JP5593763B2 - 色素増感型太陽電池、及び色素増感型太陽電池モジュール - Google Patents

色素増感型太陽電池、及び色素増感型太陽電池モジュール Download PDF

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Description

本発明は、色素増感型の太陽電池、及び太陽電池モジュールに関するものである。
二酸化炭素が原因とされる地球温暖化が世界的に問題となっている近年、環境にやさしく、クリーンなエネルギー源として、太陽光エネルギーを利用した太陽電池の積極的な研究開発が進められている。その中でも、より光電変換効率が高く、低コストの太陽電池として、色素増感型太陽電池が注目されている。
色素増感型太陽電池は、例えば、光の入射する側から、透明基板、この透明基板上に形成された透明導電層、色素が担持された酸化物半導体層、酸化還元対を有する電解質層、並びに対向電極を形成した基板が順に積層されてセルが形成される。特に、グレッチェルセルは、ナノ微粒子である酸化チタンを焼成させた多孔質の酸化物半導体層を用いることを特徴とし、酸化物半導体層を多孔質とすることで増感色素の吸着量を増加させ光吸収能を向上させている。
上記の色素増感型太陽電池の作製方法は、例えば、まず透明基板の表面に形成された透明導電層上に、酸化チタン微粒子からなる多孔性半導体層を形成し、その多孔性半導体層に増感色素を担持させる。次に対向電極に白金膜などの触媒をコーティングし、多孔質半導体層と白金膜とが対面するように重ね合わせた後、その間に電解質を注入して電解質層を形成し、側面をエポキシ樹脂等で封止する。このようにして色素増感型太陽電池が作製される。
このようなグレッチェルセルでは、酸化チタン微粒子間が点接触で結合することになり、接触抵抗が増加する問題がある。また、電流値を得るために多孔質半導体層の膜厚を厚くすると、金属より導電率の低い酸化チタン微粒子中での電子の移動距離が長くなり、その結果、抵抗による損失あるいは再結合による損失が大きくなる問題が生じる。すなわち、酸化チタンの微粒子を使用した多孔質半導体層では、酸化チタンの電気伝導性が小さいため、光電変換率等の電池特性を向上させることは困難であった。
多孔質半導体層の導電性の向上を図る従来技術として、(特許文献1)には、少なくとも、一方の面上に半導体層が被着された電極と、この電極の前記半導体層と対峙する対電極と、前記半導体層及び対電極の間に配置された電解質層とを有する光電変換素子の製造方法において、前記半導体層を、増感色素担持半導体粒子と細長い形状の導電性粒子との混合ペースト又はスラリーを電極の表面に塗布すると共にこれを加熱焼結して形成することにより、導電性粒子同士及び導電性粒子と電極とを接触させた状態にすることを特徴とする光電変換素子の製造方法が開示されている。しかし、この技術では、増感色素を担持できない導電性粒子が添加される結果、発電に寄与しない成分の相対量が増えるとともに、半導体層中に半導体粒子と導電性粒子とを均一に分散することが困難であるため、光電変換率等の電池特性が低下するという問題があった。また、一般に多孔質半導体層を形成するには、電極上に塗布した半導体粒子に対し300〜700℃の焼成処理を行うことが必要である。この焼成によって、半導体粒子間の接触界面が溶融し、界面部分の分子が互いの半導体粒子中へと熱拡散するいわゆるネッキングを生じ、その結果、増感色素から注入された電子がスムーズに伝導して電池特性が向上するが、上述の従来技術のように半導体粒子と導電性粒子の分散状態が不均一である場合には、ネッキングの形成が導電性粒子の存在によって阻害され、所期の電池特性が得られないという問題もあった。
特許第4135323号公報
そこで本発明は、上記従来の状況に鑑み、低抵抗損失を有し、酸化チタン等の金属酸化物微粒子同士のネッキングの形成が阻害されることなく、光電変換率の高い新規な色素増感型太陽電池、及びそれを用いた色素増感型太陽電池モジュールを提供することを目的とする。
本発明者は、多孔質半導体層を構成する金属酸化物微粒子として、表面が導電性材料で被覆された金属酸化物微粒子を用いることにより、金属酸化物微粒子間の接触抵抗が低下して上記課題が解決することを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、導電性基材と、導電性基材上に配置され、増感色素を担持させた金属酸化物微粒子からなる多孔質半導体層と、多孔質半導体層に対向して配置された対向電極と、導電性基材及び対向電極の間に配置された、酸化還元対を含む電解質層と、から構成される色素増感型太陽電池であって、金属酸化物微粒子の表面の一部が、導電性材料により被覆されている前記色素増感型太陽電池である。
