JP5596978B2 - α−ヒドロキシメチルアクリレート化合物類及びその製造方法 - Google Patents
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Description
シガネク(Ciganek,E.)「オーガニックリアクション(Org.React.)」、(米国)、1997年、51巻、p201. バサバイア(Basavaiah,D.)、他2名、「ケミカルレビュー(Chem.Rev.)」、(米国)、2003年、103巻、p811.
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、原料として用いられるホルムアルデヒドの製品中への残存量が少なく且つ実質的に着色がないRHMA類及びその実用的な製造方法を提供することを目的とするものである。
例えば、ホルムアルデヒドを除去してRHMA類を製造するに際し、ホルムアルデヒドの除去方法の1つとしては、還流により除去する方法が挙げられる。本発明の一つの形態においては、上述した従来技術において実施されたような通常の蒸留操作ではなく、いわゆる全還流という手法をとる。全還流とは、粗生成物(本明細書中、粗RHMA類ともいう。)を減圧下で蒸気とし、液化されたものを実質的に全て還流する精製操作である。これにより、本発明の製造方法により最終的に得られるRHMA類のホルムアルデヒド含有量を200ppm未満とすることが可能となる。
本発明においては、上述した全還流工程により、蒸留による精製工程前に予め粗RHMA類のホルムアルデヒド含有量を充分に低下することができる。この全還流工程後に蒸留による精製工程を行うことにより、当該蒸留による精製工程において蒸留塔内でホルムアルデヒドが析出することを充分に防ぐことができ、蒸留による精製工程を好適に行うことができることとなる。
したがって、本発明の製造方法における全還流工程により、RHMA類からホルムアルデヒドを充分に除去することができ、蒸留塔内の汚染を充分に防止することができる。これによって、続く蒸留による精製工程を好適に行うことが可能となり、更にホルムアルデヒドを除去することができる。工業的に実用的な製法によって、最終的に、得られるRHMA類のホルムアルデヒド含有量を200ppm未満とすることができ、工業的に有用なRHMA類を得ることとなる。ここに本発明の製造方法の顕著な技術的意義がある。
上記をまとめると、粗RHMA類からホルムアルデヒドを好適に除去する方法としては、(1)還流による除去(全還流による手法)、(2)多孔質固体を用いたホルムアルデヒド吸着による除去、(3)塩基性陰イオン交換樹脂を用いたホルムアルデヒド吸着による除去が挙げられる。
そして、これらの方法の代わりに、又は、これらの方法とともに(4)オゾンを用いた酸化処理を用いることもできる。
本発明は、上述した手法のいずれか少なくとも一種を施すホルムアルデヒド除去方法であり、RHMA類の製造方法である。
上記粗RHMA類に含有されるホルムアルデヒドの除去方法として、従来技術においては、上述したように、ヒドラジン等の水溶液で処理した後、分離した油層部の回収・精製を行っている。そのような場合は、当該方法により得られたRHMA類は硫黄含有化合物や窒素含有化合物が不純物として残存することになる。その影響と考えられる着色が起こることになり、RHMA類を含む油層部を水洗することにより改善されるものの、RHMA類が水溶性であるため、水洗による回収率の低下を引き起こすことになり実用的でない。また、上記処理自体により回収率が低下することになり、回収率を向上するためには水層部から溶媒抽出する等の煩雑な操作が必要となる。
上記本発明のRHMA類においては、実質的にホルムアルデヒド除去成分を含有しないものであるため、得られるRHMA類を実質的に着色のないものとすることができる。また、このようなRHMA類は、着色をなくすために水洗処理等を行う必要がないため、高い回収率で効率よく目的物を得ることが可能となる。
