネート基含有オキサゾリジンなどが挙げられ、製造し易く粘度の低い点でウレタン結合含有オキサゾリジン化合物が好ましい。
ウレタン結合含有オキサゾリジン化合物としては、水酸基およびオキサゾリジン環を有する化合物の水酸基と、有機イソシアネート化合物のイソシアネート基とを、イソシアネート基/水酸基のモル比が0.9〜1.2の範囲、好ましくは0.95〜1.05の範囲となるように使用し、有機溶剤の存在下または不存在下に50〜120℃の温度で反応して得られるものが挙げられる。
ウレタン結合含有オキサゾリジン化合物の合成に用いられる有機イソシアネート化合物は、前述のイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーの合成に用いられるのと同様のものが挙げられ、このうちウレタン結合含有オキサゾリジン化合物の結晶化度を低下させ、得られるシーリング材の作業性を良好にできる点で、脂肪族系有機ポリイソシアネートが好ましく、特にヘキサメチレンジイソシアネートが好ましい。
前記水酸基およびオキサゾリジン環を有する化合物としては、具体的には、アルカノールアミンの2級アミノ基と、ケトン化合物またはアルデヒド化合物のカルボニル基との脱水縮合反応により得られるN−ヒドロキシアルキルオキサゾリジンが挙げられ、この水酸基およびオキサゾリジン環を有する化合物の合成方法としては、アルカノールアミンの2級アミノ基1.0モルに対し、アルデヒドまたはケトンのカルボニル基が1.0モル以上、好ましくは1.0〜1.5倍モル、更に好ましくは1.0〜1.2倍モル使用し、トルエン、キシレン等の溶媒中で、加熱、還流し、副生する水を除去しながら脱水縮合反応を行う方法が挙げられる。過剰のアルデヒド化合物やケトン化合物は蒸留により除去すればよい。
アルカノールアミンとしてはジエタノールアミン、ジプロパノールアミン、N−(2−ヒドロキシエチル)−N−(2−ヒドロキシプロピル)アミンなどが挙げられる。ケトン化合物としては、アセトン、ジエチルケトン、イソプロピルケトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル−t−ブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどが挙げられる。アルデヒド化合物としては、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、イソバレルアルデヒド、2−メチルブチルアルデヒド、n−へキシルアルデヒド、2−メチルペンチルアルデヒド、n−オクチルアルデヒド、3,5,5−トリメチルへキシルアルデヒド等の脂肪族アルデヒド化合物;ベンズアルデヒド、メチルベンズアルデヒド、トリメチルベンズアルデヒド、エチルベンズアルデヒド、イソプロピルベンズアルデヒ、イソブチルベンズアルデヒド、メトキシベンズアルデヒド、ジメトキシベンズアルデヒド、トリメトキシベンズアルデヒド等の芳香族アルデヒド化合物などが挙げられる。
これらのうち、水酸基およびオキサゾリジン環を有する化合物の製造の容易さと、得られる1成分形室温硬化型シーリング材が硬化するときの発泡防止性に優れている点で、アルカノールアミンとしてはジエタノールアミンが好ましく、ケトン化合物またはアルデヒド化合物のうちアルデヒド化合物が好ましく、さらにイソブチルアルデヒド、2−メチルペンチルアルデヒド、ベンズアルデヒドが好ましい。これらの具体的な例として、2−イソプロピル−3−(2−ヒドロキシエチル)オキサゾリジン、2−(1−メチルブチル)−3−(2−ヒドロキシエチル)オキサゾリジン、2−フェニル−3−(2−ヒドロキシエチル)オキサゾリジンなどが挙げられる。
オキサゾリジンシリルエーテルは、前述した水酸基およびオキサゾリジン環を有する化合物と、トリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、トリエトキシシラン、ジメトキシジメチルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のアルコキシシランとの脱アルコール反応により得られる。
カーボネートオキサゾリジンは、前述した水酸基及びオキサゾリジン環を有する化合物とジアリルカーボネート等のカーボネートとを、ジエチレングリコール、グリセリン等の多価アルコールを用いて反応させることによって得ることができる。
エステルオキサゾリジンは、前述した水酸基及びオキサゾリジン環を有する化合物とジカルボン酸又はポリカルボン酸の低級アルキルエステルとの反応によって得ることができる。
なお、オキサゾリジン化合物は、分子内に、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーのイソシアネート基と5〜35℃の常温(または室温)で反応するアミノ基や水酸基等の活性水素基含有官能基あるいはイソシアネート基を有していないことが好ましい。これはウレタンプレポリマーの粘度上昇やオキサゾリジン化合物の発泡防止性能の低下を防止するためである。但し、前述のウレタン結合含有オキサゾリジン化合物の合成において、モル比の選択により少量の活性水素基含有官能基やイソシアネート基が分子内に残存する場合があるが、この場合は本発明の目的を達成する上で有していないとみなすことができる。なお、前記少量とは、分子内に残存する活性水素基含有官能基またはイソシアネート基の量が、好ましくはオキサゾリジン化合物1g当たり、0.05mmol以下、さらに好ましくは0.02mmol以下である。
前記オキサゾリジン化合物の使用量は、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー中のイソシアネート基1.0モルに対して、オキサゾリジン化合物が加水分解して再生する2級アミノ基の活性水素が0.3モル以上、さらに0.5〜1.0モルとなるように使用するのが好ましい。0.3モル未満では発泡防止が不十分となり好ましくない。
イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーとオキサゾリジン化合物を組み合わせた場合、オキサゾリジン化合物の加水分解触媒を使用することができる。この加水分解触媒はオキサゾリジン化合物が湿気と反応し加水分解をして活性水素を再生するのを促進するとともに、再生した活性水素と、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーのイソシアネート基との反応を促進させ、本発明のシーリング材の効果を促進させるために添加するものであり。金属系触媒、アミン系触媒、有機カルボン酸系触媒、燐酸エステル系触媒、p−トルエンスルホニルイソシアネート、p−トルエンスルホニルイソシアネートと水分との反応物などが挙げられる。
金属系触媒やアミン系触媒としては、後述する室温硬化性樹脂(A)の硬化促進触媒として挙げたのと同様の有機金属化合物、第3級アミン類、第3級アミン類とカルボン酸等の塩類などが挙げられる。
前記有機カルボン酸系化合物としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、カプロン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、2−エチルヘキサン酸(オクチル酸)、オクテン酸、ラウリン酸、オレイン酸、ステアリン酸等の脂肪族カルボン酸、マレイン酸、アクリル酸等のα、β−不飽和カルボン酸、フタル酸、安息香酸、サリチル酸等の芳香族カルボン酸、これらの酸無水物などが挙げられる。
燐酸エステル系化合物としては、正燐酸エステル化合物、亜燐酸エステル化合物などが挙げられ、正燐酸エステル化合物としては、エチルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、ブトキシエチルアシッドホスフェート、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート等の酸性燐酸エステル化合物などが挙げられ、亜燐酸エステル化合物としては、トリエチルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、ジフェニルモノ(2−エチルヘキシル)ホスファイト、ジフェニルモノデシルホスファイト等の亜燐酸トリエステル化合物、ジラウリルハイドロゲンホスファイト、ジオレイルハイドロゲンホスファイト、ジフェニルハイドロゲンホスファイト等の亜燐酸ジエステル化合物などが挙げられる。
前記p−トルエンスルホニルイソシアネートと水分との反応物は、シーリング材に配合する前に、p−トルエンスルホニルイソシアネートと水分とを予め反応して得られたものであっても良いし、p−トルエンスルホニルイソシアネートをシーリング材に配合している間に水分を添加して反応させたもの、あるいはシーリング材中に存在する水分と反応したものであっても良いし、あるいはまた、シーリング材に配合した後、貯蔵中に、後述する添加剤中などに含まれる水分と反応して生成したものであってもよい。