また本発明は、上記多孔質半導体層において、表面が導電性材料により被覆されている金属酸化物微粒子と表面が導電性材料により被覆されていない金属酸化物微粒子とが混在している色素増感型太陽電池である。
また本発明は、上記金属酸化物微粒子が酸化チタンであり、導電性材料がITOである色素増感型太陽電池である。
また本発明は、上記金属酸化物微粒子の表面の10〜70%が、導電性材料により被覆されている色素増感型太陽電池である。
さらに本発明は、上記いずれかの色素増感型太陽電池の複数を、直列又は並列に接続してなる色素増感型太陽電池モジュールである。
本発明によれば、金属酸化物微粒子の表面の一部が、導電性材料によって被覆されていることにより、金属酸化物微粒子同士の界面における抵抗損失を低減でき、優れた光電変換効率を持つ色素増感型太陽電池を得ることができる。
本発明の色素増感型太陽電池の一実施形態を示す断面図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明の色素増感型太陽電池の一実施形態を示す断面図である。この色素増感型太陽電池1は、導電性基材10と、導電性基材10上に配置され、増感色素を担持させた金属酸化物微粒子からなる多孔質半導体層20と、多孔質半導体層20に対向して配置された対向電極40と、導電性基材10及び対向電極40の間に配置された、酸化還元対を含む電解質層30とから概略構成されている。
次に、色素増感型太陽電池1を構成する各部材について説明する。
(1)導電性基材
導電性基材10としては、チタンやアルミニウム等の各種の金属箔や金属板等の一般的な導電性の材料を用いることができ、あるいは、ガラスやプラスチック等の基板の表面上に導電層を形成することによっても得ることができる。導電層を形成する基板は、透明であっても不透明であっても良いが、導電性基材10側を光の受光面とする場合には、光の透過性に優れた透明基板であることが好ましい。さらに、耐熱性、耐候性、及び水蒸気等に対するガスバリア性に優れたものであることが好ましい。具体的には、石英ガラス、パイレックス(登録商標)、合成石英ガラス等の可撓性のない透明なリジット材、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体フィルム、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエーテルサルフォンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリイミドフィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のプラスチックフィルムを挙げることができる。本発明においては、これらの中でも、プラスチックフィルムを基板としてこれに導電層を形成した可撓性フィルムからなる導電性基材を使用することが好ましい。これにより様々な用途に太陽電池を用いることができ、また太陽電池の軽量化、製造コストの削減を果たすことができる。なお、プラスチックフィルムは単独で基板として使用しても良く、2種以上の異なるプラスチックフィルムを積層した状態で使用しても良い。
導電性基材の基板の厚さとしては、15μm〜500μmの範囲内であることが好ましい。
基板上に形成する導電層の材料としては、導電性に優れたものであれば特に限定はされないが、導電性基材10側を光の受光面とする場合には、導電層は光の透過性に優れているものであることが好ましい。例えば、光の透過性に優れた材料として、SnO、ITO、IZO、ZnO等を挙げることができる。中でも、フッ素ドープしたSnO、ITOは、導電性及び透過性の両方に優れているため特に好ましく用いられる。
また、導電性基材の導電層は、その仕事関数を考慮して太陽電池が機能するように材料を選択することが好ましい。例えば、仕事関数が高い材料としては、Au、Ag、Co、Ni、Pt、C、ITO、SnO、フッ素をドープしたSnO、ZnO等を挙げることができる。一方、仕事関数が低い材料としては、Li、In、Al、Ca、Mg、Sm、Tb、Yb、Zr等を挙げることができる。
なお、導電層は、単層から構成されていても良く、また、異なる仕事関数の材料が積層されて構成されていても良い。
導電層の膜厚としては、0.1nm〜500nmの範囲内、好ましくは1nm〜300nmの範囲内である。
このような導電層を形成する方法としては、特に限定はされないが、蒸着法、スパッタ法、CVD法等を挙げることができる。中でも、スパッタ法が好ましく用いられる。
(2)多孔質半導体層
