JP5589584B2 - レーザ溶接方法、電子部品接続構造及びレーザ溶接検査方法 - Google Patents

レーザ溶接方法、電子部品接続構造及びレーザ溶接検査方法 Download PDF

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Description

本発明は、フレキシブルプリント基板に形成された配線用導体と該基板に搭載される電子部品とを電気的に接続するためのレーザ溶接方法及びレーザ溶接部位の検査方法に関する。
フレキシブルプリント基板(FPC:Flexible Print Circuit Board)にIC、LSI,LED等からなる電子部品を実装することはよく行われる。例えば、ICカードには、フィルム上に形成されたアンテナ回路と制御用ICの端子とを電気的に接続をとって実装したものが内蔵されている。
アンテナが形成されたアンテナシート上に電子部品を実装する場合、はんだリフロー法が便利であって、フィルムの耐熱性からポリイミドフィルムと銅アンテナを選択するのが望ましいが、コスト的に問題がある。はんだ以外に導電性ペーストによる接続もあるがこれも材料費が負担となる。
抵抗溶接方式は、重畳された接続部を上下から電極で挟んで流れる電流のジュール熱で重畳金属部分を溶かす方法であるが、電流の安定性や電極表面のメンテナンスに問題がある。
レーザ溶接は、フィルム上に形成された配線部材に対して電子部品の接続用端子を密着させ、当接部位にレーザ光を照射し溶接により物理的に接続固定させて実装するものである。
レーザ溶接の一例として、一対のフィルムに挟まれた導体の一部を露出させた上、当該露出部分に電子部品を搭載し、電子部品から見て裏面側からレーザ光線を所定部位に照射して露出した導体部分と電子部品端子とを溶接固定する方法が特許文献1に開示されている。
ところで、上記レーザ溶接の際には、他方側の絶縁層のレーザ溶接部に対応する部分が蒸発して飛散する爆飛と呼ばれる現象が発生することがある。そして、この爆飛が起こると、場合によっては導体に孔が開いたりすることもあり、結果として、安定した溶接強度を得ることができないという問題がある。この対策としてレーザ照射方向から見て他方側の絶縁層に、レーザ溶接による爆飛を阻止する爆飛阻止手段として開口部が設ける技術が特許文献2に開示されている。
特開2009−94349号公報 特開2009−152470号公報
前記のレーザ溶接には下記の問題点がある。
導体としてのアルミニウムやアルミニウム合金、銅、銅合金等の金属材料は、常温時の特性として、近赤外域において高い反射率を有している。このため、これらの材料からなる部材の接合部分に、発振波長が近赤外域にあるレーザ光(例えばNd:YAGレーザ光、波長1
.06μm)を照射して溶接を行うと、金属材料や波長によって反射率が異なるが、一定割合のレーザ光が反射されてしまうという問題がある。
また、FPCのように上記導体をフィルムを間にして張り合わせた素材を用いる場合に、張り合わせたフィルム方向からレーザ光を照射した場合には、照射初期にフィルム材料の表面で一定割合のレーザ光が反射されることにより、部材の接合部分までレーザ光のエネルギーが効率良く伝達されない場合があった。
フィルム表面の汚れの程度や導体箔の製造ロットによっては、被照射部の金属部材に到達するエネルギーにバラツキが生じることもある。このためレーザ溶接の都度、レーザの出力条件を被照射体の特性に適合するように再調整する必要があった。
レーザ溶接部位が電気的にも物理的にも確実に接続されたかどうかは、フィルム表面の熱溶解後の形状観察によって一定程度予想できるが、溶接部周辺のコントラストが導体の反射特性によって変化しやすいため検査に必要な水準を得られない場合がある。
レーザ溶接時に導体と電子部品の端子部を密着させるための冶具(しわ押さえ、可動ストリッパー)を使用するが、FPCが変形することによりアライメントマークと溶接部位との相対位置が様々に変化してしまい、レーザ溶接部目標位置の認識精度が低下するという問題があった。
そこで本発明は、電子部品端子とフィルム上の導体とをレーザ溶接するに当たり、レーザ光が被溶接金属材料とフィルム表面から反射消失して有効利用されないという問題、製造ロットの違いによるレーザ溶接条件の再設定の問題、およびレーザ溶接後の溶接部分の形状認識が容易でないという問題を解決することを課題とした。