これらは単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、これらのうち硬化促進効果が優れている点で、リン酸エステル系化合物、有機カルボン酸系化合物、p−トルエンスルホニルイソシアネートおよびp−トルエンスルホニルイソシアネートと水分との反応物などからなる群から選択される1種または2種以上が好ましく、さらに、燐酸エステル系化合物、p−トルエンスルホニルイソシアネートおよびp−トルエンスルホニルイソシアネートと水分との反応物が好ましく、特にp−トルエンスルホニルイソシアネートがシーリング材の貯蔵安定性向上剤を兼ねて使用できるため好ましい。
前記オキサゾリジン化合物の加水分解触媒の配合量は、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー100質量部に対して、0.001〜10質量部が好ましく、さらに0.1〜5質量部が好ましい。0.001質量部未満だと加水分解促進の効果が少なく、10質量部を超えるとシーリング材の貯蔵安定性や硬化物の耐水性、耐熱性を悪化させるため好ましくない。
前記架橋性シリル基含有有機重合体は、有機重合体に導入した架橋性シリル基が室温で湿気などの水分と加水分解反応して生成したシラノール基が縮合反応して、架橋、硬化することにより、この架橋性シリル基含有有機重合体からなるシーリング材は、1成分形室温硬化型として使用できる。有機重合体としては、主鎖が(メタ)アクリル系重合体;ポリオキシアルキレン系重合体;ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン等の脂肪族炭化水素系重合体;ポリエステル系重合体;これらの共重合体又は混合物などが挙げられる。まお、本発明において、「(メタ)アクリル」とは「アクリル又はメタクリル」を意味する。
架橋性シリル基含有有機重合体の数平均分子量は1,000以上、特に6,000〜30,000で分子量分布が狭いものが、硬化性組成物の粘度が低下し作業性が良好となり、かつ硬化後の応力、伸び等のゴム弾性物性も良好となるため好ましい。
架橋性シリル基は、組成物の硬化性や硬化後の物性などの点から、分子内に0.2個以上、特に0.4〜5.0個含まれるのが好ましい。
更に、架橋性シリル基は、架橋しやすく製造しやすい次の一般式で示されるものが好ましい。
Figure 0005597912
(式中、Rは炭化水素基であり、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基又は炭素数7〜20のアラルキル基が好ましく、メチル基が最も好ましい。Rが複数の場合には同じ基であっても異なった基であってもよい。Xで示される反応性基は水素原子、水酸基、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミド基、酸アミド基、メルカプト基、アルケニルオキシ基及びアミノオキシ基より選ばれる加水分解性の基であり、Xが複数の場合には、Xは同じ基であっても異なった基であってもよい。このうちXはアルコキシ基が好ましく、メトキシ基又はエトキシ基が最も好ましい。aは0、1又は2の整数であり、0又は1が好ましい。)
架橋性シリル基の重合体主鎖への導入は、
(a)末端に水酸基などの官能基を有するポリオキシアルキレン系や(メタ)アクリル系などの重合体に、この官能基に対して反応性を示す活性基及び不飽和基を有する有機化合物(例えばアリルイソシアネート)を反応させ、次いで、導入された不飽和基に加水分解性基を有するヒドロシランを作用させてヒドロシリル化する方法、
(b)末端に水酸基、エポキシ基やイソシアネート基などの官能基を有するポリオキシアルキレン系や(メタ)アクリル系などの重合体に、この官能基に対して反応性を示す官能基及び架橋性シリル基を有する化合物を反応させる方法(この反応性官能基及び架橋性シリル基を有する化合物としては、アミノ基含有シラン類、メルカプト基含有シラン類、エポキシ基含有シラン類、重合性不飽和基含有シラン類、イソシアネート基含有シラン類などが挙げられる)、
(c)重合性不飽和結合と架橋性シリル基を有する化合物(例えば、CH=CHSi(OCH やCH=CHCOO(CHSi(OCH)と(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体とを共重合させる方法、
(d)重合性不飽和結合と官能基を有する化合物(例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートあるいは(メタ)アクリル酸アリルなど)を(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体などと共重合させ、次いで生成する共重合体を前記の反応性官能基及び架橋性シリル基を有する化合物(例えば、イソシアネート基と−Si(OCH 基を有する化合物や、トリメトキシシラン、トリエトキシシランなどの加水分解性基を有するヒドロシラン類)と反応させる方法、
などの公知の方法で行うことができる。
架橋性シリル基含有有機重合体の主鎖は、作業性、硬化後のゴム弾性物性、耐候性などが優れている点で、ポリオキシアルキレン系重合体及び/又はポリ(メタ)アクリル変性ポリオキシアルキレン系重合体が好ましい。
なお、本発明においては、「及び/又は」とは、それぞれ単独であってもよいし、それぞれの組み合わせであっても良いことを意味する。
また、「ポリ(メタ)アクリル変性ポリオキシアルキレン系重合体」とは、ポリオキシアルキレン系重合体を(メタ)アクリル重合体で変性したものであり、ポリオキシアルキレン系重合体に(メタ)アクリル系単量体をブロック又はペンダント共重合して変性したもの、ポリオキシアルキレン系重合体に(メタ)アクリル系重合体を混合して変性したもの、ポリオキシアルキレン系重合体中で(メタ)アクリル系単量体を重合して変性したものなどが挙げられる。
前記架橋性シリル基含有ポリオキシアルキレン系重合体又は架橋性シリル基含有ポリ(メタ)アクリル変性ポリオキシアルキレン系重合体は、ポリオキシアルキレン系ポリオール又はポリ(メタ)アクリル系ポリオールのそれぞれと、架橋性シリル基含有イソシアネート化合物と、場合により耐水性などの向上のためにさらに有機イソシアネートとを、逐次あるいは同時に反応させて得る方法が、低コストで製造できる点で好ましい。
この反応の際には、前記イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーの合成において使用されるウレタン化触媒と同様のものを反応触媒として、また公知の有機溶媒を用いることもできる。
また、前記ポリオキシアルキレン系ポリオールや有機イソシアネートは、前記イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーの合成で使用したものと同様のものが使用できる。
前記ポリ(メタ)アクリル系ポリオールは、水酸基含有(メタ)アクリル系単量体を少なくとも含有するエチレン性不飽和化合物を重合開始剤の存在下又は不存在下に、そして溶剤の存在下又は不存在下において、バッチ式又は連続重合などの公知のラジカル重合の方法により、好ましくは150〜350℃、さらに好ましくは210〜250℃で高温連続重合反応して得られるものが、反応生成物の分子量分布が狭く低粘度になるため好適である。ポリ(メタ)アクリル系ポリオールは、水酸基含有(メタ)アクリル系単量体を単独で重合して得られるものであってもよく、この2種以上を共重合して得られるものであってもよく、さらにこれらそれぞれの1種又は2種以上とこれら以外のエチレン性不飽和化合物とを重合して得られるものであってもよい。これらのうち、ポリ(メタ)アクリル系ポリオールの水酸基の含有量を調節することが容易で、硬化樹脂の物性を選択しやすい点から、水酸基含有(メタ)アクリル系単量体の1種又は2種以上とこれら以外のエチレン性不飽和化合物の1種又は2種以上とを共重合して得られるものが好ましい。この共重合の際、それぞれ1種又は2種以上の水酸基含有(メタ)アクリル系単量体を、ポリ(メタ)アクリル系ポリオール1分子あたり平均水酸基官能数が1.0〜10個となるように使用するのが好ましく、さらに好ましくは1.2〜3個となるように使用するのが好ましい。平均水酸基官能数が10個を超えると、硬化後の物性が硬くなりすぎてゴム状弾性がなくなる。このうち、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の数平均分子量が500〜30,000、さらに1,000〜15,000、Tgが0℃以下、さらに−70〜−20℃、特に−70〜−30℃、25℃における粘度が100,000mPa・s以下、特に50,000mPa・s以下のポリ(メタ)アクリル系ポリオールが好ましい。数平均分子量30,000、Tg0℃、25℃における粘度100,000mPa・sをそれぞれ超えると、得られる1成分形室温硬化型シーリング材の施工時の作業性が悪くなる。
水酸基含有(メタ)アクリル系単量体としては、架橋性シリル基含有イソシアネート化合物や有機イソシアネートのイソシアネート基との反応性の良さ、および得られる架橋性シリル基含有樹脂の粘度の点から、アルコール性水酸基含有(メタ)アクリル系単量体が好ましく、具体的には、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートモノステアレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の多価アルコールのモノアクリレート類又は水酸基残存ポリアクリレート類などが挙げられる。