次に、多孔質半導体層20について説明する。多孔質半導体層は、金属酸化物の微粒子から構成され、これに増感色素が担持され、光照射により増感色素から生じた電荷を伝導する機能を有している。
金属酸化物微粒子は、その細孔に増感色素が担持されることから、連通孔を有する多孔質であることが好ましい。このような多孔質とすることにより、多孔質半導体層の表面積が大きくなり、十分な量の増感色素を担持させることができる。また、後述する電解質層との接触面積も大きくなり、エネルギー変換効率を向上させることができる。
多孔質半導体層の膜厚としては、1μm〜100μmの範囲内、その中でも、5μm〜30μmの範囲内であることが好ましい。上記範囲内であれば、多孔質半導体層の膜抵抗を小さくすることができ、また、多孔質半導体層による光吸収が十分に行われるからである。
多孔質半導体層を形成する金属酸化物微粒子は、増感色素から発生した電荷を導電性基材10の導電層へ伝導させることができるものであれば特に限定はされない。具体的には、TiO、ZnO、SnO、ITO、ZrO、SiO、MgO、Al,CeO、Bi、Mn、Y、WO、Ta、Nb、La等を挙げることができる。これらの金属酸化物微粒子は、いずれか一種を使用しても良く、また、2種以上を混合して使用してもよい。中でも、TiOを好ましく用いることができる。さらに、これらの内の一種をコア粒子とし、他の金属酸化物微粒子により、コア粒子を被覆してシェルを形成するコアシェル構造としてもよい。
多孔質半導体層中の金属酸化物微粒子の含有量としては、40重量%〜99.9重量%の範囲内、中でも、85重量%〜99.5重量%の範囲内であることが好ましい。
また、金属酸化物微粒子の粒径としては、1nm〜10μmの範囲内、特に、10nm〜500nmの範囲内であることが好ましい。上記範囲よりも粒子径が小さい場合には、そのような粒子の製造が困難となり、各々の粒子が凝集し、二次粒子を形成する可能性があるため好ましくない。一方、上記範囲よりも粒子径が大きい場合には、多孔質半導体層が厚膜化してしまい、抵抗が高くなるため好ましくない。
粒径の異なる同種または異種の金属酸化物微粒子を混合して用いてもよい。これにより、光散乱効果を高めることができ、多孔質半導体層内により多くの光を閉じ込めることができるため、増感色素における光吸収を効率的に行うことができる。例えば、10nm〜50nmの金属酸化物微粒子と、50nm〜200nmの金属酸化物微粒子とを混合して用いる場合を挙げることができる。
そして、本発明では、多孔質半導体層を構成する金属酸化物微粒子の表面の一部が、導電性材料により被覆されていることを特徴とする。導電性材料で被覆することによって、多孔質半導体層全体の導電性が高まり、太陽電池の性能が向上する。すなわち、金属酸化物微粒子における導電性材料で被覆されていない部位が発電に寄与し、発電によって生じた電子は、被覆された導電性材料を介して直ちに導電性基材10へと伝導されるため、金属酸化物微粒子間の界面における抵抗損失が低減され、結果として電池の光電変換効率が向上することとなる。また、従来のように金属酸化物微粒子とは別に導電性粒子を混合する場合に比べて、多孔質半導体層を形成する際の分散工程が比較的容易になり、かつ均一な分散が可能となる。それゆえ、焼成により多孔質半導体層を作製する場合に、金属酸化物微粒子間におけるネッキング形成が阻害されず、高い電池性能を得ることができる。また、被覆させる導電性材料の種類によっては、上記ネッキングは、導電性材料と他の導電性材料もしくは金属酸化物微粒子との間でも生ずるため、電子伝導を円滑にするネッキング部位が増加し、その結果、電池特性を向上させることができる。
なお、ここで「表面の一部が被覆されている」とは、多孔質半導体層を構成する全ての金属酸化物微粒子の表面を合計し、その合計した表面の一部分が被覆されていることを意味する。したがって、本発明は、例えば(i)表面が導電性材料により被覆されている金属酸化物微粒子と表面が導電性材料により被覆されていない金属酸化物微粒子とが混在している場合、(ii)表面が部分的に被覆されている金属酸化物微粒子から構成する場合、(iii)表面が部分的に被覆されている金属酸化物微粒子と表面が導電性材料により被覆されていない金属酸化物微粒子とが混在している場合、等を含むものである。
導電性材料は、被覆する対象である金属酸化物微粒子よりも導電率が高い材料であれば適用可能である。また、金属酸化物微粒子が接触する電解質層30は通常ヨウ素を含むので、ヨウ素によって腐食し難い材料であることが好ましい。具体的な導電性材料の例として、SnO、ITO、IZO、ZnO等の金属酸化物、Ti、Ni、Cr、Nb、Zr等の金属等が挙げられる。その中でも、ITOは導電性及び透過性の両方に優れるため特に好ましく用いられる。