本発明のRHMA類は、新規な組成物であり、上述した本発明の有利な効果を発揮するため、重合体を形成するために供される単量体、各種化学製品・医薬品の製造原料・中間体等として好適に用いることができるものである。
本発明は更に、上述した製造方法により得られたα−ヒドロキシメチルアクリレート化合物類でもある。
本発明はそして、下記一般式(1);
以下に本発明を詳述する。
上述したように、従来の技術におけるように、単に蒸留操作だけによってホルムアルデヒドを除去しようとする場合は、蒸留塔に段を設け、分別蒸留する必要があり、これに気化したホルムアルデヒドが析出して蒸留塔内を汚染し、その処置が煩雑となることから、効率的な製造方法とはいえるものではなかった。これによりホルムアルデヒド含有量を200ppm未満まで低下させることはできず、また、従来の技術のように水洗と蒸留とを行う場合や、ヒドラジン等のホルムアルデヒド除去成分の水溶液で処理した後、分離した油層部の回収・精製を行う場合も、水中へのRHMA類の損失分があったり、ホルムアルデヒド除去成分による着色の影響を受けたりすることから、有利な工程とはいえず、また品質が向上された優れたRHMA類を得ることはできないものであった。
これに対して、いわゆる全還流による操作によれば、全還流工程における蒸留塔内に分別蒸留するための段を設ける必要がなく、また、全還流工程の後に蒸留工程を行うと、ホルムアルデヒド含有量を200ppm未満まで充分に低下させることができる。蒸留工程の前に全還流工程を行っていれば、ホルムアルデヒド含有量を低下させた状態で蒸留操作を行うことができ、これによってパラホルムアルデヒドの析出を充分に抑制することができることを見出したものである。このような工程をRHMA類の製造に適用することによって、品質が向上された優れたRHMA類を得ることが可能となる。
上記製造方法においては、反応工程から得られる粗生成物を減圧下で蒸気とし、液化されたものを実質的に全て還流する精製工程を含むことになる。例えば、減圧下で蒸気とされた粗生成物において、ホルムアルデヒドを含む気化された成分が減圧下で吸引されて蒸留装置から除去されるが、その他の成分は液化され、該液化成分が実質的に全て還流されることになる。例えば、反応工程から得られる粗生成物を減圧下で蒸気とし、冷却器(例えば、冷却管)を用いて液化し、液化された成分をそのまま実質的に全て(分別操作をせずに)還流し、液化されない残りの成分(ホルムアルデヒド成分を含む気化された成分)は減圧下で吸引、除去される精製工程が、好ましい実施形態である。
本発明における全還流工程は、ホルムアルデヒドを含む気化された成分を吸引して蒸留装置から排出することを目的として行うものであるため、充填材が実質的に入っていない蒸留塔(本明細書中、空塔蒸留管ともいう)を用いることができ、そのような形態が好ましい。これにより、全還流工程においてパラホルムアルデヒドが析出し、蒸留塔内を汚染することを充分に防ぐことができる。
この全還流処理は、後述するRHMA類の蒸留精製工程と別に行ってもよいが、蒸留精製工程と同じ装置を用いて同時に行っても良い。特に好ましいのは、後述するようにRHMA類の蒸留精製工程の前工程として行うことである。
上記全還流比とは全還流を行う上でホルムアルデヒド除去前の粗RHMA類の全仕込み量に対する還流時の積算蒸気量の比を表す。すなわち全還流量は下記に示す計算式;
全還流比=V/B
(ここで、Vは、全還流時の積算蒸気量〔g〕を表し、Bは、粗RHMA類の仕込み量〔g〕を表す)で表される。
図1に記載されたV、Bは、それぞれ上記全還流時の積算蒸気量、空塔蒸留管1内の粗RHMA類の仕込み量を表す。
なお、通常の蒸留操作における還流比は、蒸留塔に戻す液流量L(g/s)と抜き出す液流量D(g/s)との比L/Dを意味する。
すなわち、本発明の製造方法は、上記精製工程における積算蒸気量をVとし、前記精製工程への粗生成物の仕込み量をBとすると、全還流比がV/Bによって求められ、該全還流比が0.5以上となるように前記精製工程を行うものであることが好ましい。