その他のエチレン性不飽和化合物としては、エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエン、クロロプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、(メタ)アクリル酸、酢酸ビニル、スチレン、2−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸セチル、(メタ)アクリル酸ベヘニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、グリシジル(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アクリル酸ダイマー、ポリエステルポリ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらのうち、エチレン性不飽和化合物としては、耐候性と共に硬化後の特性などの点から、(メタ)アクリル酸エステル系化合物のモノマー、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリルなどの(メタ)アクリル系化合物が好ましく、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルが更に好ましい。
これらは単独であるいは2種以上を混合し使用できる。また場合により炭素数9以下の(メタ)アクリル系単量体の1種又は2種以上と炭素数10以上の(メタ)アクリル系単量体の1種又は2種以上とを組み合わせて使用してもよい。
前記架橋性シリル基含有イソシアネート化合物は、分子内に1個以上のイソシアネート基と1個以上の架橋性シリル基を少なくとも含有すればよいが、反応の制御のしやすさ、硬化後のゴム弾性が良好な点から、分子内に1個のイソシアネート基と1個の架橋性シリル基を含有する化合物が好ましい。架橋性シリル基含有イソシアネート化合物としては、具体的には、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルメチルジエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルイソプロポキシシラン、イソシアネートトリメトキシシラン、ジイソシアネートジメトキシシランなどが挙げられ、これらは単独であるいは2種以上を混合し使用できる。これらのうち、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシランが好ましい。
なお、本発明においては、前記架橋性シリル基含有有機重合体として、変成シリコーンポリマーの名で市販されているものも使用でき、分子内に架橋性シリル基を含有し、主鎖がポリオキシアルキレン系重合体のものとして、カネカ社製のMSポリマーシリーズの、S203、S303;旭硝子社製のエクセスターシリーズの、ES−S2410、ES−S3610、ES−S3630などが挙げられ、また、ポリ(メタ)アクリル変性をした架橋性シリル基含有ポリオキシアルキレン系重合体のものとして、カネカ社製のMSポリマーシリーズの、S903、S943などが挙げられ、これら市販品単独又はこれら市販品と前述の反応により製造した架橋性シリル基含有ポリオキシアルキレン系重合体、架橋性シリル基含有ポリ(メタ)アクリル系重合体のそれぞれと組み合わせることもできる。
前記ポリサルファイド系樹脂は、ポリサルファイド樹脂、変性ポリサルファイド樹脂が挙げられ、分子中に含有するメルカプト基が、室温で大気中の水分や酸素などと反応し、ジスルフィド結合を生成して硬化することにより、このポリサルファイド系樹脂からなるシーリング材は、1成分形室温硬化型として使用できる。
ポリサルファイド樹脂は、末端に2個以上のメルカプト基を有する、下記一般式(1)に表される、数平均分子量が500〜100,000、好ましくは1,000〜20,000の重合体が挙げられ、潜在硬化剤として配合した二酸化鉛、二酸化カルシウム、二酸化バリウム、二酸化亜鉛等の金属過酸化物が湿気により反応して生成した過酸化水素により酸化縮合反応して硬化することにより、この樹脂からなるシーリング材は、1成分形室温硬化型として使用できる。

HS−(R−S−R−SH (1)

(但し、(1)式中、mの平均値は1.2〜2.8であり、nは2〜50の整数である。Rは炭素数2〜16のアルキル基又はエーテル結合含有アルキル基である。)
前記Rとしては、−CH(CH)CH−、−CHCH−O−CHCH−、−CHCH−、−CHCH−O−CH−O−CHCH−、−CH(CH)CH−O−(CH)CH−O−CH(CH)CH−、−CHCH−O−(CHCH−O)−CHCH−(p=1〜30)などが挙げられ、粘度が低く作業性や硬化性が良好な点で、−CHCH−O−CH−O−CHCH−(エチルホルマール基)が好ましい。
変性ポリサルファイド樹脂は、末端にメルカプト基を有するが、主鎖にスルフィド結合を有さずに、ポリオキシアルキレン基とウレタン結合を有する樹脂であり、メルカプト基がジメチルチオカルバミン酸第三鉄等を硬化触媒として、室温で空気中の酸素と反応し硬化することによりこの樹脂からなるシーリング材は、1成分形酸素硬化型とすることができる。
次いで、本発明において第2の成分となるウレイレン基含有有機化合物(B)成分について説明する。ウレイレン基含有有機化合物(B)は、室温で微細な固形状物であり、室温硬化性樹脂(A)に配合することにより、得られる1成分形室温硬化型シーリング材を垂直目地等に充填したとき垂れないように(スランプしないように)揺変性を付与する効果とともに、後述するようなワーキングジョイントに対して充填施工した際、硬化途中に変位(ムーブメント)を受けても損傷のない硬化シーリング目地を形成させる効果をも付与するものである。
なお、本発明の1成分形室温硬化型シーリング材が硬化途中のムーブメント追従性に優れているのは、シーリング材中に存在するウレイレン基含有有機化合物(B)が、そのウレイレン基の水素結合の強さと、極めて微小な固形状で分散していることにより、シーリング材が硬化途中に変位を受けたとき、表面の硬化部分と内部の未硬化部分の歪の差を縮め、あたかも全体的に効果が進行しているように働くためと推察される。
さらに、得られる1成分形室温硬化型シーリング材のチクソトロピック指数が、4.5〜8.0、さらに4.5〜7.0、特に5.0〜6.0となるように、ウレイレン基含有有機化合物(B)を使用したとき、硬化途中のムーブメント追従性がより優れたものとなり好ましい。これは、チクソトロピック指数が4.5を下回る低いものであると、硬化途中に変位を受けた際の歪に対する抵抗性が弱く、硬化物に気泡、亀裂などの損傷を生じ、8.0を超え高すぎると、シーリング材の粘性が大きく低下し、硬化途中に変位を受けた際、逆に亀裂を生じ、硬化途中のムーブメント追従性が低下するためと推察される。 ウレイレン基含有有機化合物(B)の使用量は、室温硬化性樹脂(A)100質量部に対して、0.1質量部以上、さらに1〜50質量部、特に1〜20質量部配合するのが好ましい。配合量が0.1質量部を下回ると揺変付与効果と硬化途中のムーブメント追従性付与効果が低下するため好ましくない。
前記ウレイレン基含有有機化合物(B)は、分子内にウレイレン基(−NHCONH−)を少なくとも1個有する有機化合物であり、有機イソシアネートとアミン化合物との反応生成物が好ましいものとして挙げられる。
有機イソシアネートとアミン化合物との反応は、室温〜120℃の温度で、後述する可塑剤や有機溶剤などの液状の有機媒体あるいは前述の室温硬化性樹脂の存在下あるいは不存在下に、イソシアネート基/アミノ基のモル比が好ましくは0.5〜2.0/1.0、さらに好ましくは0.8〜1.2/1.0の範囲で反応する方法が挙げられる。イソシアネート基/アミノ基のモル比が0.5/1.0を下回ると揺変付与効果が低下し、2.0/1.0を超えると未反応のイソシアネート基が多く残り、発砲などの悪影響が生じるため好ましくない。
なお、有機イソシアネートとアミン化合物を媒体なしに直接反応させる場合は、反応後の固形物を粉砕機を用いて粉砕すればよいが、有機媒体存在下で反応する方が、製造が容易で、ウレイレン基含有有機化合物(B)が有機媒体中に微細な固形物として分散したものが得られ、シーリング材に配合しやすいため好ましい。
この反応において用いる装置としては、前述のイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーの合成において用いるものと同様の反応装置も使用できるが、ディゾルバー式攪拌機、3本ロール式攪拌機、ニーダー式攪拌機、ルーダー式攪拌機、プラネタリー式攪拌機などの高せん断力を与えることができる攪拌機を備えた反応装置の方が、得られるウレイレン基含有有機化合物(B)が、より微細に分散し、1成分形室温硬化型シーリング材に対する揺変付与効果に加えて、硬化途中のムーブメント追従性を付与する効果が向上するため好ましい。