金属酸化物微粒子に担持させる増感色素は、光を吸収し起電力を生じさせることが可能なものであれば特に限定はされない。具体的には、有機色素または金属錯体色素を使用することができる。例えば有機色素としては、アクリジン系、アゾ系、インジゴ系、キノン系、クマリン系、メロシアニン系、フェニルキサンテン系、インドリン系、スクアリウム系の色素が挙げられる。特に、クマリン系が好適に用いられる。
また、金属錯体色素としては、ルテニウム系色素、特にルテニウムビピリジン色素及びルテニウムターピリジン色素が好ましく用いられる。このような増感色素を金属酸化物微粒子に担持させることにより、可視光の範囲まで効率的に取り込んで光電変換を生じさせることができる。
多孔質半導体層を形成する方法としては、特に限定はされないが、塗布法により形成することが好ましい。すなわち、ホモジナイザー、ボールミル、サンドミル、ロールミル、プラネタリーミキサー等の公知の分散機を用いて、表面が導電性材料により(全面もしくは部分的に)被覆された金属酸化物微粒子と、必要に応じ導電性材料により被覆されていない金属酸化物微粒子とを溶媒に分散させた塗工液を調製し、この塗工液を導電性基材10の導電層上に塗布し、乾燥させ、必要に応じてさらに焼成する。その後、金属酸化物微粒子に増感色素を吸着させることにより、増感色素が担持された多孔質半導体層を形成することができる。
導電性材料により表面が被覆された金属酸化物微粒子は、従来知られた方法を適宜選択して製造することができる。具体的には、酸化チタン等の金属酸化物微粒子を、ITO前駆体ゾル等の導電性材料前駆体溶液中に浸漬させ、その後に焼成する方法(ウェットプロセス)、あるいは金属酸化物微粒子に対して、蒸着やスパッタリング等の手段を用いてITO等の導電性材料を直接被覆する方法(ドライプロセス)等を挙げることができる。
なお、例えば、塗工液を調製する段階において、表面が導電性材料により被覆されている金属酸化物微粒子と表面が導電性材料により被覆されていない金属酸化物微粒子との混合割合を変えたり、あるいはドライプロセスによって導電性材料を金属酸化物微粒子の表面に被覆する際に蒸着やスパッタリングの条件を変えたりすることで、多孔質半導体層を構成する金属酸化物微粒子の表面のうち、導電性材料により被覆されている割合を制御することができる。この被覆割合の最適な範囲は、導電性材料の種類等によって異なり特に限定されるものではないが、大き過ぎると金属酸化物微粒子が増感色素を担持できなくなり発電効率がむしろ低下するため好ましくなく、また小さ過ぎると発明の効果が得られないため、これらのバランスを考慮して適宜設定される。具体的には、多孔質半導体層に含まれる全ての金属酸化物微粒子の表面の10〜70%、特に30〜50%が、導電性材料により被覆されていることが好ましい。
金属酸化物微粒子の塗工液に使用する溶媒としては、特に限定はされない。具体的には、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン等の塩素系溶媒、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテート等のエステル系溶媒、イソプロピルアルコール、エタノール、メタノール、ブチルアルコール等のアルコール系溶媒、その他、N−メチル−2−ピロリドン、及び純水等を挙げることができる。
その他、必要に応じて、多孔質半導体層の形成に使用する塗工液の塗工適性を向上させるために、各種添加剤を用いてもよい。添加剤としては、界面活性剤、粘度調整剤、分散助剤、pH調節剤等を用いることができる。pH調整剤としては、例えば、硝酸、塩酸、酢酸、アンモニア等を挙げることができる。
金属酸化物微粒子を含む塗工液を塗布する方法としては、公知の塗布方法であれば特に限定はされないが、具体的には、ダイコート、グラビアコート、グラビアリバースコート、ロールコート、リバースロールコート、バーコート、ブレードコート、ナイフコート、エアナイフコート、スロットダイコート、スライドダイコート、ディップコート、マイクロバーコート、マイクロバーリバースコートや、スクリーン印刷等を挙げることができる。このような塗布法を用い、一回または複数回、塗布及び乾燥を繰り返すことにより多孔質半導体層を所望の膜厚になるよう調整して形成する。
塗布、乾燥させた後、必要に応じて焼成を行う。これにより、多孔質半導体層の均質化、高密度化を図ることができ、金属酸化物微粒子間にネッキングを生じ結着性が高まるため、電荷の伝導性を向上させることができる。また、導電性基材と多孔質半導体層との密着性も向上させることができる。焼成する温度、時間は、多孔質半導体層の膜厚等によって異なり限定されるものではないが、一般的には300℃〜700℃で5分〜120分程度である。また、導電性基材が可撓性フィルムから構成される場合は、フィルムの耐熱温度以下で乾燥・焼成を行うことが好ましい。