上記全還流比は、0.7以上であることがより好ましい。更に好ましくは、0.8以上であり、特に好ましくは、1.0以上である。また、100以下がより好ましい。更に好ましくは、50以下であり、特に好ましくは、10以下である。例えば、より好ましくは、0.7〜100であり、更に好ましくは0.8〜100であり、特に好ましくは0.8〜50であり、最も好ましくは1.0〜10である。
上記全還流時の処理温度は、RHMA類の種類にもよるが、重合防止の観点から160℃以下に制限されることが好ましい。より好ましくは80℃〜150℃、更に好ましくは100℃〜140℃で行う。
上記全還流処理の時間は、RHMA類の種類や重合禁止剤(以下、重合防止剤ともいう。)の種類にもよるが、重合防止の観点から24時間以内で行うのがよく、好ましい形態である。より好ましくは3時間〜12時間である。更に好ましくは、4時間〜10時間である。
上記重合禁止剤としては、具体的には、例えば、リン酸、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリブチル等のアルキルリン酸塩、リン酸ジフェニル等のアリールリン酸塩、亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリフェニル等の亜リン酸塩、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホスフィン等のホスフィン類、トリメチルホスフィンオキサイド、トリエチルホスフィンオキサイド等のアルキルホスフィンオキサイド、商品名「アデカスタブ2112」(旭電化製)、商品名「HCA」(三光製)、商品名「アデカスタブPEP−8」(旭電化製)、商品名「アデカスタブ260」(旭電化製)、商品名「アデカスタブ3010」(旭電化製)、商品名「アデカスタブHP−10」(旭電化製)、商品名「アデカスタブ329K」(旭電化製)、商品名「アデカスタブPEP−24G」(旭電化製)、商品名「IRGAFOS168」(Ciba製)等のリン化合物;ノニルフェノール、モノ−t−ブチル−p−クレゾール、モノ−t−ブチル−m−クレゾール、2,4−ジメチル−6−t−ブチル−フェノール、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、4−ヒドロキシメチル−2,6−ジ−t−ブチル−フェノール、メトキノン(MEQ)、グアヤコール、3−メトキシフェノール、4−メトキシフェノール、ヒドロキノン(HQ)、メチルヒドロキノン、t-ブチルヒドロキノン、カテコール、4−メチルカテコール、4−t−ブチルカテコール(TBC)、レゾルシノール、2−メチルレゾルシノール、5−メチルレゾルシノール、プロピルガレート、商品名「スミライザーGM」(住友化学製)、商品名「スミライザーGS」(住友化学製)、商品名「IRGANOX1222」(Ciba製)等のフェノール系化合物類; 商品名「スミライザーTPL−R」(住友化学製)、商品名「スミライザーTPS」(住友化学製)、商品名「スミライザーTPD」(住友化学製)等の有機硫黄系化合物;商品名「IRGANOXHP2225FF」(Ciba製)、商品名「IRGANOXHP2341」(Ciba製)、商品名「IRGANOXHP2921FF」(Ciba製)等のラクトン系化合物(混合品);ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジブチルジチオカルバミン酸銅等の金属錯体類;フェニル−α−ナフチルアミン、N,N´−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、4,4−テトラメチルジアミノジフェニルアミン、ピペリジン、2,6−ジメチルピペリジン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン(TEMP)、ピペリジノオキシ フリーラジカル、2,6−ジメチルピペリジノ フリーラジカル、2,2,6,6−テトラメチルピペリジノ フリーラジカル(TEMPO)、商品名「CXA5415」(Ciba製)、商品名「ZJ705」(Ciba製)等のアミンもしくはN−オキシル化合物類;商品名「Q1300」(WAKO試薬)、商品名「Q1301」(WAKO試薬)等のニトロソ化合物、フェノチアジンが挙げられるが、特に限定されるものではない。この中で好ましくは、フェノール系化合物類、N−オキシル化合物類、金属錯体類、フェノチアジンである。これら重合禁止剤は、一種類のみを用いてもよいし、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。