室温硬化性樹脂(A)にウレイレン基含有有機化合物(B)を配合する方法としては、予めフタル酸ジオクチル等の後述する可塑剤や有機溶剤などの有機媒体存在下で、有機イソシアネートとアミン化合物とを反応させた分散体を合成し、これを室温硬化性樹脂(A)に配合する方法と、室温硬化性樹脂(A)の存在下で有機イソシアネートとアミン化合物とを反応させて分散する方法が挙げられる。なお、後者の方法は、室温硬化性樹脂(A)がイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーの場合には、プレポリマー中のイソシアネート基もアミン化合物と反応してしまうため使用できない。
前記有機イソシアネートとしては、前述したイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーの合成に使用したのと同様の有機イソシアネートが挙げられ、それらのうち、揺変性付与効果と硬化途中のムーブメント追従性効果に優れている点で、芳香族ポリイシアネートが好ましく、さらにMDI類が好ましく、特に4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートが好ましい。
前記アミン化合物としては、分子内にアミノ基を少なくとも1個有する化合物が挙げられ、前記アミノ基としては、第1級アミノ基や第2級アミノ基が挙げられる。
第1級アミノ基を有するモノアミンとしては、ブチルアミン、イソブチルアミン、ヘキシルアミン、へプチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、オクチルアミン、3−メトキシプロピルアミン、テトラデシルアミン、セチルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、トリメチルシクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、アニリンなどが挙げられる。
また、第1級アミノ基を有するジアミンとしては、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,2−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、ヘキサメチレンジアミン、1,7−ジアミノへプタン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカン、1,13−ジアミノトリデカン、1,14−ジアミノテトラデカン、1,15−ジアミノペンタデカン、1,16−ジアミノヘキサデカン、1,17−ジアミノヘプタデカン、1,18−ジアミノオクタデカン、イソホロンジアミン、ジアミノジシクロへキシルメタン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン、キシレンジアミン、フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジエチルフェニルメタン、ポリオキシエチレンジアミン、ポリオキシプロピレンジアミンなどが挙げられる。
第1級アミノ基を有するトリアミンとしては、トリ(メチルアミノ)へキサンなどが挙げられる。
第2級アミノ基を有するモノアミンとしては、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ジヘキシルアミン、ジ−2−エチルヘキシルアミン、ジフェニルアミン、ジラウリルアミン、ジステアリルアミン、メチルラウリルアミンなどが挙げられる。
第2級アミノ基を有するジアミンとしては、N,N´−ジラウリルプロピルジアミン、N,N´−ジステアリルブチルジアミン、N−ブチル−N´−ラウリルエチルジアミン、N−ブチル−N´−ラウリルプロピルジアミン、N−ラウリル−N´−ステアリルブチルジアミンなどが挙げられる。
第1級アミノ基と第2級アミノ基を有するポリアミンとしては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、メチルアミノプロピルアミンなどが挙げられ、これらは単独であるいは2種以上を混合して使用することができる。これらのうち、揺変性付与効果と硬化途中のムーブメント追従性付与効果の大きさから第1級アミンが好ましく、さらに第1級モノアミンが好ましく、特にn−ブチルアミンが好ましい。
本発明においては、前記室温硬化性樹脂(A)成分とウレイレン基含有有機化合物(B)成分に加えて、さらに添加剤(C)を配合することが好ましい。添加剤(C)としては、ウレイレン基含有有機化合物(B)以外の揺変性付与剤、硬化促進触媒、耐候安定剤、充填剤、接着性付与剤、貯蔵安定性改良剤(脱水剤)、着色剤、可塑剤などが挙げられ、これらは単独で、または2種以上を組み合わせて使用できる。
本発明においては、ウレイレン基含有有機化合物(B)が揺変性付与効果に優れているため、これ以外の揺変性付与剤を特に必要としないが、必要に応じて(B)成分以外の揺変性付与剤を使用してもよい。(B)成分以外の揺変性付与剤としては、有機酸系化合物表面処理炭酸カルシウム、親水性コロイダルシリカ、疎水性コロイダルシリカ等の無機系揺変性付与剤;脂肪酸アマイド、有機ベントナイト等の有機系揺変性付与剤などが挙げられる。これらのうち、得られる1成分形室温硬化型シーリング材の吐出作業性を良好にできる点で有機酸系化合物表面処理炭酸カルシウムが好ましい。有機酸系化合物表面処理炭酸カルシウムは、合成炭酸カルシウム等の微粉末炭酸カルシウムの表面を、ステアリン酸等の脂肪酸またはそのアルキルエステル、ステアリン酸カルシウム等の脂肪酸金属塩、樹脂酸などの有機酸系化合物で処理したものである。これらの市販品としては、白石工業社製の白艶華シリーズのCC、DD、CCR、U、丸尾カルシウム社製のカルファインシリーズの100、200、200Mなどがある。ウレイレン基含有有機化合物(B)以外の揺変性付与剤の使用量は、室温硬化性樹脂(A)100質量部に対して、0〜300質量部、さらに1〜100質量部が好ましい。
硬化促進触媒は、前記室温硬化性樹脂(A)の水分や酸素との反応を促進し、1成分形室温硬化型シーリング材の硬化を促進するため使用するものである。
具体的には、有機金属化合物、アミン類等が挙げられ、有機金属化合物としては、オクチル酸錫、ナフテン酸錫等の2価の有機錫化合物、ジブチル錫ジオクトエート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジマレエート、ジブチル錫ジステアレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジバーサテート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ビス(トリエトキシシリケート)、ジブチル錫オキサイドとフタル酸エステルとの反応物等の4価の有機錫化合物、ジブチル錫ビス(アセチルアセトナート)、錫系キレート化合物の旭硝子社製EXCESTAR C−501、ジルコニウムテトラキス(アセチルアセトナート)、チタンテトラキス(アセチルアセトナート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトナート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アセチルアセトンコバルト、アセチルアセトン鉄、アセチルアセトン銅、アセチルアセトンマグネシウム、アセチルアセトンビスマス、アセチルアセトンニッケル、アセチルアセトン亜鉛、アセチルアセトンマンガン等の各種金属のキレート化合物、テトラ−n−ブチルチタネート、テトラプロピルチタネート等のチタン酸エステル類、その他、オクチル酸鉛やオクチル酸ジルコニウム等のマンガン、鉄、コバルト、銅、亜鉛、ジルコニウム、鉛、ビスマス等の錫以外の各種金属と、オクチル酸、ステアリン酸、ナフテン酸等の各種有機酸との金属有機酸塩などが挙げられ、アミン類としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリエチレンジアミン、ヘキサメチレンテトラミン、1,8−ジアザビシクロ〔5,4,0〕ウンデセン−7(DBU)、1,4−ジアザビシクロ〔2,2,2〕オクタン(DABCO)、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン等の第3級アミン類、或いはこれらのアミン類とカルボン酸等の塩類などが挙げられる。これらは単独で或いは2種以上を混合して使用できる。これらのうち、反応速度が高く、毒性及び揮発性の比較的低い液体である点から有機金属化合物が好ましく、更に有機錫化合物や金属キレート化合物が好ましく、特にジブチル錫ビス(アセチルアセトナート)が好ましい。
硬化促進触媒は、硬化速度、硬化物の物性などの点から、室温硬化性樹脂(A)100質量部に対して、0.001〜10質量部、特に0.01〜2質量部配合するのが好ましい。
前記耐候性安定剤は、室温硬化性樹脂(A)の硬化物の酸化や光劣化、熱劣化を防止して、耐候性だけではなく耐熱性をさらに向上させるために使用する。耐候性安定剤としては、具体的には、ヒンダードアミン系光安定剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、紫外線吸収剤などが挙げられる。