増感色素を担持させる方法としては、例えば、増感色素の溶液に乾燥・焼成した金属酸化物微粒子を浸漬させ、その後、乾燥させる方法や、増感色素の溶液を金属酸化物微粒子上に塗布し、浸透させた後、乾燥させる方法等を挙げることができる。増感色素の溶液に使用する溶媒は、用いる色素増感剤の種類に応じて、水系溶媒、有機系溶媒から適宜選択する。
(3)対向電極
次に、対向電極40について説明する。対向電極40としては、チタンやアルミニウム等の各種の金属箔や金属板等の一般的な導電性の材料を用いることができ、あるいは、ガラスやプラスチック等の基板の表面上に導電層を形成することによっても得ることができる。基板は、透明であっても不透明であっても良いが、対向電極40側を光の受光面とする場合には、光の透過性に優れた透明基板であることが好ましい。さらに、耐熱性、耐候性、及び水蒸気等に対するガスバリア性に優れたものであることが好ましい。具体的には、石英ガラス、パイレックス(登録商標)、合成石英ガラス等の可撓性のない透明なリジット材、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体フィルム、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエーテルサルフォンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリイミドフィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のプラスチックフィルムを挙げることができる。本発明においては、これらの中でも、プラスチックフィルムを基板としてこれに導電層を形成した可撓性フィルムからなる対向電極を使用することが好ましい。これにより様々な用途に太陽電池を用いることができ、また太陽電池の軽量化、製造コストの削減を果たすことができる。なお、プラスチックフィルムは単独で基板として使用しても良く、2種以上の異なるプラスチックフィルムを積層した状態で使用しても良い。
対向電極の基板の厚さとしては、15μm〜500μmの範囲内であることが好ましい。
基板上に形成する導電層の材料としては、導電性に優れたものであれば特に限定はされないが、対向電極40側を光の受光面とする場合には、導電層は光の透過性に優れているものであることが好ましい。例えば、光の透過性に優れた材料として、SnO、ITO、IZO、ZnO等を挙げることができる。中でも、フッ素ドープしたSnO、ITOは、導電性及び透過性の両方に優れているため特に好ましく用いられる。
また、対向電極の導電層は、その仕事関数を考慮して太陽電池として機能するように材料を選択することが好ましい。例えば、仕事関数が高い材料としては、Au、Ag、Co、Ni、Pt、C、ITO、SnO、フッ素をドープしたSnO、ZnO等を挙げることができる。一方、仕事関数が低い材料としては、Li、In、Al、Ca、Mg、Sm、Tb、Yb、Zr等を挙げることができる。
なお、対向電極の導電層は、単層から構成されていても良く、また、異なる仕事関数の材料が積層されて構成されていても良い。
対向電極の導電層の膜厚としては、0.1nm〜500nmの範囲内、好ましくは1nm〜300nmの範囲内である。
このような導電層を形成する方法としては、特に限定はされないが、蒸着法、スパッタ法、CVD法等を挙げることができる。中でも、スパッタ法が好ましく用いられる。
また、対向電極の導電層上にさらに触媒層を形成することにより、色素増感型太陽電池の発電効率をより向上させることができる。上記触媒層の例としては、Ptを蒸着した層や、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール等の有機物からなる触媒層を挙げることができるが、これに限定されるものではない。
(3)電解質層
次に、電解質層30について説明する。電解質層30は、導電性基材10及び対向電極40の間に配置され、酸化還元対を含む電解液と、溶媒とを少なくとも含む塗工液から、溶媒を除去することによって作製される。
酸化還元対としては、一般的に電解質層において用いられているものから適宜選択することができる。具体的には、ヨウ素の酸化還元対、もしくは臭素の酸化還元対が好ましく用いられる。ヨウ素の酸化還元対としては、ヨウ素とヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化カルシウム、TPAI(テトラプロピルアンモニウムヨージド)等のヨウ化物との組み合わせを挙げることができる。また、臭素の酸化還元対としては、臭素と臭化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化カルシウム等の臭化物との組み合わせを挙げることができる。