上記の課題を達成するための請求項1に記載の発明は、一方の面に一対の導体を有し該一対の導体を挟んで開口部を有する透明もしくは半透明のフィルムの開口部に、金属端子を有する電子部品を該金属端子がフィルムの一方の面に形成された導体に当接するように搭載し、該当接部位にレーザ光を照射して導体と金属端子とを接続するレーザ溶接方法であって、該フィルムの他方の面上に、該当接部位を含むように着色領域を設け、レーザ光を着色領域側から当接部位に照射することでフィルムを除去し該当接部位を溶接することを特徴とするレーザ溶接方法としたものである。
請求項2に記載の発明は、前記フィルムの導体を形成した面に、開口を有する押さえ冶具を備え、該押さえ冶具によりフィルムに形成した導体と電子部品の金属端子を密着させ、該押さえ冶具の開口を通してレーザ光を照射することを特徴とする請求項1に記載のレーザ溶接方法としたものである。
請求項3に記載の発明は、前記着色領域は少なくとも円形に着色された領域を内包することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のレーザ溶接方法としたものである。
請求項4に記載の発明は、前記着色領域は、着色領域の内側にレーザ溶接後の溶接部が内包されるように着色されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のレーザ溶接方法としたものである。
請求項5に記載の発明は、レーザー光を照射する際、押さえ冶具の画像を撮影し、撮影画像からレーザ光照射位置を算出することを特徴とする請求項から請求項4のいずれか1項に記載のレーザ溶接方法としたものである。
請求項6に記載の発明は、前記着色領域の色相と着色領域周辺の非着色領域の色相が異なることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のレーザ溶接方法としたものである。
請求項7に記載の発明は、前記着色領域は、着色材料をインクジェット方式により塗布して形成したことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のレーザ溶接方法としたものである。
請求項8に記載の発明は、前記着色領域は、フィルムが染料インクによって着色されていることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のレーザ溶接方法としたものである。
請求項9に記載の発明は、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のレーザ溶接方法でフィルムに形成した導体と電子部品の金属端子を溶接した後、接続判定検査をフィルム表面溶接部形状と溶接部周辺部との色相差により行うことを特徴とするレーザ溶接検査方法としたものである。
本発明は、フィルム上に形成された導体と電子部品の端子の間をレーザ溶接により接続する電子部品の実装方法であるが、フィルムを介して前記電子部品とは反対側から導体の表面にレーザを照射する場合に、前記フィルムのレーザ照射面を含むフィルム照射面近傍に着色領域を備えることにより、照射初期の反射率を低下することができるため、導体と電子部品の端子の接合部分にレーザ光のエネルギーが効率良く吸収される。これにより、短時間で十分な加工を行うことができる。また、表面の汚れや導体の酸化状況によらず溶融部が受け取るエネルギーが均一になるため、レーザ溶接の出力条件をマシンメンテナンスやFPCの製造ロットにあわせた再調整に必要な時間を減少させることができる。
そして、フィルム表面上で吸収したエネルギーは導体の溶融に先立ちフィルムの溶融、蒸発を行うため、短時間で十分な加工を行うことが可能になり、爆飛の発生も低減することができる。
また、レーザ溶接時に導体と構成部品を密着させるための押さえ冶具を備え、レーザ溶接部の目標位置を押さえ冶具内で撮影された画像を含む画像認識により行うことにより、押さえ部周辺のFPCが変形したりしわが発生した場合でも、レーザ溶接部の目標位置を正確に知ることができる。
また、着色領域は少なくとも円形に着色された領域を含むことで、レーザ光の照射ビーム形状と相似形状とすることができるため、レーザ光吸収に必要な着色領域を最小限度の面積とすることができる。
