JP5591369B1 - 耐震補強工事施工方法及び耐震補強工事用ゴンドラ装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 三つのウインチ41,42,43に締結された三本のワイヤロープ31,32,33によりゴンドラ装置が吊り下げられ、ゴンドラ装置内のクレーン9が、カッター6を搭載したり、スリット形成のために壁面10に固定されたレール61にカッター6を装着したりする際に使用される。ゴンドラ装置に乗り込んだ作業者がリモコン71を操作し、制御ユニット7によりゴンドラ装置の昇降やカッター6の動作を制御する。スリット形成の際、カッター刃60はカッターカバー61で覆われ、湿式により粉塵が集塵機81で集められる。
【選択図】 図1
Description
このようなことから、マンションやオフィスビル等の既存のコンクリート建築物について、耐震性を高める工事(耐震補強工事)の研究が進められている。また、有効であるとされた幾つかの工法について既に実用化されており、実際に耐震補強工事が行われている。
このような耐震補強工事の一つが、建築物の外壁にスリットを形成する工法(以下、耐震スリット工法と呼ぶ)であり、例えば特許文献1や非特許文献1に開示されている。
耐震スリット工法では、頑丈な外壁に対してスリットを形成するため、ドリルやコンクリートカッター、ウォルソー等の比較的大型の切削工具又は切削機械が使用される。また、殆どの場合、2階以上の高い位置を含んでスリット形成を行う必要がある。このため、耐震スリット工事は、建築物の大規模修繕と同様、外壁に沿って足場を組んで行われる。
本願の発明は、このような課題を解決するために為されたものであり、耐震スリット工法を施工する際、工事が大がかりにならず、工期が短くて済み、コストも安価にでき、且つ屋内からの景観も大きくは悪化せず、また大きな労力を必要としないようにすることを目的としている。
ゴンドラ装置には、ゴンドラ装置全体の重心に対してほぼ均等な位置に三つのウインチが固定されているともに、クレーンがゴンドラ装置内に固定されており、
三つのウインチの固定箇所及び耐震補強工事を行う箇所に合わせて建物の屋上の縁部に三つの滑車を固定する動作を含む屋上準備作業を行う屋上準備工程と、
ゴンドラ装置内にカッター及び集塵機を搭載する搭載工程と、
一端が各ウインチに連結された各ワイヤロープを各滑車に引っ掛け、各ワイヤロープの他端を屋上で固定するワイヤロープ固定工程と、
各ウインチを動作させてゴンドラを昇降させ、耐震補強工事を行う箇所に適合した高さにゴンドラ装置を位置させるゴンドラ昇降工程と、
ゴンドラ昇降工程の後、耐震補強工事に行う箇所にレールを固定するレール固定工程と、
クレーン装置を用いてレールにカッターを装着するカッター装着工程と、
カッター装着工程の後、レールに沿ってカッターを移動させながらカッターを動作させることでスリットを形成するスリット形成工程と、
スリット形成工程の後、クレーンを用いてカッターをレールから取り外すカッター取り外し工程と、
次の箇所に耐震補強工事を行うために再びゴンドラ装置を昇降させるゴンドラ昇降工程とを含む耐震補強工事施工方法であり、
スリット形成工程は、カッターの刃をカバーで覆いながらコンクリート建築物の壁面の切削を行う工程であり、カバー内の粉塵を水を使用することなく集塵機で集めながらスリットを形成する工程であるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項2記載の発明は、コンクリート建築物の壁面にスリットを形成することで当該コンクリート建築物の耐震性を補強する耐震補強工事に用いられる耐震補強工事用ゴンドラ装置であって、
ベース板と、ベース板上に組み立てられた躯体とを備えており、
ベース板又は躯体には、ゴンドラ装置全体の重心に対してほぼ均等な位置に三つのウインチが固定されており、
ベース板又は躯体には、クレーンが固定されており、当該クレーンは、耐震補強用のスリットを形成するカッターを保持して移動させることが可能なものであり、