ヒンダードアミン系光安定剤としては、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、メチル−1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケート、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどが挙げられる。また、旭電化工業社製のアデカスタブシリーズのLA−52、LA−57、LA−62、LA−67、LA−77、LA−82、LA−87などの分子量1000未満の低分子量ヒンダードアミン系光安定剤、同じくLA−63P、LA−68LD或いはチバスペシャルティケミカルズ社製の商品名CHIMASSORBシリーズの119FL、2020FDL、944FD、944LDなどの分子量1000以上の高分子量ヒンダードアミン系光安定剤なども挙げられる。
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−t e r t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t e r t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N′−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−t e r t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオアミド]、ベンゼンプロパン酸3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシC7−C9側鎖アルキルエステル、2,4−ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノールなどが挙げられる。
紫外線吸収剤としては、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノールなどのトリアジン系紫外線吸収剤、オクタベンゾンなどのべンゾフェノン系紫外線吸収剤、2,4−ジ−tert−ブチルフェニル−3,5−ジ−t e r t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエートなどのベンゾエート系紫外線吸収剤が挙げられる。
これらは、単独または2種以上を組み合わせて使用できるが、これらのうちヒンダードアミン系光安定剤単独またはヒンダードフェノール系酸化防止剤単独、あるいはヒンダードアミン系光安定剤とヒンダードフェノール系酸化防止剤との組み合わせ、すなわち、ヒンダードアミン系光安定剤および/またはヒンダードフェノール系酸化防止剤が、耐候性の向上に優れているため好ましい。
耐候安定剤は、室温硬化性樹脂(A)100質量部に対して、0.1〜30質量部、さらに1〜20質量部、特に1〜10質量部配合するのが好ましい。
充填剤、接着性向上剤、貯蔵安定性向上剤(脱水剤)、着色剤などは、それぞれ物性補強や増量、接着性の向上、貯蔵安定性の向上、着色などのために使用することができる。
充填剤としては、マイカ、カオリン、ゼオライト、グラファイト、珪藻土、白土、クレー、タルク、スレート粉、無水ケイ酸、石英微粉末、アルミニウム粉末、亜鉛粉末、沈降性シリカなどの合成シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、アルミナ等の無機粉末状充填剤;ガラス繊維、炭素繊維などの繊維状充填剤;木粉、クルミ穀粉、もみ殻粉、パルプ粉、木綿チップ、ゴム粉末、さらにポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂等の熱可塑性樹脂或いは熱硬化性樹脂の粉末等の有機系充填剤の他、水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウムなどの難燃性付与充填剤なども挙げられ、粒径0.01〜1,000μmのものが好ましい。
接着性付与剤としては、カップリング剤のほかに、エポキシ樹脂、アルキルチタネート類、有機ポリイソシアネート等が挙げられる。カップリング剤としては、シラン系、アルミニウム系、ジルコアルミネート系などの各種カップリング剤及び/又はその部分加水分解縮合物が挙げられる。これらのうちシランカップリング剤及び/又はその部分加水分解縮合物が接着性に優れている点で好ましい。
シラン系カップリング剤としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等の官能基を有するアルコキシシラン類やイソプロペノキシシラン類などで分子量500以下、好ましくは400以下の低分子化合物及び/又はシラン系カップリング剤の1種または2種以上の部分加水分解縮合物で分子量200〜3,000の化合物を挙げられる。
貯蔵安定性改良剤としては、シーリング材組成物中に存在する水分と反応する、前記ビニルトリメトキシシランなどの低分子の架橋性シリル基含有化合物、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、p−トルエンスルホニルイソシアネートなどが挙げられる。
着色剤としては、酸化チタンや酸化鉄などの無機系顔料、銅フタロシアニンなどの有機系顔料、カーボンブラックなどが挙げられる。
充填剤、接着性付与剤、貯蔵安定改良剤(脱水剤)及び着色剤の合計の配合量は、室温硬化性樹脂(A)100質量部に対して、0〜500質量部、更に10〜300質量部、特に10〜200質量部が好ましい。
可塑剤は、本発明の1成分形室温硬化型シーリング材のゴム弾性物性の調節や粘度を下げる目的で使用され、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ブチルベンジル等のフタル酸エステル類、アジピン酸ジオクチル、コハク酸ジイソデシル、セバシン酸ジブチル、オレイン酸ブチル等の脂肪族カルボン酸エステル類、ペンタエリスリトールの酢酸エステル類等の多価アルコールのエステル類、リン酸トリオクチル、リン酸トリクレジル等のリン酸エステル類、塩素化パラフィン等のパラフィン系炭化水素類などが挙げられる。
可塑剤の使用量は、室温硬化性樹脂(A)100質量部に対して、1〜200質量部、さらに10〜100質量部使用するのが好ましい。1質量部未満ではゴム弾性物性の調節や後述する有機分散媒体として使用したときの量が不十分であり、200質量部を超えるとゴム弾性物性が低下するため好ましくない。
本発明において、前記添加剤(C)成分の他に1成分形ウレタン系シーリング材組成物の粘度を下げ、作業性を向上させる目的で有機溶剤を使用することができるが、近年の環境保全意識の高まりのなかで、その使用量はできるだけ抑えることが好ましく、1成分形室温硬化型シーリング材中に10質量%未満、さらに5は質量%未満となるように使用するのが好ましい。有機溶剤としては、イソシアネート基、架橋性シリル基またはメルカプト基などの室温硬化性樹脂(A)の反応性官能基に対して不活性であればどのようなものでもよいが、アセトンやメチルエチルケトン等のケトン系溶剤、酢酸エチルや酢酸ブチル等のエステル系溶剤、n−ヘキサン等の脂肪族系溶剤、シクロヘキサン等の脂環族系溶剤、トルエンやキシレン等の芳香族系溶剤、ミネラルスピリットや工業ガソリン等の石油留分系溶剤などの従来公知の溶剤が挙げられる。
なお、前記有機溶剤や可塑剤は、室温硬化性樹脂(A)の反応性官能基、有機イソシアネートのイソシアネート基およびアミン化合物のアミノ基に対して不活性であり、前述のウレイレン基含有有機化合物(B)の合成において液体状の有機分散媒体として使用される。有機分散媒体としては、高沸点のため、可塑剤が好ましい。
次に、本発明の1成分形室温硬化型シーリング材が施工の対象とする、硬化途中に大きな変位をする目地について説明する。この目地は、いわゆる建築ワーキングジョイントあるいはワーキングジョイント目地と呼ばれ、中高層ビル等の建築物において、金属カーテンウオールやプレキャストコンクリートパネルなどの外装部材を張り合わせて外壁を構築したときに形成される目地、或いは金属サッシ回りや笠木などに形成される目地で、気温や日照等の温度変化による部材の膨張もしくは収縮、又は各種振動もしくは風圧などの作用によって部材間の変位が大きく、動き(ムーブメント)の大きな目地のことをいう。
前記ワーキングジョイントを形成する部材としては、コンクリート等のセメント系部材、アルミニウム板、ステンレス板、鋼板、チタン板、銅板等の金属製部材が挙げられるが、温度変化による膨張や収縮の度合いが大きく目地の変位も大きくなるため、金属製部材に形成されたワーキングジョイントの目地を施工の対象として、本発明の1成分形室温硬化型シーリング材を使用したとき、本発明の効果を最大限に発揮できるため好ましい。
また、前記中高層ビルは、本発明の1成分形室温硬化型シーリング材の効果を最大限に発揮できる点で、5階建て以上、さらに10階建て以上、特に20階建て以上の高層ビルを施工の対象に、さらにビルの5階以上の部分、さらに10階以上の部分に形成されるワーキングジョイントを施工の対象とすることが好ましい。
また、ワーキングジョイントの目地の変位は、拡大する場合と縮小する場合があるが、どちらかの場合において、その変位量が、設計の目地幅寸法の5%以上、さらに10%以上、特に15%以上になる目地を施工の対象としたとき、本発明の効果を最大限に発揮でき好ましい。