上記重合禁止剤の添加量は、特に限定されるものではないが、通常、粗RHMA類に対する割合が、0.01質量%〜1質量%の範囲内となるようにすればよい。
アクリル酸エステルとホルムアルデヒドとを触媒存在下で反応させることによりα−ヒドロキシメチルアクリレート類を製造する方法であって、少なくともα−ヒドロキシメチルアクリレート化合物類とホルムアルデヒドとを含む組成物を多孔質固体で処理する工程を有するα−ヒドロキシメチルアクリレート化合物類の製造方法は、本発明の好ましい実施形態である。
上記多孔質固体としては、特に限定されるものではなく、例えば、チタニア、メタロシリケート、シリカゲル等に代表される各種金属酸化物や、粘土、珪藻土、軽石等の天然鉱物、活性炭等の炭素材料が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。好ましくは、金属酸化物、粘土、活性炭であり、更に好ましくは、金属酸化物である。
上記ゼオライト類としては天然に存在するものや、合成により得られたものには特に制限を受けない、例えば、ゼオライトA、ゼオライトX、ゼオライトY、ゼオライトL、ゼオライトΩ、ZSM−5、β―ゼオライト、モルデナイト等が使用でき、好ましくはゼオライトA、ゼオライトX、ゼオライトY、ZSM−5である。
上記多孔質固体を用いた場合のホルムアルデヒドの吸着条件は、RHMA類の重合防止の観点から160℃以下に温度が制限されるが、それ以外は特に制限されるものではなく、好ましくは0℃〜150℃の温度範囲で行い、より好ましくは10℃〜130℃、更に好ましくは20℃〜130℃の温度範囲で行う。
吸着除去に要する時間は特に制限を受けないが、好ましくは1分〜20時間、より好ましくは10分〜5時間の間で行う。
上記多孔質固体を用いてホルムアルデヒドの吸着を行った後、ろ過によってホルムアルデヒドを吸着した多孔質固体を除去し、製品のRHMA類を得る。この時必要であれば蒸留等によって更に精製を行ってもよい。なお、蒸留の好ましい形態等は、後述する通りである。
上記ろ過は室温〜120℃の間で行うことが好ましい。
このような好ましい形態は、上記(1)の精製工程を有する本発明の製造方法における好ましい形態と同様である。
アクリル酸エステルとホルムアルデヒドとを触媒存在下で反応させることによりα−ヒドロキシメチルアクリレート化合物類を製造する方法であって、反応工程から得られる粗生成物を塩基性イオン交換樹脂で処理する工程を有するα−ヒドロキシメチルアクリレート化合物類の製造方法もまた、本発明の好ましい実施形態である。
上記塩基性陰イオン交換樹脂を用いてホルムアルデヒドを吸着除去する場合、用いる塩基性陰イオン交換樹脂としてはアクリル系、スチレン系等のポリマー骨格には特に制限を受けない。
また上記塩基性陰イオン交換樹脂には、ゲルタイプ、マクロポーラスタイプ等があるが、それらのタイプに特に制限されるものではない。
このような好ましい形態は、上記(1)の精製工程における好ましい形態と同様である。
上記吸着剤で処理する精製工程としては、上述した(2)吸着剤として多孔質固体を用いるもの、(3)吸着剤として塩基性陰イオン交換樹脂を用いるものが挙げられる。すなわち、上記吸着剤は、多孔質固体及び塩基性陰イオン交換樹脂からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。より好ましくは、塩基性陰イオン交換樹脂である。