ベース板又は躯体には、制御ボックスが固定されており、
制御ボックス内には、三つウインチを同期して動作させてゴンドラ装置を昇降させるウインチ制御部と、搭載されたカッターを制御するカッター制御部とが設けられており、
カッター制御部によって制御されるカッターは、ベース板上に搭載された集塵機に接続されたカッターカバーでカッター刃を覆うことで粉塵を飛散させることなく建築物の壁面を切削する乾式のカッターであるという構成を有する。
また、カッターを制御する制御ボックスもゴンドラ装置内に設けられているので、作業者がカッターによる切削状況を見ながらカッターによる切削動作の調整を行うことも可能である。
また、三本のワイヤロープゴンドラ装置が吊り下げられるので、ゴンドラ装置全体の重量が大きくなってもゴンドラ装置に揺れが生じて不安定になることはない。
また、カッターによる切削の際に集塵機により粉じんが集められるので、粉じんが飛散して問題になることはない。この際、粉じんの回収は乾式で行われるので、湿式のような困難性や面倒はなく簡便であり、ゴンドラ装置に適している。
図1は、本願発明の実施形態に係る耐震補強工事用ゴンドラ装置の斜視概略図である。図1に示すゴンドラ装置は、前述した耐震スリット工法の施工に用いられる装置である。このゴンドラ装置は、図1に示すように、ベース板1と、ベース板1上に組み立てられた躯体2とを備えている。
ベース板1は剛性の高いスチール製であり、例えば3000×1200mm程度の大きさとなっている。躯体2は、図1に示すような骨格部材であり、同様にスチール製の角材を組み立てて構成されている。
また、左側には第二のウインチ42が固定されている。左側において前後方向に延びる躯体部材21には第二の支持板421が固定されており、第二のウインチ42は、第二の支持板421上に固定されている。そして、右側において前後方向に延びる躯体部材21には第三の支持板431が固定されており、第三の支持板431上には第三のウインチ43が固定されている。
尚、図1に示すように、第二の支持板421の上方に位置する躯体部材21には、第一のワイヤガイド321が固定されている。また、第三の支持板431のは上方に位置する躯体部材21には、第二のワイヤガイド331が固定されている。第二のワイヤロープ32は、第一のワイヤガイド321に挿通された状態で垂直方向に延びており、第三のワイヤロープ33は、第二のワイヤガイド331に挿通された状態で垂直方向に延びている。
クレーンアーム92は、二つの部材で構成されていて伸縮可能となっている。クレーンウインチ93は、先端にフック94を有するワイヤを巻装したものであり、フック94を引き出してフック94に重量物を引っ掛けて保持させることが可能なものである。
制御ボックス7の主要な機能の一つは、耐震補強用のスリットを形成するカッター6に電力を供給したりカッター6の動作を制御したりする機能である。従って、制御ボックス7内には、カッター用電源回路とカッター制御回路とが含まれる。
また、後述する耐震スリット工事の施工方法では、ハンマードリルのようなドリルが使用される。電動のドリルが使用される場合、制御ボックス7はこのドリルの電力供給を行う場合もある。この他、制御ボックス7は、クレーンウインチ93への電力供給も行うようになっている。
また、図1には不図示であるが、制御ボックス7の前面パネルには、各種操作ボタンが設けられている。また、制御ボックス7からある程度離れたゴンドラ装置内の位置でも操作ができるよう、有線式のリモコン71が設けられている。
図2〜図5は、実施形態のゴンドラ装置を使用した耐震補強工事の施工について示した概略図である。このうち、図2は、屋上準備工程について示した側面断面概略図である。図3は、カッター6がスリットを形成している状況について示した斜視概略図であり、図4は、スリット形成工程の手順について示した概略図である。また、図5は、集塵を行いながらスリット形成を行う状況について示した側面概略図である。実施形態の方法は、屋上準備工程と、ワイヤロープ固定工程と、搭載工程と、吊り上げ工程と、ゴンドラ昇降工程と、スリット形成工程等を含んでいる。