また、着色領域とレーザ溶接部形状との相対的な位置関係は、着色領域の内側にレーザ溶接部が含まれるか、もしくは着色領域とレーザ溶接部が接するようになっているため、溶接部全てにおいてレーザ光吸収の効果を得ることができる。
また、円形に着色された領域とレーザ溶接部形状との位置関係は、円形に着色された領域の内側にレーザ溶接部形状を含む、もしくは円形に着色された領域とレーザ溶接部形状が接しているため、レーザ溶接後の円形に着色された領域を観察することで、あらゆる方向の溶接位置ズレ検出を容易に行うことができる。
また、レーザを照射するフィルムを透明もしくは半透明としてもよい。この場合には、エネルギー照射初期時にフィルムを透過していくレーザ光をフィルム表面で効率よく吸収することが可能になり、フィルムの溶融、蒸発が安定して行われるため、短時間で十分な加工を行うことができる。
また、着色領域の輝度を周辺の非着色領域の輝度よりも低くしており、着色領域でレーザ光のエネルギーが効率よく吸収が行われるため、短時間で十分な溶接加工を行うことができる。
また、円形に着色された領域の輝度は、周辺の着色領域の輝度よりも低くしており、円形に着色された領域でレーザ光のエネルギーが効率よく吸収が行われるため、短時間で十分な加工を行うことができるとともに、フィルムが透明であっても周辺の着色領域を設けることによって導体方向への透過及び導体からの反射を低減することができる。これによりレーザ溶接部の目標位置を画像認識により行う際のコントラストを安定化することができる。
また、着色領域をインクジェット方式により塗布するので、フィルムに導体が形成されている場合や着色領域以外のところにシワや破れがあった場合でも、版との密着性を考慮する必要がないので安定して着色領域を形成することができる。
また、着色領域を染料インクによって着色するので摩擦に強く、ロールからロールへの搬送や巻き取り時に擦過された場合においても、着色領域の劣化を防ぐことができる。
また、接続構造が短時間で十分な加工を行うことができるため、製造にかかるエネルギーを低く抑えることができる。また、表面の汚れや導体の酸化状況によらず溶融部が受け取るエネルギーが均一になるため、排気やクリーン化が不十分な工程で製造する場合であっても接続構造の仕上がりバラツキが少ない。また、フィルム表面溶接部形状の特徴抽出を容易に行うことができるため、接続構造の仕上がりが不良の場合でもそれを選別することができる。また、レーザ溶接部以外のFPCが変形したりしわが発生した場合であっても目標位置を正確に知ることができることができるため、様々な素材上に形成された導体に対して電子部品を接続できる。また、着色領域をレーザ溶接部形状程度の最小領域に限定することも可能になるため追加費用を安価に抑えデザイン性にも影響が少なくなる。
また、レーザ溶接後の接続判定検査をフィルム表面溶接部形状と周辺部の色相差により行う際に、溶接部周辺が着色されているためフィルム表面溶接部形状の特徴抽出の精度を高めることができる。
本発明に係る電子部品端子と導体とのレーザ溶接部の構造を模式的に説明する図。(a)上面視の図、(b)断面視の図。 フィルム表面の着色領域の位置と形状を説明する図。 押さえ治具の枠がフィルムを押さえ込む位置を模式的に説明する上面視の図。 押さえ治具の枠がフィルムを押さえ込む位置を模式的に説明する平面視の図。 本発明になるレーザ溶接の溶接後の接続状態を模式的に説明する図。 従来のレーザ溶接の溶接後の接続状態を模式的に説明する図。 レーザ溶接の位置ズレを模式的に説明する図。 本発明になる第一の着色領域と第二の着色領域の相対的位置関係を説明する図。
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1(a),(b)に、本発明の第1の実施形態である電子部品の接続構造部体1の正面視とAA’における断面視の図を示した。ここで接続構造部体1とは、電子部品が溶接によってフィルム2上に実装された全体を指称するもので、レーザ溶接部5は、電子部品の端子に相当する部分6とフィルム上の導体3がレーザ溶接により接続している部位を指称するものである。電子部品は、IC、LSI、LED等の半導体素子7が、接続端子としてのリードフレーム6に、ワイヤーボンディング等で接続をとって固定されモールド樹脂8で被覆保護されたものである。
リードフレーム6は図では一体のように描かれているが、実際にはそれぞれの端子が導通しないように端子ごとに別々の金属片が樹脂で固定されたものである。