また、本発明の1成分形室温硬化型シーリング材は硬化途中のムーブメント追従性に優れ、かつ揺変性に優れているため、ワーキングジョイントの設計の目地幅が10mm以上、さらに15mm以上、特に20mm以上の幅広の目地で、拡大あるいは縮小において、目地幅の変位量が0.5mm以上、さらに1mm以上、特に2mm以上になる目地に対して、そしてさらに設計目地幅が20mm以上の幅広の目地で、かつ目地幅の変位量が、拡大あるいは縮小において、1mm以上、さらに1.5mm以上、特に2mm以上の大きな変位となる目地に対して施工したとき、シーリング材がスランプすることなくきれいに施工でき、硬化途中に変位を受けても損傷のない、したがって硬化後の表面がきれいで防水性能に優れた硬化シーリング目地を形成することができるため好ましい。
本発明の1成分形室温硬化型シーリング材は、実際のビル建築外壁などのワーキングジョイントの動きを近似的に再現できる試験用目地を作製し、その目地に充填して引張り及び圧縮等の変位(ムーブメント)を与えながら硬化させても、損傷のない硬化物となること、すなわち硬化途中のムーブメント追従性が優れている性能を有していることが重要である。この性能を有していることにより、実際の中高層ビル建築等の外壁目地等のワーキングジョイントに充填施工して硬化させたとき、硬化途中に風圧、日照等の変化により目地が大きく動いても、損傷の無い硬化物からなる防水シーリング目地を形成することができ、漏水事故のない外壁等を形成することができるのである。すなわち本発明の1成分形室温硬化型シーリング材は、建築ワーキングジョイント用の1成分形室温硬化型シーリング材として極めて適したものとして使用できるものである。
前記建築ワーキングジョイントやサイディング外壁目地の動き(ムーブメント)を近似的に再現できる試験用目地は、試験機としては実際のワーキングジョイントの動きを近似的に与えることができるように設計されたものであればどのような試験機であってもよいが、具体的には、例えば、後述の実施例に挙げるような、JIS A 1439(1997)「建築用シーリング材の試験方法」、4.17耐久性試験の4.17.1のd)繰返し試験機に準拠したもので、拡大・縮小の変位サイクルを1日当たり少なくとも1サイクル、好ましくは1〜20,000サイクル、及びその変位幅(ムーブメント量)を0.1mm以上、更に好ましくは0.1〜100mm、特に好ましくは0.1〜20mmの間で可変設定できるように作製したものを繰返し試験機として用い、この試験機の固定部分と可動部分のそれぞれに設けた一対の治具にモルタルなどを成形して作製した試験用被着体を連結し、可動部分と連動させる構造とすることにより作製できる。また、この、繰返し試験機を特定の温度や湿度の雰囲気に置くことにより、温湿度の影響も試験することができる。
本発明の1成分形室温硬化型シーリング材は、湿気や酸素により増粘、硬化するものであるため、内容物の貯蔵安定性を保つため湿気や酸素を遮断できる容器に詰め、密封して貯蔵するのが好ましい。前記容器としては湿気や酸素を遮断できる容器であれば何でもよいが、例えばドラム缶、金属製や合成樹脂製のペール缶や袋状容器、紙製や合成樹脂製のカートリッジ状容器など各種の容器が挙げられる。
さらに、本発明の1成分形室温硬化型シーリング材の施工方法としては、具体的に、中高層ビル等の建築物の外壁目地やサッシ回り目地などのワーキングジョイント部分を公知の方法により、目地の清掃、ボンドブレーカーやバッカーの挿入、目地に沿ってのマスキングテープ貼り、指定のプライマー処理などを行い、ワーキングジョイント(目地)に対してシーリング材の打設(充填)準備を整える。次いで、予め用意しておいた前記密封容器に詰めた1成分形室温硬化型シーリング材を開封し、手動、電動或いは空気圧などで押出す方式のガンに装着し、準備を整えたワーキングジョイントに充填し、ヘラ等で余分のシーリング材をかき取り、表面を平らにした後、速やかにマスキングテープを除去して硬化させることにより、硬化途中に目地が動いても、損傷のない硬化物を形成し、漏水事故を起こす心配の無い防水シーリング目地を形成する方法を好適に挙げることができる。
以下に本発明の実施例を記すが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、実施例および比較例で得た1成分形室温硬化型シーリング材は湿気硬化型のものである。
[合成例1]イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーP−1の合成
攪拌機、温度計、窒素導入管および加熱・冷却装置の付いた反応容器に、窒素ガス気流下で、ポリオキシプロピレンジオール(旭硝子社製、商品名:エクセノール3021、数平均分子量3,300)を599gと、ポリオキシプロピレントリオール(三井化学ポリウレタン社製、MN−4,000、数平均分子量4,000)を285g仕込み、攪拌しながら4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業社製、ミリオネートMT、分子量250)を116gと、ジブチル錫ジラウレートを0.1g加えた後、加温して70〜80℃で2時間攪拌して反応をした。イソシアネート基含有量が理論値(1.47質量%)以下となった時点で室温まで冷却して反応を終了させ、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーP−1を合成した。
得られたイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーP−1は、滴定による実測イソシアネート基含有量1.38質量%の常温で粘稠な液体であった。
[合成例2]イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーP−2の合成
合成例1と同様の反応容器に、窒素ガス気流下で、ポリオキシプロピレンジオール(旭硝子社製、商品名:エクセノール3021、数平均分子量3,300)を621gと、ポリオキシプロピレントリオール(三井化学ポリウレタン社製、MN−4,000、数平均分子量4,000)を295g仕込み、攪拌しながら2,4−トルエンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業社製、コロネートT−100、分子量174.2)を84gと、ジブチル錫ジラウレートを0.1g加えた後、加温して70〜80℃で2時間攪拌して反応をした。イソシアネート基含有量が理論値(1.54質量%)以下となった時点で室温まで冷却して反応を終了させ、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーP−2を合成した。
得られたイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーP−2は、滴定による実測イソシアネート基含有量1.50質量%の常温で粘稠な液体であった。
[合成例3]ウレタン結合含有オキサゾリジン化合物O−1の合成
攪拌機、温度計、エステル管および加熱・冷却装置の付いた反応容器に、ジエタノールアミン(分子量105)を435gとトルエンを183g仕込み、攪拌しながらイソブチルアルデヒド(分子量72.1)を328g添加した後、加温して110〜150℃で3時間、副生する水を系外に除去しながら還流脱水反応をおこなった。除去した水の量は74.5gであった。次いで50〜70hPaに減圧しながら加熱し、トルエンと未反応のイソブチルアルデヒドを除去し、中間の反応生成物である2−イソプロピル−3−(ヒドロキシエチル)オキサゾリジンを得た。
得られた2−イソプロピル−3−(ヒドロキシエチル)オキサゾリジン659gに、さらにヘキサメチレンジイソシアネート(分子量168)を348g加え、80℃で8時間反応した。滴定による実測NCO含有量が0.0質量%となった時点を反応終点とし、分子内にウレタン結合によりオキサゾリジン環を2個有する化合物O−1を得た。得られたウレタン結合含有オキサゾリジン化合物O−1は、室温で半透明の液体であった。
[製造例1]ウレイレン基含有有機化合物の分散ペーストU−1の製造
ディゾルバー式攪拌機を備えた混練容器に、分散媒体としてフタル酸ジオクチルを400g仕込み、攪拌機の回転数600rpmで攪拌しながら4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業社製、ミリオネートMT、分子量250)を130g仕込み溶解した。次いで、攪拌機の回転数を3,000〜5,000rpmに上げ、予めフタル酸ジオクチル400g中にn−ブチルアミン(分子量73.1)を70g溶解して調製しておいた溶液を20〜40℃で滴下し、滴下後30分間高速攪拌を続け反応し、フタル酸ジオクチル分散媒体中に、20質量%の4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートとn−ブチルアミンの反応物であるウレイレン基含有有機化合物が微粒子状に分散した分散ペーストU−1を製造した。
得られた分散ペーストU−1は、室温で非常に揺変性の強いペースト状物であった。
[実施例1]