屋上準備工程は、耐震補強工事に必要な屋上での準備作業を行う工程である。この工程には、ゴンドラ装置の吊り下げのためのガイドアーム51,52,53の取り付けを含む。
三つのガイドアーム51,52,53は、通常、建築物のエレベータを使用し、台車等に載せて屋上に運ばれる。そして、耐震スリットを形成する箇所に合わせ、パラペット11上の所定の位置に各ガイドアーム51,52,53を取り付ける。
ガイドアーム51,52,53は、台座500に連結ボルト502により連結される。ガイドアーム51,52,53には、長さ方向に沿って幾つかボルト孔が形成されており、適宜のボルト孔を選択することでガイドアーム51,52,53の壁面10からの突出長さが調整される。
このようにして三つのガイドアーム51,52,53をそれぞれ取り付け、それぞれにワイヤロープ31,32,33を懸架すると、屋上準備工程は終了である。尚、各ワイヤロープ31,32,33は、屋上から地上まで垂らされる。
所定位置にゴンドラ装置を移動させた後、ワイヤロープ31,32,33をそれぞれウインチ41,42,43に締結する。即ち、第一のワイヤロープ31については、二つのガイドプーリ311,312に引っ掛けならが第一のウインチ41に締結する。第二第三のワイヤロープ32,33については、ワイヤガイド321,331に通し、第二第三のウインチ42,43にそれぞれ締結する。
尚、カッター6の搭載は、各ワイヤロープ31,32,33のウインチ41,42,43への締結動作の前又は後のどちらでも良いが、ワイヤロープ31,32,33がカッター6の搭載に邪魔になるようであれば、カッター6の搭載をした後に各ワイヤロープ31,32,33の締結を行うようにする。尚、カッター6の搭載後、カッター6は、制御ボックス7内の電源回路や制御回路にケーブルで接続される。
さらに、粉じんの飛散を防止しながら耐震スリット工事を行うため、ゴンドラ装置には集塵機(図1中不図示)と、カッターカバー(図1中不図示)と、集塵ホース(図1中不図示)等が搭載される。集塵機としては、例えば、HILTI社製のバキュームクリーナーVC40−Uを使用することができる。
スリット形成工程では、まず、ドリルを使用してはつり作業を行う。はつり作業は、スリット形成領域の上端部と下端部に予め穴開けする作業である。穴開けは、図4(1−1(1−2)に示すように、上端部及び下端部のそれぞれに例えば三つ程度行われ、穴三つ程度の長さの溝10Hが形成される。
このようにして同一沿直線上に位置するすべてのスリット形成箇所に対してスリット形成を行う。各スリット形成箇所に対するスリット形成は、最も下のスリット形成箇所から始めて順次ゴンドラ装置を上昇させながら行っても良いし、最も上のスリット形成箇所から始めて順次ゴンドラ装置を下降させながら行っても良い。
尚、一つのスリット形成箇所へのスリット形成が終了した後、その左側又は右側のスリット形成箇所までの離間間隔がゴンドラ装置の幅より小さい場合には、ゴンドラ装置を水平方向に移動させずに(各ガイドアーム51,52,52の移動やワイヤロープ31,32,33の掛け直しをせずに)、クレーン9によりカッター6を装着し直すことで次のスリット形成を行う場合もあり得る。
尚、粉じんの回収には湿式即ち水を使用して行う方式もあるが、実施形態の装置や方法では乾式即ち水を使用しない。この点は、ゴンドラ方式であることに関連して顕著な意義を有する。即ち、足場のように定常的な構造物が設置される場合には、給水ホースを敷設することも容易であり、非現実的な方法ではない。しかしがら、ゴンドラ方式の場合、ゴンドラ装置が適宜昇降しながらスリット形成が行われるので、そこに粉じん回収用の水を供給するのは困難である。地上からホースで給水する場合、ポンプでかなりの圧力で給水しなければならないし、屋上から給水する場合にも、屋上にいったん大量の水を溜めなけれならず、困難で面倒である。そして、湿式の場合には、排水中に粉じんが混ざるので、排水を処理してから廃棄しなければならず、この点でも面倒である。乾式の場合、このような困難性や面倒はなく、簡便である。尚、粉じんの飛散防止の観点では、ゴンドラ装置の側面全体をシートで覆うようにすることも効果的である。