電解質層30中の酸化還元対の濃度は、酸化還元対の種類によっても異なり特に限定されるものではないが、一般に、ヨウ素あるいは臭素の酸化還元対を用いる場合、ヨウ素もしくは臭素が電解質層中0.001〜0.5mol/l、ヨウ化物もしくは臭化物が0.1〜5mol/lとすることが好ましい。
電解質層30には、電解質の粘性を下げ、イオンの伝導性を改善して光電変換効率を向上させることを目的として、イオン液体(常温溶融塩)を含有させてもよい。イオン液体は蒸気圧が極めて低く、室温では実質的に殆ど蒸発せず、一般的な有機溶媒のように揮発や引火の心配がないことから、揮発によるセル特性の低下を防止することができる。
上記イオン液体としては、例えば、カチオンが、1−メチル−3−メチルイミダゾリウム、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム、1−オクチル−3−メチルイミダゾリウム、1−オクタデシル−3−メチルイミダゾリウム、1−メチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−ヘキシル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−オクチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−オクタデシル−2,3−ジメチルイミダゾリウム等のイミダゾリウム系、1−メチルピリジウム、1−ブチルピリジウム、1−ヘキシルピリジウム等のピリジウム系、脂環式アミン系、脂肪族アミン系、テトラブチルホスホニウム等のホスホニウム系、トリエチルスルホニウム等のスルホニウム系であるもの、アニオンが、ヨウ素イオン、臭素イオン、塩素イオン、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロボレート、トリフルオロメタンスルホネート、トリフルオロアセテート等のフッ素系、シアネート系、チオシアネート系であるもの等を挙げることができる。これらの物質は、いずれか一種を単独で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。
特に、ヨウ素をアニオンとするヨウ化物系イオン液体を用いることが好ましい。具体的には、例えば、1,2−ジメチル−3−n−プロピルイミダゾリウムアイオダイド、1−メチル−3−n−プロピルイミダゾリウムアイオダイド、1−プロピル−3−メチルイミダゾリウムアイオダイド、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムアイオダイド、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムアイオダイド等を挙げることができる。これらのヨウ化物系イオン液体は、ヨウ素イオンの供給源であり上述の酸化還元対としても機能させることができる。
電解質層中のイオン液体の濃度は、イオン液体の種類等によって異なる。ヨウ化物系イオン液体のように、酸化還元対としても機能させるイオン液体については、酸化還元対として含有させることとし、上記の酸化還元対について述べた濃度とすることが好ましく、すなわち電解質層中に0.1〜5mol/l含有させることが好ましい。その場合、そのヨウ化物系イオン液体以外のヨウ化物は含んでも含んでいなくてもよく、結果として酸化還元対として機能するヨウ化物の合計濃度が0.1〜5mol/lであればよい。
その他、電解質層30には、耐久性の向上、開放電圧値の向上等を目的として、種々の添加剤を含有させることができる。添加剤の具体例としては、グアニジウムチオシアネート、ターシャリーブチルピリジン、N−メチルベンゾイミダゾール等を挙げることができる。これら添加剤の電解質層中の濃度は、各種添加剤を合計して電解質層中1mol/l以下とすることが好ましい。
電解質層30の膜厚は、半導体層20の膜厚も含めて2μm〜150μmの範囲内、その中でも、10μm〜50μmの範囲内であることが好ましい。膜厚が小さ過ぎると多孔質半導体層と対向電極とが接触して短絡の原因となる可能性があり、逆に膜厚が大き過ぎると内部抵抗が大きくなり性能低下につながるため好ましくない。
電解質層30の形成方法としては、電解質層の形成に用いる塗工液を、多孔質半導体層20上に塗布し、乾燥させることにより形成する方法(以下、塗布法という)、あるいは多孔質半導体層20を形成した導電性基材10と対向電極40とを所定の間隙を有するように配置させ、その間隙に塗工液を注入することによって電解質層を形成する方法(以下、注入法という)等を挙げることができる。