攪拌機、窒素導入管および加熱・冷却装置付き混練容器に、窒素ガス気流下で、合成例1で得たイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーP−1を100g仕込み、攪拌しながら、予めそれぞれ100〜110℃の乾燥機中で乾燥して水分含有量を0.05質量%以下にした重質炭酸カルシウム50gと酸化チタン10gを仕込み、内容物が均一になるまで混合した。次いで予めトルエン10gに下記のヒンダードアミン系光安定剤2gとヒンダードフェノール系酸化防止剤1gを溶解した溶解液13g、p−トルエンスルホニルモノイソシアネート0.3g、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(チッソ社製、サイラエースS510)を0.5gおよび製造例1で得たウレイレン基含有有機化合物の分散ペーストU−1を35g仕込み、さらに内容物が均一になるまで混合した。次いで、50〜70hPaで減圧脱泡し、ペーパーカートリッジ容器に充填、密封して、1成分形室温硬化型シーリング材S−1を調製した。なお、前記分散ペーストU−1の35g中に含まれるウレイレン基含有有機化合物の量は7gであり、フタル酸ジオクチルの量は28gである。
得られた1成分形室温硬化型シーリング材S−1は、室温で硬化する白色ペースト状液体であった。
ヒンダードアミン系光安定剤: チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、CHIMASSORB 944LD、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]
ヒンダードフェノール系酸化防止剤: チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、IRGANOX 1010、ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]
[実施例2]
実施例1において、酸化チタン10gを仕込んだ後、予め100〜110℃の乾燥機中で乾燥して水分含有量を0.05質量%以下にした脂肪酸表面処理炭酸カルシウム(白石工業社製、白艶華CCR)を50g仕込み内容物が均一になるまで混合し、そして予めトルエン10gに実施例1で使用したのと同様のヒンダードアミン系光安定剤2gのみを溶解した溶液12g、および製造例1で得たウレイレン基含有有機化合物の分散ペーストU−1を25g使用した以外は同様にして1成分形室温硬化型シーリング材S−2を調製した。なお、前記分散ペーストU−1の25g中に含まれるウレイレン基含有有機化合物の量は5gであり、フタル酸ジオクチルの量は20gである。
得られた1成分形室温硬化型シーリング材S−2は、室温で硬化する白色ペースト状液体であった。
[実施例3]
実施例1と同様の混練容器に、窒素ガス気流下で、合成例2で得たイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーP−2を100g仕込み、攪拌しながら、予めそれぞれ100〜110℃の乾燥機中で乾燥して水分含有量を0.05質量%以下にした重質炭酸カルシウム50gと酸化チタン10gを仕込み、内容物が均一になるまで混合した。次いで予めトルエン10gに実施例1と同様のヒンダードアミン系光安定剤2gとヒンダードフェノール系酸化防止剤1gを溶解した溶液13g、p−トルエンスルホニルモノイソシアネート0.3g、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(チッソ社製、サイラエースS510)を0.5g、合成例3で得られたウレタン結合含有オキサゾリジン化合物O−1を7gおよび製造例1で得たウレイレン基含有有機化合物の分散ペーストU−1を50g順次仕込み、さらに内容物が均一になるまで混合した。次いで、50〜70hPaで減圧脱泡し、ペーパーカートリッジ容器に充填、密封して、1成分形室温硬化型シーリング材S−3を調製した。なお、前記分散ペーストU−1の50g中に含まれるウレイレン基含有有機化合物の量は10gであり、フタル酸ジオクチルの量は40gである。
得られた1成分形室温硬化型シーリング材S−3は、室温で硬化する白色ペースト状液体であった。
[実施例4]
実施例3において、酸化チタン10gを仕込んだ後、予め100〜110℃の乾燥機中で乾燥して水分含有量を0.05質量%以下にした脂肪酸表面処理炭酸カルシウム(白石工業社製、白艶華CCR)を50g仕込み、そして、予めトルエン10gに実施例1で使用したのと同様のヒンダードアミン系光安定剤2gのみを溶解した溶液12g、および製造例1で得たウレイレン基含有有機化合物の分散ペーストU−1を25g使用した以外は同様にして1成分形室温硬化型シーリング材S−4を調製した。なお、前記分散ペーストU−1の25g中に含まれるウレイレン基含有有機化合物の量は5gであり、フタル酸ジオクチルの量は20gである。
得られた1成分形室温硬化型シーリング材S−4は、室温で硬化する白色ペースト状液体であった。
[実施例5]
実施例1と同様の混練容器に、アクリル変性をした架橋性シリル基含有ポリオキシプロピレン系樹脂(カネカ社製、MSポリマー S943)を100g仕込み、攪拌しながら、予めそれぞれ100〜110℃の乾燥機中で乾燥して水分含有量を0.05質量%以下にした重質炭酸カルシウム40gと酸化チタン10gを仕込み、内容物が均一になるまで混合した。次いで予めトルエン10gに実施例1と同様のヒンダードアミン系光安定剤2gとヒンダードフェノール系酸化防止剤1gを溶解した溶液13g、ビニルトリメトキシシラン(チッソ社製、サイラエース S210)を4g、アミノシランカップリング剤(チッソ社製、サイラエース S310、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン)を1g、製造例1で得たウレイレン基含有有機化合物の分散ペーストU−1を50g、およびジブチル錫ビスアセチルアセトナート(日東化成社製、ネオスタンU−220)を0.5g仕込み、さらに内容物が均一になるまで混合した。次いで、50〜70hPaで減圧脱泡し、ペーパーカートリッジ容器に充填、密封して、1成分形室温硬化型シーリング材S−5を調製した。なお、前記分散ペーストU−1の50g中に含まれるウレイレン基含有有機化合物の量は10gであり、フタル酸ジオクチルの量は40gである。
得られた1成分形室温硬化型シーリング材S−5は、室温で硬化する白色ペースト状液体であった。
[実施例6]
実施例5において、酸化チタン10gを仕込んだ後、予め100〜110℃の乾燥機中で乾燥して水分含有量を0.05質量%以下にした脂肪酸表面処理炭酸カルシウム(白石工業社製、白艶華CCR)を35g仕込み、そして予めトルエン10gに実施例1で使用したのと同様のヒンダードフェノール系酸化防止剤5gのみを溶解した溶液15gおよび製造例1で得たウレイレン基含有有機化合物の分散ペーストU−1を25g使用した以外は同様にして1成分形室温硬化型シーリング材S−6を調製した。なお、前記分散ペーストU−1の25g中に含まれるウレイレン基含有有機化合物の量は5gであり、フタル酸ジオクチルの量は20gである。
得られた1成分形室温硬化型シーリング材S−6は、室温で硬化する白色ペースト状液体であった。
[比較例1]
実施例1において、ウレイレン基含有有機化合物の分散ペーストU−1を使用しないで、代わりにウレイレン基含有有機化合物の分散ペーストU−1の35g中に含まれるのに相当するフタル酸ジオクチル28gを使用した以外は同様にして、1成分形室温硬化型シーリング材比較S−1を調製した。
得られた1成分形室温硬化型シーリング材比較S−1は、室温で硬化する、流動性のある白色の粘稠液体であった。
[比較例2]
実施例2において、ウレイレン基含有有機化合物の分散ペーストU−1を使用しないで、代わりにウレイレン基含有有機化合物の分散ペーストU−1の25g中に含まれるのに相当するフタル酸ジオクチル20gを使用した以外は同様にして、1成分形室温硬化型シーリング材比較S−2を調製した。
得られた1成分形室温硬化型シーリング材比較S−2は、室温で硬化する白色ペースト状液体であった。
[比較例3]
実施例3において、ウレイレン基含有有機化合物の分散ペーストU−1を使用しないで、代わりにウレイレン基含有有機化合物の分散ペーストU−1の50g中に含まれるのに相当するフタル酸ジオクチル40gを使用した以外は同様にして、1成分形室温硬化型シーリング材比較S−3を調製した。
得られた1成分形室温硬化型シーリング材比較S−3は、室温で硬化する、流動性のある白色の粘稠液体であった。
[比較例4]
実施例4において、ウレイレン基含有有機化合物の分散ペーストU−1を使用しないで、代わりにウレイレン基含有有機化合物の分散ペーストU−1の25g中に含まれるのに相当するフタル酸ジオクチル20gを使用した以外は同様にして、1成分形室温硬化型シーリング材比較S−4を調製した。
得られた1成分形室温硬化型シーリング材比較S−4は、室温で硬化する白色ペースト状液体であった。
[比較例5]
実施例5において、ウレイレン基含有有機化合物の分散ペーストU−1を使用しないで、代わりにウレイレン基含有有機化合物の分散ペーストU−1の50g中に含まれるのに相当するフタル酸ジオクチル40gを使用した以外は同様にして、1成分形室温硬化型シーリング材比較S−5を調製した。