尚、ドリルを併用することは上述したような効果があるが、カッターのみでスリットを形成した場合でも、耐震補強の効果は得られる。従って、ドリルによるはつり作業は必須要件ではない。
また、ウインチ41,42,43、クレーン9、制御ボックス7等は躯体2に固定されたが、ベース板1に固定されてていも良い。ゴンドラ装置を構成する構造部材のどれかに固定されていれば良い。
尚、スリット形成を行う壁面は、主として外壁であるが、屋内の壁面に対して行う場合もあり得る。
2 躯体
21 躯体部材
31 ワイヤロープ
32 ワイヤロープ
33 ワイヤロープ
41 ウインチ
42 ウインチ
43 ウインチ
50 滑車
51 ガイドアーム
52 ガイドアーム
53 ガイドアーム
6 カッター
60 カッター刃
61 レール
62 カッターカバー
7 制御ボックス
81 集塵機
82 集塵ホース
9 クレーン
91 クレーン支柱
92 クレーンアーム
93 クレーンウインチ
10 壁面
10S スリット
11 パラペット
Claims (2)
- コンクリート建築物の壁面にスリットを形成することで当該建築物の耐震性を補強する耐震補強工事施工方法であって、ゴンドラ装置を用いた方法であり、
ゴンドラ装置には、ゴンドラ装置全体の重心に対してほぼ均等な位置に三つのウインチが固定されているともに、クレーンがゴンドラ装置内に固定されており、
三つのウインチの固定箇所及び耐震補強工事を行う箇所に合わせて建物の屋上の縁部に三つの滑車を固定する動作を含む屋上準備作業を行う屋上準備工程と、
ゴンドラ装置内にカッター及び集塵機を搭載する搭載工程と、
一端が各ウインチに連結された各ワイヤロープを各滑車に引っ掛け、各ワイヤロープの他端を屋上で固定するワイヤロープ固定工程と、
各ウインチを動作させてゴンドラを昇降させ、耐震補強工事を行う箇所に適合した高さにゴンドラ装置を位置させるゴンドラ昇降工程と、
ゴンドラ昇降工程の後、耐震補強工事に行う箇所にレールを固定するレール固定工程と、
クレーン装置を用いてレールにカッターを装着するカッター装着工程と、
カッター装着工程の後、レールに沿ってカッターを移動させながらカッターを動作させることでスリットを形成するスリット形成工程と、
スリット形成工程の後、クレーンを用いてカッターをレールから取り外すカッター取り外し工程と、
次の箇所に耐震補強工事を行うために再びゴンドラ装置を昇降させるゴンドラ昇降工程とを含む耐震補強工事施工方法であり、
スリット形成工程は、カッターの刃をカバーで覆いながらコンクリート建築物の壁面の切削を行う工程であり、カバー内の粉塵を水を使用することなく集塵機で集めながらスリットを形成する工程であることを特徴とする耐震補強工事施工方法。 - コンクリート建築物の壁面にスリットを形成することで当該コンクリート建築物の耐震性を補強する耐震補強工事に用いられる耐震補強工事用ゴンドラ装置であって、
ベース板と、ベース板上に組み立てられた躯体とを備えており、
ベース板又は躯体には、ゴンドラ装置全体の重心に対してほぼ均等な位置に三つのウインチが固定されており、
ベース板又は躯体には、クレーンが固定されており、当該クレーンは、耐震補強用のスリットを形成するカッターを保持して移動させることが可能なものであり、
ベース板又は躯体には、制御ボックスが固定されており、
制御ボックス内には、三つウインチを同期して動作させてゴンドラ装置を昇降させるウインチ制御部と、搭載されたカッターを制御するカッター制御部とが設けられており、
カッター制御部によって制御されるカッターは、ベース板上に搭載された集塵機に接続されたカッターカバーでカッター刃を覆うことで粉塵を飛散させることなく建築物の壁面を切削する乾式のカッターであることを特徴とする耐震補強用ゴンドラ装置。
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