本発明は更に、アクリル酸エステルとホルムアルデヒドとを触媒存在下で反応させることによりα−ヒドロキシメチルアクリレート化合物類を製造する方法であって、反応工程から得られる粗生成物をオゾン処理する工程を有するα−ヒドロキシメチルアクリレート化合物類の製造方法でもある。
ホルムアルデヒドの除去方法として、ホルムアルデヒドを含有するRHMA類を所定量のオゾンによって酸化処理を行い、蟻酸として除去することが挙げられる。
オゾン使用量は処理するRHMA類や含有しているホルムアルデヒド量にもよるが、処理するRHMA類に対して10〜1000ppmであることが好ましく、10〜500ppmであることが特に好ましい。
処理温度は、RHMA類の種類にもよるが、重合防止の観点から160℃以下に制限されるが、好ましくは30℃〜150℃、より好ましくは50℃〜140℃で行う。
またオゾン処理の後に、ホルムアルデヒドを除去したRHMA類を蒸留精製することにより、実質的に着色のない低ホルムアルデヒド含有RHMA類を得てもよい。
このような好ましい形態は、上記(1)の精製工程における好ましい形態と同様である。
上記工程において、(2)及び(3)は処理後の多孔質固体(多孔性固体)やイオン交換樹脂の再生や廃棄等が、(4)ではオゾン発生装置や系外へ排出されるオゾンの処理が必要になるが、(1)であれば、蒸留による精製工程での操作条件の調整により実施できるので、簡便であり、(1)の工程が本発明の製造方法における好ましい形態である。また、上記工程は単独で実施してもよく、2以上を組み合わせて実施しても良い。また上記工程は、その他のRHMA類の蒸留や洗浄等の精製工程と組み合わせて行うのが好ましく、この場合にはその他の精製工程と本発明の工程の順序等は特に制限されないが、中でも後述するように上記工程の後に蒸留による精製工程を行う形態が特に好ましい。
前述した実用的な製法である森田−Baylis−Hilman反応を用いたRHMA類の製造方法を下記に記述するが、本発明の製造方法(処理方法)はアクリル酸エステルとホルムアルデヒドとを原料として得られるRHMA類であれば、特に制限無く使用できる。
本製造方法は各種アクリル酸エステル(以下、アクリル酸エステル類ともいう)とホルムアルデヒド(以下、ホルムアルデヒド類ともいう)とを触媒存在下で反応させることでRHMA類を得る反応である。
上記三級アミンとしては、具体的には例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリイソプロピルアミン等のトリアルキルアミン;N,N−ジメチルエチルアミン、N,N−ジメチルプロピルアミン、N,N−ジメチルイソプロピルアミン、N,N−ジメチルブチルアミン、N,N−ジメチルイソブチルアミン、N,N−ジメチル−t−ブチルアミン、N,N−ジメチル(トリメチルシリル)アミン等のN,N−ジメチルアルキルアミン;N,N−ジエチルメチルアミン、N,N−ジエチルプロピルアミン、N,N−ジエチルイソプロピルアミン等のN,N−ジエチルアルキルアミン;等が挙げられる。これら三級アミンは、単独で用いても2種類以上を併用してもよい。これらの三級アミンのうち、水に対する溶解度が比較的高い化合物が好ましく、常圧における沸点が100℃以下であり、且つ、少なくとも1個のN−メチル基を有するN−メチルアルキルアミン(N−メチル化合物)がより好ましく、常圧における沸点が100℃以下であり、且つ、少なくとも2個のN−メチル基を有するN,N−ジメチルアルキルアミンがさらに好ましい。特に好ましくは、トリメチルアミンである。
上記ホルムアルデヒド類としては、ホルムアルデヒドの20〜50%水溶液、パラホルムアルデヒド、ジオキサン、トリオキサン等が好適なものとして挙げられる。
上記反応には水が用いられるが、その水の量としては全反応液量に対して0.001質量%以上60質量%以下にすることが好ましい。より好ましくは、0.005質量%以上50質量%以下であり、更に好ましくは、0.01質量%以上40質量%以下である。
上記反応においては、必要に応じて、有機溶媒を用いることができるが、特に使用しなくても構わない。上記溶媒の種類は、反応に用いる基質及び触媒を溶解し、且つ、反応に対して不活性な化合物であれば、特に限定されるものではない。