ここでフィルム2は、無色透明で厚さ20〜150μm程度のポリエチレンテレフタレート(PET)で、厚さ10〜20μm程度のアルミ箔が導体3として接着剤により張り合わされたものである。アルミ箔はエッチングによって端子や配線に必要な部分を残し除去されて導体3の形状となっている。導体3上のフィルム2表面のレーザ溶接部5予定箇所周辺には、インクジェット方式等の印字機によって染料インクが塗布されて着色領域4が形成されていたものである。
レーザ溶接部5は、導体3と銅合金からなるリードフレーム6の端子相当部分をNd:YAGレーザ照射によって接合したものである。リードフレーム6は、IC等の半導体素子を搭載するとともに導体3への配線に用いるもので、半導体素子を保護するモールド樹脂8の内部で、半導体素子7とリードフレーム6は図示しないボンディングワイヤ等によって結線されており、第1の実施形態において電子部品はリードフレーム6、IC7、モールド樹脂8、ボンディングワイヤから成る半導体素子モジュールである。
フィルム穿孔部9は、フィルム2を「ぬき刃」によって穿孔したもので、電子部品本体が収容されるスペースである。本発明において必ず必要というものではないが、フィルム穿孔部9が無い場合には、モールド樹脂8が突出しているので、平坦なリードフレーム6部を導体3に対向するように半導体素子モジュールの表裏を図1(b)とは逆にして取り付けないと、導体3をモールド樹脂8部近傍でリードフレーム6と密着させることが困難になる。半導体素子モジュールの表裏を逆にして取り付けた場合には、取り付け後の実装高さがフィルム2と導体3の厚さ分厚くなるので、薄型化が必要な場合にはフィルム穿孔部9を設けて、モールド樹脂8部の面を導体3に対向する向きで取り付けるのが好ましい。
本発明の第1の実施形態である電子部品の接続構造体1は、以下の手順によって製作される。
図2に示す平面図は、本発明の第1の実施の形態に用いるフィルム表面の着色領域を示
す図であり、インクジェット方式によって染料インクが着色領域4に塗布されるものである。着色領域4はレーザ溶接部5の予定領域に塗布されるが、レーザ溶接部5はリードフレーム6の取り付けズレを考慮するとともに、取り付け後の接合強度や仕上がり状態を考慮してやや大きめに設定することが望ましい。
しかしながら、後述するようにレーザ溶接は、レーザ溶接目標位置を押さえ冶具で押えつつ、治具内の撮影画像に基づいて行われるので、押さえ冶具はレーザ溶接部5の予定領域に近接して配置するのが好ましく、しかれば、冶具内に配置される着色領域4は小さい方が望ましい。
そこで着色領域4は、必要最小限の大きさとして正確な位置に塗布するということが要請される。さらに着色領域4を設けるフィルム2は、薄くシワが寄りやすい性質を持っているためフィルム穿孔部9の穿孔の際に、抜き刃の動作につられて歪んでしまうと着色領域4を設ける位置の算出が難しくなる可能性がある。
上記の点を考慮して第1の実施形態では、フィルム穿孔部9の形成前に、押え治具から一定程度離れた位置にアライメントマーク10a及び10bを形成しておき、これを基準として塗布すべき位置を算出し、着色インクを正確に塗布することとした。
また、着色領域4の形状は、レーザ光のビーム投影形状が円形であることから、レーザ光照射の許容公差を考慮して合理的な径の円形とし、染料インクは吸収性を考慮して黒色とした。色については、無色透明のPETに対して着色領域の透明度が低くなるようなインクであれば、レーザ光のエネルギーが効率よく吸収されるため、どのような材料や色であってもよい。
なお、フィルム2の性質や穿孔後の状態、又は要求精度によっては着色領域4の塗布手順はこの限りでなく、フィルム穿孔部9を形成した後で着色領域4を設ける順序とすることも可能である。また、アライメントマーク10a及び10bについては、着色領域4の塗布のためにのみ設けるものではなく、通常は、フィルムの搬送ズレ補正や半導体素子モジュールの実装目標位置算出の基準とすることが一般的であり、着色領域4の周辺の導体3形状等でアライメントマークに代えることができる場合などでは省略することができる。
また、形状も円形に限ることはなく、例えば後述するレーザ溶接後の溶接位置ズレ検出を行う場合は、着色領域4はレーザ光の吸収を考慮した上で適切な形状を選択できる。