塗工液の溶媒は適宜選択することができ、具体的にはエタノール等のアルコール系溶媒、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、N−メチルピロリドン等のアミド系溶媒、純水等を挙げることができる。特に、塗工液の安定性、電解質の成膜性の観点から、酸化還元対、及びイオン液体が溶解性を示すような溶媒を用いることが好ましく、例えば、エタノール等のアルコール系溶媒が好ましく用いられる。
塗布法において、塗工液を多孔質半導体層20上に塗布する手段としては、公知の手段を用いることができ、具体的には、ダイコート、グラビアコート、グラビアリバースコート、ロールコート、リバースロールコート、バーコート、ブレードコート、ナイフコート、エアナイフコート、スロットダイコート、スライドダイコート、ディップコート、マイクロバーコート、マイクロバーリバースコートや、スクリーン印刷等を挙げることができる。塗工した後、適宜乾燥させて溶媒を除去することにより電解質層を形成することができる。
このようにして形成した電解質層30に対し、対向電極40の触媒層側を貼り合わせることにより、本発明の色素増感型太陽電池を得ることができる。
電解質層30を注入法により形成する場合は、まず多孔質半導体層20を形成した導電性基材10及び対向電極40が所定の間隙を有して対向するように配置する。この際の間隙としては、導電性基材10及び対向電極40の間の距離が2μm〜150μmになるように設定することが好ましい。対向電極40を所定の間隙を有して配置するために、導電性基材10側または対向電極40側のいずれか一方にスペーサを設置することができる。このようなスペーサとしては、公知のガラススペーサ、樹脂スペーサが挙げられる。
次に、電解質層の形成に用いる塗工液を、毛細管現象を利用する等して間隙に注入し、必要に応じて硬化させ、電解質層30を形成することができる。これにより、色素増感型太陽電池を得ることができる。
さらに、上述のようにして得られた色素増感型太陽電池1の複数を、直列または並列に接続することにより色素増感型太陽電池モジュールを得ることができる。具体的には、例えば、複数個の色素増感型太陽電池を平面状または曲面状に配列させ、各電池の間には非導電性の隔壁を設けて仕切りをし、それぞれの電池を導電性の部材を用いて電気的に接続するとともに、端部から正極または負極の電極リードを引き出してモジュール化することができる。モジュールを構成する色素増感型太陽電池の個数は任意であり、所望の電圧が得られるように自由に設計することができる。
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに詳しく説明するが、これに限定されるものではない。
<ITO被覆酸化チタンの作製>
日本エアロジル社製の酸化チタン微粒子(商品名:P25)3gを、ITO前駆体のエタノール溶液(InCl:0.1M、SnCl:0.0052M/EtOH)40gに投入し、30分間浸漬させた。遠心分離により上澄みを取り除き、得られた沈殿物を以下のプロファイルで焼成することによって、ITOにより被覆された酸化チタン微粒子(以下、ITO被覆酸化チタンという)を得た。
焼成プロファイル:120℃10分→250℃10分→400℃10分
<酸化チタンペーストの作製>
日本エアロジル社製の酸化チタン微粒子(商品名:P25)3gを、エタノール10gに投入し、さらにアセチルアセトン1g、ジルコニアビーズ1.2φを添加した混合液をペイントシェーカーにより攪拌し、酸化チタン微粒子が分散されたペースト(酸化チタンペースト)を調製した。
<ITO被覆酸化チタンペーストの作製>
上記ITO被覆酸化チタン3gを、エタノール10gに投入し、さらにアセチルアセトン1g、ジルコニアビーズ1.2φを添加した混合液をペイントシェーカーにより攪拌し、ITO被覆酸化チタンが分散されたペースト(ITO被覆酸化チタンペースト)を調製した。
<酸化チタン・ITO被覆酸化チタン混合ペーストの作製>
日本エアロジル社製の酸化チタン微粒子(商品名:P25)1.5gと上記ITO被覆酸化チタン1.5gとを、エタノール10gに投入し、さらにアセチルアセトン1g、ジルコニアビーズ1.2φを添加した混合液をペイントシェーカーにより攪拌し、ペーストを調製した。
(比較例1)
<光電極基板Aの作製>