上記重合禁止剤の具体例等は、上述した通りである。これら重合禁止剤は、一種類のみを用いてもよいし、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。
上記の分子状酸素としては、例えば、酸素−窒素の混合ガスや空気を用いることができる。この場合、反応系に酸素含有ガスを吹き込む(いわゆる、バブリング)ようにすればよい。尚、上記重合禁止剤と分子状酸素とを併用してもよい。
上記反応において、反応温度は、反応が進行する範囲であれば特に限定されるものではないが、上記重合を抑制するために、40〜160℃で行うのが好ましい。反応温度が40℃よりも低い場合には、反応速度が小さく反応時間が長くなり過ぎ、RHMA類を工業的に製造するに際して好ましくない。より好ましくは60〜100℃の範囲内である。
アクリル酸エステル類を回収する処理は、通常の分離操作であればよく、RHMA類の物性にもよるが、蒸留や有機溶媒による抽出処理が挙げられる。
例えば、本発明は、以下のように言い換え、纏めることができる。すなわち、本発明は、アクリル酸エステルとホルムアルデヒドとを触媒存在下で反応させることによりα−ヒドロキシメチルアクリレート化合物類を製造する方法であって、α−ヒドロキシメチルアクリレート化合物類とホルムアルデヒドとを含む組成物を減圧条件下で還流する工程、当該組成物を多孔質固体で処理する工程、当該組成物を塩基性イオン交換樹脂で処理する工程、及び、当該組成物をオゾン処理する工程の、いずれか少なくとも一つの工程を有するα−ヒドロキシメチルアクリレート化合物類の製造方法である。
すなわち、本発明の製造方法は、上述した精製工程の後に、更に蒸留による精製工程を有する形態が好ましい。
通常の蒸留による精製工程においては、沸点差を利用して成分ごとに分別して精製する場合は、蒸留塔内に充填材を入れて蒸留塔の理論段数を適宜調整する必要がある。
ここで、上述したように蒸留による精製工程の前に粗RHMA類のホルムアルデヒド含有量が充分に低下することになるため、当該蒸留による精製工程において、気化されたホルムアルデヒドがパラホルムアルデヒドとして析出し、蒸留塔内が汚染されることを充分に防ぐことができ、その措置を簡便なものとすることができる。よって、充填材の入った蒸留塔を用いて好適に蒸留による精製をすることができ、RHMA類から低沸点成分(ホルムアルデヒド等の原料等)、高沸点成分(目的物の二量体等)等の不純物を更に充分に除去することができ、本発明の効果をより充分に発揮することができる。
上記蒸留による精製工程は、分別蒸留による精製工程であることが好ましい。
また蒸留時の圧力条件としては、RHMA類の種類、蒸留温度にもよるが、10hPa〜150hPaの減圧下で行うことが好ましく、より好ましいのは10hPa〜120hPaであり、特に好ましいのは10hPa〜100hPaである。
蒸留処理の時間は、RHMA類の種類や重合禁止剤の種類にもよるが、重合防止の観点から24時間以内で行うのがよく、好ましくは3時間〜12時間である。
また、RHMA類は、高い重合性を有することから、粗RHMA類を蒸留精製処理する際には、RHMA類の重合を抑制するために、処理系に重合禁止剤や分子状酸素を添加することが好ましい。
上記充填材としては、ラシヒリング、ベルルサドル、マクマホンパッキング、カスケードミニリング、キャノン、ポールリング等の不規則充填物、スルザーパッキング、メラパック、ジェムパック、テクノパック、モンツパック、グリッチグリッド、フレキシグリッド、スナップグリッド、パーフォームグリッド等の規則充填物が挙げられ、これらの一種又は二種以上を用いることができる。充填材を入れることにより、より容易に不純物を除去することができる。中でも、スルザーパッキング(住友重機械工業(株)製充填材)を充填したものが特に好ましい。
上記の分子状酸素としては、例えば、酸素−窒素の混合ガスや空気を用いることができる。この場合、反応系に酸素含有ガスを吹き込む(いわゆる、バブリング)ようにすればよい。尚、上記重合禁止剤と分子状酸素とを併用してもよい。