本発明の第1の実施形態に係るフィルム2は、薄く柔軟性に富む素材で加工し易い反面、加熱時あるいは加圧時にシワが発生したり引っ張りによって変形しやすい性質を持っている。このため、例えばフィルム穿孔部9の加工の際に歪みが発生してしまい、そのままの状態ではレーザ溶接時に導体3とリードフレーム6の対向部に空隙が生じてしまうという問題がある。レーザ溶接時に両部位が密着されない状態でレーザ光を照射したとしても、溶接が行われなかったり、あるいは不完全な溶接状態となってしまう可能性がある。そこで本発明では、図3の点線で囲まれた斜線領域に押さえ冶具領域11a,11bを設けて、同部を加圧することで導体3とリードフレーム6を密着させてからレーザ溶接を行った。
図4は着色領域、押さえ冶具及びバックアップステージの状態を示す図3のB-B’における断面視図であり、押さえ冶具が当てられた状態を模式化して示している。押さえ冶具12a,12bは、バックアップステージ13との間に荷重を加えて導体3とリードフレーム6を密着させるためのもので、図中では2個の冶具として描かれているが、適切な密着を得られる構成であればよく、モールド樹脂8を含めた広い範囲を1個の冶具で押さえ
る構成にしてもよい。
本実施例に係る構成では、押さえ冶具12a,12bはより広い範囲で押さえることを考慮しつつも、後述するレーザ溶接部の目標位置を押さえ冶具内で撮影された画像を含む画像認識により行う為に、着色領域4と押さえ冶具が重畳することがないよう適切な大きさで設計されている。バックアップステージ13は、押さえ冶具に対向して荷重を受けるものであり、図中には示されていないがフィルム2やリードフレーム6を真空吸着する吸着部を設けてフィルム2の位置ズレ防止にしたり、しわを防止する引っ張り機構を備えた構成にしてもよい。
押さえ冶具12a,12bによって導体3とリードフレーム6が当接された後、押さえ冶具12a,12bの上部に空けられた開口部からレーザ光が照射されてレーザ溶接が行われることになる。レーザ溶接の際には、照射に先立ち、まずレーザ溶接部の目標位置が算出される。本実施例に係る構成において、レーザ溶接の目標位置は着色領域4のそれぞれ円形の中心部であるので、撮影画像から目標位置となる座標を算出する。算出された目標位置座標はレーザ溶接の制御部に送られて、これを元にレーザ溶接を行う構成としているので、位置精度の高いレーザ溶接が可能になっている。以上の手順によって正確な位置へ効率よい出力によって短時間でレーザ溶接が行うことができた。
本発明の特徴であるレーザ溶接部の目標位置を押さえ冶具内で撮影された画像を含む画像認識により行うレーザ溶接方法は、導体を形成しているフィルムが薄く柔軟性に富む素材にたいして特に高い効果を発揮するが、フィルムのしわ、破れ、熱伸縮、引っ張り変形等の懸念が少ない場合には、図2に示すアライメントマーク10a,10bのように押さえ冶具の外に設けてレーザ溶接の目標位置の基準とすることもできる。
また、着色領域4は、想定されるレーザ溶接部5領域よりも小さな領域としておき、レーザ溶接後に着色領域が見えなくなる構成としてもよいが、図1(a)に示すように着色領域4とレーザ溶接部5形状との位置関係を、着色領域4の内側にレーザ溶接部5形状を含む、もしくは着色領域4とレーザ溶接部5形状が接することとしてもよい。係る構成によってレーザ溶接部5全体においてレーザ光吸収の効果を得ることができる。
本発明のレーザ溶接検査方法では、レーザ溶接後の接続判定検査をフィルム表面の溶接部形状と周辺部の色相差により行うが、溶接部周辺が着色領域との比較により明確化するのでフィルム表面溶接部形状の特徴抽出の精度を高めることもできる。
図5は、第1の実施の形態におけるレーザ溶接後の接続検査の例を示している。導体3に接着したフィルム2上の6箇所に直径0.8mmの円形着色領域を設けて、その中心位置を目標としてレーザ照射を行った。レーザ照射後の照射部位の接続合否判定は、接続部の剥離試験や断面観察によって行われるのが望ましいが、出荷する製品にはこのような破壊検査による判定方法を適用することができない。
そこで本発明においては、レーザ照射後の着色領域の撮影画像と接続部合否判定を関連づける関数を導入して判定を行った。具体的には、同一条件、同一環境で先行してレーザ照射を実施して、接続部の強度や信頼性の実験を行い、着色部の内側円形直径が0.4mm以上0.8mm以下である場合に接続信頼性が得られたので、この場合を合格判定とし、それ以外の直径の場合を不合格判定とする判定基準を予め決めていたものである。