導電性基材として、ポリエチレンテレフタレートフィルム基板上にITO膜が形成された透明導電フィルムを用意し、上記酸化チタンペーストをドクターブレード法によりITO膜面に塗布し、その後120℃で5分間乾燥させることで、多数の金属酸化物微粒子(酸化チタン微粒子)からなる膜厚10μmの層を形成した。続いて、増感色素としてルテニウム錯体(Dyesol社製、商品名:N719)を、濃度が3×10−4mol/lとなるようにアセトニトリル及びtert−ブチルアルコールの体積比1:1溶液に溶解させて色素担持用塗工液を調製し、この塗工液に上述の酸化チタン微粒子の層を室温で20時間浸漬させた。その後、色素担持用塗工液から引き上げ、酸化チタン微粒子に付着した色素担持用塗工液をアセトニトリルにより洗浄後、風乾した。これにより、酸化チタン微粒子の細孔に増感色素が担持された多孔質半導体層を形成した。続いて、多孔質半導体層が4mm×4mmとなるようにトリミングし、導電性基材のサイズが10×10mmであるような、色素増感型太陽電池用の多孔質半導体層付き導電性基材(以下、光電極基板Aという)を得た。
<対向電極の作製>
上記と同様の透明導電フィルム上に、白金膜をスパッタリング法によって形成し(膜厚300nm)、サイズが10×10mmの対向電極を作製した。
<電解質層の形成>
メトキシアセトニトリル及びバレロニトリルを85:15(容量混合比)で混合した溶液に、ヨウ素0.03M、tert−ブチルピリジン0.5M、及びブチルメチルイミダゾリウムアイオダイド0.6Mをそれぞれ添加し、電解質層形成用の溶液を調製した。そして、厚さ30μmのアイオノマー樹脂をスペーサとして、光電極基板A上に対向電極を貼り合わせ、その間隙に上記溶液を含浸させて、電解質層を形成した。これにより、色素増感型太陽電池を作製した。
<電池性能の評価>
作製した色素増感型太陽電池について、AM1.5、擬似太陽光(入射光強度:100mW/cm)を光源として、増感色素を担持させた多孔質半導体層を有する導電性基材側から入射させ、ソースメジャーユニット(ケースレー2400型)を用いて電圧印加による電流電圧特性を測定した。なお、測定に用いた多孔質半導体層の面積は、16mm(4mm×4mm)である。
(比較例2)
上記比較例1(光電極基板Aの作製)において、酸化チタンペーストの代わりにITO被覆酸化チタンペーストを用いた以外は、比較例1と同様にして色素増感型太陽電池の電流電圧特性を測定した。
(実施例1)
上記比較例1(光電極基板Aの作製)において、酸化チタンペーストの代わりに酸化チタン・ITO被覆酸化チタン混合ペーストを用いた以外は、比較例1と同様にして色素増感型太陽電池の電流電圧特性を測定した。
<試験結果>
以下の表1に性能評価の結果を示す。なお、曲線因子(FF:fill factor)とは、太陽電池の最大出力を、短絡電流(ISC)×開放電圧(VOC)で割って得られる値をいい、短絡電流密度Jsc(A/cm)×VOC(V)×FF(%)の値を入射光強度で割ることによって、太陽電池の変換効率(%)を求めることができる。
Figure 0005593763
表1の結果から明らかなように、酸化チタン微粒子の表面をITOで被覆することにより、高い曲線因子が得られる。しかし、ITO被覆酸化チタンのみを用いた比較例2では、変換効率は低い値であった。これは、増感色素が十分に担持されなかったためと考えられる。そして、ITOで被覆されている酸化チタン微粒子とITOで被覆されていない酸化チタン微粒子とを混在させた場合(実施例1)には、高い変換効率が得られた。これは、酸化チタン微粒子間の抵抗が低減されたためと考えられる。
1 色素増感型太陽電池
10 導電性基材
20 多孔質半導体層
30 電解質層
40 対向電極

Claims (4)

  1. 導電性基材と、
    導電性基材上に配置され、増感色素を担持させた金属酸化物微粒子からなる多孔質半導体層と、
    多孔質半導体層に対向して配置された対向電極と、
    導電性基材及び対向電極の間に配置された、酸化還元対を含む電解質層と、
    から構成される色素増感型太陽電池であって、
    多孔質半導体層において、表面が導電性材料により被覆されている金属酸化物微粒子と表面が導電性材料により被覆されていない金属酸化物微粒子とが混在している前記色素増感型太陽電池。
  2. 金属酸化物微粒子が酸化チタンであり、導電性材料がITOである請求項1記載の色素増感型太陽電池。
  3. 多孔質半導体層を構成する全ての金属酸化物微粒子の合計した表面の10〜70%が、導電性材料により被覆されている請求項1又は2に記載の色素増感型太陽電池。
  4. 請求項1〜のいずれかに記載の色素増感型太陽電池の複数を、直列又は並列に接続してなる色素増感型太陽電池モジュール。
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