これにより、それまで非常に困難であったホルムアルデヒドの除去を効果的且つRHMA類の品質を損なうことなく行うことができ、その結果、実質的に着色の問題がなく、工業的で実用的なホルムアルデヒド含有量が200ppm未満であるRHMA類を提供することができる。
本発明の製造方法において、上記ホルムアルデヒド含有量は、180ppm以下とすることが本発明の製造方法における好ましい形態である。より好ましくは、150ppm以下である。更に好ましくは、120ppm以下である。特に好ましくは、100ppm以下である。
アクリル酸エステルとホルムアルデヒドとを触媒存在下で反応させる工程から得られる粗生成物を、図1に示す全還流装置4を用いて全還流する。すなわち、空塔蒸留管1において、粗生成物を減圧下で蒸気とし、冷却器において蒸気の一部が液化され、液化されない蒸気であるホルムアルデヒドを減圧ラインへと除去する。液化されたものは、実質的に全てを液ため3に入れ、空塔蒸留管1に戻して、還流することになる。これにより、粗生成物のホルムアルデヒド含有量を充分に低下することができる。
以上により、本発明の有利な効果を充分に発揮することができる。
なお、本発明の製造方法は、後述するホルムアルデヒド除去成分を用いて処理する工程を実質的に含まないようにすることができ、そのような形態が好ましい。これにより、後述するように本発明の効果を更に充分に発揮することができる。
本発明のα−ヒドロキシメチルアクリレート化合物類の好ましい形態は、上述した本発明の製造方法における好ましい形態によって得られることになる。
中でも、上記Rは、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数4〜8のシクロアルキル基、又は、炭素数6のアリール基であることが好ましい。より好ましくは、炭素数1〜4のアルキル基である。
一旦ホルムアルデヒド除去成分の水溶液で洗浄処理等を行った場合は、その後、蒸留等によりホルムアルデヒド除去成分量を低減させても、当該成分に基づく着色を工業的に簡便な工程で実質的になくすことはできないといえる。
上記着色していないα−ヒドロキシメチルアクリレート化合物類とは、実質的に着色成分を含まないα−ヒドロキシメチルアクリレート化合物類であり、例えば、上述したような硫黄含有化合物及び/又は窒素含有化合物等のホルムアルデヒド除去成分を含まないものである。本発明のα−ヒドロキシメチルアクリレート化合物類の好ましい形態は、上述した本発明の製造方法における好ましい形態によって得られることになる。
これにより、工業的に有利な製法で製造され、ホルムアルデヒド含有量が充分に低下された医薬品の製造原料を使用することができ、医薬品を好適に製造することが可能となる。
本発明の使用方法の好ましい実施形態は、上述した本発明のRHMA類の製造方法、RHMA類における好ましい実施形態と同様である。例えば、本発明の使用方法における上記RHMA類は、ホルムアルデヒド除去成分を実質的に含有しないものであることが好ましい。
2:冷却器
3:液ため
4:全還流装置
5:充填塔式蒸留塔
6:分別蒸留装置
試薬には、0.2%MBTH(3−メチル−2−ベンゾチアゾロンヒドラジン塩酸塩)、0.6%硫酸第二鉄アンモニウム水溶液、及び、ホルムアルデヒド標準液(JIS K1502にて濃度を測定)を用いた。
温度計、ガス吹込み管、冷却管、撹拌装置、水浴を備えた容量3Lの4つ口フラスコに、アクリル酸エステルとしてアクリル酸メチル2066g(24モル)、ホルムアルデヒド原料として92質量%パラホルムアルデヒド195.8g(ホルムアルデヒド換算で6モル)、触媒として30質量%トリメチルアミン水溶液237.8g(1.2モル)、重合禁止剤としてp−メトキシフェノール2.1gを仕込んだ。アクリル酸メチルに対するp−メトキシフェノールの割合は、1000ppmであった。その後、反応溶液に空気を吹き込みながら、反応溶液を70℃で8時間撹拌して反応させた。