レーザ溶接部は、端子接続部について1ヶ所とは限らない。一般には、電気的接続の確実性と機械的強度の点から複数箇所設けるので電気的な導通試験だけでは不十分である。というのは、導通は取れるので上記の外観形状観察が不可欠であるということである。
実際、レーザ照射光の出力やパルス幅等の条件を変えて、レーザ溶融部の直径を変えたサンプルを製作した。製作したサンプルの6箇所のレーザ溶接部を撮影した画像でフィルム表面溶接部形状と周辺部の色相差により検査したところ、いずれの箇所も着色部の形状を撮影及び計測することができて、前記先行試験の結果である接続部合否判定基準を容易に適用することができた。正常条件で出力したレーザ溶接部5aを含むレーザ溶接部4箇所は直径0.5mmで合格判定となり、検証用に出力条件を変えたレーザ溶接部5bは直径0.3mmで不合格判定となり、同じく検証用に出力条件を変えたレーザ溶接部5cは直径0.7mmで不合格判定となった。このレーザ溶融部5b、5cを接続部の剥離試験や断面観察によって接続合否判定を行ったところ、着色領域を用いた判定結果と同じく不合格判定であった。これによりレーザ溶接部周辺の着色領域によって接続部の合否を正確に判定できていることが確認できた。
図6は、着色領域を設けない従来のレーザ溶接後の接続部の形状例を模式的に示している。第一の実施の形態と同じ座標を目標として導体3の計6箇所にレーザ溶接を行ったものである。レーザ溶接後、サンプルの6箇所のレーザ溶接部を撮影した画像でフィルム表面溶接部形状と周辺部の色相差により検査したところ、以下のような状態であった。
a)レーザ溶接部サーチエリア12からレーザ溶融部がはみ出し、レーザ溶融部全体を撮影することができない。
b)レーザ溶接部と周辺導体とのコントラストが不明確であるため、レーザ溶融部の正確な形状推定ができない。
c)同じレーザ光出力条件であっても、溶融部形状は変化が大きく特定の形状との対比により合否判定をすることは難しい。
a)については、従来のレーザ溶接方式ではレーザ溶融部の目標位置を着色領域によって行っていないため、フィルム穿孔部9周辺に生じたシワによって実際の溶接部位置との差異が生じることに対応しているものである。
b)については、着色領域を設けていないため、レーザ溶接後の接続判定検査をフィルム表面溶接部形状と周辺部の色度差により行う際に、判定に必要なレベルの色度差が得られなかったため起こったものである。また、同部を導通試験及び断面観察等によりサンプル毎に合否を確認したところ、溶接部形状と合否の相関性は低く不安定な状況であった。
c)については、着色領域を設けていないため、レーザ光が無色透明のフィルムにあまり吸収されずにアルミニウムの導体まで到達し、そこで吸収されたエネルギーが表面のフィルムを急激に溶融、蒸発させたことによって発生した爆飛とよばれる現象によって生じたと考えられ、導体の反射率が照射部位や角度のわずかな変化によって不安定になることと対応している。
このような状況であるから、従来のレーザ溶接後の接続部形状からの判定では、いずれのレーザ溶接部も正確な接続合否判定ができなかった。着色領域形成の重要性は明らかである。
図7は本発明の第1の実施の形態であるレーザ溶接部位置ズレ検出の例を示している。導体3上の計6箇所に直径0.8mmの円形着色領域4を設けて、その中心位置を目標として当該6箇所にレーザ溶接を行ったところ、右側のレーザ溶接部5hの3箇所において、右上方向に0.15mmレーザ溶接部位置ズレが起こった場合の例を示している。
本発明のレーザ溶接方式を用いた工程では、着色領域4を撮影し撮影画像から目標位置となる座標を推定し、これに基づいてレーザ溶接を行う構成としているので通常は発生しない不具合である。しかしながら、レーザ溶接機器の交換時や大規模な工程変更が発生した場合や機器調整後に長期間を経た後には、以前に設定した原点と機器との間の相対位置
が変化することによって、このようなレーザ溶接部位置ズレが起こってしまう可能性があり得る。この場合には目視や顕微鏡等によってレーザ溶接後の着色領域4形状を観察すれば、ズレの方向や量を容易に計測できるので、これに基づき相対位置の補正が極めて簡便に行える。レーザ溶接部位置ズレ検出を行う場合の着色領域4形状は、観察、計測可能な形状であれば適宜設定可能だが、あらゆる方向のズレに対して視覚的なわかりやすさを具備している形状が好ましい。