得られた1成分形室温硬化型シーリング材比較S−5は、室温で硬化する、流動性のある白色の粘稠液体であった。
[比較例6]
実施例6においてウレイレン基含有有機化合物の分散ペーストU−1を使用しないで、代わりにウレイレン基含有有機化合物の分散ペーストU−1の25g中に含まれるのに相当するフタル酸ジオクチル20gを使用した以外は同様にして、1成分形室温硬化型シーリング材比較S−6を調製した。
得られた1成分形室温硬化型シーリング材比較S−6は、室温で硬化する白色ペースト状液体であった。
[実施例7]
実施例1において用いたのと同様の混練容器に、1成分系湿気硬化型ポリサルファイド系シーリング材(三洋工業社製、トプコールSP、ホワイト色)を220g仕込み、攪拌しながら、製造例1で得たウレイレン基含有有機化合物の分散ペーストU−1を25g仕込み、内容物が均一になるまで混合した。次いで、50〜70hPaで減圧脱泡し、ペーパーカートリッジ容器に充填、密封して、1成分形室温硬化型シーリング材S−7を調製した。なお、前記分散ペーストU−1の25g中に含まれるウレイレン基含有有機化合物の量は5gであり、フタル酸ジオクチルの量は20gである。
得られた1成分形室温硬化型シーリング材S−7は、室温で硬化する白色ペースト状液体であった。
[比較例7]
実施例7において、ウレイレン基含有有機化合物の分散ペーストU−1を使用しないで、代わりにウレイレン基含有有機化合物の分散ペーストU−1の25g中に含まれるのに相当するフタル酸ジオクチル20gを使用した以外は同様にして、1成分形室温硬化型シーリング材比較S−7を調製した。
得られた1成分形室温硬化型シーリング材比較S−7は、室温で硬化する白色ペースト状液体であった。
実施例1〜7で得た1成分形室温硬化型シーリング材S−1〜S−7および比較例1〜7で得た1成分形室温硬化型シーリング材比較S−1〜比較S−7を使用して、以下に示す試験方法により試験した結果を、配合組成とともに、表1及び表2に示す。
[試験方法]
(1)スランプ
JIS A 1439(1997、改正2002)「建築用シーリング材の試験方法」の「4.1 スランプ試験」により、幅20mmの溝形容器を用い、23℃におけるスランプ(縦)を測定した。
なお、1成分形室温硬化型シーリング材比較S−1、比較S−3及び比較S−5については、流動性があり、スランプを測定することが不可能であった。
(2)チクソトロピック指数
JIS K 7117−1(1999)「プラスチック−液状、乳濁状または分散状の樹脂−ブルックフィールド型回転粘度計による見掛け粘度の測定方法」により、シーリング材の粘度をB型回転粘度計を使用し、試験温度25℃において、No.7スピンドルの回転数をそれぞれ10rpmと100rpmにしたときの粘度を測定し、チクソトロピック指数(10rpmのときの粘度値/100rpmのときの粘度値)を求めた。
(3)硬化過程のムーブメント追従性
JIS A 1439(1997)「建築用シーリング材の試験方法」の「4.17 耐久性試験」の「4.17.1」のd)繰返し試験機により、拡大・縮小のサイクルを1日当たり1〜14,400サイクルに設定できるように作製したものを繰返し試験機として用いた。拡大、戻りの変位のサイクルを1日当たり1サイクル、変位幅を目地幅の15%(3mm)となるように試験機を設定した。したがって目地の動き(ムーブメント)は拡大した後元に戻る、圧縮の動きがない動きである。次いで、試験機の固定部と可動部のそれぞれの治具に、被着体として50×50×厚さ25mmの大きさに成形したモルタルを1個づつ、50mm角面が被着面となるように相対するように固定し、試験機の動きがモルタルで作製した目地に伝わるようにした。目地にポリエチレン製のバックアップ材(幅20mm×厚さ10mm×長さ50mm)を目地深さが12mmとなるように装填後、目地幅が20mmとなるように試験機を調整固定し、幅20mm×深さ12mm×長さ50mmの目地を作製した。次いで、目地の被着面にプライマーを塗布し、30分のオープンタイムをとってから、シーリング材を気泡が入らないように充填し、余分なシーリング材をヘラでかきとって仕上げたものを試験体とした。なお、プライマーは、実施例7および比較例7については、三洋工業社製TP−133を使用し、それ以外はオート化学工業社製OP−2531を使用した。シーリング材を充填した後、直ちに試験機を稼動させ、1日当たり1サイクルの条件で、ムーブメントをかけながら硬化させた。これは、外壁板が夜間気温が下がることにより収縮し目地が拡大することを近似したものである。このときの雰囲気温度を23℃、50%相対湿度とした。硬化途中の変形繰返しを4サイクル(4日間)で打ち切り、目地幅が動かないように慎重に試験機から取り外した後、23℃、50%相対湿度で14日間かけて養生、硬化させた。次いで、シーリング材硬化物を被着体から切り離し、長さ方向に対して直角に3ヶ所切断し、断面の損傷の状態を目視で観察し、硬化過程のムーブメント追従性を以下の基準で評価した。
[評価基準]
○:防水上悪影響となる損傷が認められない状態。
×:防水上悪影響となる損傷が認められる状態。
(ここで、防水上悪影響となる損傷とは、防水性を損なう程度の大きさの硬化物内部の亀裂や空洞、硬化物表面の大きな皺などを示す)
表1および表2からわかるように、ウレイレン基含有有機化合物を使用したシーリング材は、使用しないシーリング材に比べて、変位幅が目地幅の15%と大きなときでも硬化過程のムーブメント追従性がきわめて良好であり、かつ目地幅が20mmと大きなときでもスランプが0mmと揺変性においても極めて優れている。
Figure 0005597912
Figure 0005597912

Claims (13)

  1. イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー及びポリサルファイド系樹脂から選択される室温硬化性樹脂(A)と、ウレイレン基含有有機化合物(B)とを含有する、ワーキングジョイント用の1成分形室温硬化型シーリング材。
  2. 前記ワーキングジョイントが、ビル外壁目地である請求項1に記載の1成分形室温硬化型シーリング材。
  3. 前記ワーキングジョイントが、笠木目地である請求項1に記載の1成分形室温硬化型シーリング材。
  4. 前記ワーキングジョイントが、金属製部材で形成されているワーキングジョイントである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の1成分形室温硬化型シーリング材。
  5. 前記ワーキングジョイントの目地の変位量が、該目地の幅寸法に対して5%以上である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の1成分形室温硬化型シーリング材。
  6. 前記ワーキングジョイントの目地の幅が20mm以上で、かつ該目地の幅の変位量が1mm以上である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の1成分形室温硬化型シーリング材。
  7. 前記ウレイレン基含有有機化合物(B)が、有機イソシアネートとアミン化合物との反応生成物である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の1成分形室温硬化型シーリング材。
  8. 前記有機イソシアネートとアミン化合物との反応生成物が、液状有機媒体中に分散された分散体である、請求項7に記載の1成分形室温硬化型シーリング材。
  9. 前記室温硬化性樹脂(A)が、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーであり、さらにオキサゾリジン化合物を配合する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の1成分形室温硬化型シーリング材。
  10. さらに、ヒンダードアミン系光安定剤および/またはヒンダードフェノール系酸化防止剤を配合する、請求項1〜のいずれか一項に記載の1成分形室温硬化型シーリング材。
  11. さらに、有機酸系化合物表面処理炭酸カルシウムを配合する、請求項1〜10のいずれか一項に記載の1成分形室温硬化型シーリング材。
  12. 前記1成分形室温硬化型シーリング材のチクソトロピック指数が、4.5〜8.0である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の1成分形室温硬化型シーリング材。
  13. イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー及びポリサルファイド系樹脂から選択される室温硬化性樹脂(A)を硬化成分として含有する1成分形室温硬化型シーリング材に、ウレイレン基含有有機化合物(B)を存在させることにより、該シーリング材をワーキングジョイントに対して施工した場合に損傷のない硬化シーリング目地を形成することを特徴とするウレイレン基含有有機化合物(B)の使用方法。
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