反応終了後、反応溶液を分液ロートに移し、有機相と水相に分液した。次に、有機相に水100gを加えて水洗を行った。有機相と水相に分液した後、有機相をさらに同量の水で水洗し、有機相と水洗液とに分液した。
得られた有機相を、温度計、ガス吹込み管、空塔蒸留管、撹拌装置、油浴を備えた容量2Lの4つ口フラスコに移し、安定剤としてフェノチアジン5gを添加し、空気を吹き込みながら、内温が100℃を超えないように調節しつつ、圧力400〜133hPa(300〜100mmHg)でアクリル酸メチルを留去した。この際粗RHMA類を616gが得られたがこの粗RHMA類中のホルムアルデヒド濃度は15340ppmであった。
合成例1で得られた粗RHMA類600gを温度計、ガス吹き込み管、空塔蒸留管、撹拌装置、油浴を備えた容量2Lの4つ口フラスコに移し、空気を吹き込みながら、内温が110〜120℃、圧力20hPa(15mmHg)で還流を10時間行った。この際留出してきた液はコンデンサで10度で冷却してフラスコに戻し、ホルムアルデヒドを含むガス成分は真空系に除去した。
この際の積算蒸気量は801g、全還流比は1.3であり、得られた粗RHMA類中のホルムアルデヒド濃度は320ppmであった。
上記方法で得られた粗RHMA類を後述する比較例1に記載の方法で分別蒸留することでホルムアルデヒド濃度20ppmのRHMA−Mが407g得られた。結果を表1に示す。
実施例1において、還流時間を8時間(実施例2)、6時間(実施例3)、5時間(実施例4)又は4時間(実施例5)に変更し、重合禁止剤をジブチルジチオカルバミン酸銅(実施例2)、2,2,6,6−テトラメチルピペリジノ フリーラジカル(TEMPO)(実施例3)に変更した以外は実施例1と同様にしてRHMA−Mを得た。全還流比、粗RHMA類及び精製RHMA−M中のホルムアルデヒド濃度の結果を表1に示した。
実施例1において、還流時の圧力を40hPa(30mmHg)に、時間を10時間に変更した以外は実施例1と同様にしてRHMA−Mを得た。全還流比、粗RHMA類及び精製RHMA−M中のホルムアルデヒド濃度の結果を表1に示した。
合成例1で得られた粗RHMA類の分別蒸留を行い、塔頂温度86〜87℃/13.3hPa(10mmHg)の留分である2−ヒドロキシメチルアクリル酸メチル(以下「RHMA−M」という)418gが得られたが、このRHMA−M中のホルムアルデヒド濃度は2260ppmであった。この目的物を得た際の精留時のボトム温度は93.5〜110℃であった。
Claims (2)
- アクリル酸エステルとホルムアルデヒドとを触媒存在下で反応させる工程を含むことによりα−ヒドロキシメチルアクリレート化合物類を製造する方法であって、
該製造方法は、反応工程から得られる粗生成物を減圧下で蒸気とし、液化されたものを実質的に全て還流する精製工程を有し、
該精製工程における積算蒸気量をVとし、該精製工程への粗生成物の仕込み量をBとすると、全還流比がV/Bによって求められ、該全還流比が0.5以上となるように該精製工程を行い、
該全還流の圧力条件は、10hPa〜150hPaであり、
該全還流の反応温度は、80℃〜160℃の温度であり、
該全還流の処理系に、重合禁止剤及び分子状酸素からなる群より選択される少なくとも1種を添加し、
ホルムアルデヒド含有量を200ppm未満とすることを特徴とするα−ヒドロキシメチルアクリレート化合物類の製造方法。 - アクリル酸エステルとホルムアルデヒドとを触媒存在下で反応させる工程を含むことによりα−ヒドロキシメチルアクリレート化合物類を製造する方法であって、
該製造方法は、反応工程から得られる粗生成物を吸着剤で処理する精製工程を有し、
該吸着剤は、多孔質固体及び塩基性陰イオン交換樹脂からなる群より選択される少なくとも1種であり、
該精製工程の後に、更に蒸留による精製工程を有することによって、
ホルムアルデヒド含有量を200ppm未満とすることを特徴とするα−ヒドロキシメチルアクリレート化合物類の製造方法。
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