図7に示す例では、着色領域4形状を、想定され且つ実際そうであるレーザ溶接部形状と相似形の円形としている。この形状では、レーザ溶接部目標位置である円形中心部に対してレーザ溶接後の着色領域4の残り幅が全方向でほぼ同一であるため、どの方向にずれた場合でも簡単にズレを確認することできる。図7に示す例ではレーザ溶接部5hと着色領域4との位置ズレを顕微鏡で観察して、同部を照射したレーザ溶接機器の取り付け位置が図7に示すように右上方向へずれていることが判明したため、機器の取り付け位置を正常な位置へ照射できるように修正することができた。
本発明の第1の実施の形態に係るフィルムは無色透明のものを用いたが、フィルムを半透明としてもよい。本発明はエネルギー照射初期時にフィルムを透過していくレーザ光を、フィルム表面上の着色領域で効率よく吸収することを目的としており、無色透明フィルムを用いたときに最も実施効果が得やすい。しかしながら、半透明フィルムの場合であっても、透明フィルムの場合と比べてフィルムを透過していくレーザ光とフィルムで吸収されるレーザ光の割合が変化するだけであって、フィルム表面上の着色領域を設けることにより、エネルギーを効率よく吸収できるという効果は同様に得られる。また、不透明のフィルムを用いてもよい。不透明のフィルムであってもレーザ光はフィルム表面で一定の割合で反射してしまい吸収されないレーザ光のエネルギーが存在するが、フィルムよりも輝度が低い着色領域によって吸収効率を高めることにより、透明フィルムや半透明フィルムの場合と同様の効果を得られる。このように、本発明の構成で用いるフィルムは透明や半透明の場合に実施効果が得やすいが、フィルムが不透明であっても実施することができて、どのようなフィルムを用いたとしても、フィルムに適した着色領域を設けることによって、フィルム表面上で吸収したエネルギーは導体の溶融に先立ちフィルムの溶融、蒸発を行うため、短時間で十分な加工を行うことが可能になり、爆飛の発生も低減することができる。
本発明の着色領域は、既存の公知の印刷方法や塗布方法によって形成可能であるが、インクジェット方式によって塗布するのもよい。インクジェット方式により着色領域を塗布する場合には、フィルムに導体が形成されている場合や着色領域以外のところにシワや破れがあった場合にでも、版との密着性を考慮する必要がないので安定して着色領域を形成することができる。また、既存のインクを使って着色できるが、着色領域を染料インクによって着色するのもよい。染料インクで着色すれば、摩擦に強くなるためロールからロールへの搬送や巻き取り時に擦過された場合においても、着色領域の劣化を防ぐことができる。
図8に示した本発明の第2の実施形態は、接続部周辺の第一の着色領域4の周囲にさらに第二の着色領域14を形成したものである。フィルム2、導体3、円形の第一の着色領域4の材料や形成方法は、第1の実施形態である電子部品の接続構造体1に使用可能なものを用いることで作成できる。また、レーザ溶接部5で溶接される導体3、リードフレーム6、半導体素子7、モールド樹脂8、フィルム穿孔部9も、第1の実施形態である電子部品の接続構造体1に使用可能なものを用いて第1の実施形態と同様に作成できる。第二の着色領域14は、インクジェット方式等の印字機によって白色の染料インクが塗布されたものを用いたが、染料インクは着色領域4に比べて低い色相であって後述する光線遮蔽性や着色領域4との対比性の効果が得られるものであれば白色でなくてもよい。
係る構成でも、第1の実施形態で認められた効果に加え次の効果を確認できた。すなわち、フィルム2が無色透明のPETフィルムのような透過しやすい材料であって、導体3がアルミ箔のような導体表面の反射特性が酸化の影響を受けやすい材料であっても、第二の着色領域14を設けることで、そのインクの遮蔽効果からフィルム2から導体3方向へ入る光線の透過光及び入った光線の導体3からの反射光を低減することができるため、撮影画像から目標位置となる座標を算出する際の画像処理を容易に行うことが可能となる。これは、導体3の酸化状態によって導体3の鏡面反射性が変化したり、光沢感があるフィルムの湾曲によって入った光がフィルム表面で様々な方向へ反射することにより、撮影画像の一部で明暗が飽和してしまい、画像認識を困難にさせてしまうことと対応している。導体3の反射特性の影響を第二の着色領域14で低減したり、着色領域14によってフィルムの光沢感を消すことにより、着色領域4の図形抽出を第二の着色領域14の輝度との対比によって明確化できるため、導体3や周辺の光線の影響を受けにくい安定した製造が可能になる。
本発明の第1の実施の形態及び第2の実施の形態で示したレーザ溶接方式を用いた電子部品の接続構造では、接続構造が短時間で十分な加工を行うことができるため、溶接にかかるエネルギーを低く抑えることができる。また、表面の汚れや導体の酸化状況によらず溶融部が受け取るエネルギーが均一になるため、排気やクリーン化が不十分な工程で製造する場合であっても接続構造の仕上がりバラツキが少ない。また、フィルム表面溶接部形状の特徴抽出を容易に行うことができるため、接続構造の仕上がりが不良の場合でもそれを選別することができる。また、レーザ溶接部以外のFPCが変形したりしわが発生した場合であっても目標位置を正確に知ることができることができるため、様々な素材上に形成された導体に対して電子部品を接続できる。また、着色領域をレーザ溶接部形状程度の最小領域に限定することも可能になるため追加費用を安価に抑えデザイン性にも影響が少なくなる。このような効果により、仕上がり品質に優れた電子部品の接続構造を安価に製造することができた。
1、電子部品の接続構造体
2、フィルム
3、導体
4、4a、4b、4c、4d、4e、4f、着色領域
5、5a、5b、5c、5d、5e、5f、レーザ溶接部
6、リードフレーム
7、半導体素子
8、モールド樹脂
9、フィルム穿孔部
10a、10b、アライメントマーク
11a、11b、押さえ冶具領域
12、レーザ溶接部サーチエリア
12a、12b、押さえ冶具
13、バックアップステージ
14、第二の着色領域

Claims (9)

  1. 一方の面に一対の導体を有し該一対の導体を挟んで開口部を有する透明もしくは半透明のフィルムの開口部に、金属端子を有する電子部品を該金属端子がフィルムの一方の面に形成された導体に当接するように搭載し、該当接部位にレーザ光を照射して導体と金属端子とを接続するレーザ溶接方法であって、
    該フィルムの他方の面上に、該当接部位を含むように着色領域を設け、レーザ光を着色領域側から当接部位に照射することでフィルムを除去し該当接部位を溶接することを特徴とするレーザ溶接方法。
  2. 前記フィルムの導体を形成した面に、開口を有する押さえ冶具を備え、該押さえ冶具によりフィルムに形成した導体と電子部品の金属端子を密着させ、該押さえ冶具の開口を通してレーザ光を照射することを特徴とする請求項1に記載のレーザ溶接方法。
  3. 前記着色領域は少なくとも円形に着色された領域を内包することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のレーザ溶接方法
  4. 前記着色領域は、着色領域の内側にレーザ溶接後の溶接部が内包されるように着色されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のレーザ溶接方法。
  5. レーザー光を照射する際、押さえ冶具の画像を撮影し、撮影画像からレーザ光照射位置を算出することを特徴とする請求項から請求項4のいずれか1項に記載のレーザ溶接方法。
  6. 前記着色領域の色相と着色領域周辺の非着色領域の色相が異なることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のレーザ溶接方法。
  7. 前記着色領域は、着色材料をインクジェット方式により塗布して形成したことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のレーザ溶接方法。
  8. 前記着色領域は、フィルムが染料インクによって着色されていることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のレーザ溶接方法。
  9. 請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のレーザ溶接方法でフィルムに形成した導体と電子部品の金属端子を溶接した後、接続判定検査をフィルム表面溶接部形状と溶接部周辺部との色相差により行うことを特徴とするレーザ溶接検査方法。
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